説明

自動車用の閉塞栓

【課題】自動車の床板等のパネルに穿設された水抜き穴等の孔部を閉塞するための閉塞栓であって、孔部への挿入部の挿入力を低減することができるようにした閉塞栓を提供する。
【解決手段】閉塞栓10には、裏面が孔部の周縁部に当接可能なフランジ部30、フランジ部30の裏面から垂下し、孔部を通過可能な挿入部40、挿入部40から張り出し、フランジ部30との間で周縁部を挟持可能な段部91、挿入部40に位置し、段部91とフランジ部30との間に設けられ、孔部の内径と略同径となる外周壁面92、段部91の周方向の両端部からそれぞれ突出する一対の爪部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車の床板等のパネルに穿設された水抜き穴等の孔部を閉塞するための閉塞栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の閉塞栓としては、フランジ部と挿入部とを有し、挿入部には、当該外周面から突出した肉厚な係止爪を放射状に複数設けたものが知られている(例えば特許文献1の2頁右欄2〜7行、同頁右欄15〜18行及び第1〜4図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平02-8867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の閉塞栓では、係止爪の材料の弾性を利用して圧入していたため、挿入力が高いという問題点があった。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
【0005】
すなわち、請求項1に記載の発明は、挿入部から張り出す段部に、その周方向の両端部からそれぞれ突出した一対の爪部を設けることで、圧入時に爪部がたわむ構造とすることで、孔部への挿入部の挿入力を低減することができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0006】
すなわち、請求項2に記載の発明は、挿入部の周方向に対して、所定の間隔置きに段部を複数個形成することで、各段部の挿入力を低減することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項3に記載の発明は、爪部が逃げ溝に向かってわたみ易くすることができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項4に記載の発明は、フランジ部の裏面に環状の凹部を設けることで、孔部へ装着した際に、フランジ部の歪みを防止することができるようにしたものである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
すなわち、請求項5に記載の発明は、爪部を互いに連結するブリッジ形の内壁が、孔部の内周面に押されて、半径方向内向きに湾曲して弾性的にたわむことで、バネ復元力を蓄積し、当該バネ復元力により、爪部を孔部の内周面に向かって弾性的に押し付けることで、爪部を外れ難くできるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0010】
第1に、例えば図2に示すように、自動車のパネル(20)に穿設された孔部(21)を閉塞する閉塞栓(10)である。
第2に、閉塞栓(10)には、例えば図1、図4及び図5に示すように、次の構成を備える。
(1)フランジ部(30)
フランジ部(30)は、例えば図2に示すように、裏面が孔部(21)の周縁部に当接可能なものである。
【0011】
(2)挿入部(40)
挿入部(40)は、例えば図1、図4及び図5に示すように、フランジ部(30)の裏面から垂下し、例えば図2に示すように、孔部(21)を通過可能なものである。
(3)段部(91)
段部(91)は、例えば図1、図4及び図5に示すように、挿入部(40)から張り出し、例えば図2に示すように、フランジ部(30)との間で周縁部を挟持可能なものである。
【0012】
(4)外周壁面(92)
外周壁面(92)は、例えば図1及び図5に示すように、挿入部(40)に位置し、段部(91)とフランジ部(30)との間に設けられ、孔部(21)の内径と略同径となるものである。
(5)爪部(93)
爪部(93)は、例えば図5及び図8〜10に示すように、段部(91)の周方向の両端部からそれぞれ突出するものであり、一対形成されている。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、段部(91)が、例えば図9に示すように、挿入部(40)の周方向に対して、所定の間隔で複数個、例えば3個形成されている。
なお、段部(91)の個数として、3個を例示したが、これに限定されず、2個或いは4個以上形成しても良い。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、爪部(93)の内側面と挿入部(40)の外周面との間には、例えば図5及び図8〜10に示すように、爪部(93)が挿入部(40)の外周面に向かってたわみ込むことを許容する逃げ溝(94)を設けている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、フランジ部(30)の裏面には、例えば図1に示すように、外周壁面(92)の周方向に沿って凹んだ凹部(31)を設けている。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
第1に、隣接する段部(91)の間には、例えば図11〜14に示すように、半径方向に凹んだ溝部(100)と、溝部(100)を取り囲むとともに、隣接する段部(91)の爪部(93)を互いに連結するブリッジ形の内壁(200)とを備える。
第2に、内壁(200)は、例えば図11に示すように、孔部(21)の内周面に押されて爪部(93)が溝部(100)に向かってたわみ込む際に、半径方向内向きに湾曲して弾性的にたわむようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、挿入部から張り出す段部に、その周方向の両端部からそれぞれ突出した一対の爪部を設けることで、圧入時に爪部がたわむ構造とすることで、孔部への挿入部の挿入力を低減することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、発明の効果に加え、
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、挿入部の周方向に対して、所定の間隔置きに段部を複数形成することで、各段部の挿入力を低減することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、発明の効果に加え、
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、爪部が逃げ溝に向かってわたみ易くすることができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、発明の効果に加え、
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、フランジ部の裏面に環状の凹部を設けることで、孔部へ装着した際に、フランジ部の歪みを防止することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、爪部を互いに連結するブリッジ形の内壁が、孔部の内周面に押されて、半径方向内向きに湾曲して弾性的にたわむことで、バネ復元力を蓄積し、当該バネ復元力により、爪部を孔部の内周面に向かって弾性的に押し付けることで、爪部を外れ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図7のA−A線に沿う断面図である。
【図2】閉塞栓を装着した状態のパネルの一部断面図である。
【図3】パネルの孔部を示す平面図である。
【図4】閉塞栓を上方から見た状態の斜視図である。
【図5】閉塞栓を下方から見た状態の斜視図である。
【図6】一半を断面にした閉塞栓の側面図である。
【図7】閉塞栓の平面図である。
【図8】閉塞栓の底面図である。
【図9】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図10】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態を示し、同図はパネルの孔部に閉塞栓の挿入部を挿入した状態であって、挿入部の一半の横断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を示し、一半を断面にした閉塞栓の側面図である。
【図13】図12のD−D線に沿う断面図である。
【図14】図11に対応し、同図はパネルの孔部に閉塞栓の挿入部を挿入する過程を説明するものあって、挿入部の一半の横断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態を示し、同図はパネルの孔部に閉塞栓の挿入部を挿入する過程を説明するものあって、閉塞栓の一半の縦断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態を示し、同図はパネルの孔部に閉塞栓の挿入部を挿入する過程を説明するものあって、挿入部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(閉塞栓10)
図中、10は、閉塞栓を示し、この閉塞栓10は、図2に示すように、自動車の床板等のパネル20に穿設された水抜き穴等の孔部21を閉塞するためのものである。
なお、パネル20として、自動車の床板を例示したが、これに限定されず、又、孔部21として、水抜き穴を例示したが、これに限定されない。
【0019】
孔部21は、図3に示すように、円形に形成され、パネル20の表裏面に貫通している。
閉塞栓10は、適度な弾性と剛性とを有する熱可塑性樹脂、例えばオレフィン系エラストマー(TPO)により一体的に成形されている。
具体的には、閉塞栓10には、図1、図4及び図5に示すように、大別すると、次の各部を備える。
【0020】
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)フランジ部30
(2)挿入部40
なお、閉塞栓10の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(フランジ部30)
フランジ部30は、図2に示すように、裏面が孔部21の周縁部に当接可能なものである。
【0021】
具体的には、フランジ部30は、図1、図4及び図5に示すように、環状に形成され、その外周縁がパネル20の表面に向かって斜め下向きに傾斜した環状の傘形、或いは吸盤形に形成されている。
フランジ部30の裏面には、図1に示すように、後述する挿入部40との間に、外周壁面の周方向に沿って環状に凹んだ凹部31を設けている。
(挿入部40)
挿入部40は、図1、図5及び図5に示すように、フランジ部30の裏面から垂下し、図2に示すように、孔部21を通過可能なものである。
【0022】
具体的には、挿入部40には、図1、図4及び図5に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(4)については、後述する。
(1)外筒50
(2)環状底壁60
(3)内筒70
(4)環状溝80
なお、挿入部40の各部は、上記した(1)〜(4)に限定されない。
(外筒50)
外筒50は、図1に示すように、フランジ部30の裏面から垂下し、下方に向かって少しすぼまった円筒形に形成されている。
【0023】
外筒50には、図1、図4及び図5に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)縮径部90
(2)溝部100
なお、外筒50の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(環状底壁60)
環状底壁60は、図1に示すように、外筒50の少しすぼまった環状下端部から半径方向内向きに環状に張り出している。
(内筒70)
内筒70は、図1に示すように、環状底壁60の環状の内側端部から延び、上方に向かって少しすぼまった円筒形に形成されている。
【0024】
内筒70の内部は、中空に形成され、その上面が塞がれ、底が開放している。
(環状溝80)
環状溝80は、図1に示すように、内筒70と外筒50との間に形成され、底が環状底壁60で塞がれ、上面が開放している。
(縮径部90)
縮径部90は、図1、図5及び図8〜10に示すように、外筒50から外周から突出するものであり、パネル20の孔部21に縮径して通過し、通過後、樹脂の弾性により復元するものである。
【0025】
縮径部90には、図1、図4及び図5に示すように、次の各部を備える。
なお、縮径部90の各部は、次の(1)〜(5)に限定されない。
(1)段部91
段部91は、図1、図5及び図9に示すように、挿入部40の縮径部90の外周面から張り出し、図2に示すように、フランジ部30との間で周縁部を挟持可能なものである。
【0026】
具体的には、段部91は、縮径部90の高さの途中から、斜面を下方に向け、フランジ部30の裏面と対向する水平な面を有する断面が直角三角形形に形成されている。また、段部91は、縮径部90の周方向の中央に位置し、周方向の長さを縮径部90の周方向の長さより短く設定している。
段部91における外筒50の直径は、パネル20の孔部21の内径より大きく設定している。
【0027】
(2)外周壁面92
外周壁面92は、図1及び図5に示すように、挿入部40に位置し、段部91とフランジ部30との間に設けられ、孔部21の内径と略同径となるものである。
(3)爪部93
爪部93は、図5及び図8〜10に示すように、段部91の周方向の両端部からそれぞれ突出したものであり、一対形成されている。
【0028】
具体的には、爪部93は、後述する溝部100で囲まれた縮径部90の両端部にそれぞれ位置し、先細状、或いは鋭角的に尖った断面三角形や断面V字形に形成されている。
(4)逃げ溝94
逃げ溝94は、図5及び図8〜10に示すように、爪部93の内側面と、挿入部40の後述する溝部100の外周面との間に位置し、爪部93が挿入部40の溝部100の外周面に向かってたわみ込むことを許容するためのものである。
【0029】
具体的には、逃げ溝94は、鋭角的に尖った断面三角形、或いはV字形に形成されている。
(5)凹所95
凹所95は、図7、図9及び図10に示すように、環状溝80に面する縮径部90の外周面に位置する。
(溝部100)
溝部100は、図4、図5及び図7〜10に示すように、外筒50から外周から凹み、縮径部90を周方向に複数、例えば3個に分割するものである。
【0030】
具体的には、溝部100は、120度間隔で3本設けている。
溝部100を120度間隔で3本設けたのは、隣接する溝部100の間に形成される前述した縮径部90を対角線上に位置させないためである。
すなわち、縮径部90を、90度間隔で4個設けると、縮径部90が対角線上に位置するため、対角線方向に位置する縮径部90が、パネル20の孔部21に押されて互いに内向きにたわもうとして相互に干渉し合い、挿入力が増加する弊害がある。
【0031】
なお、溝部100の本数として、3本を例示したが、挿入力が増加する弊害はあるものの、これに限定されず、2本或いは4本以上径しても良い。また、同様に、縮径部90やその段部91の個数も、3個に限定されず、2個或いは4個以上径しても良い。
一方、溝部100の内周には、図7、図9及び図10に示すように、環状溝80に向かって突出した凸所101となっている。
(使用方法)
つぎに、上記した構成を備える閉塞栓10の使用方法について説明する。
【0032】
まず、閉塞栓10の挿入部40を、図2に示すように、パネル20の孔部21に合わせて挿入する。
挿入部40を挿入すると、その段部91が孔部21の内縁に当接する。ここで、閉塞栓10のフランジ部30を孔部21に向かって強く押し込むと、段部91が孔部21の内縁に押されて、外筒50の縮径部90が環状溝80に向かってたわみ込み、縮径部90の外径が縮径し、段部91が孔部21内に進行する。
【0033】
その後、段部91が孔部21を通過すると、縮径部90が樹脂の弾性により復元し、このとき段部91がパネル20の裏面に当接し、フランジ部30との間でパネル20を表裏面からはさみ持つことで、孔部21に対して閉塞栓10が固定される。
このとき、縮径部90の外周壁面92が、孔部21の内側に位置する。
(パネル20の板厚の許容性)
一方、挿入部40を挿入した際に、吸盤形のフランジ部30が、パネル20の表面に押されて上方にたわみ、樹脂の弾性復元力により、パネル20の表面に弾性的に圧接する。
【0034】
このため、フランジ部30がパネル20の表面に弾性的に圧接することで、水密性を向上することができる。
また、フランジ部30の弾性復元力により、挿入部40に対して透孔21から抜ける方向の力が作用する。このため、段部91がパネル20の裏面に強く当接する。
段部91がパネル20の裏面に強く当接することで、透孔21中での挿入部40のガタ付きを防止することができる。
【0035】
また、フランジ部30に環状の凹部31を形成していることから、当該凹部31が逃げ形状となり、フランジ部30がたわんだ際の歪みを防止しできる。このため、フランジ部30が歪みパネル20の表面に不均一に圧接するのを防止し、水密性を向上することができる。
一方、パネル20の板厚が変化した場合にも、図示しないが、フランジ部30のたわみ量が変化することで、パネル20の板厚の変化を吸収することができる。
【0036】
実験の結果、パネル20の板厚が、2倍程度に変化しても、水密性を維持することができた。
(孔部21の内径の許容性)
孔部21の内径が、段部91を除く縮径部90全体の外径未満の場合には、爪部93が孔部21の内縁に当接する。ここで、閉塞栓10を孔部21に向かって強く押し込むと、爪部93が孔部21の内縁に押されて、溝部100との間の逃げ溝94に向かってたわみ込むことで、縮径部90の外径が縮径し、段部91が孔部21内に進行する。
【0037】
その後、段部91が孔部21を通過することで、孔部21に対して閉塞栓10が固定されるが、このとき、爪部93が孔部21の内縁に押された状態で、その弾性復元力により孔部21の内縁に弾性的に当接する。
このため、透孔21中での挿入部40のガタ付きを防止することができる。
また、挿入時には、爪部93が孔部21の内縁に押されて、逃げ溝94に向かってたわみ込むことで、挿入力を低減することができる。
【0038】
同時に、爪部93がたわむことで、孔部21の内径の許容性を向上することができる。
実験の結果では、孔部21の内径がプラス・マイナス、5%程度変化しても、水密性を維持することができた。
【0039】
(第2の実施の形態)
つぎに、図11〜16を用いて、本発明の他の実施の形態について説明する。
本実施の形態の特徴は、図11に示すように、爪部93を互いに連結するブリッジ形の内壁200が、孔部21の内周面に押されて、半径方向内向きに湾曲して弾性的にたわむようにした点である。
すなわち、閉塞栓10の挿入部40であって、隣接する段部91の間には、図11〜14に示すように、半径方向に凹んだ溝部100と、当該溝部100を取り囲むとともに、隣接する段部91の爪部93を互いに連結するブリッジ形の内壁200とを備える。
溝部100は、図13及び図14に示すように、半径方向内向きに凹形の凹み、その端面が半径方向外向きに開放している。
内壁200は、図13及び図14に示すように、隣接する段部91の爪部93が両端部にそれぞれ連接し、溝部100の三方を取り囲む、断面がチャンネル形、或いはカタカナの「コ」形に屈曲している。また、内壁200の両端部と、爪部93との間は、断面がアルファベット大文字の「Z」字形に屈曲させることで、断面をクランク形に屈曲させた場合に比較して、内壁200の変形を容易化している。
なお、本実施の形態の説明においては、先に図1〜10を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0040】
上記構成を有する閉塞栓10の挿入部40を、図14に示すように、パネル20の孔部21に合わせて挿入すると、同図に矢印で示したように、孔部21の内周面に押されて爪部93が、溝部100に向かってたわみ込む。
その際に、内壁200が、図11に示すように、半径方向内向きに湾曲し、例えばアルファベット大文字の「C」字形や、ギリシャ文字の大文字の「Ω」(オメガ)形に湾曲して、弾性的にたわむ。
内壁200が湾曲してたわむことで、樹脂の弾性復元力であるバネ復元力を蓄積し、当該バネ復元力により、爪部93を孔部21の内周面に向かって弾性的に押し付けることで、爪部93を外れ難くできる。
【0041】
一方、閉塞栓10のフランジ部30は、図12に示すように、環状に形成され、その外周縁がパネル20の表面に向かって斜め下向きに傾斜した環状の傘形、或いは吸盤形に形成されている。また、フランジ部30を有する外筒50の内周50と、内筒70の外周との間に、環状溝80が形成されていることから、吸盤形のフランジ部30の変形を容易化している。
閉塞栓10の挿入部40をパネル20の孔部21に合わせて挿入した際に、フランジ部30は、図15に示すように、パネル20の表面に押されて、同図に二点鎖線で示すように、上方に向かってたわむ。このとき、吸盤形のフランジ部30の先端部外周が、パネル20の表面に弾性的に密着し、吸盤形のフランジ部30単独で水密性を保つことができる。
【符号の説明】
【0042】
(第1の実施の形態)
10 閉塞栓
20 パネル 21 孔部
30 フランジ部 31 凹部
40 挿入部 50 外筒
60 環状底壁 70 内筒
80 環状溝 90 縮径部
91 段部 92 外周壁面
93 爪部 94 逃げ溝
95 凹所
100 溝部 101 凸所
(第2の実施の形態)
200 内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパネルに穿設された孔部を閉塞する閉塞栓において、
前記閉塞栓には、
裏面が前記孔部の周縁部に当接可能なフランジ部と、
前記フランジ部の裏面から垂下し、前記孔部を通過可能な挿入部と、
前記挿入部から張り出し、前記フランジ部との間で前記周縁部を挟持可能な段部と、
前記挿入部に位置し、前記段部と前記フランジ部との間に設けられ、前記孔部の内径と略同径となる外周壁面と、
前記段部の周方向の両端部からそれぞれ突出する一対の爪部とを備えていることを特徴とする自動車用の閉塞栓。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用の閉塞栓であって、
前記段部が、前記挿入部の周方向に対して、所定の間隔で複数個形成されていることを特徴とする自動車用の閉塞栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動車用の閉塞栓であって、
前記爪部の内側面と前記挿入部の外周面との間には、
前記爪部が前記挿入部の外周面に向かってたわみ込むことを許容する逃げ溝を設けていることを特徴とする自動車用の閉塞栓。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用の閉塞栓であって、
前記フランジ部の裏面には、
前記外周壁面の周方向に沿って凹んだ凹部を設けていることを特徴とする自動車用の閉塞栓。
【請求項5】
請求項2に記載の自動車用の閉塞栓であって、
隣接する前記段部の間には、
半径方向に凹んだ溝部と、
前記溝部を取り囲むとともに、前記隣接する前記段部の前記爪部を互いに連結するブリッジ形の内壁とを備え、
前記内壁は、
前記孔部の内周面に押されて前記爪部が前記溝部に向かってたわみ込む際に、半径方向内向きに湾曲して弾性的にたわむようにしていることを特徴とする自動車用の閉塞栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−121575(P2011−121575A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177302(P2010−177302)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】