自動車前部の変形可能な構造
本発明は、自動車前部の変形可能な構造に関し、この自動車前部の構造は、車両本体(10)に接続された2つの相隔たる上側の側面部材(11)と、下側の面において、車両本体に固定されたクレードルと、クレードルより前方に位置し且つクレードルに接続された2つの下側の側面部材(12)とを備え、上側の側面部材の前部が、縦型の剛体要素(14)により、下側の側面部材の前部に接続されている。前方に衝撃を受けた場合に、各縦型の剛体要素が、凸面が車両の内側に向いた肘形(19)が形成されるように変形することが可能であり、各側面部材(11,12)が肘形(16,18)が形成されるように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材が、対応する上側の側面部材から離れることができ、各側面部材に加わる負荷がほぼ同等となり、構造の最大限の接触面が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に前方に衝撃を受けた場合に変形することができる、自動車の前部の変形可能な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、自動車前部の構造を示す。この構造は、車両本体10に接続された2つの相隔たる上側の側面部材1と、クレードル(図示しない)より前方且つ上側の側面部材の面よりも低い面に位置し、ヒンジ3によってクレードルに接続されている2つの下側の側面部材2とを備える。上側の側面部材1の前部が、それぞれ通常ハンガーとして知られる縦型の剛体要素4により、下側の側面部材2の前部に接続されている。
【0003】
このような構造では、図2の質量5で表されるように、前方に衝撃を受けた場合に、この質量5は前部の横部材あるいは横部材と衝突する車両の前部構造の一部を表わし、下側の側面部材2で形成されている構造の底部分は、図2に示すように、塑性ヒンジが形成されるため、上側の側面部材に向かって移動する。2つのヒンジ6及び7は、縦型の剛体要素4と上側の側面部材1及び下側の側面部材2それぞれとの間の接続部で形成され、第3ヒンジ8は縦型の剛体要素4近傍で、下側の側面部材2において形成される。これらの塑性ヒンジが形成されるため、縦型の剛体要素は矢印F1で示すように車両の内側に向かって旋回し、ヒンジ3周囲で回転することにより、下側の側面部材2が矢印F2の方向に回転する。前部構造の座面(衝撃の際に負荷の大部分に曝される面)の高さH1は、従って上側の側面部材の高さにほぼ対応する。ここで、座面面積が小さいほど、衝突した車両が衝突された車両に与える危険性が大きくなる。これは、上側の側面部材が完全につぶれないため、衝突された車両の構造がすぐに壊れ、衝突された車両の構造が車両の内側に入り込む危険性があり、これにより衝突された車両の乗員を傷つける可能性があるためである。
【0004】
従って、乗員をより良く守るために、上側及び下側の側面部材が一旦壊れる時に座面が最大限になるように、上側及び下側の側面部材の破壊を制御する必要がある。
【0005】
上側の側面部材が自動車の内部空間に侵入するのを制限するように構成された構造はすでに知られている。従って、特許文献、仏国特許第2809072号には、上側の側面部材の変形を制御する手段を備える前部構造が開示されており、この手段は、上側の側面部材に位置する始動領域を有して構成されている。同様に、特許文献、仏国特許第2857932号には、変形可能な側面部材が開示されている。いずれの場合にも、側面部材が車両内部に突き抜けるのを制限するために、側面部材は縦方向の衝撃により変形する。しかしながら、側面部材の前方に位置するつぶれる部分のみで、衝撃による側面部材の変形を低減することとなる。
【0006】
本発明の目的は、車両内部への侵入を制限するために、車両が互いにうろこ状に重なる範囲を制限することである。
【0007】
具体的には、本発明の目的は、衝撃による変形が、側面部材が壊れた後に上側及び下側の側面部材の間の負荷を均一に分布させることにより座面が最大限となるように制御される、自動車の前部構造を提供することである。
【0008】
このため、本発明は、自動車前部の変形可能な構造であって、車両本体に接続された2つの相隔たる上側の側面部材と、上側の側面部材が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードルと、クレードルより前方に位置し且つクレードルに接続された2つの下側の側面部材とを備え、上側の側面部材の前部が、それぞれ縦型の剛体要素により、下側の側面部材の前部に接続されており、車両が前方に衝撃を受けた場合に、各縦型の剛体要素が、凸面が車両の内側に面した肘形を形成するように変形することが可能であり、各側面部材が肘形を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材が、各側面部材に加わる負荷がほぼ同等となり且つ構造が最大限の座面を有するように、対応する上側の側面部材から離れることを特徴とする。
【0009】
従って、前方に衝撃を受けた場合、負荷が上側及び下側の側面部材全体に広がり、座面の高さが上側及び下側の側面部材の間の距離にほぼ対応する。この結果、側面部材が一旦破壊されると、座面が最大限となる。
【0010】
好ましくは、各縦型の剛体要素が、対応する上側及び下側の側面部材の間のほぼ中間において変形することができるよう構成されている。
【0011】
更に好ましくは、各側面部材が、縦型の剛体要素による接続部において、部材の後方に向かって変形することができるよう構成されている。
【0012】
利点としては、各縦型の剛体要素及び各側面部材に、前方に衝撃を受けた際に前記肘形を形成するように、塑性ヒンジを形成する部分が設けられていることである。塑性ヒンジとは、2つの部分に向けて所定の力が加わった際に、2つの部分の相対的な回転を引き起こし又は発生させることができる、全てのタイプの2つの部分から成る組立体又は接続体を意味する。
【0013】
前部構造が、長いオーバーハングを有する車両向けである場合、好ましくは、下側の側面部材の後部がヒンジによりクレードルに接続されている。
【0014】
前部構造が、短いオーバーハングを有する車両向けである場合、好ましくは、クレードルの後部と上側の側面部材の後部が、ヒンジにより車両本体に接続されている。
【0015】
利点としては、後者の場合、各縦型の剛体要素の上部が、車両の縦方向において、同要素の下部の寸法よりも大きい寸法を有することである。これは、短いオーバーハングを有する車両の場合に、前部構造が安定し、縮小化が更に難しいためである。このような構成により、前方に衝撃を受けた際に座面を最大限にすることが可能となり、ヒンジにより形成された始動領域の強度が増して、側面部材の破壊に対して頑強な機構が形成される。
【0016】
利点としては、下側の側面部材が、縦型の剛体要素に接続されている前部が後部よりも高くなるように傾いており、水平面に対する傾斜角度が、前方に衝撃を受けた場合に下側の側面部材がほぼ水平面に平行となるような角度であることである。衝撃の際に下側の側面部材をほぼ水平にすることで、構造がより安定し、衝撃前に下側の側面部材を持ち上げた傾斜位置に置くことで、自動車が地表において様々な障害物(カーブ、車庫への入り口、スピードバンプなど)の上を通りやすくなる。
【0017】
本発明を、添付の非限定的な図を参照し、ここに説明する。
【実施例】
【0018】
図3に示す本発明による前部構造は、車両本体10に接続された、2つの相隔たる上側の側面部材11と、上側の側面部材11が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードル(図3及び4に図示しない)と、クレードルより前方に位置し且つクレードルにヒンジ13で接続された2つの下側の側面部材12とを備え、ヒンジ13は車両によって塑性ヒンジ又は運動学的ヒンジであってよい。上側の側面部材11の前部は、それぞれ縦型の剛体要素14によって下側の側面部材12の前部に接続されている。
【0019】
本発明により、また図4に示すように、各縦型の剛体要素14は、塑性ヒンジを形成する部分19を備え、縦型の剛体要素は、凸面が車両の内側に面した肘形を形成するように変形することが可能である。同様に、上側の側面部材11及び下側の側面部材12はそれぞれ塑性ヒンジを形成する部分16及び18を備え、肘形を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材12が、前方への衝撃(図4)で構造が破壊されるまで、各側面部材11,12に加わる負荷Fa,Fbがほぼ同等となるように、対応する上側の側面部材11から離れるように移動する。
【0020】
図3に示す実施形態においては、各縦型の剛体要素14の塑性ヒンジを形成する部分19が、対応する上側の側面部材11と下側の側面部材12との間のほぼ中間に位置している。この例において、塑性ヒンジは、側面部材への接続部での公称断面と比較した、断面における変化、特に断面の局所的な縮小として与えられる。この縮小された断面は、車両の後方に面した剛体要素14の側面上に局在する。
【0021】
上側の側面部材11及び下側の側面部材12の塑性ヒンジを形成する部分16及び18は、それぞれ上側及び下側の側面部材と、縦型の剛体要素14との接続部の後方に位置している。
【0022】
この実施例では、塑性ヒンジを形成する下側の側面部材12の部分18は肘形であり、この凸面は上側の側面部材11から外方に向いている。
【0023】
側面部材の形状を局所的に修正することで得た、上側の側面部材の塑性ヒンジを形成している部分16の実施例を、図5〜7に示す。図5においては、部分16は側面部材11の横方向に走り、対応する下側の側面部材12に対向する溝16aである。図6では、この部分は側面部材11全体を横方向に通る、三角形の断面を有する孔16bによって形成されている。図7においては、この部分は断面の縮小16cにより、下側の側面部材に対向している側面部材の面に形成されている。このような塑性ヒンジは、また物質の変化によって、あるいは他の全ての好適な手段によっても生じることができる。
【0024】
前方への衝撃に対し図3に示す構造がどう機能するかを図4に示す。質量15が本発明による構造に衝突すると、縦型の剛体要素14はほぼその中央において車両の内側に向かって折れる。衝撃の影響で、塑性ヒンジ16及び18が各上側及び下側の側面部材上に形成され、当該部位から折れて側面部材が離れる。この結果、質量15の負荷が加わる座面の高さH2が下側の側面部材12と上側の側面部材11との間の高さにほぼ等しくなる。塑性ヒンジを形成する種々の部分は、上側の側面部材11及び下側の側面部材12に加わる負荷Fa及びFbが、側面部材が破壊されるまでほぼ等しいままであるように、位置決めされる。
【0025】
長いオーバーハングを有する自動車向けの前部構造の、1つの具体的な実施形態を、図8及び9を参照して説明する。これらの図では、車両内部が点線Cで表される車両本体により区切られている。2つの上側の側面部材21は、それぞれ縦型の剛体要素24により、ヒンジ23で下側の側面部材が接続しているクレードル20の前方に位置する、2つの下側の側面部材22に接続されている。
【0026】
クレードル20が取り囲む形のクレードルである場合、このヒンジ23は、例えば物質の変化によって形成された塑性ヒンジである。
クレードル20が下側の側面部材22に向かって開いているU型のクレードルである場合、このヒンジ23は運動学的に接続するヒンジである。
いずれの場合も、下側の側面部材22は前部が持ち上がるように傾斜している。
【0027】
縦型の剛体要素24は、ほぼその中間に断面の縮小部分29を有し、各側面部材21,22は、図3〜7を参照して本明細書に記載したタイプの変形可能な部分26,28を備えている。
従って、図9の矢印25によって表される前方への衝撃の際に、縦型の剛体要素24は上側及び下側部分の回転によって、塑性ヒンジ26,28及び29の効力によりその中央で折れて、側面部材22の前方がヒンジ23周囲の回転(矢印F4)により下がる(矢印F3)。この結果、下側の側面部材22が水平となり、構造の安定性が高まる。
【0028】
短いオーバーハングを有する自動車向けの前部構造の別の具体的な実施形態を、図10及び11を参照してここに説明する。これらの図においては、車両内部は点線Cに表される車両本体により区切られている。2つの上側の側面部材31は、それぞれ縦型の剛体要素34によって、下側の側面部材が接続されているクレードル30の前方に位置する2つの下側の側面部材32に接続されている。クレードル30が、取り囲む形状のクレードルであるか、又はU型クレードルであるかに関わらず、クレードル30の後部は塑性ヒンジ33によって本体に接続されている。
【0029】
前述したのと同様に、下側の側面部材32はその前部が持ち上がるように傾斜している。
塑性ヒンジ37は、また上側の側面部材31が車両本体Cに接続される場所にも設けられている。
【0030】
縦型の剛体要素34は、ほぼその中間に断面の縮小部分39を有し、各側面部材31,32は、図3〜7を参照して本明細書に記載したタイプの変形可能な部分36,38を備えている。加えて、縦型の剛体要素34の上部が、車両の縦方向における、同要素の下部の寸法L2よりも大きい寸法L1を有する。この縦型の剛体要素34の非対称性により、上側及び下側の側面部材との接続領域における塑性ヒンジ36及び38の形成が促進される。
【0031】
従って、図11に示す矢印35で表される前方への衝撃の際に、縦型の剛体要素34はその上側及び下側部分の、一方が他方周囲を回る回転によって、塑性ヒンジ36,38及び39の効力によりその中央で折れて、一方では、下側の側面部材32及びクレードル30が、ヒンジ33周囲を回転する(矢印F6)ことによって下がり(矢印F5)、他方では、上側の側面部材31が、ヒンジ37周囲の回転(矢印F8)により上がる(矢印F7)。この結果、下側の側面部材32が水平となる。
【0032】
当然ながら、本明細書に記載した塑性ヒンジを形成する部分の様々な実施形態、すなわち断面の変化、物質の変化、貫通孔、スロット、又は肘形、あるいはここに説明しない他の方法も、等しい優先順位で、個別にあるいは各ヒンジが形成されるように組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術の自動車前部の構造の衝突前における概略側面図である。
【図2】従来技術の自動車前部の構造の衝突後における概略側面図である。
【図3】本発明による自動車前部の構造の衝突前における概略側面図である。
【図4】本発明による自動車前部の構造の衝突後における概略側面図である。
【図5】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図6】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図7】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図8】本発明による、長いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突前における概略側面図である。
【図9】本発明による、長いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突後における概略側面図である。
【図10】本発明による、短いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突前における概略側面図である。
【図11】本発明による、短いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突後における概略側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に前方に衝撃を受けた場合に変形することができる、自動車の前部の変形可能な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、自動車前部の構造を示す。この構造は、車両本体10に接続された2つの相隔たる上側の側面部材1と、クレードル(図示しない)より前方且つ上側の側面部材の面よりも低い面に位置し、ヒンジ3によってクレードルに接続されている2つの下側の側面部材2とを備える。上側の側面部材1の前部が、それぞれ通常ハンガーとして知られる縦型の剛体要素4により、下側の側面部材2の前部に接続されている。
【0003】
このような構造では、図2の質量5で表されるように、前方に衝撃を受けた場合に、この質量5は前部の横部材あるいは横部材と衝突する車両の前部構造の一部を表わし、下側の側面部材2で形成されている構造の底部分は、図2に示すように、塑性ヒンジが形成されるため、上側の側面部材に向かって移動する。2つのヒンジ6及び7は、縦型の剛体要素4と上側の側面部材1及び下側の側面部材2それぞれとの間の接続部で形成され、第3ヒンジ8は縦型の剛体要素4近傍で、下側の側面部材2において形成される。これらの塑性ヒンジが形成されるため、縦型の剛体要素は矢印F1で示すように車両の内側に向かって旋回し、ヒンジ3周囲で回転することにより、下側の側面部材2が矢印F2の方向に回転する。前部構造の座面(衝撃の際に負荷の大部分に曝される面)の高さH1は、従って上側の側面部材の高さにほぼ対応する。ここで、座面面積が小さいほど、衝突した車両が衝突された車両に与える危険性が大きくなる。これは、上側の側面部材が完全につぶれないため、衝突された車両の構造がすぐに壊れ、衝突された車両の構造が車両の内側に入り込む危険性があり、これにより衝突された車両の乗員を傷つける可能性があるためである。
【0004】
従って、乗員をより良く守るために、上側及び下側の側面部材が一旦壊れる時に座面が最大限になるように、上側及び下側の側面部材の破壊を制御する必要がある。
【0005】
上側の側面部材が自動車の内部空間に侵入するのを制限するように構成された構造はすでに知られている。従って、特許文献、仏国特許第2809072号には、上側の側面部材の変形を制御する手段を備える前部構造が開示されており、この手段は、上側の側面部材に位置する始動領域を有して構成されている。同様に、特許文献、仏国特許第2857932号には、変形可能な側面部材が開示されている。いずれの場合にも、側面部材が車両内部に突き抜けるのを制限するために、側面部材は縦方向の衝撃により変形する。しかしながら、側面部材の前方に位置するつぶれる部分のみで、衝撃による側面部材の変形を低減することとなる。
【0006】
本発明の目的は、車両内部への侵入を制限するために、車両が互いにうろこ状に重なる範囲を制限することである。
【0007】
具体的には、本発明の目的は、衝撃による変形が、側面部材が壊れた後に上側及び下側の側面部材の間の負荷を均一に分布させることにより座面が最大限となるように制御される、自動車の前部構造を提供することである。
【0008】
このため、本発明は、自動車前部の変形可能な構造であって、車両本体に接続された2つの相隔たる上側の側面部材と、上側の側面部材が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードルと、クレードルより前方に位置し且つクレードルに接続された2つの下側の側面部材とを備え、上側の側面部材の前部が、それぞれ縦型の剛体要素により、下側の側面部材の前部に接続されており、車両が前方に衝撃を受けた場合に、各縦型の剛体要素が、凸面が車両の内側に面した肘形を形成するように変形することが可能であり、各側面部材が肘形を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材が、各側面部材に加わる負荷がほぼ同等となり且つ構造が最大限の座面を有するように、対応する上側の側面部材から離れることを特徴とする。
【0009】
従って、前方に衝撃を受けた場合、負荷が上側及び下側の側面部材全体に広がり、座面の高さが上側及び下側の側面部材の間の距離にほぼ対応する。この結果、側面部材が一旦破壊されると、座面が最大限となる。
【0010】
好ましくは、各縦型の剛体要素が、対応する上側及び下側の側面部材の間のほぼ中間において変形することができるよう構成されている。
【0011】
更に好ましくは、各側面部材が、縦型の剛体要素による接続部において、部材の後方に向かって変形することができるよう構成されている。
【0012】
利点としては、各縦型の剛体要素及び各側面部材に、前方に衝撃を受けた際に前記肘形を形成するように、塑性ヒンジを形成する部分が設けられていることである。塑性ヒンジとは、2つの部分に向けて所定の力が加わった際に、2つの部分の相対的な回転を引き起こし又は発生させることができる、全てのタイプの2つの部分から成る組立体又は接続体を意味する。
【0013】
前部構造が、長いオーバーハングを有する車両向けである場合、好ましくは、下側の側面部材の後部がヒンジによりクレードルに接続されている。
【0014】
前部構造が、短いオーバーハングを有する車両向けである場合、好ましくは、クレードルの後部と上側の側面部材の後部が、ヒンジにより車両本体に接続されている。
【0015】
利点としては、後者の場合、各縦型の剛体要素の上部が、車両の縦方向において、同要素の下部の寸法よりも大きい寸法を有することである。これは、短いオーバーハングを有する車両の場合に、前部構造が安定し、縮小化が更に難しいためである。このような構成により、前方に衝撃を受けた際に座面を最大限にすることが可能となり、ヒンジにより形成された始動領域の強度が増して、側面部材の破壊に対して頑強な機構が形成される。
【0016】
利点としては、下側の側面部材が、縦型の剛体要素に接続されている前部が後部よりも高くなるように傾いており、水平面に対する傾斜角度が、前方に衝撃を受けた場合に下側の側面部材がほぼ水平面に平行となるような角度であることである。衝撃の際に下側の側面部材をほぼ水平にすることで、構造がより安定し、衝撃前に下側の側面部材を持ち上げた傾斜位置に置くことで、自動車が地表において様々な障害物(カーブ、車庫への入り口、スピードバンプなど)の上を通りやすくなる。
【0017】
本発明を、添付の非限定的な図を参照し、ここに説明する。
【実施例】
【0018】
図3に示す本発明による前部構造は、車両本体10に接続された、2つの相隔たる上側の側面部材11と、上側の側面部材11が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードル(図3及び4に図示しない)と、クレードルより前方に位置し且つクレードルにヒンジ13で接続された2つの下側の側面部材12とを備え、ヒンジ13は車両によって塑性ヒンジ又は運動学的ヒンジであってよい。上側の側面部材11の前部は、それぞれ縦型の剛体要素14によって下側の側面部材12の前部に接続されている。
【0019】
本発明により、また図4に示すように、各縦型の剛体要素14は、塑性ヒンジを形成する部分19を備え、縦型の剛体要素は、凸面が車両の内側に面した肘形を形成するように変形することが可能である。同様に、上側の側面部材11及び下側の側面部材12はそれぞれ塑性ヒンジを形成する部分16及び18を備え、肘形を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材12が、前方への衝撃(図4)で構造が破壊されるまで、各側面部材11,12に加わる負荷Fa,Fbがほぼ同等となるように、対応する上側の側面部材11から離れるように移動する。
【0020】
図3に示す実施形態においては、各縦型の剛体要素14の塑性ヒンジを形成する部分19が、対応する上側の側面部材11と下側の側面部材12との間のほぼ中間に位置している。この例において、塑性ヒンジは、側面部材への接続部での公称断面と比較した、断面における変化、特に断面の局所的な縮小として与えられる。この縮小された断面は、車両の後方に面した剛体要素14の側面上に局在する。
【0021】
上側の側面部材11及び下側の側面部材12の塑性ヒンジを形成する部分16及び18は、それぞれ上側及び下側の側面部材と、縦型の剛体要素14との接続部の後方に位置している。
【0022】
この実施例では、塑性ヒンジを形成する下側の側面部材12の部分18は肘形であり、この凸面は上側の側面部材11から外方に向いている。
【0023】
側面部材の形状を局所的に修正することで得た、上側の側面部材の塑性ヒンジを形成している部分16の実施例を、図5〜7に示す。図5においては、部分16は側面部材11の横方向に走り、対応する下側の側面部材12に対向する溝16aである。図6では、この部分は側面部材11全体を横方向に通る、三角形の断面を有する孔16bによって形成されている。図7においては、この部分は断面の縮小16cにより、下側の側面部材に対向している側面部材の面に形成されている。このような塑性ヒンジは、また物質の変化によって、あるいは他の全ての好適な手段によっても生じることができる。
【0024】
前方への衝撃に対し図3に示す構造がどう機能するかを図4に示す。質量15が本発明による構造に衝突すると、縦型の剛体要素14はほぼその中央において車両の内側に向かって折れる。衝撃の影響で、塑性ヒンジ16及び18が各上側及び下側の側面部材上に形成され、当該部位から折れて側面部材が離れる。この結果、質量15の負荷が加わる座面の高さH2が下側の側面部材12と上側の側面部材11との間の高さにほぼ等しくなる。塑性ヒンジを形成する種々の部分は、上側の側面部材11及び下側の側面部材12に加わる負荷Fa及びFbが、側面部材が破壊されるまでほぼ等しいままであるように、位置決めされる。
【0025】
長いオーバーハングを有する自動車向けの前部構造の、1つの具体的な実施形態を、図8及び9を参照して説明する。これらの図では、車両内部が点線Cで表される車両本体により区切られている。2つの上側の側面部材21は、それぞれ縦型の剛体要素24により、ヒンジ23で下側の側面部材が接続しているクレードル20の前方に位置する、2つの下側の側面部材22に接続されている。
【0026】
クレードル20が取り囲む形のクレードルである場合、このヒンジ23は、例えば物質の変化によって形成された塑性ヒンジである。
クレードル20が下側の側面部材22に向かって開いているU型のクレードルである場合、このヒンジ23は運動学的に接続するヒンジである。
いずれの場合も、下側の側面部材22は前部が持ち上がるように傾斜している。
【0027】
縦型の剛体要素24は、ほぼその中間に断面の縮小部分29を有し、各側面部材21,22は、図3〜7を参照して本明細書に記載したタイプの変形可能な部分26,28を備えている。
従って、図9の矢印25によって表される前方への衝撃の際に、縦型の剛体要素24は上側及び下側部分の回転によって、塑性ヒンジ26,28及び29の効力によりその中央で折れて、側面部材22の前方がヒンジ23周囲の回転(矢印F4)により下がる(矢印F3)。この結果、下側の側面部材22が水平となり、構造の安定性が高まる。
【0028】
短いオーバーハングを有する自動車向けの前部構造の別の具体的な実施形態を、図10及び11を参照してここに説明する。これらの図においては、車両内部は点線Cに表される車両本体により区切られている。2つの上側の側面部材31は、それぞれ縦型の剛体要素34によって、下側の側面部材が接続されているクレードル30の前方に位置する2つの下側の側面部材32に接続されている。クレードル30が、取り囲む形状のクレードルであるか、又はU型クレードルであるかに関わらず、クレードル30の後部は塑性ヒンジ33によって本体に接続されている。
【0029】
前述したのと同様に、下側の側面部材32はその前部が持ち上がるように傾斜している。
塑性ヒンジ37は、また上側の側面部材31が車両本体Cに接続される場所にも設けられている。
【0030】
縦型の剛体要素34は、ほぼその中間に断面の縮小部分39を有し、各側面部材31,32は、図3〜7を参照して本明細書に記載したタイプの変形可能な部分36,38を備えている。加えて、縦型の剛体要素34の上部が、車両の縦方向における、同要素の下部の寸法L2よりも大きい寸法L1を有する。この縦型の剛体要素34の非対称性により、上側及び下側の側面部材との接続領域における塑性ヒンジ36及び38の形成が促進される。
【0031】
従って、図11に示す矢印35で表される前方への衝撃の際に、縦型の剛体要素34はその上側及び下側部分の、一方が他方周囲を回る回転によって、塑性ヒンジ36,38及び39の効力によりその中央で折れて、一方では、下側の側面部材32及びクレードル30が、ヒンジ33周囲を回転する(矢印F6)ことによって下がり(矢印F5)、他方では、上側の側面部材31が、ヒンジ37周囲の回転(矢印F8)により上がる(矢印F7)。この結果、下側の側面部材32が水平となる。
【0032】
当然ながら、本明細書に記載した塑性ヒンジを形成する部分の様々な実施形態、すなわち断面の変化、物質の変化、貫通孔、スロット、又は肘形、あるいはここに説明しない他の方法も、等しい優先順位で、個別にあるいは各ヒンジが形成されるように組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術の自動車前部の構造の衝突前における概略側面図である。
【図2】従来技術の自動車前部の構造の衝突後における概略側面図である。
【図3】本発明による自動車前部の構造の衝突前における概略側面図である。
【図4】本発明による自動車前部の構造の衝突後における概略側面図である。
【図5】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図6】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図7】本発明による自動車前部の構造の一実施形態の概略側面図である。
【図8】本発明による、長いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突前における概略側面図である。
【図9】本発明による、長いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突後における概略側面図である。
【図10】本発明による、短いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突前における概略側面図である。
【図11】本発明による、短いオーバーハングを有する自動車向けの自動車前部の構造の一実施形態の衝突後における概略側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車前部の変形可能な構造であって、
車両本体(10)に接続された相隔たる2つの上側の側面部材(11,21,31)と、
上側の側面部材が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードルと、
クレードルより前方に位置し且つクレードルに接続された2つの下側の側面部材(12,22,32)とを備え、
上側の側面部材の前部が、それぞれ縦型の剛体要素(14,24,34)により、下側の側面部材の前部に接続されており、
自動車が前方に衝撃を受けた場合に、各縦型の剛体要素が、凸面が車両の内側に面した肘形(19,29,39)を形成するように変形することが可能であり、各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)が肘形(16,18; 26,28; 36,38)を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材が、各側面部材に加わる負荷(Fa,Fb)がほぼ同等となり且つ構造が最大限の座面を有するように、対応する上側の側面部材から離れることを特徴とする、自動車前部の構造。
【請求項2】
各縦型の剛体要素(14,24,34)が、対応する上側(11,21,31)及び下側(12,22,32)の側面部材の間のほぼ中間において変形することができる、請求項1に記載の自動車前部の構造。
【請求項3】
各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)が、縦型の剛体要素(14,24,34)による接続部において、部材の後方に向かって変形することができる、請求項1又は2に記載の自動車前部の構造。
【請求項4】
各縦型の剛体要素(14,24,34)及び各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)に、前方に衝撃を受けた際に前記肘形を形成するように、塑性ヒンジを形成する部分が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項5】
下側の側面部材(22)の後部が、ヒンジ(23)によりクレードル(20)に接続されている、長いオーバーハングを有する車両向けの構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項6】
クレードル(30)の後部と上側の側面部材(31)の後部とが、ヒンジ(33,37)により車両本体に接続されている、短いオーバーハングを有する車両向けの構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項7】
各縦型の剛体要素(34)の上部が、車両の縦方向において、同要素の下部の寸法(L2)よりも大きい寸法(L1)を有する、請求項6に記載の自動車前部の構造。
【請求項8】
塑性ヒンジを形成する部分が、断面の変化によって又は物質の変化によって、あるいは、貫通孔、又はスロット、又は肘形、あるいは上記の組み合わせで形成されている、請求項4〜7のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項9】
下側の側面部材が、縦型の剛体要素に接続されている前部が後部よりも高くなるように傾いており、水平面に対する傾斜角度が、前方に衝撃を受けた場合に下側の側面部材がほぼ水平面に平行となるような角度である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項1】
自動車前部の変形可能な構造であって、
車両本体(10)に接続された相隔たる2つの上側の側面部材(11,21,31)と、
上側の側面部材が接続された面よりも低い面において、車両本体に接続されたクレードルと、
クレードルより前方に位置し且つクレードルに接続された2つの下側の側面部材(12,22,32)とを備え、
上側の側面部材の前部が、それぞれ縦型の剛体要素(14,24,34)により、下側の側面部材の前部に接続されており、
自動車が前方に衝撃を受けた場合に、各縦型の剛体要素が、凸面が車両の内側に面した肘形(19,29,39)を形成するように変形することが可能であり、各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)が肘形(16,18; 26,28; 36,38)を形成するように変形することが可能であり、これにより各下側の側面部材が、各側面部材に加わる負荷(Fa,Fb)がほぼ同等となり且つ構造が最大限の座面を有するように、対応する上側の側面部材から離れることを特徴とする、自動車前部の構造。
【請求項2】
各縦型の剛体要素(14,24,34)が、対応する上側(11,21,31)及び下側(12,22,32)の側面部材の間のほぼ中間において変形することができる、請求項1に記載の自動車前部の構造。
【請求項3】
各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)が、縦型の剛体要素(14,24,34)による接続部において、部材の後方に向かって変形することができる、請求項1又は2に記載の自動車前部の構造。
【請求項4】
各縦型の剛体要素(14,24,34)及び各側面部材(11,12; 21,22; 31,32)に、前方に衝撃を受けた際に前記肘形を形成するように、塑性ヒンジを形成する部分が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項5】
下側の側面部材(22)の後部が、ヒンジ(23)によりクレードル(20)に接続されている、長いオーバーハングを有する車両向けの構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項6】
クレードル(30)の後部と上側の側面部材(31)の後部とが、ヒンジ(33,37)により車両本体に接続されている、短いオーバーハングを有する車両向けの構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項7】
各縦型の剛体要素(34)の上部が、車両の縦方向において、同要素の下部の寸法(L2)よりも大きい寸法(L1)を有する、請求項6に記載の自動車前部の構造。
【請求項8】
塑性ヒンジを形成する部分が、断面の変化によって又は物質の変化によって、あるいは、貫通孔、又はスロット、又は肘形、あるいは上記の組み合わせで形成されている、請求項4〜7のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【請求項9】
下側の側面部材が、縦型の剛体要素に接続されている前部が後部よりも高くなるように傾いており、水平面に対する傾斜角度が、前方に衝撃を受けた場合に下側の側面部材がほぼ水平面に平行となるような角度である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車前部の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−516620(P2009−516620A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541795(P2008−541795)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051175
【国際公開番号】WO2007/060355
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051175
【国際公開番号】WO2007/060355
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]