自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法
【課題】原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒。
【解決手段】担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の成分を十分に浄化するために様々な触媒が用いられてきた。このような自動車排ガス浄化用触媒としては、例えば、γ−Al2O3等からなる担体に白金(Pt)やロジウム(Rh)などの貴金属を担持させた触媒が知られている。また、このような自動車排ガス浄化用触媒の製造方法としては、一般に、貴金属の塩を含有する溶液を担体に担持した後、これを焼成して担体に貴金属を担持する方法が採用されてきた。そして、近年では、より高い触媒活性を有する触媒を得るために様々な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法が研究されている。
【0003】
例えば、特開2006−55807号公報(特許文献1)においては、複数の有機多座配位子と複数の貴金属原子からなる多核錯体を酸化物担体上に析出させ、次いで有機多座配位子を除去することで、貴金属クラスターが担持された触媒を得る触媒の製造方法が開示されている。また、特開2007−222806号公報(特許文献2)においては、白金アセチルアセトナート、ジニトロジアミン白金等の白金錯体をベーマイト水溶液に投入することによりゲル化物を作成して得られる貴金属触媒の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1〜2に記載のような触媒の製造方法においては、必ずしも十分な触媒活性を有する触媒を得ることができなかった。
【0004】
また、特開2008−13533号公報(特許文献3)においては、複数錯体含有化合物を多孔質担体に含浸担持させて触媒を得る方法が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のような方法においては、前記錯体中の核(金属)にPtを用いた場合は実施可能であるが、錯体の核(金属)にRhを用いた場合には文献中に記載されているような製造条件では複数錯体含有化合物自体を製造することができない。そのため、特許文献3に記載の触媒を得る方法に基づいてRhが担持された触媒を製造することはできない。
【0005】
また、特開2007−230924号公報(特許文献4)においては1個の金属原子又は複数個の同じ種類の金属原子に配位子が配位してなる金属錯体であって前記配位子の少なくとも1つが前記金属原子に配位していないカルボキシル基(例えばジカルボン酸配位子)などを有する金属錯体を含有する溶液を担体に含浸し、乾燥後焼成することにより触媒を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載のような方法においては、前記金属原子としてPtを用いた場合は実施可能であるが、前記金属原子としてRhを用いた場合にはその文献中に記載の製造条件で前記金属錯体自体を製造することができない。そのため、特許文献4に記載の触媒を得る方法に基づいてRhが担持された触媒を製造することはできない。
【0006】
更に、特開2007−229642号公報(特許文献5)においては、配位可能官能基を有する化合物を結合させた担体に、金属錯体を含有する溶液を含浸させた後に乾燥、焼成して触媒を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献5に記載の方法においては、当該文献に記載の金属錯体である[Rh2(CH3COO2)4]や[Rh2(C6H5COO2)4]といったカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、ロジウムを十分に担持することができないばかりか、十分な触媒機能を有する触媒を必ずしも得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−55807号公報
【特許文献2】特開2007−222806号公報
【特許文献3】特開2008−13533号公報
【特許文献4】特開2007−230924号公報
【特許文献5】特開2007−229642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ロジウムを担体に担持する際に、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0010】
【化1】
【0011】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いることにより、ロジウムの2原子クラスターが十分な割合で前記担体に担持されるとともに、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0(より好ましくは1.5nm以上)となって原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で前記担体に担持され、これにより十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒が得られること見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることが好ましい。
【0015】
更に、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明にかかるロジウムは、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0017】
【化2】
【0018】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0020】
【化3】
【0021】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより、自動車排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0022】
上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記カルボン酸ロジウム錯体が前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種であり且つ前記ロジウム含有液の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。
【0023】
また、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、得られる自動車排ガス浄化用触媒が、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm)である自動車排ガス浄化用触媒であることが好ましい。また、かかる自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、得られる触媒が、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることがより好ましく、また、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%となるものであることがより好ましい。このように、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒を製造するための方法として好適に採用できる方法である。
【0024】
なお、本発明の自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、ロジウムは、上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に担持される。従来の触媒の製造方法においてロジウムを担持するために用いられてきたロジウム塩化物等は担体との間で静電的な弱い結合を形成して担体に担持されるものである。これに対して、本発明に用いられる上記一般式(1)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、axial位の不飽和配位サイトを持っているため、担体上の水酸基(又は酸素原子)との間に配位結合を形成し、担体に十分に安定した状態で選択的に吸着担持されるものである。
【0025】
このような錯体の担体上での担持状態を説明するために、本発明にかかる上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の好適な一例として、Rh2(C5H11COO)4を例に挙げ、図1に、かかる錯体が担体上に担持されている状態を模式的に示す。また、カルボン酸ロジウム錯体のもう一つの好適な一例としてRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を例に挙げ、図2に、かかる錯体が担体上に担持されている状態を模式的に示す。本発明においては、カルボン酸ロジウム錯体を担体に担持すると、先ず、図1〜2に記載のように、担体上の水酸基(又は酸素原子)と、錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合が形成される。このようにして配位結合が形成されると、その強い結合力によって、安定性に優れた状態でカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される。また、このようにしてカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持されると、各錯体中の核は配位子の存在によりそれぞれ離間した状態で担体上に配置され、図3及び4にそれぞれ示すように、担体表面上に各錯体の核が島状に分散されて配置された状態が形成される。さらに、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される際に、図4に示すように、島と島の間に水分子が数個存在する場合には、それにより、錯体同士は、配位子の長さ以上の距離を離した状態で担体上に配置することができる。すなわち、前記カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持されると、各カルボン酸ロジウム錯体の核同士は、錯体の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)に応じて十分に距離をとった状態で担体上に担持されるものと推察される。
【0026】
なお、図3では、Rh2(C5H11COO)4の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)が0.9nmであり、担体上に担持される各カルボン酸ロジウム錯体の核同士の距離は、その分子サイズに応じておおよそ2nm程度の距離となることが推察できる。また、図4では、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)が約0.8nmであり、担体上に担持される各カルボン酸ロジウム錯体の核同士の距離は、その分子サイズによるが、実施例であるグリセリン酸ロジウムの場合は(図4に示す錯体の分子をファンデルワールス半径を考慮した図を参照)、隣の錯体分子の核との距離はおおよそ平均1.6nm程度の距離となることが推察できる。
【0027】
なお、ここにう「カルボン酸ロジウム錯体の分子半径」は、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を例に挙げると、図5に示すような分子構造のモデルを考慮して、その分子の外接円から見積もられる分子半径lr(ここで、lrとはRh−Rh軸をz軸とした場合のxy平面内の円に基づいて定義される。)とすることができる。図5に示すような分子構造のモデルを考慮する場合、計算モデルとしてのRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の構造(Rh二核クラスターにグリセリン酸イオン:HO−CH2−CH(OH)−COO−を配位させた構造)に対して、構造最適化を気相中で行い、計算方法としてはハイブリッド密度汎関数法B3PW91を採用し、基底関数としてはLANL2MBを用いて、その分子半径lrを求めることができる。
【0028】
このように、本発明にかかるカルボン酸ロジウム錯体を用いてロジウムを担体上に担持すると、その錯体の分子サイズが十分に大きく、分子サイズに対応して錯体間の距離を制御することが可能である。また、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の配位子を用いた場合、その配位子は水分子に対するより高い親和性を持った配位子であることから、溶媒として水系溶媒を使用することで錯体の周囲には水和した水分子が存在することとなるため、核として存在するロジウムはより十分に距離をとって、より十分に高度に分散された状態で担体上に担持される。
【0029】
また、このようにしてカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された後に焼成すると、担体と錯体との結合の熱安定性が高いため、錯体の核にある2つのロジウム原子が凝集することや飛散することが十分に防止されながら配位子が除去されることから、錯体の核として存在する2つのロジウム原子は、島状に分散された状態を十分に維持しながら原子状態で担体に担持される。そのため、前記カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された後に焼成すると、ロジウムは2原子クラスターとして十分に分散された状態で担体に担持される。そして、前述のように、焼成時の凝集や飛散が十分に抑制されることから、隣接する2原子クラスター間の平均距離が前記カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ(特に配位子のサイズ)を考慮すると(場合により、前記分子サイズ及び水和した水分子のサイズを考慮すると)1.0nm以上(好ましくは1.5nm以上、より好ましくは2nm以上)となる。また、上述のように、本発明においては、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のような水分子に対するより高い親和性を持った配位子を有する錯体を用い且つ水系溶媒を用いた場合は、用いるカルボン酸ロジウム錯体の配位子のサイズと、その配位子が親水基であるためにその周囲を取り巻く水分子とにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離がより容易に1.0nm以上(好ましくは1.5nm以上(更に好ましくは2nm以上)になるものと推察される。
【0030】
さらに、本発明において、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、その配位子がベンゾクラウンエーテル基を有する立体的に嵩高いものであることから、担体上の水酸基(又は酸素原子)と錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合が形成させる際に、配位子同士が重なることを、より高い水準で防止できる。すなわち、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体においては、配位子が立体的に嵩高いものであることから、一つのカルボン酸ロジウム錯体の配位子と配位子との間の空間(分子内のわずかな隙間)に他のカルボン酸ロジウム錯体の配位子が入り込むことをより高度な水準で防止でき、担体上の水酸基(又は酸素原子)と錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合を形成させる際に、配位子同士が重なることを、より高い水準で防止できる。そのため、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、より十分にカルボン酸ロジウム錯体同士の距離を確保しながら、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される傾向にある。このように、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、より高度に分散した状態でロジウムの2原子クラスターが担持される。そのため、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いることにより、高温条件下における粒成長(シンタリング)をより高度に抑制することが可能な触媒が得られるものと推察される。
【0031】
また、このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用して製造することが可能な上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムが原子状態(2原子クラスターの状態)で且つ十分に分散された状態(より好ましくは、前記第1のロジウムの分散度が40〜80%(更に好ましくは40〜75%)である状態及び/又は前記第2のロジウムの分散度が20〜50%(更に好ましくは20〜48%)である状態)で担体に担持され、十分な量の活性点を有するものとなるため、十分に高度な触媒活性を発揮できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(C5H11COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(C5H11COO)4の担持状態に関する第1の模式図である。
【図2】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の担持状態に関する第1の模式図である。
【図3】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(C5H11COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(C5H11COO)4の担持状態に関する第2の模式図である。
【図4】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の担持状態に関する第2の模式図である。
【図5】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4のファンデルワールス半径を考慮した分子軌道法により求めた分子模型を示す模式図である。
【図6】自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)を模式的に示した概念図である。
【図7】実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である
【図8】実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第1のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図9】実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を示すグラフである。
【図10】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体(Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4)の構造を示す化学構造式である。
【図11】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の質量分析結果を示すグラフである。
【図12】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒のSTEMによる測定結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第2のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図14】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のNO浄化率を示すグラフである。
【図15】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃5時間R/L耐久後と1000℃50時間R/L耐久後の昇温三元活性評価におけるCO、NO、C3H6の50%転化温度(T50)を示すグラフである。
【図16】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のRich−NOx評価におけるNOxの各温度における最高浄化率を示すグラフである。
【図17】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のRich−C3H6評価におけるC3H6の各温度における最高浄化率を示すグラフである。
【図18】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の構造を示す化学構造式である。
【図19】実施例8で用いたカルボン酸ロジウム錯体の前駆体であるカルボン酸(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)の構造を示す化学構造式である。
【図20】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体の1種である4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体の質量分析結果を示すグラフである。
【図21】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([M1+3Na]3+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図22】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([M1+2Na]2+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図23】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([2M1+3Na]3+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図24】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([2M1+2Na]2+、[M1+Na]+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図25】実施例8で用いたカルボン酸ロジウム錯体の前駆体であるカルボン酸(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)のORTEP図(原子の熱振動を楕円形で示した図)である。
【図26】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である。
【図27】実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である。
【図28】実施例8と実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒中のロジウム2原子クラスター間の距離の分布を示すグラフである。
【図29】実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第2のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図30】実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO50%転化温度(T50)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0035】
先ず、本発明の自動車排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とするものである。
【0036】
本発明にかかる担体としては特に制限されず、排ガス浄化用の触媒に用いることが可能な公知の担体を適宜用いることができ、例えば、金属酸化物からなる担体を適宜用いることができる。このような担体に利用される金属酸化物としては、例えば、活性アルミナ、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア、ジルコニア、ランタン安定化活性アルミナ等が挙げられ、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びバナジウム(V)の酸化物、これらの固溶体、並びにこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。また、このような金属酸化物の中でも、より高い触媒活性が得られるという観点から、CeO2、ZrO2、Y2O3、TiO2、Al2O3、これらの固溶体、及びこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含有するものがより好ましい。
【0037】
また、このような担体の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このような担体の比表面積は特に制限されないが、より高い触媒活性を得るという観点からは、30m2/g以上であることがより好ましい。
【0038】
また、本発明にかかる前記ロジウムは、前記担体に原子状態で担持されている。本発明においては、ロジウムが原子状態で担体に担持されているため、ロジウム原子の分散性が十分に高度なものとなり、これにより触媒上の活性点の数が十分なものとなることから、十分に高度な触媒活性が得られる。なお、このようなロジウムの担持状態(原子状態)は、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を採用することにより好適に達成される。
【0039】
このようなロジウムの担持量は、前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%(より好ましくは0.10〜0.25質量%、更に好ましくは0.10〜0.20質量%、特に好ましくは0.10〜0.15質量%)である。このようなロジウムの担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、他方、前記上限を超えると、Rhのシンタリングが起こりやすく、Rhの分散度が低下して十分な活性が得られなくなる。
【0040】
また、本発明においては、前記ロジウムの50at%以上、より好ましくは75at%以上、更に好ましくは95at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されている。ここで、本発明にいう「2原子クラスター」とは、2つのロジウム原子が前駆体であるカルボン酸ロジウム二核錯体中のRh−Rh結合長(約2.4Å)にほぼ等しい距離で集積した集合体をいう。2原子クラスターとして担持されたロジウムの割合が前記範囲にあると、ロジウムが十分に分散して担持された状態となるため、触媒の活性点の数が十分なものとなり、より高度な触媒活性が得られる。また、2原子クラスターとして存在するロジウムの割合が前記下限未満では、十分に高い触媒活性が得られなくなる。
【0041】
このような2原子クラスターとして存在するロジウム原子の割合(at%)を求める方法としては、自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域を、収束レンズに球面収差補正装置を備えた走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により測定し、得られたSTEM像に基づいてその領域中に存在する全ロジウムの原子数と、2原子クラスターとして存在するロジウムの原子数とをそれぞれ求め、全ロジウムの原子数に対する2原子クラスターとして存在するロジウムの原子数の比を算出することにより求める方法を採用する。なお、前記走査透過電子顕微鏡(STEM)としては、例えば日本電子製の商品名「JEM−2100F」を用いることができる。
【0042】
また、本発明においては、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)である。また、このような隣接する前記2原子クラスター間の平均距離としては、1.0nm(より好ましくは1.5nm)〜3.0nmであることが更に好ましく、2.0nm〜3.0nmであることが特に好ましい。このような平均距離が前記下限未満ではロジウムの分散性が低下し、十分に高度な触媒活性が得られなくなる。また、前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合には、活性点の数が減少して十分に高度な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は、前述の2原子クラスターとして存在するロジウム原子の割合(at%)を求める方法と同様にCs−STEM測定することにより得られるSTEM像に基づいて求められる。ここで、本発明において「隣接する2原子クラスター間の距離」とは、各2原子クラスターから見て、隣接する2原子クラスター間の距離が最短となる線分の長さをいい、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」とは、前記線分の長さの平均値をいう。このような平均距離としては、少なくとも5個以上の2原子クラスターを観測した場合における前記線分の長さの平均値であることが好ましい。本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」については、例えば、縦12nm、横12nmの任意の領域のSTEM像を用いて求めることができる。
【0043】
以下、本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」について、図面を参照しながら詳細に説明する。図6は自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域のSTEM像を模式的に示した概念図である。すなわち、図6は、担体10上に5つの2原子クラスター11A〜E(図中、白い丸はロジウムの1原子を示し、点線で覆われた内部に存在する2つのロジウム原子が2原子クラスターとして存在するロジウムであることを示す。)がそれぞれ担持されている状態のSTEM像1を模式的に示す図面(概念図)である。図6に示す場合、「隣接する2原子クラスター間の距離」には、2原子クラスター11Aに関しては2原子クラスター11Aと2原子クラスター11Bとの間の線分の長さ(距離)Xが相当し、2原子クラスター11Bに関しては2原子クラスター11Bと2原子クラスター11Aとの間の線分の長さ(距離)Xが相当し、2原子クラスター11Cに関しては2原子クラスター11Cと2原子クラスター11Dとの間の線分の長さ(距離)Yが相当し、2原子クラスター11Dに関しては2原子クラスター11Dと2原子クラスター11Cとの間の線分の長さ(距離)Yが相当し、2原子クラスター11Eに関しては2原子クラスター11Dと2原子クラスター11Cとの間の線分の長さ(距離)Zが相当する。そして、このような線分の長さ(距離)の平均値が「隣接する2原子クラスター間の平均距離」に相当する。なお、ここにいう「線分の長さ」とは、各2原子クラスター間の最近接点間を結んだ場合の線分の長さをいう。
【0044】
さらに、本発明においては、2原子クラスターの総数のうちの50〜100%(数基準による割合)において、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)であることが好ましく、より高い触媒活性が得られるという観点からは、前記数基準による割合が100%であること(すなわち、全ての2原子クラスターにおいて、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)であること)が好ましい。なお、ここにいう「2原子クラスターの総数」とは、前記STEM像中に確認される全ての2原子クラスターの数をいう。また、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.5nm以上である2原子クラスターの割合が2原子クラスターの総数の50%未満では、高温条件下で長時間使用した後において十分な触媒活性を得ることができなくなる。
【0045】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と、前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%(更に好ましくは50〜80%)であるという条件を満たすことがより好ましい。このようなロジウムの分散度が前記下限未満では十分な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、ここにいう「第1のロジウムの分散度」は、後述の「50℃の温度条件のCOパルス測定法」により測定される「第1のCO吸着量」と、担体への「ロジウム(Rh)担持量」とから、下記式:
[第1のRh分散度(%)]=([第1のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して求められる値をいう。
【0046】
本発明において「50℃の温度条件のCOパルス測定法」とは、以下のようにして触媒のCO吸着量を求める方法をいう。すなわち、先ず、測定用の試料として、自動車排ガス浄化用触媒の粉末2.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製する。次に、前記試料を、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置する。次いで、温度1000℃の条件下、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に、前記試料2gあたり500mL/minの流量で通過するようにして50時間供給する耐久試験を実施する。このような耐久試験後の試料0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を全自動貴金属分散性測定装置(大倉理研社製の商品名「R6015」)の計量管の内部にそれぞれ設置する。次いで、前記全自動貴金属分散性測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とし、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持する。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持する。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却する(前処理)。このような前処理を施した後、温度が50℃(一定)の条件下において、He(100容量%)のガス雰囲気下において、試料に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスする(吸着温度:50℃)。次いで、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうち、前記試料に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から「第1のCO吸着量」を求める。そして、このようにして測定される各試料(3水準)のCO吸着量の平均値を最終的な「第1のCO吸着量」とする。
【0047】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であるという条件を満たすことがより好ましい。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒が、例えば、前記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いて得られたものである場合には、第2のロジウムの分散度が20〜40%であるという条件を満たすことがより好ましく、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いて得られたものである場合には、第2のロジウムの分散度が30〜50%であるという条件を満たすことがより好ましい。このような第2のロジウムの分散度が前記下限未満では触媒活性が低下する傾向にある。なお、本発明において「第2のロジウムの分散度」は、後述の「−78℃の温度条件の低温COパルス測定法」により測定される「第2のCO吸着量」と、担体への「ロジウム(Rh)担持量」とから、下記式:
[第2のRh分散度(%)]=([第2のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して求められる値をいう。
【0048】
「−78℃の温度条件の低温COパルス測定法」とは、以下のようにして触媒のCO吸着量を求める方法をいう。すなわち、先ず、測定用の試料として、自動車排ガス浄化用触媒の粉末10.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製する。次に、前記試料0.70gを、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置する。次いで、温度1000℃の条件下、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に、前記試料5.0gあたり500mL/minの流量で通過するようにして50時間供給する耐久試験を実施する。次に、耐久試験後の試料0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を低温COパルス吸着量測定装置(大倉理研社製)の計量管の内部にそれぞれ設置する。次いで、前記低温COパルス吸着量測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とし、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持する。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持する。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却する(前処理)。このような前処理後、Heガスを30ml/分の流量で流通させながら、ドライアイス/エタノール冷媒を用いて計量管を−78℃まで冷却した。このようにして温度が−78℃で一定となった後に、He(100容量%)のガス雰囲気下において、試料に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスする(吸着温度:−78℃)。次いで、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうち、前記試料に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から「第2のCO吸着量」を求める。そして、このようにして測定される各試料(3水準)のCO吸着量の平均値を最終的な「第2のCO吸着量」とする。
【0049】
また、本発明においては、前記ロジウムが上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることが好ましい。このようなカルボン酸ロジウム錯体を用いてロジウムを担持する方法としては、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用することができる。
【0050】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、前記触媒を基材に担持したハニカム形状のモノリス触媒や、ペレット形状のペレット触媒の形態等としてもよい。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。
【0051】
また、このような基材に前記触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。なお、このような自動車排ガス浄化用触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で排ガス浄化用触媒に用いることが可能な他の成分(例えばNOx吸蔵材等)を適宜担持してもよい。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を採用することにより製造することができる。
【0052】
次に、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法は、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0053】
【化4】
【0054】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより、自動車排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0055】
このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、それぞれ、核としての2つのロジウム原子にカルボン酸配位子(式:R−CO2、R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2、式:R4−(C(R5)(X))l−CO2又はZ−CO2で表される配位子)が架橋型の配位子として配位した二核の錯体である。このようなカルボン酸ロジウム錯体を用いることにより、これを担体に担持した際に、錯体と担体との間で配位結合を形成させることが可能となり、熱安定性が十分に高い状態で前記錯体を担体に担持させることが可能となる。そして、これにより、ロジウムの50at%以上を2原子クラスターとして担体に担持することが可能となる。
【0056】
先ず、本発明にかかる一般式(1):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0057】
このような一般式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、炭素数が4〜20(より好ましくは5〜18、更に好ましくは6〜15)のものである。このような炭素数が前記下限未満では、担体にロジウムを担持させた際に、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0058】
また、上記一般式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなRの中でも、入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基(特に好ましくは直鎖状のアルキル基)が好ましい。なお、このような式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、それぞれ置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0059】
次に、本発明にかかる一般式(2):
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0060】
このような一般式(2)中のR1は、側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基である。このような炭化水素基の炭素数としては6〜18であることがより好ましく、10〜15であることが更に好ましい。このような炭素数が前記下限未満では担体にロジウムを担持させた際に隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が完全に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0061】
また、このようなR1として選択され得る側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなR1としては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合に、より好適に用いることができることから、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる炭化水素基であることが好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる飽和炭化水素基であることがより好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
【0062】
このようなR1としては、特に制限されないが、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、2−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、2−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、2−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、2−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、2−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基、2−ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基、2−ヒドロキシウンデシル基、12−ヒドロキシドデシル基、2−ヒドロキシドデシル基等が挙げられる。
【0063】
また、上記一般式(2)中のR2として選択され得る炭化水素基は、炭素数が1〜3
(より好ましくは1〜2)のものである。このような炭素数が前記上限を超えるとカルボン酸ロジウム錯体の親水性が低下する傾向にある。このような炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(2)中のR3として選択され得る炭化水素基は、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5)のものである。このような炭素数が前記下限未満では、担体にロジウムを担持させた際に隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0065】
また、上記一般式(2)中のR3として選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、R3としては、調製や入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基であることがより好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基(特に好ましくはメチル基、エチル基)であることが更に好ましい。
【0066】
また、上記一般式(2)中のnは0〜1のうちのいずれかの整数である。更に、mは0〜6(より好ましくは1〜4)のうちのいずれかの整数である。これらの整数が前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が十分に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。また、このようなnとmは、nとmとの和が1以上という条件を満たす。すなわち、このようなn及びmは、いずれか一方が必ず1以上の整数となり、双方が0となる場合はない。そのため、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、その配位子がエーテルカルボン酸基となり、親水性が十分なものとなる。これにより、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、ロジウム含有液中に含有させる場合に溶媒として水系溶媒を好適に用いることができる。このように、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、工業性の観点から特に好適な溶媒である水系溶媒を好適に用いることができる。
【0067】
次いで、本発明にかかる一般式(3):
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0068】
このような一般式(3)中のR4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数が1〜3(より好ましくは1〜2、更に好ましくは1)の炭化水素基である。このような炭素数が前記上限を超えると、担持効率が悪くなり、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる。
【0069】
また、上記一般式(3)中のR4及びR5として選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1.5nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなR4及びR5の中でも、入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基(特に好ましくは直鎖状のアルキル基)が好ましい。なお、このような式(3)中のR4及びR5として選択され得る炭化水素基の一部の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0070】
このようなR4及びR5としては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合により好適に用いることができることから、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる炭化水素基であることが好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる飽和炭化水素基であることがより好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。このように、上記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、工業性の観点から特に好適な溶媒である水系溶媒を好適に用いることができる。
【0071】
また、上記一般式(3)中のXとしては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合に、より好適に用いることができることから、OH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択される少なくとも一つであり、OH基又はNH2基であることがより好ましく、OH基であることが特に好ましい。
【0072】
また、上記一般式(3)中のlは1〜5(より好ましくは1〜4)のうちのいずれかの整数である。これらの整数が前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が十分に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0073】
次に、本発明にかかるRh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは上記一般式(5):
【0074】
【化5】
【0075】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0076】
このような一般式(5)中のpは1〜3(より好ましくは2〜3)のうちのいずれかの整数である。このような整数pが前記上限を超えると、比表面積の小さな担体に対しては、ロジウムの担持量を十分に確保できなくなるため、大量の担体が必要となる。
【0077】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、その錯体の製造時、保存時、使用時等に用いられる溶媒により溶媒和(例えば前記製造時や使用時等の溶媒が水の場合には水和)されていてもよい。このような溶媒和された錯体としては、例えば、上記一般式(1)で表される錯体を例に挙げると、下記一般式(1−1):
Rh2(R−CO2)4・q(solv) (1−1)
[式(1−1)中、Rは式(1)中のRと同義であり、qは0〜2の数値を示し、solvは溶媒分子(H2O、(CH3)2O、CH3OH等)を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体であってもよく、また、上記一般式(3)で表される錯体を例に挙げると、下記一般式(3−1):
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4・q(solv) (3−1)
[式(3−1)中、R4、R5、X及びlは、それぞれ式(3)中のR4、R5、X及びlと同義であり、qは0〜2の数値を示し、solvは溶媒分子(H2O、(CH3)2O、CH3OH等)を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体であってもよい。
【0078】
なお、本発明にかかる一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いることにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることができる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、このようなカルボン酸ロジウム錯体においては、そのカルボン酸配位子が、例えば、一般式(1)ではカルボン酸配位子中の前記Rが炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種であり、一般式(3)では前記R4及びR5が水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種であり、十分に嵩高いものであることから、カルボン酸ロジウム錯体を担体上に担持させた際には、近接して担持されたカルボン酸ロジウム錯体同士の核と核の間に十分に嵩高い配位子が存在することとなる。そのため、担体に担持されたカルボン酸ロジウム錯体同士の核と核の間の平均距離は、その分子の大きさ(分子の平均半径)に応じて1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)の距離となると推察される。さらに、例えば、前記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の場合、その配位子中の前記Xが親水基のであることから、カルボン酸ロジウム錯体の周囲には数個の水分子が存在しており、カルボン酸ロジウム錯体分子の大きさ(分子の平均半径)以上の距離となると推察される。このように、前記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の配位子が親水性を有する場合には水分子の存在により、ロジウムの分散性がより効率よく向上するものと推察される。また、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体においては、カルボキシベンゾクラウンエーテル(式(4)中:Z−CO2で表される基)を配位子としており、かかる配位子が立体的により嵩高い配位子である。そのため、一つの錯体分子中の配位子と配位子との間の空間(隙間)に他の錯体分子の配位子が入り込むことを、より高度な水準で十分に防止できるため、ロジウムの隣接する2原子クラスター間の距離をより広くすることが可能となる。そして、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を担体上に担持させた後に焼成することにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることができるものと推察される。なお、このように、2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることにより、ロジウムは十分に高度に分散された状態となるため、前述のような耐久試験を含むCOパルス測定法を実施して測定されるCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる、第1のロジウムの分散度を効率よく40〜80%とすること及び/又は第2のロジウムの分散度を効率よく20〜50%(より好ましくは20〜48%)とすることも可能となると本発明者らは推察する。
【0079】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体としては、担体の比表面積に応じて、錯体の種類を選択して用いることが好ましい。例えば、担体の比表面積が小さい場合には、一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の中からカルボン酸配位子のサイズがより小さいカルボン酸ロジウム錯体を選択して用いることで、より効率よく、十分な量のロジウムを十分に分散させて担持することが可能となり、活性点の量を十分なものとすることができる。また、担体の比表面積が大きい場合には、一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の中からカルボン酸配位子のサイズがより大きいカルボン酸ロジウム錯体を用いることで、より効率よく、十分な量のロジウムを十分に分散させて担持することが可能となる。より具体的には、0.15質量%のロジウムが担体に担持された自動車排ガス浄化用触媒を製造する場合において、比表面積が70m2/gの担体を用いる場合、分子サイズ(分子の平均半径)が1nmのカルボン酸ロジウム錯体(例えば、一般式(1)中のRが炭素数4の直鎖状のアルキル基の場合など)や、分子サイズ(分子の平均半径)が0.8nmのカルボン酸ロジウム錯体(例えば、一般式(3)中のR4及びR5が水素原子の場合など)を選択して利用することで、その目的とする設計の自動車排ガス浄化用触媒をより効率よく製造することができる。また、比表面積が159m2/gの担体を用いる場合には、分子サイズ(分子の平均半径)が2nmとなるような一般式(1)〜(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体や、分子サイズ(分子の平均半径)が1.6nmとなるような一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を選択して利用することで、その目的とする設計の自動車排ガス浄化用触媒をより効率よく製造することができる。このように、担体のサイズや特性に応じて、カルボン酸ロジウム錯体を適宜選択して用いることで、ロジウムの担持量や分散度等を適宜変更でき、その担体の種類に適したロジウム2原子クラスターの配置が可能となる。
【0080】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、水中にエーテルカルボン酸のアルカリ金属得塩(例えばナトリウム塩)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。また、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、水中にグリセリン酸(R体でもS体でも混合物でも良い)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。更に、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、例えば、水中にカルボキシベンゾクラウンエーテル化合物(例えば4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。さらに、このようなカルボン酸ロジウム錯体としては市販のものを用いてもよい。
【0081】
また、前記ロジウム含有液の溶媒としては特に制限されず、前記カルボン酸ロジウム錯体を溶解させることが可能な水、有機溶媒等を適宜用いることができる。また、前記ロジウム含有液の溶媒としては、前記一般式(1)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いる場合には、前記ロジウム含有液の溶媒としては、より効率よくロジウムを担持できるという観点からは、トルエン、エーテル、ヘキサン、クロロホルムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、トルエンを用いることが特に好ましい。また、前記ロジウム含有液の溶媒としては、前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いる場合には、より効率よくロジウムを担持できるという観点からは、少なくとも水を含有する水系溶媒を用いることがより好ましい。また、本発明にかかるカルボン酸ロジウム錯体の中でも、前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、親水性がより高い錯体であることから、溶媒として水系溶媒を用いた場合においても、ロジウムをより高い水準で担体に担持することが可能である。また、このような水系溶媒は、工業性の観点から好ましい溶媒である。そのため、本発明においては、前記カルボン酸ロジウム錯体として前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用い且つ前記ロジウム含有液の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。
【0082】
また、このような水系溶媒としては、水の含有量が50質量%以上の溶媒(更に好ましくは水の含有量が80質量%以上の溶媒、特に好ましくは水100質量%からなる溶媒)であることが好ましい。更に、前記水系溶媒中における前記水以外の成分としては特に制限されないが、低級アルコール、アセトン、アセトニトリル、DMF(ジメチルホルムアミド)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)などが好ましい。
【0083】
さらに、このようなロジウム含有液中におけるロジウム(金属)の含有比率としては特に制限されないが、金属換算で0.0005〜0.15質量%とすることが好ましく、0.0015〜0.015質量%とすることがより好ましい。このようなロジウムの比率が前記下限未満では、担持溶液の量がかさむだけではなく、担体にカルボン酸ロジウム錯体を効率よく担持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、錯体、担体ともに分散性が低下するため、カルボン酸ロジウム錯体を均一に担持することが困難となる傾向にある。なお、このようなロジウム含有液の調製方法は特に制限されず、前記カルボン酸ロジウム錯体を前記溶媒中に溶解することが可能な方法を適宜採用すればよい。
【0084】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法に用いる担体は、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒において説明した担体と同様のものである。
【0085】
前記ロジウム含有液を前記担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する方法としては特に制限されず、前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記ロジウム含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する方法を採用してもよい。
【0086】
また、前記ロジウム含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体の表面に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する場合には、1〜10atmの圧力、前記ロジウム含有液の溶媒の融点以上沸点以下(より好ましくは10〜30℃程度、特に好ましくは室温程度)の温度の条件下で0.5〜24時間程度撹拌することが好ましい。前記担体の表面に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する際の圧力や温度の条件が前記下限未満では担持効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると余剰な撹拌を続けることにより製造コストが増加する傾向にある。
【0087】
また、本発明においては、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させる(図1及び図2参照)。このような結合を達成させるためには、担体として、表面処理等を行うことにより得られる有機基によって修飾された担体は用いず、実質的に有機基を有さない担体を用いることが好ましい。このように実質的に有機基を有さない担体を用いて、その担体の表面に直接カルボン酸ロジウム錯体を接触させることにより、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させることが可能となる。すなわち、本発明において「前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させる」ことは、実質的に有機基を修飾していない担体(実質的に有機基を有さない担体)を用いて、かかる担体に前記ロジウム含有液を接触せしめることにより容易に達成することができる。このような観点から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法に用いる担体としては、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒において説明した担体と同様のものをそのまま用いることが好ましい。また、このような担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような担体としては、市販の金属酸化物をそのまま用いてもよい。
【0088】
また、前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持した後に焼成する方法としては、200〜600℃(更に好ましくは300〜500℃)の温度条件で1〜5時間程度焼成する方法を採用することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では、配位子を効率よく且つ十分に除去することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体上でカルボン酸配位子を分解する際にロジウム原子が凝集し易くなる傾向にある。
【0089】
このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、ロジウムを原子状態で且つ十分に高度に分散された状態で担体に担持することが可能となり、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒を得ることも可能となる。すなわち、このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)である自動車排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によって、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることが可能であるため、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量とロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%である自動車排ガス浄化用触媒、及び/又は、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定されるCO吸着量とロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%である自動車排ガス浄化用触媒を得ることも可能となる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
先ず、ヘキサン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、481173、組成式:[Rh2(C5H11−CO2)4])48.6mgをトルエン1L中に溶解させてロジウム含有液を調製した。次に、前記ロジウム含有液中にγ−アルミナ(住友化学社製の「AKP−G015」、比表面積:159m2/g)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、500℃の温度条件で3時間焼成することにより、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表1に示す。
【0092】
〈球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定〉
実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の縦12nm、横12nmの領域を、それぞれ走査透過型電子顕微鏡(日本電子製の商品名「JEM−2100F」)により観測した。このような観測により得られたSTEM写真を図7に示す。
【0093】
図7に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図7に示す結果から、実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された(なお、図7中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している)。
【0094】
また、図7に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.0nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、STEM像に基づいて、「隣接する2原子クラスター間の平均距離(各実施例及び比較例においては5個の2原子クラスターから見た場合における、隣接する2原子クラスター間の距離の平均値とする)」は1nm以上となっていることが確認され、その値は2nmであることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスター間の距離」は、担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(ヘキサン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(1.8nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが(図2参照)、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は2nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(ヘキサン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズとほぼ等しいことが確認された。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1)においては、担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズに応じて、隣接する2原子クラスター間の平均距離を制御できることが分かる。
【0095】
〈第1のロジウム分散度の測定〉
〔I〕試料の調製
実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末2.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製した。なお、このような試料は、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。
【0096】
〔II〕耐久試験(A)
前記試料を用いて、以下に示す耐久試験を実施した。すなわち、先ず、前記試料に対して、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に50時間供給した。なお、このようなリッチガスとリーンガスは、温度1000℃の条件下、触媒2gあたりに500mL/minで通過するように供給した。
【0097】
〔III〕50℃の温度条件下でのCOパルス測定法によるCO吸着量の測定
前記耐久試験(A)後の試料を、0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を全自動貴金属分散性測定装置(大倉理研社製の商品名「R6015」)の計量管の内部の中間部にそれぞれ設置した。その後、各全自動貴金属分散性測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とした後、O2(100容量%)のガス雰囲気下、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持した。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持した。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却した。その後、He(100容量%)のガス雰囲気下において、温度を50℃に維持したまま、各排ガス浄化用触媒に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスした。そして、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうちの触媒に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から各試料のCOの吸着量をそれぞれ測定した。そして、各試料のCOの吸着量の平均値を計算することにより、第1のCO吸着量を求めた。
【0098】
〔IV〕第1のRhの分散度の計算
このようにして得られた第1のCO吸着量と、ICP分析により測定されたロジウム(Rh)の担持量とから、下記式:
[第1のRh分散度(%)]=([第1のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して、第1のロジウムの分散度を求めた。このようにして測定された第1のロジウムの分散度は40%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0099】
(実施例2)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、オクタン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、442100、組成式:[Rh2(C7H15−CO2)4])56.8mgを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0100】
このようにして実施例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の80at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」を求めたところ、かかる平均距離は1nm以上であり、その値は2.5nmであることが確認された。このような結果から、隣接する2原子クラスター間の平均距離は担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ(オクタン酸ロジウム二核錯体の分子サイズ:2.3nm)とほぼ等しいことが分かった。ここで、このような実施例2で確認された結果と実施例1で確認された結果とを併せ鑑みると、ロジウムの担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子サイズにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を制御できることが分かる。また、実施例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は50%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0101】
(実施例3)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりにラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体(組成式:Rh2(C10H21−CH(OH)−CH2O−CH2CO2)4)90.6mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにイオン交換水1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0102】
このようにして実施例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の85at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」を求めたところ、かかる平均距離は1nm以上であり、その値は2.8nmであることが確認された。このような結果から、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体(ラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体)を用いることにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができることが分かった。また、実施例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、その分散度は55%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。また、このような結果から、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体(ラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体)を用いた場合には、水系溶媒を用いた場合においても、十分に高度に分散させた状態で十分な量のロジウムを担持できることが確認された。
【0103】
(比較例1)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])35.1mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0104】
また、このようにして比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の60at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.7nmであることが確認された。このような結果から検討すると、比較例1において担体にロジウムを担持するために用いた酢酸ロジウム二核錯体は、実施例1で用いられている前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体と比較して分子サイズが0.9nmと小さいため、隣接する2原子クラスター間の距離が1nm未満となったものと推察される。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は38%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0105】
(比較例2)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにイオン交換水1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0106】
このようにして比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるが、クラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の50at%未満(7at%)であった。また、比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は29%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
上記Cs−STEM測定の結果や表1及び図5に示す結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜3)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.0nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜3)によれば、第1のロジウムの分散度が40%以上となっている触媒が得られることも分かった。
【0109】
[実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<NO浄化率の評価試験>
先ず、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒をそれぞれ用い、上記第1のロジウムの分散度の測定における「〔I〕試料の調製」に記載の方法及び「〔II〕耐久試験(A)」に記載の方法と同様の方法を採用して、試料を調整した後にその試料に対して耐久試験(A)を施し、その後、ガス管からペレット状の触媒のみを取り出した。
【0110】
次に、このようにして得られた耐久試験後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料を常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、CO(0.6998容量%)、H2(0.23容量%)、NO(0.12容量%)、C3H6(0.16容量%)、O2(0.646容量%)、CO2(10容量%)、H2O(5容量%)及びN2(残部)からなるモデルガスを3500mL/minのガス流量で供給し、触媒入りガス温度が100℃となるように調整し、触媒入りガスのNO濃度を測定した。その後、触媒入りガス温度を15℃/minの昇温速度で500℃まで昇温し、触媒出ガスのNO濃度を測定し、触媒入りガス及び触媒出ガスにおけるそれぞれの測定値の差から、入りガス温度が500℃となった時の自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を算出した。得られた結果を図9に示す。
【0111】
図9に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜2)よりもNO浄化率が高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0112】
(実施例4)
γ−アルミナの代わりにNd−AZL(Nd−AZLの組成:Nd2O3(2質量%)/AZL(98質量%)、AZLの組成:Al2O3(200モル)/ZrO2(95モル)/La2O3(2.5モル)、比表面積:105m2/g、平均粒子径60μm)10gを用いた以外は実施例1と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0113】
このようにして実施例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の60at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm以上となっていることが確認され、その値は2nmであることが確認された。このような結果から、隣接する2原子クラスター間の距離は、担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ(1.8nm)とほぼ等しいことが分かった。また、実施例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して実施例1と同様にして第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は67%であった。得られた結果を表2に示す。
【0114】
(比較例3)
γ−アルミナの代わりにNd−AZL(実施例4で用いられたNd−AZLと同様のもの)10gを用いた以外は比較例2と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0115】
このようにして比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の7at%であった。また、比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであった。また、比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。得られた結果を表2に示す。
【0116】
(比較例4)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから182mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0117】
このようにして比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の10at%であった。また、比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.7nmであった。また、比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は22%であった。結果を表2に示す。
【0118】
(比較例5)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから727mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0119】
このようにして比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の5at%であった。また、比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.4nmであった。また、比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。結果を表2に示す。
【0120】
(比較例6)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから909mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0121】
このようにして比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の3at%であった。また、比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.3nmであった。また、比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は27%であった。結果を表2に示す。
【0122】
(比較例7)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])11.7mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0123】
このようにして比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.9nmであることが確認された。また、比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は29%であった。結果を表2に示す。
【0124】
(比較例8)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])46.8mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0125】
このようにして比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の55at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.6nmであることが確認された。また、比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。結果を表2に示す。
【0126】
(比較例9)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])58.5mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0127】
このようにして比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は25%であった。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2に示す結果からも明らかなように、ロジウムを担体(Nd−AZL)に担持する際にヘキサン酸ロジウム二核錯体を用いた本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例4)においては、担体上にロジウムが非常に高度な分散度(第1のロジウムの分散度:67%)で担持されていることが確認された。これに対して、ロジウムを担体(Nd−AZL)担持する際に硝酸ロジウム又は酢酸ロジウム二核錯体を用いた場合(比較例3〜9)においては、いずれも第1のロジウムの分散度が40%未満であり、ロジウムの分散性を十分に高度なものとすることができなかった。特に、比較例4及び比較例7においては、Rhの担持量を0.05wt%と低くしているものの、Rhの分散性を向上させることはできなかった。このような結果から、上記一般式(1)に記載のようなカルボン酸ロジウム錯体を利用することで、ロジウムの分散性を効率よく向上させることができ、上記第1のロジウムの分散度が40%以上となる自動車排ガス浄化用触媒を調製できることが分かった。
【0130】
(実施例5)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の使用量を48.6mgから1620mgに変更し、ロジウムの理論担持量が自動車排ガス浄化用触媒中において5.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表3に示す。
【0131】
このようにして実施例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0132】
(実施例6)
前記オクタン酸ロジウム二核錯体の使用量を56.8mgから1893mgに変更し、ロジウムの理論担持量が自動車排ガス浄化用触媒中において5.0質量%となるようにした以外は、実施例2と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表3に示す。
【0133】
このようにして実施例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0134】
【表3】
【0135】
表3に示す結果からも明らかなように、前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体を用いた場合(実施例5)には、γ−アルミナ(比表面積:159m2/g)にRhが2.11質量%担持され、他方、前記オクタン酸ロジウム二核錯体を用いた場合(実施例6)には、γ−アルミナにRhが1.67質量%担持されていることが確認された。また、選択率は、それぞれ42%(実施例5)、33%(実施例6)であった。カルボン酸配位子中の炭化水素基がヘキシル基(実施例5)とオクチル基(実施例6)における炭化水素基の炭素数の違いにより、ロジウムの担持量が変化する点について検討すると、先ず、担体にカルボン酸ロジウム錯体を担持する際に、図3に示すようにして担体の表面が錯体により担持されて覆われるものと推察される。そして、このようにして錯体が担持されると、各錯体の核に存在するロジウム同士は、配位子の存在により離間した状態で担持されることが分かる。このようにして担体上に錯体が担持されるため、カルボン酸配位子中の炭化水素基がオクチル基(実施例6)である場合には、カルボン酸配位子中の炭化水素基がヘキシル基(実施例5)である場合と比べて炭素数が長い分だけ、担持密度が下がったものと推察される。
【0136】
また、上述のような実施例1〜4の結果から、隣接するロジウムの2原子クラスター間の距離並びに第1のロジウムの分散度と、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)とに相関があることが分かる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜4)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法を採用することによって得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が1nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例1〜4で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含む50℃の温度条件のCOパルス測定法を実施することにより求められる第1のロジウムの分散度がいずれも40%以上となっており、耐久試験後においてもロジウムが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【0137】
(実施例7)
先ず、塩化ロジウム(III)三水和物(和光純薬工業株式会社、181−00841、組成式:RhCl3・3H2O)40.3mgをイオン交換水100mL中に溶解させて、そこへDL−グリセリン酸(東京化成工業株式会社、D0602、40%水溶液、ca.5.2mol/l)を加えて、Air雰囲気下、オイルバスの温度を110℃〜120℃に保ちながら、1時間還流をすることで、図10に示すカルボン酸ロジウム錯体:Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を含有するロジウム含有液を調製した。室温に冷却した後、イオン交換水を900mLを加え、全体で1Lのロジウム含有液を調製した。次に、前記ロジウム含有液中にAZL担体(組成:Al2O3(200モル)/ZrO2(95モル)/La2O3(2.5モル)、比表面積:110m2/g)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、AZL担体にロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表4に示す。
【0138】
なお、前記AZL担体を加える前のカルボン酸ロジウム(グリセリン酸ロジウム)含有液について、エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(ESI−MS、Micro Mass社製)を使用して質量分析を行った。得られた結果を図11に示す。図11からも明らかなように、前記ロジウム含有液中においてはロジウム二核錯体として存在していることが確認された。
【0139】
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図12に示す。
【0140】
図12に示す結果からも明らかなように、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図12に示す結果から、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図12中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0141】
また、図12に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、STEM像に基づいて、隣接する2原子クラスター間の平均距離(各実施例及び比較例においては5個の2原子クラスターから見た場合における、隣接する2原子クラスター間の距離の平均値とする)は1.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスター間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(1.6nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが(図5参照)、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は2nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズよりも大きいことが確認された。これは、用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の周りに水分子が水和しているためと考えられる。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ以上に制御できることが分かる。
【0142】
<第2のロジウム分散度の測定>
〔i〕試料の調製
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末10.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製した。なお、このような試料は、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。
【0143】
〔ii〕耐久試験(B)
前記試料を用いて、以下に示す耐久試験を実施した。すなわち、先ず、前記試料に対して、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に50時間供給した。なお、このようなリッチガスとリーンガスは、温度1000℃の条件下、触媒5gあたりに500mL/minで通過するように供給した。
【0144】
〔iii〕−78℃の温度条件下での低温COパルス測定法によるCO吸着量の測定
前記耐久試験(B)後の試料を、0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料をCOパルス吸着量測定装置(大倉理研社製)の計量管の内部の中間部にそれぞれ設置した。その後、各COパルス吸着量測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とした後、O2(100容量%)のガス雰囲気下、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持した。次に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持した。次いで、ガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却した(前処理)。このような前処理を施した後、Heガスを30ml/分の流量で流通させながら、ドライアイス/エタノール冷媒を用いて反応管を−78℃まで冷却した。温度が一定となった後、He(100容量%)のガス雰囲気下において、各排ガス浄化用触媒に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスした。そして、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうちの触媒に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から各試料のCOの吸着量を測定した。そして、各試料のCOの吸着量の平均値を計算することにより、第2のCO吸着量を求めた。
【0145】
〔iv〕第2のRhの分散度の計算
このようにして得られたCO吸着量と、ICP分析により測定されたロジウム(Rh)の担持量とから、下記式:
[第2のRh分散度(%)]=([第2のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して、第2のロジウムの分散度を求めた。このようにして測定された第2のRhの分散度は21.8%であった。得られた結果を表4及び図13に示す。
【0146】
(比較例10)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、Rh(NO3)3水溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgを用い、更に、イオン交換水1Lを用いた以外は実施例7と同様にして、AZL担体にロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表4に示す。
【0147】
このようにして比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるが、クラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の50at%未満(7at%)であった。また、比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は18.6%であった。得られた結果を表4及び図13に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
上記Cs−STEM測定の結果、表4及び図13に示す結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.5nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、第2のロジウムの分散度が20%以上となっている触媒が得られることも分かった。
【0150】
[実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<CO、NO、C3H6浄化率の評価試験(I)>
先ず、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒をそれぞれ用い、上記第2のロジウムの分散度の測定における「〔i〕試料の調製」に記載の方法及び「〔ii〕耐久試験(B)」に記載の方法と同様の方法を採用して、試料を調整した後にその試料に対して耐久試験(B)を施し、その後、ガス管からペレット状の触媒のみを取り出した。
【0151】
次に、このようにして得られた耐久試験後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料を常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、CO(0.6998容量%)、H2(0.23容量%)、NO(0.12容量%)、C3H6(0.16容量%)、O2(0.646容量%)、CO2(10容量%)、H2O(5容量%)及びN2(残部)からなるモデルガスを3500mL/minのガス流量で供給し、触媒入りガス温度が100℃となるように調整し、触媒入りガスのCO、NO、C3H6濃度を測定した。その後、触媒入りガス温度を15℃/minの昇温速度で400℃まで昇温し、触媒出ガスのCO、NO、C3H6濃度を測定し、触媒入りガス及び触媒出ガスにおけるそれぞれの測定値の差から、自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を算出した。得られた結果のうち、NO浄化率曲線について図14に示す。
【0152】
図14に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例10)よりもNO浄化率が高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例7)においてはCO、C3H6浄化率についても同様に高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0153】
また、CO、NO、C3H6浄化率曲線から、それぞれの50%転化温度(T50)を算出した。得られた結果を図15に示す。
【0154】
<NO、C3H6浄化率の評価試験(II)>
上記耐久試験(B)後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒のRich雰囲気下でのNOとC3H6の浄化率を650℃、550℃、450℃において評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料としてペレット触媒0.5gを常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器社製の商品名「CATA−5000−4」)に設置した。次に、供給するガスとしては、NO(0.15容量%)、CO(0.65容量%)、C3H6(0容量%C)、O2(0.8容量%)、CO2(10容量%)、H2O(4容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスと、NO(0.15容量%)、CO(0.65容量%)、C3H6(0.3容量%C)、O2(0容量%)、CO2(10容量%)、H2O(4容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスとを使用し、ガス流量は7L/分とした。そして、前記リーンガスと前記リッチガスとを10分交互に切り替えながら、触媒に対する入りガス温度が100℃で前処理した後、入りガス温度を650℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。さらに、入りガス温度を550℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。さらに、入りガス温度を450℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。得られた結果を図16及び図17に示す。
【0155】
上述の実施例及び比較例の結果から、本発明の排ガス浄化用触媒においては、隣接するロジウムの2原子クラスター間の距離並びに第2のロジウムの分散度と、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)と、配位子が親水性基であるために水分子が水和して2原子クラスター間の距離が配位子の長さ以上に開いたこととのために、比較例10で得られた触媒に対して優位差が出たと考えられる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法(実施例7)を採用することによって得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含むCOパルス測定法を実施することにより求められる第2のロジウムの分散度が20%以上となっており、耐久試験後においてもロジウムが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【0156】
(実施例8)
先ず、以下のようにして図18に示す構造を有するカルボン酸ロジウム錯体の合成を行った。すなわち、先ず、塩化ロジウム(III)三水和物(和光純薬工業株式会社、181−00841、組成式:RhCl3・3H2O)をイオン交換水とエタノールの混合溶媒に溶解させて、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル(東京化成工業株式会社、C1713、図19に示す構造を有する化合物)を加えて、Air雰囲気下、オイルバスの温度を110℃〜120℃に保ちながら、1時間還流をすることで、カルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)を含有する錯体溶液を得た。なお、このようにして得られた錯体溶液に関して、カルボン酸ロジウム錯体の存在を確認するためにエレクトロスプレーイオン化質量分析装置(ESI−MS、Micro Mass社製)を使用して質量分析を行った。得られた結果(ESI−MSスペクトル)を図20〜24に示す。図20〜24に示すESI−MSスペクトルからも明らかなように、前記錯体溶液中においては錯体がロジウムの二核錯体として存在していることが確認された。なお、図20〜24に示すESI−MSスペクトルにおいては、Naイオンでイオン化させることで検出されるRh2(C15H19O7)4をM1とした時に、[M1+3Na]3+、[M1+2Na]2+、[2M1+3Na]3+、[2M1+2Na]2+、[M1+Na]+のパターンでスペクトルが検出されており、不純物がわずかに存在することも同時に確認された。
【0157】
次いで、前述のようにして得られた錯体溶液を室温(25℃)まで冷却した後に濃縮し、アセトニトリルを用いて再結晶して、目的物である図18に示すカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の結晶性粉末を得た。このように、本実施例においては、前記不純物を取り除くためにアセトニトリルを用いて再結晶化して精製し、目的物であるカルボン酸ロジウム錯体を単結晶として得た。なお、このようにして得られたカルボン酸ロジウム錯体の結晶性粉末に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析の結果(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体の分子構造を示す図面[ORTEP図:原子の熱振動を楕円形で示した図])を、図25に示す。図25に示す結果から、得られた粉末においてロジウムの二核構造が確認され、ロジウムのaxial位に2分子のアセトニトリルが配位している(2分子のアセトニトリルのN原子がRhに配位結合している)ことが確認された。また、図25に示す結果から、結晶溶媒としてアセトニトリルが2分子存在してることも確認された。
【0158】
次に、前述のようにして得られた図18に示すカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)71mgをクロロホルム1.0Lに溶解させてロジウム含有液を調製した。その後、前記ロジウム含有液中にNd−AZL(実施例4で用いたNd−AZLと同様のもの)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、Nd−AZLにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるRh担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表5に示す。
【0159】
実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図26示す。
【0160】
図26に示す結果からも明らかなように、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図26に示す結果から、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の73at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図26中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0161】
また、図26からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例8)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例8)においては、STEM像に基づいて、隣接する2原子クラスタ間の平均距離(各実施例及び比較例において5個の2原子クラスタから見た場合における、隣接する2原子クラスタ間の距離の平均値とする)は2.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスタ間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(2.6nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は3.7nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の分子サイズよりも大きいことが確認された。これは、剛直な4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテルを配位子に用いることにより、ロジウム二核錯体間の距離を確実に確保できることを示唆している。なお、配位子がアルキル鎖1本の場合においてはロジウム二核錯体の半径内に別のロジウム二核錯体が入ってきてしまい、二核錯体間の距離を分子サイズ分必ずしも確保できない場合も生じ得る。従って、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ以上に制御できることが分かる。なお、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の構造からも明らかなように、配位子中において、カルボキシル基(−CO2)とベンゼン環(一般式(5)で表される有機基中のベンゼン環)とが単結合で結合しているため自由に回転でき、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された際に、ベンゼン環とクラウンエーテル部位が担体と平行になることが可能となる。
【0162】
また、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は48%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0163】
(実施例9)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにオクタン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、442100、組成式:[Rh2(C7H15−CO2)4])37.8mgを用い且つクロロホルムの代わりにトルエン1.0Lを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持されたが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0164】
このようにして実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の68at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0165】
また、実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は42%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0166】
(実施例10)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにミリスチン酸ロジウム二核錯体(組成式:[Rh2(C13H27−CO2)4])57mgを用い、クロロホルムの代わりにトルエン1.0mLを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持されたが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0167】
また、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図27示す。
【0168】
図27に示す結果からも明らかなように、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図27に示す結果から、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図27中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0169】
また、図27からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例10)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例10)においては、Cs−STEMによる測定から、隣接する2原子クラスター間の平均距離が3.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスタ間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(ミリスチン酸ロジウム二核錯体))の分子サイズ(3.6nm)とほぼ等しいことが確認された。これは、用いたカルボン酸ロジウム錯体(ミリスチン酸ロジウム二核錯体)の周りにトルエンが溶媒和しているためだと考えられる。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例10)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズに応じて制御できることが分かる。
【0170】
また、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は45%であった。得られた結果を表5に示す。
【0171】
さらに、実施例8と実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に関して、球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)により、隣接する2原子クラスター間の距離の分布をそれぞれ測定した。なお、このような測定は、実施例8で得られた触媒の任意の縦12nm、横12nmの領域と、実施例10で得られた触媒の任意の縦15nm、横15nmの領域に対してそれぞれ行った。得られた結果を図28に示す。図28に示す結果からも明らかなように、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、分散性をより高度なものとすることができるとともに、分散の均一性もより高度なものとすることができることが分かった。
【0172】
(比較例11)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにの代わりに酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])32.0mgを用い且つクロロホルムの代わりにアセトン1.0Lを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるRh担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0173】
また、このようにして比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の62at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.8nmであることが確認された。このような結果から検討すると、比較例11において担体にロジウムを担持するために用いた酢酸ロジウム二核錯体は分子サイズが0.9nmと小さいため、隣接する2原子クラスター間の距離が1nm未満となったものと推察される。また、比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、ロジウムの分散度は41%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0174】
【表5】
【0175】
上記Cs−STEM測定の結果や表5及び図29に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8〜10)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.0nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、特に4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、担体に担持された全Rh原子の73at%以上が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が2.5nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、特に、実施例8で採用している本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、第2のロジウムの分散度が48%以上となるような、非常に高度な分散度を有する触媒が得られることも分かった。このような結果から、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、分散性をより高度なものとすることができるとともに、分散の均一性もより高度なものとすることができることが分かった。
【0176】
[実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<CO、NO、C3H6浄化率の評価試験>
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能を評価する際に採用したCO、NO、C3H6浄化率の評価試験(I)と同様の方法を採用して、実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を評価した。このようにして得られた結果に基づいて求められたNOの50%転化温度(NOが入りガス濃度に対して50%転化される温度(T50))のグラフを図30に示す。
【0177】
図30に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例8及び実施例9)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例11)よりもNO浄化率が十分に高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例8及び実施例9)は、CO及びC3H6浄化率においても、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例11)よりも高度な浄化率を示し、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0178】
また、上述のような結果から、実施例8及び9で得られた排ガス浄化用触媒は、隣接するRhの2原子クラスター間の距離が十分なものとなっていることと、Rhの分散度が十分に高度なものとなっていることと、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)が十分に大きなものであることと、その配位子が剛直であるために一つのロジウム二核錯体の配位子が他のロジウム二核錯体の配位子と配位子の隙間に入り込む事でロジウム2原子クラスター間の距離が短くなってしまうような現象を十分に防止できたこととのために、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒に対して優位差が出たと考えられる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8及び実施例9)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法(実施例8及び実施例9)により得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が2nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例8及び実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含む低温COパルス測定法を実施することにより求められる第2のRhの分散度がいずれも20%以上となっており、耐久試験後においてもRhが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
以上説明したように、本発明によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、自動車から排出される排ガスを浄化するために用いる三元触媒等として利用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の成分を十分に浄化するために様々な触媒が用いられてきた。このような自動車排ガス浄化用触媒としては、例えば、γ−Al2O3等からなる担体に白金(Pt)やロジウム(Rh)などの貴金属を担持させた触媒が知られている。また、このような自動車排ガス浄化用触媒の製造方法としては、一般に、貴金属の塩を含有する溶液を担体に担持した後、これを焼成して担体に貴金属を担持する方法が採用されてきた。そして、近年では、より高い触媒活性を有する触媒を得るために様々な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法が研究されている。
【0003】
例えば、特開2006−55807号公報(特許文献1)においては、複数の有機多座配位子と複数の貴金属原子からなる多核錯体を酸化物担体上に析出させ、次いで有機多座配位子を除去することで、貴金属クラスターが担持された触媒を得る触媒の製造方法が開示されている。また、特開2007−222806号公報(特許文献2)においては、白金アセチルアセトナート、ジニトロジアミン白金等の白金錯体をベーマイト水溶液に投入することによりゲル化物を作成して得られる貴金属触媒の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1〜2に記載のような触媒の製造方法においては、必ずしも十分な触媒活性を有する触媒を得ることができなかった。
【0004】
また、特開2008−13533号公報(特許文献3)においては、複数錯体含有化合物を多孔質担体に含浸担持させて触媒を得る方法が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のような方法においては、前記錯体中の核(金属)にPtを用いた場合は実施可能であるが、錯体の核(金属)にRhを用いた場合には文献中に記載されているような製造条件では複数錯体含有化合物自体を製造することができない。そのため、特許文献3に記載の触媒を得る方法に基づいてRhが担持された触媒を製造することはできない。
【0005】
また、特開2007−230924号公報(特許文献4)においては1個の金属原子又は複数個の同じ種類の金属原子に配位子が配位してなる金属錯体であって前記配位子の少なくとも1つが前記金属原子に配位していないカルボキシル基(例えばジカルボン酸配位子)などを有する金属錯体を含有する溶液を担体に含浸し、乾燥後焼成することにより触媒を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載のような方法においては、前記金属原子としてPtを用いた場合は実施可能であるが、前記金属原子としてRhを用いた場合にはその文献中に記載の製造条件で前記金属錯体自体を製造することができない。そのため、特許文献4に記載の触媒を得る方法に基づいてRhが担持された触媒を製造することはできない。
【0006】
更に、特開2007−229642号公報(特許文献5)においては、配位可能官能基を有する化合物を結合させた担体に、金属錯体を含有する溶液を含浸させた後に乾燥、焼成して触媒を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献5に記載の方法においては、当該文献に記載の金属錯体である[Rh2(CH3COO2)4]や[Rh2(C6H5COO2)4]といったカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、ロジウムを十分に担持することができないばかりか、十分な触媒機能を有する触媒を必ずしも得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−55807号公報
【特許文献2】特開2007−222806号公報
【特許文献3】特開2008−13533号公報
【特許文献4】特開2007−230924号公報
【特許文献5】特開2007−229642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ロジウムを担体に担持する際に、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0010】
【化1】
【0011】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いることにより、ロジウムの2原子クラスターが十分な割合で前記担体に担持されるとともに、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0(より好ましくは1.5nm以上)となって原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で前記担体に担持され、これにより十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒が得られること見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることが好ましい。
【0015】
更に、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明にかかるロジウムは、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0017】
【化2】
【0018】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0020】
【化3】
【0021】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより、自動車排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0022】
上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記カルボン酸ロジウム錯体が前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種であり且つ前記ロジウム含有液の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。
【0023】
また、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、得られる自動車排ガス浄化用触媒が、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm)である自動車排ガス浄化用触媒であることが好ましい。また、かかる自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、得られる触媒が、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることがより好ましく、また、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%となるものであることがより好ましい。このように、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒を製造するための方法として好適に採用できる方法である。
【0024】
なお、本発明の自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、ロジウムは、上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に担持される。従来の触媒の製造方法においてロジウムを担持するために用いられてきたロジウム塩化物等は担体との間で静電的な弱い結合を形成して担体に担持されるものである。これに対して、本発明に用いられる上記一般式(1)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、axial位の不飽和配位サイトを持っているため、担体上の水酸基(又は酸素原子)との間に配位結合を形成し、担体に十分に安定した状態で選択的に吸着担持されるものである。
【0025】
このような錯体の担体上での担持状態を説明するために、本発明にかかる上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の好適な一例として、Rh2(C5H11COO)4を例に挙げ、図1に、かかる錯体が担体上に担持されている状態を模式的に示す。また、カルボン酸ロジウム錯体のもう一つの好適な一例としてRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を例に挙げ、図2に、かかる錯体が担体上に担持されている状態を模式的に示す。本発明においては、カルボン酸ロジウム錯体を担体に担持すると、先ず、図1〜2に記載のように、担体上の水酸基(又は酸素原子)と、錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合が形成される。このようにして配位結合が形成されると、その強い結合力によって、安定性に優れた状態でカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される。また、このようにしてカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持されると、各錯体中の核は配位子の存在によりそれぞれ離間した状態で担体上に配置され、図3及び4にそれぞれ示すように、担体表面上に各錯体の核が島状に分散されて配置された状態が形成される。さらに、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される際に、図4に示すように、島と島の間に水分子が数個存在する場合には、それにより、錯体同士は、配位子の長さ以上の距離を離した状態で担体上に配置することができる。すなわち、前記カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持されると、各カルボン酸ロジウム錯体の核同士は、錯体の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)に応じて十分に距離をとった状態で担体上に担持されるものと推察される。
【0026】
なお、図3では、Rh2(C5H11COO)4の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)が0.9nmであり、担体上に担持される各カルボン酸ロジウム錯体の核同士の距離は、その分子サイズに応じておおよそ2nm程度の距離となることが推察できる。また、図4では、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の分子サイズ(分子の外接円の平均半径)が約0.8nmであり、担体上に担持される各カルボン酸ロジウム錯体の核同士の距離は、その分子サイズによるが、実施例であるグリセリン酸ロジウムの場合は(図4に示す錯体の分子をファンデルワールス半径を考慮した図を参照)、隣の錯体分子の核との距離はおおよそ平均1.6nm程度の距離となることが推察できる。
【0027】
なお、ここにう「カルボン酸ロジウム錯体の分子半径」は、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を例に挙げると、図5に示すような分子構造のモデルを考慮して、その分子の外接円から見積もられる分子半径lr(ここで、lrとはRh−Rh軸をz軸とした場合のxy平面内の円に基づいて定義される。)とすることができる。図5に示すような分子構造のモデルを考慮する場合、計算モデルとしてのRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の構造(Rh二核クラスターにグリセリン酸イオン:HO−CH2−CH(OH)−COO−を配位させた構造)に対して、構造最適化を気相中で行い、計算方法としてはハイブリッド密度汎関数法B3PW91を採用し、基底関数としてはLANL2MBを用いて、その分子半径lrを求めることができる。
【0028】
このように、本発明にかかるカルボン酸ロジウム錯体を用いてロジウムを担体上に担持すると、その錯体の分子サイズが十分に大きく、分子サイズに対応して錯体間の距離を制御することが可能である。また、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の配位子を用いた場合、その配位子は水分子に対するより高い親和性を持った配位子であることから、溶媒として水系溶媒を使用することで錯体の周囲には水和した水分子が存在することとなるため、核として存在するロジウムはより十分に距離をとって、より十分に高度に分散された状態で担体上に担持される。
【0029】
また、このようにしてカルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された後に焼成すると、担体と錯体との結合の熱安定性が高いため、錯体の核にある2つのロジウム原子が凝集することや飛散することが十分に防止されながら配位子が除去されることから、錯体の核として存在する2つのロジウム原子は、島状に分散された状態を十分に維持しながら原子状態で担体に担持される。そのため、前記カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された後に焼成すると、ロジウムは2原子クラスターとして十分に分散された状態で担体に担持される。そして、前述のように、焼成時の凝集や飛散が十分に抑制されることから、隣接する2原子クラスター間の平均距離が前記カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ(特に配位子のサイズ)を考慮すると(場合により、前記分子サイズ及び水和した水分子のサイズを考慮すると)1.0nm以上(好ましくは1.5nm以上、より好ましくは2nm以上)となる。また、上述のように、本発明においては、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のような水分子に対するより高い親和性を持った配位子を有する錯体を用い且つ水系溶媒を用いた場合は、用いるカルボン酸ロジウム錯体の配位子のサイズと、その配位子が親水基であるためにその周囲を取り巻く水分子とにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離がより容易に1.0nm以上(好ましくは1.5nm以上(更に好ましくは2nm以上)になるものと推察される。
【0030】
さらに、本発明において、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、その配位子がベンゾクラウンエーテル基を有する立体的に嵩高いものであることから、担体上の水酸基(又は酸素原子)と錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合が形成させる際に、配位子同士が重なることを、より高い水準で防止できる。すなわち、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体においては、配位子が立体的に嵩高いものであることから、一つのカルボン酸ロジウム錯体の配位子と配位子との間の空間(分子内のわずかな隙間)に他のカルボン酸ロジウム錯体の配位子が入り込むことをより高度な水準で防止でき、担体上の水酸基(又は酸素原子)と錯体中のaxial位の不飽和配位サイトとの間で配位結合を形成させる際に、配位子同士が重なることを、より高い水準で防止できる。そのため、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、より十分にカルボン酸ロジウム錯体同士の距離を確保しながら、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持される傾向にある。このように、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、より高度に分散した状態でロジウムの2原子クラスターが担持される。そのため、上記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いることにより、高温条件下における粒成長(シンタリング)をより高度に抑制することが可能な触媒が得られるものと推察される。
【0031】
また、このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用して製造することが可能な上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムが原子状態(2原子クラスターの状態)で且つ十分に分散された状態(より好ましくは、前記第1のロジウムの分散度が40〜80%(更に好ましくは40〜75%)である状態及び/又は前記第2のロジウムの分散度が20〜50%(更に好ましくは20〜48%)である状態)で担体に担持され、十分な量の活性点を有するものとなるため、十分に高度な触媒活性を発揮できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(C5H11COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(C5H11COO)4の担持状態に関する第1の模式図である。
【図2】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の担持状態に関する第1の模式図である。
【図3】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(C5H11COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(C5H11COO)4の担持状態に関する第2の模式図である。
【図4】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4が担体(Support)に担持されている状態を示す、Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の担持状態に関する第2の模式図である。
【図5】カルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4のファンデルワールス半径を考慮した分子軌道法により求めた分子模型を示す模式図である。
【図6】自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)を模式的に示した概念図である。
【図7】実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である
【図8】実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第1のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図9】実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を示すグラフである。
【図10】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体(Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4)の構造を示す化学構造式である。
【図11】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体の1種であるRh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4の質量分析結果を示すグラフである。
【図12】実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒のSTEMによる測定結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第2のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図14】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のNO浄化率を示すグラフである。
【図15】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃5時間R/L耐久後と1000℃50時間R/L耐久後の昇温三元活性評価におけるCO、NO、C3H6の50%転化温度(T50)を示すグラフである。
【図16】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のRich−NOx評価におけるNOxの各温度における最高浄化率を示すグラフである。
【図17】実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の1000℃50時間R/L耐久後のRich−C3H6評価におけるC3H6の各温度における最高浄化率を示すグラフである。
【図18】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の構造を示す化学構造式である。
【図19】実施例8で用いたカルボン酸ロジウム錯体の前駆体であるカルボン酸(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)の構造を示す化学構造式である。
【図20】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の前駆体であるカルボン酸ロジウム錯体の1種である4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体の質量分析結果を示すグラフである。
【図21】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([M1+3Na]3+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図22】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([M1+2Na]2+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図23】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([2M1+3Na]3+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図24】図20に示す質量分析結果のグラフの一部([2M1+2Na]2+、[M1+Na]+のパターン部分)を拡大したグラフである。
【図25】実施例8で用いたカルボン酸ロジウム錯体の前駆体であるカルボン酸(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)のORTEP図(原子の熱振動を楕円形で示した図)である。
【図26】実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である。
【図27】実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域の走査透過型電子顕微鏡写真(STEM像)である。
【図28】実施例8と実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒中のロジウム2原子クラスター間の距離の分布を示すグラフである。
【図29】実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒の第2のロジウムの分散度を示すグラフである。
【図30】実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO50%転化温度(T50)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0035】
先ず、本発明の自動車排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とするものである。
【0036】
本発明にかかる担体としては特に制限されず、排ガス浄化用の触媒に用いることが可能な公知の担体を適宜用いることができ、例えば、金属酸化物からなる担体を適宜用いることができる。このような担体に利用される金属酸化物としては、例えば、活性アルミナ、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア、ジルコニア、ランタン安定化活性アルミナ等が挙げられ、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びバナジウム(V)の酸化物、これらの固溶体、並びにこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。また、このような金属酸化物の中でも、より高い触媒活性が得られるという観点から、CeO2、ZrO2、Y2O3、TiO2、Al2O3、これらの固溶体、及びこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含有するものがより好ましい。
【0037】
また、このような担体の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このような担体の比表面積は特に制限されないが、より高い触媒活性を得るという観点からは、30m2/g以上であることがより好ましい。
【0038】
また、本発明にかかる前記ロジウムは、前記担体に原子状態で担持されている。本発明においては、ロジウムが原子状態で担体に担持されているため、ロジウム原子の分散性が十分に高度なものとなり、これにより触媒上の活性点の数が十分なものとなることから、十分に高度な触媒活性が得られる。なお、このようなロジウムの担持状態(原子状態)は、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を採用することにより好適に達成される。
【0039】
このようなロジウムの担持量は、前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%(より好ましくは0.10〜0.25質量%、更に好ましくは0.10〜0.20質量%、特に好ましくは0.10〜0.15質量%)である。このようなロジウムの担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、他方、前記上限を超えると、Rhのシンタリングが起こりやすく、Rhの分散度が低下して十分な活性が得られなくなる。
【0040】
また、本発明においては、前記ロジウムの50at%以上、より好ましくは75at%以上、更に好ましくは95at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されている。ここで、本発明にいう「2原子クラスター」とは、2つのロジウム原子が前駆体であるカルボン酸ロジウム二核錯体中のRh−Rh結合長(約2.4Å)にほぼ等しい距離で集積した集合体をいう。2原子クラスターとして担持されたロジウムの割合が前記範囲にあると、ロジウムが十分に分散して担持された状態となるため、触媒の活性点の数が十分なものとなり、より高度な触媒活性が得られる。また、2原子クラスターとして存在するロジウムの割合が前記下限未満では、十分に高い触媒活性が得られなくなる。
【0041】
このような2原子クラスターとして存在するロジウム原子の割合(at%)を求める方法としては、自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域を、収束レンズに球面収差補正装置を備えた走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により測定し、得られたSTEM像に基づいてその領域中に存在する全ロジウムの原子数と、2原子クラスターとして存在するロジウムの原子数とをそれぞれ求め、全ロジウムの原子数に対する2原子クラスターとして存在するロジウムの原子数の比を算出することにより求める方法を採用する。なお、前記走査透過電子顕微鏡(STEM)としては、例えば日本電子製の商品名「JEM−2100F」を用いることができる。
【0042】
また、本発明においては、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)である。また、このような隣接する前記2原子クラスター間の平均距離としては、1.0nm(より好ましくは1.5nm)〜3.0nmであることが更に好ましく、2.0nm〜3.0nmであることが特に好ましい。このような平均距離が前記下限未満ではロジウムの分散性が低下し、十分に高度な触媒活性が得られなくなる。また、前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合には、活性点の数が減少して十分に高度な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は、前述の2原子クラスターとして存在するロジウム原子の割合(at%)を求める方法と同様にCs−STEM測定することにより得られるSTEM像に基づいて求められる。ここで、本発明において「隣接する2原子クラスター間の距離」とは、各2原子クラスターから見て、隣接する2原子クラスター間の距離が最短となる線分の長さをいい、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」とは、前記線分の長さの平均値をいう。このような平均距離としては、少なくとも5個以上の2原子クラスターを観測した場合における前記線分の長さの平均値であることが好ましい。本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」については、例えば、縦12nm、横12nmの任意の領域のSTEM像を用いて求めることができる。
【0043】
以下、本発明にいう「隣接する2原子クラスター間の平均距離」について、図面を参照しながら詳細に説明する。図6は自動車排ガス浄化用触媒の担体上の縦12nm、横12nmの任意の領域のSTEM像を模式的に示した概念図である。すなわち、図6は、担体10上に5つの2原子クラスター11A〜E(図中、白い丸はロジウムの1原子を示し、点線で覆われた内部に存在する2つのロジウム原子が2原子クラスターとして存在するロジウムであることを示す。)がそれぞれ担持されている状態のSTEM像1を模式的に示す図面(概念図)である。図6に示す場合、「隣接する2原子クラスター間の距離」には、2原子クラスター11Aに関しては2原子クラスター11Aと2原子クラスター11Bとの間の線分の長さ(距離)Xが相当し、2原子クラスター11Bに関しては2原子クラスター11Bと2原子クラスター11Aとの間の線分の長さ(距離)Xが相当し、2原子クラスター11Cに関しては2原子クラスター11Cと2原子クラスター11Dとの間の線分の長さ(距離)Yが相当し、2原子クラスター11Dに関しては2原子クラスター11Dと2原子クラスター11Cとの間の線分の長さ(距離)Yが相当し、2原子クラスター11Eに関しては2原子クラスター11Dと2原子クラスター11Cとの間の線分の長さ(距離)Zが相当する。そして、このような線分の長さ(距離)の平均値が「隣接する2原子クラスター間の平均距離」に相当する。なお、ここにいう「線分の長さ」とは、各2原子クラスター間の最近接点間を結んだ場合の線分の長さをいう。
【0044】
さらに、本発明においては、2原子クラスターの総数のうちの50〜100%(数基準による割合)において、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)であることが好ましく、より高い触媒活性が得られるという観点からは、前記数基準による割合が100%であること(すなわち、全ての2原子クラスターにおいて、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)であること)が好ましい。なお、ここにいう「2原子クラスターの総数」とは、前記STEM像中に確認される全ての2原子クラスターの数をいう。また、隣接する前記2原子クラスター間の距離が1.5nm以上である2原子クラスターの割合が2原子クラスターの総数の50%未満では、高温条件下で長時間使用した後において十分な触媒活性を得ることができなくなる。
【0045】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と、前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%(更に好ましくは50〜80%)であるという条件を満たすことがより好ましい。このようなロジウムの分散度が前記下限未満では十分な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、ここにいう「第1のロジウムの分散度」は、後述の「50℃の温度条件のCOパルス測定法」により測定される「第1のCO吸着量」と、担体への「ロジウム(Rh)担持量」とから、下記式:
[第1のRh分散度(%)]=([第1のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して求められる値をいう。
【0046】
本発明において「50℃の温度条件のCOパルス測定法」とは、以下のようにして触媒のCO吸着量を求める方法をいう。すなわち、先ず、測定用の試料として、自動車排ガス浄化用触媒の粉末2.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製する。次に、前記試料を、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置する。次いで、温度1000℃の条件下、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に、前記試料2gあたり500mL/minの流量で通過するようにして50時間供給する耐久試験を実施する。このような耐久試験後の試料0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を全自動貴金属分散性測定装置(大倉理研社製の商品名「R6015」)の計量管の内部にそれぞれ設置する。次いで、前記全自動貴金属分散性測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とし、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持する。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持する。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却する(前処理)。このような前処理を施した後、温度が50℃(一定)の条件下において、He(100容量%)のガス雰囲気下において、試料に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスする(吸着温度:50℃)。次いで、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうち、前記試料に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から「第1のCO吸着量」を求める。そして、このようにして測定される各試料(3水準)のCO吸着量の平均値を最終的な「第1のCO吸着量」とする。
【0047】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であるという条件を満たすことがより好ましい。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒が、例えば、前記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いて得られたものである場合には、第2のロジウムの分散度が20〜40%であるという条件を満たすことがより好ましく、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いて得られたものである場合には、第2のロジウムの分散度が30〜50%であるという条件を満たすことがより好ましい。このような第2のロジウムの分散度が前記下限未満では触媒活性が低下する傾向にある。なお、本発明において「第2のロジウムの分散度」は、後述の「−78℃の温度条件の低温COパルス測定法」により測定される「第2のCO吸着量」と、担体への「ロジウム(Rh)担持量」とから、下記式:
[第2のRh分散度(%)]=([第2のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して求められる値をいう。
【0048】
「−78℃の温度条件の低温COパルス測定法」とは、以下のようにして触媒のCO吸着量を求める方法をいう。すなわち、先ず、測定用の試料として、自動車排ガス浄化用触媒の粉末10.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製する。次に、前記試料0.70gを、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置する。次いで、温度1000℃の条件下、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に、前記試料5.0gあたり500mL/minの流量で通過するようにして50時間供給する耐久試験を実施する。次に、耐久試験後の試料0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を低温COパルス吸着量測定装置(大倉理研社製)の計量管の内部にそれぞれ設置する。次いで、前記低温COパルス吸着量測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とし、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持する。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持する。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却する(前処理)。このような前処理後、Heガスを30ml/分の流量で流通させながら、ドライアイス/エタノール冷媒を用いて計量管を−78℃まで冷却した。このようにして温度が−78℃で一定となった後に、He(100容量%)のガス雰囲気下において、試料に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスする(吸着温度:−78℃)。次いで、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうち、前記試料に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から「第2のCO吸着量」を求める。そして、このようにして測定される各試料(3水準)のCO吸着量の平均値を最終的な「第2のCO吸着量」とする。
【0049】
また、本発明においては、前記ロジウムが上記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることが好ましい。このようなカルボン酸ロジウム錯体を用いてロジウムを担持する方法としては、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用することができる。
【0050】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、前記触媒を基材に担持したハニカム形状のモノリス触媒や、ペレット形状のペレット触媒の形態等としてもよい。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。
【0051】
また、このような基材に前記触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。なお、このような自動車排ガス浄化用触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で排ガス浄化用触媒に用いることが可能な他の成分(例えばNOx吸蔵材等)を適宜担持してもよい。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、後述する本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を採用することにより製造することができる。
【0052】
次に、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。すなわち、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法は、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【0053】
【化4】
【0054】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより、自動車排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0055】
このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、それぞれ、核としての2つのロジウム原子にカルボン酸配位子(式:R−CO2、R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2、式:R4−(C(R5)(X))l−CO2又はZ−CO2で表される配位子)が架橋型の配位子として配位した二核の錯体である。このようなカルボン酸ロジウム錯体を用いることにより、これを担体に担持した際に、錯体と担体との間で配位結合を形成させることが可能となり、熱安定性が十分に高い状態で前記錯体を担体に担持させることが可能となる。そして、これにより、ロジウムの50at%以上を2原子クラスターとして担体に担持することが可能となる。
【0056】
先ず、本発明にかかる一般式(1):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0057】
このような一般式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、炭素数が4〜20(より好ましくは5〜18、更に好ましくは6〜15)のものである。このような炭素数が前記下限未満では、担体にロジウムを担持させた際に、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0058】
また、上記一般式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなRの中でも、入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基(特に好ましくは直鎖状のアルキル基)が好ましい。なお、このような式(1)中のRとして選択され得る炭化水素基は、それぞれ置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0059】
次に、本発明にかかる一般式(2):
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0060】
このような一般式(2)中のR1は、側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基である。このような炭化水素基の炭素数としては6〜18であることがより好ましく、10〜15であることが更に好ましい。このような炭素数が前記下限未満では担体にロジウムを担持させた際に隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が完全に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0061】
また、このようなR1として選択され得る側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなR1としては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合に、より好適に用いることができることから、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる炭化水素基であることが好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる飽和炭化水素基であることがより好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
【0062】
このようなR1としては、特に制限されないが、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、2−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、2−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、2−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、2−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、2−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基、2−ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基、2−ヒドロキシウンデシル基、12−ヒドロキシドデシル基、2−ヒドロキシドデシル基等が挙げられる。
【0063】
また、上記一般式(2)中のR2として選択され得る炭化水素基は、炭素数が1〜3
(より好ましくは1〜2)のものである。このような炭素数が前記上限を超えるとカルボン酸ロジウム錯体の親水性が低下する傾向にある。このような炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(2)中のR3として選択され得る炭化水素基は、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5)のものである。このような炭素数が前記下限未満では、担体にロジウムを担持させた際に隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0065】
また、上記一般式(2)中のR3として選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、R3としては、調製や入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基であることがより好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基(特に好ましくはメチル基、エチル基)であることが更に好ましい。
【0066】
また、上記一般式(2)中のnは0〜1のうちのいずれかの整数である。更に、mは0〜6(より好ましくは1〜4)のうちのいずれかの整数である。これらの整数が前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が十分に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。また、このようなnとmは、nとmとの和が1以上という条件を満たす。すなわち、このようなn及びmは、いずれか一方が必ず1以上の整数となり、双方が0となる場合はない。そのため、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、その配位子がエーテルカルボン酸基となり、親水性が十分なものとなる。これにより、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、ロジウム含有液中に含有させる場合に溶媒として水系溶媒を好適に用いることができる。このように、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、工業性の観点から特に好適な溶媒である水系溶媒を好適に用いることができる。
【0067】
次いで、本発明にかかる一般式(3):
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0068】
このような一般式(3)中のR4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数が1〜3(より好ましくは1〜2、更に好ましくは1)の炭化水素基である。このような炭素数が前記上限を超えると、担持効率が悪くなり、担体の比表面積が小さい場合に活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる。
【0069】
また、上記一般式(3)中のR4及びR5として選択され得る炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のものであってもよい。更に、このような炭化水素基としては、隣接する2原子クラスター間の平均距離をより確実に1.5nm以上とすることができるという観点からは、直鎖状のものがより好ましい。また、このようなR4及びR5の中でも、入手の容易性等の観点から、飽和炭化水素基(特に好ましくは直鎖状のアルキル基)が好ましい。なお、このような式(3)中のR4及びR5として選択され得る炭化水素基の一部の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0070】
このようなR4及びR5としては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合により好適に用いることができることから、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる炭化水素基であることが好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる飽和炭化水素基であることがより好ましく、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有してる直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。このように、上記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合には、工業性の観点から特に好適な溶媒である水系溶媒を好適に用いることができる。
【0071】
また、上記一般式(3)中のXとしては、水との親和性がより向上し、溶媒として水系溶媒を用いた場合に、より好適に用いることができることから、OH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択される少なくとも一つであり、OH基又はNH2基であることがより好ましく、OH基であることが特に好ましい。
【0072】
また、上記一般式(3)中のlは1〜5(より好ましくは1〜4)のうちのいずれかの整数である。これらの整数が前記上限を超えると担体の比表面積が小さい場合に吸着担持が十分に行われず、その結果、活性点が不足し、十分に高度な触媒活性を得ることができなくなる傾向にある。
【0073】
次に、本発明にかかるRh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは上記一般式(5):
【0074】
【化5】
【0075】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体について説明する。
【0076】
このような一般式(5)中のpは1〜3(より好ましくは2〜3)のうちのいずれかの整数である。このような整数pが前記上限を超えると、比表面積の小さな担体に対しては、ロジウムの担持量を十分に確保できなくなるため、大量の担体が必要となる。
【0077】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、その錯体の製造時、保存時、使用時等に用いられる溶媒により溶媒和(例えば前記製造時や使用時等の溶媒が水の場合には水和)されていてもよい。このような溶媒和された錯体としては、例えば、上記一般式(1)で表される錯体を例に挙げると、下記一般式(1−1):
Rh2(R−CO2)4・q(solv) (1−1)
[式(1−1)中、Rは式(1)中のRと同義であり、qは0〜2の数値を示し、solvは溶媒分子(H2O、(CH3)2O、CH3OH等)を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体であってもよく、また、上記一般式(3)で表される錯体を例に挙げると、下記一般式(3−1):
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4・q(solv) (3−1)
[式(3−1)中、R4、R5、X及びlは、それぞれ式(3)中のR4、R5、X及びlと同義であり、qは0〜2の数値を示し、solvは溶媒分子(H2O、(CH3)2O、CH3OH等)を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体であってもよい。
【0078】
なお、本発明にかかる一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いることにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることができる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、このようなカルボン酸ロジウム錯体においては、そのカルボン酸配位子が、例えば、一般式(1)ではカルボン酸配位子中の前記Rが炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種であり、一般式(3)では前記R4及びR5が水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種であり、十分に嵩高いものであることから、カルボン酸ロジウム錯体を担体上に担持させた際には、近接して担持されたカルボン酸ロジウム錯体同士の核と核の間に十分に嵩高い配位子が存在することとなる。そのため、担体に担持されたカルボン酸ロジウム錯体同士の核と核の間の平均距離は、その分子の大きさ(分子の平均半径)に応じて1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)の距離となると推察される。さらに、例えば、前記一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の場合、その配位子中の前記Xが親水基のであることから、カルボン酸ロジウム錯体の周囲には数個の水分子が存在しており、カルボン酸ロジウム錯体分子の大きさ(分子の平均半径)以上の距離となると推察される。このように、前記一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の配位子が親水性を有する場合には水分子の存在により、ロジウムの分散性がより効率よく向上するものと推察される。また、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体においては、カルボキシベンゾクラウンエーテル(式(4)中:Z−CO2で表される基)を配位子としており、かかる配位子が立体的により嵩高い配位子である。そのため、一つの錯体分子中の配位子と配位子との間の空間(隙間)に他の錯体分子の配位子が入り込むことを、より高度な水準で十分に防止できるため、ロジウムの隣接する2原子クラスター間の距離をより広くすることが可能となる。そして、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を担体上に担持させた後に焼成することにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることができるものと推察される。なお、このように、2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることにより、ロジウムは十分に高度に分散された状態となるため、前述のような耐久試験を含むCOパルス測定法を実施して測定されるCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる、第1のロジウムの分散度を効率よく40〜80%とすること及び/又は第2のロジウムの分散度を効率よく20〜50%(より好ましくは20〜48%)とすることも可能となると本発明者らは推察する。
【0079】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体としては、担体の比表面積に応じて、錯体の種類を選択して用いることが好ましい。例えば、担体の比表面積が小さい場合には、一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の中からカルボン酸配位子のサイズがより小さいカルボン酸ロジウム錯体を選択して用いることで、より効率よく、十分な量のロジウムを十分に分散させて担持することが可能となり、活性点の量を十分なものとすることができる。また、担体の比表面積が大きい場合には、一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の中からカルボン酸配位子のサイズがより大きいカルボン酸ロジウム錯体を用いることで、より効率よく、十分な量のロジウムを十分に分散させて担持することが可能となる。より具体的には、0.15質量%のロジウムが担体に担持された自動車排ガス浄化用触媒を製造する場合において、比表面積が70m2/gの担体を用いる場合、分子サイズ(分子の平均半径)が1nmのカルボン酸ロジウム錯体(例えば、一般式(1)中のRが炭素数4の直鎖状のアルキル基の場合など)や、分子サイズ(分子の平均半径)が0.8nmのカルボン酸ロジウム錯体(例えば、一般式(3)中のR4及びR5が水素原子の場合など)を選択して利用することで、その目的とする設計の自動車排ガス浄化用触媒をより効率よく製造することができる。また、比表面積が159m2/gの担体を用いる場合には、分子サイズ(分子の平均半径)が2nmとなるような一般式(1)〜(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体や、分子サイズ(分子の平均半径)が1.6nmとなるような一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を選択して利用することで、その目的とする設計の自動車排ガス浄化用触媒をより効率よく製造することができる。このように、担体のサイズや特性に応じて、カルボン酸ロジウム錯体を適宜選択して用いることで、ロジウムの担持量や分散度等を適宜変更でき、その担体の種類に適したロジウム2原子クラスターの配置が可能となる。
【0080】
また、このような一般式(1)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、水中にエーテルカルボン酸のアルカリ金属得塩(例えばナトリウム塩)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。また、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、水中にグリセリン酸(R体でもS体でも混合物でも良い)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。更に、例えば、一般式(3)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の合成方法としては、例えば、水中にカルボキシベンゾクラウンエーテル化合物(例えば4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル)と、RhCl3・3H2Oとを添加し、得られた混合物を還流することにより合成する方法を採用してもよい。さらに、このようなカルボン酸ロジウム錯体としては市販のものを用いてもよい。
【0081】
また、前記ロジウム含有液の溶媒としては特に制限されず、前記カルボン酸ロジウム錯体を溶解させることが可能な水、有機溶媒等を適宜用いることができる。また、前記ロジウム含有液の溶媒としては、前記一般式(1)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いる場合には、前記ロジウム含有液の溶媒としては、より効率よくロジウムを担持できるという観点からは、トルエン、エーテル、ヘキサン、クロロホルムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、トルエンを用いることが特に好ましい。また、前記ロジウム含有液の溶媒としては、前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用いる場合には、より効率よくロジウムを担持できるという観点からは、少なくとも水を含有する水系溶媒を用いることがより好ましい。また、本発明にかかるカルボン酸ロジウム錯体の中でも、前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体は、親水性がより高い錯体であることから、溶媒として水系溶媒を用いた場合においても、ロジウムをより高い水準で担体に担持することが可能である。また、このような水系溶媒は、工業性の観点から好ましい溶媒である。そのため、本発明においては、前記カルボン酸ロジウム錯体として前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体を用い且つ前記ロジウム含有液の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。
【0082】
また、このような水系溶媒としては、水の含有量が50質量%以上の溶媒(更に好ましくは水の含有量が80質量%以上の溶媒、特に好ましくは水100質量%からなる溶媒)であることが好ましい。更に、前記水系溶媒中における前記水以外の成分としては特に制限されないが、低級アルコール、アセトン、アセトニトリル、DMF(ジメチルホルムアミド)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)などが好ましい。
【0083】
さらに、このようなロジウム含有液中におけるロジウム(金属)の含有比率としては特に制限されないが、金属換算で0.0005〜0.15質量%とすることが好ましく、0.0015〜0.015質量%とすることがより好ましい。このようなロジウムの比率が前記下限未満では、担持溶液の量がかさむだけではなく、担体にカルボン酸ロジウム錯体を効率よく担持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、錯体、担体ともに分散性が低下するため、カルボン酸ロジウム錯体を均一に担持することが困難となる傾向にある。なお、このようなロジウム含有液の調製方法は特に制限されず、前記カルボン酸ロジウム錯体を前記溶媒中に溶解することが可能な方法を適宜採用すればよい。
【0084】
また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法に用いる担体は、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒において説明した担体と同様のものである。
【0085】
前記ロジウム含有液を前記担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する方法としては特に制限されず、前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記ロジウム含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する方法を採用してもよい。
【0086】
また、前記ロジウム含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体の表面に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する場合には、1〜10atmの圧力、前記ロジウム含有液の溶媒の融点以上沸点以下(より好ましくは10〜30℃程度、特に好ましくは室温程度)の温度の条件下で0.5〜24時間程度撹拌することが好ましい。前記担体の表面に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持する際の圧力や温度の条件が前記下限未満では担持効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると余剰な撹拌を続けることにより製造コストが増加する傾向にある。
【0087】
また、本発明においては、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させる(図1及び図2参照)。このような結合を達成させるためには、担体として、表面処理等を行うことにより得られる有機基によって修飾された担体は用いず、実質的に有機基を有さない担体を用いることが好ましい。このように実質的に有機基を有さない担体を用いて、その担体の表面に直接カルボン酸ロジウム錯体を接触させることにより、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させることが可能となる。すなわち、本発明において「前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基(又は酸素原子)に直接結合させる」ことは、実質的に有機基を修飾していない担体(実質的に有機基を有さない担体)を用いて、かかる担体に前記ロジウム含有液を接触せしめることにより容易に達成することができる。このような観点から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法に用いる担体としては、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒において説明した担体と同様のものをそのまま用いることが好ましい。また、このような担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような担体としては、市販の金属酸化物をそのまま用いてもよい。
【0088】
また、前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持した後に焼成する方法としては、200〜600℃(更に好ましくは300〜500℃)の温度条件で1〜5時間程度焼成する方法を採用することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では、配位子を効率よく且つ十分に除去することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体上でカルボン酸配位子を分解する際にロジウム原子が凝集し易くなる傾向にある。
【0089】
このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、ロジウムを原子状態で且つ十分に高度に分散された状態で担体に担持することが可能となり、上記本発明の自動車排ガス浄化用触媒を得ることも可能となる。すなわち、このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)である自動車排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によって、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離を1.0nm以上(より好ましくは1.5nm以上)とすることが可能であるため、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量とロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%である自動車排ガス浄化用触媒、及び/又は、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定されるCO吸着量とロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%である自動車排ガス浄化用触媒を得ることも可能となる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
先ず、ヘキサン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、481173、組成式:[Rh2(C5H11−CO2)4])48.6mgをトルエン1L中に溶解させてロジウム含有液を調製した。次に、前記ロジウム含有液中にγ−アルミナ(住友化学社製の「AKP−G015」、比表面積:159m2/g)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、500℃の温度条件で3時間焼成することにより、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表1に示す。
【0092】
〈球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定〉
実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末の縦12nm、横12nmの領域を、それぞれ走査透過型電子顕微鏡(日本電子製の商品名「JEM−2100F」)により観測した。このような観測により得られたSTEM写真を図7に示す。
【0093】
図7に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図7に示す結果から、実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された(なお、図7中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している)。
【0094】
また、図7に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.0nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、STEM像に基づいて、「隣接する2原子クラスター間の平均距離(各実施例及び比較例においては5個の2原子クラスターから見た場合における、隣接する2原子クラスター間の距離の平均値とする)」は1nm以上となっていることが確認され、その値は2nmであることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスター間の距離」は、担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(ヘキサン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(1.8nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが(図2参照)、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は2nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(ヘキサン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズとほぼ等しいことが確認された。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1)においては、担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズに応じて、隣接する2原子クラスター間の平均距離を制御できることが分かる。
【0095】
〈第1のロジウム分散度の測定〉
〔I〕試料の調製
実施例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末2.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製した。なお、このような試料は、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。
【0096】
〔II〕耐久試験(A)
前記試料を用いて、以下に示す耐久試験を実施した。すなわち、先ず、前記試料に対して、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に50時間供給した。なお、このようなリッチガスとリーンガスは、温度1000℃の条件下、触媒2gあたりに500mL/minで通過するように供給した。
【0097】
〔III〕50℃の温度条件下でのCOパルス測定法によるCO吸着量の測定
前記耐久試験(A)後の試料を、0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料を全自動貴金属分散性測定装置(大倉理研社製の商品名「R6015」)の計量管の内部の中間部にそれぞれ設置した。その後、各全自動貴金属分散性測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とした後、O2(100容量%)のガス雰囲気下、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持した。次に、前記計量管の内部のガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持した。次いで、前記計量管の内部のガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却した。その後、He(100容量%)のガス雰囲気下において、温度を50℃に維持したまま、各排ガス浄化用触媒に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスした。そして、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうちの触媒に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から各試料のCOの吸着量をそれぞれ測定した。そして、各試料のCOの吸着量の平均値を計算することにより、第1のCO吸着量を求めた。
【0098】
〔IV〕第1のRhの分散度の計算
このようにして得られた第1のCO吸着量と、ICP分析により測定されたロジウム(Rh)の担持量とから、下記式:
[第1のRh分散度(%)]=([第1のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して、第1のロジウムの分散度を求めた。このようにして測定された第1のロジウムの分散度は40%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0099】
(実施例2)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、オクタン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、442100、組成式:[Rh2(C7H15−CO2)4])56.8mgを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0100】
このようにして実施例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の80at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」を求めたところ、かかる平均距離は1nm以上であり、その値は2.5nmであることが確認された。このような結果から、隣接する2原子クラスター間の平均距離は担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ(オクタン酸ロジウム二核錯体の分子サイズ:2.3nm)とほぼ等しいことが分かった。ここで、このような実施例2で確認された結果と実施例1で確認された結果とを併せ鑑みると、ロジウムの担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子サイズにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を制御できることが分かる。また、実施例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は50%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0101】
(実施例3)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりにラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体(組成式:Rh2(C10H21−CH(OH)−CH2O−CH2CO2)4)90.6mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにイオン交換水1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0102】
このようにして実施例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の85at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」を求めたところ、かかる平均距離は1nm以上であり、その値は2.8nmであることが確認された。このような結果から、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体(ラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体)を用いることにより、隣接する2原子クラスター間の平均距離を1nm以上とすることができることが分かった。また、実施例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、その分散度は55%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。また、このような結果から、上記一般式(2)で表されるカルボン酸ロジウム錯体(ラウリルグリコール酢酸ロジウム二核錯体)を用いた場合には、水系溶媒を用いた場合においても、十分に高度に分散させた状態で十分な量のロジウムを担持できることが確認された。
【0103】
(比較例1)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])35.1mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0104】
また、このようにして比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の60at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.7nmであることが確認された。このような結果から検討すると、比較例1において担体にロジウムを担持するために用いた酢酸ロジウム二核錯体は、実施例1で用いられている前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体と比較して分子サイズが0.9nmと小さいため、隣接する2原子クラスター間の距離が1nm未満となったものと推察される。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は38%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0105】
(比較例2)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgを用い、更に、トルエン1Lの代わりにイオン交換水1Lを用いた以外は実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表1に示す。
【0106】
このようにして比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるが、クラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の50at%未満(7at%)であった。また、比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例2で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は29%であった。得られた結果を表1及び図8に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
上記Cs−STEM測定の結果や表1及び図5に示す結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜3)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.0nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜3)によれば、第1のロジウムの分散度が40%以上となっている触媒が得られることも分かった。
【0109】
[実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<NO浄化率の評価試験>
先ず、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒をそれぞれ用い、上記第1のロジウムの分散度の測定における「〔I〕試料の調製」に記載の方法及び「〔II〕耐久試験(A)」に記載の方法と同様の方法を採用して、試料を調整した後にその試料に対して耐久試験(A)を施し、その後、ガス管からペレット状の触媒のみを取り出した。
【0110】
次に、このようにして得られた耐久試験後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料を常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、CO(0.6998容量%)、H2(0.23容量%)、NO(0.12容量%)、C3H6(0.16容量%)、O2(0.646容量%)、CO2(10容量%)、H2O(5容量%)及びN2(残部)からなるモデルガスを3500mL/minのガス流量で供給し、触媒入りガス温度が100℃となるように調整し、触媒入りガスのNO濃度を測定した。その後、触媒入りガス温度を15℃/minの昇温速度で500℃まで昇温し、触媒出ガスのNO濃度を測定し、触媒入りガス及び触媒出ガスにおけるそれぞれの測定値の差から、入りガス温度が500℃となった時の自動車排ガス浄化用触媒のNO浄化率を算出した。得られた結果を図9に示す。
【0111】
図9に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜2)よりもNO浄化率が高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0112】
(実施例4)
γ−アルミナの代わりにNd−AZL(Nd−AZLの組成:Nd2O3(2質量%)/AZL(98質量%)、AZLの組成:Al2O3(200モル)/ZrO2(95モル)/La2O3(2.5モル)、比表面積:105m2/g、平均粒子径60μm)10gを用いた以外は実施例1と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0113】
このようにして実施例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の60at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm以上となっていることが確認され、その値は2nmであることが確認された。このような結果から、隣接する2原子クラスター間の距離は、担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ(1.8nm)とほぼ等しいことが分かった。また、実施例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して実施例1と同様にして第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は67%であった。得られた結果を表2に示す。
【0114】
(比較例3)
γ−アルミナの代わりにNd−AZL(実施例4で用いられたNd−AZLと同様のもの)10gを用いた以外は比較例2と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0115】
このようにして比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の7at%であった。また、比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであった。また、比較例3で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。得られた結果を表2に示す。
【0116】
(比較例4)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから182mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0117】
このようにして比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の10at%であった。また、比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.7nmであった。また、比較例4で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は22%であった。結果を表2に示す。
【0118】
(比較例5)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから727mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0119】
このようにして比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の5at%であった。また、比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.4nmであった。また、比較例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。結果を表2に示す。
【0120】
(比較例6)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)の使用量を545.5mgから909mgに変更した以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0121】
このようにして比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるがクラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の3at%であった。また、比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.3nmであった。また、比較例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は27%であった。結果を表2に示す。
【0122】
(比較例7)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])11.7mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0123】
このようにして比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.9nmであることが確認された。また、比較例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は29%であった。結果を表2に示す。
【0124】
(比較例8)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに、酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])46.8mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0125】
このようにして比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の55at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.6nmであることが確認された。また、比較例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は32%であった。結果を表2に示す。
【0126】
(比較例9)
硝酸ロジウム溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgの代わりに酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])58.5mgを用い、イオン交換水1Lの代わりにアセトン1Lを用いた以外は、比較例3と同様にしてNd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表2に示す。
【0127】
このようにして比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に第1のロジウムの分散度を求めたところ、第1のロジウムの分散度は25%であった。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2に示す結果からも明らかなように、ロジウムを担体(Nd−AZL)に担持する際にヘキサン酸ロジウム二核錯体を用いた本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例4)においては、担体上にロジウムが非常に高度な分散度(第1のロジウムの分散度:67%)で担持されていることが確認された。これに対して、ロジウムを担体(Nd−AZL)担持する際に硝酸ロジウム又は酢酸ロジウム二核錯体を用いた場合(比較例3〜9)においては、いずれも第1のロジウムの分散度が40%未満であり、ロジウムの分散性を十分に高度なものとすることができなかった。特に、比較例4及び比較例7においては、Rhの担持量を0.05wt%と低くしているものの、Rhの分散性を向上させることはできなかった。このような結果から、上記一般式(1)に記載のようなカルボン酸ロジウム錯体を利用することで、ロジウムの分散性を効率よく向上させることができ、上記第1のロジウムの分散度が40%以上となる自動車排ガス浄化用触媒を調製できることが分かった。
【0130】
(実施例5)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の使用量を48.6mgから1620mgに変更し、ロジウムの理論担持量が自動車排ガス浄化用触媒中において5.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表3に示す。
【0131】
このようにして実施例5で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0132】
(実施例6)
前記オクタン酸ロジウム二核錯体の使用量を56.8mgから1893mgに変更し、ロジウムの理論担持量が自動車排ガス浄化用触媒中において5.0質量%となるようにした以外は、実施例2と同様にして、γ−アルミナにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表3に示す。
【0133】
このようにして実施例6で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0134】
【表3】
【0135】
表3に示す結果からも明らかなように、前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体を用いた場合(実施例5)には、γ−アルミナ(比表面積:159m2/g)にRhが2.11質量%担持され、他方、前記オクタン酸ロジウム二核錯体を用いた場合(実施例6)には、γ−アルミナにRhが1.67質量%担持されていることが確認された。また、選択率は、それぞれ42%(実施例5)、33%(実施例6)であった。カルボン酸配位子中の炭化水素基がヘキシル基(実施例5)とオクチル基(実施例6)における炭化水素基の炭素数の違いにより、ロジウムの担持量が変化する点について検討すると、先ず、担体にカルボン酸ロジウム錯体を担持する際に、図3に示すようにして担体の表面が錯体により担持されて覆われるものと推察される。そして、このようにして錯体が担持されると、各錯体の核に存在するロジウム同士は、配位子の存在により離間した状態で担持されることが分かる。このようにして担体上に錯体が担持されるため、カルボン酸配位子中の炭化水素基がオクチル基(実施例6)である場合には、カルボン酸配位子中の炭化水素基がヘキシル基(実施例5)である場合と比べて炭素数が長い分だけ、担持密度が下がったものと推察される。
【0136】
また、上述のような実施例1〜4の結果から、隣接するロジウムの2原子クラスター間の距離並びに第1のロジウムの分散度と、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)とに相関があることが分かる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜4)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法を採用することによって得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が1nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例1〜4で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含む50℃の温度条件のCOパルス測定法を実施することにより求められる第1のロジウムの分散度がいずれも40%以上となっており、耐久試験後においてもロジウムが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【0137】
(実施例7)
先ず、塩化ロジウム(III)三水和物(和光純薬工業株式会社、181−00841、組成式:RhCl3・3H2O)40.3mgをイオン交換水100mL中に溶解させて、そこへDL−グリセリン酸(東京化成工業株式会社、D0602、40%水溶液、ca.5.2mol/l)を加えて、Air雰囲気下、オイルバスの温度を110℃〜120℃に保ちながら、1時間還流をすることで、図10に示すカルボン酸ロジウム錯体:Rh2(HO−CH2−CH(OH)−COO)4を含有するロジウム含有液を調製した。室温に冷却した後、イオン交換水を900mLを加え、全体で1Lのロジウム含有液を調製した。次に、前記ロジウム含有液中にAZL担体(組成:Al2O3(200モル)/ZrO2(95モル)/La2O3(2.5モル)、比表面積:110m2/g)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、AZL担体にロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表4に示す。
【0138】
なお、前記AZL担体を加える前のカルボン酸ロジウム(グリセリン酸ロジウム)含有液について、エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(ESI−MS、Micro Mass社製)を使用して質量分析を行った。得られた結果を図11に示す。図11からも明らかなように、前記ロジウム含有液中においてはロジウム二核錯体として存在していることが確認された。
【0139】
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図12に示す。
【0140】
図12に示す結果からも明らかなように、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図12に示す結果から、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の50at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図12中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0141】
また、図12に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、STEM像に基づいて、隣接する2原子クラスター間の平均距離(各実施例及び比較例においては5個の2原子クラスターから見た場合における、隣接する2原子クラスター間の距離の平均値とする)は1.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスター間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(1.6nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが(図5参照)、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は2nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の分子サイズよりも大きいことが確認された。これは、用いたカルボン酸ロジウム錯体(グリセリン酸ロジウム二核錯体)の周りに水分子が水和しているためと考えられる。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ以上に制御できることが分かる。
【0142】
<第2のロジウム分散度の測定>
〔i〕試料の調製
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の粉末10.0gを用い、その粉末を冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm2)により1分間成形した後、直径0.5〜1mmのペレット状に粉砕した試料を調製した。なお、このような試料は、内径1.1cm、長さ100cmの試験用のガス管のガス流の上流から下流側に向かって長さ54.5cmの領域(中間部)に設置した。
【0143】
〔ii〕耐久試験(B)
前記試料を用いて、以下に示す耐久試験を実施した。すなわち、先ず、前記試料に対して、H2(2容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスと、O2(1容量%)、CO2(10容量%)、H2O(3容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスとを5分ずつ交互に50時間供給した。なお、このようなリッチガスとリーンガスは、温度1000℃の条件下、触媒5gあたりに500mL/minで通過するように供給した。
【0144】
〔iii〕−78℃の温度条件下での低温COパルス測定法によるCO吸着量の測定
前記耐久試験(B)後の試料を、0.03g、0.04g、0.05gと3水準測り取り、各試料をCOパルス吸着量測定装置(大倉理研社製)の計量管の内部の中間部にそれぞれ設置した。その後、各COパルス吸着量測定装置の計量管の内部をO2(100容量%)のガス雰囲気とした後、O2(100容量%)のガス雰囲気下、400℃まで40分で昇温した後、15分間保持した。次に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で40分間保持した。次いで、ガス雰囲気をH2(100容量%)のガス雰囲気に変更した後、400℃で15分間保持し、その後、更に、ガス雰囲気をHe(100容量%)のガス雰囲気に変更して400℃で15分間保持し、He(100容量%)のガス雰囲気を保ったまま、50℃まで自然冷却した(前処理)。このような前処理を施した後、Heガスを30ml/分の流量で流通させながら、ドライアイス/エタノール冷媒を用いて反応管を−78℃まで冷却した。温度が一定となった後、He(100容量%)のガス雰囲気下において、各排ガス浄化用触媒に対して、1.0μmol/pulseのCOを吸着が飽和するまでパルスした。そして、熱伝導検出器を用いて、パルスしたCOのうちの触媒に吸着されなかったCOの量を検出し、パルス回数と吸着が飽和した時のTCD面積から各試料のCOの吸着量を測定した。そして、各試料のCOの吸着量の平均値を計算することにより、第2のCO吸着量を求めた。
【0145】
〔iv〕第2のRhの分散度の計算
このようにして得られたCO吸着量と、ICP分析により測定されたロジウム(Rh)の担持量とから、下記式:
[第2のRh分散度(%)]=([第2のCO吸着量(mol)]/[Rh担持量(mol)])×100
を計算して、第2のロジウムの分散度を求めた。このようにして測定された第2のRhの分散度は21.8%であった。得られた結果を表4及び図13に示す。
【0146】
(比較例10)
前記ヘキサン酸ロジウム二核錯体の代わりに、Rh(NO3)3水溶液(Rh金属2.75wt%含有)545.5mgを用い、更に、イオン交換水1Lを用いた以外は実施例7と同様にして、AZL担体にロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表4に示す。
【0147】
このようにして比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、ロジウム原子は単原子状に分散しているものもあるが、クラスターとして担持されているものもあることが確認され、また、これらのクラスターの原子数は定まっておらず、例えば数十個のロジウム原子からなるクラスターも存在することが確認された。更に、2原子クラスターとして担持されているロジウムは全ロジウム原子の50at%未満(7at%)であった。また、比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満であることが確認され、その値は0.5nmであることが確認された。また、比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は18.6%であった。得られた結果を表4及び図13に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
上記Cs−STEM測定の結果、表4及び図13に示す結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.5nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、第2のロジウムの分散度が20%以上となっている触媒が得られることも分かった。
【0150】
[実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<CO、NO、C3H6浄化率の評価試験(I)>
先ず、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒をそれぞれ用い、上記第2のロジウムの分散度の測定における「〔i〕試料の調製」に記載の方法及び「〔ii〕耐久試験(B)」に記載の方法と同様の方法を採用して、試料を調整した後にその試料に対して耐久試験(B)を施し、その後、ガス管からペレット状の触媒のみを取り出した。
【0151】
次に、このようにして得られた耐久試験後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料を常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、CO(0.6998容量%)、H2(0.23容量%)、NO(0.12容量%)、C3H6(0.16容量%)、O2(0.646容量%)、CO2(10容量%)、H2O(5容量%)及びN2(残部)からなるモデルガスを3500mL/minのガス流量で供給し、触媒入りガス温度が100℃となるように調整し、触媒入りガスのCO、NO、C3H6濃度を測定した。その後、触媒入りガス温度を15℃/minの昇温速度で400℃まで昇温し、触媒出ガスのCO、NO、C3H6濃度を測定し、触媒入りガス及び触媒出ガスにおけるそれぞれの測定値の差から、自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を算出した。得られた結果のうち、NO浄化率曲線について図14に示す。
【0152】
図14に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例7)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例10)よりもNO浄化率が高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例7)においてはCO、C3H6浄化率についても同様に高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0153】
また、CO、NO、C3H6浄化率曲線から、それぞれの50%転化温度(T50)を算出した。得られた結果を図15に示す。
【0154】
<NO、C3H6浄化率の評価試験(II)>
上記耐久試験(B)後の試料(ペレット状の触媒)を用いて、実施例7及び比較例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒のRich雰囲気下でのNOとC3H6の浄化率を650℃、550℃、450℃において評価した。すなわち、先ず、耐久試験後の試料としてペレット触媒0.5gを常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器社製の商品名「CATA−5000−4」)に設置した。次に、供給するガスとしては、NO(0.15容量%)、CO(0.65容量%)、C3H6(0容量%C)、O2(0.8容量%)、CO2(10容量%)、H2O(4容量%)及びN2(残部)からなるリーンガスと、NO(0.15容量%)、CO(0.65容量%)、C3H6(0.3容量%C)、O2(0容量%)、CO2(10容量%)、H2O(4容量%)及びN2(残部)からなるリッチガスとを使用し、ガス流量は7L/分とした。そして、前記リーンガスと前記リッチガスとを10分交互に切り替えながら、触媒に対する入りガス温度が100℃で前処理した後、入りガス温度を650℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。さらに、入りガス温度を550℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。さらに、入りガス温度を450℃に保持しつつ、リッチガスに切り替えた後、定常状態になった時の触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNOX濃度及びC3H6濃度を測定し、それらの測定値からNOX浄化率及びC3H6浄化率を算出した。得られた結果を図16及び図17に示す。
【0155】
上述の実施例及び比較例の結果から、本発明の排ガス浄化用触媒においては、隣接するロジウムの2原子クラスター間の距離並びに第2のロジウムの分散度と、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)と、配位子が親水性基であるために水分子が水和して2原子クラスター間の距離が配位子の長さ以上に開いたこととのために、比較例10で得られた触媒に対して優位差が出たと考えられる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例7)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法(実施例7)を採用することによって得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含むCOパルス測定法を実施することにより求められる第2のロジウムの分散度が20%以上となっており、耐久試験後においてもロジウムが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【0156】
(実施例8)
先ず、以下のようにして図18に示す構造を有するカルボン酸ロジウム錯体の合成を行った。すなわち、先ず、塩化ロジウム(III)三水和物(和光純薬工業株式会社、181−00841、組成式:RhCl3・3H2O)をイオン交換水とエタノールの混合溶媒に溶解させて、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル(東京化成工業株式会社、C1713、図19に示す構造を有する化合物)を加えて、Air雰囲気下、オイルバスの温度を110℃〜120℃に保ちながら、1時間還流をすることで、カルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)を含有する錯体溶液を得た。なお、このようにして得られた錯体溶液に関して、カルボン酸ロジウム錯体の存在を確認するためにエレクトロスプレーイオン化質量分析装置(ESI−MS、Micro Mass社製)を使用して質量分析を行った。得られた結果(ESI−MSスペクトル)を図20〜24に示す。図20〜24に示すESI−MSスペクトルからも明らかなように、前記錯体溶液中においては錯体がロジウムの二核錯体として存在していることが確認された。なお、図20〜24に示すESI−MSスペクトルにおいては、Naイオンでイオン化させることで検出されるRh2(C15H19O7)4をM1とした時に、[M1+3Na]3+、[M1+2Na]2+、[2M1+3Na]3+、[2M1+2Na]2+、[M1+Na]+のパターンでスペクトルが検出されており、不純物がわずかに存在することも同時に確認された。
【0157】
次いで、前述のようにして得られた錯体溶液を室温(25℃)まで冷却した後に濃縮し、アセトニトリルを用いて再結晶して、目的物である図18に示すカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の結晶性粉末を得た。このように、本実施例においては、前記不純物を取り除くためにアセトニトリルを用いて再結晶化して精製し、目的物であるカルボン酸ロジウム錯体を単結晶として得た。なお、このようにして得られたカルボン酸ロジウム錯体の結晶性粉末に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析の結果(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体の分子構造を示す図面[ORTEP図:原子の熱振動を楕円形で示した図])を、図25に示す。図25に示す結果から、得られた粉末においてロジウムの二核構造が確認され、ロジウムのaxial位に2分子のアセトニトリルが配位している(2分子のアセトニトリルのN原子がRhに配位結合している)ことが確認された。また、図25に示す結果から、結晶溶媒としてアセトニトリルが2分子存在してることも確認された。
【0158】
次に、前述のようにして得られた図18に示すカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)71mgをクロロホルム1.0Lに溶解させてロジウム含有液を調製した。その後、前記ロジウム含有液中にNd−AZL(実施例4で用いたNd−AZLと同様のもの)10gを添加して混合液を得た。次いで、得られた混合液を30℃の温度条件で12時間撹拌した後、前記混合液中からろ過により粉体を取り出した。その後、前記粉体を大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、Nd−AZLにロジウムが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるRh担持量をICP分析(高周波誘導結合プラズマ分析:分析装置としてリガク社製の商品名「ICP分析装置 形式 CIROS−120」を使用、測定波長:343.489nm)し、その値を表5に示す。
【0159】
実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図26示す。
【0160】
図26に示す結果からも明らかなように、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図26に示す結果から、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の73at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図26中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0161】
また、図26からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例8)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例8)においては、STEM像に基づいて、隣接する2原子クラスタ間の平均距離(各実施例及び比較例において5個の2原子クラスタから見た場合における、隣接する2原子クラスタ間の距離の平均値とする)は2.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスタ間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の分子サイズ(2.6nm)とほぼ等しいものとなることが予測されるが、実際の「隣接する2原子クラスター間の平均距離」の値は3.7nmであり、用いたカルボン酸ロジウム錯体(4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体)の分子サイズよりも大きいことが確認された。これは、剛直な4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテルを配位子に用いることにより、ロジウム二核錯体間の距離を確実に確保できることを示唆している。なお、配位子がアルキル鎖1本の場合においてはロジウム二核錯体の半径内に別のロジウム二核錯体が入ってきてしまい、二核錯体間の距離を分子サイズ分必ずしも確保できない場合も生じ得る。従って、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズ以上に制御できることが分かる。なお、前記一般式(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体の構造からも明らかなように、配位子中において、カルボキシル基(−CO2)とベンゼン環(一般式(5)で表される有機基中のベンゼン環)とが単結合で結合しているため自由に回転でき、カルボン酸ロジウム錯体が担体に担持された際に、ベンゼン環とクラウンエーテル部位が担体と平行になることが可能となる。
【0162】
また、実施例8で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は48%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0163】
(実施例9)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにオクタン酸ロジウム二核錯体(Aldrich、442100、組成式:[Rh2(C7H15−CO2)4])37.8mgを用い且つクロロホルムの代わりにトルエン1.0Lを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持されたが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0164】
このようにして実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の68at%が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1nm以上となっていることが確認された。
【0165】
また、実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は42%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0166】
(実施例10)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにミリスチン酸ロジウム二核錯体(組成式:[Rh2(C13H27−CO2)4])57mgを用い、クロロホルムの代わりにトルエン1.0mLを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持されたが担持された自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるロジウム担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0167】
また、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行った。このような測定により得られたSTEM写真を図27示す。
【0168】
図27に示す結果からも明らかなように、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、担体上に複数のロジウム原子からなる2原子クラスターが分散されて担持されていることが確認された。また、図27に示す結果から、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒の担体に担持されたロジウムは、全ロジウム原子の70at%が2原子クラスターとして担持されていることが確認された。なお、図27中、白い丸で囲った領域には2原子クラスターとしてロジウムが存在している。
【0169】
また、図27からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例10)においては、STEM像から測定される隣接する2原子クラスター間の距離は、いずれも1.5nm以上であった。また、本発明の自動車排ガス浄化用触媒(実施例10)においては、Cs−STEMによる測定から、隣接する2原子クラスター間の平均距離が3.5nm以上となっていることが確認された。なお、STEM像から測定される「隣接する2原子クラスタ間の距離」は担体にロジウムを担持するために用いたカルボン酸ロジウム錯体(ミリスチン酸ロジウム二核錯体))の分子サイズ(3.6nm)とほぼ等しいことが確認された。これは、用いたカルボン酸ロジウム錯体(ミリスチン酸ロジウム二核錯体)の周りにトルエンが溶媒和しているためだと考えられる。このような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例10)においては、隣接する2原子クラスター間の平均距離を担持の際に用いるカルボン酸ロジウム錯体の分子のサイズに応じて制御できることが分かる。
【0170】
また、実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、第2のロジウムの分散度は45%であった。得られた結果を表5に示す。
【0171】
さらに、実施例8と実施例10で得られた自動車排ガス浄化用触媒に関して、球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)により、隣接する2原子クラスター間の距離の分布をそれぞれ測定した。なお、このような測定は、実施例8で得られた触媒の任意の縦12nm、横12nmの領域と、実施例10で得られた触媒の任意の縦15nm、横15nmの領域に対してそれぞれ行った。得られた結果を図28に示す。図28に示す結果からも明らかなように、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、分散性をより高度なものとすることができるとともに、分散の均一性もより高度なものとすることができることが分かった。
【0172】
(比較例11)
図18に示すカルボン酸ロジウム錯体の代わりにの代わりに酢酸ロジウム二核錯体(Wako、186−01153、組成式:[Rh2(CH3−CO2)4])32.0mgを用い且つクロロホルムの代わりにアセトン1.0Lを用いてロジウム含有液を調製した以外は、実施例8と同様にして、Nd−AZLにロジウムが担持された比較のための自動車排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた自動車排ガス浄化用触媒におけるRh担持量をICP分析し、その値を表5に示す。
【0173】
また、このようにして比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例1と同様に球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定を行ったところ、全ロジウム原子の62at%が2原子クラスターとして担持されていた。また、比較例1で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、得られたSTEM像から「隣接する2原子クラスター間の平均距離」は1nm未満となっていることが確認され、その値は0.8nmであることが確認された。このような結果から検討すると、比較例11において担体にロジウムを担持するために用いた酢酸ロジウム二核錯体は分子サイズが0.9nmと小さいため、隣接する2原子クラスター間の距離が1nm未満となったものと推察される。また、比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒に対して、実施例7と同様に第2のロジウムの分散度を求めたところ、ロジウムの分散度は41%であった。得られた結果を表5及び図29に示す。
【0174】
【表5】
【0175】
上記Cs−STEM測定の結果や表5及び図29に示す結果からも明らかなように、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8〜10)によれば、担体に担持された全ロジウム原子の50at%以上が2原子クラスターとして担持され、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が1.0nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、特に4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、担体に担持された全Rh原子の73at%以上が2原子クラスターとして担持されており、「隣接する2原子クラスター間の平均距離」が2.5nm以上となっている触媒が得られることが分かった。また、特に、実施例8で採用している本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、第2のロジウムの分散度が48%以上となるような、非常に高度な分散度を有する触媒が得られることも分かった。このような結果から、4’−カルボキシベンゾ−15クラウン−エーテル酸ロジウム二核錯体のような立体的に嵩高い配位子を有するカルボン酸ロジウム錯体を用いた場合(実施例8)には、分散性をより高度なものとすることができるとともに、分散の均一性もより高度なものとすることができることが分かった。
【0176】
[実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能の評価]
<CO、NO、C3H6浄化率の評価試験>
実施例7で得られた自動車排ガス浄化用触媒の性能を評価する際に採用したCO、NO、C3H6浄化率の評価試験(I)と同様の方法を採用して、実施例8〜9及び比較例11で得られた自動車排ガス浄化用触媒のCO、NO、C3H6浄化率を評価した。このようにして得られた結果に基づいて求められたNOの50%転化温度(NOが入りガス濃度に対して50%転化される温度(T50))のグラフを図30に示す。
【0177】
図30に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例8及び実施例9)においては、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例11)よりもNO浄化率が十分に高く、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例8及び実施例9)は、CO及びC3H6浄化率においても、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例11)よりも高度な浄化率を示し、十分に高度な触媒活性を有していることが確認された。
【0178】
また、上述のような結果から、実施例8及び9で得られた排ガス浄化用触媒は、隣接するRhの2原子クラスター間の距離が十分なものとなっていることと、Rhの分散度が十分に高度なものとなっていることと、錯体中のカルボン酸配位子の炭化水素基の大きさ(カルボン酸ロジウム錯体の分子サイズ)が十分に大きなものであることと、その配位子が剛直であるために一つのロジウム二核錯体の配位子が他のロジウム二核錯体の配位子と配位子の隙間に入り込む事でロジウム2原子クラスター間の距離が短くなってしまうような現象を十分に防止できたこととのために、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒に対して優位差が出たと考えられる。そして、上述のような結果から、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例8及び実施例9)によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持された触媒を効率よく確実に製造することが可能であることが確認された。また、このような方法(実施例8及び実施例9)により得ることが可能な本発明の自動車排ガス浄化用触媒においては、ロジウムの50at%以上が2原子クラスターとして担持されており且つその2原子クラスター間の平均距離が2nm以上となっていることから、十分に高度な触媒活性を有する触媒となることが分かった。また、実施例8及び実施例9で得られた自動車排ガス浄化用触媒においては、上述のような耐久試験を含む低温COパルス測定法を実施することにより求められる第2のRhの分散度がいずれも20%以上となっており、耐久試験後においてもRhが十分に高度な分散状態を維持できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
以上説明したように、本発明によれば、原子状態のロジウムが十分に高度に分散された状態で担持され、十分に高度な触媒活性を有する自動車排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な自動車排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。このような本発明の自動車排ガス浄化用触媒は、自動車から排出される排ガスを浄化するために用いる三元触媒等として利用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記ロジウムは、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【化1】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【化2】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより自動車排ガス浄化用触媒を得ること、を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記カルボン酸ロジウム錯体が前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種であり且つ前記ロジウム含有液の溶媒が水系溶媒であることを特徴とする請求項6に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項6又は7に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上である自動車排ガス浄化用触媒であることを特徴とする請求項8に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項10】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項8又は9に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項11】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項8又は9に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項1】
担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、
前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、
前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上であること、
を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記ロジウムは、下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【化1】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を用いて前記担体に原子状態で担持されたものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の自動車排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
下記一般式(1)〜(4):
Rh2(R−CO2)4 (1)
[式(1)中、Rは炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
Rh2(R1−(O)n−(R2O)m−R3−CO2)4 (2)
[式(2)中、R1は側鎖に水酸基を有していてもよい炭素数4〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、nは0〜1のうちのいずれかの整数を示し、mは0〜6のうちのいずれかの整数を示し、nとmの和は1以上という条件を満たす。]
Rh2(R4−(C(R5)(X))l−CO2)4 (3)
[式(3)中、R4、R5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、XはOH基、NH2基及びNO2基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは1〜5のうちのいずれかの整数を示す。]
Rh2(Z−CO2)4 (4)
[式(4)中、Zは下記一般式(5):
【化2】
(式(5)中、pは1〜3のうちのいずれかの整数を示す。)
で表されるベンゾクラウンエーテル基を示す。]
で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種を含有するロジウム含有液を担体に接触せしめ、前記カルボン酸ロジウム錯体の不飽和配位サイトを前記担体上の水酸基及び/又は酸素原子に直接結合させて前記担体に前記カルボン酸ロジウム錯体を担持し、焼成することにより自動車排ガス浄化用触媒を得ること、を特徴とする自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記カルボン酸ロジウム錯体が前記一般式(2)〜(4)で表されるカルボン酸ロジウム錯体のうちの少なくとも1種であり且つ前記ロジウム含有液の溶媒が水系溶媒であることを特徴とする請求項6に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、担体と、前記担体に原子状態で担持されたロジウムとを備え、前記ロジウムの担持量が前記担体と前記ロジウムとの総量に対して0.05〜0.30質量%であり、前記ロジウムの50at%以上がロジウムの2原子クラスターとして前記担体に担持されており、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.0nm以上である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項6又は7に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、隣接する前記2原子クラスター間の平均距離が1.5nm以上である自動車排ガス浄化用触媒であることを特徴とする請求項8に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項10】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、50℃の温度条件のCOパルス測定法で測定される第1のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第1のロジウムの分散度が40〜80%である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項8又は9に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項11】
前記自動車排ガス浄化用触媒が、−78℃の温度条件の低温COパルス測定法で測定される第2のCO吸着量と前記ロジウムの担持量とに基づいて求められる第2のロジウムの分散度が20〜50%である自動車排ガス浄化用触媒であること、を特徴とする請求項8又は9に記載の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図10】
【図11】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図6】
【図10】
【図11】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−83765(P2011−83765A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145257(P2010−145257)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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