説明

自動車後部トランク構造

【課題】後部トランクリッドのロック機構としてモータやギヤ等の複雑な駆動機構を不要とし、部品点数が少なく且つコストも掛からない自動車後部トランク構造を提供する。
【解決手段】後部トランク内にルーフを折り畳んで収容する際に開く後部トランクリッド及び後部シート後方を開口するパッケージトレイ1とを備えた自動車後部トランク構造において、後部トランクリッド2を開閉自在とするヒンジリンク部材7に、パッケージトレイ1が後部シート後方を覆って閉じる時に該パッケージトレイ1に設けた突起部12に押されて車体に固定されたロックピン10に係止されることにより前記後部トランクリッド2を閉状態にロックするロック部材8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部トランク内にルーフを折り畳んで収容する際に開く後部トランクリッド及び後部シート後方を開口するパッケージトレイとを備えた自動車後部トランク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンバーティブル型自動車においては、後部トランクリッドを開いてルーフを後部トランク内に折り畳み収容可能としている(例えば、特許文献1等に記載)。この特許文献1の構造では、後部トランクリッドの車両前方部に設けたロック孔に、車体に取り付けたフックを係止させることで、前記後部トランクリッドを閉状態にロックさせている。
【0003】
後部トランクリッドを開閉する場合は、モータやギヤ等によってフックを動かして前記ロック孔にフックを挿入係止させ或いはロック孔から該フックを外すことにより、該後部トランクリッドをロックさせ或いはロックを解除させる必要がある。
【特許文献1】特表2005−515927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構造では、モータやギヤ等の複雑な駆動機構部が必要であり、これらを構成するための部品点数が増えること及びそれに伴うコストアップが問題になる。
【0005】
そこで、本発明は、後部トランクリッドのロック機構としてモータやギヤ等の複雑な駆動機構を不要とし、部品点数が少なく且つコストも掛からない自動車後部トランク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車後部トランク構造では、後部トランクリッドを開閉自在とするヒンジリンク部材に、パッケージトレイが後部シート後方を覆って閉じる時に該パッケージトレイに設けた突起部に押されて車体に固定された係止部材に係止されることにより前記後部トランクリッドを閉状態にロックするロック部材を設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動車後部トランク構造によれば、パッケージトレイに設けた突起部で後部トランクリッドを開閉自在とするヒンジリンク部材に設けたロック部材を押して、該ロック部材を車体に固定した係止部材に係止させるようにしたので、モータやギヤ等の複雑な駆動機構を必要とすることなくパッケージトレイの開閉動作に連動して後部トランクリッドを施錠及び施錠解除させることができる。これにより、本発明によれば、後部トランクリッドのロック機構の部品点数を削減でき、且つコストの低減も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は本実施形態の自動車後部トランク構造を示す概略全体構成図、図2(A)は図1に示すロック部材がパッケージトレイに設けた突起部により押される前の状態を示す要部拡大図、図2(B)は同じくロック部材がパッケージトレイに設けた突起部で押されて車体に固定した係止部材に係止された状態を示す要部拡大図である。
【0010】
コンバーティブル型自動車では、ルーフをオープンにする場合、後部シート後方を覆っているパッケージトレイ1と後部トランクリッド2を図1の実線で示すように開いて図示を省略したルーフ(後部ウインドを含む)を折り畳んで後部トランク3内に収容する構造を採用している。
【0011】
パッケージトレイ1は、基端(他端)1aを車体4に回動自在に取り付けており、その基端1aを中心として一端1bを車両前方へ立ち上げるように回動して開くようになされている。
【0012】
後部トランクリッド2は、車体4に設けられたブラケット5との間に取り付けられたヒンジリンク部材6、7によって、前記後部トランク3を閉じる閉塞位置と後部トランク3を開放する開位置とに開閉自在とされている。ヒンジリンク部材6、7は、2つ設けられており、後部トランク3を開口する場合、車両後方へと後部トランクリッド2を回動させる。
【0013】
一方のヒンジリンク部材7には、前記後部トランクリッド2で前記後部トランク3を閉じた状態をロック(施錠)するためのロック部材8が設けられている。ロック部材8は、ヒンジリンク部材7に対して支持軸9を中心として回動自在に取り付けられている。
【0014】
前記ロック部材8には、車体4に固定された係止部材であるロックピン10に係止されるロック爪11が設けられている。また、ロック部材8には、パッケージトレイ1に設けられた突起部12を当接させて該ロック部材8を回動させる当接部13が設けられている。さらに、ロック部材8には、ロック爪11がロックピン10に係止されたときに、前記突起部12と接触するストッパー片となる係止爪14が設けられている。
【0015】
また、このロック部材8には、パッケージトレイ1が後部シート後方を開口するように開いて前記突起部12との係合を解除した時に、前記ロックピン10との係止状態を解除するロック解除手段である捻りコイルバネ15が取り付けられている。捻りコイルバネ15は、パッケージトレイ1を開いて前記突起部12による前記当接部13に対する押し込みを解除すると、前記ロック部材13を図2(A)の初期位置に戻すように機能する。ロック部材13は、初期位置では車体4に固定されたストッパー16に接触してこの初期状態を保持する。
【0016】
次に、ルーフを後部トランク3に収納する動作について説明する。ルーフを後部トランク3内に収納させるには、先ず、後部トランクリッド2とパッケージトレイ1を開いて後部トランク3を開口させる。そして、この後部トランク3内にルーフを折り畳んで収納させる。ルーフを後部トランク3内に収納し終えたら、パッケージトレイ1と後部トランクリッド2を閉じる。パッケージトレイ1を後部シート後方を覆うようにして閉じて行くと、図2(A)で示すように、パッケージトレイ1に設けた突起部12が後部トランクリッド2を回動させるヒンジリンク部材7に設けられたロック部材8の当接部13に接触する。
【0017】
後部トランクリッド2をさらに閉じると、前記突起部12が前記当接部13を押し込み、捻りコイルバネ15の付勢力に抗して前記ロック部材8を支持軸9を中心として回動させる。そして、ロック部材8は、パッケージトレイ1の閉じ動作に連動して図2(B)に示すように回動することで、最終的に車体4に固定されたロックピン10にその先端に設けたロック爪11を係止させる。またこのとき、前記突起部12は、ロック部材8に形成された係止爪14に接触する。
【0018】
前記パッケージトレイ1は、ロックピン10にロック爪11が係止され且つ突起部12が係止爪14に係止された状態となると、後部シート後方を覆って略水平状態となると共に、その両端1a、1bがいわゆる両持ち梁り状態に保持される。このように、両端1a、1bが支持されたパッケージトレイ1では、その上に荷物を置いても傾くような不具合が生じない。
【0019】
この一方、後部トランク3内に収納したルーフを取り出すには、閉じた状態にあるパッケージトレイ1と後部トランクリッド2を開ける。パッケージトレイ1を開いて行くと、このパッケージトレイ1に設けた突起部12による前記ロック部材8に対する押し込み力が解除されて行き、前記捻りコイルバネ15に付勢されてロック部材8が図2(B)に示すロック状態から図2(A)のロック解除状態である初期位置に回動する。初期位置では、ロック部材8は、車体4に固定されたストッパー16に当接する。ロック状態が解除された後は、後部トランクリッド2は車両後方へ移動可能となり、前記後部トランク3を開口させる。そして、パッケージトレイ1と後部トランクリッド2が共に開いた状態とされた時点で、後部トランク3内に折り畳んで収納されたルーフを取り出す。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、パッケージトレイ1に設けた突起部12で後部トランクリッド2を開閉自在とするヒンジリンク部材7に設けたロック部材8を押して、該ロック部材8を車体4に固定したロックピン10に係止させるようにしたので、モータやギヤ等の複雑な駆動機構を必要とすることなくパッケージトレイ1の開閉動作に連動して後部トランクリッド2を施錠及び施錠解除させることができる。従って、本実施形態によれば、後部トランクリッド2のロック機構の部品点数を削減でき、且つコストの低減も図ることができる。
【0021】
また、本実施形態によれば、パッケージトレイ1の一端1aをロック部材8の当接部13に当接させて支持させ、他端1bを車体4に対して回動自在に支持させたので、荷物等を載せる場合に当該パッケージトレイ1の両端が何れも支持されることになり、当該パッケージトレイ1の強度が向上すると共に重い荷物を載せることが可能になる。
【0022】
また、本実施形態によれば、パッケージトレイ1に設けた突起部12と係合する係止爪14をロック部材8に設けたので、パッケージトレイ1の閉じ状態を維持することができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、パッケージトレイ1が後部シート後方を開口するように開いて該パッケージトレイ1に設けた突起部12が前記ロック部材8との係合を解除した時に、前記ロックピン10と前記ロック爪11との係止状態を解除する捻りコイルバネ15を設けているので、この捻りコイルバネ15により前記パッケージトレイ1の開き動作に連動して自動的にロック部材8によるロック状態を解除することができる。
【0024】
「その他の実施形態」
図3は他の実施形態を示し、(A)はロック部材がパッケージトレイに設けた突起部により押される前の状態を示す要部拡大図、(B)は同じくロック部材がパッケージトレイに設けた突起部で押されて車体に固定した係止部材に係止された状態を示す要部拡大図である。
【0025】
この実施形態では、前記した実施形態のものとは異なる形状としたロック部材20を有したロック機構ユニット21を、一方のヒンジリンク部材7に取り付けている。ロック機構ユニット21は、ボルト及びナット等の締結手段でヒンジリンク部材7に固定される本体部22と、この本体部22に設けられたスライド部23上でスライド自在とされるロック部材20と、このロック部材20を初期位置へと戻すコイルスプリング24と、からなる。
【0026】
本体部22は、その長手方向両端にボルト及びナットで前記ヒンジリンク部材7に固定するための取付け孔25が形成されている。スライド部23には、ロック部材20の初期位置を規定するためのストッパー26が設けられている。また、本体部22には、ロック部材20を初期位置まで自動的にスライドさせるためのロック解除手段であるコイルスプリング24を取り付けるスプリング取付け部27が設けられている。コイルスプリング24は、前記スプリング取付け部27に取り付けられ、一端を本体部22に固定し、他端をロック部材20に固定させている。
【0027】
ロック部材20には、車体4に固定されたロックピン10に係止されるロック爪28が設けられている。また、ロック部材20には、パッケージトレイ1に設けられた突起部12の先端傾斜面12aと接してこの突起部12で押し込まれる傾斜面29aを有した当接部29が設けられている。さらに、このロック部材20には、前記突起部12を支えてパッケージトレイ1を支持する支持部30が設けられている。
【0028】
本実施形態の自動車後部トランク構造では、パッケージトレイ1が図3(A)に示すように後部シート後方を覆うようにして閉じられると、該パッケージトレイ1に設けられた突起部12の先端傾斜面12aが、前記ロック部材20における当接部29の傾斜面29aに接触する。
【0029】
さらに、パッケージトレイ1を閉じると、ロック部材20は、突起部12に押されてスライド部23上をスライドし、その前方に設けられたロックピン10にロック爪28を係止させる。このとき、ロック部材20は、スプリングコイル24の付勢力に抗して前方へスライドする。前記ロックピン10に前記ロック爪28が係止すると、ヒンジリンク部材7の可動が阻止され、前記後部トランクリッド2が車体4にロックされる。また、後部トランクリッド2が閉じてロックされると、パッケージトレイ1の突起部12が、ロック部材20に設けられた支持部30で支持された状態となる。
【0030】
この一方、パッケージトレイ1を図3(B)の閉じた状態から開くと、パッケージトレイ1に設けた突起部12による前記ロック部材20に対する押し込み力が解除されて行き、前記スプリングコイル24によってロック部材20が初期位置へと引き戻される。このロック部材20の引き戻しにより、前記ロック爪28がロックピン10から離れ、前記後部トランクリッド2のロック状態が解除される。これにより、後部トランクリッド2は、車両後方への移動が可能となり、後部トランク3を開口させる。ロック部材20は、最終的にストッパー26に当接して初期位置に保持されることになる。
【0031】
このように構成された本実施形態の自動車後部トランク構造によれば、先の実施形態と同様、モータやギヤ等からなる複雑な駆動機構部を使用することなく、パッケージトレイ1の開閉動作に連動させて後部トランクリッド2をロック及びロック解除させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本実施形態の自動車後部トランク構造を示す概略全体構成図である。
【図2】図2(A)は図1に示すロック部材がパッケージトレイに設けた突起部により押される前の状態を示す要部拡大図、図2(B)は同じくロック部材がパッケージトレイに設けた突起部で押されて車体に固定した係止部材に係止された状態を示す要部拡大図である。
【図3】図3は他の実施形態を示し、(A)はロック部材がパッケージトレイに設けた突起部により押される前の状態を示す要部拡大図、(B)は同じくロック部材がパッケージトレイに設けた突起部で押されて車体に固定した係止部材に係止された状態を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
1…パッケージトレイ
2…後部トランクリッド
3…後部トランク
4…車体
6、7…ヒンジリンク部材
8、20…ロック部材
10…ロックピン(係止部材)
11、28…ロック爪
12…突起部
13、29…当接部
14…係止爪
15、24…コイルバネ(ロック解除手段)
16、26…ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の後部トランク内にルーフを折り畳んで収容する際に開く後部トランクリッド及び後部シート後方を開口するパッケージトレイとを備えた自動車後部トランク構造において、
前記後部トランクリッドを開閉自在とするヒンジリンク部材に、前記パッケージトレイが後部シート後方を覆って閉じる時に該パッケージトレイに設けた突起部に押されて車体に固定された係止部材に係止されることにより前記後部トランクリッドを閉状態にロックするロック部材を設けた
ことを特徴とする自動車後部トランク構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車後部トランク構造であって、
前記パッケージトレイは、該パッケージトレイに設けた前記突起部を前記ロック部材に当接させることにより一端を支持させ、他端を車体に対して回動自在に支持させることにより、車両前後方向の両端部がそれぞれ支持されている
ことを特徴とする自動車後部トランク構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車後部トランク構造であって、
前記ロック部材には、前記突起部と係合する係止爪が設けられている
ことを特徴とする自動車後部トランク構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動車後部トランク構造であって、
前記ロック部材には、前記パッケージトレイが後部シート後方を開口するように開いて前記突起部との係合を解除した時に、前記係止部材との係止状態を解除するロック解除手段が取り付けられている
ことを特徴とする自動車後部トランク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−208749(P2009−208749A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56843(P2008−56843)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】