説明

自動車外装部品製造用樹脂組成物

【目的】耐衝撃性、流動性、寸法安定性、、導電性、外観および塗装密着性などに優れた自動車外装部品製造用樹脂組成物を提供すること。
【構成】PPE(A1)、SEBSの水素添加物(A2)および不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)を溶融状態で反応させて得た変性樹脂(A)10〜60重量部、特定の物性を有するポリアミド6(B)を10〜60重量部、特定の物性を有する導電性カーボンブラックとポリアミド6とを溶融混練したペレット(C)10〜40重量部、特定の物性を有するメタ珪酸カルシュウム(D)8〜20重量部を、あらかじめ溶融混練してペレット化した95〜100重量部に対し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)が0.2〜5重量部ドライブレンドされてなる、樹脂組成物を特徴とする。
【効果】上記目的が達成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車外装部品製造用樹脂組に関する。さらに詳しくは、耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性、外観および塗装密着性に優れた自動車外装部品製造用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車外装部品製造用として、金属材料に代って多くの樹脂材料が使用されてきているが、最近、フェイシア、フェンダーおよびドアパネルなどの自動車外装部品製造用樹脂は、従来の樹脂と比較してさらに高い性能が要求されるようになってきた。例えば、(a)耐衝撃性:衝突時のエネルギーを変形することによって吸収し、その後回復する特性や、低温時の衝撃破壊が延性を示す特性である。(b)寸法安定性(低線膨張率):塗料塗装後の樹脂製部品が高温環境下に曝される際に、塗装膜と素地の樹脂部分との熱膨張の度合が異なるために、塗装膜の剥離や塗装面に微細な亀裂が生じ、外観や意匠性が悪化するケースが多発する。また、樹脂製大型部品を他の材質、例えば木材、金属などの部品と併用する場合、高温使用環境下では材料間の熱膨張の度合が異なるために、寸法差や噛み合い不良などの問題が生じる。
【0003】
さらに、(c)導電性:導電性を付与した樹脂製板状体(パネル)に通電し、それと反対の電荷を帯電させた塗料を樹脂製板状体表面に吹き付ける、いわゆる「静電塗装」技術が適用可能な優れた導電性を発揮する樹脂材料が要求されている。これは、樹脂製板状体表面と塗料とに反対の電荷を付与することによって、相互に引き合う性質を利用し、塗料の付着率を向上させるものである。(d)塗装密着性:鋼板用塗料を塗布した際、樹脂製板状体表面と塗装膜との密着性が、鋼板表面と塗装膜との密着性と同等であることが要求されている。
【0004】
上記(a)〜(d)の特性を満足する樹脂材料、すなわち、耐衝撃強度が優れている、高温における寸法安定性が優れている、静電塗装技術が適用できるほど導電性が優れている、鋼板用塗料との密着性が優れている、などの特性を具えていることが要求されている。これらの特性を具えた樹脂材料として、ポリフェニレンエーテルとポリアミド樹脂との樹脂組成物(ポリマーアロイ)が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照。)。しかしながら、耐衝撃性、導電性、寸法安定性、塗装密着性の総てを同時に満たすことは困難であった。特に、(d)塗装密着性を鋼板と同等にすることは困難であった。このため樹脂材料は、大型外装部品製造用として使用が制限されている。
【0005】
そこで、樹脂製外装部品の(d)塗装密着性を改良する方法として、(1)樹脂製外装部品へのプライマーの塗布、(2)塗料自体の改良、(3)樹脂成分自体の改良、などの試みがなされてきた。(1)の樹脂製外装部品へのプライマーの塗布法では、塗装工程が増えるのでコストが嵩み好ましくなく、(2)の塗料自体の改良法では、耐候性、衝撃性などの本来塗料に要求される特徴が失われ好ましくなかった。また、(3)の樹脂成分自体の改良では、塗装改良剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、最終的に得られる樹脂組成物の流動性、靭性の低下、滞留成形による外観などの点で不十分であり、現時点では十分満足できる自動車外板製造用樹脂組成物は得られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−279012号公報
【特許文献2】
特開2002−173596号公報
【特許文献3】
特開2002−173595号公報
【特許文献4】
特開2001−234055号公報
【特許文献5】
特開平2−208356号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況にあって、ポリフェニレンエーテルとポリアミドとの樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性、外観および塗装密着性などに優れた自動車外装部品製造用樹脂組成物を提供することを目的として、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、固有粘度が0.25〜0.45のポリフェニレンエーテル(A1)14〜85重量%と、ビニル芳香族化合物の重合体ブロックAと共役ジエン系化合物の重合体ブロックBとが、A−B−A型の構造を有するブロック共重合弾性体の水素添加物(A2)14〜85重量%と、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)1〜10重量%とを、溶融状態で反応させて得た変性樹脂{成分(A)}を10〜60重量部、温度23℃、98%硫酸中で測定した相対粘度が3.0dl/g以下のポリアミド6{成分(B)}を10〜60重量部、導電性カーボンブラック(C1)5〜20重量%と相対粘度3.0dl/g以下のポリアミド6(C2)95〜80重量%とを、予め溶融混練してペレット化した組成物{成分(C)}を10〜40重量部、平均繊維径(d)が4μ以下であり、かつ平均繊維長(l)との比{(l)/(d)}が6以上であるメタ珪酸カルシュウム繊維{成分(D)}8〜20重量部、を溶融混練してペレット化した樹脂組成物100重量部に対し、エチレン−ビニルアルコール共重合体{成分(E)}0.2〜3重量部、ドライブレンドしてなることを特徴とする、自動車外装部品製造用樹脂組成物を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)成分(A)
本発明において成分(A)とは、固有粘度が0.25〜0.45のポリフェニレンエーテル(A1)と、ビニル芳香族化合物の重合体ブロックAと共役ジエン系化合物の重合体ブロックBとが、A−B−A型の構造を呈したブロック共重合弾性体の水素添加物(A2)との混合物と、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)とを溶融状態で反応させてなる変性樹脂である。
【0010】
本発明においてポリフェニレンエーテル(A1)とは、下記一般式[I]で表される構造を有する単独重合体または共重合体である。
【0011】
【化1】



【0012】
一般式[I]において、Qはハロゲン原子、第一級もしくは第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、Qは水素原子、ハロゲン原子、第一級もしくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、mは10以上の数を表す。
【0013】
一般式[I]におけるQおよびQの第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−もしくは4−メチルペンチルまたはヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec−ブチルまたは1−エチルプロピルである。多くの場合、Qはアルキル基またはフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Qは水素原子である。
【0014】
好適なポリフェニレンエーテル(A1)の単独重合体としては、例えば、2,6―ジメチル―1,4―フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6―トリメチル―1,4―フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な単独重合体またはランダム共重合体、例えば、分子量、溶融粘度および/または耐衝撃強度などの特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルなどが、多くの特許および文献などに記載され、提案されている。
【0015】
なお、ポリフェニレンエーテル(A1)は、クロロホルム中、温度30℃で測定した固有粘度が、0.25〜0.45dl/gの範囲のものが好ましい。固有粘度が0.25dl/g未満であると、最終樹脂組成物は耐衝撃性が不足し、0.45dl/gを越えると成形性が不満足であり、いずれも好ましくない。固有粘度の好ましい範囲は0.3〜0.45dl/gであり、中でも好ましいのは0.35〜0.4dl/gである。
【0016】
本発明において、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと共役ジエン化合物重合体Bとからなるブロック共重合体の水素添加物(A2)とは、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖ブロック「A」と、共役ジエンに由来する連鎖ブロック「B」とを、各々少なくとも一個有する構造のビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体であり、ブロックBの脂肪族不飽和基が水素化されて減少したブロック共重合体をいう。ブロックAおよびブロックBの配列は、線状構造、分岐構造(ラジカルテレブロック)のいずれであってもよい。また、これら構造のうちの一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これらのうちでは、配列が線状構造のものが好ましく、中でもジブロック構造のものがより好ましい。
【0017】
ビニル芳香族化合物として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが挙げられる。この中で特に好ましいのは、スチレンである。共役ジエン化合物としては、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
【0018】
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(A2)において、ブロックAの繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲がより好ましい。これらブロック共重合体における脂肪族鎖部分のうち、ブロックBに由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ブロックAに由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよい。
【0019】
これらの水素添加ブロック共重合体(A2)は、それらの分子量の目安として、25℃における濃度15重量%のトルエン溶液粘度の値が10〜30000cpsの範囲のものが好ましい。溶液粘度が10cpsより小さい値の範囲では、最終樹脂組成物の機械的強度が低くなり、また30000cpsより大きい値の範囲では、最終樹脂組成物の成形加工性に難点を生じ、いずれも好ましくない。溶液粘度のより好ましい範囲は、30〜10000cpsである。
【0020】
また、これらのポリフェニレンエーテル(A1)および水素添加ブロック共重合体(A2)との混合物に、溶融状態でグラフト反応させる不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)の具体例としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸などのα,β―不飽和ジカルボン酸、またはエンド―ビシクロ[2.2.1]―5―ヘプテン―2,3―ジカルボン酸もしくはこれらの誘導体などの脂環式カルボン酸が挙げられる。
【0021】
成分(A)の合計100重量部に占める割合は、ポリフェニレンエーテル(A1)は14〜85重量%、水素添加ブロック共重合体(A2)は14〜85重量%、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)は1〜10量%、の範囲でそれぞれ選ぶものとする。ポリフェニレンエーテル(A1)が14重量%未満では、機械的強度、耐熱性が不満足であり、85重量%を超えると最終樹脂組成物の衝撃性、流動性が不十分である。水素添加ブロック共重合体(A2)が14重量%未満では、衝撃性、成形性が不満足であり、85重量%を超えると耐熱性が不十分である。不飽和酸無水物、不飽和酸(A3)が1重量%未満では、衝撃性が不満足であり、10重量%を越えると、成形時の滞留安定性が不満足である。
【0022】
ポリフェニレンエーテル(A1)の好ましい範囲は20〜80重量%であり、中でも好ましいのは30〜75重量%である。水素添加ブロック共重合体(A2) の好ましい範囲は18〜80重量%であり、中でも好ましいのは20〜70重量%である。不飽和酸無水物、不飽和酸(A3) の好ましい範囲は1.5〜6重量%であり、中でも好ましいのは2〜4重量%である。
【0023】
成分(A)としての変性樹脂は、ポリフェニレンエーテル(A1)と、水素添加ブロック共重合体(A2)との混合物に、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)を添加して均一に混合し、得られた混合物を溶融状態で反応させることによって製造することができる。両者を溶融状態で反応させるには、(a) (A1)と(A2)との混合物に不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)を、タンブラー、ブレンダーなどを使用して混合し、ついで得られた混合物を溶融反応させる方法、(b) 溶融状態にある(A1)と(A2)との混合物に、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)を混合し反応させる方法、(c) 不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)を、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの誘導体などの溶媒に溶解または分散させ、水素添加ブロック共重合体(A2)に混合して溶媒を飛散させ、これをポリフェニレンエーテル(A1)と混合し、ついで得られた混合物を溶融反応させる方法、などが挙げられる。
【0024】
上記混合物を溶融反応させるには、各種の溶融混練機、例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダープラストグラムなどが挙げられる。溶融反応させる際の温度、加熱時間などは、各成分の種類・割合、使用する混練機の種類・性能などにより変わるが、温度は150〜250℃の範囲、加熱時間は10秒〜5分の範囲で選ぶことができる。溶融混練する際、有機過酸化物を少量添加することができる。有機過酸化物は、あらかじめ上記原料成分の一種または混合物に均一に混合もしくは含浸させるか、溶融状態にある原料成分に混合し添加し均一に混合するのが好ましい。
【0025】
(2)成分(B)
本発明において成分(B)とは、ポリアミド6であり、温度23℃、98%硫酸中で測定した相対粘度が3.0dl/g以下のものをいう。ポリアミド6は、末端カルボン酸含量[B1]が70μeq/g以下で、末端カルボン酸量[B1]と末端アミン量[B2]との比{[B1]/[B2]}が4以下で、好ましくは末端カルボン酸含量が50μeq/g以下で、末端カルボン酸量と末端アミン量との比{[B1]/[B2]}が、4以下で、温度23℃、98%硫酸の相対粘度が2.5dl/g以下のものである。比{[B1]/[B2]}が4を超えると、成分(A)と成分(B)との相溶性が低下する。
【0026】
(3)成分(C)
本発明において成分(C)とは、導電性カーボンブラック(C1)5〜20重量%と相対粘度3.0dl/g以下のポリアミド6(C2)95〜80重量%とを、予め溶融混練してペレット化した組成物をいう。成分(C)は、最終樹脂組成物に導電性を付与する。ポリアミド6(C2)とをあらかじめ溶融混連するのは、導電性カーボンブラック(C1)を最終樹脂組成物中に均一に分散し易くするためである。ポリアミド6(C2)は、特に制限はないが、上記成分(B)と同様の特性を有するものであると相溶性が優れ、好ましい。
【0027】
導電性カーボンブラック(C1)は、ペイントなどに着色目的で使用される顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子がぶどうの房状に連なった形態のもので、樹脂材料に溶融混練して組成物とした際、最終樹脂組成物が導電性を発揮するカーボンブラックをいう。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0028】
成分(C)中に占める導電カーボンブラック(C1)の割合が5重量%未満では、最終樹脂組成物が充分な導電性を発揮せず、20重量%を超えると導電性にばらつきがあり、いずれも好ましくない。導電カーボンブラックの割合は、上記範囲では6〜17重量%が好ましく、中でも7〜10重量%が特に好ましい。成分(C)中に占めるポリアミド6(C2)の割合は、上記範囲の中でも94〜83重量%が好ましく、93〜90重量%が特に好ましい。
【0029】
導電性カーボンブラック(C1)とポリアミド6(C2)とを、予め溶融混練してペレット化するには、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダープラストグラムなどの溶融混練機を使用する方法によることができる。
【0030】
(4)成分(D)
本発明において成分(D)とは、平均繊維径(d)が4μ以下であり、かつ平均繊維長(l)との比{(l)/(d)}が6以上であるメタ珪酸カルシュウム繊維をいう。平均繊維径(d)が4μを超えると、最終樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、比{(l)/(d)}が6未満であると耐熱性が低下する。成分(D)は、最終樹脂組成物から得られる製品の寸法安定性を向上させる。成分(D)の平均繊維径(d)は好ましくは3.5μ以下であり、さらに好ましくは3μ以下である。また、両者の比{(l)/(d)}は好ましくは7以上であり、さらに好ましくは9以上である。なお、本発明において、平均繊維径(d)および平均繊維長(l)とは、電子顕微鏡による観察によって測定されるメタ珪酸カルシュムを画像解析して得られる。具体的には、2000倍で撮影したメタ珪酸カルシュムを100〜200個測定し、それらの平均値を示す。
【0031】
メタ珪酸カルシュムとは、針状結晶をもつ天然白色鉱物であり、化学式CaSiOで表され、通常SiOが50重量%、CaOが47重量%、その他FeO、Alを含有しており、比重は2.9である。かかるメタ珪酸カルシュムを主成分とする繊維状無機充填剤は、通常、ワラストナイトと呼称されているものである。ワラストナイトは、川鉄鉱業社から、PH330、PH450という商品名で、ナイコ社から、ナイグロス4、ナイグロス5という商品名でとしてそれぞれ市販されており、容易に入手できる。
【0032】
上記メタ珪酸カルシュムは、カップリング剤によって表面処理されたものが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、クローム系、チタン系などのカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤には、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ―クロロプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。チタンカップリング剤には、例えばイソプロピルトリイソスチアロイルチタネート、イソプロピルトリラウリルミリスチルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジメタクリルチタネート、イソプロピルトリジイソオクチルフォスフェートチタネートなどが挙げられる。
【0033】
カップリング剤をメタ珪酸カルシュムに表面処理する方法として、乾式、湿式、インテグラルなどの方法があるが、いずれの方法によってもよい。中でも、湿式処理が好ましい。カップリング剤によって表面処理する際、非イオン・陽イオン・陰イオン型などの各種の界面活性剤や、脂肪酸・金属石鹸・各種樹脂などの分散剤による処理を併せて行うと、混練性向上、最終樹脂組成物の機械的強度向上などの観点から、好ましい。
【0034】
(5)成分(E)
本発明において成分(E)とは、エチレン−ビニルアルコール共重合体をいう。成分(E)は、最終樹脂組成物の塗装性を向上させる。成分(E)のエチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレンとビニルアルコールのランダム共重合させることによって得られる。共重合体は、エチレンの共重合比率が20〜60モル%のものが好ましく、40〜50モル%のものがさらに好ましい。成分(E)は、エチレン共重合体比率が40〜60モル%の範囲のものが、最終樹脂組成物の滞留熱安定性と塗装性との観点から好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されておりクラレ社の「エバール」(商品名)が代表的である。
【0035】
(6)その他の成分
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの安定剤、顔料、染料、滑剤、難燃剤、離型剤などの添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、チタン酸カリウム、タルク、マイカなどの無機強化剤、導電性物質などを添加することができる。さらに、耐衝撃改良剤としてのエラストマーを、添加することもできる。
【0036】
(7)各成分の割合と配合方法
(7−1) 四成分の割合
本発明に係る樹脂組成物は、上記の五成分を必須とするが、各成分の割合は、つぎのようにする。まず、成分(A)〜成分(D)の四成分を調製し、ついで成分(E)を配合する。成分(A)〜成分(D)の四成分合計100重量部中に占める成分(A)の割合は、10〜60重量部の範囲とする。成分(A)が10重量部未満では、最終樹脂組成物の機械的強度、成形性が不満足であり、60重量部を超えると導電性、流動性が不十分であり、いずれも好ましくない。四成分合計100重量部中に占める成分(B)の割合は、10〜60重量部の範囲とする。成分(B) が10重量部未満では、最終樹脂組成物の機械的強度、成形性が不満足であり、60重量部超では導電性が不十分であり、いずれも好ましくない。
【0037】
四成分合計100重量部中に占める成分(C)の割合は、10〜40重量部の範囲とする。成分(C)が10重量部未満では、最終樹脂組成物の塗装性、導電性が不満足であり、40重量部を越えると成形時の流動性が不満足であり、いずれも好ましくない。四成分合計100重量部中に占める成分(D)の割合は、8〜20重量部の範囲である。成分(D)が8重量部未満では、最終樹脂組成物の寸法安定性が不満足であり、20重量部を越えると、衝撃性、外観、成形時の滞留安定性が不満足であり、いずれも好ましくない。
【0038】
四成分合計100重量部中に占める各成分のより好ましい範囲は、成分(A) 15〜50重量部であり、中でも特に好ましいのは20〜45重量部である。成分(B)は12〜50重量部であり、中でも特に好ましいのは15〜30重量部である。成分(C)は15〜38重量部であり、中でも特に好ましいのは25〜35重量部である。成分(D)は10〜19重量部であり、中でも特に好ましいのは12〜18重量部である。
【0039】
(7−2)四成分の混合方法
上記四成分を混合するには、溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練するには、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダープラストグラムなどの従来から知られている各種混練機の中から、樹脂組成物の混練に適したものを選択すればよい。溶融混練する際の温度・混練時間などの混練条件は、混練機の種類・性能、樹脂組成物を構成する各成分の性質・割合などに応じて適宜決定することができる。
【0040】
混合方法は、(1) 成分(A)〜成分(D)の四成分をあらかじめ混合し、四成分の混合物を溶融混練する方法、(2)押出機を使用し、押出機のホッパーで成分(A)を、上流〜中流部分で成分(B)と成分(C)を、下流部分で成分(D)をそれぞれ添加し、溶融混練する方法、などが挙げられる。
【0041】
(7−3) 成分(E)
の割合と配合方法
四成分より構成される樹脂組成物100重量部に対し、成分(E)を0.2〜5重量部配合する。成分(E)が0.1重量部未満では、最終樹脂組成物の塗装性、導電性が不満足であり、5重量部を越えると、成形時の滞留安定性が不満足で、いずれも好ましくない。成分(E)の好ましい範囲は0.5〜4重量部であり、中でも好ましいのは1〜3重量部である。
【0042】
本発明に係る樹脂組成物は、上記四成分より構成される樹脂組成物に、上記成分(E)をドライブレンドしたものである。ドライブレンド物は、そのまま自動車用外装部品製造用樹脂材料として使用できる。ドライブレンド物を溶融混練ペレット化して成形材料とすることもできるが、ペレット化すると樹脂組成物を構成する各成分を溶融混練する工程が増えるので経済的でなく、また熱履歴も増えるので最終樹脂組成物の熱安定性の観点からも、好ましくない。
【0043】
本発明に係る樹脂組成物を材料として自動車用外装部品を製造する方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法、例えば、射出成形法、中空成形法、押出成形法、回転成形法、積層成形法、シート成形法、熱成形法などの成形法が適用できる。
【0044】
従来、樹脂製外装部品と鋼板とが一体化された製品を、静電塗装する検討は行われていたが、樹脂製外装部品は耐熱性、耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性、外観および塗装密着性などの物性を同時に満たすことは困難であったので、実用化されるまでに至っていない。本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性、塗装密着性などに優れているので、自動車外装部品製造用の樹脂材料として好適である。得られた自動車用外装部品は、鋼板と一体化した製品として鋼板用の静電塗装装置に移送し、150〜170℃の温度範囲で塗装することができる。
【0045】
本発明に係る樹脂組成物を材料として製造される自動車用外装部品としては、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、トランクリッド、ロッカーモールなどが挙げられる。
【0046】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明は以下の記載例に限定されるものではない。なお、以下に記載の例において、使用した各成分の名称、物性などの詳細は次のとおりであり、また以下に記載の実施例、比較例において得られた樹脂組成物についての評価試験は、以下に記載の方法で行ったものである。
【0047】
[使用した各成分の略称、物性など]
A)成分(A)(変性樹脂)
(A11)PPE1:ポリフェニレンエーテル(ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であって、温度30℃のクロロホルム中で測定したときの固有粘度が、0.40dl/gのものである。
(A12)PPE2:ポリフェニレンエーテル(ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であって、温度30℃のクロロホルム中で測定したときの固有粘度が、0.50dl/gのものである。
(A2)SEBS:スチレン−ブチレンースチレンブロック共重合体の水素添加物水素添加(シェル化学社製、商品名:クレイトンG1650)である。
(A3)無水マレイン酸:市販されている試薬(1級品)である。
【0048】
B)成分(B)(ポリアミド樹脂)
(B1)PA1:末端カルボン酸含量が126μeq/g 末端カルボン酸と末端アミンとの比が4.8、温度23℃の98%硫酸中で測定したときの相対粘度が、2.0dl/gのものポリアミド6である。
(B2)PA2:末端をステアリン酸とステアリルアミンで封鎖したポリアミド6であって、末端カルボン酸含量が49μeq/g 末端カルボン酸と末端アミンとの比が3.5、温度23℃の98%硫酸中で測定したときの相対粘度が、2.1dl/gのものである。
(B3) PA3:末端カルボン酸含量が40μeq/g 末端カルボン酸と末端アミンとの比が1.0、23℃98%硫酸中で測定したときの相対粘度が、3.5dl/gのものである。
【0049】
C)成分(C){導電剤カーボンブラック(CB)とポリアミド6(PA)とからなる組成物}
(C1)CB/PA1:上記PA1を90重量%と、比表面積が1270m/g、DBP吸油量が495ml/100gのカーボンブラック(ライオン社製、商品名:ケッチェンブラック600JD)を10重量%それぞれ秤量し、タンブラーミキサーによって均一混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30XCT)(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下で溶融混練、ペレット化したものである。
【0050】
(C2)CB/PA3:上記PA3を90重量%と、カーボンブラック(600JD)を10重量%それぞれ秤量し、タンブラーミキサーによって均一混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30XCT)(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下で溶融混練、ペレット化したものである。
【0051】
D)成分(D)(メタ珪酸カルシュム)
(D1)ワラスト1:平均繊維径(d)が2.2μ、平均繊維長(l)が20.9μで、平均(l)/(d)が9.5のワラストナイト(川鉄鉱業社製、商品名:PH330)である。
(D2)ワラスト2:平均繊維径(d)が7.5μ、平均繊維長(l)が140μで、平均(l)/(d)が18.7のワラストナイト(ナイコ社製、商品名:ナイグロス8)である。
【0052】
E)成分(E)(エチレン−ビニルアルコール共重合体)
(E)EVOH:エチレン含量が47モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名:エバールG165A)である。
【0053】
[各種物性の評価方法]
(1) 衝撃強度(単位:J):100mmφ円盤シートについて、ハイレート衝撃試験機(島津製作所製)を用いて行う衝撃試験方法である。ポンチの径は1/2インチ、サポート径は3インチ、打ち抜き速度を1m/sとし、その吸収エネルギーを測定する方法である。この値が大きいほど、耐衝撃性に優れている。
【0054】
(2)流動性(単位:mm):射出成形機(東芝機械社製、型式:IS150)を使用し、シリンダー温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は1000kg/cm、射出時間10秒、冷却時間30秒の条件下で、バーフローを測定する方法である。この値が大きいほど、流動性に優れている。
(3)耐熱性(単位:℃):ASTM D648に準拠して、0.45MPaの荷重条件試験する方法である。
【0055】
(4)帯電特性(Ω/cm):
射出成形機(東芝機械社製、型式:IS150)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件下で成形した、縦150mm×横150mm×厚さ3mmの平板状試験片について、表面抵抗測定器(三菱化学社製、商品名:ハイレスタ)によって、任意の3ヶ所について表面抵抗値を測定する方法である。
【0056】
塗装性と塗装外観については、以下のA法とB法の2つの方法で評価した。
(5)塗装性(A法):上記(4)と同種の平板状試験片について、以下条件で評価を行った。塗装用スプレーハンドガン(デビルビス社製、型式名:JGA502IIIエアキャップ43FF)を使用し、まず試験片の表面に自動車外板用中塗り塗料(関西ペイント社製、商品名:TP−65−2グレー、日本ペイント社製、商品名:ORGA P−30 8105グレー)を塗布し、130℃で12分間焼き付けたあと、ベース塗料(関西ペイント社製、商品名:マジクロンTB516)、およびクリヤー塗料(関西ペイント社製、商品名:KINO1200TW)を塗布し、140℃で18分間焼き付けた。塗料の塗布面に、一辺が1mm幅で碁盤目状のスリットを刻設し、この上にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離する方法である。塗料の塗布面が全く剥離しないものを◎、スリットのエッジ部のみが剥離したものを○、碁盤目の1〜4個剥離したものを△、碁盤目の5個以上が剥離したものを×、と表示した。
【0057】
(6)塗装外観(A法): 上記(4)と同種の平板状試験片について、以下条件で評価を行った。まず、試験片の表面に自動車外板用中塗り塗料{上記(5)におけると同種}を塗布し、130℃で12分間焼き付けた後、上塗り塗料{上記(5)におけると同種}、およびクリヤー塗料{上記(5)におけると同種}を塗布し、140℃で18分間焼き付けた。塗料の塗布面について、目視観察して塗装外観を評価する方法である。塗装外観が、静電塗装付鋼板と同等以上のものを◎、同等のものを○、劣るものを×、と表示した。
【0058】
(7) 塗装性(B法): 上記(4)と同種の平板状試験片について、以下条件で評価を行った。鋼板製の自動車用外板の静電塗装装置(ABBインダストリー社製、μμBELL923)を使用し、まず試験片の表面に自動車用外板用の中塗り塗料(関西ペイント社製、ポリエステル系塗料)を塗布し、140℃で18分間焼き付けたあと、上塗り塗料(関西ペイント社製、アクリルメラミン系塗料)を塗布し、140℃で18分間焼き付けた。塗料の塗布面に一辺が1mm幅の碁盤目状のスリットを刻設し、この上にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離する方法である。塗料の塗布面が全く剥離しないものを◎、スリットのエッジ部のみが剥離したものを○、碁盤目の1〜4個剥離したものを△、碁盤目の5個以上が剥離したものを×、と表示した。
【0059】
(8)塗装外観(B法): 上記(4)と同種の平板状試験片について、以下条件で評価を行った。まず、試験片の表面に自動車外板用中塗り塗料{上記(5)におけると同種}を塗布し、140℃で18分間焼き付けた後、ベース塗料{上記(5)におけると同種}を塗布し、140℃で18分間焼き付けた。塗料の塗布面について、目視観察して塗装外観を評価する方法である。塗装外観が、静電塗装付鋼板と同等以上のものを◎、同等のものを○、劣るものを×、と表示した。
【0060】
(7)寸法安定性(単位:1/℃):ASTM D696に準拠して線膨張係数の測定し、寸法安定性を評価した。ただし、測定温度範囲は23〜80℃とした。
【0061】
[実施例1〜実施例2]
(1)成分(A)の調製
(A11)PPE1、(A12)PPE2、(A2)SEBSおよび(A3)無水マレイン酸を、表−1に示した割合{カッコ内の数値は、成分(A)の重量%を意味する}で秤量し、ブレンダーミキサーによって混合した。得られた混合物を二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30XCT)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下で、溶融混練してペレット化状の変性樹脂{成分(A)}を得た。
【0062】
(2)四成分{成分(A)〜成分(D)}の配合・混練
まず、成分(A)〜成分(D)を表−1に示す量をそれぞれ秤量した。ついで、成分(A)〜成分(C)をブレンダーミキサーによって混合した。得られた混合物を、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数350rpmの条件に設定した二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30XCT)のホッパーに供給し、溶融混練、移送させつつ、押出機の下流部で成分(D)を添加し、溶融混練させて四成分を含むペレットを得た。
【0063】
(3)最終樹脂組成物の調製
上記の四成分を含むペレットと成分(E)とを、表−1に示す割合で秤量し、ブレンダーミキサーによって混合してドライブレンド物を得た。
【0064】
(4)試験片の作成、評価試験
上記のドライブレンド物を成形材料とし、射出成形機(東芝機械社製、型式:IS150、型締め力150T)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の成形条件下で、物性評価用試験片(ASTM)、および100mmφの円盤状試験片を作成し、これら試験片につき上記の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0065】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、成分(E)を添加しなかった外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0066】
[比較例2]
実施例1に記載の例において、成分(D)の配合量を5重量%と少なくした外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0067】
[比較例3]
実施例1に記載の例において、成分(C) の配合量を5重量%と少なくした外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0068】
[比較例4]
実施例1に記載の例において、成分(A)に含まれるPPEを固有粘度が0.50と大きいPPE2に変更した外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0069】
[比較例5]
実施例1に記載の例において、成分(B)のポリアミドおよび成分(C)におけるポリアミド1を、相対粘度が3.5と大きいポリアミド3に変更した外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0070】
[比較例6]
実施例1に記載の例において、成分(D)を平均繊維径が(D1)より大きい7.5μの(D2)に変更した外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0071】
[比較例7]
実施例1に記載の例において、成分(E)の配合量を5重量%と多くした外は、実施例1におけると同様の手順でペレット化した。次いで、得られたペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0072】
[比較例8]
実施例1に記載の例において、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(E)を、ブレンダーミキサーによって混合した外は、実施例1におけると同様の手順で溶融混練してペレット化した。次いで、得られたペレットと、成分(E)をドライブレンドすることなく、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、得られた試験片について同様の評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0073】
【表1】



【0074】
表−1より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明に係る樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性などに優れた成形品が得られる(実施例1〜実施例2参照)。
(2)本発明に係る樹脂組成物から得られる成形品は、塗料の塗布面が剥離し難く塗装密着性に優れている(実施例1〜実施例2参照)。
(3)本発明に係る樹脂組成物から得られら成形品は、鋼板と同様条件で塗料を塗布し、高温で焼き付け処理しても、塗装外観は静電塗装した鋼板と同等である(実施例1〜実施例2参照)。
【0075】
(3)これに対し、成分(E)を配合しなかった比較例1のものは、塗装性が劣り、実用性に欠ける。
(4)また、成分(D)の配合割合が請求項1で規定する範囲を外れた比較例2のものは、耐熱性と寸法安定性が劣り、実用性に欠ける。
(5)さらに、成分(C)の配合割合が請求項1で規定する範囲を外れた比較例3のものは、帯電特性に劣り、実用性に欠ける。
(6)成分(A)に含まれるPPEの固有粘度が請求項1で規定する範囲を外れた比較例4のものは、耐衝撃性、流動性、および耐熱性などが劣り、実用性に欠ける。
【0076】
(7)成分(B)のポリアミド、および成分(C)に含まれるポリアミドの相対粘度が請求項1で規定する範囲を外れて大き過ぎる比較例5のものは、流動性、耐熱性が劣り、実用性に欠ける。
(8)成分(D)の平均繊維径が請求項1で規定する範囲を外れて大き過ぎる比較例6のものは、塗装外観が劣る。
(9)成分(E)の配合割合を請求項1で規定する範囲よりも多くした比較例7のものは、流動性、耐熱性が劣り、実用性に欠ける。
(10) 成分(E)をドライブレンドせずに他の成分と溶融混練した比較例8のものは、衝撃性、流動性に劣る。
【0077】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、寸法安定性、導電性などに優れた成形品が得られる。
2.本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物から得られる成形品は、塗料の塗布面が剥離し難く塗装密着性に優れている。
3.本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物から得られら成形品は、鋼板と同様の条件で塗料を塗布し、高温で焼き付け処理しても、塗装外観は静電塗装した鋼板と同等である。
4. 本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物から製造した自動車用外板部品は、上記3.の効果を奏するので、鋼板塗装用装置をそのまま使用し、鋼板と同じ条件で鋼板用塗料を塗布することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度が0.25〜0.45のポリフェニレンエーテル(A1)14〜85重量%と、ビニル芳香族化合物の重合体ブロックAと共役ジエン系化合物の重合体ブロックBとが、A−B−A型の構造を有するブロック共重合弾性体の水素添加物(A2)14〜85重量%と、不飽和酸無水物および/または不飽和酸(A3)1〜10重量%とを、溶融状態で反応させて得た変性樹脂{成分(A)}を10〜60重量部、温度23℃、98%硫酸中で測定した相対粘度が3.0dl/g以下のポリアミド6{成分(B)}を10〜60重量部、導電性カーボンブラック(C1)5〜20重量%と相対粘度3.0dl/g以下のポリアミド6(C2)95〜80重量%とを、予め溶融混練してペレット化した組成物{成分(C)}を10〜40重量部、平均繊維径(d)が4μ以下であり、かつ平均繊維長(l)との比{(l)/(d)}が6以上であるメタ珪酸カルシュウム繊維{成分(D)}8〜20重量部、を溶融混練してペレット化した樹脂組成物100重量部に対し、 エチレン−ビニルアルコール共重合体{成分(E)}0.2〜5重量部を、ドライブレンドしてなることを特徴とする、自動車外装部品製造用樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)が、末端カルボン酸含量が50μeq/g以下、末端カルボン酸量[B1]と末端アミン量[B2]との比{[B1]/[B2]}が1〜4の範囲で、温度23℃、98%硫酸中で測定した相対粘度が2.5dl/g以下であるポリアミド6である、請求項1に記載の自動車外装部品製造用樹脂組成物。
【請求項3】
成分(E)が、エチレンの共重合比率が40〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体である、請求項1および請求項2に記載の自動車外装部品製造用樹脂組成物。

【公開番号】特開2004−231683(P2004−231683A)
【公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−18608(P2003−18608)
【出願日】平成15年1月28日(2003.1.28)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】