説明

自動車バンパー用衝突センサ

自動車バンパー部材上へ設置される感知素子及び弾性プロフィルから成る衝突センサが提供される。弾性プロフィルには、感知素子及び自動車バンパー部材の対応設置手段と確動的に連結させる少なくとも1個のクリップ手段に適合した少なくとも1個の中空小室が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、例えば歩行者保護システムにおいて用いられる自動車バンパー用衝突センサに関し、より詳細には歩行者保護システムにおいて用いられる歩行者保護センサ、すなわち歩行者/車衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いくつかの自動車メーカーにおいて、車と歩行者の衝突に際して歩行者を保護する助力となる安全装置の開発が着手されている。このような安全装置にはエンジンボンネット等の車体構造に対する歩行者の衝撃強度を最少にするように設計された1または2以上の能動装置が含まれている。このような能動装置の有効制御には車と歩行者との衝突の発生をタイムリーに感知できる信頼度の高い感知装置が必要なことは明白である。
【0003】
通常これらの衝突センサには、感知素子の変形あるいは賦活に伴って変化する少なくとも1個の可測定手段を備えた感知素子が含まれている。かかる感知素子を、例えば光ファイバー感知素子あるいは圧力感知素子によって構成することも可能である。衝突状態の信頼度の高い検知を確実にするため、これら衝突センサは自動車前部バンパー上の前方に面したバンパー部位へ取り付けられなければならない。さらに、これらセンサは、例えばバンパーのフォームコア(発泡芯材)上のプラスチック製または金属製バンパー外板下部へ取り付けられなければならない。これら衝突センサは、自動車の耐用期間に亘ってセンサが信頼できる確実な作動を行うように、バンパーフォームへ確実に固定されなければならない。従って前記固定は、バンパー外板下部周囲の過酷な条件に対して耐久性でなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑み、本発明は、自動車バンパーへ確実に固定できる衝突センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、自動車バンパー部材上へ設置される、少なくとも1個の感知素子及び弾性プロフィルを含む衝突センサが提供されている。この弾性プロフィルには、前記感知素子を収容する少なくとも一つの中空小室と、及び前記自動車バンパー部材の対応設置手段と確実に噛合させる少なくとも1個のクリップ手段が含まれる。本発明ではさらに、統合型衝突センサを備える自動車バンパーが提供されており、この自動車バンパーはバンパーフォームコアから成り、及び前記衝突センサには前記バンパーフォームコア上へ配置される感知素子が備えられている。この衝突センサには弾性プロフィルが備えられ、この弾性プロフィルには前記感知素子を収容する少なくとも一つの中空小室と、及び前記バンパーフォームコアの対応設置手段と確実に噛合させるクリップ手段が含まれている。
【0006】
本発明による衝突センサには、前記感知素子の自動車バンパー部材への機械的連結を可能とする弾力性のある順応プロフィルが含まれる。前記感知素子は前記弾性プロフィルによって支えられ、さらに弾性プロフィルのクリップ手段によって前記バンパー部材へ取り付けられる。
【0007】
前記感知素子及び弾性プロフィルは組立ユニットとしてバンパー組立工場へ提供可能である。バンパー組立工場において前記衝突センサの組立は、単純に弾性プロフィルをバンパー部材の設置手段へクリップ留めするだけで完了する。この組立には特別な組立機具も補助クリップあるいは膠等の取付け部材も必要とされない。すなわち、本発明に従った衝突センサは自動車バンパーへ迅速かつ確実に組み立てられるように設計されているため製造の低コスト化も図られる。さらに、バンパー部材へ弾性プロフィルをクリップ留めすることにより、バンパー構造強度を低下させずに弾性プロフィルを取り外すことが可能となる。それゆえ、本発明衝突センサのクリップ手段によって、例えば感知素子に欠陥がある場合に衝突センサの取替えが可能となるように、衝突センサの高い実用性が確保される。1または2以上の異なる感知素子を単一の弾性プロフィル中へ収容可能なことは当業者の理解するところである。これら感知素子を単一の中空な小室中へ収容することもできるが、各感知素子を同一弾性プロフィルの別々の中空な小室中へ配置することも可能である。
【0008】
弾性プロフィルのクリップ手段とバンパーの設置手段との相互作用によってこれら2つの部材間に柔軟な機械的連結が生ずることが理解される。このような柔軟な連結は温度変化、振動及び自動車バンパー周辺の他の過酷な環境条件に対して極めて耐久性である。かかる連結により、衝突センサの全耐用期間に亘って継続的に、強固な衝突センサの自動車バンパーへの連結が確保される。
【0009】
前記プロフィルによって水の撥ねかかり、湿気、埃等の環境による影響から感知素子が保護されることが理解されよう。従って、弾性プロフィルは、埃及び水分の中空小室への浸入を防止するため、好ましくはその両末端部が塞がれあるいは密閉される。
【0010】
前記中空小室の内部形状は好ましくは感知素子それぞれの外形へ適合される。かかる形状により、感知素子を自動車バンパー部材に対して確実に位置定めすることが可能となる。
【0011】
前記感知素子には、好ましくは、該感知素子に対して作用する圧力、あるいは該感知素子の変形に従って変化する可測定手段が備えられているべきである。作動に際しては、感知素子は可変性状を感知する制御装置へ(ケーブルあるいは無線リンクを用いて)接続されて感知素子の変形が検知される。感知素子は、例えば、感知素子に対して作用する圧力によって電気抵抗が左右される圧力感知素子等の圧力感知装置、あるいは表面音響波圧力センサから構成可能である。もしくは、感知素子を光透過性が感知素子の変形と共に変化する光ファイバーセンサを用いて構成することも可能である。
【0012】
好ましい実施態様では、前記弾性プロフィルには基部が含まれ、この基部は使用に際して前記自動車バンパー部材の方へ向けられ、及び前記クリップ手段が前記弾性プロフィルのこの基部上へ設置される。使用に際しては、衝突センサがバンパーフォームコアに対して正しく位置決めされるように、好ましくは前記基部が前記バンパーフォームコアに対して設置される。
【0013】
前記弾性プロフィルにはさらに、前記基部に反対側に位置する前面部が含まれる。使用に際して、この前面部は前記自動車バンパー部材から外を向くように向けられ、歩行者あるいは衝突の場合は衝突物体からの衝撃を受け取る。従って、前記前記面部は、バンパーに対して作用する衝突応力を中空小室内部の感知素子へ伝達できるように極めて柔軟性でなければならない。前記前面部の内部設計は感知素子への衝突応力の伝達に関して最適化されることが理解されよう。
【0014】
前記基部は好ましくは前記前面部よりも高い剛性をもつように構成される。その結果として、感知素子への衝突応力の最適化された伝達に必要な信頼できる支持面が基部によって与えられる。
【0015】
前記弾性プロフィルは押出し成形されたエラストマープロフィルであることが有利である。かかるエラストマープロフィルは広範囲に亘る形態へ低コストで製造可能である。弾性プロフィルの前面部と基部に異なる硬度を付与することは、例えば異なるエラストマー材料の同時押出しによって可能である。
【0016】
前記弾性プロフィルの長さは衝突センサの特定の要求に対して容易に適合可能である。自動車バンパーの可能な実施態様として、例えば、各衝突センサがバンパーの特定部位へ設置され及び該特定部位へ作用する衝突応力に対して反応する数個の衝突センサを自動車バンパーへ設ける態様がある。この場合、弾性プロフィルの長さは自動車バンパーの前記特定部位の幅にほぼ相当する長さとされる。また別の実施態様においては、バンパー上へ衝突センサを組立てた後に、該弾性プロフィルが自動車バンパーの幅全体にほぼ沿って延びるように、前記弾性プロフィルの長さは該自動車バンパーの幅とほぼ同じ長さとされる。
【0017】
前記弾性プロフィルは通常細長い形状に構成され、また前記クリップ手段は好ましくは前記弾性プロフィルのほぼ全長に沿って延びるように構成される。この場合、バンパー設置手段は、好ましくはバンパーフォームコアの少なくとも一部に沿って延びる細長い溝で構成される。
【0018】
好ましい実施態様においては、前記クリップ手段に矢先形状の断面をもつ後方に延びるウェブが含まれ、他方前記溝は台形状の断面をもち、該台形状断面は前記フォームコア内部に設置される。このような「矢先」あるいは「樅の木」形状と前記設置手段の適切な形状を組み合わせることにより、自動車バンパー構造との最適な機械的連結が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に記載された限定的でないいくつかの実施態様を用いて添付図面を参照しながら本発明について説明し、本発明についてさらに明らかにする。
【0020】
図1及び2に示された衝突センサ10は、実質的に弾性中空プロフィル12及び感知素子14から構成されている。図示された感知素子14は、感知素子に対して作用する圧力に依存して電気抵抗が変化する圧力感知レジスタ素子で構成されている。しかしながら、本発明範囲内において他の感知素子を用いることも可能である。
【0021】
前記細長い弾性プロフィル12には、前記感知素子14を収容するための中空小室16が含まれている。この中空小室16の内部形状は感知素子14それぞれの外形に適合される。かかる適合により、衝突センサ10が取り付けられる自動車バンパーフォームコア18に対する感知素子の確実な位置決めが確保される。
【0022】
前記弾性プロフィル12には、使用に際して前記自動車バンパーフォームコア18の方へ向けられる基部20及び前記基部20に対向する前面部22が設けられている。使用の際には、前記前面部は前記自動車バンパーフォームコア18から離れるように向いているため、歩行者あるいは車同士の衝突の場合は衝突客体からの衝撃を受ける。弾性プロフィル12の前面部22は、バンパーに対して作用する衝突応力を中空小室内部の感知素子へ伝達たるため、極めて柔軟な材料で作製される。前面部の内部形状は、例えば中空小室の内面上へ切換突出部を設ける等の方法により衝突応力の感知素子への伝達のため最適化される。
【0023】
前記基部20は前記前面部22よりも高い剛性をもつように作製される。その結果、基部20によって、感知素子14上に対する衝突応力の伝達の最適化に必要とされる信頼度の高い支持面が付与される。
【0024】
自動車バンパーフォーム18上へ衝突センサ10を組み立てるため、弾性プロフィル12にはクリップ手段26が備えられ、このクリップ手段26は前記自動車バンパーフォーム18の対応設置手段28と確実に連結するように設計される。クリップ手段は、好ましくは前記弾性プロフィル12の基部20上へ配置される後方へ延びる矢先の形状のあるいは樅の木形状の断面をもつウェブで構成される。他方、前記設置手段は、好ましくは台形状の断面をもつ細長い溝で構成され、この台形状断面基部は前記フォームコア内部に設置される。このような「矢先」あるいは「樅の木」形状と前記設置手段の適切な形状が組み合わされることにより、自動車バンパーフォームとの最適な機械的連結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従った統合型衝突センサを備える自動車バンパーフォームコアの断面図である。
【図2】本発明に従った衝突センサの透視図である。
【符号の説明】
【0026】
10:衝突センサ
12:弾性中空プロフィル
14:感知素子
16:中空小室
18:バンパーフォームコア
20:基部
22:前面部
24:切換突出部
26:クリップ手段
28:設置手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知素子を収容する少なくとも一つの中空小室と、及び自動車バンパー部材の対応設置手段と確実に噛合する少なくとも1個のクリップ手段が設けられた弾性プロフィルを備えることを特徴とする、自動車バンパー部材上へ設置される少なくとも1個の感知素子を含んだ衝突センサ。
【請求項2】
前記弾性プロフィルに、使用に際して前記自動車バンパー部材の方へ向けられる基部が備えられ、及び前記クリップ手段が前記弾性プロフィルの前記基部上へ設置されることを特徴とする請求項1項記載の衝突センサ。
【請求項3】
前記弾性プロフィルに、前記基部と反対側に前面部が設けられ、及び前記基部が前記前面部よりも高い剛性をもつように構成されることを特徴とする請求項2項記載の衝突センサ。
【請求項4】
前記弾性プロフィルが押出し成形されたエラストマープロフィルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衝突センサ。
【請求項5】
前記弾性プロフィルの長さが、前記衝突センサの自動車バンパー上への組立後に前記弾性プロフィルが前記自動車バンパー部材の全長にほぼ沿って延びるように、前記自動車バンパーの幅と実質的に等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衝突センサ。
【請求項6】
前記弾性プロフィルが細長い形状に作製され、及び前記クリップ手段が前記弾性プロフィルの全長にほぼ沿って延びていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衝突センサ。
【請求項7】
前記クリップ手段が後方へ延びる矢先形状断面をもつウェブから構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の衝突センサ。
【請求項8】
自動車バンパーがバンパーフォームコアから成り、及び衝突センサが前記バンパーフォームコア上へ配置される感知素子と、さらに前記感知素子を収容する少なくとも一つの中空小室と、及び前記バンパーフォームコアの対応設置手段と確実に噛合する少なくとも1個のクリップ手段が含まれる弾性プロフィルから構成されることを特徴とする、一体型衝突センサを備えた自動車バンパー。
【請求項9】
前記弾性プロフィルに前記バンパーフォームコアに対して設置される基部が設けられ、及び前記クリップ手段が前記弾性プロフィルの前記基部上へ設置されることを特徴する請求項8項記載の自動車バンパー。
【請求項10】
前記弾性プロフィルに前記基部に対向して前面部が設けられ、及び前記基部が前記前面部よりも高い剛性をもつように構成されることを特徴とする請求項9項記載の自動車バンパー。
【請求項11】
前記弾性プロフィルが押出し成形されたエラストマープロフィルであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の自動車バンパー。
【請求項12】
前記弾性プロフィルの長さが前記自動車バンパーの幅と実質的に等しく、及び前記弾性プロフィルが前記自動車バンパーの全幅にほぼ沿って延びていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の自動車バンパー。
【請求項13】
前記弾性プロフィルが細長い形状に構成され、及び前記クリップ手段が前記弾性プロフィルの全長にほぼ沿って延びている事を特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の自動車バンパー。
【請求項14】
前記クリップ手段が矢先形状の断面をもつ後方へ延びるウェブから構成されることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の自動車バンパー。
【請求項15】
前記バンパーフォームコアの前記設置手段が前記バンパーフォームコアの少なくとも一部に沿って延びる溝から構成されることを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載の自動車バンパー。
【請求項16】
前記溝の断面が台形形状であり、及び前記台形形状断面の基部が前記フォームコア内部に設置されることを特徴とする請求項15項記載の自動車バンパー。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−512175(P2007−512175A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540442(P2006−540442)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052926
【国際公開番号】WO2005/051727
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503150594)アイイーイー インターナショナル エレクトロニクス アンド エンジニアリング エス.エイ. (56)
【氏名又は名称原語表記】IEE INTERNATIONAL ELECTRONICS & ENGINEERING S.A.