説明

自動車両のシートインサート

自動車両の着座システム(10)内で使用するのに適したインサート(20)が開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本願は、2005年8月19日出願の米国仮特許出願第60/709,686号ならびに2006年3月30日出願の米国仮特許出願第60/787,363号の出願日の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、自動車両のシートに関し、より詳細には、暖房、冷房、換気またはこれらの組み合わせを自動車両のシートに提供するためのインサートに関する。
【背景技術】
【0003】
長年の間、運輸業界では、シートの乗員を、更に快適にする自動車両のシートの設計に関心が寄せられている。このような快適さは、暖房、換気、冷房またはこれらの組み合わせを、シートおよび/またはシートの乗員に提供することによって向上させることができる。
【発明の開示】
【0004】
近年、産業界では、暖房、換気、冷房またはこれらの組み合わせを提供するのを少なくとも補助する(assign in)ために、シートに組み立てることが可能なインサートが設計され始めた。このようなインサートの例は、米国特許出願公開第2002/0096931号明細書、米国特許第6,893,086号明細書に記載されており、両文献はあらゆる目的のために参照によりここに援用される。したがって、本発明は、自動車両のシートまたはほかのシートを更に快適にするためのインサートを提供する。
【0005】
したがって、着座システム用のインサートが提供される。インサートは、通常、インサート内に空間を形成しているスペーサ材を有し、少なくとも1つの封止端、1つの封止端を有していても、封止端を有さなくてもよい。インサートは、各種の異なるシートに適用することができ、好ましくは、シートクッションおよびシートバックレストクッションを有し、これらの少なくとも一方が換気されている乗物シートに適用するように構成されている。換気された部品のそれぞれは、シートの乗員の接触面において通気性のトリム面を有しており、特に、インサートは、換気された部品のそれぞれのトリム面の下に配置されるように構成されている。また、エアムーバは、通常、インサート内の空間と流体連通している。
【0006】
本発明の各種特徴および態様は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、図面などを読むことで明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、暖房、冷房、換気またはこれらの組み合わせをシートの乗員に提供するために、自動車両のシート内に配置するのに適したインサートを提供するものである。一般に、インサートは、スペーサ材を実質的に囲むか、シートのほかの一部と協同してスペーサ材を実質的に囲むか、この両方を行う1つ以上のバリア材またはバリア層と共に空間を画定している。ここで使用するように、バリア材またはバリア層とは、流体の流れを実質的に透過させない材料または層を指す。このようなバリア材またはバリア層は、通常、1つ以上の開口部および空間を通って流体(詳細には空気)が流通できるように、空間と流体連通している1つ以上の開口部を有する。好ましくは、インサートが、着座面のかなりの部分に空気を分散させたり、または着座面のかなりの部分の周りから空気を吸気することができるように、バリア材またはバリア層を貫通している複数の孔を備えるが、これは必須ではない。
【0008】
図1を参照すると、本発明による着座システム10が示されている。着座システム10は、バックレストクッション14とシートクッション16を有するシート12を備える。システム10は、1つ以上のインサートを備え、1つ以上のエアムーバを備えうる。図に示すように、1つのインサート20がバックレストクッション14を覆っており、1つのインサート22がシートクッション16を覆っている。また、システム10は、バックレストクッション14の上のインサート20と流体連通している第1のエアムーバ26と、シートクッション16の上のインサート22と流体連通している第2のエアムーバ28とを有するように示されている。
【0009】
シートまたはシートの乗員に換気を与えるために、1つ以上のエアムーバは、通常、インサート内の空間を通り、シートのトリム層(例えばレザーカバー)を越えおよび/またはこれを通って空気を移動させるように構成されている。1つ以上のエアムーバが、インサート内の空間を通って空気を吸気してから、トリム層を越えまたはこれを通って空気を吸気しうる。別法として、1つ以上のエアムーバが、インサートの空間を通って、トリム層を越えまたはこれを通って空気を押し出すように構成されてもよい。
【0010】
一般に、1つ以上のエアムーバは、さまざまな方法によってインサートと流体連通しうる。一例として、インサート自体が、インサートの空間と流体連通しているチューブ構造を形成するように構成され、このチューブ構造が、エアムーバに延び、エアムーバと流体連通されている開口部を有する。別の例として、1つ以上のエアムーバと1つ以上のインサート間を流体連通させるために、これらの間に延在する別個のチューブ構造を使用してもよい。このようなチューブ構造は、シートクッションまたはバックレストクッションを貫通して、シートクッションまたはバックレストクッションの周囲に、および/またはあるいはシートクッションとバックレストクッション間に延在しうる。
【0011】
一態様では、インサートの舌片または拡張部は、インサートの本体の着座部分に接続されたテイル部である。テイル部の幅は、通常、インサートの残りの部分よりも短いが、これは必須ではなく、米国特許第6,840,576号明細書に示すように、テイル部の幅が、その長さに沿って変わってもよい。一実施形態では、テイル部は、インサートの残りの部分と(少なくとも、製造または輸送中のある時点で)同一平面となるように、インサートの本体部の端から延在している。別の実施形態では、テイル部は、インサートの裏面から突出している。テイル部は、スペーサ材の一片および/またはインサートのほかの層を、本体部と共有しており、前述の実施形態のように、本体部と一体的に形成されていてもよいが、別個の材料が利用されてもよい。突出したテイル部の形成では、本体部の封止端を形成するために、バリア層の一部分がそれ自体の上に封止されてもよく、このため、テイル部は封止端に隣接して存在するが、これとは独立している。本体部の上部とテイル部に一枚のバリア材が使用される場合には、形成時に、インサートの封止端として有効に機能する封止された折り目をバリア層に形成するために、バリア層の一部分がそれ自体の上に封止されてもよい。
【0012】
本発明によるインサートは、熱を提供するために、インサートに置かれたヒーターを備えうる。例えば、積層またはほかの方法によって基材に取り付けられた電気素子、より詳細には加熱素子(例えば金属またはカーボンファイバのワイヤ)を有するヒーター層が、インサートに取り付けられうる(例えば、積層される)。別の実施形態として、加熱素子が、インサートのバリア層またはバリア材に直接取り付けられるか、あるいは、インサートのほかの部分に取り付けられてもよい。また、熱電素子等の電気素子が、同様に加熱素子として使用されるが、着座システムまたはそこにいる乗員に暖房または冷房を提供するために使用されてもよいと考えられる。
【0013】
冷房を提供するために、1つ以上のエアムーバからの空気、またはそこへ送る空気が、さまざまな冷却装置を使用して冷却されうる。一例として、1つ以上のインサートに押し込まれる空気を冷却するために、熱電素子が、1つ以上のエアムーバに一体的に組み込まれるか、あるいは、動作的に結合されうる。代替の実施形態として、自動車両のHVAC(暖房、換気および冷房)システムからの空気が、1つ以上のインサートに送風または案内されてもよい。
【0014】
乗員またはトリム面への気流、あるいはこれらからの気流を均一にするために、インサートの前面または上面に、開口部(例えば貫通孔または穿孔)が設けられうる。一実施形態では、エアムーバの近くに設けた穿孔は、一般に、エアムーバから離れた場所に設けた穿孔よりも断面積が小さい。エアムーバから離れるに従って穿孔の断面積を大きくすることによって、穿孔を通る気流を均一にすることができる。別の実施形態では、米国特許第6,869,140号明細書に示されているように、穿孔が、エアムーバからの距離に応じてグループ化され、エアムーバに近いグループがエアムーバから遠いグループよりも総断面積が小さくされてもよい。同文献は参照によりここに援用される。
【0015】
更に、穿孔は、インサートの前面または上面の特定の位置に気流を送るように配置されうる。例えば、穿孔が、シート上の乗員の体にほぼ対応するV字のパターンに形成されうる。このようにして、気流は、有効なように、乗員に送られ、あるいは乗員から送られうる。更に、乗員の膝の後ろまたは腿部において、クッションのボルスターに設けたインサートが、乗員のその部分に気流を送るように、穿孔が配置されうる。
【0016】
インサートは、米国特許第6,840,576号明細書に記載された舌片、または米国特許第6,893,086号明細書に記載された拡張部を有しうる。両文献は参照により援用される。代替の実施形態では、舌片または拡張部が使用されない。その代わり、スペーサを有さない1つ以上のコンジットが、エアムーバをインサートに流体的に接続しうる。このコンジットは、舌片または拡張部と同じような位置でインサートに接続しうる。代替の実施形態では、コンジットは、インサートの裏面とエアムーバ間の流体連通を促進しうる。コンジットが、エアムーバをインサートに直接接続していても、あるいはコンジットがクッションに接続しており、このクッションがインサートの裏面と流体的に連通していてもよい。クッションは、クッション材に設けたコンジットまたはほかの貫通穴を備えうる。クッションは、好ましくは、空気不透性のコーティングまたはライニングを備える。インサート、クッションまたは車両客室を通る空気の循環または再循環を行うために、複数のコンジットまたは貫通穴が使用されうる。クッションは、クッションの裏面または中央にエアムーバを収納するための嵌め込みまたは空洞を有しうる。
【0017】
別の実施形態では、エアムーバは、インサートに局所的に配置されてもよく、エアムーバのこのような吸入口または吹出口は、インサートに取り付けられるか、あるいはこの近くに配される。一態様では、エアムーバは、クッション内でインサートの下に配置されうる。別の態様では、エアムーバとインサートが、相対的に同一平面となるよう、エアムーバの吸入口または吹出口がインサートの端に近くなるように、エアムーバが配置される。いずれの態様でも、エアムーバは、シートにインサートを取り付けるための前述の機構のいずれによってクッションに取り付けられることができ、これには、例えば接着剤やメカニカルファスナーの使用などがある。例えば、エアムーバは、フックおよびループファスナーによって、クッションまたはインサートへのスナップフィット取り付けにより、クッションまたはインサートに保持されうる。代替の実施形態では、エアムーバが、留め嵌め、摺動またはほかの方法によってブラケットに固定されるように、クッションにブラケットが成型されてもよい。代替の実施形態では、クッションは、ケーブルの結び止めまたは追加のワイヤによってエアムーバを取り付けることができる1本以上のワイヤ(例えばワイヤーメッシュ)を備えてもよい。好ましい取り付け機構は、エアムーバからの振動またはノイズを、シートまたは乗員室に伝えないかまたはこれを増幅させない機構である。
【0018】
一実施形態では、クッションは、エアムーバを収納する嵌め込みまたは空洞を備える。インサートにエアムーバを局所的に配置することによって、システムの組立を簡略化することができる。クッション材にコンジットまたは貫通穴を追加すると、インサートに取り付けられないか、インサートの近くにないエアムーバの吸入口/吹出口への流体連通が得られる。例えば、エアムーバがクッションの空洞内、インサートの下に配置され、エアムーバの吸入口がインサートの近くに来るように、システムが空気を吸気する場合、コンジットまたは貫通穴は、エアムーバの吹出口をシートの裏面に接続して、エアムーバの排気位置を提供しうる。
【0019】
一実施形態では、コントローラとエアムーバは、1つのハウジング内にまとめられており、このため取付けが容易となり、材料費を削減することができる。このように組み合せたコントローラは、加熱素子、熱電素子またはほかのエアムーバなどシステム全体を制御しうる。あるいは、コントローラは、エアムーバとまとめられた別個のマスターコントローラのスレーブとして作動しうる。一態様では、スレーブコントローラは、マスターコントローラの故障時の際に、システム全体の動作を引き継ぎうる。
【0020】
一実施形態では、コントローラは、それを収容しているハウジング内にあるエアムーバと独立しており、ワイヤリングハーネスによってエアムーバに接続されていても、エアムーバと共通のプラットホームに接続されていてもよい。コントローラをエアムーバから独立させることにより、ハウジングの組立を簡略化することができると共に、エアムーバとコントローラの間の干渉の可能性を低減させ、クッションの柔軟性を改善することが可能となる。
【0021】
一実施形態では、エアムーバの動作によって発生する雑音が減弱される。一態様では、エアムーバのハウジングは二重壁を有しており、壁同士の間に空間が形成されている。この空間内の空気が遮音として機能する。騒音減弱を向上させるために、空気のほか、ほかの騒音減弱物質(例えば発泡体)を空間内で使用してもよい。更に、騒音減弱物質は、エアムーバのハウジングの内または外に設けられてもよい。一態様では、エアムーバは、吸入口、吹出口、および任意の必要な電子部品(例えばコントローラまたはセンサ)のための接続点を有する騒音減弱発泡体に収容されている。エアムーバを発泡体に収容することによって、システム全体に単に取り入れるだけですむモジュール式のパッケージを作製することができる。上記のように、エアムーバは、クッションの嵌め込みまたは空洞内に設置されうる。クッションが発泡体の場合、エアムーバの雑音と振動を低減させる騒音減弱物質として機能する。
【0022】
遮蔽に加えて、ほかの騒音減弱法を使用してもよい。エアムーバの吹出口にマフラーが取り付けられてもよい。マフラーは、システムを通る気流をさほど妨げずに、雑音を吸収するための一連のバッフルまたはその内部に取り付けられたそのほかの装置を備えうる。別の実施形態では、マフラーは、単に騒音減弱物質(例えば発泡体)にカバーされたチューブまたはコンジットであってもよい。
【0023】
一実施形態では、バッグの周辺が封止されて、空気不透性のバリアを形成するように、インサートは端封インサートである。端封は、接着剤(例えば圧感接着剤)、赤外線溶接、高周波溶接または超音波溶接を用いることにより行われうる。別の実施形態では、封止は、インサートの周辺全体に行われない。例えば、エアムーバのための接続場所、またはコンジットがエアムーバをインサートに取り付けている場所以外のインサートの周辺が封止される。
【0024】
上記のように、クッションは、システムのほかの部品を収容するために、1つ以上の貫通穴を備えうる。更に、ほかの貫通穴は、下方からトリムカバーをクッションに取り付ける(例えば米国特許第6,003,950号明細書参照)、あるいは、クッションを通って舌片または拡張部を座席の裏面または後ろ側に案内するのに有用でありうる。
【0025】
一実施形態では、インサートは、インサートの周辺全体の周りに延在せず、インサートの一部分に延在している封止を有する。例えば、このような封止は、線分または弧に沿って実質的に連続して延在しうる。このような封止は、インサートの長さまたは幅に沿って延在しうる。このようなインサートの形成は、さまざまな方法で行うことができる。一例として、開口部を有するバッグ(例えばポリマーまたは熱可塑性のバッグ)が提供され、次に、バッグ内にスペーサ材が挿入されて、上記の封止の1つを形成するために、バッグの開口部が封止される(例えば、メルトによる封止、接着封止、縫い付け、これらの組合せなど)。
【0026】
また、本発明のシステムは、1つ以上(例えば2、3、4、5以上)の開口部(例えばダクト)が貫通しているシートクッションまたはバックレストクッションを考察している。このような開口部は、通常、1つ以上のエアムーバと流体連通している。このようにして、シートクッションまたはバックレストクッションは、クッションを覆っているインサートに空気を供給するためのマニホルドとして機能しうる。この状況では、インサートは、クッションに設けた開口部に対応して複数の開口部を備え、インサート、クッションの開口部、1つ以上のエアムーバ間を流体連通させるために、ほぼ開口した部分を有する。
【0027】
別の実施形態では、周辺封止(およびこれに付随する封止端)を使用する代わりに、あるいはこれに加えて、インサートが、インサートの底面に設けられた1つ以上の縫い目に沿って封止される。この例が図2に示されている。このような方法を使用して、縫い目を収容するように適合されたクッションの溝を提供することにより、シートクッションにインサートを固定することができる。溝は、インサートに取り付けるためのテザー、インサートをクッションにスナップ嵌めするためのスナップ、インサートが配置されて、固化または硬化してインサートを適所に保持する接着剤、またはこれらの組み合わせなどを含むように構成されている。インサートを溝に取り付けるために、下記に記載する任意のメカニカルファスナーまたは接着式の留め具(例えばフックおよびループファスナー、デニスンタグ、ステープルなど)を使用することができる。縫い目自体は、周辺端を封止するためにここに開示した任意の方法を使用して形成されうる。縫い目を、ステッチ、ステープル留めまたはほかの任意の機械式取り付けによって形成することも可能である。この場合、封止は、例えば、クッションの溝において配置された接着性ビーズに縫い目を施すことによって形成されうる。このようにして、インサートの封止とクッションへのインサートの取り付けが、接着剤を使用して行われうる。
【0028】
インサートと他の部品を相互に、かつトリムカバーの下に固定するために、ほかの数多くの任意の方法を使用することができる。当然、可能な一方法は、インサートまたは部品(例えば、ヒーター層、網状発泡体またはほかの任意のスペーサまたはこれらの組み合わせ)を、縫い込み、接着、固定(例えば、ステープル、スナップ、フック、およびループファスナー等を使用することにより)、またはこれらの任意の組み合わせなどにより、トリムカバーに直接固定することである。例えば、部品またはインサートをトリムカバーから独立させるが、トリムカバーの下に安定させる例も可能であり、これは、例えば、インサート、任意の部品またはこれらの組み合わせを、取り付け具(例えば、ステープル、スナップ、フック、およびループファスナー等)によって、ほかの部品(例えばシートカバー)、シートクッション(例えば、発泡体に直接取り付けるなど)、あるいはこの両者に取り付けることがある。例えば、可能な一方法に、ストリップ、ストラップ、ケーブル、フィラメント、糸、ステープル、ステッチ、ケーブルの結び止め、テザーまたはほかの任意の留め具、詳細には、ポリアミド、アラミド(例えばケブラー(登録商標))、ポリウレタンなどの成型、絞り、押出プラスチックの留め具を使用することがある。留め具に、金属(例えばステンレス鋼ワイヤ、銅ステープルなど)、カーボンファイバなどの材料を使用することもできる。可能な一方法に、中心部を細くするのに対し、端部を大きくした留め具(例えば棘、ウィングまたはアンカー)を使用することがあり、この大きな端部は、荷重配分を分散させる付加的な領域を与えたり、取り付けた部分に対して引き抜かれるのに抵抗したり、この両方を行う。使用できる留め具の例に、手動取り付けガンを使用して手で固定する方法、半自動または自動の取り付け機械(例えば従来のタグ取り付けに使用される機械など)を使用する方法がある。留め具としての用途に適した例示的な商品に、商品名MicroPin(商標)、MicroTach(商標)、Swiftach(商標)、Paddle Fasteners、T−End(商標)Fasteners、Hook−Tach(商標)、Fasteners、Secur−a−Tach(商標)、Loop Fasteners、Secur−a−Tie(商標)、Tag Fast(商標)、Double Paddle Fastenersとしてエイブリィデニソン社(Avery Dennison)などから利用可能なもの、あるいはこれらの商標登録されていない代替品がある。別の態様では、留め具またはその一部は、クッションから突出している留め具にインサートを取り付けることができるように、クッション内に保持または固定されうる。例えば、クッションの形成中に、クリップ、スライドネジまたはボルトが、クッションに成型されうる。次に、インサートをクッションに取り付けるために、インサートに設けた適切な留め金または受具が使用されうる。ほかの留め具と同様に、金属、プラスチック、カーボンファイバまたは各種材料を、固定式留め具に使用することができる。
【0029】
取り付けは、システムをシートに組み立てる時点、シートに組み立てる前にシステムの部品を製造する時点、トリムカバーの製造時、あるいはこれらの複数時点において、組立工によって行われうる。一実施形態では、インサートの取り付けはシートクッションの成型時に行われて、この結果、インサートがシートクッションに成形される。別の実施形態では、取り付けは、そのインサートまたはその一部をクッションに縫い付けることによって行われる。
【0030】
インサートにネックを一体的に形成することも可能であり、このネックは、シートクッションの上面の開口部に穿通するように機能することができる。得られた組立体は、(例えば、エアムーバに直接接続されて、あるいはエアムーバから離間されていることによって)エアムーバと流体連通しているインサートを有する。
【0031】
本発明によるインサートを形成するための別の可能な方法は、可撓性シート(例えば熱可塑性シート)を提供することであり、その例が図3に示されている。複数の突出部が、シートの一面に形成されるか、取り付けられるかあるいは他の方法で提供される。突出部は、ほぼまっすぐでも、湾曲していても、この両方の形状を有してもよい。突出部は、ほぼ同じ大きさであっても、大きさが異なっていても、この両方であってもよい。突出部は、繊維、中実ロッド、中空ロッド(例えば、閉じた先端を有するなど)、長尺状のリブ、またはこれらの任意の組み合わせを有しうる。突出部は、シートと一体的に製造されても、シートとは別に製造されて、その後シートに取り付けられても、この組み合わせによって製造されてもよい。また、シートは、穿孔領域を有するように形成され、この穿孔領域は、空気を通過させる(吸気、排気、あるいはこの両者)複数の穿孔を有する。穿孔は、シートの製造の初期、または後の段階で(例えば、シートに突出部を提供するステップの前、その間、あるいは後に)形成することができる。また、シートは、ほとんど穿孔されていない少なくとも1つのほぼ連続する領域を有する(エアムーバとの流体連通を行うための少数の口を除く)。好ましくは、このほぼ連続する領域は、穿孔された領域の近くに存在している。このようにして、ほぼ連続する領域と穿孔領域は、互いに折り畳まれて、その後、シートが(例えば、接着、溶接、留め具またはほかの機械的取り付け、あるいはこれらの任意の組合せによって)一緒に封止される。これにより、ほぼ連続する領域と穿孔領域が実質的に対向するようになる。このことにより、突出部が有効にスペーサを形成する。理解されるように、(例えば、突出部が長尺状のリブである)一実施形態では、このような工程は、例えば押出工程または成型工程によって、シートと突出部を同時に製造するのに有用となる。
【0032】
一実施形態によれば、インサートは、スペーサ材の周囲にバリア材をインサート成型することによって形成されうる。インサートの形成では、成型機にスペーサを挿入し、層の周囲に成型機を封止し、スペーサ層が、内部空間(バリア材によって実質的に取り囲まれるようになる)を保持するように、スペーサ材の周囲にバリア材を成型(例えば圧縮成型、ブロー成型、押出成型等)することが行われる。バリア材に開口部を直接成型するか、あるいはその後行われる切断作業でこのような開口部を形成することによって、包囲しているバリア材に開口部(例えば貫通孔)が形成される。ここに開示するように、多くの異なるスペーサ材を使用することができる。例えば、1つの好適な材料は、商標名3MESH(商標)で販売され、ドイツのミュラーテキスタイルGmbHまたは米国ロードアイランドのミュラーテキスタイルインクから商業的に入手可能である。好ましい一実施形態によれば、スペーサ材の層がブロー成型機内に配置され、ポリマーのバリア材が、その周辺でスペーサ材に接着する一方で、ポリマーのバリア材によって実質的に囲まれるスペーサ内に内部空間が維持されるように、ポリマーのバリア材が、層の周辺の周りにブロー成型される。ポリマーのバリア内に設ける必要な穿孔は、成型工程中に形成されうる。別の実施形態では、ポリマーのバリア内の穿孔は、ナイフ、レーザー、ダイまたはほかの適切な切断工具によって切断するか、あるいは、エネルギー(例えばレーザー、高周波または赤外線のエネルギー)によってバリアを分解させることにより、ポリマーのバリアを特定点で除去することによって、形成することができる。
【0033】
一実施形態では、スペーサ材が、インサートのほかの部品に固定されない。スペーサは、ほかの部品間に(例えば、2つのバリア層間、またはバリア層とクッションの間など)、スペーサを挟持することによって保持されうる。好ましい実施態様では、スペーサは、インサートまたはシートの少なくとも1つのほかの部品(例えばクッション)に取り付けられるかまたは接続される。上記したように、部品を接合するために接着剤が使用されうる。別の態様では、スペーサは、1つ以上のバリア層またはクッションにヒートステークまたは溶接(例えばスポット溶接)されうる。ヒートステーキングは当業者に既知であり、加熱した先端部を押し付けて熱可塑性材料を局所的に溶融させ、これによって、スペーサを他の部品に取り付けることを補助する。ヒートステーキングによる局所的な取り付けに加えて、溶接により、局所的な領域の取り付けが行われうる。溶接は、スペーサを他の部品に物理的または化学的に接着させるために、赤外線、高周波、超音波、レーザー光、紫外線またはほかの電磁エネルギーを用いることによって行われうる。また、前述したように、バリア層またはクッションにスペーサを取り付けるために、メカニカルファスナーを使用することもできる。
【0034】
シートの乗員面とほぼ平行なバリア層、クッションまたはほかの部品の部分では、スペーサは、好ましくは接着剤を用いずに、上記した機構(例えばステーキング、溶接、メカニカルファスナーなど)によって取り付けられる。シートの乗員面とほぼ垂直なバリア層、クッションまたはほかの部品の部分では、スペーサは、好ましくは接着剤、上記した機構またはこの両方によって取り付けられる。
【0035】
シートを暖房、冷房および/または換気するためのシステムは、複数のインサート、複数のエアムーバおよび/または複数のコントローラを備えうる。相手先商標製造製品(OEM)制度に対応するため、システムは、好ましくは、各インサートにエアムーバがあるように、シートクッションとバックレストクッションの各々についてインサートを有する。2つのエアムーバの動作を制御するために、1つのコントローラが使用されてもよい。別の実施形態では、各エアムーバに対して、各々のコントローラが使用される。更に、複数の熱電装置が使用されてもよい(例えば各インサートに対して1つ以上など)。アフターマーケット制度のために、システムは、好ましくは、シートクッションとバックレストクッションに対して1つのインサートを有する。このような実施形態では、1つのエアムーバと1つのコントローラが使用されうるが、1つのインサートと複数のエアムーバの使用も可能である。
【0036】
別の実施形態によれば、(例えば、接着剤などによって)スペーサ材の層に固定された1つのバリア層から形成され、インサートは、バリア層がスペーサ材の層の上を覆うようになる。このような実施形態では、インサートが適用されるクッションが、スペーサ材の層を収容するための嵌め込みまたは空洞を有することが好ましい。嵌め込みは、通常、嵌め込み内にバリア層を挿入する際に、嵌め込みを囲んでいるクッションの表面部分とほぼ面一に(例えば、1cm、0.5cm、0.2cm以内に)バリア層を配置するような深さを有する。嵌め込みは、クッションの製造(例えば、成型)時に形成されても、または、クッション材を切り取るかほかの方法で切削して形成されてもよい。バリア層が、更にクッションに固定され(例えば、接着封止、縫い取り、あるいはほかの方法で機械的に取り付けられ)てもよいことも一般に考えられる。例えば、バリア層は、スペーサ層を越えて延在する周辺端を有し、クッションの嵌め込み内にスペーサ層を挿入すると、この周辺端が、嵌め込みを囲んでいるクッション部分を覆うようになる。有利なことに、周辺端は、周辺端を、バリア層の、クッションの囲んでいる部分に封止するため、クッションの囲んでいる部分に接着される接着剤を有しうる。このような接着剤は、周辺端と同一の広がりを有する剥離材によって覆われており、嵌め込み内にスペーサ層を配置して、周辺端をクッションに接着する前に、剥離材を剥がすことができる。バリア層の周辺端をクッションに固定するために、縫い付けまたはメカニカルファスナーを単独で用いても、接着剤に加えて用いてもよい。別の実施形態では、各周辺を有するバリア層を有するスペーサは、クッションの成型または作製中にクッションに成形されうる。この態様では、クッションの嵌め込みまたは空洞は、インサートに一致するように形成される。バリア層がクッションをスペーサから分離していない実施形態では、クッションの上に空気不透性のコーティングまたはライニングを設けることが好ましいが、必須ではなく、クッションによる熱または冷気の吸収を低減させる。
【0037】
一実施形態では、シートを暖房および換気および/または冷房するために特に望ましいシステムは、ポリマー抵抗ヒーター、より詳細には、ポリマー皮膜抵抗ヒーターを組み込むことによって、本発明に従って形成される。このようなヒーターは、通常、基材を有し、基材には、基材の表面のかなりの部分またはその全体と同一の広がりを有する1つ以上の抵抗ポリマー層(例えばフィルム)を有するパネルまたは層が提供されている。このような抵抗性ポリマー層は、多くの場合、電流に対する抵抗に基づいて、材料を通って電流が流れると熱を発生させるポリマー材料(例えばポリマー厚膜材料)から形成される。これらの材料は、正の温度係数(PTC)材料、負の温度係数(NTC)材料、固定温度係数(constant temperature coefficient:CTC)材料、これらの組合せなどでありうる。これらの材料は、ポリマー材料中の金属(例えば銅、ニッケル、銀、これらの組合せ等)、炭素材料(例えばカーボンブラック)またはほかの導電材料などの材料による抵抗を有しうる。更に別の代替実施形態では、抵抗層は、これらの導体から、その全体、または実質的にその全体が形成されてもよい。基材は、さまざまな材料から形成され、これには、布帛、織物状材料、硬質材料、可撓性材料、これらの組合せなどが含まれうる。好ましい一実施形態では、基材は、ポリマーまたはプラスチックのフィルムの形をとり、これは、通常、ポリウレタン(例えば熱可塑性または熱硬化性のポリウレタン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、これらの組合せ等を含むか、あるいはこれから実質的にその全体が形成される。
【0038】
好ましくは、ポリマー抵抗ヒーターは、換気および/または冷却のシステムに関連して使用される場合には、通気性であるが、これは必須ではない。ヒーターは、空気の通過を可能にするための1つ以上の開口部(例えば貫通孔、スリット等)を備えうる。別の実施形態として、基材は、ヒーターを通って空気が流れるようにするために、布帛などの通気性材料から形成されうる。別の代替の実施形態として、あるいは上記に加えて、ヒーターは、不透性であってもよいが、気流を妨げないように配置されうる。
【0039】
一般に、このようなヒーターは、複数の層を有するように形成され、基板層と導電ポリマー層のほかに、追加のポリマー皮膜層、保護層(例えば、ガーゼ層、エラストマ材料またはほかの保護材料)、接着剤層、剥離層、これらの組合せなどを有しうる。図4は、記載のように、抵抗層52を有する1つの望ましい積層ヒーター50の断面を示している。好ましくは、抵抗層52は、材料全体に導電金属(例えば銀)が分散されているポリマー材料から形成されるが、これは必須ではない。更に、ヒーター50は、第1のポリマー皮膜層54と第2のポリマー皮膜56を有し、この一方または両方は基材と考えることができる。図に示すように、抵抗層52は、この第2のポリマー皮膜層に直接接触している。また、ヒーター50は、接着剤の層60も有し、抵抗層52が、接着剤層と、基材またはポリマー皮膜層54,56の1つ以上の間に配置または挟持される。更に、接着剤層60を剥離層62が覆っている。
【0040】
上記に加えて、これらのポリマーの導電ヒーターは、バスバー、電気コネクタ、および電気バスまたはワイヤも有しうる。代表的なヒーターでは、2つのバスバーが離間され、ポリマーの導電材料によって相互に電気的に連通している。2つ以上のバスバーの各々は、通常、電気コネクタに電気的に連通しており、このコネクタは、電気バスまたはワイヤを介してヒーターを電源に接続している。
【0041】
ヒーター、特にポリマー抵抗層を有するヒーターは、さまざまな方法に従って、さまざまな構成で、座席換気インサートと一体化することができる。ここに記載したいずれのインサートも、ポリマー抵抗層を有するヒーターと結合されることができる。例えば、図5〜8は、このようなヒーターが取り付けられた例示的な換気インサート70を示している。インサート70は、前層76(すなわちシートの席乗者に近くなるように構成された層)、後層78およびスペーサ層80を有する。当然、インサート70の層の数は増減してもよく、層76,78,80の各々が、複数の層またはサブレイヤを備えてもよい。
【0042】
一般に、ヒーター74は、1層以上の層として形成されており、これらの層76,78,80の1層以上またはその組合せに一体化されているか、これらの間に配置されているか、および/またはこれらに取り付けられている。ヒーターは、さまざまな取り付け部によってこれらの層に固定することができる。これには例えば、接着剤、留め具、機械式インターロック(層、ヒーターまたはこの両方と一体化されうる)、溶接部(例えば、高周波溶接、振動溶接、ヒートステーキング、これらの組合せ等から形成される溶接部)、メルトによる取り付け部または封止部(例えばインサートの一部か層および/またはヒーターの一部か層を、この一方または両方が、溶解して他方に付着するように溶解させることによって形成される取り付け部)、あるいはこれらの組合せなどがある。適切な接着剤には、使用される場合、アクリル、ウレタン、エポキシ、一液型、二液型、放射硬化、水分または空気硬化、オンデマンド硬化(cure-on-demand)の各接着剤、これらの組合せなどがある。
【0043】
一実施形態では、ヒーター層は、接着剤層を覆っている剥離層を有し、通常は、前層をスペーサ層、後層またはこの両方に取り付けた後に、剥離層を除去してから、接着剤層を換気インサートの層の1つに接触させて接着させる。別の実施形態では、ヒーター層は、前層、スペーサ層またはこの両方に取り付けられる前に、(例えば、接着剤による固定によって)前層またはスペーサ層に(通常は、ベルトラミネーション法または固定ラミネーション法で)積層される。ヒーター層が、接着剤をコーティングして加圧する工程により、前層、スペーサ層またはこの両方に取り付けられ(例えば付着される)てもよいと考えられる。
【0044】
例として、インサートは、前層、後層、および前層と後層の中のスペーサ層を有しうる。図5〜9では、ヒーター層74は、インサート70の前層76(例えば保護層またはバリア層の表面)の外面に取り付けられている。しかし、代替の実施形態として、ヒーター層が、前層の内面(例えば前層のバリア層の表面)、スペーサ材またはこの両方に取り付けられてもよい。ヒーター層が、インサートの前層の保護サブレイヤおよび/またはバリアサブレイヤ間に配置されても、および/またはこれらに取り付けられてもよいことも考えられる。ここで使用するように、保護層またはサブレイヤとは、インサートの少なくとも1つの層またはサブレイヤと、別の表面(例えばシートまたはインサートの表面)との間の摩擦を少なくとも部分的に低減させるように機能する任意の層を指すことが意図される。代表的な保護層の例として、線維層(例えばフリース、メッシュまたはガーゼの層)、エラストマの層等が挙げられるが、これらに限定されない。前層の1つ以上の層は、ヒーター層の基材として機能しうることも考えられる。
【0045】
本発明の暖房および換気インサートのために、柔軟性、低コスト、堅固な構成などの望ましい特性を提供するファンアセンブリと取り付け法を使用して、インサートに1つ以上のエアムーバ(例えばファン)を取り付けることが望ましいこともある。更に、耐久に適しており、自動車両のシートの組立を妨害しないファンアセンブリと取り付け法を提供することが特に望ましいことがある。
【0046】
典型的には、図13A〜13Cに示すように、エアムーバ100は、空気移動部材(ここではファン102として示し、このように参照する)と、ファン102を少なくとも部分的に、あるいは実質的に完全に取り囲んでいるハウジング104を有する。当然、ポンプ等のほかの空気移動部材を使用してもよい。バリア層(例えばバリアサブレイヤを含む前層または後層)、保護層、スペーサ材、これらの組合せ等のインサートの一部に、エアムーバ(特にエアムーバのハウジング)を取り付けるために、接着剤、1つ以上の機械的取り付け、インターフェレンスフィット、フック、ループファスナー、磁石、これらの組合せなどのさまざまな取り付け法を使用することができる。
【0047】
図13Aでは、エアムーバ100が、インサート114の層112、詳細には、前層または後層112の外面110に取り付けられている。好ましくは、エアムーバ100のハウジング104は、接着剤、1つ以上のメカニカルファスナーまたはこの両方によって表面に固定されている。図13Bでは、エアムーバ100が、インサート114の層110(詳細には前層または後層110)と、インサート114のスペーサ材の塊(詳細には層116)との間で、エアムーバ100のフランジ108(例えば周縁フランジ)のインターフェランスフィットによって、少なくとも部分的にインサート114に取り付けられている。当然、接着剤または追加のメカニカルファスナーが、エアムーバ100を層110,116の一方または両方に取り付けてもよい。図13Cでは、エアムーバ100が、インサート114のバリア層120とインサート114の保護層122間(その両方は、好ましくはインサート114の前層または後層のサブレイヤである)で、エアムーバ100のフランジ108(例えば周縁フランジ)のインターフェランスフィットによって、少なくとも部分的にインサート114に取り付けられている。当然、接着剤または追加のメカニカルファスナーが、エアムーバ100を層120,122の一方または両方に取り付けてもよい。
【0048】
インサートにエアムーバを取り付ける別の好ましい取り付け法として、エアムーバのハウジングが、コネクタ部材と、機械的に、あるいはそれ以外の方法で係合するように構成されてもよいと考えられる。一例として、図10は、エアムーバ130を示しており、ハウジング133の環状の壁132として示す係合部が、コネクタ部材136の環状の壁134として示す係合部と圧縮係合し、少なくとも図に示した実施形態では、これらの間に、インサートの層142(例えば前層または後層)の一部分140(例えば環状部分)を挟持する。図に示すように、コネクタ部材136の係合部134は、ハウジング133の係合部132より小さく(例えば、円周が小さい)、ハウジング133の部分132内に圧縮係合するが、この関係が逆であっても同様に機能する。
【0049】
圧縮係合のほかに、あるいはこれに加えて、ハウジングおよび/またはコネクタ部材の係合部分が、1つ以上の機械式インターロック機能を有していてもよい。図11では、部分150,152の一方が、ハウジング160をコネクタ部材162に隣接して配置すると、1つ以上の開口部158(例えば空洞)に延在するように構成された突出部156(例えば環状または半環状の突出部)を有し、これにより、この2つが連結される。図12では、1つ以上の突出部166は、ほぼフックの形状を有しており、ハウジング170をコネクタ部材172に隣接して配置すると、1つ以上の開口部168(例えば貫通孔)を通って延在するように設計されており、これにより、この2つが連結される。
【0050】
いずれの実施形態においても、エアムーバのハウジングまたはその部品は各種の材料から形成されてもよく、金属およびプラスチックが挙げられると一般に考えられるが、これらに限定されない。しかし、好ましい一実施形態では、エアムーバのハウジングの一部または実質的にそのすべては、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーン、これらの組合せなどのエラストマまたはゴム材料から形成される。
【0051】
図13を参照すると、ハウジング104の本体部分176(例えば環状の本体壁)の一部または実質的にその全体が、エラストマ材料から形成されうると考えられる。これに加えて、あるいは代替法として、ハウジングのフランジ部108(例えば外側に延びる環状のフランジ壁)の一部または実質的にその全体が、エラストマ材料から形成されてもよい。このようなエラストマ材料によって、本発明の換気および/または暖房システムを有するシートの組立または使用によって生じる圧縮力またはその他の力に対する耐性が上がり、有利である。
【0052】
一般に、1つのファンがインサートに取り付けられても、あるいは複数のファンがインサートに取り付けられて、ファンの大きさと構成が変えられてもよいと考えられる。好ましい一実施形態では、本発明の暖房および/または換気システムは、所定の位置でインサートと接続された1つまたは複数のファンを備え、インサートをシートに組み立てるときに、シート(例えば自動車のシート)のクッション(例えば発泡体クッション)の開口部(例えば空洞、貫通孔またはこれらの組合せ)内にこのファンが配置される。このような構成の例が、図8,9の自動車のシートバック180とインサート70、および図5〜9の自動車シートクッション182とインサート70に示されている。
【0053】
本発明の別の望ましい実施形態が図14に示されている。図から見てとれるように、システム200はシートクッション204を覆っているインサート202を有し、インサートがエアムーバと流体連通しているように示されている。暖房用に、複数(例えば2、3、4またはそれ以上)の加熱パッド205が、インサート202の前層206の上に配置され(例えば覆って)ている。
【0054】
加熱パッド205のそれぞれは、抵抗材料210によって相互接続された1つ以上の電気端子208を有しており、各端子は、エネルギー源に接続(例えば、車両のバッテリーに電気的に接続)されている。加熱パッド205は、各種のヒーターから選択することができるが、加熱パッド205は、本明細書に記載したような抵抗ポリマーヒーターとして形成されることが望ましいが、そうでなくてもよい。したがって、加熱パッド205は、接着剤、メカニカルファスナーなど、本明細書に記載した任意の方法によって、インサート202の前層206またはほかの部分に取り付けられうる。
【0055】
図に示すように、インサート202の前層206は、本明細書に記載のように、シートの表面とインサート202間の流体連通を促進するための複数の開口部214を備える。好ましくは、パッド205が、開口部214を通る気流をほとんど妨げないように、パッド205は、開口部214から離間されて前層206に配置されているが、これは必須というわけではない。
【0056】
また、図に示すように、バスまたはワイヤ220が、電流が流れることが可能なように、パッド205の端子208間に延在し、これらを接続しうる。好ましい実施態様では、バスまたはワイヤ220は、一方の端子208から他の端子に蛇行して延びている(例えば、端から端に移動する、ジグザグに移動するなど)。このように間接的に広げることで、インサートが伸びたり、端子208が互いに接近したり離れたりに対応できるようになる。バス220がインサートの残りの部分の外に配置されるか、インサートの層内で(例えば、前層、およびスペーサおよび/または後層間で)、少なくとも部分的に、一方の端子からもう一方の端子に延びていてもよいと考えられる。
【0057】
本発明の追加の態様または他の態様として、エアムーバのハウジングの一部分(例えばフランジ)が、エアムーバを支えるために、シートクッションに重なっていてもよいと考えられる。このような実施形態では、エアムーバが、スペーサ材に取り付けられても(例えば、接着剤で固定される)、インサートのスペーサ材と流体連通するように、その近くに配置されるだけでもよい。
【0058】
図15を参照すると、システム250は、シートクッション254の上に配置されたシートインサート252を有するように示される。システム250は、ファン260とハウジング262を有するエアムーバ258を有する。図に示すように、エアムーバハウジング262は、環状のフランジ266を有し、これは、エアムーバ258から外側に延び、エアムーバ258を支えるために、シートクッション254の一部と重なるように設計されている。特に図示した実施形態では、クッション254は、フランジ266を収容するために環状の空洞270を備える。
【0059】
インサート252は、スペーサ材278を収容するのに適した1つの主要開口部276を有するバッグ274を有する。図に示すように、バッグ274は前バリア層280と後バリア層282を画定しており、主要開口部276は、例えば、メルトによる封止、バックの折り畳み、接着剤による封着、縫い付け、これらの組合せ等によって、インサート252の隣接する一方の端が封止されている前層280はシートのトリム表面と流体連通するための複数の開口部(例えば孔または穿孔)を有しており、後層282はエアムーバ258と流体連通するための少なくとも1つの開口部290を有する。任意選択で、エアムーバ258、特にそのハウジング262が、(例えば、接着剤またはほかの方法によって)スペーサ材278に固定されてもよい。
【0060】
更に追加の実施形態または代替の実施形態として、図15A,15Bを参照すると、インサート294は、スペーサ材297の実質的に端296のみを、バリア層298で覆うことによって形成されてもよいと考えられる。図に示すように、バリア層298がスペーサ材297の端296に巻き付いているが、スペーサ材297の本体部分の相当の部分(例えば30%、50%、60%またはこれ以上)はバリア層で覆われていない。
【0061】
特段の断りのない限り、ここに記載した各種構造の寸法および外形は本発明を限定することを意図したものではなく、ほかの寸法または外形も可能である。1つの一体化された構造により、複数の構造構成要素が提供されうる。別の実施形態では、1つの一体化された構造が、独立した複数の構成要素に分けられうる。更に、本発明の特徴を、図示した実施形態のうちの1つのみにより記載した場合もあるが、任意の用途のために、このような特徴を別の実施形態のほかの特徴の1つ以上と組合せることができる。また、ここに記載した独自の構造の製造およびその操作も、本発明による方法を構成していることが、上記から理解されよう。本発明の好ましい実施形態を開示した。しかし、当業者は、本発明の教示に特定の変更例を取り入れることができることを理解するであろう。このため、本発明の真の範囲および内容を決定するには、添付の特許請求の範囲を検討すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一態様による例示的な着座システムの概略図。
【図2】本発明の一態様による例示的なインサートおよびシートクッションを示す図。
【図3】本発明の例示的な一方法による例示的なインサートの形成を示す図。
【図4】本発明の一態様に従って形成された例示的な積層ヒーターの一部の断面図。
【図5】本発明の一態様による例示的なインサートの斜視図。
【図6】本発明の一態様によりシートクッションに適用した、図5の例示的なインサートの断面図。
【図7】本発明の一態様によりシートクッションに適用した、図5の例示的なインサートの断面図である。
【図8】本発明の一態様による例示的なインサートの斜視図。
【図9】本発明の一態様によりシートのバックレストクッションに適用した、図8の例示的なインサートの断面図。
【図10】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図11】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図12】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図13A】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図13B】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図13C】本発明による、エアムーバをインサートに取り付けるための例示的な取り付け法の断面図。
【図14】本発明の一態様による例示的なシート快適システムの斜視切開図。
【図15】本発明の一態様による例示的なシート快適システムの斜視切開図。
【図15A】本発明によるシート快適システムの更に別の選択肢を示す図。
【図15B】本発明によるシート快適システムの更に別の選択肢を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックレストクッションを有し、これらの少なくとも一方が換気されており、前記換気された部品のそれぞれは、前記シートの乗員の接触面において通気性のトリム面を有する乗物シートと、
前記換気された部品のそれぞれのトリム面の下に配置されたインサートであって、
i.前記インサート内で空間を形成しているスペーサ材と、
ii.少なくとも1つの封止端とを有するインサートと、
前記インサートに取り付けられ、前記スペーサのサブレイヤの前記空間と流体連通しているエアムーバとを有し、
前記エアムーバは前記シートクッションまたは前記バックレストクッションにある開口部に収容されている着座システム。
【請求項2】
i.前記エアムーバが、接着剤、1つ以上のメカニカルファスナーまたはこの両方によって前記インサートの外面に取り付けられている、
ii.前記エアムーバが、前記エアムーバを前記インサートに取り付けるのを補助するために前記インサートの層間に配置されたフランジを有する、
ii.前記エアムーバが、前記エアムーバを前記インサートに取り付けるのを補助するために前記インサートの層と前記スペーサ材との間に配置されたフランジを有する、
iv.前記インサートの層が、前記エアムーバを前記インサートに取り付けるのを補助するために、コネクタ部材と前記エアムーバとの間に挟持されている、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記インサートが、前記シートの前記クッションの後方から前記エアムーバに延在している拡張部を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記エアムーバと通信する制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、温度センサが、1つ以上の閾値レベルを上回るか、または下回る温度を検知すると、前記エアムーバおよび前記ヒーターのサブレイヤに対して、出力レベルを変更させる命令によってプログラムされており、複数の貫通孔が、前記インサートの前面を通って延在しており、前記貫通孔は、前記インサートの一方の側から他方の側に向かって次第に大きくなっている請求項1、2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記インサートは、接着剤によってヒーターに積層されたバリア材を含む前層を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記インサートは、前記インサートの底面に配置された縫い目を有し、前記シートクッションまたは前記バックレストクッションは、前記縫い目を収容し、前記クッションに前記インサートを取り付けるのを補助するための溝を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
バリア材が、前記スペーサ材の周囲にインサート成型されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記インサートは前記スペーサ材を含むバッグから形成されており、前記バッグは1つの封止端で封止されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記バッグは前記1つの封止端で前記バッグ自体の上に折り畳まれている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エアムーバはエラストマ材料および/またはゴム材料から少なくとも一部が形成されたハウジングを有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの封止端は単一の封止端である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
離間して配置された複数のヒーターパッドが前記インサートの表面に配置されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記エアムーバのハウジングは前記フランジを有し、前記ハウジングはエラストマ材料および/またはゴム材料から少なくとも一部が形成されている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記インサートの上に配置されたヒーターをさらに有し、前記ヒーターはポリマー抵抗材料を有する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記抵抗材料は前記ポリマー材料全体に分散された導電金属を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ヒーターは接着剤層を有する、請求項14または15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2009−504296(P2009−504296A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526567(P2008−526567)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002246
【国際公開番号】WO2007/020526
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(504135893)べー.エー.テー. オートモーティブ システムズ アーゲー (10)
【Fターム(参考)】