説明

自動車反転装置

【課題】 自動車を反転させるときや解体作業中に自動車が不用意に転倒するのを防止し、回収すべき部品の破損を防止することができるとともに作業上の安全性を向上させることのできる自動車反転装置を提供する。
【解決手段】 自動車の底を受けるべく延出した底用受部材と、底用受部材に対して交差方向に延出した側部用受部材とを備え、前記底用受部材及び側部用受部材は、該底用受部材の延出方向と直交し、且つ、該側部用受部材の延出方向と直交する方向に延びる軸線周りで底用受部材を回転させつつ側部用受部材を回転させることで、底用受部材が自動車の底を受けた状態から側部用受部材が自動車の側部を受けた状態に切り換るように構成された自動車反転装置において、側部用受部材の自動車の側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄された自動車(以下、単に自動車という)を解体するに際し、自動車を反転させるための自動車反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の解体を行うに際し、フォークリフトで自動車を所定高さまで持ち上げたり反転させたりした上で、自動車の下部にある部品(例えば、サスペンション等の足回りの部品や、排気系の部品、燃料タンク等の燃料系の部品等)を取り外すようにしていたが、自動車を反転させるに際して回収すべき部品(リサイクル可能な部品)が破損する虞がある上に、フォークリフトの操作に熟練を要するといった問題があった。
【0003】
そこで、回収すべき部品を破損させることなく、自動車の反転作業を容易に行うことのできる自動車反転装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる自動車反転装置は、自動車の底を受けるべく延出した底用受部材と、底用受部材に受けられた自動車の側部と対向するように、前記底用受部材に対して交差方向に延びる側部用受部材とを備えている。前記底用受部材及び側部用受部材は、底用受部材の延出方向と直交し、且つ、該側部用受部材の延出方向と直交する方向に延びる軸線周りで回転可能に設けられている。
【0005】
上記構成の自動車反転装置は、底用受部材を回転させつつ側部用受部材を前記底用受部材と同方向に回転させることで、底用受部材が自動車の底を受けた基本状態から側部用受部材が自動車の側部を受ける反転状態に切り換え、自動車の底を作業者と対面した状態にして該自動車の底にある回収すべき部品を容易に取り外せる状態にできるようになっている。
【特許文献1】特許第3454501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車には、セダン、ワンボックス、トラック等といった種々のタイプのものがあり、これらは、そのタイプによって外形は基より重心位置等もそれぞれ異なるものである。
【0007】
そのため、前記自動車反転装置で自動車を反転状態にするとき或いは自動車が反転状態になったときに、該自動車の外形や重心位置等によって、自動車が必要以上に転倒してしまう(転倒して自動車の底が上向きになってしまう)虞があり、作業中に危険が伴ったり、回収すべき部品を破損させてしまったりする虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、自動車を反転させるときや解体作業中に自動車が不用意に転倒するのを防止し、回収すべき部品に対する破損の防止、及び作業上の安全性の向上を図ることのできる自動車反転装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動車反転装置は、自動車の底を受けるべく延出した底用受部材と、該底用受部材に受けられた自動車の側部と対向するように、底用受部材に対して交差方向に延出した側部用受部材とを備え、前記底用受部材及び側部用受部材は、該底用受部材の延出方向と直交し、且つ、該側部用受部材の延出方向と直交する方向に延びる軸線周りで回転可能に設けられ、底用受部材を回転させつつ側部用受部材を底用受部材と同方向に回転させることで、底用受部材が自動車の底を受けた基本状態から側部用受部材が自動車の側部を受けた反転状態に切り換るように構成された自動車反転装置において、側部用受部材の自動車の側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記構成の自動車反転装置によれば、側部用受部材の自動車の側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材を備えているので、基本状態にある自動車に対応した位置にスライド部材をスライドさせた上で、基本状態から反転状態に切り換えると、側部用受部材の自動車の側部を受ける面から突出したスライド部材が反転状態にある自動車(例えば、側部、屋根、ボンネット等の何れかの部位)に当接する。そうすると、自動車が転倒する方向に突出したスライド部材が存在するため、反転状態にある自動車が転倒しようとする転倒モーメントに対し、スライド部材が対抗することになり、その自動車が不用意に転倒してしまうことを防止することができる。
【0011】
本発明の一態様として、前記スライド部材を側部用受部材の延出方向の複数箇所で位置決め可能に構成された位置決手段をさらに備えていることが好ましい。このようにすれば、スライド部材を自動車の形態やサイズに応じた位置で位置決め(固定)することができ、反転状態するとき或いは反転状態になったときに自動車の荷重の作用でスライド部材が不用意にスライドしてしまうことを防止することができる。
【0012】
この場合、前記位置決手段は、側部用受部材の延出方向に所定間隔をあけて該側部用受部材に対して直接的又は間接的に設けられた複数の凸部又は凹部と、スライド部材に連結されたフレーム部材と、スライド部材のスライド方向への移動が規制された状態で前記凸部又は凹部に対して嵌合可能にフレーム部材に取り付けられるロック部材とを備えていることが好ましい。このようにすれば、スライド部材のスライド方向への移動が規制された状態でフレーム部材に取り付けられたロック部材が凸部又は凹部に嵌合することで、スライド部材のスライド(移動)が確実に規制される。これにより、スライド部材と反転状態にある自動車とが当接したときに、スライド部材をスライドさせる(押す)力がかかってもロック部材と凸部又は凹部との嵌合で対抗することができる。
【0013】
そして、本発明の他態様として、前記スライド部材は、底用受部材側ほど側部用受部材側に先下りに傾斜して楔状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、先下りに傾斜することで形成された傾斜面に反転状態にある自動車が当接するので、自動車が転倒しようとする転倒モーメントに対抗する反対向きのモーメントを確実に作用させることができ、自動車の転倒をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る自動車反転装置によれば、自動車を反転させるときや解体作業中に自動車が不用意に転倒するのを防止し、回収すべき部品に対する破損の防止、及び作業上の安全性の向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る自動車反転装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態に係る自動車反転装置は、図1、図2(a)及び図2(b)に示す如く、自動車Cの底を受けるべく延出した底用受部材10,10と、該底用受部材10,10に受けられた自動車Cの側部と対向するように、前記底用受部材10,10に対して交差方向に延出した側部用受部材11,11とを備えている。
【0017】
前記底用受部材10,10及び側部用受部材11,11は、底用受部材10,10の延出方向と直交し、且つ側部用受部材11,11の延出方向と直交する方向に延びる軸線CL周りで回転可能に設けられている。そして、該自動車反転装置1は、底用受部材10,10を軸線CL周りで回転させつつ側部用受部材11,11を軸線CL周りで底用受部材10,10と同方向に回転させることで、底用受部材10,10が自動車Cの底を受けた基本状態から側部用受部材11,11が自動車Cの側部を受けた反転状態に切り換るように構成されている。
【0018】
そして、該自動車反転装置1は、上述のように基本状態から反転状態に切り換わることを前提に、側部用受部材11,11の自動車Cの側部を受ける面(以下、側部受面という)110から突出し、且つ、側部用受部材11,11の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材12,12を備えている。本実施形態においては、前記スライド部材12,12を側部用受部材11,11の延出方向の複数箇所で位置決め可能に構成された位置決手段13,13をさらに備えている。また、本実施形態に係る自動車反転装置1は、上記構成に加え、基本状態及び反転状態の自動車を昇降させるためのリフト装置14を備えている。
【0019】
本実施形態に係る自動車反転装置1は、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11のそれぞれが外観角棒状に形成されている。これに伴って、底用受部材10,10は、自動車Cの底を安定して受けることができるように、前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つ(一対)設けられている。また、側部用受部材11,11も、自動車Cの側部を安定して受けることができるように、前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つ(一対)設けられている。本実施形態において、一対の側部用受部材11,11は、互いの先端部同士が前記軸線CLと同方向に延びる連結材112を介して連結されており、該連結材112とともに門型を呈している。
【0020】
そして、一対の底用受部材10,10は、一端(基端)側が回転中心になる(一端部に回転中心となる前記軸線CLが通る)ように設けられている。すなわち、底用受部材10,10は、該底用受部材10,10を支持するためのベース(本実施形態においては、後述するテーブル141)に一端部が枢支連結されている。一対の側部用受部材11,11は、一端(基端)側が回転中心になる(一端部に回転中心となる前記軸線CLが通る)ように設けられている。すなわち、側部用受部材11,11は、該側部用受部材11,11を支持するためのベース(本実施形態においては、前記テーブル141)に一端部が枢支連結されている。本実施形態では、側部用受部材11,11及び底用受部材10,10が同心で回転できるように共通のベース(テーブル141)に枢支連結されている。さらに言えば、側部用受部材11,11と底用受部材10,10とが相互に回転不能に一端側同士が間接的に連結され、共通の軸(後述する軸材16)を介して共通のベース(テーブル141)に枢支連結されている。
【0021】
そして、該自動車反転装置1は、底用受部材10,10と側部用受部材11,11とを回転させる油圧シリンダ(以下、傾動用シリンダという)152が設けられている。本実施形態おいては、上述の如く、側部用受部材11,11が前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つ設けられているため、傾動用シリンダ152もこれに対応して二つ設けられている。傾動用シリンダ152は、ロッドエンドが側部用受部材11,11に連結され、シリンダエンドが底用受部材10,10とは反対側に位置させて側部用受部材11,11を支持するためのベース(テーブル141)に連結されている。本実施形態に係る傾動用シリンダ152は、ロッドエンドが側部用受部材11,11の側部受面110とは反対側の面に設けられたブラケット(ロッドエンド用ブラケット)113,113に枢支連結され、シリンダエンドが側部用受部材11,11を支持するためのベース(テーブル141)に設けられたブラケット147,147に枢支連結されている。
【0022】
これにより、傾動用シリンダ152のロッドが伸長することで、側部用受部材11,11が起立状態になり、傾動用シリンダ152のロッドが縮むことで、側部用受部材11,11が横臥状態になるようになっている。本実施形態では、側部用受部材11,11と底用受部材10,10とが相互に回転不能に連結されているため、上述のように傾動用シリンダ152のロッドを伸縮することで底用受部材10,10も側部用受部材11,11と一緒に回転するようになっている。すなわち、前記傾動用シリンダ152のロッドが伸長することで、底用受部材10,10が横臥状態になり、傾動用シリンダ152のロッドが縮むことで、底用受部材10,10が起立状態になるようにもなっている。
【0023】
そして、各側部用受部材11,11には、スライド部材12,12を案内するためのガイドレール111,111が設けられている。本実施形態に係るガイドレール111,111は、丸棒で構成されており、側部用受部材11,11の側部受面110上に固定されている。これに伴い、スライド部材12,12は、側部用受部材11,11毎に設けられており、図3(a)に示す如く、それぞれ側部受面110上を摺接するスライド面120が形成されている。各スライド部材12,12は、スライド面120上に側部用受部材11,11の延出方向に延びるガイド溝121が形成されている。該ガイド溝121は、スライド面120が側部受面110に接触した状態で、ガイドレール111,111が完全に入り込んで該ガイドレール111,111の外周面が内周面に接触するように形成されている。これにより、スライド部材12,12は、一方向(側部用受部材11,11の延出方向)に案内されつつスライドできるようになっている。
【0024】
図1、図2(a)及び図2(b)に戻り、本実施形態に係るスライド部材12,12は、ブロック状(塊状)に形成されており、底用受部材10,10(側部用受部材11,11の基端)側ほど側部用受部材11,11(スライド面120)側に先下りに傾斜して楔状に形成されている。これにより、スライド部材12,12は、スライド面120の反対側に傾斜面が形成されている。
【0025】
前記位置決手段13,13は、側部用受部材11,11の延出方向に所定間隔をあけて該側部用受部材11,11に対して直接的又は間接的に設けられた複数の凹部130…と、スライド部材12,12に連結されたフレーム部材131と、前記凹部130…に対して嵌合可能に構成されるとともに、スライド部材12,12のスライド方向への移動が規制された状態でフレーム部材131に取り付けられるロック部材132とを備えている。なお、図2においては凹部130…を省略している。
【0026】
前記凹部130…は、側部用受部材11,11に対して間接的に設けられている。すなわち、図3(a)及び図3(b)に示す如く、凹部130…が長手方向に間隔をあけて複数形成された棒材133が、その軸線を側部用受部材11,11の延出方向に延びる方向に一致させるようにして側部用受部材11,11に取り付けられ、複数の凹部130…が側部用受部材11,11に間接的に設けられている。本実施形態に係る棒材133は、側部用受部材11,11の側部に対して隙間を形成して設けられている。すなわち、棒材133の両端部に固定部材134,134(本実施形態においてはブロック状の固定部材134,134)が連結されており、該固定部材134,134を介して棒材133を側部用受部材11,11に固定することで、側部用受部材11,11と棒材133との間に隙間が形成されている(図2参照)。
【0027】
各凹部130…は、棒材133の軸線方向と直交する方向に延びる溝で構成されている。該溝130…は、棒材133の中心側に向けて先狭まりに形成されており、軸線方向で対向する面がテーパー面になっている。
【0028】
前記フレーム部材131は、取付金具135を介してスライド部材12,12に連結されている。本実施形態に係るフレーム部材131は、スライド部材12,12に連結した状態で前記棒材133を挿通させる貫通した挿通部136と、該挿通部136に挿通した棒材133の凹部130…を外部に露呈させる開口部(採番しない)とが形成されている。本実施形態において、前記棒材133には丸棒が採用されており、これに伴って挿通部136は、棒材133の外周面が摺接可能な内周面(内径)に設定された丸穴に形成されている。そして、前記開口部は、挿通部136の穴中心と直交する方向に延びる溝で構成されている。
【0029】
本実施形態に係るロック部材132は、フレーム部材131に枢支連結されたアーム部132aと、該アーム部132aに連設されて前記凹部130…に嵌合可能に形成された嵌合部132bとを備えている。前記アーム部132aは、板状に形成されており、フレーム部材131の前記開口部に介装されるとともに、一端側が棒材133の軸線方向と平行(又は略平行)な軸線周りで回転可能にフレーム部材131に枢支連結されている。これにより、アーム部132aは一端側を支点にして開口部内で回転し、開口部から露呈する棒材133(凹部130…)に対して接離できるようになっている。なお、本実施形態に係るロック部材132は、フレーム部材131とアーム部132aの回転支点よりも一端側との間に付勢手段(コイルバネ)137が介装されており、常態において、アーム部132aの他端側が棒材133に接近した状態になるようになっている。
【0030】
前記嵌合部132bは、棒材133に形成された凹部130…に対応した形状に形成されており、アーム部132aの回転支点よりも他端側で棒材133と対向するようにアーム部132aに連設されている。これにより、アーム部132aの他端側が棒材133から離間するように、アーム部132aを回転させることで凹部130…から嵌合部132bが抜け出るようになっている。本実施形態では、棒材133に形成された凹部130…が奥側ほど狭まった溝で構成されているため、嵌合部132bはこの溝130の形状に対応するように、アーム部132aに沿って形成されるとともにアーム部132a側から先端に向かって先細りするように形成されている。このように凹部130…と嵌合部132bとを形成すれば、凹部130…に嵌合部132bを嵌合する際に棒材133の軸線方向で多少の位置ずれがあっても、テーパー面同士の接触で位置ずれを矯正しつつ凹部130…内と嵌合部132bとが完全に嵌合するようになっている。
【0031】
前記リフト装置14は、図4(a)及び図4(b)に示す如く、設置面上に配置されるプレート状のベース140と、平面視四角形状をなすテーブル141と、ベース140とテーブル141とを連結し、該テーブル141を昇降させる昇降手段142とを備えている。
【0032】
前記ベース140は、平面視四角形状に形成された板材で構成されている。本実施形態においては、前記底用受部材10及び側部用受部材11がテーブル141に取り付けられているため、リフト装置14のベース140が当該自動車反転装置1のベースとして機能する。これに伴い、基本状態から反転状態、或いは、反転状態から基本状態に切り換わるに際し、装置全体が転倒するのを防止すべく、リフト装置14のベース140は、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の回転トルク(転倒モーメント)に対抗できるように前記軸線CLの延びる方向(テーブル141の幅方向)と直交する方向の長さが設定されている。
【0033】
前記テーブル141は、平面視四角形状に形成されている。具体的には、該テーブル141は、板材を曲げ加工して形成したもので、平面視四角形状をなす天板(採番しない)と、該天板の各辺から垂下する壁部(採番しない)とで構成されている。本実施形態に係るテーブル141は、上述の如く、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11を支持するためのベースとして機能する他、反転状態になった自動車Cの側部を支持するようにもなっている。
【0034】
本実施形態において、該テーブル141は、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11に対するベースとなるため、図1に示す如く、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11を軸線CL周りで回転可能に支持すべく、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11が連結される軸材16の両端部を軸支するためのブラケット146,146が幅方向の両側端部に設けられている。
【0035】
一対のブラケット146,146は、それぞれテーブル141の幅方向と直交する長さ方向の一端から外側に延出するように形成され、互いに同心になるように、テーブル141の一端から延出した部分にテーブル141の幅方向に貫通した穴が穿設されるとともに、該穴にベアリング(図示しない)が嵌入されている。これに伴って、前記軸材16の両端部にはベアリング(図示しない)に挿入(軸支)される軸部(図示しない)が形成されている。
【0036】
そして、前記軸材16に対して底用受部材10,10及び側部用受部材11,11が前記軸線CL周りで回転不能に連結されている。これにより、軸材16が軸線CL周りで回転することで、上述の如く、前記底用受部材10,10及び側部用受部材11,11が軸線CL周りで回転するようになっている。
【0037】
本実施形態において、軸材16は、軸部間の断面形状が四角形状に形成されており、軸材16の軸線CL周りで回転不能としつつも該軸線CL方向にスライド可能に外嵌された外嵌部材160,160が設けられ、該外嵌部材160,160に対して前記底用受部材10,10が取り付けられている。これにより、外嵌部材160,160を軸線CL方向にスライドさせることで、一対の底用受部材10,10の間隔を処理対象となる自動車Cに合わせて変更可能になっている。
【0038】
そして、前記軸材16は、両端の軸部がブラケット146,146を貫通して外側に延出するように形成されており、各軸部に対し、底用受部材10,10と交差方向に延出するように側部用受部材11,11の一端部が回転不能に連結されている。このように、軸材16の両端部にある軸部に対し、一対の側部用受部材11,11が連結されることで、上述の如く、一対の側部用受部材11,11が一対の底用受部材10,10と相互に回転不能な状態で連結されることになる。また、一対の側部用受部材11,11が軸線CL周りで回転して横臥状態になったときに、側部用受部材11,11間(側部用受部材11,11と連結材とで包囲される領域内)にリフト装置14(テーブル141)が介在し、側部用受部材11,11の側部受面110とテーブル141(天板)の上面とが略面一な状態になるようになっている(図2(b)参照)。
【0039】
そして、本実施形態に係るテーブル141は、該テーブル141の幅方向と直交する長さ方向の他端部に前記テーブル141の幅方向(軸線CLの延びる方向)の両側に延出するブラケット(シリンダエンド用ブラケット)147,147が設けられており、該シリンダエンド用ブラケット147,147に対し、ロッドエンド用ブラケット113,113にロッドエンドが枢支連結された傾動用シリンダ152のシリンダエンドが枢支連結されている。
【0040】
本実施形態に係る昇降手段142は、図4(a)及び図4(b)に示す如く、前記ベース140に一端が枢支連結されるとともに、他端部にテーブル141の下面に沿って転動するローラRaの取り付けられた第一アーム143aと、第一アーム143aに対して交差状に枢支連結され、テーブル141の下面に一端が枢支連結されるとともに、他端部にベース140の上面に沿って転動するローラRbの取り付けられた第二アーム143bと、シリンダエンドがベース140に枢支連結されるとともにロッドエンドが第二アーム143bに対して直接的又は間接的に枢支連結された油圧シリンダ(以下、昇降シリンダという)144とを備えている。
【0041】
前記テーブル141の下面には、第一アーム143aのローラRaをその下面に沿って案内するためのレール145aが取り付けられ、ベース140の上面には、第二アーム143bのローラRbをその上面に沿って案内するためのレール145bが取り付けられている。各レール145a,145bは、ローラRa,Rbを介して上下で対向する案内面を備えており、面(テーブル141の下面、ベース140の上面)に沿った移動を許容しつつも上下方向の移動を規制するように構成されている。かかるレール145a,145bは、板材を断面コの字状に曲げ加工して形成したものや、C型鋼等を採用することができ、互いに対向する片が上下方向に位置するように固定されている。
【0042】
そして、本実施形態においては、昇降させるテーブル141が面状をなすため、前記第一アーム143a、及び第二アーム143bは、前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二組設けられており、テーブル141を幅方向に間隔をあけて支持しつつ昇降させるようになっている。二組の第一アーム143a及び第二アーム143bは、前記軸線CLの延びる方向の略中央を基準に鏡像配置されている。すなわち、各組の第二アーム143bが前記軸線CLの延びる方向の中央側に位置し、各第一アーム143aが第二アーム143bに対して前記軸線CLの延びる方向で外側に位置するように設けられている。
【0043】
本実施形態において、各組の第一アーム143a及び第二アーム143bが同期をとって傾動(回転)するように、各組の第二アーム143bは、前記軸線CLの延びる方向に延びる連結材149を介して連結され、また、各組の第一アーム143aも、第二アーム143bとの枢着位置よりもテーブル141側で該前記軸線CLの延びる方向に延びる連結材(図示しない)を介して連結されている。
【0044】
そして、前記昇降シリンダ144は、前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つ設けられており、第二アーム143b同士を連結した連結材149に対して間接的にロッドエンドが枢支連結され、シリンダエンドが第一アーム143aの一端の枢着位置側でベース140に枢支連結されている。
【0045】
より具体的には、前記連結材149には、ブラケット150が連設されており、該ブラケット150に回転自在な回転アーム151が枢支連結されている。回転アーム151は、一端部にローラRcが回転自在に取り付けられるとともに、基端部がブラケット150に枢支連結されており、第二アーム143bの一端側(昇降シリンダ144側)に横臥した状態から略真っ直ぐ起立した状態になる範囲で回転自在とされ、起立した状態で連結材149との干渉でその状態を維持するようになっている。
【0046】
そして、前記昇降シリンダ144のロッドエンドは、第一アーム143aと第二アーム143bとの枢支連結位置から第二アーム143bの一端側に変位した位置となる回転アーム151の中間位置(該回転アーム151の回転中心とローラRcの回転中心との間)に枢支連結されている。
【0047】
上記構成のリフト装置14は、昇降シリンダ144のロッドが縮んだ状態で、回転アーム151が横臥状態になり、昇降シリンダ144のロッドが延びると、まず、回転アーム151が起立状態になるように回転しつつ一端のローラRcがテーブル141の下面を押し上げるようになっている。そして、その押し上げが起因して、第一アーム143a及び第二アーム143bが連結支点を中心にして回転(傾動)し始め、回転アーム151が起立状態(回転が規制された状態)になると、昇降シリンダ144の押し作用が直接第二アーム143bに作用し、第一アーム143a及び第二アーム143bがさらに傾斜角度が大きくなるように傾動し、テーブル141を連続的に上昇させるようになっている。なお、上昇したテーブル141を下降させるときには、昇降シリンダ144のロッドが縮むことで、テーブル141を上昇させるときの動作と逆の動作になる。
【0048】
このように、回転アーム151を介して昇降シリンダ144で第二アーム143bを押し引きするようにすることで、テーブル141が最下に下降した状態で昇降シリンダ144及び第二アーム143b(第一アーム143a)を横臥した状態に近づけた状態にしつつもテーブル141の上昇時に昇降シリンダ144の押し作用を効率的に作用させることができるようになっている。これにより、リフト装置14全体の高さを抑えつつも確実な昇降を達成している。
【0049】
本実施形態に係る自動車反転装置1は、以上の構成からなり、次に、該自動車反転装置1の作動について説明する。
【0050】
まず、図5(a)に示す如く、底用受部材10,10上に自動車Cを載置し、該自動車Cの底を底用受部材10,10で受けた基本状態にする。この状態で、側部用受部材11,11が自動車Cの側部と対向した状態となる。その後、底用受部材10,10上に載置した自動車Cに対応させるようにスライド部材12,12をスライドさせる。なお、図には、二つのスライド部材12,12のそれぞれが自動車Cの高さ方向で異なる高さに配置されているが、自動車Cの車種や形状、サイズによって、自動車Cの車高方向における上部(自動車Cの屋根やボンネット、上部側部)に対応する位置に適宜スライドさせる。
【0051】
そして、スライド部材12,12の位置が決まると、位置決手段13,13のロック部材132(嵌合部132b)を凹部130…に嵌合し、スライド部材12,12の位置決めを行う(図3参照)。
【0052】
しかる後、図5(b)に示す如く、傾動用シリンダ152を作動させ、底用受部材10,10を回転させつつ側部用受部材11,11を回転させ、自動車Cの底を底用受部材10,10で受けた基本状態から自動車Cの側部を側部用受部材11,11で受けた反転状態に切り換える。そうすると、側部受面110よりも突出したスライド部材12,12に自動車Cの上部が当接し、この底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の回転(自動車Cの反転)に伴う回転モーメントに対してスライド部材12,12が対抗した状態となる。また、完全に反転状態になった状態においても、スライド部材12,12が自動車Cの上部に当接しているので、反転した自動車Cが転倒する方向(起立状態になった底用受部材10,10のある側とは反対側)への力に対抗することができ、底が作業者に対面する状態(自動車Cを反転(実際には横転)させた状態)に維持させることができる。本実施形態においては、スライド部材12,12が楔状に形成されているので、自動車Cがスライド部材12,12の傾斜面に当接する結果、自動車Cに対する転倒モーメントを傾斜面で受けて止めることができ、自動車Cの転倒がより確実に防止される。
【0053】
そして、上述のように反転状態になると、自動車Cの側部が側部用受部材11,11とこれに包囲されたテーブル141とに受けられた状態になるが、テーブル141の上面と側部用受部材11,11の側部受面110とが略面一となるため、スライド部材12,12が側部受面110及びテーブル141の上面よりも突出した状態で維持することに変わりがなく、反転状態になった自動車Cとの当接状態(転倒に対して対抗した状態)が維持される。
【0054】
そして、図5(c)に示す如く、リフト装置14を作動させ、反転状態になった自動車Cの底が作業者の作業し易い高さにまで上昇させ、回収されるべき部品の取り外しを行った後、リフト装置14を作動させて反転状態にある自動車Cを下降させる。その後、傾動用シリンダ152を作動させることで、反転状態から基本状態に戻ることになる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る自動車反転装置1は、側部用受部材11,11の自動車Cの側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材11,11の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材12,12を備えているので、基本状態から反転状態に切り換えると、側部用受部材11,11の自動車Cの側部を受ける面から突出したスライド部材12,12が反転状態にある自動車C(例えば、側部、屋根、ボンネット等の何れかの部位)に当接するため、反転状態にある自動車Cが転倒しようとする転倒モーメントに対し、スライド部材12,12が対抗することになり、その自動車Cが不用意に転倒してしまうことを防止することができる。
【0056】
また、前記スライド部材12,12を側部用受部材11,11の延出方向の複数箇所で位置決め可能に構成された位置決手段13,13を備えているので、スライド部材12,12を自動車Cの形態やサイズに応じた位置で位置決め(固定)することができ、反転状態するとき或いは反転状態になったときに自動車Cの荷重の作用でスライド部材12,12が不用意にスライドしてしまうことを確実に防止することができる。
【0057】
そして、前記位置決手段13,13は、延出方向に沿って延び、側部用受部材11,11の延出方向に所定間隔をあけて該側部用受部材11,11に対して直接的又は間接的に設けられた複数の凸部又は凹部130…と、スライド部材12,12に連結されたフレーム部材131と、スライド部材12,12のスライド方向への移動が規制された状態で前記凸部又は凹部130…に対して嵌合可能にフレーム部材131に取り付けられるロック部材132とを備えているので、スライド部材12,12と反転状態にある自動車Cとが当接したときに、スライド部材12,12を側部用受部材11,11の先端側にスライドさせる(押す)力がかかってもロック部材132と凸部又は凹部130…との嵌合で対抗することができる。
【0058】
さらに、前記スライド部材12,12は、側部用受部材11,11の基端側ほど側部用受部材11,11側に先下りに傾斜して楔状に形成されているので、反転状態にある自動車Cが転倒しようとする転倒モーメントに対抗する反対向きのモーメントを確実に作用させることができ、自動車Cの転倒をより確実に防止することができる。
【0059】
尚、本発明の自動車反転装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
上記実施形態において、リフト装置14を設け、該リフト装置14のテーブル141を底用受部材10,10及び側部用受部材11,11を支持するためのベースとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、設置面上に配置されるプレート状のベースに対し、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の一端を枢支連結するようにしてもよい。このようにしても、互いに交差方向に延びた状態で一端側を支点にして回転可能となるので、上記実施形態と同様に、自動車Cを反転状態にすることができる。
【0061】
また、リフト装置14を設ける場合であっても、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図6に示す如く、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の一端同士を回転不能に連結し、該側部用受部材11,11とプレート状のベース200に一端が枢支連結されたフレーム材201とをリフト装置14を介して連結してもよい。このようにすれば、フレーム材201が横臥状態になるように回転すると、該フレーム材201と一緒に底用受部材10,10及び側部用受部材11,11がフレーム材201の回転支点(底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の延出方向と直交する方向に延びる軸線CL)を中心にして回転し、底用受部材10,10が起立状態になるとともに側部用受部材11,11が横臥状態になる。この状態で側部用受部材11,11とフレーム材201とを連結するリフト装置14が作動すると、反転状態を維持しつつ底用受部材10,10及び側部用受部材11,11が昇降することになり、上記実施形態と同様に反転状態にある自動車Cを作業のし易い高さに位置調整することができる。
【0062】
さらに、図示しないが、図6に示す自動車反転装置1の変形態様として、前記フレーム材201に対し、該フレーム材201の延出方向にスライド可能なサブフレームを設けるとともに、該サブフレームをスライドさせるアクチュエータを設け、サブフレームと側部用受部材11,11とをリフト装置14を介して連結すれば、基本状態においてサブフレームをスライドさせることで、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11を昇降させることができる上に、反転状態でリフト装置14が作動することで上記実施形態と同様に反転状態にある自動車Cを作業のし易い高さに位置調整することができる。但し、装置のコンパクト化と機能面とを考慮すれば、上記実施形態と同様の態様にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0063】
このようにリフト装置14等の形態が異なったとしても、底用受部材10,10を軸線周りで回転させつつ側部用受部材11,11を軸線周りで底用受部材10,10と同方向に回転させることで、底用受部材10,10が自動車Cの底を受けた基本状態から側部用受部材11,11が自動車Cの側部を受けた反転状態とに切り換る以上、側部用受部材11,11の自動車Cの側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材11,11の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材12,12を設けることは勿論のことである。
【0064】
上記実施形態において、棒材133を介して底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の一端側同士を回転不能に連結し、共通の傾動用シリンダ152で両者を同時に回転させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、底用受部材10,10と側部用受部材11,11とが独立して回転可能になるように設け、それぞれを別個独立したアクチュエータ(例えば、油圧シリンダ)で回転させるようにしてもよい。但し、この場合においても、底用受部材10,10を軸線周りで回転させつつ側部用受部材11,11を軸線周りで底用受部材10,10と同方向に回転させる必要があるため、底用受部材10,10を回転させるアクチュエータと側部用受部材11,11を回転させるアクチュエータとを同期駆動するように構成することは言うまでもない。また、底用受部材10,10と側部用受部材11,11と必ずしも同心で回転する必要はなく、底用受部材10,10を軸線CL周りで回転させつつ側部用受部材11,11を軸線CL周りで底用受部材10,10と同方向に回転させたときに、基本状態から反転状態にすることができるように底用受部材10,10及び側部用受部材11,11を回転可能に設ければよい。
【0065】
上記実施形態において、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の一端側が回転中心となるように構成したが、これに限定されるものではなく、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11の回転支点(軸線CL)の配置は適宜変更可能である。すなわち、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11が側面視においてL字状をなした状態で回転できるように回転支点を適宜設定すればよい。このようにしても、底用受部材10,10が自動車Cの底を受けた基本状態と側部用受部材11,11が自動車Cの側部を受けた反転状態とに切り換えることができる。
【0066】
上記実施形態において、外観角棒状に形成された底用受部材10,10及び側部用受部材11,11のそれぞれを前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つずつ設けることで、自動車Cの底及び側部を受けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11のそれぞれを棒状に形成して前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて三つ以上設けたり、底用受部材10,10及び側部用受部材11,11のそれぞれをプレート状に形成して一つずつ設けたりするようにしてもよい。また、底用受部材10,10又は側部用受部材11,11の何れか一方を、外観角棒状に形成して前記軸線CLの延びる方向に間隔をあけて二つ以上設け、他方をプレート状に形成しても勿論よい。但し、底用受部材10,10は、反転状態で自動車Cの底にアクセスできる領域(部品の取り外しが可能な領域)を確保するように構成することは言うまでもない。すなわち、底用受部材10,10をプレート状に形成する場合には、自動車Cの底と対面可能な開口を形成する等して対応することは言うまでもない。また、側部用受部材11,11を三つ以上設けた上で、上記実施形態の如く、側部受部材11,11とともにリフト装置14でも自動車Cの側部を受ける場合には、反転状態になったときにテーブル141の介在する領域を確保できるように側部用受部材11,11を設けることは言うまでもない。
【0067】
上記実施形態において、スライド部材12,12を側部受部材11,11に対応して二つ設けたが、これに限定されるものではなく、スライド部材12,12は、少なくとも一つ以上設ければよい。但し、自動車の転倒を確実に防止するには、スライド部材12,12を軸線CLの延びる方向に二つ以上設けるか、或いは、スライド部材12,12の幅(スライド方向と直交する方向の幅)を幅広にして一以上設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0068】
上記実施形態において、スライド部材12,12を楔状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、外観が立方体、或いは直方体をなすブロック状に形成してもよい。また、自動車Cの側部と側部受面110との間に介在する形状に限定されるものではなく、例えば、自動車Cの上面(ボンネットや屋根)と対向するように、側部受け面から突出した態様であってもよい。何れにしても、側部用受部材11,11の延出方向にスライド可能に設けられることで、自動車Cが転倒する方向に突出したスライド部材12,12を配置することができ、反転状態にある自動車Cが転倒しようとする転倒モーメントに対してスライド部材12,12で対抗することができ、自動車Cが不用意に転倒してしまうことを防止することができる。
【0069】
上記実施形態において、スライド部材12,12を案内するレール145aとして丸棒を採用したが、これに限定されるものではなく、側部用受部材11,11の側部受面110上にレール145aを設ける場合には、レール145aの断面形状は、例えば、四角や三角等であってもよい。もちろん、スライド部材12,12の溝をレール145aの形状に対応して形成することは勿論である。また、スライド部材12,12のスライド面120に凸条又は凸部を形成するとともに、側部用受部材11,11の側部受面110上に凸条又は凸部が嵌め合わされる溝を側部用受部材11,11の延出方向に延びるように形成してもよい。このようにしてもスライド部材12,12を上記実施形態と同様に案内することができる。
【0070】
上記実施形態において、位置決手段13,13を構成する複数の凹部130…(溝)を棒材133に形成した上で、該棒材133を側部用受部材11,11に取り付けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の凹部130…を側部用受部材11,11に直接形成するようにしてもよい。このようにしても、フレーム部材131がスライド部材12,12に連結されるとともに、スライド方向の移動が規制された状態で凹部130…に対して嵌合可能にロック部材132がフレーム部材131に取り付けられるので、スライド部材12,12の位置決めを確実に行うことができる。
【0071】
また、側部用受部材11,11側に複数の凹部130…を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、側部用受部材11,11側に複数の凸部を設けるとともにロック部材132に前記凸部が嵌合可能な凹部130…を形成するようにしてもよい。この様にしても凹凸嵌合によってスライド部材12,12を確実に位置決めすることができる。
【0072】
上記実施形態において、ロック部材132を回転可能なアーム部132aを備えたロック部材132を採用し、アーム部aを回転させることで嵌合部132bと凹部130…との嵌合とその解除を行えるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7(a)及び図7(b)に示す如く、棒状のピン体をロック部材132’,132’’として採用し、該ピン体132’,132’’を軸線方向に移動可能にフレーム部材131に挿通し、該ピン体132’,132’’を進退させることで側部用受部材11,11側の凹部130…に対するピン体132’,132’’との嵌合とその解除を行えるようにしてもよい。この場合、図7(a)に示す如く、上記実施形態と同様に常態においてピン体132’と凹部130…とが嵌合する(ピン体132’と凹部130…側に突出する)ように、ピン体132’の先端部(凹部130に嵌り込む部位)を大径に形成し、その大径部分とフレーム部材131とのコイルバネ等の付勢手段137’を設けるようにしてもよいし、図7(b)に示す如く、ピン体132’’をフレーム部材131に対して完全に抜き差しできるように構成してもよい。
【0073】
上記実施形態おいて、リフト装置14全体の高さを低くするために、連結材149(ブラケット150)に枢支連結された回転アーム151に昇降シリンダ144のロッドエンドを枢支連結した昇降手段142を採用しているが、リフト装置14の昇降手段142は、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータで作動するリンク機構(いわゆる、パンタ方式)ものや、油圧シリンダそのもの等、種々タイプのものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車反転装置の概略斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る自動車反転装置の側面図であって、(a)は、自動車を省略した基本状態の側面図を示し、(b)は、自動車を省略した反転状態の側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る自動車反転装置の部分拡大断面図であって、(a)は、側部用受部材、スライド部材、及び位置決手段の断面図を示し、(b)は、棒材及びロック部材の断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る自動車反転装置の部分断面(リフト装置の部分断面)を含む側面図であって、(a)は、テーブルが最下位置にある下降状態を示し、(b)は、テーブルが最上位置にある上昇状態を示す。
【図5】同実施形態に係る自動車反転装置の作動説明図であって、(a)は、基本状態を示し、(b)は、反転状態を示し、(c)は、反転状態でテーブル(底用受部材及び側部用受部材)を上昇させた状態を示す。
【図6】本発明の他実施形態に係る自動車反転装置の概略斜視図を示す。
【図7】本発明の別の実施形態に係る自動車反転装置の位置決手段の断面図であって、(a)は、ロック部材にピン体を採用し、付勢手段による付勢で常態において凹部にロック部材が嵌合し、ピン体を軸線方向に引っ張ることで凹部に対するロック部材の嵌合の解除を行えるように構成された位置決手段の拡大断面図を示し、(b)は、ロック部材にピン体を採用し、ロック部材を抜き差しして凹部に対するロック部材の嵌合とその解除とが可能に構成された位置決手段の拡大断面図を示す。
【符号の説明】
【0075】
1…自動車反転装置、10…底用受部材、11…側部用受部材、12…スライド部材、13…位置決手段、14…リフト装置、16…軸材、110…側部受面、111…ガイドレール、112…連結材、120…スライド面、121…ガイド溝、130…凹部、131…フレーム部材、132…ロック部材、132’,132”…ピン体(ロック部材)、132a…アーム部、132b…嵌合部、133…棒材、134…固定部材、135…取付金具、136…挿通部、137…付勢手段(バネ)、140…ベース、141…テーブル、142…昇降手段、143a…第一アーム、143b…第二アーム、144…昇降シリンダ、145a…レール、145b…レール、146…ブラケット、149…連結材、150…ブラケット、151…回転アーム、160…外嵌部材、200…ベース、201…フレーム材、C…自動車、CL…軸線、Ra…ローラ、Rb…ローラ、Rc…ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の底を受けるべく延出した底用受部材と、該底用受部材に受けられた自動車の側部と対向するように、底用受部材に対して交差方向に延出した側部用受部材とを備え、前記底用受部材及び側部用受部材は、該底用受部材の延出方向と直交し、且つ、該側部用受部材の延出方向と直交する方向に延びる軸線周りで回転可能に設けられ、底用受部材を回転させつつ側部用受部材を底用受部材と同方向に回転させることで、底用受部材が自動車の底を受けた基本状態から側部用受部材が自動車の側部を受けた反転状態に切り換るように構成された自動車反転装置において、側部用受部材の自動車の側部を受ける面から突出し、且つ、側部用受部材の延出方向にスライド可能に設けられたスライド部材を備えていることを特徴とする自動車反転装置。
【請求項2】
前記スライド部材を側部用受部材の延出方向の複数箇所で位置決め可能に構成された位置決手段をさらに備えている請求項1記載の自動車反転装置。
【請求項3】
前記位置決手段は、側部用受部材の延出方向に所定間隔をあけて該側部用受部材に対して直接的又は間接的に設けられた複数の凸部又は凹部と、スライド部材に連結されたフレーム部材と、スライド部材のスライド方向への移動が規制された状態で前記凸部又は凹部に対して嵌合可能にフレーム部材に取り付けられるロック部材とを備えている請求項2に記載の自動車反転装置。
【請求項4】
前記スライド部材は、底用受部材側ほど側部用受部材側に先下りに傾斜して楔状に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動車反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−7076(P2009−7076A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167292(P2007−167292)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(391053375)株式会社岸本製作所 (1)