説明

自動車専用船

【課題】船体に加わる風圧力を低減し、船体を駆動する主機の燃費低減を図る。
【解決手段】自動車専用船の船体20には複数段の積載甲板1〜13が設けられ、積載甲板により上下方向に仕切られてそれぞれ車両を収容する複数階の船倉24a〜24mが船体20に設けられている。船体20の舷側31,32には船外に開口する換気口34が設けられ、船倉24a〜24mに開口する通気口が設けられた通気ダクト41が換気口34に連通させて船体内に配置されている。通気ダクト内は換気ファンにより気流が生成され、船倉24a〜24mの換気が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ車両を収容する複数階の船倉が設けられた自動車専用船に関し、特に、船体の風圧力を低減するようにした換気装置を有する自動車専用船に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を海上輸送する自動車専用船には、乗用車を専用に輸送するPCC、および乗用車とトラックとを混在させて輸送するPCTC等がある。これらの自動車専用船は、船体内に積載甲板つまりカーデッキが複数段設けられており、それぞれの積載甲板によって船体内には、例えば10数階程度に層状となって船倉が形成されている。自動車専用船に対して出港地の岸壁から車両を搬入するために積荷作業が行われる際には各船倉内には車両が走行することになる。同様に、自動車専用船から寄港地の岸壁に車両を搬出するために揚荷作業が行われる際にも各船倉内には車両が走行することになる。積荷作業や揚荷作業が行われる際には、走行車両から排出される排気ガスが各船倉内に充満しないように、各船倉は換気装置によって換気するようにしている。自動車専用船が海上を航行する際には、定期的に船倉内を換気するようにしている。
【0003】
船倉内に外気を導入し、船倉内の空気を外部に排出して船倉内を換気するために、船体の左右の舷側に沿って上下方向にベントダクトつまり通風ダクトが配置されている。従来の自動車専用船においては、通風ダクトの上端部は上甲板から上方に突出され、上端部に設けられた開口部が換気口となっている。通風ダクトには船倉に開口させて通風口が設けられ、通風口と換気口は通風ダクトにより連通されている。各通風ダクト内にはモータにより駆動される換気ファンが設けられており、この換気ファンにより生成される空気流によって船倉内の換気が行われる。1つの通風ダクトにより複数層の船倉内を換気するには、通風ダクトには複数層の船倉に対応させて複数の通風口が設けられることになる。
【0004】
1つの通風ダクトの断面積を大きくすることには限度があることから、複数本の通風ダクトが船体の舷壁に寄せて配置されており、上甲板には複数の通風ダクトの上端部が突出して取り付けられることになる。各通風ダクトの上端部には換気口を開閉するための蓋部材が特許文献1に記載されるように開閉自在に設けられており、複数の通気ダクトの上端部を覆うように、上甲板にはハウジングが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の通気ダクトの上端部を上甲板から上方に向けて突出させ、これを覆うようにハウジングを上甲板に設けるようにすると、船舶の航行時における風圧抵抗が増加することになる。船体航行時に船体に加わる抵抗には、船底と海水間に働く摩擦抵抗、船体の航行および運動に伴って生ずる造波抵抗、さらに水面上船体構造物に生ずる風圧力抵抗がある。特に、自動車専用船の場合には、他の船種に比較して水面上構造物の容積比率および表面積が極めて大きいので、風圧力抵抗に起因した航行抵抗の影響は大きいことになる。
【0007】
風圧力抵抗に基づく風圧力が船体の航行方向に対して逆方向に発生する場合には航行時の所要馬力は増大するが、その大きさFは、F=ρCSV2/2である。水面に対する船体の航行速度に比して風速が大きくなっても、空気の比重ρは海水の約1/800であり、風圧力抵抗は水面下の抵抗に比較すると相対的に小さいと考えられる。
【0008】
しかしながら、横風下を船舶が航行する際に風圧力が船体横方向へ働いた場合には、船体の機関による推進力と横風の風圧力との合力により船体は斜め方向へ進むことになる。これは斜航と言われている。通常、船体の水面下の形状は直進時を想定して設計されているため、船体が斜航状態となると船体抵抗は著しく増大し、それに伴って燃費悪化が生ずることになる。このように、横風により船体が斜航すると、水面下の航行抵抗が増加するので、横風の影響は小さくない。したがって、水面上の船体構造物による風圧抵抗を低減することができれば、燃費改善の効果は大きくなる。
【0009】
特許文献1に記載されるように、船体の上甲板の両舷側に切欠段部を設けて上甲板の両舷側を隅切りすると、空気の剥離を防いで船体の航行抵抗を低減することができ、鉛直方向軸周りの船体回転モーメントを抑えることができる。しかし、その切欠段部に各通気ダクトの上端部を突出させるとともに通気ダクトの上端部をハウジングにより覆うようにすると、上甲板の隅切りの部分には通気ダクトを覆うためのハウジングが突出することになるので、航行抵抗を増加させることになる。
【0010】
本発明の目的は、船体に加わる風圧力を低減し、船体を駆動する機関の燃費低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自動車専用船は、船体に複数段の積載甲板が設けられ、前記積載甲板により上下方向に仕切られてそれぞれ車両を収容する複数階の船倉を有する自動車専用船であって、前記船体の舷側に船外に開口する換気口を設け、前記船倉に開口する通気口が設けられた通気ダクトを前記換気口に連通させて船体内に配置し、前記通気ダクト内に気流を生成する換気ファンを前記通気ダクトに設け、前記舷側に設けられた前記換気口を介して船倉内を換気することを特徴とする。
【0012】
本発明の自動車専用船は、前記通気ダクトは複数の前記船倉の間を前記積載甲板を貫通して前記船体の上下方向に延び、当該通気ダクトの船倉内端部に前記通気口を設け、1つの前記通気ダクトにより複数階の前記船倉内を換気することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記通気ダクトに連通する換気口を前記船体の中間階に設けることを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記換気口に連通する共通ダクトを前記舷側の内側に前記船体の長手方向に配置し、それぞれ船倉内端部に前記通気口が設けられ相互に上下方向の長さが相違する複数の前記通気ダクトを前記共通ダクトに接続し、前記共通ダクトにより連通される複数の前記通気ダクトにより前記換気口を介して複数階の前記船倉内を同時に換気することを特徴とする。
【0013】
本発明の自動車専用船は、複数の前記共通ダクトを前記船体の上下方向に相互にずらして前記船体に配置し、それぞれの前記共通ダクトに相互に上下方向の長さが相違する複数の前記通気ダクトを接続し、複数の前記共通ダクトを介して複数階の前記船倉内を同時に換気することを特徴とする。本発明の自動車専用船は、前記共通ダクトに前記共通ダクトが配置される前記船倉よりも上側階の前記船倉に延びる複数の前記通気ダクトを接続し、前記共通ダクトに前記共通ダクトが配置される前記船倉よりも下側階の前記船倉に延びる複数の前記通気ダクトを接続し、前記換気口を介して同時に換気される複数の前記船倉の中間階の前記船倉に前記共通ダクトを配置することを特徴とする。
【0014】
本発明の自動車専用船は、前記換気口を最小乾舷よりも上側に位置させて前記舷側に設けることを特徴とする。本発明の自動車専用船は、最小乾舷よりも下側に設けられる前記換気口に開閉扉を設け、前記開閉扉を当該開閉扉が閉じられたときには水が前記船体内に浸入するのを防止する水密構造とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、船外に開口する換気口を船体の舷側に設け、船倉内に開口する通気口が設けられた通気ダクトを介して換気口と通気口とを連通させるようにしたので、通気ダクトの端部は上甲板から上方に突出することがない。通気ダクトの上端部を上甲板に突出させるようにすると、これを構造物で覆う必要があり、そのような構造物が上甲板に設けられると、船体に吹き付けられる風により船体には風圧力抵抗が加わることになるが、換気口が舷側に設けられており、通気ダクトの端部は船外に突出していないので、船体に加わる風圧力抵抗を低減することができる。これにより、船体を駆動するための機関の燃費を低減することができる。
【0016】
本発明によれば、舷側に換気口を設けて船倉内に開口した通気口が設けられた通気ダクトを介して換気口と通気口とを連通させるようにしたので、全ての船倉を換気するための通気ダクトの合計長さを短くすることができる。特に、中間階に換気口を設けるようにすると、通気ダクトの合計長さを短くすることができる。これにより、車両を収容するための船倉内のスペースを広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態である自動車専用船の右舷側を示す断面図であり、(B)は(A)における1B−1B線断面図である。
【図2】図1(A)における2部の拡大断面図である。
【図3】図2における3−3線断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態における図2と同様の部分を示す断面図である。
【図5】図4における5−5線断面図である。
【図6】(A)は本発明の他の実施の形態として図1(A)に示された6部の拡大断面図であり、(B)は(A)における6B−6B線断面図である。
【図7】(A)は本発明の他の実施の形態として図1(A)に示された7部の拡大断面図であり、(B)は(A)における7B−7B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
この自動車専用船は、図1(A)に示されるように、船体20の船尾に設けられたスクリューつまりプロペラ21により図1において右方向に前進航行し、航行方向を操舵するために船尾にはラダーつまり舵22が設けられている。プロペラ21はエンジンルーム23内に設けられた機関により駆動される。
【0020】
船体20内には、最下段から最上段まで13段のカーデッキつまり積載甲板1〜13が層状となって設けられている。船体20内にはそれぞれ貨物としての車両を収容するための13階の車両収容室つまり船倉24が積載甲板1〜13により上下に仕切られて形成されている。図1(A)には、最下段の船倉24から最上階の船倉24に向けて符号a〜mが付されている。最上段の積載甲板13は、ガレージデッキとも言われており、この積載甲板13には内部に収容される車両を覆うための遮蔽構造物25が設けられるとともに、積載甲板13の船首側には船橋と居住区が設けられた船首構造物26が設けられている。
【0021】
図1(B)においては船尾側には下から5段目の積載甲板5が示され船首側には7段目の積載甲板7が示されている。図示されるように、5番デッキつまり積載甲板5の船尾には車両ゲート27が設けられており、岸壁において車両を各船倉24内に搬入したり、各船倉24内から岸壁に車両を搬出したりする際には、この車両ゲート27に図示しないランプウエイが掛け渡されることになる。自動車専用船としては、船体の左右一方の舷側に車両ゲートが設けられるタイプや、車両ゲートが船首側と船尾側とにそれぞれ設けられるタイプがある。車両ゲート27と各船倉24との間で車両走行を案内するために、船体20内には各積載甲板相互間に図示しないスロープが掛け渡されている。図1に示す自動車専用船には車両を収容する船倉24が層状となって13階分が設けられているが、階数は図示する場合に限らない。自動車専用船には通常、船倉が10階程度設けられている。
【0022】
図1(B)に示すように、船体20の舷壁体を形成する左右の舷側31,32の内側にはそれぞれ換気装置30aが配置されている。換気装置30aは、図1に示されるように、下から7階目の船倉24gの左右の舷側31,32の内側に船体20の長手方向に延びて配置される共通ダクト33を有している。それぞれの共通ダクト33は舷側31,32に船外に開口して形成された換気口34に連通している。共通ダクト33は、図2および図3に示されるように、上側壁35a、下側壁35b、左右の側壁35c,35dを有し、横断面が四角形となっており、前後両端部は仕切り壁36により閉塞されている。これにより、共通ダクト33の内部には換気口34に連通する連通室37が形成されている。
【0023】
連通室37を船外に連通させる換気口34には、雨水が連通室37内に入り込まないように、水平方向に延びる複数本の帯材からなるルーバ38が設けられている。扉部材を構成するルーバ38としては固定式と可動式とがある。ルーバ38を可動式とするとルーバ38は換気口34を開閉する開閉扉となり、船倉内を換気する際には開閉扉としてのルーバ38は開放され、換気をしないときには閉塞される。可動式のルーバ38の開閉動作は図示しないアクチュエータにより自動的に行われるようになっている。開閉扉としては、複数のルーバを使用することなく、単一の扉部材からなるものを使用するようにしても良い。
【0024】
共通ダクト33には複数本の通気ダクト41が接続されている。換気装置30aにおいては、船体20には合計12本の通気ダクト41が共通ダクト33に接続されており、図1(A)には符号a〜mが付されている。通気ダクト41の形状は、横断面形状が四角形のものでも、円形のものでも良い。共通ダクト33の上側壁35aには、それよりも上側の積載甲板を貫通して上方に向けて垂直に延びる通気ダクト41hが図1(A)および図2に示されるように接続されており、通気ダクト41hの先端部には船倉24hに開口する通気口42が設けられている。同様に、上側壁35aには、それよりも上側の積載甲板を貫通して上方に向けて垂直に延びる通気ダクト41i〜41mが接続されている。通気ダクト41i〜41mはそれぞれ先端部が船倉24i〜24mに到達する長さとなっており、通気ダクト41i〜41mの先端部には、対応する船倉に開口する通気口42が設けられている。
【0025】
共通ダクト33の下側壁35bには、それよりも下側の積載甲板を貫通して1階下側の船倉24fにまで垂直に延びる通気ダクト41fが図1(A)および図2に示すように接続されており、通気ダクト41fの先端部には船倉24fに開口する通気口42が設けられている。同様に、下側壁35bには、それよりも下側の積載甲板を貫通して下方に向けて垂直に延びる通気ダクト41a〜41eが接続されている。通気ダクト41a〜41eはそれぞれの先端部が船倉24a〜24e内に到達する長さとなっており、通気ダクト41a〜41eの先端部には、対応する船倉24に開口する通気口42が設けられている。
【0026】
共通ダクト33の側壁35cには、図3に示されるように、共通ダクト33が配置された船倉24gに開口する通気口42が設けられた通気ダクト41gが接続されている。
【0027】
それぞれの通気ダクト41には、モータ51により駆動されて通気ダクト41内に気流を生成する換気ファン52が設けられている。換気ファン52を駆動することによって、換気口34から取り込まれた船外の空気は、それぞれの通気ダクト41を介して各船倉24内に通気口42から導入される。一方、換気ファン52を逆転させることによって、各船倉24内の空気は、通気ダクト41を介して換気口34から船外に排出される。
【0028】
換気装置30aの共通ダクト33は下から7階目の船倉24gに配置されており、共通ダクト33に換気口34が設けられている。したがって、換気口34は13階の船倉24の丁度中間階に設けられており、そこから集中的に各船倉24に対する換気が行われる。ただし、共通ダクト33が配置される船倉の上下方向位置は、この階に限られず、この階から上下に3〜4階程度の範囲に配置すれば、中間階からの集中換気を行うことができる。
【0029】
上述のように、換気口34が船体20の舷側31,32に設けられており、通気ダクト41の端部が従来のように上甲板から上方を向いて船外には突出していないので、各通気ダクト41の突出端部を覆うようにハウジング等の構造物を上甲板に設けることが不要となる。これにより、船体20に吹き付けられる風により船体20に加わる風圧力抵抗を低減することが可能となり、船体を駆動するための機関の燃費を低減することが可能となる。しかも、従来のように、各船倉24に対応させて配置された通気ダクト41の上端部を上甲板である積載甲板13に突出させて設けるようにすると、全ての通気ダクト41の合計長さを長くしなければならない。これに対し、換気装置30aは換気口34が舷側31,32の上下方向の中央部に設けられており、これに連通する共通ダクト33が換気口34に対応する位置に設けられているので、共通ダクト33に接続される全ての通気ダクト41の合計長さを短くすることができる。これにより、船倉24内に車両を収容するためのスペースを広くすることができる。さらに、通気ダクト41の合計長さを短くできるので、全ての換気ファン52により生成される通気ダクト全体の気流の通気抵抗を小さくすることができ、全ての換気ファン52を駆動するための電気エネルギーを低減することができる。
【0030】
上述した通気ダクトには船体20の横方向に開口した通気口42と、船体20の長手方向に開口した通気口42とがそれぞれ形成されているが、いずれか一方の通気口42を通気ダクトに設けるようにしても良い。
【0031】
共通ダクト33と通気ダクト41a〜41mとにより1組の換気装置30aが構成されており、船体20には左右の舷側31,32の内側に同様の構造の換気装置30aが対称的に配置されている。したがって、左右一方の換気装置30aを外気を導入するように駆動し、他方の換気装置30aを船倉内の空気を排気するように駆動すると、各船倉24内には船体20に対して横方向に換気流が流れ、船倉24内が換気される。また、図2および図3に示された換気装置30aをそれぞれの舷側31,32に船体20の長手方向に間隔を隔てて複数配置することにより、船倉24内に長手方向に換気流を流して換気することになる。
【0032】
図4は換気装置の他の実施の形態における図2と同様の部分を示す断面図であり、図5は図4の5−5線断面図である。
【0033】
この換気装置30bは前述した換気装置30aの共通ダクト33と同様の構造の共通ダクト33を有している。図4に示されるように、共通ダクト33の下側壁35bには3つの通気ダクト41a〜41cが接続され、上側壁35aには3つの通気ダクト41h〜41jが接続されている。それぞれの通気ダクトには2階分の通気口42が設けられている。例えば、通気ダクト41jには、最上階の船倉24mに開口する通気口42と、その下側の船倉24lに連通する通気口42とが形成されている。したがって、1つの通気ダクト41により2階分の船倉を換気することができるので、全ての通気ダクト41の合計長さを換気装置30aよりも短くすることができる。
【0034】
このタイプの換気装置30bを船体20に設ける場合においても、船体20の左右両方の舷側31,32の内側に対称的に換気装置30bを設けることが好ましい。この換気装置30bを船体20の長手方向に間隔を隔てて複数配置すると、船倉内に長手方向に換気流を流すことができる。また、1つの通気ダクト41に3階あるいはそれ以上の階に対応させて通気口42を形成するようにしても良い。さらに、換気装置30aの通気ダクト41にはそれぞれ1階分の船倉に連通する通気口42が設けられ、換気装置30bの通気ダクト41にはそれぞれ2階分の船倉に連通する通気口42が設けられているが、それぞれの換気装置30a,30bにおける通気ダクト41として、1階分の船倉に連通する通気口42が設けられた通気ダクト41と、2階分の船倉に連通する通気口42が設けられた通気ダクト41とを混在させるようにしても良い。
【0035】
図1(A)には他の実施の形態としての換気装置30cが示されている。この換気装置30cは、船倉24jに配置される共通ダクト33と、船倉24eに配置される共通ダクト33とを有している。下側の共通ダクト33には、船倉24a〜24fにそれぞれ開口する通気口を有する通気ダクト41が接続され、上側の共通ダクト33には、船倉24g〜24mにそれぞれ開口する連通口を有する通気ダクト41が接続されている。それぞれの通気ダクト41の構造は、上述したそれぞれの通気ダクト41と同様となっている。
【0036】
換気装置30cのように、共通ダクト33を上下に離して2個所に設けると、換気装置30aとの比較により明らかなように、それぞれの通気ダクト41を各々1階分の船倉24を換気するようにしても、全ての通気ダクトの合計長さを換気装置30aよりも短くすることができる。
【0037】
換気装置30cの共通ダクト33は、下から5階目の船倉24eと、10階目の船倉24jとに設けられており、上下のグループに2分した船倉24のうちのそれぞれの中間階に共通ダクト33が設けられている。
【0038】
換気装置30a〜30cは、それぞれ共通ダクト33を有している。船体20内に設けられるスロープ等の種々の機器や装置のレイアウトによっては、上述したタイプの換気装置30a〜30cを混在させたり、いずれか1種類の換気装置としたりして船体20に換気装置を設けることになる。どのような形態の換気装置を使用するかは任意に選択することができる。
【0039】
図6(A)は本発明の他の実施の形態として図1(A)に示された換気装置の6部の拡大断面図であり、図6(B)は図6(A)における6B−6B線断面図である。
【0040】
この換気装置30dは積層甲板を貫通して上下方向に隣り合う2つの船倉の間に延びる通気ダクト41を有しており、通気ダクト41の上下両端部の船倉内端部にはそれぞれ船倉に開口する通気口42が設けられている。通気ダクト41の上端部には舷側32に形成された換気口34に対向する連通開口部53が形成されるとともに、上端部にはモータ51により駆動される換気ファン52が組み込まれている。図6には、積載甲板13を上下に貫通して取り付けられた通気ダクト41を有する換気装置30dと、積載甲板11を上下に貫通して取り付けられた通気ダクト41を有する換気装置30dとが示されているが、他の階の船倉に設けられた換気装置30dについても同様の構造となっている。
【0041】
このタイプの換気装置30dは、1つの通気ダクト41により上下2階分の船倉24内を換気するようにしており、上述した換気装置30a〜30cの場合に比して、全ての通気ダクトの合計長さを短くすることができる。このタイプの換気装置30dを船体20に設ける場合においても、船体20の左右両方の舷側31,32の内側に対称的に換気装置30dを設けることが好ましいが、通気ダクト41が短いので、上述した換気装置30a〜30cよりも配置の自由度が高く、各階において換気装置30dの配置位置を相違させるようにしても良い。
【0042】
換気装置30dを上述した換気装置30a〜30cと混在させて船体20に設けるようにしても良い。また、1つの通気ダクト41に3階あるいはそれ以上の階に対応させて通気口42を形成するようにしても良い。
【0043】
図7(A)は本発明の他の実施の形態として図1(A)に示された7部の拡大断面図であり、図7(B)は図7(A)における7B−7B線断面図である。
【0044】
この換気装置30eは、各船倉24に対応させて舷側31,32に形成された換気口34に連通する通気ダクト41を有し、通気ダクト41は水平方向に延びて船倉24内に配置されている。このように、各階に対応させて換気口34を形成するようにすると、共通ダクト33を用いる場合に比して換気口34の開口面積を小さくすることができる。
【0045】
図1に示される換気装置30fは、上述した換気装置30dの変形例であり、下から7階目の船倉24gにそれぞれ形成された換気口34に開口する通気ダクト41を有している。それぞれの通気ダクト41は上下方向の長さが相違しており、中央の通気ダクトを除いてその通気ダクトの両側に3つずつ配置された他の通気ダクト41には上下の船倉に対応させて2つずつ通気口42が設けられている。中央の通気ダクト41の基本構造は、図7に示した通気ダクト41と同様である。また、他の通気ダクト41の基本構造は上下方向の長さ寸法が相違するとともに各々の通気ダクト41に2つずつ通気口42が設けられていることを除いて図6に示した通気ダクトと同様である。この換気装置30fは全ての通気ダクト41に開口した換気口34が船倉24fに対応する舷側に集中して設けられているが、各々の換気口34の位置を上下方向にずらして形成するようにしても良い。また、各々の通気ダクト41には2つずつ通気口42が形成されているが、1つあるいはそれ以上の階に対応させて通気口42を形成するようにしても良い。
【0046】
この換気装置30fを上述した換気装置30a〜30eと混在させて船体20に設けるようにしても良い。ただし、換気口34を船体20の喫水線よりも下方に設けることができないので、共通ダクト33を具備しないタイプの換気装置30d,30eは、比較的上層階側の船倉の換気のために使用することになる。これに対し、喫水線よりも下側の船倉に対しては、共通ダクト33を有する換気装置30a〜30cおよび共通ダクトを有していないが、上下方向中心部の船倉24gに集中して換気口34を配置するようにした換気装置30fを使用することが好ましい。
【0047】
喫水線よりも上側に換気口34が設けられる場合であっても、国際満載喫水線条約によって定められている最小乾舷よりも下側に設けられる換気口34には、換気口34を開閉するルーバ等からなる開閉扉を水密構造とすることになる。水密構造の開閉扉としては、ゴム等からなるシール材が設けられたタイプの開閉扉が使用される。これにより、開閉扉を閉じたときにシール材が換気口34をシールすることになる。
【0048】
図1(A)には、5種類の換気装置30a,30c,30d,30eおよび30fを具備した船体20が示されているが、これは説明の便宜のためであり、図4および図5に示した換気装置30bを含めて、いずれか1種類の換気装置のみを設けるようにしても良く、任意の複数種類の換気装置を混在させて船体20に設けるようにしても良い。いずれの換気装置においても、換気口34が舷側31,32に設けられており、上甲板には通気ダクト41の上端部には突出していないので、船体20に吹き付けられる風により船体20に加わる風圧力抵抗を低減することができ、機関の燃費を低減することが可能となる。しかも、全ての船倉内を換気するための通気ダクト41の全長を短くすることができ、各船倉24内の車両収容スペースを広くすることができる。特に、複数階の船倉のうち、中間階の位置に換気口34を設けるようにしたので、そこから集中的にその上下の階の換気をも行うことができる。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1〜13 積載甲板(カーデッキ)
20 船体
24 船倉
30a〜30e 換気装置
31,32 舷側
33 共通ダクト
34 換気口
37 連通室
41 通気ダクト
42 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に複数段の積載甲板が設けられ、前記積載甲板により上下方向に仕切られてそれぞれ車両を収容する複数階の船倉を有する自動車専用船であって、
前記船体の舷側に船外に開口する換気口を設け、前記船倉に開口する通気口が設けられた通気ダクトを前記換気口に連通させて船体内に配置し、前記通気ダクト内に気流を生成する換気ファンを前記通気ダクト内に設け、
前記舷側に設けられた前記換気口を介して船倉内を換気することを特徴とする自動車専用船。
【請求項2】
請求項1記載の自動車専用船において、前記通気ダクトは複数の前記船倉の間を前記積載甲板を貫通して前記船体の上下方向に延び、当該通気ダクトに船倉に対応させて通気口を設け、1つの前記通気ダクトにより複数階の前記船倉内を換気することを特徴とする自動車専用船。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車専用船において、前記通気ダクトに連通する換気口を前記船体の中間階に設けることを特徴とする自動車専用船。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車専用船において、前記換気口に連通する共通ダクトを前記舷側の内側に前記船体の長手方向に配置し、それぞれ船倉内端部に前記通気口が設けられ相互に上下方向の長さが相違する複数の前記通気ダクトを前記共通ダクトに接続し、前記共通ダクトにより連通される複数の前記通気ダクトにより前記換気口を介して複数階の前記船倉内を同時に換気することを特徴とする自動車専用船。
【請求項5】
請求項4記載の自動車専用船において、複数の前記共通ダクトを前記船体の上下方向に相互にずらして前記船体に配置し、それぞれの前記共通ダクトに相互に上下方向の長さが相違する複数の前記通気ダクトを接続し、複数の前記共通ダクトを介して複数階の前記船倉内を同時に換気することを特徴とする自動車専用船。
【請求項6】
請求項4または5記載の自動車専用船において、前記共通ダクトに前記共通ダクトが配置される前記船倉よりも上側階の前記船倉に延びる複数の前記通気ダクトを接続し、前記共通ダクトに前記共通ダクトが配置される前記船倉よりも下側階の前記船倉に延びる複数の前記通気ダクトを接続し、前記換気口を介して同時に換気される複数の前記船倉の中間階の前記船倉に前記共通ダクトを配置することを特徴とする自動車専用船。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車専用船において、前記換気口を最小乾舷よりも上側に位置させて前記舷側に設けることを特徴とする自動車専用船。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車専用船において、最小乾舷よりも下側に設けられる前記換気口に開閉扉を設け、前記開閉扉を当該開閉扉が閉じられたときには水が前記船体内に浸入するのを防止する水密構造とすることを特徴とする自動車専用船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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