説明

自動車用ウエストモールディング

【課題】 タッチリップのドアガラスヘの反力を常に高くすることなく、ドアガラスの通常の昇降時の抵抗を小さくし、ドアガラスの全閉位置から開放に向かう際のタッチリップの復元力を大きくすることができ、ドアガラスヘの追従性の良い自動車用ウエストモールディングを提供する。
【解決手段】 ドアパネル4に取付けられるモールディング本体11に、その車内側の側面よりドアガラス4に向かって斜め上方に延出するタッチリップ12a、12bを有するウエストモールディング1であって、タッチリップ12aには中間部からモールディング本体11側に延出するサブリップ10aが形成され、ドアガラス4の全閉位置付近において、モールディング本体11に接触し、サブリップ10aの弾性力によりタッチリップ12aの先端側をドアガラス4側に押圧するように構成された自動車用ウエストモールディング1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアパネルの上端に取付けられるウエストモールディング、特にドアガラスに対する摺接部材としてタッチリップを有するウエストモールディングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアパネルの上端には、ドアガラスに対する摺接部材としてウエストモールディングが取付け配置されている。上記ウエストモールディングは、ドアパネル上端のフランジ部にクリップ等の取付手段により、あるいはそれらの取付手段を用いることなく取り付けられる装飾部品であり、断面略U字形に形成されたモールディング本体と、モールディング本体の車内側よりドアガラスに向けて斜め上向きに突出する弾性材からなるタッチリップを有する。上記タッチリップは、ドアガラスの昇降時にドアガラスを摺接押圧することにより、ドア内部へ雨水や埃が侵入するのを防止するとともに、ドアガラスについた雨水を払拭するように設けられている。
【0003】
図4(a)は特許文献1(特開2004−82760)に示されたものと類似な従来のウエストモールディングの断面図である。ウエストモールディング1は、ドアパネル2の上部フランジ3を上から覆うように取り付けられるモールディング本体11からタッチリップ12a、12bがドアガラス4に当接するように伸びている。ドアパネル2は、外パネル2aと内パネル2bが上部で重ねられ、さらに外パネル2aが反対側に折り曲げられて重ねられ、全体が接合されてフランジ3を形成しており、折り曲げられた外パネル2aの先端が係止部7となっている。
【0004】
モールディング本体11は、フランジ3を上から覆う上壁部11aの車内側から内壁部11bが、また車外側から外壁部11cがそれぞれ下向きに伸び、横断面略倒立U字状の形状となっており、上壁部11a、内壁部11bおよび外壁部11cの全域にわたる横断面形状の金属板のロール成形品からなる芯材21と、その内壁部11bの車内側の全域および車外側の開口部5側に一体的に形成された樹脂部22から構成されている。タッチリップ12a、12bは軟質樹脂、ゴム等の弾性材料から構成され、硬質樹脂部22からドアガラス4に当接するように伸びている。
【0005】
モールディング本体11の内壁部11bの先端部は芯材21および硬質樹脂部22の複合体として開口部5側に折れ曲がって突出して係止部11dとなり、フランジ3の係止部7と係合するように構成されている。モールディング本体11の内壁部11bの内部空間6側から、硬質樹脂からなる突起部13a、13bがフランジ3に当接するように伸びている。またモールディング本体11の上壁部11aと内壁部11bの境界部から車内側に装飾リップ14が伸びている。モールディング本体11の外壁部11cの内部空間6側から、係止リップ15がフランジ3に当接するように伸びている。外壁部11cの下端部から鉤状に折り返された折返し部11eから、片状の緩衝リップ16が外パネル2aの段部2c側に伸びている。
【0006】
上記のウエストモールディング1は、モールディング本体11の開口部5から内部空間6にドアパネル2のフランジ3を挿入するように下向きに押し込むと、フランジ3を上から覆うように組み付けられる。組付状態においては、モールディング本体11から突出する係止部11dは、フランジ3の係止部7に機械的に係合してモールディング1が脱離するのを防止する。また突起部13a、13bが内壁部11b側からフランジ3に当接し、車内側からの力を支持する。タッチリップ12a、12bは、摺動するドアガラス4に当
接してシールする。緩衝リップ16は押圧により変形して外パネル2aの段部2cに当接し緩衝作用を行う。
【0007】
上記のタッチリップ12a、12bは、ドアガラス4の昇降時にドアガラス4を摺接押圧することにより、ドア内部へ雨水や埃が侵入するのを防止するとともに、ドアガラス4についた雨水を払拭するように設けられている。このようにタッチリップ12a、12bがドアガラス4を摺接押圧するためには、ドアガラス4の動きに追従してタッチリップ12a、12bが弾性変形する必要がある。
【0008】
このためタッチリップ12a、12bの材料として、軟質樹脂、ゴム等の弾性材料が用いられている。ところが自動車の使用環境によっては、上記リップの弾性力が弱まり、ドアガラスの動きに追従しなくなるという問題があった。特に寒冷地では、寒冷時にリップの弾性力が弱まってドアガラスの動きに追従しなくなると、ドア内部へ雨水や埃が侵入するのを防止できなくなり、またドアガラスの開閉に伴って雨水を払拭できなくなる。このような問題は、リップ部を太くしたり、材料の硬度をあげることにより、ドアガラスに対する反力を上げれば解決可能であるが、ドアガラスの昇降時の抵抗が常時大きくなってしまうため、昇降の妨げとなり、昇降するための機械の大型化が必要となったり、モールの磨耗が早くなってしまうという問題があった。
【0009】
図4(b)は特許文献2(特開2004−130961)に示されたものと類似な従来のウエストモールディングを示す断面図である。特許文献2のタッチリップ12a、12bは、それぞれの中間部からサブリップ10a、10bがモールディング本体11の内壁部11bに向けて突出しており、タッチリップ12a、12bの先端部がドアガラス4に押接しているときには、サブリップ10a、10bの先端部が内壁部11bに押接するように構成されている。
【0010】
図4(b)のウエストモールディングでは、タッチリップ12a、12bの先端部がドアガラス4に押接して弾性変形するとき、サブリップ10a、10bの先端部が内壁部11bに押接してタッチリップ12a、12bを支え、タッチリップ12a、12bが基部で弾性変形を繰返すことによる弾性劣化を防止している。このように特許文献2では、タッチリップ12a、12bの先端部がドアガラス4に押接しているときには、常にサブリップ10a、10bの先端部が内壁部11bに押接するように構成されているので、図4(a)のウエストモールディングにおいてリップ部を太くしたり、材料の硬度をあげた場合と同様に、ドアガラスの昇降時の抵抗が常時大きくなってしまうため、昇降の妨げとなり、昇降するための機械の大型化が必要となったり、モールの磨耗が早くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−82760
【特許文献2】特開2004−130961
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みてなされたものであり、タッチリップのドアガラスヘの反力を常に高くすることなく、ドアガラスの通常の昇降時の抵抗を小さくし、ドアガラスの全閉位置から開放に向かう際のタッチリップの復元力を大きくすることができ、ドアガラスヘの追従性の良い自動車用ウエストモールディングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は次の自動車用ウエストモールディングである。
(1) ドアパネルに取付けられるモールディング本体と、このモールディング本体の車内側の側面よりドアガラスに向かって斜め上方に延出するタッチリップを有するウエストモールディングであって、
前記タッチリップには、中間部からモールディング本体側に延出するサブリップが形成され、
前記サブリップは、ドアガラスの全閉位置付近において、前記モールディング本体に接触し、
前記サブリップの弾性力により前記タッチリップの先端側を前記ドアガラス側に押圧するように構成されていることを特徴とする自動車用ウエストモールディング。
(2) 複数のタッチリップを有し、その内少なくとも1個のタッチリップにサブリップが形成されている上記(1)記載のウエストモールディング。
(3) ドアガラスが全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の70%以上移動した位置で、サブリップがモールディング本体に接触するように構成されている上記(1)または(2)記載のウエストモールディング。
(4) タッチリップは、サブリップ基部より基端側部の厚さが先端側部の厚さよりも厚くされている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のウエストモールディング。
(5) サブリップは、モールディング本体側に凸となるように湾曲状に形成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のウエストモールディング。
(6) サブリップ基部は、タッチリップの先端側に接続する先端側接続部が湾曲状に形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のウエストモールディング。
【0014】
本発明の自動車用ウエストモールディングは、自動車のドアパネルの上端に取付けられるウエストモールディングであり、ドアパネル上端のフランジ部にクリップ等の取付手段により、あるいはそれらの取付手段を用いることなく取り付けられる装飾部品である。本発明の自動車用ウエストモールディングは、ドアパネルのフランジ部を上から覆うように形成されたモールディング本体、およびこのモールディング本体の車内側の側面よりドアガラスに向かって斜め上方に延出するタッチリップを有するが、この他にドアパネルと対向する部分に設けられる緩衝リップや装飾リップ、ならびにモールディング本体をドアパネルに固定する固定手段などを有していても良い。
【0015】
本発明の自動車用ウエストモールディングが取り付けられる自動車のドアパネルは、外パネルと内パネルが上部で重ねられて上部フランジが形成されたものである。そしてウエストモールディングは、上記の上部フランジの上端を上から覆うように組み付けられるモールディング本体およびタッチリップを有する。モールディング本体は、上部フランジを上から覆う上壁部の車内側から内壁部が、また車外側から外壁部がそれぞれ下向きに伸びる構成となっている。モールディング本体は樹脂、金属等の硬質材料からなる長尺材により形成されるのが好ましく、この長尺材にリップ、緩衝部等の軟質樹脂部が一体化していても良い。
【0016】
タッチリップは、モールディング本体の車内側の側面よりドアガラスに向かって斜め上方に延出するように形成されたリップであり、ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、ゴム等の弾性および形状保持性を有する軟質樹脂などの弾性材料により形成されている。タッチリップには、中間部からモールディング本体側に延出するサブリップが一体的に形成されている。このサブリップは、ドアガラスの全閉位置付近において、モールディング本体に接触し、この接触した状態でサブリップの弾性力により、タッチリップの先端側をドアガラス側に押圧するように構成されている。
【0017】
サブリップがドアガラスの全閉位置付近においてモールディング本体に接触するという
のは、ドアガラスが全閉位置付近を離れた位置で開閉動作するときは、サブリップがモールディング本体に接触しない状態にあり、ドアガラスは小さい抵抗で開閉動作を行うことを意味する。従ってサブリップがモールディング本体に接触する位置範囲は、サブリップの復元性とシール性が得られる限度で可能な限り小さいのが好ましい。
【0018】
サブリップがモールディング本体に接触する位置範囲としては、ドアガラスが全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の70%以上、好ましくは80%以上移動した位置で、サブリップがモールディング本体に接触するように構成することができる。この場合、サブリップがモールディング本体に接触し始める位置範囲としては、ドアガラスが全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の70〜95%、好ましくは80〜90%移動した位置とすることができる。
【0019】
タッチリップにサブリップを形成するのは、特に寒冷条件下において、ドアガラスの全閉位置付近において折り重ねられたサブリップの復元力を利用してタッチリップに復元力を付与し、ドアガラスの移動に対するタッチリップの追従性を確保するためである。このためにはタッチリップは、サブリップ基部より基端側部の厚さが先端側部の厚さよりも厚くされている構造が好ましい。またサブリップは肉厚の状態で、モールディング本体側に凸となるように湾曲状に形成されているのが好ましい。さらにサブリップ基部は、タッチリップ先端側に接続する先端側接続部が湾曲状に形成されているのが好ましく、このような構造により、サブリップの復元力をさらに大きくすることができる。
【0020】
本発明のウエストモールディングは、金属板をロール成形した芯材を押出成形機に供給し、溶融樹脂を押し出して樹脂部および他のリップとともに、サブリップを有するタッチリップを形成することにより製造される。サブリップはタッチリップと一体的に形成されるが、サブリップの形状、寸法、形成位置などは、上記のようにドアガラスの全閉位置付近において、サブリップがモールディング本体に接触するように決められる。
【0021】
本発明のウエストモールディングは、タッチリップを1個または複数有することができる。複数のタッチリップを有する場合、すべてのタッチリップが上記サブリップを有するものでもよく、また一部のタッチリップが上記サブリップを有するものでもよい。ウエストモールディングが複数のタッチリップを有し、その内少なくとも1個のタッチリップにサブリップが形成されているものは、ドアガラスの開閉時の抵抗が小さくなるので好ましい。
【0022】
本発明の自動車用ウエストモールディングは、ドアパネルの外パネルと内パネルが上部で重ねられて形成される上部フランジに組み付けられるが、そのとき上部フランジをモールディング本体の上壁部が上から覆い、内壁部が車内側、外壁部が車外側にそれぞれ下向きに伸びるように組み付ける。組付状態では、タッチリップは、モールディング本体の車内側の側面よりドアガラスに向かって斜め上方に延出し、タッチリップの中間部から、サブリップがモールディング本体側に延出するように形成される。
【0023】
ドアガラスの全開状態では、タッチリップはドアガラスに接触していても、接触していなくてもよいが、タッチリップがドアガラスに接触する場合は、タッチリップが弾性変形して接触するように、タッチリップの自然状態における存在位置を横切る位置をドアガラスが昇降するように、タッチリップとドアガラスの位置関係を定める。サブリップはドアガラスの全閉位置付近においてモールディング本体に接触するが、それ以外の位置では接触しないように位置関係を定める。
【0024】
すなわちドアガラスの全開状態では、タッチリップはドアガラスに接触していても、接触していなくてもよいが、ドアガラスが上昇するのに応じてタッチリップはドアガラスに
接触する。一方、サブリップはドアガラスの全開状態では、モールディング本体に接触しない状態にあり、ドアガラスが上昇して全閉位置付近に達すると、ドアガラスは上昇するに伴って車幅方向に移動するので、タッチリップがモールディング本体側に移動し、サブリップの先端部がモールディング本体に接触を開始する。さらにドアガラスが上昇するに従って、サブリップは弾性変形し、サブリップの弾性力によりタッチリップの先端側をドアガラス側に押圧するように構成されている。
【0025】
ドアガラスの全閉位置付近においては、サブリップはタッチリップに折り重ねられた状態で圧縮され、シール性が得られるため、雨水や埃のドア内部への侵入が防止される。ドアガラスが全閉位置から開放されると、サブリップはその復元力によりモールディング本体から離れ、その弾性力によりタッチリップの先端側をドアガラス側に押圧することにより、タッチリップが全閉位置から復元し、ドアガラスに追従して元の形状に復元する。これは寒冷条件下において、タッチリップの材料の弾性が低下する場合でも、その構造的な要因により復元力が得られるものと推測される。
【0026】
このようにサブリップの復元力を利用してタッチリップに復元力を付与し、ドアガラスの移動に対するタッチリップの追従性を確保するので、サブリップがドアガラスに接触して機能するのはドアガラスの全閉位置付近であればよく、他の位置ではサブリップがドアガラスに接触しないため、ドアガラスは小さい抵抗で開閉動作を行うことができる。従ってサブリップおよびタッチリップは、肉厚に形成したり、特別な材料を用いてドアガラスヘの反力を常に高くする必要はなく、昇降するための機械の大型化も必要でない。このような自動車用ウエストモールディングは、寒冷地、寒冷時などにおいてリップの弾性力が弱まる場合に有効であるが、他の地域、時期等においても有効に利用できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の自動車用ウエストモールディングは、タッチリップの中間部からモールディング本体側に延出するサブリップが形成され、サブリップはドアガラスの全閉位置付近において、モールディング本体に接触し、サブリップの弾性力によりタッチリップの先端側をドアガラス側に押接するように構成されているため、タッチリップのドアガラスヘの反力を常に高くすることなく、ドアガラスの通常の昇降時の抵抗を小さくし、ドアガラスの全閉位置から開放に向かう際のタッチリップの復元力を大きくすることができ、ドアガラスヘの追従性の良い自動車用ウエストモールディングが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は実施形態のウエストモールディングの断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は実施形態のウエストモールディングの異なるドアガラスの開閉時における状態を示す断面図である。
【図3】図3は実施例1のリップ反力を示すグラフである。
【図4】図4(a)、(b)は従来のウエストモールディングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1は実施形態のウエストモールディングの組み付け前の状態、図2(a)〜(d)はドアガラスのそれぞれ異なる開閉時におけるウエストモールディングの状態を示しており、各図中、図4と同一または相当部分には同一符号を付している。
【0030】
図1のウエストモールディングの基本的な構成は図4のものとほぼ同様の構成となっている。すなわちウエストモールディング1は、ドアパネル2の上部フランジ3を上から覆うように取り付けられるモールディング本体11からタッチリップ12a、12bがドアガラス4に当接するように伸びている。ドアパネル2は、外パネル2aと内パネル2bが上部で重ねられ、全体が接合されてフランジ3を形成している。
【0031】
モールディング本体11は、フランジ3を上から覆う上壁部11aの車内側から内壁部11bが、また車外側から外壁部11cがそれぞれ下向きに伸び、横断面略倒立U字状の形状となっている。上壁部11a、内壁部11bおよび外壁部11cの全域にわたる金属板のロール成形品からなる芯材21の内壁部11bの車内側の全域には、樹脂部22がタッチリップ12a、12bおよび装飾リップ14と一体的に形成されている。芯材21の外壁部11cの車外側には、樹脂部23が緩衝リップ16と一体的に形成されている。
【0032】
タッチリップ12a、12bはモールディング本体11の内壁部11bの車内側の側面よりドアガラス4に向かって斜め上方に延出するように形成されている。下側のタッチリップ12aは、内壁部11bに対向する面の中間部からモールディング本体11の内壁部11b側に、斜め上方に向かって延出するサブリップ10aが一体的に形成されている。このサブリップ10aは、ドアガラス4の全閉位置付近において、モールディング本体11の内壁部11bに接触し、この状態でサブリップ10aの弾性力により、タッチリップ12aの先端側をドアガラス4側に押圧するように構成されている。
【0033】
サブリップ10aがモールディング本体11の内壁部11bに接触する位置範囲としては、ドアガラス4が全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の80〜90%移動した位置でサブリップ10aがモールディング本体11の内壁部11bに接触し始めるように位置関係が設定されている。
【0034】
タッチリップ12aは、サブリップ基部9(サブリップ10aが形成されている部分)よりも基端側部9aの厚さが先端側部9bの厚さよりも厚くされている。またサブリップ10aは同じ肉厚の状態で、モールディング本体側11に凸となるように湾曲状に形成されている。またサブリップ基部9は、タッチリップ12aの先端側に接続する先端側接続部9cが湾曲状に形成されており、このような構造により、サブリップ10aの復元力が大きくされている。
【0035】
上記の自動車用ウエストモールディング1は、図示しない取付クリップによりドアパネル2の上部フランジ3に組み付けられるが、そのとき上部フランジ3をモールディング本体11の上壁部11aが上から覆い、内壁部11bが車内側、外壁部11cが車外側にそれぞれ下向きに伸びるように組み付ける。組付状態では、タッチリップ12a、12bは、モールディング本体11の内壁部11bの車内側の側面よりドアガラス4に向かって斜め上方に延出し、タッチリップ12aの中間部から、サブリップ10aがモールディング本体11の内壁部11b側に、斜め上方に向かって延出するように組み付けられる。
【0036】
図2(a)はドアガラス4が全開位置、(b)はドアガラス4が最も多く位置する通常位置、(c)はサブリップ10aが接触し始める位置、(d)は全閉位置における状態を示している。このようにドアガラス4は全開位置から全閉位置に移動するに伴って、車幅方向に移動するように設定されている。図2(a)のドアガラス4が全開位置では、タッチリップ12a、12bは自然状態にあるが、ドアガラス4は自然状態におけるタッチリップ12a、12bが存在する位置を横切る位置で昇降するように、タッチリップ12a、12bとドアガラス4の位置関係が定められている。サブリップ10aはドアガラス4の全閉位置付近においてモールディング本体11に接触するが、それ以外の位置では接触しないように位置関係を定められている。
【0037】
図2(b)はドアガラス4の通常位置における状態を示しており、タッチリップ12a、12bの先端部はドアガラス4に接触しているが、サブリップ10aはモールディング本体11に接触していない。ドアガラス4が全閉位置付近以外に位置する場合は、ほぼこれと同様の状態になる。これらの状態では、ドアガラス4はサブリップ10aによる反力を受けることはなく、抵抗が小さい状態で昇降する。
【0038】
図2(c)はドアガラス4が全閉位置付近に達し、サブリップ10aが接触し始める状態を示している。この位置は、ドアガラス4が全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の80〜90%移動した位置に設定されている。この状態からドアガラスが上昇するに従って、サブリップ10aは弾性変形し、サブリップ10aの弾性力によりタッチリップ12aの先端側をドアガラス4側に押圧するようになる。図2(d)はドアガラス4が全閉位置における状態を示し、この状態では、サブリップ10aはタッチリップ12a側に折り重ねられた状態で圧縮される。この状態ではシール性が得られるため、雨水や埃のドア内部への侵入が防止される。
【0039】
図2(d)の状態からドアガラス4が開放されると、上記と逆の順序で復元する。この場合、ドアガラス4が開放されるに従って、サブリップ10aはその復元力によりモールディング本体11から離れ、その弾性力によりタッチリップ12aの先端側をドアガラス4側に押圧することにより、タッチリップ12aが全閉位置から復元し、ドアガラス4に追従して元の形状に復元する。図2(c)では、サブリップ10aがモールディング本体11から離れる状態を示している。この後の位置では、タッチリップ12a、12bの弾性力により復元し、ドアガラス4に追従する。
【0040】
このようにサブリップ10aの復元力を利用してタッチリップ12aに復元力を付与し、ドアガラス4の移動に対するタッチリップ12aの追従性を確保することにより、サブリップ10aがドアガラス4に接触する範囲をドアガラス4の全閉位置付近に限定でき、他の位置ではサブリップ10aがドアガラス4に接触しないため、ドアガラス4は小さい抵抗で開閉動作を行うことができる。従ってサブリップ10aおよびタッチリップ12aは、肉厚に形成したり、特別な材料を用いてドアガラス4ヘの反力を常に高くする必要はなく、昇降するための機械の大型化も必要でない。
【0041】
上記の実施例では、タッチリップ12aだけにサブリップ10aを形成したが、タッチリップ12bにも形成してもよい。しかし複数のタッチリップを有し、その内少なくとも1個のタッチリップにサブリップを形成すると、ドアガラス4の昇降時の抵抗を少なくして復元力を得ることができるので好ましい。このような自動車用ウエストモールディング1は、寒冷地、寒冷時においてリップの弾性力が弱まる場合に有効に適用されるが、他の地域、時期等においても同様に適用可能である。上記の実施例では、取付クリップで取り付ける例を示しているが、特許文献1のように取付クリップを用いないで取り付ける場合にも適用できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕:
図1において、鋼板のロール成形品からなる芯材21にTPO樹脂の押出成形により樹脂部22、タッチリップ12a、12bおよびサブリップ10aを一体成形してウエストモールディング1を形成した。タッチリップ12aおよび12bのモールディング本体11の内壁部11bからの高さはそれぞれ9および10mm、サブリップ10aはタッチリップ12aのほぼ中間部から、図1に示す形状で2mmの高さで形成した。その一部を切り出した試料を常温で試験機にセットし、ドアガラス4を全開から全閉までの位置でドア
ガラス4が受けるリップ反力(N)を測定した結果を図3に示す。
【0043】
図3において、横軸はドアガラス4の位置を示し、(a)はドアガラス4のタッチリップ12a、12bへの接触開始位置(全開位置)、(b)はドアガラス4の通常位置、(c)はサブリップ10aの接触開始位置(全閉位置付近)、(d)はドアガラス4の全閉位置を示す。図3より、ドアガラス4の接触開始位置(a)からドアガラス4の全閉位置(d)に至る全期間にわたり、上リップ(タッチリップ12b)の反力は漸増するのに対し、下リップ(タッチリップ12a)の反力はサブリップ10aの接触開始位置(全閉位置付近)(c)までは漸増するが、それ以降は急増して反力が高まることが分かる。従って接触開始位置(全閉位置付近)(c)から全閉位置(d)に至る期間ではサブリップ10aの反力が大きく、シール性、復元力が大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
車両のドアパネルの上端に、ドアガラスに対する摺接部材として取付けられるウエストモールディング、特にドアガラスに対する摺接部材としてタッチリップを有するウエストモールディングに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1: ウエストモールディング、2: ドアパネル、2a: 外パネル、2b: 内パネル、2c: 段部、3: 上部フランジ、4: ドアガラス、5: 開口部、6: 内部空間、7: 係止部、9: サブリップ基部、9a: 基端側部、9b: 先端側部、9c: 先端側接続部、10a,10b: サブリップ、11: モールディング本体、11a: 上壁部、11b: 内壁部、11c: 外壁部、11d: 係止部、11e: 折返し部、12a,12b: タッチリップ、13a,13b: 突起部、14: 装飾リップ、15: 係止リップ、16: 緩衝リップ、21: 芯材、22,23: 樹脂部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルに取付けられるモールディング本体と、このモールディング本体の車内側の側面よりドアガラスに向かって斜め上方に延出するタッチリップを有するウエストモールディングであって、
前記タッチリップには、中間部からモールディング本体側に延出するサブリップが形成され、
前記サブリップは、ドアガラスの全閉位置付近において、前記モールディング本体に接触し、
前記サブリップの弾性力により前記タッチリップの先端側を前記ドアガラス側に押圧するように構成されていることを特徴とする自動車用ウエストモールディング。
【請求項2】
複数のタッチリップを有し、その内少なくとも1個のタッチリップにサブリップが形成されている請求項1記載のウエストモールディング。
【請求項3】
ドアガラスが全開位置から全閉位置に移動する際、車幅方向の全移動距離の70%以上移動した位置で、サブリップがモールディング本体に接触するように構成されている請求項1または2記載のウエストモールディング。
【請求項4】
タッチリップは、サブリップ基部より基端側部の厚さが先端側部の厚さよりも厚くされている請求項1ないし3のいずれかに記載のウエストモールディング。
【請求項5】
サブリップは、モールディング本体側に凸となるように湾曲状に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のウエストモールディング。
【請求項6】
サブリップ基部は、タッチリップの先端側に接続する先端側接続部が湾曲状に形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のウエストモールディング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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