説明

自動車専用船

【課題】自動車専用船における荷役作業を効率的に行うようにすることにある。
【解決手段】自動車専用船はそれぞれ商品車両を収容する複数の積載甲板1〜13が船体20に層状に設けられて複数階に仕切られた船倉を有している。船倉内と船外との間で商品車両を運転する運転者は足車車両により前記船倉内と船外との間で輸送される。船体20の幅方向左舷側には、複数のスロープからなる左舷側スロープ群Saが設けられ、船体20の幅方向右舷側には、複数のスロープからなる右舷側スロープ群Sbが設けられており、それぞれのスロープにおいて商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両とが同時に対向しないようにそれぞれのスロープは一方通行路となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層の積載甲板と積載甲板相互間を結ぶスロープとを有し、乗用車やトラックなどの車両を運搬する自動車専用船に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を海上輸送する自動車専用船には、乗用車を専用に輸送するPCC(Pure Car Carrier)、および乗用車とトラックを混在させて輸送するPCTC(Pure Car Truck Carrier)等がある。これらの自動車専用船の船倉内には、それぞれ車両を収容する積載甲板が層状ないし階状となって例えば10数層程度設けられている。上下の積載甲板はこれらの間で車両を走行させるためにスロープで連結されており、船倉内は立体駐車場のような構造となっている。スロープを上下に重ならせて船倉内に配置すると船倉内における車両走行経路は螺旋状方式となり、スロープを船体の長手方向に直列に配置すると車両走行経路はワンウエイ方式となる。特許文献1および2には螺旋状方式が記載され、特許文献3にはワンウエイ方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−153687号公報
【特許文献2】実開昭61−137095号公報
【特許文献3】特開2006−56465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車専用船の船倉は、例えば6千台程度の商品車両を収容する容積を有しており、近年においては8千から9千台程度の商品車両を収容することができる船舶も開発されつつある。自動車専用船における荷役作業には、海上輸送される車両つまり商品車両を出港地の岸壁から船倉内に積み込む積荷作業と、海上輸送された商品車両を船倉内から寄港地の岸壁に陸揚げする揚荷作業とがあり、商品車両の移動は運転者により行われている。
【0005】
自動車専用船に積荷作業を行う際に、所定層の積載甲板の積載位置まで商品車両を搬入走行させた運転者つまり搬入ドライバーは岸壁に戻って他の商品車両を繰り返して船倉内に走行させることになり、積載位置まで商品車両を走行させた搬入ドライバーが岸壁まで徒歩で戻るようにしたのでは、積荷作業に時間がかかることになる。同様に、揚荷作業を行う際に、船倉内から岸壁に商品車両を搬出走行させた運転者つまり搬出ドライバーが徒歩で船倉内に戻るようにしたのでは、揚荷作業に時間がかかることになる。そのため、それぞれ商品車両を運転する複数の搬入あるいは搬出ドライバーと、これらの運転者を岸壁あるいは船倉内に戻すための足車車両の運転者つまり足車ドライバーとからなる車両グループにより荷役作業を行うようにしている。これにより、搬入あるいは搬出ドライバーは足車車両により迅速に岸壁あるいは船倉内に戻ることができるので、荷役作業を効率的に行うことができる。
【0006】
このように、積荷作業は車両グループの搬入ドライバーおよび足車ドライバーが岸壁から船倉内の積載位置まで商品車両と足車車両とを連ならせて走行させることにより行われ、商品車両を運転する複数の搬入ドライバーおよび足車ドライバーは、足車車両に搭乗して積載位置から岸壁に戻り、積荷作業が繰り返される。積載位置にまで搬入された商品車両は、駐車誘導作業者により誘導されて駐車専用の運転者つまり駐車ドライバーにより所定の駐車位置に移動され、駐車位置まで移動された商品車両は固縛作業者により駐車位置に固縛される。一方、揚荷作業も同様にして車両グループが船倉内から岸壁に向けて商品車両を搬出走行させることにより行われており、商品車両を岸壁まで走行させた搬出ドライバーは足車車両に搭乗して船倉内の駐車位置に戻り、揚荷作業が繰り返される。駐車位置における商品車両の固縛解除は固縛作業者により行われる。
【0007】
例えば5人の運転者により構成される車両グループにより積荷作業が行われる場合には、搬入ドライバーにより走行する4台の商品車両と足車ドライバーにより走行する1台の足車車両とが連なって岸壁から積載位置まで搬入走行し、4人の搬入ドライバーは足車車両に搭乗して岸壁まで戻ることになる。一方、同様に5人の運転者により構成される車両グループにより揚荷作業が行われる場合には、搬出ドライバーにより走行する4台の商品車両と足車ドライバーにより走行する1台の足車車両とが連なって船倉内から岸壁に搬出走行し、搬出ドライバーは足車車両に搭乗して船倉内に戻ることになる。
【0008】
上述のように一隻の自動車専用船に多量の車両を短時間で積荷作業と揚荷作業とを行うには、複数の車両グループにより荷役作業が行われており、各積載甲板とスロープには、商品車両と足車車両とが行き交うことになる。特に、商品車両と足車車両はともに同じスロープを逆方向に走行することになるので、スロープを商品車両が走行するときには足車車両の走行が規制され、足車車両が走行するときには商品車両の走行が規制されることになる。スロープは車両1台分の走行幅となっており、スロープにおいては交互通行が余儀なくされている。この状態は上述したような螺旋状方式とワンウエイ方式のいずれの車両走行経路においても同様である。
【0009】
このため、従来の自動車専用船においては、商品車両の搬入あるいは搬出ドライバーおよび足車ドライバーは対向車に注意を払って運転操作を行う必要があるので、低速走行が余儀なくされており、船倉内へ商品車両を搬入する積荷作業、および船倉内から商品車両を搬出する揚荷作業の効率化を阻害する要因となっている。また、車両の走行安全を確保するために、スロープ近傍に走行車両を監視する監視作業員を配置するようにすると、商品車両の荷役作業に多くの作業者が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、自動車専用船における荷役作業を効率的に行うようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自動車専用船は、それぞれ商品車両を収容する複数の積載甲板が船体に層状に設けられて複数階に仕切られた船倉内に、当該船倉内と船外との間で商品車両を運転する運転者を足車車両により前記船倉内と船外との間で輸送して商品車両の荷役作業を行うようにした自動車専用船であって、前記船体の幅方向左舷側に設けられ、上下の前記積載甲板の間でそれぞれ前記車両を案内する複数のスロープからなる左舷側スロープ群と、前記船体の幅方向右舷側に設けられ、上下の前記積載甲板の間でそれぞれ前記車両を案内する複数のスロープからなる右舷側スロープ群とを有し、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群とのそれぞれの前記スロープにおいて商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両とが同時に対向しないようにそれぞれの前記スロープを一方通行路とする。
【0012】
本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープ群の前記スロープを前記商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両との一方のみを常時通行させる一方通行路とし、前記右舷側スロープ群の前記スロープを前記商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両との他方のみを常時通行させる一方通行路とすることを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープと前記右舷側スロープにおける前記スロープを、前記商品車両を走行させる一方通行路と、これに対して逆方向に移動する前記足車車両を走行させる一方通行路とに時間差を置いて切り換えることを特徴とする。
【0013】
本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群とを前記船体の幅方向に対応させて配置することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群をそれぞれ前記船体の長手方向に向けて一直線状に設けることを特徴とする。本発明の自動車専用船は、それぞれの前記スロープ群と前記積載甲板とを踊り場または分岐路を介して連通することを特徴とする。
【0014】
本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープ群は、車両搬出入ゲートが設けられた搬出入階の積載甲板とこれよりも2階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第1の左舷側スロープ群と、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第2の左舷側スロープ群とを有する一方、前記右舷側スロープ群は、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第1の右舷側スロープ群と、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第2の右舷側スロープ群とを有することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記上層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船尾側に向けて配置することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記上層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船首側に向けて配置することを特徴とする。
【0015】
本発明の自動車専用船は、前記左舷側スロープは、さらに、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階下側の積載甲板とそれよりも2階下側毎の積載甲板とを相互に連結する案内スロープ片が設けられた下層用の第1の左舷側スロープ群と、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階下側の積載甲板とそれよりも2階下側毎の積載甲板とを相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第2の左舷側スロープ群とを有する一方、前記右舷側スロープは、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階下側の積載甲板とそれよりも2階下側毎の積載甲板とを相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第1の右舷側スロープ群と、前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階下側の積載甲板とそれよりも2階下側毎の積載甲板とを相互に連結する案内スロープ片が設けられた下層用の第2の右舷側スロープ群とを有することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記下層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船首側に向けて配置することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記下層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船尾側に向けて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、左舷側スロープ群のスロープと右舷側スロープ群のそれぞれのスロープが一方通行路となっているので、同一のスロープにおいて同時に商品車両と足車車両とが対向することなく、車両はそれぞれのスロープを迅速かつ円滑に走行することができ、自動車専用船における商品車両の積荷作業および揚荷作業、つまり荷役作業を短時間に効率的に行うことができる。荷役作業時には、左舷側スロープ群と右舷側スロープ群の一方を商品車両とこれに追従して走行する足車車両を常時走行させ、左舷側スロープ群と右舷側スロープ群の他方を戻り走行の足車車両を常時走行させるようにする。また、荷役作業時には、それぞれのスロープを時間差を置いて商品車両と戻りの足車車両のいずれか一方のみの一方通行路とする。
【0017】
左舷側と右舷側のスロープ群は、船体の幅方向に対応して配置されているので、搬出入階の積載甲板つまり積載デッキにおける積載甲板とスロープとの間における車両の移動を相互に対応関係にある左右両側で行うことができ、荷役作業を効率的に行うことができる。
【0018】
それぞれのスロープ群と各積載甲板は、踊り場を介するか分岐路を介して一直線状に連結されているので、スロープ群を構成する各々のスロープにおける車両は蛇行したり旋回したりすることなく迅速に行うことができ、荷役作業を効率的に行うことができる。
【0019】
左右のスロープ群をそれぞれ複数系統設けると、それぞれのスロープ群を使用して効率的に荷役作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態である自動車専用船の右舷側の外観を示す正面図であり、(B)は(A)の平面図である。
【図2】(A)は図1(B)における2A−2A線方向から見た船体左舷側の船倉内構造を示す断面図であり、(B)は図1(B)における2B−2B線方向から見た船体右舷側の船倉内構造を示す断面図である。
【図3】(A)は左舷側の船倉内におけるスロープの配置形態を示す概略図であり、(B)は右舷側の船倉内におけるスロープの配置形態を示す概略図である。
【図4】搬出入階の積載甲板よりも上層側の積載甲板に設けられたスロープを示す概略斜視図である。
【図5】搬出入階の積載甲板よりも下層側の積載甲板に設けられたスロープを示す概略斜視図である。
【図6】搬出入階の積載甲板とそれよりも上側2層との間におけるスロープの配置状態を示す平面図である。
【図7】搬出入階の積載甲板とそれよりも下側2層との間におけるスロープの配置状態を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である自動車専用船における搬出入階の積載甲板よりも上層側の積載甲板に設けられたスロープを示す概略斜視図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である自動車専用船における搬出入階の積載甲板よりも下層側の積載甲板に設けられたスロープを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1に示される自動車専用船は、船体20の右舷側壁の船尾側部と船首側部との2個所に車両搬出入ゲート21,22が設けられている。船尾には船体20を推進するスクリューつまりプロペラ23が設けられており、船体20の航行方向は船尾に設けられたラダーつまり舵24により操舵され、プロペラ23は図2に示されるようにエンジンルーム25内の機関により駆動される。
【0023】
船体20内には、図2に示されように、それぞれ貨物としての商品車両を収容するために、最下段から最上段まで13段のデッキつまり積載甲板1〜13が層状となって設けられており、船倉内は積載甲板1〜13によって13階に仕切られている。最上段の積載甲板13は、ガレージデッキとも言われており、船体最上段の甲板に設けられる構造物26により覆われて商品車両が構造物26内に収容されるようになっている。なお、符号27は船橋と居住区が設けられた構造物を示す。
【0024】
積載甲板5、つまり5番デッキは、船体20の後端部と前端部に設けられた車両搬出入ゲート21,22により船外に開口される搬出入階となっている。この積載甲板5と岸壁との間には、図1(B)に示されるように、車両搬出入ゲート21を介して船尾側のランプウエイ28が船体20に対して傾斜して掛け渡され、車両搬出入ゲート22を介して船首側のランプウエイ29が船体20に対して傾斜して掛け渡されるようになっており、それぞれのランプウエイ28,29を介して岸壁と積載甲板5との間で車両の積荷作業と揚荷作業つまり荷役作業が行われる。
【0025】
図2(A)に示されるように、船体20の幅方向左舷側には船体の左舷壁に沿って左舷側スロープ群Saが設けられている。左舷側スロープ群Saは、搬出入階の積載甲板5とこれよりも上層側の各積載甲板6〜13との間で車両を案内する第1と第2の2系統の上層用の左舷側スロープ群Sa1,Sa2を有している。さらに、左舷側スロープ群Saは、搬出入階の積載甲板5とこれよりも下層側の各積載甲板1〜4との間で車両を案内する第1と第2の2系統の下層用の左舷側スロープ群Sa3,Sa4を有している。
【0026】
それぞれの左舷側スロープ群Sa1〜Sa4は、図3(A)、図4および図5に示されるように、上下の積載甲板の間でそれぞれ車両を案内する複数のスロープにより形成され、上層用の左舷側スロープ群Sa1,Sa2は、船体20の前後方向にずれて相互に平行となっている。なお、図4および図5においては、各々のスロープには網目が付されている。
【0027】
上層用の第1の左舷側スロープ群Sa1は、図3(A)および図4に示されるように、4つのスロープ31a〜34aを有し、搬出入階の積載甲板5とこれよりも2階上側の積載甲板7つまり7番デッキとがスロープ31aにより連結され、積載甲板7とこれよりも2階上側の積載甲板9つまり9番デッキとがスロープ32aにより連結されている。さらに、積載甲板9とこれよりも2階上側の積載甲板11つまり11番デッキとがスロープ33aにより連結され、積載甲板11とこれよりも2階上側の積載甲板13つまり13番デッキとがスロープ34aにより連結されている。このように、上層用の第1の左舷側スロープ群Sa1は、全て2階分の長さのジャンピングスロープにより構成され、積載甲板5と奇数番のデッキとを連結させている。スロープ31aは積載甲板5と左舷側スロープ群Sa1との間で車両をアクセスするとともに積載甲板5,7の間で車両を案内するための振り分けスロープとなっており、他のスロープ32a〜34aは、上下の積載甲板の間で車両を案内する案内スロープとなっている。
【0028】
上層用の第2の左舷側スロープ群Sa2は、図3(A)および図4に示されるように、4つのスロープ41a〜44aを有し、搬出入階の積載甲板5とこれよりも1階上側の積載甲板6つまり6番デッキとがスロープ41aにより連結され、積載甲板6とこれよりも2階上側の積載甲板8つまり8番デッキとがスロープ42aにより連結されている。さらに、積載甲板8とこれよりも2階上側の積載甲板10つまり10番デッキとがスロープ43aにより連結され、積載甲板10とこれよりも2階上側の積載甲板12つまり12番デッキとがスロープ44aにより連結されている。このように、上層用の第2の左舷側スロープ群Sa2は、1階分の長さのシングルスロープと3つのジャンピングスロープとにより構成され、積載甲板5と偶数番のデッキとを連結させている。スロープ41aは積載甲板5と左舷側スロープ群Sa2との間で車両をアクセスするとともに積載甲板5,6の間で車両を案内するための振り分けスロープとなっており、他のスロープ42a〜44aは、上下の積載甲板の間で車両を案内する案内スロープとなっている。
【0029】
上層用の第1の左舷側スロープ群Sa1は、その正面が船体20の船尾側に向いており、最下段のスロープ31aから最上段のスロープ34aに向けて上層階側が船首側となるように船体20の長手方向つまり縦方向に傾斜し、最下段の振り分け用のスロープ31aは船尾側の車両搬出入ゲート21側を向いている。同様に、上層用の第2の左舷側スロープ群Sa2は、その正面が船体20の船尾側に向いており、最下段のスロープ41aから最上段のスロープ44aに向けて上層階側が船首側となるように船体20の長手方向に傾斜し、最下段の振り分け用のスロープ41aは船尾側の車両搬出入ゲート21側を向いている。
【0030】
下層用の左舷側スロープ群Sa3,Sa4は、図3(A)および図5に示されるように、船体20の前後方向にずれて相互に平行となっており、下層用の第1の左舷側スロープ群Sa3は、2つのスロープ51a,52aを有し、搬出入階の積載甲板5とこれよりも2階下側の積載甲板3つまり3番デッキとがスロープ51aにより連結され、積載甲板3とこれよりも2階下側の積載甲板1つまり1番デッキとがスロープ52aにより連結されている。このように、下層用の第1の左舷側スロープ群Sa3は、2つのジャンピングスロープにより構成され、積載甲板5と奇数番のデッキとを連結させている。スロープ51aは積載甲板5と左舷側スロープ群Sa3との間で車両をアクセスするとともに積載甲板5,3の間で車両を案内するための振り分けスロープとなっており、他のスロープ52aは、上下の積載甲板の間で車両を案内する案内スロープとなっている。
【0031】
下層用の第2の左舷側スロープ群Sa4は、図3(A)および図5に示されるように、2つのスロープ61a,62aを有し、搬出入階の積載甲板5とこれよりも1階下側の積載甲板4つまり4番デッキとがスロープ61aにより連結され、積載甲板4とこれよりも2階下側の積載甲板2つまり2番デッキとがスロープ62aにより連結されている。このように、下層用の第2の左舷側スロープ群Sa4は、シングルスロープとジャンピングスロープとにより構成され、積載甲板5と偶数番のデッキとを連結させている。スロープ61aは積載甲板5と左舷側スロープ群Sa4との間で車両をアクセスするとともに積載甲板5,4の間で車両を案内するための振り分けスロープとなっており、他のスロープ62aは、上下の積載甲板の間で車両を案内する案内スロープとなっている。
【0032】
下層用の第1の左舷側スロープ群Sa3は、その正面が船首側を向いており、上段側のスロープ51aから下段側のスロープ52aに向けて下層階側が船尾側となるように船体20の長手方向に傾斜し、上段側の振り分け用のスロープ51aは船首側の車両搬出入ゲート22側を向いている。同様に、下層用の第2の左舷側スロープ群Sa4は、その正面が船首側を向いており、上段側のスロープ61aから下段側のスロープ62aに向けて下層階側が船尾側となるように船体20の長手方向に傾斜し、上段側の振り分け用のスロープ61aは船尾側の車両搬出入ゲート22側を向いている。
【0033】
図4に示されるように、左舷側スロープ群Sa1を構成するスロープ31aの上端部とスロープ32aの下端部との間における積載甲板7の領域は踊り場35aとなっており、踊り場35aは両方のスロープ31a,32aの間で車両の走行を案内し、積載甲板7に収容される車両は踊り場35aを介して積載甲板7に搬入される。他の3つのスロープ32a,33a,34a相互間にも同様の踊り場35aが設けられている。積載甲板5のうちスロープ31aの下端部に臨む領域は踊り場36aとなっており、積載甲板13のうちスロープ34aの上端部に臨む領域は踊り場37aとなっている。このように、左舷側スロープ群Sa1は踊り場35aを介して一直線状となっている。同様に、左舷側スロープ群Sa2を構成するスロープ41a〜44a相互間の領域は踊り場45aとなっており、左舷側スロープ群Sa2の上下端に対応する積載甲板5,12の領域は踊り場46a,47aとなっている。
【0034】
このように、踊り場35aを介して左舷側スロープ群Sa1を構成するスロープ31a〜34aは一直線状に連なっており、他の左舷側スロープ群Sa2を構成するスロープ41a〜44aも踊り場45aを介して一直線状に連なっている。
【0035】
さらに、図5に示されるように、他の左舷側スロープ群Sa3を構成するスロープ51a,52a相互間の領域は踊り場55aとなっており、左舷側スロープ群Sa4を構成するスロープ61a,62a相互間の領域は、踊り場65aとなっている。それぞれの左舷側スロープ群Sa3,Sa4の上下端に対応する領域は踊り場56a,57a,66a,67aとなっている。このように、それぞれの左舷側スロープ群Sa3,Sa4を構成するスロープも踊り場を介して一直線状に連なっている。
【0036】
図4および図5に示されるように、それぞれの積載甲板にはスロープが貫通する領域には中途デッキ開口部71が設けられ、スロープの上端部が連結される領域にはスロープ開口部72が設けられている。図4に示されるように、中途デッキ開口部71には安全手摺71aが取り付けられ、スロープ開口部72には安全手摺72aが取り付けられている。ただし、図4においては1つの中途デッキ開口部71のみに安全手摺71aが示され、1つのスロープ開口部72のみに安全手摺72aが示されており、他の安全手摺は省略されている。
【0037】
船体20の右舷側には、図3(b),図4および図5に示されるように、左舷側スロープ群Saに対応させて右舷側スロープ群Sbが設けられている。右舷側スロープ群Sbの構造は、左舷側スロープ群Saと同様であり、図においては、右舷側スロープ群Sbを構成する部材には、左舷側スロープ群Saを構成する部材の参照符号aに換えて参照符号bが付されており、重複した説明は省略する。
【0038】
図4に示されるように、左舷側スロープ群Sa1のスロープ31aと右舷側スロープ群Sb1のスロープ31bは、船体20の長手方向にほぼ同一の位置となって左右に対応して配置されている。他のスロープについても左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbとにおけるスロープは左右に対応して対称的に設けられている。
【0039】
次に、船倉内に商品車両を搬入する積荷作業の手順について説明する。積荷作業は、それぞれ商品車両を運転する複数人の運転者つまり搬入ドライバーと1台の足車車両を運転する運転者つまり足車ドライバーとからなる車両グループにより行われる。車両グループは、複数台の商品車両と1台の足車車両とを連ならせて出港地の岸壁から積載甲板5に走行した後に、いずれかのスロープを介して所定の積載甲板の積載位置までそれぞれの車両を走行させる。積載位置まで搬入された商品車両は駐車誘導作業者により誘導されて駐車専用の運転者つまり駐車ドライバーにより所定の駐車位置に移動され、駐車位置まで移動された商品車両は固縛作業者により駐車位置に固縛される。商品車両を所定の積載位置まで走行させた搬入ドライバーは足車車両に乗り移って足車車両により岸壁まで戻ることになる。
【0040】
このような積荷作業においては、船体20内には左舷側に寄せて左舷側スロープ群Saが配置され、右舷側に寄せて右舷側スロープ群Sbが配置されているので、それぞれを構成する各々のスロープを一方通行路として各々のスロープにおいては搬入走行する商品車両および足車車両と、これに対して逆方向に戻り走行する足車車両とが同時に対向しないようにして車両走行が行われる。
【0041】
積荷作業形態としては、左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbの一方を商品車両と足車車両の搬入走行専用の走行路とし、他方のスロープ群を足車車両の戻り走行専用の走行路として行う形態がある。例えば、左舷側スロープ群Saを商品車両と足車車両の搬入走行専用の走行路とし、右舷側スロープ群Sbを足車車両の戻り走行専用の走行路とすると、それぞれのスロープは常時一方通行路となる。
【0042】
このような積荷作業形態に加えて、さらに他の積荷作業形態としては、船体20の左右両舷側にスロープ群Sa,Sbが配置されているので、それぞれのスロープを商品車両と足車車両の搬入走行させる一方通行路と、足車車両の戻り走行させる一方通行路とに、時間差を置いて切り換えるようにする形態がある。例えば、左舷側スロープ群Sa1を介して商品車両と足車車両の搬入走行が終了した後に、同じ左舷側スロープ群Sa1を介して足車車両を船倉内から岸壁に戻り走行させる。足車車両が船外に走行した後には、同じ左舷側スロープ群Sa1を介して商品車両と足車車両の搬入走行が繰り返されることになる。左舷側スロープ群Sa1以外の左舷側スロープ群Sa2、並びに右舷側スロープ群Sbについても同様に、時間差を置いてそれぞれにおけるスロープが商品車両と足車車両を搬入走行させる一方通行路と、足車車両のみを戻り走行させる一方通行路とに切り換えられることになる。
【0043】
次に、船倉内から商品車両を岸壁に陸揚げする揚荷作業の手順について説明する。揚荷作業は、それぞれ商品車両を運転する複数人の運転者つまり搬出ドライバーと1台の足車車両を運転する足車ドライバーとからなる車両グループにより行われる。車両グループの搬出ドライバーは、足車車両に搭乗して駐車位置まで移動し、固縛作業者により固縛が解除された商品車両をいずれかのスロープを介して積載甲板5にまで走行させた後、船倉内から寄港地の岸壁まで走行させる。このときには、足車車両は商品車両とともに岸壁まで連なって走行する。商品車両を岸壁まで走行させた搬出ドライバーは足車車両に乗り移って足車車両により船倉内の駐車位置まで戻ることになる。
【0044】
このような揚荷作業においても、船体20内には左舷側に寄せて左舷側スロープ群Saが配置され、右舷側に寄せて右舷側スロープ群Sbが配置されているので、それぞれを構成する各々のスロープを一方通行路として各々のスロープにおいては搬出走行する商品車両および足車車両と、これに対して逆方向に戻り走行する足車車両とが同時に対向しないようにして車両走行が行われる。
【0045】
揚荷作業形態としては、積荷作業と同様に、左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbの一方を商品車両と足車車両の搬出走行専用の走行路とし、他方のスロープ群を足車車両の戻り走行専用の走行路として行う形態と、それぞれのスロープを商品車両と足車車両の搬出走行させる一方通行路と、足車車両の戻り走行させる一方通行路とに時間差を置いて切り換えるようにする形態とがある。
【0046】
いずれの積荷作業形態においても、それぞれのスロープ群が一直線状となっているので、それぞれの車両は旋回走行したり蛇行走行したりすることなく、所定の積載甲板まで一気に搬入走行することができる。同様に、いずれの揚荷作業形態においても、所定の積載甲板から搬出入階の積載甲板5まで一気に搬出走行することができる。例えば、積荷作業に際して左舷側スロープ群Sa1を利用して搬出入階の積載甲板5から最上段の積載甲板13にまで走行する車両は、減速することなく一気に積載甲板13にまで走行することができる。
【0047】
さらに、それぞれのスロープにおいては、搬入あるいは搬出走行する商品車両および足車車両と、これに対して逆方向に戻り走行する足車車両が各スロープを介して対向し合うことがなく、商品車両と足車車両は対向車が現れることがないので、迅速に走行することができる。これにより、積荷作業および揚荷作業を効率的に迅速に行うことができる。
【0048】
例えば、商品車両の積荷作業時に、左舷側スロープ群Saを商品車両と足車車両の搬入走行専用の走行路とし、右舷側スロープ群Sbを足車車両の戻り走行専用の走行路とした場合には、左右両側のスロープ群Sa,Sbが船体20の左右に対応して対称的に設けられており、各積載甲板では左舷側の踊り場と右舷側の踊り場とが船体20の左右に対応した位置に配置されているので、商品車両の搬入ドライバーは足車車両に対して迅速に乗り移ることができる。つまり、商品車両の各積載甲板に対する積荷は、各積載甲板の踊り場から離れた領域から行われることになり、各積載甲板における商品車両の積荷が進行するに伴って踊り場の周囲に対する積荷が最終の積み込み領域となる。最終の積み込み領域においては、商品車両の搬入ドライバーを乗せた足車車両は左側から右側に移動して戻り走行専用の走行路から迅速に戻り走行することができる。この戻り走行時には足車車両に対しては他の車両グループの車両が対向することはない。
【0049】
図6には搬出入階の積載甲板5とその上層側2階分の積載甲板6,7が示されており、これらの間に設けられたスロープが二点鎖線で示されている。図7には積載甲板5とその下層側2階分の積載甲板4,3が示されており、これらの間に設けられたスロープが同様に二点鎖線で示されている。
【0050】
図6および図7を参照して、左舷側スロープ群Saを商品車両と足車車両の搬入走行専用の走行路とし、右舷側スロープ群Sbを足車車両の戻り走行専用の走行路とした積荷作業形態により商品車両を積荷する作業手順について説明する。図6および図7においては、積荷作業の商品車両と足車車両の搬入走行が実線の矢印で示され、船外に戻る足車車両の戻り走行が二点鎖線の矢印で示されている。
【0051】
船体20のそれぞれのランプウエイ28,29は三車線分の幅寸法を有しており、二車線分が商品車両と足車車両の搬入走行専用とし、他の一車線分が足車車両の戻り走行専用として使用される。したがって、2組の積荷作業の車両グループが同時に船尾側のランプウエイ28から積荷作業を行うことができるとともに、他の2組の車両グループも同時に船首側のランプウエイ29から積荷作業を行うことができる。
【0052】
図6に示されるように、ランプウエイ28から乗り込んだ車両グループは、船尾側に振り分け用のスロープ31a,41aが向いた状態となっている上層用の2系統の左舷側スロープ群Sa1,Sa2の何れかを使用して積載甲板5からそれよりも上層側の何れかの積載甲板に一気に走行することになる。例えば、左舷側スロープ群Sa1のスロープ31aに乗り込んだ積荷作業の車両グループは、積載甲板5から積載甲板7まで走行した後、スロープ32aを使用して最上層の積載甲板13にまで走行することができる。したがって、この車両グループの商品車両と足車車両は、積載甲板5よりも2段階ずつ上側の各積載甲板に乗り込むことができるとともにそれぞれの各積載甲板の所定の積載位置まで走行することができる。
【0053】
同様に、スロープ41aに乗り込んだ積荷作業の車両グループは、積載甲板5から積載甲板6まで走行した後、スロープ42aを使用して積載甲板12にまで走行することができる。したがって、この車両グループの商品車両と足車車両は、積載甲板5よりも1段階上側の積載甲板6とそれよりも2段階ずつ上側の各積載甲板に乗り込むことができるとともにそれぞれの各積載甲板の所定の積載位置まで走行することができる。
【0054】
このように、左舷側スロープ群Sa1,Sa2のいずれかを使用して積載位置まで走行した商品車両の搬入ドライバーは、商品車両とともに走行した足車車両に乗り込んだ後に、右舷側スロープ群Sb1,Sb2のいずれかを使用して船外に移動することになる。商品車両とこれに対して逆方向に戻り走行する足車車両は、左舷側と右舷側に離れて配置されたスロープを使用することになるので、各スロープで車両相互が対向し合うことがなく、戻り走行する足車車両は、搬入走行する他の車両グループの商品車両と足車車両の存在に気遣うことなく、迅速かつ安全に船外に走行することができる。これにより、商品車両を船倉内に積み込む積荷作業を効率的に行うことができる。
【0055】
図7に示されるように、ランプウエイ29から乗り込んだ積荷作業の車両グループは、船首側に振り分け用のスロープ51a,61aが向いた状態となっている下層用の2系統の左舷側スロープ群Sa3,Sa4の何れかを使用して積載甲板5からそれよりも下層側の何れかの積載甲板に一気に走行して積荷作業をすることになる。例えば、左舷側スロープ群Sa3のスロープ51aに乗り込んだ車両グループの商品車両と足車車両は、積載甲板5から積載甲板3まで走行した後、スロープ52aを使用して最下層の積載甲板1にまで走行することができる。したがって、この積荷作業の車両グループは、積載甲板5よりも2段階ずつ下側の各積載甲板に乗り込むことができるとともにそれぞれの各積載甲板の所定の積載位置まで走行することができる。
【0056】
同様に、スロープ61aに乗り込んだ車両グループの商品車両と足車車両は、積荷作業に際して積載甲板5から積載甲板4まで走行した後、スロープ62aを使用して積載甲板2にまで走行することができる。したがって、この積荷作業の車両グループは、積載甲板5よりも1段階下側の積載甲板4とそれよりも2段階下側の各積載甲板2に乗り込むことができるとともにそれぞれの積載甲板の所定の積載位置まで走行することができる。
【0057】
図6に示されるように、ランプウエイ28が船尾の右舷側に掛け渡される場合には、左舷側スロープ群Saを商品車両と足車車両の搬入走行専用の走行路として使用すると、車両グループにより運転される商品車両と足車車両は大きな円弧を描いてスロープ31a,41aに移動することになるので、減速することなく、車両グループを迅速に搬入走行させることができる。ランプウエイ29から搬入される車両グループについても同様である。
【0058】
このように、左舷側スロープ群Sa1,Sa2の何れかを使用して積載位置まで走行した商品車両の搬入ドライバーは、商品車両とともに走行した足車車両に乗り込んだ後に、右舷側スロープ群Sb1,Sb2の何れかを使用して船外に移動することになるので、各スロープで車両相互が対向し合うことがなく、戻り走行する足車車両は、搬入走行する他の車両グループの存在に気遣うことなく、迅速かつ安全に船外に走行することができる。これにより、積荷作業を効率的に行うことができる。
【0059】
しかも、船体20の左右両側に左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbとが対応して配置され、各積載甲板におけるスロープ開口部72は左右に対応した位置に設けられているので、商品車両の搬入ドライバーは足車車両に乗り込んで迅速に右舷側スロープ群Sbのスロープを介して船外に移動することができる。
【0060】
図6および図7は、商品車両を積荷する積荷作業手順について矢印を付して示しているが、船倉内から商品車両を陸揚げする揚荷作業を行う場合にも、同様に車両が対向することがないので、揚荷作業を効率的に行うことができる。
【0061】
上述した自動車専用船の船体20には、その左右両側の左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbがそれぞれを2系統ずつ設けられているが、他の実施の形態としては、3系統ずつあるいはそれ以上設けるようにしたタイプもある。例えば3系統ずつ設けたタイプにおいては、2階、3階ずつ、あるいはそれ以上のジャンピングスロープとすることができる。また、偶数、奇数にかかわらず、任意のデッキと任意のデッキを結ぶスロープとしても良い。
【0062】
図8および図9は自動車専用船の他の実施の形態を示す図である。図8には積載甲板5とこれよりも上層側の積載甲板とに設けられた左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbが示されており、図9には積載甲板5とこれよりも下層側の積載甲板とに設けられた左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbとが示されている。
【0063】
図8に示されるように、左舷側スロープ群Saは、各甲板相互間を連結する8つのスロープ81aにより構成されており、それぞれのスロープ81aにより積載甲板相互が直接連結されている。したがって、スロープ相互間には踊り場は設けられておらず、左舷側スロープ群Saは直接的に一直線状に連なっている。各々の積載甲板5〜12に対応させてスロープの上端部には分岐路82aが設けられており、左舷側スロープ群Saは各積載甲板5〜12に分岐路82aを介して連結されている。一方、右舷側スロープ群Sbは、左舷側スロープ群Saと同一の構造となってこれに対応して船体の右舷側に設けられており、右舷側スロープ群Sbにおいては左舷側スロープ群Saに対応する部材には参照符号aに換えて参照符号bが付されている。
【0064】
同様に、図9に示されるように、左舷側スロープ群Saは、各甲板相互間を連結する4つのスロープ91aにより構成されており、それぞれのスロープ91aにより積載甲板相互が直接連結されており、左舷側スロープ群Saには各積載甲板に対応させて分岐路92aが設けられている。一方、右舷側スロープ群Sbは、左舷側スロープ群Saと同一の構造となってこれに対応して船体の右舷側に設けられており、右舷側スロープ群Sbには各積載甲板に対応させて分岐路92bが設けられている。
【0065】
図8および図9に示されるように、それぞれのスロープ群Sa,Sbに乗り込んだ積荷作業の車両グループは分岐路を利用して任意の階の積載甲板に乗り込むことができるとともに、戻りの足車車両は該当する積載甲板に対応する分岐路を利用してスロープ群Sa,Sbのスロープを介して船外に戻り走行することができる。図8および図9においては、左舷側と右舷側の1系統のスロープ群が示されているが、船体サイズに応じては、上述した第1の実施の形態と同様に2系統のスロープ群を設けることになる。
【0066】
2系統のスロープ群を設けるようにした実施の形態としては、図8および図9に示されるように、積載甲板1,5および13以外の各積載甲板に対応させて分岐路を設けるようにしたタイプと、第1の実施の形態と同様に、奇数番のデッキつまり積載甲板に対応させて分岐路を設けるようにしたスロープ群と、偶数番のデッキに対応させて分岐路を設けるようにしたスロープ群とに2系統を区分けするようにしたタイプとがある。さらに、船体のサイズによっては、スロープ群を3系統ずつあるいはそれ以上設け、2階、3階ずつあるいはそれ以上のジャンピングスロープとするタイプとしても良いし、偶数、奇数にかかわらず、任意のデッキと任意のデッキを結ぶスロープとしても良い。
【0067】
このタイプのスロープ群を有する自動車専用船においても、上述したように、左舷側スロープ群Saと右舷側スロープ群Sbの一方を車両グループの搬入走行専用の走行路とし、他方を足車車両の戻り走行専用の走行路とした積荷作業を行うことかできるとともに、それぞれのスロープを積荷作業の車両グループの商品車両と足車車両のみを走行させる一方通行路と、戻りの足車車両専用の一方通行路とに時間差を置いて切り換えるようにして積荷作業を行うことができる。揚荷作業についても同様にして行うことができる。
【0068】
それぞれのスロープ群Sa,Sbの配置形態としては、上層用の左舷側スロープ群Sa1,Sa2と上層用の右舷側スロープ群Sb1,Sb2とを、それぞれの振り分けスロープ31a,31bが船首側の車両搬出入ゲート22に向くようにして配置する形態がある。その場合には、下層用の左舷側スロープ群Sa3,Sa4と下層用の右舷側スロープ群Sb3,Sb4とを、それぞれの振り分けスロープ51a,51bが船尾側の車両搬出入ゲート21に向くようにして配置することになる。このような配置形態の自動車専用船においては、積荷作業時に、積載甲板5より上層階の積載甲板へは車両搬出入ゲート22を介して商品車両が搬入され、積載甲板5より下層階の積載甲板へは車両搬出入ゲート21を介して商品車両が搬入される。一方、揚荷作業時には、積載甲板5よりも上層階の積載甲板から搬出される商品車両は車両搬出入ゲート22を介して搬出され、積載甲板5よりも下層階の積載甲板へは車両搬出入ゲート21を介して商品車両が搬出される。
【0069】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、スロープ群には上述したように、スロープ群と積載甲板とを踊り場を介して接続する形態と、分岐路を介して接続する形態とがあるが、これらをそれぞれの左舷側と右舷側のスロープ群に混在させるようにしても良い。また、搬出入の積載甲板5よりも上層階側のスロープ群と下層側のスロープ群とをそれぞれ2系統ずつとしているが、船体のサイズによっては、下層側のスロープ群における左舷側と右舷側とのそれぞれを1系統ずつとしても良く、上層側のスロープ群における左舷側と右舷側とのそれぞれを3系統ずつとしても良い。
【0070】
図示する自動車専用船においては、車両搬出入ゲート21,22は船体の側面側に寄せて設けられているが、船尾に車両搬出入ゲート21を設けて船体に一直線状にランプウエイ28を掛け渡すようにし、船首に車両搬出入ゲート22を設けて船体に一直線状にランプウエイ29を掛け渡すようにしても良い。また、船尾側と船首側とにそれぞれ車両搬出入ゲート21,22が設けられているが、船体のサイズによっては一方のみを船体に設けるようにしても良い。
【0071】
図示する船倉内には13層の積載甲板が設けられているが、積載甲板の段数は13段に限られない。また、搬出入階の積載甲板5は最下層から5段目となっているが、下層側の積載甲板の段数によっては搬出入階の積載甲板の下側からの段数は相違することになる。
【符号の説明】
【0072】
1〜13 積載甲板
20 船体
21,22 車両搬出入ゲート
28,29 ランプウエイ
31a〜34a スロープ
31b〜34b スロープ
41a〜44a スロープ
41b〜44b スロープ
51a,52a スロープ
51b,52b スロープ
61a,62a スロープ
61b,62b スロープ
Sa 左舷側スロープ群
Sa1 第1の左舷側スロープ群(上層用)
Sa2 第2の左舷側スロープ群(上層用)
Sa3 第1の左舷側スロープ群(下層用)
Sa4 第2の左舷側スロープ群(下層用)
Sb 右舷側スロープ群
Sb1 第1の右舷側スロープ群(上層用)
Sb2 第2の右舷側スロープ群(上層用)
Sb3 第1の右舷側スロープ群(下層用)
Sb4 第2の右舷側スロープ群(下層用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ商品車両を収容する複数の積載甲板が船体に層状に設けられて複数階に仕切られた船倉内に、当該船倉内と船外との間で商品車両を運転する運転者を足車車両により前記船倉内と船外との間で輸送して商品車両の荷役作業を行うようにした自動車専用船であって、
前記船体の幅方向左舷側に設けられ、上下の前記積載甲板の間でそれぞれ前記車両を案内する複数のスロープからなる左舷側スロープ群と、
前記船体の幅方向右舷側に設けられ、上下の前記積載甲板の間でそれぞれ前記車両を案内する複数のスロープからなる右舷側スロープ群とを有し、
前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群とのそれぞれの前記スロープにおいて商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両とが同時に対向しないようにそれぞれの前記スロープを一方通行路とすることを特徴とする自動車専用船。
【請求項2】
請求項1記載の自動車専用船において、前記左舷側スロープ群の前記スロープを前記商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両との一方のみを常時通行させる一方通行路とし、前記右舷側スロープ群の前記スロープを前記商品車両とこれに対して逆方向に移動する前記足車車両との他方のみを常時通行させる一方通行路とすることを特徴とする自動車専用船。
【請求項3】
請求項1記載の自動車専用船において、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群における前記スロープを、前記商品車両を走行させる一方通行路と、これに対して逆方向に移動する前記足車車両を走行させる一方通行路とに時間差を置いて切り換えることを特徴とする自動車専用船。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車専用船において、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群とを前記船体の長手方向に対応させて配置することを特徴とする自動車専用船。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車専用船において、前記左舷側スロープ群と前記右舷側スロープ群をそれぞれ前記船体の長手方向に向けて一直線状に設けることを特徴とする自動車専用船。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車専用船において、それぞれの前記スロープ群と前記積載甲板とを踊り場または分岐路を介して連通することを特徴とする自動車専用船。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車専用船において、
前記左舷側スロープ群は、
車両搬出入ゲートが設けられた搬出入階の積載甲板とこれよりも2階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第1の左舷側スロープ群と、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第2の左舷側スロープ群とを有する一方、
前記右舷側スロープ群は、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第1の右舷側スロープ群と、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階上側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階上側の積載甲板に対して2階上側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた上層用の第2の右舷側スロープ群とを有することを特徴とする自動車専用船。
【請求項8】
請求項7記載の自動車専用船において、前記上層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船尾側に向けて配置することを特徴とする自動車専用船。
【請求項9】
請求項7記載の自動車専用船において、前記上層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船首側に向けて配置することを特徴とする自動車専用船。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車専用船において、
前記左舷側スロープ群は、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階下側の積載甲板に対して2階下側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第1の左舷側スロープ群と、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階下側の積載甲板に対して2階下側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第2の左舷側スロープ群とを有する一方、
前記右舷側スロープ群は、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも2階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記2階下側の積載甲板に対して2階下側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第1の右舷側スロープ群と、
前記搬出入階の積載甲板とこれよりも1階下側の積載甲板とを連結する振り分けスロープ、および前記1階下側の積載甲板に対して2階下側毎の積載甲板を相互に連結する案内スロープが設けられた下層用の第2の右舷側スロープ群とを有することを特徴とする自動車専用船。
【請求項11】
請求項10記載の自動車専用船において、前記下層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船首側に向けて配置することを特徴とする自動車専用船。
【請求項12】
請求項10記載の自動車専用船において、前記下層用の前記第1および第2の左舷側スロープ群と、前記第1および前記第2の右舷側スロープ群とを、船尾側に向けて配置することを特徴とする自動車専用船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−188969(P2010−188969A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38155(P2009−38155)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)