説明

自動車用ゴム組成物及びその加硫物

【課題】エピハロヒドリン系ゴムに用いられる加硫剤や受酸剤の種類によらず、特定の環状化合物の銅錯体(老化防止剤)を配合することにより、耐オゾン性を低下させず、耐熱性を向上させたエピハロヒドリン系ゴムを提供する。
【解決手段】(a)エピハロヒドリン系ゴム、(b)受酸剤、(c)加硫剤、および(d)環状化合物の銅錯体を含有することを特徴とする自動車用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性の改良されたエピハロヒドリン系ゴムをベースとする自動車用ゴム組成物および前記組成物を加硫してなる加硫物(加硫ゴム材料)に関する。
【背景技術】
【0002】
エピハロヒドリン系ゴム材料はその耐熱性、耐油性、耐オゾン性等を活かして、自動車用途では燃料ホースやエアー系ホース、チューブ材料として幅広く使用されている。しかしながら、近年における排ガス規制への対策や省エネルギー対策の実施、エンジンの高性能化およびコンパクト化等によるエンジンルーム内の温度上昇あるいは自動車部品のメンテナンスフリー化などに伴って、ゴム材料に対する耐熱性を改良する要求が年々厳しくなっている。
【0003】
また、エピハロヒドリン系ゴムにおいても耐熱性、耐オゾン性を向上させ得る有効な老化防止剤として、有機ニッケル化合物、特にジブチルジチオカルバミン酸ニッケルが広く用いられてきた。しかしながら、近年において有機ニッケル化合物はその毒性が懸念され始めており、エピハロヒドリン系ゴムにおける有機ニッケル化合物を使用しない耐熱、耐オゾン性に優れた老化防止剤が求められている。
【0004】
従来、エピハロヒドリン系ゴムの耐熱性を向上させる方法としては有機錫化合物を用いる方法(特許文献1参照)や、促進剤に金属石鹸を用いる方法(特許文献2参照)などが提案されているが、更なる改良が求められている。
【0005】
また、有機ニッケル化合物を用いない老化防止剤としてはヒンダードアミン化合物を用いる方法(特許文献2参照)などが提案されているが、更なる改良が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−155409号公報
【特許文献2】特開2005−002182号公報
【0007】
一方、エピハロヒドリン系ゴムを加硫せしめる一般的な加硫剤としては、チオウレア類、メルカプトトリアジン類、キノキサリン類などが挙げられ、これらが、要求されるゴム材料の貯蔵安定性、機械的特性、圧縮永久歪み性、耐オゾン性、耐寒性、耐油性などの特性、ゴム材料の加工方法、加硫剤の経済性などに応じて適宜選択されている。また、受酸剤としては、酸化マグネシウム、鉛化合物、酸化亜鉛、合成ハイドロタルサイト、消石灰、生石灰などが、用いられる加硫剤に応じて適宜選択されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特定の加硫剤を用いる方法や、特定の受酸剤を用いる方法により、エピハロヒドリン系ゴムの耐熱性の改良を行った場合には、ゴム材料の加工方法が限定されたり、また、ゴム材料が使用される部品によって、それぞれ異なるその他の要求特性を充分に満たせないことが懸念される。
【0009】
そこで、本発明者らは、上記実情に鑑み、エピハロヒドリン系ゴムに用いられる加硫剤や受酸剤の種類によらず、特定の環状化合物の銅錯体(老化防止剤)を配合することにより、耐オゾン性を低下させず、耐熱性を向上させたエピハロヒドリン系ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、エピハロヒドリン系ゴム、加硫剤、受酸剤を含有する加硫用ゴム組成物に、一般的にゴム組成物に添加すると、ゴムの劣化を促進することが知られており、苛烈な条件を要求される近年の自動車用途において不向きと考えられている銅化合物の一種である環状化合物の銅錯体を加えることにより、耐熱性、耐オゾン性を更に向上させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の自動車用ゴム組成物は、(a)エピハロヒドリン系ゴム、(b)受酸剤、(c)加硫剤、および(d)環状化合物の銅錯体を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記(d)環状化合物の銅錯体が、銅フタロシアニン誘導体であることが好ましい。
【0013】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記銅フタロシアニン誘導体が、フタロシアニンブルーおよび/またはフタロシアニングリーンであることが好ましい。
【0014】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記(d)環状化合物の銅錯体の配合量が、(a)エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0015】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記(b)受酸剤が、金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルであることが好ましい。
【0016】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記無機マイクロポーラス・クリスタルが、合成ハイドロタルサイト、Li−Al包摂化合物、及び、ゼオライト類からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記(c)加硫剤が、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及び、トリアジン系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
本発明の自動車用ゴム組成物は、前記キノキサリン系加硫剤が、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートであることが好ましい。
【0019】
本発明の加硫物は、前記自動車用ゴム組成物を加硫してなることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0021】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、加硫前のゴム組成物を指し、少なくとも(a)エピハロヒドリン系ゴム、(b)受酸剤、(c)加硫剤、および(d)環状化合物の銅錯体を含有する。
【0022】
<エピハロヒドリン系ゴム>
本発明組成物において、(a)エピハロヒドリン系ゴムとは、エピハロヒドリン単独重合体またはエピハロヒドリンと共重合可能な他のエポキシド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等との共重合体をいう。これらを例示すれば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピブロムヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等を挙げることができる。エピハロヒドリン系ゴムとしてはエピクロルヒドリン単独重合体またはエピクロルヒドリンと共重合可能なエポキシドとの共重合体であるエピクロルヒドリン系ゴムであることが好ましい。エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体であることが好ましい。これら単独重合体または共重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=30〜150程度である。
【0023】
前記共重合体の場合、それら共重合割合は、例えば、エピクロルヒドリン5mol%〜95mol%、好ましくは10mol%〜75mol%、さらに好ましくは10mol%〜65mol%、エチレンオキサイド5mol%〜95mol%、好ましくは25mol%〜90mol%、さらに好ましくは35mol%〜90mol%、アリルグリシジルエーテル0mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜8mol%、さらに好ましくは1mol%〜7mol%である。
【0024】
<受酸剤>
本発明で用いられる(b)受酸剤としては、加硫剤に応じて公知の受酸剤を使用できるが、好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0025】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができる。
【0026】
また、前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体をいい、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、Li−Al包摂化合物、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0027】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0028】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(1)
MgZnAl(OH)2(X+Y)+3Z−2CO・wHO (1)
[式中、xとyは0〜10の実数、但しx+yは1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す]で表わされる。
【0029】
前記一般式(1)で表される合成ハイドロタルサイトの例として、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl(OH)12CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO等を挙げることができる。
【0030】
また、前記Li-Al系包摂化合物は下記一般式(2)で表される。
〔AlLi(OH)X・mHO (2)
(式中Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の整数)
【0031】
前記(b)受酸剤の配合量は、(a)エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.2〜50重量部であり、0.5〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることが特に好ましい。受酸剤がエピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.2重量部未満の配合量では架橋が不十分となり、一方、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して50重量部を超えると、加硫物が剛直になりすぎてエピハロヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られなくなる。
【0032】
<加硫剤>
本発明で用いられる(c)加硫剤としては、エピハロヒドリン系ゴムを架橋できるものであれば特に限定されないが、塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤、即ちポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類、キノキサリン類等が、また、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、チウラムポリスルフィド類等が適宜使用される。
【0033】
前記(c)加硫剤を例示すれば、ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p-フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N'−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等が挙げられ、チオウレア類としては、2−メルカプトイミダゾリン、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられ、チアジアゾール類としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等が挙げられ、トリアジン類としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等が挙げられ、キノキサリン類としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチカーボネート等が挙げられ、有機過酸化物としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、モルホリンポリスルフィド類としては、モルホリンジスルフィドが挙げられ、チウラムポリスルフィド類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられる。中でも、(c)加硫剤としては、チオウレア類(チオウレア系加硫剤)や、キノキサリン類(キノキサリン系加硫剤)、トリアジン類(トリアジン系加硫剤)が好ましく、特に好ましくは、2−メルカプトイミダゾリンや6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、トリメルカプト−S−トリアジンなどが挙げられる。加硫剤は一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0034】
前記(c)加硫剤の配合量は、(a)エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部であり、0.3〜5重量部であることが好ましい。エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1重量部未満の配合量では架橋が不十分となり、一方、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して10重量部を超えると、加硫物が剛直になりすぎてエピハロヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られなくなる。
【0035】
また、通常これらの加硫剤と共に用いられる公知の促進剤(即ち、加硫促進剤)、遅延剤等を本発明の加硫用ゴム組成物にもそのまま用いることができる。これらの加硫促進剤の例としては、硫黄、チウラムスフィド類、モルホリンスルフィド類、アミン類、アミンの弱酸塩類、塩基性シリカ、四級アンモニウム塩類、四級ホスホニウム塩類、多官能ビニル化合物、メルカプトベンゾチアゾール類、スルフェンアミド類、ジメチオカーバメート類等を挙げることができる。遅延剤としてはN−シクロヘキサンチオフタルイミド、有機亜鉛化合物、酸性シリカ等を挙げることができる。特に好ましい促進剤として1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下DBUと略)塩、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(以下DBNと略)塩およびホワイトカーボンが挙げられる。
【0036】
前記DBU塩としては、DBU−炭酸塩、DBU−ステアリン酸塩、DBU−2−エチルヘキシル酸塩、DBU−安息香酸塩、DBU−サリチル酸塩、DBU−3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、DBU−フェノール樹脂塩、DBU−2−メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU−2−メルカプトベンズイミダゾール塩等であり、DBN塩としては、DBN−炭酸塩、DBN−ステアリン酸塩、DBN−2−エチルヘキシル酸塩、DBN−安息香酸塩、DBN−サリチル酸塩、DBN−3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、DBN−フェノール樹脂塩、DBN−2−メルカプトベンゾチアゾール塩、DBN−2−メルカプトベンズイミダゾール塩等が挙げられる。促進剤または遅延剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して、0〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0037】
<環状化合物の銅錯体>
本発明で用いられる(d)環状化合物の銅錯体は、環式有機化合物の環の内側に銅が配位した構造をもつ化合物であり、老化防止剤としての特性を付与するものである。例えば、銅フタロシアニン誘導体、銅ポルフィリン誘導体、銅クラウンエーテル誘導体などが挙げられ、好ましくは銅フタロシアニン誘導体が挙げられる。銅フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニン銅、塩素化フタロシアニンを例示することができ、具体的にはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどを用いることができる。環状化合物の銅錯体は2種以上の併用は任意である。
【0038】
前記(d)環状化合物の銅錯体配合量は、(a)エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。この配合量がこの範囲未満であると耐熱改良効果が少なく、また、多量に配合するのは経済的ではない。
【0039】
<その他の添加物>
さらに本発明の加硫用ゴム組成物に通常用いられる公知の老化防止剤を、本発明の所望の特性を損なわない範囲であれば、そのまま用いることができる。ここでいう公知の老化防止剤とは、アミン系、フェノール系、ベンツイミダゾール系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、特殊ワックス系、有機チオ酸系、亜リン酸系、サリチル酸誘導体系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などを挙げることができ、特に好ましくは、フェノール系、ベンツイミダゾール系、有機チオ酸系、亜リン酸系である。
【0040】
前記アミン系老化防止剤として、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエン・スルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンと低温反応生成品、ジフェニルアミン、アニリン、アセトンの低温反応品、ジフェニルアミンと、ジイソブチレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル・ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンの混合品、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンの混合品、アラルキル化ジフェニルアミンによるアルキルおよびアラルキル置換フェノールの混合品、ジフェニルアミン誘導体、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミンの混合品、フェニル,ヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニル,オクチル−p−フェニレンジアミンなどがあり、その他のアミン系として芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合品、ブチルアルデヒド−アニリン縮合品、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが例示される。
【0041】
前記フェノール系老化防止剤として、2,5−ジ−(t−アミル)−ヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどがあり、モノフェノール系として1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェノール、ブチル・ヒドロキシアニソール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、アルキル化フェノール、アラルキル置換フェノール、フェノール誘導体、2,2’-メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルクレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−(α−メチルシクロヘキシル)−5,5−ジメチル・ジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル・アクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、3,9−ビス〔2−{3(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ブチル酸3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチレンエステル、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンの3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸トリエステル、変性ポリアルキル亜リン酸塩化多価フェノール、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−ジ及びトリ−チオビス−(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル・フェニル)プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’-ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネート−ジエチルエステル、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)〕メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、ヒンダートフェノール、ヒンダートビスフェノール、2−ヒドロキシナフタレン−3−カーボイル−2’−メトキシアニリド、2−ヒドロキシナフタレン−3−カーボイル−2’−メチルアニリド、2−ヒドロキシナフタレン−3−カーボイル−4’−メトキシアニリド、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)−トリフェニルメタン、2−ヒドロキシナフタレン−3−カーボイルアニリド、1,1’−ビス(4,4’−N,N’−ジメチルアミノフェニル)−シクロヘキサンなどが例示される。
【0042】
前記ベンツイミダゾール系老化防止剤として、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールとフェノール縮合物の混合品、2−メルカプトベンズイミダゾールの金属塩、2−メルカプトメチルベンズイミダゾールの金属塩、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾールの金属塩等が例示される。
【0043】
前記ジチオカルバミン酸系老化防止剤として、ジエチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、ジイソブチル・ジチオカルバミン酸ニッケルなどが例示される。
【0044】
前記チオウレア系老化防止剤として、1,3−ビス(ジメチル・アミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素などが例示される。
【0045】
前記有機チオ酸系老化防止剤として、ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’− チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’− チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジラウリル・チオジプロピオネート等が例示される。
【0046】
前記亜リン酸系老化防止剤として、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチル−ジ−トリデシルフォスファイト)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4’−イソプロピデン−ジフェノールアルキル(C12〜C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジフォスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイト・ポリマー等が例示される。
【0047】
前記サリチル酸誘導体系老化防止剤として、としてフェニル・サリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどが例示される。
【0048】
前記ベンゾフェノン系老化防止剤として、として2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン・トリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ・ベンゾフェノン、2,2’,4,4−テトラヒドロキシ・ベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノンのポリマー、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸、n−ヘキサデシルエステル、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどが例示される。
【0049】
前記ベンゾトリアゾール系老化防止剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ・ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロ・フタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールなどが例示される。
【0050】
その他の老化防止剤として、蓚酸アニリド誘導体、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−エチル・ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル・アクリレート、1,3−ビス−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルアクリレート、1,3−ビス−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルメタクリレート、1,3−ビス−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル・アクリレート、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシ・ベンゾフェノン、〔2,2’−チオビス−(4−t−オクチルフェノラト)〕−n−ブチルアミン・ニッケルII、〔2,2’−チオビス−(4−t−オクチルフェノラト)〕−2−エチルヘキシルアミン・ニッケルII、セミカルバゾン系光安定剤などが例示される。
【0051】
前記老化防止剤の配合割合は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。これら2種以上の併用は任意である。なお、本発明の効果を損なわない限り、前記公知の老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤に限定されるものではない。
【0052】
本発明の加硫用ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の配合剤、例えば、滑剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、発泡助剤、導電剤、帯電防止剤等を任意に配合できる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0053】
本発明による加硫用ゴム組成物を製造するには、従来ポリマー加工の分野において用いられている任意の混合手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。本発明の加硫ゴム材料は、本発明の加硫用ゴム組成物を通常100〜200℃に加熱することで得られる。加硫時間は温度により異なるが、通常0.5〜300分の間である。加硫成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0054】
本発明の加硫物は、通常、エピハロヒドリン系ゴムが使用される分野に広く応用することができる。例えば、自動車用途などの各種燃料系積層ホース、エアー系積層ホース、チューブ、ベルト、ダイヤフラム、シール類等ゴム材料として有用である。
【0055】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
<実施例1〜4、比較例1〜10>
下記表1及び表2に示す各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、未加硫ゴムシートを作製した。得られた未加硫ゴムシートを用い、JIS K6300に定めるムーニースコーチ試験を行った。また同じく得られた未加硫ゴムシートを170℃で15分プレス加硫し、2mm厚の一次加硫物を得た。さらにこれをエア・オーブンで150℃で2時間加熱し、二次加硫物を得た。得られた二次加硫物を用い、引張試験(初期物性)、耐熱性および耐オゾン性の評価を行った。各評価試験は、それぞれJIS K6251、JIS K6257、JIS K6259に記載の方法に準じて行った。
【0057】
各試験方法より得られた実施例および比較例の試験結果を表3及び表4に示す。各表中、M100はJIS K6251の引張試験に定める100%伸び時の引張応力、TbはJIS K6251の引張試験に定める引張強さ、EbはJIS K6251の引張試験に定める伸び、HsはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さ、オゾン試験における記号はJIS K6259の亀裂の状態をそれぞれ意味する。またオゾン試験における記号はJIS K6259の亀裂の下記状態を意味する。なお、本発明において、耐熱性が良好であるとは、耐熱試験後の引張強さTbが大きいことを言う。
N.C.:亀裂なし
C-3:亀裂が深くて比較的大きいもの(1mm未満)が無数にあるもの。
【0058】
本発明の実施例等に使用する配合内容の詳細について、以下に示す。
*1 ダイソー(株)社製「エピクロマーH」、エピクロルヒドリン重合体
*2 大内新興化学工業(株)社製「ノクラックWhite」
*3 大内新興化学工業(株)社製「ノクセラーTTCu」
*4 協和化学工業(株)社製「DHT-4A」
*5 花王(株)社製「NSソープ」
*6 日本合成化学工業(株)社製「ノイライザーP」
*7 ダイソ−(株)社製「ダイソネットXL−21S」
*8 協和化学工業(株)社製「キョーワマグ#150」
*9 大内新興化学工業(株)社製「ノクタイザーSS」
*10 川口化学工業(株)社製「アクセル22-S」
*11 大内新興化学工業(株)社製「ノクセラーTS」
*12 三京化成(株)社製「ジスネットF」
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
老化防止剤含有しない比較例1、9、及び10や、環状化合物の錯体でない比較例2、環状化合物の銅以外の錯体を含有した比較例3および4、一般的な顔料であるピグメントレッド101と、ピグメントブルー29を含有した比較例5及び6、一般的な老化防止剤であるN,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを含有した比較例7においては、本願実施例1〜4と比較して、耐熱性が劣ることが分かり、また、環状化合物でない銅化合物を含有した比較例8においては、本願実施例1〜4と比較して、耐オゾン性が劣ることが分かり、これらの特性が本願実施例において、改善されていることが確認できた。
【0064】
本発明により、エピハロヒドリン系ゴムにおいて耐熱性や耐オゾン性の改良された自動車用ゴム組成物及びその加硫物(加硫ゴム材料)を提供することができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エピハロヒドリン系ゴム、(b)受酸剤、(c)加硫剤、および(d)環状化合物の銅錯体を含有することを特徴とする自動車用ゴム組成物。
【請求項2】
前記(d)環状化合物の銅錯体が、銅フタロシアニン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項3】
前記銅フタロシアニン誘導体が、フタロシアニンブルーおよび/またはフタロシアニングリーンであることを特徴とする請求項2に記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項4】
前記(d)環状化合物の銅錯体の配合量が、(a)エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項5】
前記(b)受酸剤が、金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項6】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルが、合成ハイドロタルサイト、Li−Al包摂化合物、及び、ゼオライト類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項7】
前記(c)加硫剤が、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及び、トリアジン系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項8】
前記キノキサリン系加硫剤が、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートであることを特徴とする請求項7に記載の自動車用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の自動車用ゴム組成物を加硫してなる加硫物。

【公開番号】特開2010−144014(P2010−144014A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321414(P2008−321414)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】