説明

自動車用の車体補強部材取り付け装置

【課題】ストラットバーを簡単な構成で、工具を使用することなく手操作で車両ボディーに対して脱着できる自動車用の車体補強部材取り付け装置を提供する。
【解決手段】車体に固定された支持ステー11の一対の係合フック部13をストラットバー10の端部に設けたカムレバー構造の取り付け装置により着脱可能に挟持固定する構成とし、締付レバー24を傾倒すると締付ロッド20に引張応力が作用し、連結筒16の両端部に形成された挟持部14に係合している係合フック部13を挟持固定し、締付レバー24を傾倒位置から約90度回動すると、締付ロッド20が元の長さに戻り、引張応力が無くなって挟持部14の挟持力が解除されて係合フック部13から取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディーの車幅方向に差し渡したストラットバーと称される車体補強部材を自動車ボディーに取り外し可能に取付ける自動車用の車体補強部材取付装置に係り、特に自動車のトランクルーム内に設置したストラットバーを工具を使用せずに手操作だけで取り外しできる自動車用の車体補強部材取り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体剛性の向上を図るために、左右のサスペンション装置の上部間にストラットバーを差し渡した構成(この場合はストラットタワーバーとも称される)が知られている。このようなストラットタワーバーを自動車の荷物室空間内に設置した場合、荷物室空間内に荷物を乗せる際にストラットタワーバーが邪魔になることから、ストラットタワーバーを容易に取り外す構成が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のストラットタワーバーは、後部座席の背面部に配置されていることから、ストラットタワーバーの取り付け解除により後部座席の傾倒動作を可能とし、後部座席の傾倒動作に伴ってストラットタワーバーも一緒に移動することで、荷物室内でストラットタワーバーが邪魔にならないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-187011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のストラットタワーバーは、複雑な着脱機構によりストラットタワーバーを車両ボディーから取り外す構成としているため、着脱機構の一部に不具合が発生するとストラットタワーバーを簡単に取り外すことができなくなるという問題がある。
【0006】
また、ストラットタワーバー等のストラットバーを単独で設置する場合には、車両のボディーに直接あるいはサスペンション装置のアッパーボルトに取り付け部材をなすステーを固定し、このステーにストラットバーの端部をボルトにより連結して固定する方法が一般的に用いられている。
【0007】
しかし、このような方法ではストラットバーの取り外しにはレンチを必要とし、簡単にストラットバーを取り外すことができなかった。
【0008】
本発明は、ストラットバーを簡単な構成で、工具を使用することなく手操作で車両ボディーに対して脱着できる自動車用の車体補強部材取り付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を実現する自動車用の車体補強部材取り付け装置の構成は、自動車の車体幅方向に差し渡された車体補強部材の端部を、車体側に固定された支持体の車体前後方向に対向配置した一対の係合フック部に着脱可能に取り付ける自動車用の車体補強部材取り付け装置であって、前記車体補強部材の端部に固定され、車体の前後方向に沿って延びる中空の連結筒と、前記連結筒内を貫通する締付ロッドと、前記連結筒の両端部で前記一対の係合フック部がそれぞれ係合すると共に、前記締付ロッドの軸方向において前記フック部を挟持する挟持部と、前記締付ロッドの一端部に傾倒可能に取り付けられた偏心カム部を備えた締付レバーと、を有し、前記締付ロッドは、前記締付レバーの傾倒動作により前記偏心カム部のカム動作により伸び方向に軸力が付与されて前記挟持部に挟持力を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、締付レバーを手操作で傾倒することにより、支持体との着脱か可能となり、スパナ等の工具を用いることなくストラットバー(ストラットタワーバー)等の車体補強部材を例えば車両の荷物室から簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による自動車用の車体補強部材取り付け装置の実施形態を示し、車両の荷物室内にストラットバーを設置した上面図。
【図2】図1に示すストラットバー取り付け装置を示し、(a)は上面図で、固定状態を示し、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は締付レバーを取り外し位置に回動した状態を示す。
【図3】図2のB−B矢視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1〜図3に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1は車両の荷物室内にストラットバーを設置した上面図、図2は図1に示すストラットバー取り付け装置を示し、(a)は上面図で、固定状態を示し、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は締付レバーを取り外し位置に回動した状態を示す。図3は図2のB−B矢視図を示す。
【0014】
図1において、自動車1の後部座席2の後方に設けられた荷物室3内に扁平状のストラットバー10を設置している。ストラットバー10は、左右のリアサスペンション4の上部が収容されるハウジング5の外周壁(荷物室3内側)にストラットバー10の端部をそれぞれ支持させるために、支持体である支持ステー11をボルト(不図示)により固定している。
【0015】
支持ステー11は、ストラットバー取り付け装置12によりストラットバー10に取り付けられる。ストラットバー取り付け装置12は、支持ステー11の車両の前後方向に沿って対向する一対の係合フック部13を、開いた状態の挟持部14に係合して締付レバー15を傾倒することで、挟持部14の隙間を狭くして係合フック部13を挟持する。
【0016】
ストラットバー取り付け装置12は、ストラットバー10の端部に固定された、ストラットバー10の幅方向に沿って延びる中空円筒状の連結筒16と、連結筒16の一端側に装入された第1係合体17と、連結筒16の他端側に装入された第2係合体18と、第1係合体17の外側に配置された加圧パッド19と、加圧パッド19,第2係合体18,第2係合体18および連結筒16を貫通する締付ロッド20と、第2係合体18貫通した締付ロッド20の他端部に形成された調整ねじ部20aに螺合する調整ナット21とを有し、締付ロッド20の一端部に締付レバー15が回転自在に取り付けられている。加圧パッド19の締付ロッド挿通孔19aを締付ロッド20が貫通する。
【0017】
連結筒16の全長に一対の係合フック部13の対向幅を一致させている。第2係合体18は、連結筒16に差し込まれる第1筒部17aの外端に第1フランジ部17bが一体的に形成され、中央の軸孔17cに締付ロッド20が抜き差し可能に挿通される。第1筒部17aを連結筒16に差し込んだ状態において、第1フランジ部17bと連結筒16の一端との間に係合フック部13が係合できる余裕を持って第1筒部17aが連結筒16に差し込まれており、第1フランジ部17bと連結筒16の一端との間に挟持部14が形成されている。そして、係合フック部13が一方の挟持部14に差し込まれて第1筒部17aに係合する。
【0018】
第2係合体18は、第1係合体17と同一構造に形成されていて、第2筒部18aの外端に第2フランジ部18bが一体的に形成され、第2フランジ部18bと連結筒16の他端との間に形成された隙間である挟持部14に他方の係合フック部13が他方の挟持部14に差し込まれて第2筒部18aに係合する。
【0019】
支持ステー11の係合フック部13は、第1筒部17a(第2筒部18a)が嵌まり込む上方に開口した係合凹部13aを有し、ストラットバー10を上方から係合フック部13に係合できるようにしている。また、ストラットバー10を取り外す際に、ストラットバー取り付け装置12を緩めてもストラットバー10が落下することがないようにしている。
【0020】
締付ロッド20の先端部は第2係合体18の中央の軸孔18cを貫通し、調整ねじ部20aが調整ナット21に螺合する。
【0021】
一方、締付ロッド20の一端部には、加圧パッド19よりも外端側にピン孔20bが形成され、このピン孔20bを貫通する連結ピン22を介して締付レバー15と締付ロッド20とを連結している。
【0022】
締付レバー15は、基端部をなす偏心カム部23と、偏心カム部23から延びるレバー部24とにより構成している。偏心カム部23は半径Rの円弧面に形成され、連結ピン22が打ち込まれる偏心カム部23のピン打ち込み孔23aは、前記半径Rの中心に対してずれた位置に形成されている。すなわち、真円の外径を有する偏心カム部23の円中心Oに対して偏心カム部23の回転中心Cがずれているため、偏心カム部23は偏心カムを構成する。
【0023】
偏心カム部23は図2(b)に示すように、締付ロッド20の一端部を挟むようにして差し込まれる凹部23bが形成され、凹部23bの両側の側壁部23cにピン打ち込み孔23aがそれぞれ形成されている。連結ピン22は、ピン打ち込み孔23aには固定されるが締付ロッド20のピン孔20bには回転自在に貫通している。したがって、締付レバー15は、連結ピン22により締付ロッド20のピン孔20bを支点として回動可能となっている。
【0024】
図2(a)に示すように、レバー部24が締付ロッド20と直交した位置(締付位置とする)に傾倒した状態において、締付ロッド20の軸中心L上に回転中心Cと円中心Oが存在し、その際、円中心Oが回転中心Cよりも加圧パッド19側に位置しているので、軸中心L上におけるカム軌跡は回転中心Cから最も離れた位置(最大カムリフト位置)に存在する。
【0025】
逆に、図2(a)において、レバー部24が締付ロッド20の軸心と平行な位置の状態において、円中心Cが軸中心Lと直交する軸線上に存在しているので、軸中心L上におけるカム軌跡は前記最大カムリフト位置よりも回転中心C側に位置(最小カムリフト位置)する。なお、最小カムリフト位置と最大カムリフト位置との差を締付代dとする。
【0026】
第1係合体17と第2係合体18の対向端面間には、スプリング25が第1筒部17aと第2筒部18aとの対向端面に当接して配置され、スプリング25のばね力で第1係合体17と第2係合体18とを締付ロッド20の軸方向に沿って互いに離れる方向に付勢する。したがって、第1係合体17の第1フランジ部17bは加圧パッド19に、また第2係合体18の第2フランジ部18bは調整ナット21の座面に押し付けられた状態に保持され、第1係合体17および第2係合体18を締付ロッド20の軸方向位置を所定位置に位置決めしている。このため、連結筒16の両端面と、第1係合体17の第1フランジ17bの内端面、および第2係合体18の第2フランジ18bの内端面との間に、それぞれ挟持部14を形成する隙間が形成され、係合フック部13の係合を容易に行えるようにしている。なお、スプリング25のばね力は微弱としているので、レバーの締め付けに影響することはない。
【0027】
支持ステー11にストラットバー10を取り付ける際には、レバー部24を最小カムリフト位置に戻しておき、挟持部14に係合フック部13が十分に係合できるだけの隙間を設けておく。この脱着位置では、図2(c)に示すように、レバー部24が直立した姿勢にあり、左右の支持ステー11の係合フック部13にストラットバー取り付け装置12の挟持部14を差し込み、前後方向の係合フック部13に第1筒部17aと第2筒部14bをそれぞれ係合させる。
【0028】
レバー部24を軸中心Lの回りに回してレバー部24の傾倒方向を決定し、レバー部24を手により傾倒させると、偏心カム部23のカム面が加圧パッド19を徐々に押し、挟持部14の隙間を狭くし、一方の係合フック部13を第1係合体17の第1フランジ部17bと連結筒16の一端との間で挟持固定し、同時に他方の係合フック部13を第2係合体18の第2フランジ部18bと連結筒16の他端との間で挟持固定する。これにより、ストラットバー10は、左右の支持ステー11に左右方向および上下方向に固定される。
【0029】
すなわち、締付レバー15を傾倒させて偏心カム部23をカム動作させることにより、締付ロッド20をその軸方向に沿って伸ばすことで引張応力を与え、該引張応力により挟持部14に挟持力を発生させる。
【0030】
なお、レバー部24を約90度の角度傾倒した状態でフック部13の挟持固定が終了するように、調整ナット21を回して締付代dの間で偏心カム部23が約90度の角度回動できるように調整する。
【0031】
ストラットバー10の固定状態を解除して、ストラットバー10を左右の支持ステー11から取り外す場合には、左右のレバー部24を傾倒状態から軸中心Lに沿った直立姿勢まで回動すると、加圧パッド19に対する締め付けが弱まり、前後の各挟持部14の間隔が拡がって各係合フック部13の挟持固定が解除される。
【0032】
そして、ストラットバー10を上方に持ち上げるだけで、ストラットバー10を左右の支持ステー11から取り外し、車両の荷物室の有効利用を図ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、支持ステー11を左右のリアサスペンション4の上部が収容されるハウジング5の外周壁(荷物室3内側)に支持させるために、3次元構造の支持部を該外周壁に合わせて形成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、リアサスペンションのアッパーマウントの取り付けボルトに直接取り付ける円盤状の支持部を有し、この円盤状の支持部から前後方向に対向する一対の係合フック部13を設けた構成であっても良い。
【0034】
また、フロントの左右のサスペンション間に差し渡されるストラットタワーバーに対して本実施形態のストラットバー取り付け装置12を適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車
2 後部座席
3 荷物室
4 リアサスペンション
5 ハウジング
10 ストラットバー
11 支持ステー
12 ストラットバー取り付け装置
13 係合フック部
14 挟持部
15 締付レバー
16 連結筒
17 第1係合体
17a 第1筒部 17b 第1フランジ部 17c 軸孔
18 第2係合体
18a 第2筒部 18b 第2フランジ部 18c 軸孔
19 加圧パッド
締付ロッド挿通孔
20 締付ロッド
20a 調整ねじ部 20b ピン孔
21 調整ナット
22 連結ピン
23 偏心カム部
23a ピン打ち込み孔 23b 凹部 23c 側壁部
24 レバー部
O 円中心
C 回転中心
R 半径
L 軸中心
d 締付代
25 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体幅方向に差し渡された車体補強部材の端部を、車体側に固定された支持体の車体前後方向に対向配置した一対の係合フック部に着脱可能に取り付ける自動車用の車体補強部材取り付け装置であって、
前記車体補強部材の端部に固定され、車体の前後方向に沿って延びる中空の連結筒と、
前記連結筒内を貫通する締付ロッドと、
前記連結筒の両端部で前記一対の係合フック部がそれぞれ係合すると共に、前記締付ロッドの軸方向において前記フック部を挟持する挟持部と、
前記締付ロッドの一端部に傾倒可能に取り付けられた偏心カム部を備えた締付レバーと、
を有し、
前記締付ロッドは、前記締付レバーの傾倒動作により前記偏心カム部のカム動作により伸び方向に軸力が付与されて前記挟持部に挟持力を発生させることを特徴とする自動車用の車体補強部材取り付け装置。
【請求項2】
前記挟持部は、前記連結筒の端部に装入される筒部と、前記筒部一端に形成されたフランジ部からなる係合体を有し、前記フランジ部と前記連結筒の端面との間で前記係合フック部を挟持すると共に、前記筒部に前記係合フック部を係合させることを特徴とする請求項1に記載の自動車用の車体補強部材取り付け装置。
【請求項3】
前記係合フック部は、前記筒部と係合するための開口凹部を有し、前記凹部は上方に開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用の車体補強部材取り付け装置。
【請求項4】
前記挟持部は、前記連結筒の両端部にそれぞれ形成されていて、前記連結筒の両端部に軸方向移動可能に装入される対向する前記筒部の対向端面間に、対向する一対の係合体を互いに離れる方向に付勢するスプリングを配置したことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車用の車体補強部材取り付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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