説明

自動車用ウエザストリップ

【目的】 互に平行な二重のシール部と、両シール部間に形成した水抜き用の溝を有し、自動車のドア開口縁に取付けられるウエザストリップにおいて、特にその端末部でドアが過度に押付けられてもシール部によって溝が塞がれることのない構造とすることである。
【構成】 ウエザストリップ端末部4のシール部41,42間に形成した溝43の裏面側に、シール部42が押込まれたときに溝43形成部を下方へ変位させて溝43の開塞を防ぐ空間部45を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車用ウエザストリップ、特に自動車のドア開口縁のルーフサイドに沿う部分に取付けられるウエザストリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】サッシュレスドアを備えた自動車では、図1に示すように、センタピラーを含むルーフサイド10に沿うドア開口縁にウエザストリップ3が取付けられ、ドア閉時に前後のドアガラス2A,2Bの周縁をシールするようになっている。ウエザストリップ3は押出成形され、各下部端末には型成形の端末部4が接続されている。
【0003】ウエザストリップ3としては図2(図1のA部を示す)に示すように、長手方向に延びる平行な中空状の第1のシール部31とリップ状の第2のシール部32を備え、両シール部31,32間に凹状の溝33が形成された二重シール構造のものが一般に用いられている。
【0004】図8(A)は従来の端末部4Aの図2のCーC線位置での断面を示すもので、第1のシール部41aはウエザストリップ3の第1のシール部31との接続部分では中空ではあるが下部は山形の板状となり、リップ状の第2のシール部42aとの間に、ウエザストリップ3の溝33と連通する溝43aが形成されている。図において、40は端末部4Aのボデーパネル7への取付けを強固にするために端末部4Aに埋設されたプレート状のインサーである。
【0005】上記の構造において、ドアガラス2Bとウエザストリップ3の第1のシール部31との間から溢れて侵入した水は溝33,43aを流下して排出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図1に示すようにドア1A,1Bの本体部にはその外周にドアウエザストリップ5が取付けられており、その上端の各端末部6がドア閉時にウエザストリップ3の各端末部4に圧接するようになっている。従って、端末部4では、ウエザストリップ3におけるドアガラス2A,2Bの押付力よりも強い押付力を受けることになる。このため、ドア建付けバラツキによっては従来の端末部4Aでは図6(B)に示すように、リップ状の第2シール部42aが過度に倒されて溝43aを塞ぎ、排水が不完全となるおそれがある。
【0007】そこで本発明は、ドア建付けのバラツキでドア取付け位置が車内側にづれても、端末部の溝において確実に排水がなされ得るウエザストリップを提供することを課題としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、図2に示すように、二重シール構造を有するウエザストリップ3において、図3および図4に示すように端末部4の第1および第2のシール部41,42の間に形成された溝43の裏面側に空間部45を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0009】また本発明は図5および図6に示すように、ウエザストリップ3の押付力が作用したときに溝43側へ押込まれるシール部42を中空状に形成するとともに、該シール部42の根元部423,424の上記押付力に対する剛性を他の部分よりも高くしたことを特徴とする(請求項2)。
【0010】
【作用】図3(B)に示すようにドア閉時、シール部42が過度に押込まれても、その押込み力は空間部45により吸収され、シール部42の倒れ込みで溝43が塞がれるのを防止する。
【0011】また図5および図6に示すように、シール部42はその上面部421が押込まれても上面部421が下面部422に当接するまでは倒れず、当接後に倒れ込んでも根元部423,424の剛性により溝5を塞ぐには至らない。
【0012】
【実施例】図2および図3は本発明の第1の実施例を示すもので従来構造との相違点を中心に説明する。
【0013】中空状の第1シール部31と、リップ状の第2のシール部32と、これ等の間に形成された溝33を備えた押出成形のウエザストリップ3の下端には型成形の端末部4が接続してある。
【0014】端末部4はウエザストリップ3と接続する直線部分ではウエザストリップ3と同一の断面形状をもつが、先端側は全体がひれ状となっている。端末部4の第1のシール部41は直線部のみが中空状となっている。第2のシール部42はウエザストリップ3と接続する直線部はリップ状であり、その先は中空状となっている。両シール部41,42間にはウエザストリップ3の溝33に連通する溝43がある。溝43は端末部4の先端部で終り、縁端は次第に浅くなっている。端末部4は直線部と平板状の先端縁部との間が図3(A)に示すように中空状としてあって、第2のシール部42が突出し、凹状の溝43が形成された上面部と、インサート40が埋設された底面部44との間が空間部45となっている。端末部4はその幅方向両側で自動車のボデーパネル7にボルト等で固定される。なお、46は空間部45を成形するための中子の抜き穴である。
【0015】しかして、上記のように形成された端末部4において、ドア1B(図1)が閉じられると、図3(B)に示すようにドアウエザストリップ5の端末部6により押付けられる。これにより第2のシール部42は倒れ込むが、それに伴なって溝43が形成された部分も下方へ変位する。従って、溝43は第2のシール部42によって塞がれることはない。
【0016】図4は本発明の第2の実施例を示すもので、端末部4は第1の実施例とは異なり底面部44を有せず一枚構造であり、ボデーパネル7への取付状態においてボデーパネル7との間に空間部45が形成されている。
【0017】しかして、上記いずれの実施例においても、ドア建付けバラツキでドア取付け位置が若干車内側にずれ、第2のシール部42が過度に押込まれても溝43は塞がれることなく、排水作用が確保される。
【0018】図5は本発明の第3の実施例を示すものである。第1の実施例(図3)と比較すると、第2のシール部42は中空状となっているが、溝43の裏面側にはボデーパネル7との間に空間部は設けられていない。そして第2のシール部42の溝43側の根元部423は、他の部分よりも厚肉として剛性が高くしてある。
【0019】図6は本発明の第4の実施例を示すものである。第2の実施例(図4)と比較すると、第2のシール部42は中空状であるが、溝43の裏面側にはボデーパネル7との間に中空部は設けられていない。そして第2のシール部42の溝43側の根元部424は、押付部材6の押付方向に対してほぼ直角方向に形成し、押付力に対する剛性が強化してある。
【0020】しかして上記第4および第5の実施例においては、第2のシール部42が押付部材6で押付けられると、中空状とした第2のシール部42の上面部421は変形するが溝43は変形しない。そして、更に、押付けられて上面部421と下面部422が重なり、そして更に強く押付けられたとしても、根元部423,424の剛性で溝43は塞がれない。なお、たとえ第2のシール部42の先端が第1のシール部41側に接するまで押込まれたとしても、溝43はトンネル形状に確保され、排水は可能である。
【0021】なお、第1の実施例のように端末部4を中空状とする場合、型成形は中子を用いて行われる。中子は成形後に抜き取られるが、インサート40が埋設されているので端末部4の変形が制約され、抜き取り作業がやりにくく、無理に抜き出すと抜き穴まわりに亀裂ができる。
【0022】そこで図7に示すように中子抜き穴を抜き穴46(従来の抜き穴)と抜き穴47とでT字状にすれば、抜き取り作業が容易になるとともに抜き穴まわりに亀裂が生じるようなことはない。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、互に平行な二重のシール部を有し、両シール部間に水抜き用の溝を形成した、ドア開口縁に沿うウエザストリップにおいて、ドアの建付けバラツキでシール部が過度に押付けられることがあっても、溝がシール部によって塞がれることなく、排水は確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウエザストリップの全体形状を示す図である。
【図2】本発明のウエザストリップ端末部の図1のA部の斜視図である。
【図3】図2のC−C線に沿う位置でのドア開時およびドア閉時の第1の実施例の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例の図2のC−C線に沿う位置でのドア開時の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例の図2のCーC線に沿う位置でのドア開時およびドア閉時に断面図である。
【図6】本発明の第4の実施例の図2のCーC線に沿う位置でのドア開時およびドア閉時の断面図である。
【図7】本発明のウエザストリップ端末部のインサートおよび中子抜き穴の形状を示す図である。
【図8】従来のウエザストリップの図3対応図である。
【符号の説明】
1A,1B ドア
10 ルーフサイド
2A,2B ドアガラス
3 ウエザストリップ
4 ウエザストリップ端末部
31,41 第1のシール部
32,42 第2のシール部
33,43 溝
423,424 第2のシール部の根元部
45 空間部
5 ドアウエザストリップ
6 ドアウエザストリップ端末部
7 ボデーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車のドア開口のルーフサイドに沿って取付けられるウエザストリップであって、長手方向に互に平行に延びるシール部を有し、両シール部間に凹状の溝が形成されたウエザストリップにおいて、ウエザストリップの端末部における溝形成部の裏面側に、シール部に押付力が作用したときに上記溝形成部の下方への変位を許容する空間部を形成したことを特徴とする自動車用ウエザストリップ。
【請求項2】 自動車のドア開口のルーフサイドに沿って取付けられるウエザストリップであって、長手方向に互に平行に延びるシール部を有し、両シール部間に凹状の溝が形成されたウエザストリップにおいて、ウエザストリップの端末部で、押付力が作用したときに溝側へ押込まれるシール部を中空状に形成するとともに、該シール部の根元部の押付力に対する剛性を他の部分よりも高くしたことを特徴とする自動車用ウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平6−127315
【公開日】平成6年(1994)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−304954
【出願日】平成4年(1992)10月16日
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)