説明

自動車制御装置

【課題】 メインCPUが故障した場合でも盗難防止機能を実現できる自動車用制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】 インジェクションキーに内蔵されたトランスポンダから読み出されたキーデータ11とコード変換用ハイブリッド集積回路5が記憶するキーデータが比較され、両キーデータが一致した場合のみ、メインCPU6およびバックアップCPU7の双方の動作を許可するイモビ信号12が出力される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の制御装置に関し、特に、自動車の盗難予防機能を有する自動車の電子制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用の電子制御装置(ELectoronic Contorol Unit:以下ECUで表す)は通常2個の制御装置(CPU)で構成される。2個の制御装置の内の一方はメインCPUで燃料噴射制御、点火時期制御等のエンジン制御を行い、他方はこのメインCPUが故障した場合のフェールセーフ機能として簡易的にエンジン制御を行うバックアップCPUである。
【0003】図2に従来の盗難防止機能を有する自動車のシステム構成を、図3に図2に示す自動車のシステムに用いられるECUの構成を示した。
【0004】図2において、1はイグニッションキー(以下単にキー1で表す)、2はキーシリンダ、3はトランスポンダ、4はECU、5はコード変換用ハイブリッド集積回路(HIC)、6はメインCPUである。トランスポンダ3は集積回路等からなりキー1内に設置され、特定のキーデータを記憶する記憶機能を有し、キー1がキーシリンダ2に挿入されたときこの記憶されたキーデータが外部から読み取り可能になっている。なお、トランスポンダ3は特定のキーデータを記憶する記憶機能と外部からの読取りに応じて記憶したキーデータを出力する機能さえ有しておれば、必ずしもこの形に限られるものではない。
【0005】キー1がキーシリンダ2に挿入されると、トランスポンダ3に記憶されていた特定のキーデータを表す電気信号がECU4に伝達される。ECU4ではこの電気信号を受信すると、コード変換用ハイブリッド集積回路(HIC)5で16進コードに変換し、電気信号が正しければメインCPU6に伝えて自動車の操作を許すようにする。
【0006】この動作をさらに図3で詳しく説明する。図3で4はECU本体であり、5はHIC、6はメインCPU、7はバックアップCPU、8は出力切替えIC、9は入力インタフェース、10は出力インタフェース、11はキーデータ、12はイモビ信号、13および14は出力信号、15はインジェクタ駆動信号である。また、メインCPU6内に設置されたROM61、バックアップCPU7内に設置されたROM71は各CPUの動作プログラムを記憶するものである。
【0007】2個のCPU6および7にはそれぞれ車両各部から車両操作を開始するに際して参照されるべきセンサ信号、パルス信号、スイッチの状態を示す信号等が入力されている。
【0008】また、CPU6および7からはインジェクタ駆動用の出力信号13および14が出力される。出力切り替えIC8は通常はメインCPU6からの出力信号13を選択してインジェクタ駆動信号15として出力インタフェース10を介して図示しないエンジンに出力する。
【0009】HIC5はキー1に対して1対1で対応して作られており、運転者が正規のキー1を使用した場合にはトランスポンダ3に記憶されていたキーデータ11から変換されたコードと予めHIC5に書き込まれていたコードとが一致する。一致が確認されるとHIC5はメインCPU6に対してイモビ信号12として一致を確認したことを示す“コード一致”信号を送る。また、運転車が他車のキーなど異なったキーを使用した場合には、キーデータ11から変換されたコードと予めHIC5に書き込まれていたコードとが一致しないので、HIC5はメインCPU6に対してイモビ信号12としてコードが一致しなかったことを示す“コード不一致”信号を送る。
【0010】メインCPU6はイモビ信号12として“コード一致”信号が送られたときだけ正常処理を開始し、燃料噴射処理によりインジェクタ駆動用の信号(出力信号13)が出力され、この信号はメインCPU6が正常であるかぎり出力切替IC8で選択されインジェクタ駆動用信号15として出力される。
【0011】イモビ信号12として“コード不一致”信号が送られたときはメインCPU6は盗難防止機能により燃料噴射処理が回避され、インジェクタ駆動用信号15が出力されないため、エンジンへの燃料の供給が停止されるので、車を発進することはできない。これにより車の盗難を防止することができる。
【0012】しかし、メインCPU6が故障し、バックアップCPU7が用いられた場合は、従来のバックアップCPU7には簡便のため盗難防止処理機能が設けられていないため、HIC5がイモビ信号12として“コード不一致”信号を送っていてもバックアップCPU7には入力されず、センサ信号、パルス信号、スイッチの状態を示す信号等だけによってバックアップCPU7よりインジェクタ駆動用の信号(出力信号14)が出力され、この信号が出力切替IC8で選択されインジェクタ駆動用信号15として出力されてエンジンに燃料が供給され、盗難防止機能が働かなくなる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上述のごとく、従来の自動車制御装置では、バックアップCPUが盗難防止機能を有していないために、メインCPU6が故障しバックアップCPU7が用いられた場合は盗難防止が働かず、正常のキーで無くても車が発進してしまうという問題があった。
【0014】本発明はこの点を解決して、いかなる動作状況であっても、必ず車の盗難防止機能が働く制御装置を実現することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、内部にキーデータを記憶した記憶手段を有するインジェクションキーと、前記インジェクションキーによって接断されるインジェクションスイッチと、前記インジェクションスイッチの接続によって起動され、燃料の噴射制御等の自動車の走行制御を行うメイン制御手段と、前記メイン制御手段が故障した場合に前記メイン制御手段の制御動作を代替えして行うバックアップ制御手段とを有する自動車制御装置において、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記メイン制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記メイン制御手段の動作を許可する第1の動作許可手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記バックアップ制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記バックアップ制御手段の動作を許可する第2の動作許可手段とを具備することを特徴とする。
【0016】これにより、メイン制御手段もバックアップ制御手段もインジェクションキーから読み出されたキーデータと自己が記憶しているキーデータとが一致しない限り動作を開始しないので、いかなる動作状況であっても、車の盗難防止機能が働く制御装置を実現することができる。
【0017】また、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータを予め記憶しているキーデータと比較し、両キーデータが一致した場合に一致信号を出力する比較手段と、前記比較手段が前記一致信号を出力したとき、前記メイン制御手段および前記バックアップ制御手段の動作を許可する動作許可手段とを具備することを特徴とする。
【0018】これにより、比較手段がインジェクションキーから読み出されたキーデータと自己が記憶しているキーデータとが一致しない限りメイン制御手段にもバックアップ制御手段にも動作を許可しないので、いかなる動作状況であっても、車の盗難防止機能が働く制御装置を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、内部にキーデータを記憶した記憶手段を有するインジェクションキーと、前記インジェクションキーによって接断されるインジェクションスイッチと、前記インジェクションスイッチの接続によって起動され、燃料の噴射制御等の自動車の走行制御を行うメイン制御手段と、前記メイン制御手段が故障した場合に前記メイン制御手段の制御動作を代替えして行うバックアップ制御手段とを有する自動車制御装置において、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記メイン制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記メイン制御手段の動作を許可する第1の動作許可手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記バックアップ制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記バックアップ制御手段の動作を許可する第2の動作許可手段とを具備することを特徴としたものであり、これにより、前記メイン制御手段も前記バックアップ制御手段も前記インジェクションキーから読み出されたキーデータと自己が記憶しているキーデータとが一致しない限り動作を開始しないので、いかなる動作状況であっても、車の盗難防止機能が働く制御装置を実現することができる。
【0020】また、本発明の請求項2に記載の発明は、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータを予め記憶しているキーデータと比較し、両キーデータが一致した場合に一致信号を出力する比較手段と、前記比較手段が前記一致信号を出力したとき、前記メイン制御手段および前記バックアップ制御手段の動作を許可する動作許可手段とを具備することを特徴とするもので、これにより、前記比較手段が前記インジェクションキーから読み出されたキーデータと自己が記憶しているキーデータとが一致しない限り前記メイン制御手段にも前記バックアップ制御手段にも動作を許可しないので、いかなる動作状況であっても、車の盗難防止機能が働く制御装置を実現することができる。
【0021】以下、本発明にかかる自動車制御装置を添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0022】図1は、本発明の一実施形態におけるECU4本体のブロック図である。説明の簡単のため図2及び図3と同一の機能のブロックについては同一の番号をふるようにした。
【0023】図1で4はECU本体であり、5はコード変換用ハイブリッド集積回路(HIC)、6はメインCPU、7はバックアップCPU、8は出力切替えIC、9は入力インタフェース、10は出力インタフェース、11はキーデータ、12−1および12−2はイモビ信号、13および14は出力信号、15はインジェクタ駆動信号である。
【0024】メインCPU6はROM61を、バックアップCPU7はROM71を内蔵し、各CPUはこれらのROM61、ROM71に搭載されたプログラムに従って動作し、入力インタフェース9を介して入力される各種信号を処理して出力信号13または14を出力する。
【0025】出力切替えIC8は、メインCPU6が正常に働いている間はメインCPU6からの出力信号13を選択し、メインCPU6が異常であるとバックアップCPU7からの出力信号14を選択して、これらの出力信号の内のいずれかをインジェクタ駆動信号15として出力インタフェース10を介してECU本体4外部に出力する。
【0026】キーデータ12はHIC5で解析され、“コード一致”の場合と“コード不一致”の場合を明確に識別するような信号をイモビ信号12−1、12−2としてメインCPU6およびバックアップCPU7に入力する。イモビ信号12−1、12−2は例えば、“コード一致”の場合はハイ・ローの反転信号、“コード不一致”の場合はローの固定レベル信号とすれば、メインCPU6またはバックアップCPU7で明確に識別できる。
【0027】メインCPU6およびバックアップCPU7はそれぞれイモビ信号12−1と12−2を読み取って、“コード一致”または“コード不一致”の識別を行い、“コード一致”の場合は通常の動作を実行して燃料噴射処理等を行い、“コード不一致”の場合は燃料噴射処理等の実行を回避する。このため、メインCPU6が正常の場合も、メインCPU6が異常でバックアップCPU7からの出力14が出力切替えIC8で選択されている場合でも、“コード不一致”の場合はメインCPU6からもバックアップCPU7からもインジェクタ駆動用の信号が出力されないため、エンジンへの燃料の供給が停止され、車は発進出来なくなる。
【0028】上述の説明では、キーデータの解析をコード変換用ハイブリッド集積回路(HIC)5で実行するように説明したが、HIC5では単にキーデータをメインCPU6やバックアップCPU7用の信号に変換する作業だけを受け持ち、コードの一致、不一致の判定をメインCPU6やバックアップCPU7で行っても良い。この場合には、例えばメインCPU6やバックアップCPU7に内蔵のROM61あるいはROM71などCPU6または7から読み取れるメモリ内にキーデータの比較信号を記憶させておく必要がある。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明では、コード変換用ハイブリッド集積回路からのコード一致又はコード不一致を示す信号がメインCPUとバックアップCPUの両方に入力され、コード不一致の場合はメインCPUとバックアップCPUとも燃料噴射処理を実行しないようにした。したがって、メインCPUが故障であっても、盗難防止機能が働くことになり、確実に車の盗難を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における自動車用電子制御装置本体のブロック図
【図2】自動車盗難防止システムのブロック図
【図3】従来の自動車用電子制御装置本体のブロック図
【符号の説明】
1 イグニッションキー
2 キーシリンダ
3 トランスポンダ
4 自動車用電子制御装置(ECU)
5 コード変換用ハイブリッド集積回路(HIC)
6 メインCPU
7 バックアップCPU
8 出力切替えIC
9 入力インタフェース
10 出力インタフェース
61、71 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部にキーデータを記憶した記憶手段を有するインジェクションキーと、前記インジェクションキーによって接断されるインジェクションスイッチと、前記インジェクションスイッチの接続によって起動され、燃料の噴射制御等の自動車の走行制御を行うメイン制御手段と、前記メイン制御手段が故障した場合に前記メイン制御手段の制御動作を代替えして行うバックアップ制御手段とを有する自動車制御装置において、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記メイン制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記メイン制御手段の動作を許可する第1の動作許可手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータと前記バックアップ制御手段が記憶しているキーデータとを比較し、両キーデータが一致した場合のみ前記バックアップ制御手段の動作を許可する第2の動作許可手段とを具備することを特徴とする自動車制御装置。
【請求項2】 内部にキーデータを記憶した記憶手段を有するインジェクションキーと、前記インジェクションキーによって接断されるインジェクションスイッチと、前記インジェクションスイッチの接続によって起動され、燃料の噴射制御等の自動車の走行制御を行うメイン制御手段と、前記メイン制御手段が故障した場合に前記メイン制御手段の制御動作を代替えして行うバックアップ制御手段とを有する自動車制御装置において、前記インジェクションキーの記憶手段に記憶されたキーデータを読取るキーデータ読取り手段と、前記キーデータ読取り手段が読み取った前記キーデータを予め記憶しているキーデータと比較し、両キーデータが一致した場合に一致信号を出力する比較手段と、前記比較手段が前記一致信号を出力したとき、前記メイン制御手段および前記バックアップ制御手段の動作を許可する動作許可手段とを具備することを特徴とする自動車制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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