説明

自動車用ウエザストリップ

【課題】フランジの肉厚が変化してもフランジの挿入荷重が小さく、抜け荷重が大きく、フランジに対して回転を防止する取付基部を有する自動車用ウエザストリップを提供する。
【解決手段】ウエザストリップ10は、取付基部20とシール部50を有する。取付基部は断面略U字形に形成され、車内側保持リップ40は、車内側保持リップ根元部41と、車内側保持リップ根元部41の先端に車内側保持リップメインリップ42と、車内側保持リップ根元部41の先端の開口側面から車内側保持リップメインリップ42に対して斜めに開口方向に形成される車内側保持リップサブリップ43を形成する。車内側保持リップサブリップ43は、車内側保持リップメインリップ42よりも短く形成されるとともに、車内側保持リップサブリップ43の先端は、車内側保持リップ根元部41と車内側側壁22の連続部分の内側端部よりも開口側に位置するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドア、トランクリッド、スライディングルーフ等の車体の開口部を開閉する車体開口部開閉部材と車体開口部周縁との間をシールする自動車用ウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明について、自動車の車体開口部開閉部材であるドアと車体の開口部である車体開口部周縁との間をシールするオープニングトリムウエザストリップを例に取り説明する。
従来、自動車のドアとドア開口部周縁との間のシールは、ドアのドアフレームの外周に設けられたドアウエザストリップと、ドアフレーム等の内周のチャンネルに取付けられるガラスランと、車体開口部周縁のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップとによりなされる。
【0003】
図12に示すように、オープニングトリムウエザストリップ110は、車体の車体開口部周縁6のほぼ全周に取付けられて、ドアを閉めると、ドアフレーム2又はドアパネルの外周に当接してシールする。図14に示すように、車体開口部周縁6にはフランジ7が設けられ、フランジ7は、インナーパネル8とアウターパネル9の先端が溶接により固着されて形成されている。
【0004】
オープニングトリムウエザストリップ110は、断面略U字形の取付基部(トリム部)120により上記のフランジ7に取付けられ、中空シール部150がドアフレーム膨出部に当接してシールする。このトリム部120は、フランジ7を把持する力を増加させるために、金属インサート等の芯材124が埋設され、車外側側壁121、車内側側壁122及び底壁123から形成された断面略U字形に形成されている。
【0005】
図14に示すように、車外側側壁121および車内側側壁122の断面略U字形のそれぞれの内面には、フランジ7を把持するために、車外側保持リップ131、132と車内側保持リップ141、142が形成されている。フランジ7がトリム部120に挿入されると、車外側保持リップ131、132と車内側保持リップ141、142の先端が撓んで、フランジ7のそれぞれの側面に圧接されてフランジ7を保持し、オープニングトリムウエザストリップ110を取付けることができる。
【0006】
車体開口部周縁6に形成されたフランジ7は、上記のように、インナーパネル8とアウターパネル9の先端が溶接により固着されて形成されているが、車体開口部周縁6の場所により溶接されるパネルの数が1枚から8枚程度変化する。このため、フランジ7の全体の肉厚が車体開口部周縁6の場所により、厚さにして0.5mmから7.0mm程度まで変化する。
【0007】
オープニングトリムウエザストリップ110は、図13に示すように、押出成形により1本の押出品として形成され、接続部111で環状に接続される。
そのため、図15に示すように、取付基部220と中空シール部250を有するオープニングトリムウエザストリップ210において、取付基部220の車外側側壁221の内面に短い複数の車外側保持リップ231、232、233を設け、車内側側壁222の内面から1本の長い車内側保持リップ240を設けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
この場合には、フランジ7の厚さに応じて、車内側保持リップ240が取付基部220の内部方向、即ち底壁223の方向に撓むことにより、フランジ7を保持することができる。しかしながら、車内側保持リップ240は、フランジ7の側面に対して1点のみが当接するため、中空シール部250がドアと当接する場合等において、特に、フランジ7の厚みが0.5〜1.5mm程度の薄い場合は、取付基部220がフランジ7に対して、図15の時計回り又は反時計回りの方向に回転するように動く場合に回転を止めることが困難であった。
【0009】
そこで、図16に示すように、取付基部320と中空シール部350を有するオープニングトリムウエザストリップ310において、取付基部320の車外側側壁321の内面に短い複数の車外側保持リップ331、332、333を設け、車内側側壁322の内面から1本の長い車内側保持リップ340を設け、車内側保持リップ340の先端の開口側にフランジ7に当接する突部341を設けるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
しかしながら、この場合には、突部341と車内側保持リップ340の先端との間が狭く、フランジ7に当接したときに、フランジ7を保持する幅が小さいため、また、突部341が車内側保持リップ340の車内側側壁322との連結部よりも取付基部320の内側に位置するため(換言すれば、底壁323寄りに位置するため)、取付基部220がフランジ7に対して、回転するように動く場合に回転を止める力が小さかった。
また、車内側側壁322の先端内側に車内側保持リップ340の反り返り防止用の突起325も設けられているが、突起325の位置が車内側保持リップ340の根元と離れているため、車内側保持リップ340が大きく反り返りかえらないと作用することができず、フランジ7の抜け防止には不十分であった。
【0011】
また、図17に示すように、取付基部420の車外側側壁421の内面に2本の車外側保持リップ431、432を設け、車内側側壁422の内面に同様に2本の車内側保持リップ441、442を設け、車外側保持リップ431、432と車内側保持リップ441、442のそれぞれの先端を二股に分けて形成し、その二股の部分をフランジ7に当接するものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0012】
しかしながら、この場合には、フランジ7に対して取付基部420が回転することを防止して、フランジ7に強固に保持させることができるが、フランジ7の肉厚が変化した場合には、車外側保持リップ431、432と車内側保持リップ441、442のそれぞれが撓む余地が少ないとともに、車外側保持リップ431、432と車内側保持リップ441、442の先端との接触面積が大きく、フランジ7の挿入が困難であった。
【0013】
また、図18に示すように、取付基部520と中空シール部550を有するオープニングトリムウエザストリップ510において、取付基部520の車外側側壁521の内面に2本の車外側保持リップ531、532を設け、車内側側壁522の内面から2本の車内側保持リップ541、542を設け、車内側保持リップ541の先端の開口側にフランジ7に当接するスポンジゴム製の突起部543を設けるものがある(例えば、特許文献4参照。)。
【0014】
この2本の車外側保持リップ531、532と2本の車内側保持リップ541、542でフランジ7を保持するために、取付基部520がフランジ7に対して回転することを防止することはできるが、図17に示した場合と同様に、フランジ7の肉厚が変化した場合には、車外側保持リップ531、532と車内側保持リップ541、542のそれぞれが撓む余地が少なく、フランジ7の挿入が困難であった。また、突起部543は、スポンジゴム製の単なる突起であるため、フランジ7に密着してシールすることができるが、フランジ7を保持する力は小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−30553号公報
【特許文献2】実開平5−62313号公報
【特許文献3】実開昭58−168946号公報
【特許文献4】特開平3−204358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このため、本発明は、フランジの肉厚が変化してもフランジの挿入荷重が小さく、抜け荷重が大きく、フランジに対して回転を防止する取付基部を有する自動車用ウエザストリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車の車体開口部開閉部材と自動車の車体開口部周縁との間をシールするウエザストリップにおいて、
ウエザストリップは、車体開口部開閉部材又は車体開口部周縁のいずれか一方の部材に設けられているフランジに取付けられる取付基部と、取付基部に一体的に設けられ、他方の部材である車体開口部周縁又は車体開口部開閉部材に当接して車体開口部開閉部材と車体開口部周縁との間をシールするシール部を有し、
取付基部は、車外側側壁、車内側側壁及び底壁からなる断面略U字形に形成され、
車外側側壁の内面に複数の車外側保持リップを設け、
車内側側壁の内面に車内側保持リップを取付基部の内部方向に斜めに設け、車内側保持リップは、車内側側壁の内面から延設する車内側保持リップ根元部と、車内側保持リップ根元部の先端から連続して車内側保持リップ根元部の延長方向に形成される車内側保持リップメインリップと、車内側保持リップ根元部の先端の取付基部の開口側面から車内側保持リップメインリップに対して斜めに取付基部の開口方向に形成される車内側保持リップサブリップを形成し、車内側保持リップサブリップは、車内側保持リップメインリップよりも短く形成されるとともに、車内側保持リップサブリップの先端は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の内側端部よりも開口側に位置するように形成されたことを特徴とする自動車用ウエザストリップである。
【0018】
請求項1の本発明では、ウエザストリップは、車体開口部開閉部材又は車体開口部周縁のいずれか一方の部材に設けられているフランジに取付けられる断面略U字形の取付基部と、取付基部の側部に一体的に設けられ、他方の部材である車体開口部周縁又は車体開口部開閉部材に当接して車体開口部開閉部材と車体開口部周縁との間をシールするシール部を有している。このため、取付基部がフランジに取付けられると、シール部が確実に車体開口部周縁又は車体開口部開閉部材に当接して車体開口部周縁と車体開口部開閉部材との間をシールすることができる。
【0019】
取付基部は、車外側側壁、車内側側壁及び底壁からなる断面略U字形に形成されているため、断面略U字形の内部の車外側側壁と車内側側壁の内面にフランジを保持する保持リップを設けることができ、取付基部が安定してフランジに取付けられ、それによりシール部の位置が安定し、車体開口部開閉部材と車体開口部周縁との間を確実にシールすることができる。
【0020】
少なくとも車内側側壁の内面にはフランジを挟持するために長手方向に延設された車内側保持リップが形成される。このため、車内側保持リップと車外側保持リップとで、フランジを安定して、挟持することができる。
車外側側壁の内面に複数の車外側保持リップを設けたため、フランジの車外側側面に複数のリップを当接させることができ、フランジの車外側側面を安定して保持することができる。
【0021】
車内側側壁の内面に車内側保持リップを取付基部の内部方向に斜めに設けたため、車内側保持リップがフランジの肉厚の変化に応じて、撓むことができ、フランジを複数の車外側保持リップに常に押圧して、安定してフランジを保持することができる。
【0022】
車内側保持リップは、車内側側壁の内面から延設する車内側保持リップ根元部と、車内側保持リップ根元部の先端から連続して車内側保持リップ根元部の延長方向に形成される車内側保持リップメインリップと、車内側保持リップ根元部の先端の取付基部の開口側面から車内側保持リップメインリップに対して斜めに取付基部の開口方向に形成される車内側保持リップサブリップを形成する。このため、車内側保持リップ根元部が車内側保持リップメインリップと車内側保持リップサブリップを安定して保持して、車内側保持リップメインリップと車内側保持リップサブリップでフランジの車内側面を2点で幅広く保持することができ、取付基部がフランジに対して時計方向又は反時計方向に揺動しても、安定してフランジを保持することができる。
【0023】
車内側保持リップサブリップは、車内側保持リップメインリップよりも短く形成されため、薄いフランジの挿入時に車内側保持リップサブリップが挿入荷重を増加させることがない。
車内側保持リップサブリップの先端は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の内側端部よりも開口側に位置するように形成される。このため、車内側側壁の内面の垂直面に対して、車内側保持リップサブリップの先端が車内側保持リップ根元部の車内側側壁との連結部分よりも開口側に位置することができ、車内側保持リップがフランジの車内側の側面を安定して保持することができる。
【0024】
請求項2の本発明は、車内側保持リップサブリップの先端は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の内側端部と、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の開口側端部との間に位置するように形成された自動車用ウエザストリップである。
【0025】
請求項2の本発明では、車内側保持リップサブリップの先端は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の内側端部と、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の開口側端部との間に位置するように形成された。このため、車内側保持リップサブリップの先端にフランジから力が加わったときに、車内側保持リップ根元部で荷重を受けることができ、フランジの回転を防止して、車内側保持リップがフランジの車内側の側面を安定して保持することができる。
【0026】
請求項3の本発明は、車内側保持リップサブリップは、取付基部の開口側の面が底壁方向に向かって凹むように湾曲して形成された自動車用ウエザストリップである。
【0027】
請求項3の本発明では、車内側保持リップサブリップは、取付基部の開口側の面が底壁方向に向かって凹むように湾曲して形成されたため、車内側保持リップサブリップの先端がフランジに当接したときに、取付基部の開口側を向くことができ、車内側保持リップサブリップが時計方向にフランジに力を加えることができるとともに、車内側保持リップメインリップの先端との距離が長くなり、取付基部が回転しても、フランジを安定して保持することができる。
【0028】
請求項4の本発明は、車内側保持リップサブリップは、根元から先端に行くにつれて徐々に肉厚が減少して形成されるとともに、車内側保持リップ根元部との連続部分の肉厚よりも、全長が長く形成された自動車用ウエザストリップである。
【0029】
請求項4の本発明では、車内側保持リップサブリップは、根元から先端に行くにつれて徐々に肉厚が減少して形成されるとともに、車内側保持リップ根元部との連続部分の肉厚よりも、全長が長く形成された。このため、車内側保持リップサブリップの柔軟性が大きくなり、フランジの挿入荷重が小さくなるとともに、フランジの肉厚が変化しても、確実に当接することができる。
【0030】
請求項5の本発明は、車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端の間に、車外側保持リップのうちの1本の先端が位置する自動車用ウエザストリップである。
【0031】
請求項5の本発明では、車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端の間に、車外側保持リップのうちの1本の先端が位置する。このため、車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端が、フランジに力を加えても、車外側保持リップのうちの1本の先端がその力を受け止めて、フランジを安定して保持することができる。
【0032】
請求項6の本発明は、車内側保持リップメインリップは、先端部に取付基部の内部方向に斜めに屈曲した屈曲部を有する自動車用ウエザストリップである。
【0033】
請求項6の本発明では、車内側保持リップメインリップは、先端部に取付基部の内部方向に斜めに屈曲した屈曲部を有する。このため、フランジを取付基部内に挿入するときに、車内側保持リップメインリップの先端の屈曲部が撓んで、フランジの挿入荷重が小さくなるとともに、挿入後は屈曲部がフランジの側面に当接する面積が大きくなり、フランジを安定して保持するとともに、フランジの抜け荷重が大きくなり、フランジの保持力が増加する。
【0034】
請求項7の本発明は、車内側保持リップは、1本である自動車用ウエザストリップである。
【0035】
請求項7の本発明では、車内側保持リップは1本であるため、フランジの肉厚が変化しても、肉厚の変化に応じて1本の車内側保持リップが他の車内側保持リップに邪魔されずに、容易に取付基部の内部方向に撓むことができ、フランジの保持力を維持しつつ、フランジの挿入が容易である。
【0036】
請求項8の本発明は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の開口側面から連続部分の内部方向に車内側保持リップスリットが形成された自動車用ウエザストリップである。
【0037】
請求項8の本発明では、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の開口側面から、連続部分の内部方向に車内側保持リップスリットが形成された。このため、連続部分の肉厚が小さくなり、フランジを取付基部に挿入するときに、車内側保持リップが取付基部の内部方向に撓みやすく、挿入荷重を低減することができる。フランジが抜ける方向に引っ張られると、車内側保持リップスリットが閉じて、車内側保持リップがフランジに当接するため、フランジの抜け荷重を大きくすることができる。
【0038】
請求項9の本発明は、車内側保持リップスリットの入口付近の車内側側壁の表面又は車内側保持リップ根元部の車内側側壁との対向面に突部が形成された自動車用ウエザストリップである。
【0039】
請求項9の本発明では、車内側保持リップスリットの入口付近の車内側側壁の表面又は車内側保持リップ根元部の車内側側壁との対向面に突部が形成された。このため、フランジが抜ける方向に引っ張られると、車内側保持リップスリットが閉じて、車内側側壁の表面又は車内側保持リップ根元部の車内側側壁との対向面に形成された突部に、車内側保持リップ根元部又は車内側側壁の内面が当接して、車内側保持リップが取付基部の開口側に大きく撓むことを防止して、フランジの抜け荷重を減少させることがない。
【0040】
請求項10の本発明は、取付基部がフランジに取付けられたときに、車外側保持リップと車内側保持リップの先端は、フランジの側面にそれぞれ当接する自動車用ウエザストリップである。
【0041】
請求項10の本発明では、取付基部がフランジに取付けられたときに、車外側保持リップと車内側保持リップの先端は、最も薄いフランジでも、フランジの側面にそれぞれ当接するため、フランジを両側面から確実に保持することができる。
【0042】
請求項11の本発明は、取付基部の車外側側壁、車内側側壁及び底壁にはインサートが埋設された自動車用ウエザストリップである。
【0043】
請求項11の本発明では、取付基部の車外側側壁、車内側側壁及び底壁にはインサートが埋設されたため、取付基部の車内側側壁と車外側側壁の開口側が開くことを妨げる剛性が大きく、車内側保持リップと車外側保持リップがフランジを強固に把持することができる。
【0044】
請求項12の本発明は、車外側側壁の内面の底壁との連続部分付近に突起が形成された自動車用ウエザストリップである。
【0045】
請求項12の本発明では、車外側側壁の内面の底壁との連続部分付近に突起が形成されたため、フランジを取付基部の奥まで挿入したときに、車外側側壁の内面の突起がフランジの側面の先端に当接することができ、フランジの先端の位置が安定し、確実にフランジを保持することができる。
【0046】
請求項13の本発明は、上記車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端との間の距離(A)が下記式(1)の関係である自動車用ウエザストリップである。
(数1)
2.5≦A≦(L・ cos θ)+W´ ・・・(1)
Lは、車内側保持リップ(車内側保持リップメインリップの屈曲部を含む)の全長であり、角度θは、車内側側壁と車内側保持リップメインリップのなす角度である。
Wは、車内側保持リップメインリップの先端と点線AAとの間の距離であり、W´は、点線AAから車内側保持リップサブリップの先端との間の距離である。点線AAは、車内側保持リップサブリップの先端から車内側側壁に対して垂直に線を引いたものである。
【0047】
請求項13の本発明では、上記車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端との間の距離(A)が下記式(1)の関係である。
このため、車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端の間が充分な長さを有して、より安定してフランジを保持することができる。
【0048】
請求項14の本発明は、車内側保持リップ根元部の長さ(D)は、車内側保持リップの全長(L)に対して下記式(2)の関係である自動車用ウエザストリップである。
(数2)
1/4L≦D≦3/4L ・・・(2)
【0049】
請求項14の本発明では、車内側保持リップ根元部の全長(D)は、車内側保持リップの全長(L)に対して上記式(2)の関係である。このため、車内側保持リップ根元部が充分な長さを有して、車内側保持リップメインリップと車内側保持リップサブリップを安定して保持して、車内側保持リップの剛性を保持して、より安定してフランジを保持することができる。
【0050】
請求項15の本発明は、車体開口部開閉部材はドアであり、ウエザストリップは、オープニングトリムウエザストリップである自動車用ウエザストリップである。
【0051】
請求項15の本発明では、車体開口部開閉部材はドアであり、ウエザストリップは、オープニングトリムウエザストリップであるため、車体開口部周縁の全周にオープニングトリムウエザストリップを取付け、車体開口部周縁とドアとの間を、ドアウエザストリップとともに、確実にシールすることができる。
【発明の効果】
【0052】
車内側保持リップは、車内側保持リップ根元部と、車内側保持リップメインリップと、車内側保持リップサブリップを形成するため、フランジが薄い場合に、車内側保持リップメインリップと車内側保持リップサブリップでフランジの車内側面を2点で幅広く保持することができ、取付基部がフランジに対して回転方向に揺動しても、安定してフランジを保持することができる。
【0053】
車内側保持リップサブリップは、車内側保持リップメインリップよりも短く形成されため、フランジが厚い場合に、車内側保持リップサブリップが挿入荷重を増加させることがない。
車内側保持リップサブリップの先端は、車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の取付基部の内側端部よりも開口側に位置するように形成されるため、車内側保持リップサブリップの先端が車内側保持リップ根元部の車内側側壁との連結部分よりも開口側に位置することができ、車内側保持リップサブリップがフランジに当接しても、その力を連続部が受け取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の開口部付近の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップ付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップ付近の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップ付近の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップのスリット部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップのスリット部分の異なる他の形状の拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部の車内側保持リップのスリット部分の異なる他の形状の拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部にフランジを挿入した状態の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部にフランジを挿入し反時計方向に回動する力が加わった状態の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態であるオープニングトリムウエザストリップの取付基部にフランジを挿入し時計方向に回動する力が加わった状態の断面図である。
【図12】自動車のドアを開いた状態における後方から見た斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態であるドアオープニングトリムウエザストリップの正面図である。
【図14】従来のドアオープニングトリムウエザストリップを自動車の開口部周縁に取付けた状態における断面図である。
【図15】従来のドアオープニングトリムウエザストリップをフランジに取付けた状態における断面図である。
【図16】従来の他のドアオープニングトリムウエザストリップをフランジに取付けた状態における断面図である。
【図17】従来の他のドアオープニングトリムウエザストリップの取付基部をフランジに取付けた状態における断面図である。
【図18】従来の他のドアオープニングトリムウエザストリップをフランジに取付けた状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の実施の形態を、車体開口部開閉部材としてドアと、ウエザストリップとしてオープニングトリムウエザストリップ10を例にとり説明する。本発明は、オープニングトリムウエザストリップ10以外にも、スライディングルーフウエザストリップ、ラッゲージウエザストリップ等の自動車の車体開口部と、その開口部を閉じる車体開口部開閉部材に使用されるウエザストリップにも使用することができる。
【0056】
本発明を、図1〜図13に基づき説明する。
図12は自動車のドアを開いた状態において、車体開口部周縁6を示す斜視図である。図13は、車体開口部周縁6に装着されるオープニングトリムウエザストリップ10の全体の正面図である。
【0057】
図12に示すように、自動車の車体1は、ドア開口部を有し、そのドア開口部は、開閉部材であるドアにより開閉される。ドア開口部の周囲は、車体開口部周縁6を形成し、車体開口部周縁6には、車体1を構成するアウターパネルとインナーパネル、補強パネル等の先端が溶接されたフランジ7(図1、9参照)を備えている。このフランジ7に車体開口部周縁6とドアとの間をシールするオープニングトリムウエザストリップ10が装着される。
フランジ7は、車体1の車体開口部周縁6の部位により、溶接されるパネルの数が1枚〜8枚程度まで変化する。そのため、フランジ7の肉厚は、車体開口部周縁6の位置により0.5mmから7.0mm程度まで変化する。
【0058】
オープニングトリムウエザストリップ10は、押出成形により直線状に成形される。この直線状に形成された1本のオープニングトリムウエザストリップ10は、図13に示すように、車体開口部周縁6の形状に沿って、環状となるようにフランジ7に装着される。装着は、オープニングトリムウエザストリップ10の一方の端末から順次、フランジ7に装着され装着が完了すると、他方の端末が一方の端末と接合することとなる。この端末は、接続部11により型接合されて環状に形成されていてもよい。
また、オープニングトリムウエザストリップ10の端末同士を装着前に接着剤で接着して環状にしてもよい。
【0059】
次に、図1〜図11に基づき、本発明の実施の形態のオープニングトリムウエザストリップ10について説明する。
図1に示すように、オープニングトリムウエザストリップ10は、フランジ7に取付けられる断面略U字形のトリム部(取付基部)20と、トリム部20から一体的に形成され、ドアのドアフレーム膨出部に当接して、ドアと車体開口部周縁6との間をシールする中空状の中空シール部50を有する。
本発明に実施の形態では、トリム部20の車外側側壁21の外面に、中空シール部50が一体的に設けられている。トリム部20は、ソリッド材で形成され、中空シール部50はスポンジ材で形成される。
【0060】
トリム部20は、車外側側壁21、車内側側壁22と底壁23からなり、断面略U字形に形成されている。トリム部20のそれぞれの壁の内部には、フランジ7を把持する強度を増加させるために、インサート24が埋設されている。インサート24は、板金や硬質樹脂で形成され、車体開口部周縁6におけるコーナー部に取付けられるときの柔軟性を確保するため、梯子状や、魚の骨状、ジグザグ状等に形成されている。トリム部20はソリッド材又は微発泡材で形成されている。
【0061】
車外側側壁21と車内側側壁22の内面にはそれぞれ長手方向に延設され、フランジ7を挟持する車外側保持リップ30と車内側保持リップ40が形成される。このため、車外側保持リップ30と車内側保持リップ40のそれぞれの先端がフランジ7の両側の側面にそれぞれ当接して、フランジ7を強固に保持する。このため、トリム部20が回転して倒れることがなく、中空シール部50がドアフレーム2に確実に当接して、シール性を確保することができる。
【0062】
本実施の形態における車外側保持リップ30は、押出成形後では、3本短く形成されており、トリム部20の開口側から略等間隔に順に、第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33が車外側側壁21と同じ材料で形成されている。第1車外側保持リップ31は、車外側側壁21の最も開口側に設けられ、車外側側壁21に埋設されたインサート24の先端付近から形成されている。第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33の先端は、トリム部20の内部方向(換言すれば、底壁23の方向)に向かって若干屈曲、若しくは傾斜して形成されている。
【0063】
車外側側壁21の内面であって、トリム部20の最も奥である底壁23との連続部分付近に車外側突起34が、車内側側壁22に向かって張り出すように、断面形状が台形に形成されている。車外側突起34の高さは、第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33の高さ(図1におけるh)よりもわずかに低く(例えば、0.2mm程度低い。)設定される。なお、本実施の形態では、hの高さは1.0mmである。フランジ7が挿入されたときに、フランジ7の先端が車外側突起34と接触が抑制されて、フランジ7の挿入が容易である。また、図1で見たときに、フランジ7が薄い場合には、トリム部20に対してフランジ7が反時計方向に回転するときに、回転止めとして作用することができる。
【0064】
車内側保持リップ40は、長く1本で断面略U字形の内部に斜め方向に突出するように形成されている。換言すれば、底壁23の方向に向かって傾斜して、突出している。車内側保持リップ40と車内側側壁22は、同じ材料で形成されている。車内側保持リップ40は、車内側側壁22の開口側の内面から連続して延設する車内側保持リップ根元部41と、車内側保持リップ根元部41の先端から連続して車内側保持リップ根元部41の延長方向に形成される車内側保持リップメインリップ42と、車内側保持リップ根元部41の先端のトリム部20の開口側面から車内側保持リップメインリップ42に対して斜めにトリム部20の開口方向に形成される車内側保持リップサブリップ43を形成する。即ち、車内側保持リップ根元部41と車内側保持リップメインリップ42は、底壁23の方向に向かって傾斜しており、車内側保持リップサブリップ43は、トリム部20の開口方向(底壁23の反対方向)に向かって傾斜している。
【0065】
第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33のそれぞれの先端と、車内側保持リップメインリップ42、車内側保持リップサブリップ43のそれぞれの先端は、ほぼ同一面上にあり(望ましくは、わずかに(0.2mm程度)オーバーラップしており)、後述するように、フランジ7の車外側の側面に均等に当接して、保持することができる。また、1枚の板金で形成された薄いフランジ7の場合には、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43の先端が両方ともフランジ7の車内側の側面に当接する。
【0066】
車内側保持リップ根元部41は、車内側保持リップ根元部41と車内側側壁22の連続部分のトリム部20の開口側端部から、連続部分の内部方向(底壁23に向かう方向)である車内側側壁22の内面方向に車内側側壁22に対しては斜めに車内側保持リップスリット46が形成されている。このため、車内側保持リップ根元部41と車内側側壁22との連続部分の肉厚は減少している。車内側保持リップスリット46の形状については、後述する。
【0067】
車内側保持リップスリット46の車内側側壁22側の面には、車内側保持リップ根元部41側の面に対向するように車内側側壁突起25が形成されている。
車内側保持リップ根元部41の開口側の面は、底壁23に向かう方向に凹状に湾曲して形成されている。車内側保持リップ根元部41のトリム部20の内側の面は底壁23に向かう方向に若干凸に湾曲して形成されている。
【0068】
車内側保持リップメインリップ42は、車内側保持リップ根元部41の先端から延設され、車内側保持リップメインリップ42のトリム部20の内側の面は、車内側保持リップ根元部41のトリム部20の内側の面と連続して、底壁23に向かう方向に若干凸に湾曲して形成されている。車内側保持リップメインリップ42の開口側の面は、その内側の面よりも斜め内部方向に(底壁23側に向かう方向に)角度を大きく形成され、そのため車内側保持リップメインリップ42は先端に行くにつれて肉厚が減少している。
【0069】
図2に示すように、車内側保持リップメインリップ42は、先端部にトリム部20の内部方向に斜めに屈曲した屈曲部44を設けてもよい。この場合には、フランジ7をトリム部20内に挿入するときに、車内側保持リップメインリップ42の屈曲部44が屈曲点で撓んで、フランジ7の挿入荷重が小さくなるとともに、屈曲部44がフランジ7の側面に当接する面積が大きくなり、フランジ7の抜け荷重が大きくなり、フランジ7の保持力が増加する。ここで、屈曲点は、屈曲部44が車内側保持リップメインリップ42から屈曲する開口側の表面の角の部分であり、車内側保持リップメインリップ42の先端45は、屈曲部44の先端となる。
【0070】
車内側保持リップサブリップ43は、上記した如く、車内側保持リップ根元部41の先端のトリム部20の開口側面から車内側保持リップメインリップ42に対して斜めにトリム部20の開口方向に形成される。車内側保持リップサブリップ43と車内側保持リップ根元部41の開口側の表面は連続しており、底壁23に向かう方向に凹んだ曲面を形成する。このため、薄いフランジ7を挿入する場合には、車内側保持リップサブリップ43の先端47がフランジ7に当接したときに、車内側保持リップサブリップ43がトリム部20の開口側を向くことができ、車内側保持リップメインリップ42の先端45又は屈曲点と車内側保持リップサブリップ43の先端47との距離が初期の寸法よりも短くなることがないため、トリム部20が回転しても、フランジ7を安定して保持することができる。
【0071】
車内側保持リップサブリップ43は、根元から先端47に行くにつれて徐々に肉厚が減少して形成される。また、車内側保持リップ根元部41との連続部分の車内側保持リップサブリップ43の根元部分の肉厚(図3に示すT2)よりも、車内側保持リップサブリップ43の全長が長く形成されている。このため、車内側保持リップサブリップ43の柔軟性が大きくなり、フランジ7の挿入荷重が小さくなるとともに、フランジ7に確実に当接することができる。
車内側保持リップサブリップ43は、車内側保持リップメインリップ42よりも短くて薄く形成されため、薄いフランジ7を挿入する場合に、車内側保持リップサブリップ43が挿入荷重を増加させることがない。
【0072】
図2に示すように、車内側保持リップサブリップ43の先端47は、車内側保持リップ根元部41と車内側側壁22の連続部分の内側端部(底壁23側の端部)である付け根49よりも開口側(底壁23から離れる側)に位置するように形成されている。図2における点線AAは、車内側保持リップサブリップ43の先端47から車内側側壁22に対して垂直に線を引いたものであり、付け根49は点線AAよりもトリム部20の内側(底壁23側の端部)に位置する。このため、車内側側壁22の内面の垂直面に対して、車内側保持リップサブリップ43の先端47が車内側保持リップ根元部41の車内側側壁22との連結部分よりも開口側に位置することができ、車内側保持リップ40がフランジ7の車内側の側面を安定して保持することができる。
【0073】
また、車内側保持リップサブリップ43の先端47がフランジ7に当接して、フランジ7から力が加わったときに、車内側保持リップ根元部41の車内側側壁22との連続部分で荷重を受けることができ、フランジ7の回転を防止して、車内側保持リップ40がフランジ7の車内側の側面を安定して保持することができる。
さらに、図2に示すように、車内側保持リップサブリップ43の先端47と車内側保持リップ根元部付け根49を結ぶ線(AA1)が常に車内側保持リップ40の断面上を通っていることが好ましい。この場合には、車内側保持リップサブリップ43の先端47に加わった力を車内側保持リップ40で直接受けることができ、車内側保持リップ40がフランジ7の車内側の側面を確実に、安定して保持することができる。
【0074】
また、図3に示すように、車内側保持リップ根元部41の肉厚(T)は、車内側保持リップメインリップ42の根元の厚さ(T1)と車内側保持リップサブリップ43の根元の厚さ(T2)との和と略同じである。車内側保持リップ根元部41の肉厚(T)は、2.0mm以上、4.0mm以下である。2.0mm未満では、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43の支持剛性が不足し、4.0mmを超える場合には、支持剛性が高くなりすぎるためである。なお、本実施の形態では、Tの厚さは2.6mmであり、T1の厚さは1.8mmであり、T2の厚さは0.8mmである。また、T2<T1であり、車内側保持リップサブリップ43は、車内側保持リップメインリップ42より薄く形成されている。そして、Tの厚さは、T1+T2の値の0.8〜1.2倍の間で変化して、Tの厚さは、最大値が4.0mm程度である。
このため、車内側保持リップ根元部41は、肉厚が大きく、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43を確実に保持することができる。また、フランジ7の肉厚が大きいときに、フランジ7を挿入した場合に、車内側保持リップサブリップ43の側面が突出して、挿入荷重が増大することがない。
【0075】
車内側保持リップメインリップ42の根元の厚さ(T1)は、車内側保持リップサブリップ43の根元の厚さ(T2)の約2倍であるため、フランジ7の肉厚が大きいときに、フランジ7の挿入時に、車内側保持リップメインリップ42の開口側面に当接して、フランジ7挿入力を低減することができる。
【0076】
図3に示すように、車内側保持リップメインリップ42の先端45と車内側保持リップサブリップ43の先端47との間の距離(A)が式(1)の関係であるように形成することが好ましい。更に望ましくは、Aの長さは2.5mm以上で10.0mm以下である。2.5mm未満では車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43によるフランジ7の保持力を得るには狭すぎるとともに、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43の成形も困難である。10.0mmを超える場合には、2つのリップが離れすぎて、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43自体の寸法が長くなり、撓みやすくなるため、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43によるフランジ7の保持力が不十分となる。なお、本実施の形態では、Aの長さは3.8mmであり、後述するWとW´は、W=3.3mmとW´=0.5mmである。
Lは、車内側保持リップ40(車内側保持リップメインリップ42の屈曲部44を含む)の全長であり、6mm以上がこのましい。本実施の形態では、9.1mmである。
角度θは、車内側側壁22と車内側保持リップメインリップ42のなす角度であり、60°≦θ<90°である。望ましくは、65°≦θ≦85°である。これは、θを90°未満に設定して、フランジ7を挿入する際に、車内側保持リップ40を倒れやすくして、挿入荷重を低下させるためである。また、60°以上に設定して、車内側保持リップ40の反力を確保して、フランジ7の抜け荷重を確保している。このため、フランジ7の挿入力と抜け力をバランスよく両立し、薄いフランジ7を挿入する場合でも、回転防止機能を確保することができる。
(数1)
2.5≦A≦(L ・cos θ)+W´ ・・・(1)
なお、L ・cos θ=Wであり、Wは、車内側保持リップメインリップ42の先端45と上記点線AAとの間の距離である。W´は、上記点線AAから車内側保持リップサブリップ43の先端47との間の距離であり、0.0mm<W´≦3.5mmである。
この場合には、車内側保持リップメインリップ42の先端45と車内側保持リップサブリップ43の先端47がフランジ7に当接して保持する幅が適正化され、より安定してフランジ7を保持することができる。
【0077】
図4に示すように、車内側保持リップ根元部41の全長(D)は、車内側保持リップ40(車内側保持リップメインリップ42の屈曲部44を含む)の全長(L)に対して式(2)の関係であるように形成することが好ましい。車内側保持リップ根元部41の全長(D)は、車内側保持リップスリット46の奥(図4に示すア点)から車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43の分岐の付け根(図4に示すイ点)までの長さである。なお、本実施の形態では、Dの長さは6.0mmであり、Lの長さは9.1mmである。
(数2)
1/4L≦D≦3/4L ・・・(2)
この場合は、車内側保持リップ根元部41が車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43を保持して、車内側保持リップ40の剛性を保持して、より安定してフランジ7を保持することができる。
また、ア点は、イ点よりも開口側にずれた位置に配置されることが好ましい。
【0078】
次に、図5に基づき、車内側保持リップスリット46について説明する。図5の形態では、車内側保持リップスリット46は、薄い平行面で形成されている。車内側保持リップ40の開口側への撓み防止の観点からは、車内側保持リップスリット46の厚さは薄い方が好ましいが、押出成形においては、あまり薄くすると、車内側保持リップスリット46が密着してしまうため、平行面の間隔(図5におけるB)は少なくとも略0.8mm程度必要である。
【0079】
後述するようにフランジ7がトリム部20から抜けるときに、車内側保持リップ40が開口側に撓んで、車内側保持リップスリット46が閉じて両側面が密着することにより、車内側保持リップ40の過度な撓みを防止して、フランジ7の抜け荷重を大きくすることができる。車内側保持リップスリット46の入口の車内側側壁22側の平行面には、車内側側壁突起25が形成され、車内側保持リップ40の過度な撓みを防止している。
【0080】
車内側保持リップ根元部41の車内側側壁22との付け根49は、最小の曲率半径で形成されている。車内側保持リップスリット46の奥と付け根49との間隔(図5におけるC)は、小さく形成されている。なお、本実施の形態では、Cの長さは1.0mmである。このため、フランジ7をトリム部20内に挿入するときに、車内側保持リップスリット46が開いて車内側保持リップ40が撓んでフランジ7の挿入荷重を小さくすることができ、特に厚いフランジ7の場合に有効である。
【0081】
次に、図6に基づき車内側保持リップスリット46と車内側側壁突起25の他の形態について説明する。図6の形態では、車内側保持リップスリット46は、平行ではなく、若干入口側が開いて形成され、車内側側壁22に形成された車内側側壁突起25がなだらかな突起として形成されている。このため、フランジ7が抜け出るときに車内側保持リップ40が開口側に若干撓みやすくなることができる。また、押出成形時に、押出ダイスの耐久性が向上し、押出成形が容易となる。
【0082】
次に、図7に基づき車内側保持リップスリット46と車内側側壁突起25の他の形態について説明する。図7の形態では、車内側保持リップスリット46は、平行ではなく、若干入口側が開いて形成され、車内側側壁22に形成された車内側側壁突起25が図6の形態よりも大きな突起として形成されている。このため、フランジ7が抜け出るときに車内側保持リップ40の撓みを図6の形態よりも若干小さくすることができ、フランジ7の抜け荷重を大きくすることができる。また、押出成形時に、押出ダイスの耐久性が向上し、押出成形が容易となる。
【0083】
次に、図8に基づき車内側保持リップスリット46と車内側側壁突起25の他の形態について説明する。図8の形態では、車内側保持リップスリット46は、平行ではなく、若干入口側が開いて形成され、車内側側壁22に形成された車内側側壁突起25が図6の形態よりも大きな突起として形成されるとともに、車内側保持リップスリット46の車内側保持リップ根元部41側面に車内側保持リップ根元部突起48がトリム部20の開口側に突出して形成されている。このため、フランジ7が抜け出るときに車内側保持リップ根元部突起48と車内側側壁突起25が当接する面積が大きく、車内側保持リップ40をより確実に保持して、開口側への撓みを少なくすることができるとともに、押出成形時に、押出ダイスの耐久性が向上し、押出成形が容易となる。
【0084】
次に、図9に基づきトリム部20に厚いフランジ7を挿入した状態について説明する。
上述のとおりフランジ7の厚さは、車体開口部周縁6の位置によりフランジ7を構成する板金の枚数により変化する。もっとも厚い場合は、図9のFで示す厚さである。この場合は、トリム部20の内部の幅(E)が、フランジ7の厚さ(F)と車内側保持リップ40の車内側保持リップ根元部41の厚さ(T)との和よりも少なくとも若干大きく形成されている。なお、本実施の形態では、Eの長さは9.0mmであり、Fの厚さは6.4mmである。
【0085】
フランジ7が挿入されると、図9に示すように、車内側保持リップ40は車内側側壁22の内面に密着して、フランジ7の車内側面を保持し、車外側面を車外側保持リップ30の第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33と車外側突起34で保持する。また、車内側保持リップサブリップ43がフランジ7の側面に当接して、車内側保持リップメインリップ42は、車内側保持リップサブリップ43と車内側側壁22の内面により挟持される。これにより、フランジ7が厚くても、車外側保持リップ30と車内側保持リップ40でフランジ7を確実に挟持することができる。
【0086】
フランジが薄い場合のフランジ7保持について、図10と11に基づき説明する。
トリム部20にフランジ7が挿入されると、フランジ7の車外側側面は、車外側保持リップ30の第1車外側保持リップ31、第2車外側保持リップ32、第3車外側保持リップ33で保持する。フランジ7の車内側側面は、車内側保持リップ40の車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43で保持する。
【0087】
このため、図10に示すように、フランジ7が長い場合には、車内側保持リップメインリップ42と車内側保持リップサブリップ43でフランジ7の車内側面を2点で幅広く保持することができる。トリム部20がフランジ7に対して時計方向に回転するように揺動しても、フランジ7の先端(底壁23側の端部)近傍が車外側突起34と当接し、また、車内側保持リップサブリップ43と車外側突起34の間の距離Gが大きいため、トリム部20の回転を防止して、安定してフランジ7を保持することができる。なお、本実施の形態では、Gの長さは11.0mmである。フランジ7が短い場合や、車外側突起34が形成されていない場合でも、第3車外側保持リップ33がフランジ7の先端を保持して、安定してフランジ7を保持することができる。
【0088】
また、図11に示すように、車内側保持リップメインリップ42の先端45を中心に反時計方向に揺動しても、第1車外側保持リップ31と車内側保持リップメインリップ42の先端45の間の距離Hが大きいため、回転を防止して、安定してフランジ7を保持することができる。なお、本実施の形態では、Hの長さは6.5mmであり、さらに、トリム部20が回転していない時は、車内側保持リップメインリップ42の先端45と、第1車外側保持リップ31と車内側保持リップメインリップ42の先端との3点にてバランスよくフランジ7を保持することができる。
【0089】
オープニングトリムウエザストリップ10において、中空シール部50は、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマーのスポンジ材で形成され、トリム部20、車外側保持リップ30及び車内側保持リップ40は、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマーのソリッド材または微発泡材で形成される。この場合には、耐候性のよい製品を得ることができる。また、この場合は、オープニングトリムウエザストリップ10は全体としてオレフィン系でありそのまま一緒に粉砕等を行い、リサイクルして使用することができる。
なお、薄いフランジ7の場合における回転の抑制については、
A=L・cosθ+W´
−1.0mm≦W´
の場合でも成立し、その際は、W´=0.5mm±1.5mmとすることが望ましい。
【0090】
次に、オープニングトリムウエザストリップ10の製造方法を説明する。
このオープニングトリムウエザストリップ10は、押出成形により成形され、トリム部20を構成するソリッド材、インサート24と中空シール部50を構成するスポンジ材を押出成形機で一体に押出すことができる。
その後、ゴム材の場合には、通常の方法により加硫を行い、1本分の所定長さに切断される。
【符号の説明】
【0091】
6 ドア開口部周縁
7 フランジ
10 ドアオープニングトリムウエザストリップ
20 トリム部(取付基部)
21 車外側側壁
22 車内側側壁
25 車内側側壁突起
23 底壁
30 車外側保持リップ
40 車内側保持リップ
41 車内側保持リップ根元部
42 車内側保持リップメインリップ
43 車内側保持リップサブリップ
46 車内側保持リップスリット
48 車内側保持リップ根元部突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体開口部開閉部材と自動車の車体開口部周縁との間をシールするウエザストリップにおいて、
該ウエザストリップは、上記車体開口部開閉部材又は車体開口部周縁のいずれか一方の部材に設けられているフランジに取付けられる取付基部と、該取付基部に一体的に設けられ、他方の部材である車体開口部周縁又は車体開口部開閉部材に当接して上記車体開口部開閉部材と上記車体開口部周縁との間をシールするシール部を有し、
上記取付基部は、車外側側壁、車内側側壁及び底壁からなる断面略U字形に形成され、
上記車外側側壁の内面に複数の車外側保持リップを設け、
上記車内側側壁の内面に車内側保持リップを上記取付基部の内部方向に斜めに設け、該車内側保持リップは、上記車内側側壁の内面から延設する車内側保持リップ根元部と、該車内側保持リップ根元部の先端から連続して上記車内側保持リップ根元部の延長方向に形成される車内側保持リップメインリップと、上記車内側保持リップ根元部の先端の上記取付基部の開口側面から上記車内側保持リップメインリップに対して斜めに上記取付基部の開口方向に形成される車内側保持リップサブリップを形成し、該車内側保持リップサブリップは、上記車内側保持リップメインリップよりも短く形成されるとともに、上記車内側保持リップサブリップの先端は、上記車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の上記取付基部の内側端部よりも開口側に位置するように形成されたことを特徴とする自動車用ウエザストリップ。
【請求項2】
上記車内側保持リップサブリップの先端は、上記車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の上記取付基部の内側端部と、上記車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の上記取付基部の開口側端部との間に位置するように形成された請求項1に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項3】
上記車内側保持リップサブリップは、上記取付基部の開口側の面が底壁方向に向かって凹むように湾曲して形成された請求項1又は請求項2に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項4】
上記車内側保持リップサブリップは、根元から先端に行くにつれて徐々に肉厚が減少して形成されるとともに、上記車内側保持リップ根元部との連続部分の肉厚よりも、全長が長く形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項5】
上記車内側保持リップメインリップの先端と上記車内側保持リップサブリップの先端の間に、上記車外側保持リップのうちの1本の先端が位置する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項6】
上記車内側保持リップメインリップは、先端部に上記取付基部の内部方向に斜めに屈曲した屈曲部を有する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項7】
上記車内側保持リップは、1本である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項8】
上記車内側保持リップ根元部と車内側側壁の連続部分の上記取付基部の開口側端部から連続部分の内部方向に車内側保持リップスリットが形成された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項9】
上記車内側保持リップスリットの入口付近の上記車内側側壁の表面又は上記車内側保持リップ根元部の上記車内側側壁との対向面に突部が形成された請求項8に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項10】
上記取付基部が上記フランジに取付けられたときに、上記車外側保持リップと上記車内側保持リップの先端は、フランジの側面にそれぞれ当接する請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項11】
上記取付基部の車外側側壁、車内側側壁及び底壁にはインサートが埋設された請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項12】
上記車外側側壁の内面の上記底壁との連続部分付近に突起が形成された請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
【請求項13】
上記車内側保持リップメインリップの先端と車内側保持リップサブリップの先端との間の距離(A)が下記式(1)の関係である請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
(数1)
2.5≦A≦(L・ cos θ)+W´ ・・・(1)
Lは、車内側保持リップ(車内側保持リップメインリップの屈曲部を含む)の全長であり、角度θは、車内側側壁と車内側保持リップメインリップのなす角度である。
Wは、車内側保持リップメインリップの先端と点線AAとの間の距離であり、W´は、点線AAから車内側保持リップサブリップの先端との間の距離である。点線AAは、車内側保持リップサブリップの先端から車内側側壁に対して垂直に線を引いたものである。
【請求項14】
上記車内側保持リップ根元部の長さ(D)は、上記車内側保持リップの全長(L)に対して下記式(2)の関係である請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。
(数2)
1/4L≦D≦3/4L ・・・(2)
【請求項15】
上記車体開口部開閉部材はドアであり、上記ウエザストリップは、オープニングトリムウエザストリップである請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の自動車用ウエザストリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate