説明

自動車用ドア

【課題】 乗員の体格等に合わせて自動車用ドアのアームレストの位置を調節できるようにする。
【解決手段】上記ドア本体の内側には、支持部20が突出して設けられており、この支持部20には、アームレスト30が高さ調節機構40により高さ調節可能に支持されている。 高さ調節機構40は、アームレスト30に連結され下方に垂直に延びて支持部20に入り込んだステー41,42と、支持部20内に設けられステー41,42を上下方向に案内するガイド43,44と、支持部20内に設けられステー41,42を選択された高さでロックするロック機構47とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストを備えた自動車用ドアに関し、より詳しくはこのアームレストを位置調節可能にした自動車用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、通常の自動車用ドアでは、内側にアームレストが設けられている。このアームレストの前部には、上部が開口した収容ポケットが形成されており、収容ポケットの上縁部がドアを開閉するためのプルハンドル部として提供されている。
【特許文献1】特許2797730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、アームレストは固定されており、乗員の体格等に応じてアームレストの位置を調節することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、自動車用ドアにおいて、
(ア)ドア本体と、
(イ)上記ドア本体の内側に突出して設けられた支持部と、
(ウ)上記支持部と別体をなして支持部の上方に設けられたアームレストと、
(エ)上記アームレストをほぼ水平に維持したまま位置調節可能に上記支持部に支持する支持手段とを備えたことを要旨とする。
この構成によれば、乗員の体格等に合わせてアームレストを位置調節することができるので、乗員がドアのアームレストに腕を乗せ易くなり、快適性を向上させることができる。
【0005】
本発明の一つの態様では、上記支持手段が、上記アームレストの高さを調節する高さ調節機構を含んでいる。この構成によれば、乗員の体格に応じて、より具体的には乗員の腕の高さに応じてアームレストを調節することができる。
【0006】
好ましくは、上記高さ調節機構が、上記アームレストに連結され下方に垂直に延びて上記支持部に入り込んだステーと、上記支持部内に設けられ上記ステーを上下方向に案内するガイドと、上記支持部内に設けられ上記ステーを選択された高さでロックするロック機構とを備えている。この構成によれば、簡単な構成で高さ調節ができる。
【0007】
より好ましくは、上記支持部は、上部が開口した収容ポケットを形成する内壁と、この内壁の上縁に連なり当該支持部の外形状を付与する外壁とを有し、上記ステーはこの収容ポケットを挟んで前後に一対配置され、上記ガイドはこれら一対のステーを案内するために一対配置され、上記ロック機構は上記一対のステーの少なくとも一方をロックするようになっており、これら一対のステー,一対のガイドおよびロック機構が、上記支持部の内壁と外壁との間に形成された補助空間に配置されている。この構成によれば、一対のステーによりアームレストを安定して支持できる。また、収容ポケットにはステー,ガイド,ロック機構が配置されず、収容ポケットを有効に活用できる。
【0008】
本発明の他の態様では、上記支持手段は、上記アームレストを前後方向に位置調節する前後位置調節機構を含んでいる。この構成によれば、乗員の体格等に合わせて座席を移動させた場合でも、乗員の前後方向の位置に応じてアームレストを前後に位置調節することができる。
【0009】
好ましくは、上記前後位置調節機構は、上記アームレストの下面に設けられて前後方向に延びるスライダと、上記支持部に設けられて前後方向に延び上記スライダを前後方向に案内するガイド部とを有する。この構成によれば、簡単な構成で前後に位置調節することができる。
【0010】
上記アームレストは、上記ドア本体の内面から離れたプルハンドル部を有する。この構成によれば、プルハンドル部の位置も乗員の体格等に合わせて調節することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、乗員の体格等に合わせてアームレストを位置調節することができ、快適性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態をなす自動車用ドアについて、図1〜図4を参照しながら説明する。なお、本明細書において前後とは、車両の進行方向における前後を意味する。自動車用ドアは、ドア本体10と、このドア本体10と別体をなしてドア本体10に取り付けられた支持部20と、この支持部20と別体をなして支持部20に支持されたアームレスト30とを備えている。
【0013】
上記支持部20は前後方向に細長く延び、内壁21と外壁22とを有している。内壁21は、支持部20の後部に位置しており、この内壁21とドア本体10の内面とで囲われるようにして、上部が開口した収容ポケット25が形成されている。外壁22は支持部20の外形状を付与する。外壁22は、内壁21の上縁に連なる上面部22aと、上面部22aに連なる側面部22bと、上面部22aおよび側面部22bに連なる底面部22cとを有している。内壁21と外壁22とドア本体10の内面とで、外部から遮蔽された補助空間26が形成されている。
【0014】
外壁22の上面部22aは収容ポケット25に対応する位置で低くなっており、ここに差し込み用凹部27が形成されている。外壁22の上面部22aの前部には種々のスイッチ,表示部等の付属要素28が設けられている。
【0015】
上記アームレスト30は、偏平で前後方向に細長く形成されており、平面形状がコ字形をなしている。アームレスト30の幅狭の中央部がドア本体10の内面から離れたプルハンドル部として提供される。アームレスト30の両端部32は幅が広く、ドア本体10の内面に近接している。図3,図4に示すように、アームレスト30が基準位置すなわち支持部20の後部に近接している位置にある時、アームレスト30の内周縁部が、上記収容ポケット25の開口の周縁部を覆っている。アームレスト30のプルハンドル部31が支持部20の差し込み用凹部27に対応した位置にあるので、乗員がプルハンドル部31を掴み易くなっている。
【0016】
図2に示すようにドア本体10の板金からなる芯材には、内側に突出する支持金具11が固定されており、この支持金具11に支持部20の内壁21の底面部が固定されることにより、支持部20が強固に支持されている。支持部20の内壁21および外壁22には複数箇所に取付部29が形成されており、これら取付部29はドア本体10のトリム材に取り付けられている。
【0017】
図2に最も良く示すように、上記アームレスト30は、高さ調節機構40(支持手段)により、支持部20に高さ調節可能(上下位置調節可能)に支持されている。高さ調節機構40は、アームレスト30の下面から垂直に下方に延びる一対のステー41,42を有している。これらステー41,42は、例えば横断面がコ字形をなし、下端から所定距離上方においてバネ受部41a,42aをそれぞれ有している。上記ステー41,42は、上記収容ポケット25を挟むようにして収容ポケット25の前後に配置されており、支持部20の補助空間26の前部と後部にそれぞれ入り込んでいる。ステー41,42は、上下方向に離れた複数例えば3つの係合穴41b,42bを有している。
【0018】
上記高さ調節機構40は、さらに一対のガイド43,44と、一対のコイルバネ45,46(付勢部材)と、ロック機構47と、操作部材48とを備えている。これらガイド43,44,コイルバネ45,46,ロック機構47は、上記支持部20の補助空間26内に配置されている。上記ガイド43,44は、支持部20の外壁22と一体に設けられ、垂直に延びて上記一対のステー41,42をそれぞれ上下移動可能に案内するようになっている。上記ガイド43,44の下部には上記圧縮コイルバネ45,46が収容されている。これらコイルバネ45,46は、上記ステー41,42のバネ受け部41a,42aと外壁22の底面部22cとの間に圧縮状態で収容され、ステー41,42を常に上方に付勢している。
【0019】
次に、ロック機構47について詳述する。ロック機構47は、支持部20の外壁22に回動可能に支持された一対のロック爪47aを有している。ロック爪47aは、上記回動中心を挟んで係合部と連携部とを有している。ロック爪47aの係合部は、上記ステー41,42の3つの係合穴41a,42aの一つに選択的に係合するようになっている。一対のロック爪47aの連携部には前後方向に水平に延びる連携ロッド47bの両端が回動可能に連結されている。連携ロッド47bは図4に示すように、補助空間26内に配置され、内壁21の側面部と外壁22の側面部22bとの間に位置している。また、前側のロック爪47aには、上記操作部材48の一端が回動可能に連結されている。操作部材48は支持部20の外壁22の上面部22aから支持部20外へ突出しており、この突出端が操作部となっている。
【0020】
上記構成において、最初にアームレスト30が基準位置にある時の状態を説明する。この状態では、アームレスト30が支持部20に近接して最も低い位置にあり、ステー41,42は支持部20内に深く入り込んでいる。ロック機構47のロック爪47aの係止部はステー41,42に形成された3つの係合穴41a,42aのうち、最も上の係合穴41a,42aに係合しており、コイルバネ45,46に抗してアームレスト30が上方に移動するのを禁じている。乗員がアームレスト30の上面に腕を載せた時には、アームレスト30への荷重を上記ロック爪47aと係合穴41a,42aの係合を介して支持部20で受け止めるようになっている。
【0021】
乗員の体格が大きい場合には、操作部材48を押して前側のロック爪47aを回動させることにより、その係合部とステー41の係合穴41aとの係合を解除する。この際、操作部材48の作用力は連携ロッド47bを介して後側のロック爪47aにも伝達され、この後側のロック爪47aとステー42の係合穴42aとの係合も解除される。上記ロック解除の状態で、コイルバネ45,46の力によりアームレスト30の上方への移動がなされる。適宜位置で操作部材48を引いてロック爪47aとステー41,42の他の係合穴41a,42aに係合させることにより、アームレスト30が基準位置より高い位置で支持される。
【0022】
上述したようにアームレスト30は、基準位置で収容ポケット25を一部塞いでいるが、収容ポケット25に収容されている物を取出しづらい場合には、アームレスト30を上昇させて収容ポケット25の開口を広げるようにしてもよい。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態について、図5〜図7を参照しながら説明する。この実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。図7には、ドア本体10への支持部20の取付構造が良く示されている。ドア本体10の芯材15には支持金具18を介して支持部20の内壁21の底面部が固定されている。また、ドア本体10のトリム材16には外壁22がねじ19により固定されている。
【0024】
第2実施形態では、第1実施形態の高さ調節機構40の代わりに、前後位置調節機構60(支持手段)を備えている。この前後位置調節機構60は、アームレスト30の下面に設けられて前後方向に延びるスライダ61と、支持部20の外壁22の上面部22aに形成されて前後方向に延びるガイド溝62(ガイド部)とを備えている。スライダ61はガイド溝62に嵌り、ガイド溝62に案内されて前後方向にスライドし、これによりアームレスト30が位置調節される。なお、支持部20の外壁22の上面部22aは、前部が後部より低く中間部が傾斜している。ガイド溝62は上面部22aの後部に形成されており、前端が開口してスライダ61を前方へ突出させることができるようになっている。
【0025】
上述したようにアームレスト30を前後方向に位置調節することができるので、体格等に応じて座席を前後に位置調節した場合でも、アームレスト30を座席の位置ひいては乗員の位置に合わせることができる。
【0026】
本実施形態では、アームレスト30は、第1実施形態と異なり均一幅に形成され、全長にわたってドア本体10の内面から離れており、いずれの部位もプルハンドル部として提供される。アームレスト30の基準位置では、図6に実線で示すように、支持部20の収容ポケット25を前後方向の全長にわたって部分的に塞いでいる。アームレスト30を前方へ移動させると、収容ポケット25の開口面積を増大させることができ、収容ポケット25への物の出し入れがし易くなる。
【0027】
次に本発明の第3実施形態について、図8を参照しながら説明する。この実施形態では、支持部20に第1実施形態と同様の高さ調節機構40が設けられている。そして、高さ調節機構40とアームレスト30との間には、第2実施形態と似た前後位置調節機構60’が設けられている。この前後位置調節機構60’は、アームレスト30の下面に設けられたスライダ61と、一対のステー41,42の上端に掛け渡されたガイド部材62’(ガイド部)とを備えている。ガイド部材62’は、スライダ61を前後方向にスライド可能に案内する。この実施形態では、アームレスト30は上下方向,前後方向に位置調節される。
【0028】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、第1,第3実施形態において、高さ調節を無段階で行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態をなす自動車用ドアにおけるアームレストおよび支持部の側面図である。
【図2】同支持部をドア本体とほぼ平行な面に沿って断面にした図である。
【図3】同アームレストおよび支持部の平面図である。
【図4】同アームレストおよび支持部をドア本体とほぼ直交する面に沿って断面にした図である。
【図5】本発明の第2実施形態をなす自動車用ドアにおけるアームレストおよび支持部の側面図である。
【図6】同アームレストおよび支持部の平面図である。
【図7】同アームレストおよび支持部をドア本体とほぼ直交する面に沿って断面にした図である。
【図8】本発明の第3実施形態をなす自動車用ドアにおけるアームレストおよび支持部の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ドア本体
20 支持部
21 内壁
22 外壁
25 収容ポケット
26 補助空間
30 アームレスト
40 高さ調節機構(支持手段)
41,42 ステー
43,44 ガイド
47 ロック機構
60,60’ 前後位置調節機構(支持手段)
61 スライダ
62 ガイド溝(ガイド部)
62’ ガイド部材(ガイド部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)ドア本体と、
(イ)上記ドア本体の内側に突出して設けられた支持部と、
(ウ)上記支持部と別体をなして支持部の上方に設けられたアームレストと、
(エ)上記アームレストをほぼ水平に維持したまま位置調節可能に上記支持部に支持する支持手段と、
を備えたことを特徴とする自動車用ドア。
【請求項2】
上記支持手段が、上記アームレストの高さを調節する高さ調節機構を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドア。
【請求項3】
上記高さ調節機構が、上記アームレストに連結され下方に垂直に延びて上記支持部に入り込んだステーと、上記支持部内に設けられ上記ステーを上下方向に案内するガイドと、上記支持部内に設けられ上記ステーを選択された高さでロックするロック機構とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の自動車用ドア。
【請求項4】
上記支持部は、上部が開口した収容ポケットを形成する内壁と、この内壁の上縁に連なり当該支持部の外形状を付与する外壁とを有し、上記ステーはこの収容ポケットを挟んで前後に一対配置され、上記ガイドはこれら一対のステーを案内するために一対配置され、上記ロック機構は上記一対のステーの少なくとも一方をロックするようになっており、これら一対のステー,一対のガイドおよびロック機構が、上記支持部の内壁と外壁との間に形成された補助空間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車用ドア。
【請求項5】
上記支持手段は、上記アームレストを前後方向に位置調節する前後位置調節機構を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドア。
【請求項6】
上記前後位置調節機構は、上記アームレストの下面に設けられて前後方向に延びるスライダと、上記支持部に設けられて前後方向に延び上記スライダを前後方向に案内するガイド部とを有することを特徴とする請求項5に記載の自動車用ドア。
【請求項7】
上記アームレストは、上記ドア本体の内面から離れたプルハンドル部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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