説明

自動車用バイザー

【課題】両面テープの一部を切り取り、別体加工された両面テープを新たに貼り合わせる必要が無く、水がバイザー内側へと流下することのない自動車用バイザーを提供する。
【解決手段】自動車用バイザー2は、鍔部5における切り欠き6の形成部分に、この切り欠き6の形状に合わせて形成されて鍔部5と接着部材との間に介在され、鍔部5と接着部材との間をシールする排水部材15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓枠に装着する自動車用バイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車用バイザーには、自動車の窓枠と鍔体の上辺との境界部に沿ってバイザー上縁に雨水等を排出し、雨水がドアヒンジ部へ流下することを防止する排出部が設けられている。この排出部には、鍔部の上縁の一部に切り欠きを設け、その形状に合わせて型抜きされた両面テープを貼着することで堰き止め部を形成して、雨水がドアヒンジ部へ流下することを防止する構造からなることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−246218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような自動車用バイザーを窓枠に装着する際には、バイザー裏面に両面テープを貼着し、この両面テープを介して窓枠に接着することから、排水部の位置の両面テープを切り取り、その形状に沿って加工された両面テープ(型抜き両面テープ)を貼り合わせて繋ぎ目で隙間を形成しないように貼着する必要があった。
また、両面テープを隙間無く貼着しても、気温の影響や貼着の仕方等によって隙間が形成される恐れがあり、隙間が形成されるとそこから水がバイザー内側へと流下するといった問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、両面テープの一部を切り取り、別体加工された両面テープを新たに貼り合わせる必要が無く、水がバイザー内側へと流下することのない自動車用バイザーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、自動車の窓枠上辺に沿って形成されるバイザー本体と、そのバイザー本体の上縁に沿って形成され、前記窓枠に接着部材を介して接着される鍔部とを含み、前記鍔部に、前記鍔部に沿って流れる水を流下させる切り欠きを設けた自動車用バイザーであって、
前記鍔部における前記切り欠きの形成部分に、前記切り欠きの形状に合わせて形成されて前記鍔部と前記接着部材との間に介在され、前記鍔部と前記接着部材との間をシールする排水部材を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用バイザーにおいて、前記排水部材は、前記切り欠きの形成部分に前記排水部材の形状に合わせて凹設された凹部に嵌合して設けられることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動車用バイザーにおいて、前記排水部材における前記水の流れ方向の下流側の端部に、前記窓枠に当接する凸部を形成したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の自動車用バイザーにおいて、前記凸部の上縁を、前記鍔部の上縁以上の高さとしたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の自動車用バイザーにおいて、前記排水部材は、前記切り欠きの形成部分に設けた突起を前記排水部材に設けた透孔に挿通させて位置決めさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、接着部材の一部を切り取り、別体加工された接着部材を繋いで新たに貼り合わせる必要が無いことから、繋ぎ目で隙間を形成することがなく、水が自動車用バイザー内側へと流下することはない。
また、請求項2に記載の発明によれば、排水部材を凹部内に重ねることで接着部材との間の隙間をより確実になくすことができる。
他にも、請求項3に記載の発明によれば、凸部によって流下する水を自動車用バイザー外側へと確実に排出することを可能とする。
更に、請求項4に記載の発明によれば、流下する水が凸部を超えることがなく、自動車用バイザー外側へと確実に排出することを可能とする。
また、請求項5に記載の発明によれば、排水部材を凹部内で所定の位置へ簡単に位置決めすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は、自動車の窓枠に自動車用バイザーが取り付けられた状態を示す説明図であり、(b)は、自動車用バイザーの先端を示す拡大図である。
【図2】(a)(b)は、自動車用バイザーの先端の構成を示す説明図である。
【図3】(a)(b)(c)は、自動車用バイザーの先端の断面を示す説明図である。
【図4】(a)(b)は、自動車用バイザーの変更例を示す説明図である。
【図5】(a)(b)は、自動車用バイザーの変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1(a)は、自動車1の運転席側の窓枠3に自動車用バイザー2が取り付けられた状態の全体の構成を示し、図1(b)は、その自動車用バイザー2を自動車1側(内側)から見た状態の先端部分を示したものである。
まず初めに、本発明の自動車用バイザー2は、図1(a)に示すように、自動車1の窓枠3上辺に沿って形成されるバイザー本体4と、そのバイザー本体4の上縁に沿って形成され、窓枠3に接着部材25(図3)を介して接着される鍔部5とを含み、鍔部5に、鍔部5に沿って流れる水を流下させる切り欠き6(図2(a))を設けた合成樹脂製(たとえば、アクリル樹脂製)の板材である。
ここで、自動車用バイザー2は、自動車1の進行方向を前方とし、後退方向を後方とする。また、自動車1側を自動車用バイザー2内側とし、その反対を外側とする。
【0011】
このうち、鍔部5先端の一部には、図2(a)に示すように、切り欠き6が形成されており、この切り欠き6の内側には、後述する排水部材15の板厚と同程度の深さに段差を形成した凹部7が形成されると共に、この凹部7上には長方形状の突起8が設けられている。また、切り欠き6を除く鍔部5上端には、接着部材25を隠す上縁10が自動車用バイザー2の全長に亘って覆うように形成されている。
【0012】
次に、排水部材15は、厚み1.5〜2mmのオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる軟質樹脂の板材で、板部16の長手方向の両端において、水の流れ方向の下流側の端部に、窓枠に当接する凸部17が、上流側の端部に、凸部18がそれぞれ内側を向いて突設している。それにより、凸部17,18間に段部20が形成され、切り欠き6を含む凹部7と同じ形状となっている。
また、凸部17は、凹部7に排水部材15を設置した際に上縁10よりも内側へ突出する高さとなるように形成されて、凸部18も、凹部7に排水部材15を設置した際に上縁10よりも内側へ突出する高さとなるように形成されている。他にも、板部16上には突起8に嵌合可能な透孔19が穿設されている。それ故、左右対称となるため、車両左右のドアバイザーで共有することが可能である。
従って、突起8を排水部材15に設けた透孔19に挿通させることで位置決めして、切り欠き6及び凹部7に排水部材15が重なり、図2(b)に示す排出部9が構成される。
【0013】
次に、自動車用バイザー2の窓枠3への取付作業について説明する。
自動車用バイザー2を、図1(a)に示すように窓枠3へ取り付ける場合には、まず始めに、図2(a)に示す凹部7の突起8に排水部材15の透孔19を嵌合し、図2(b)に示す排出部9を構成する。
そして、鍔部5の内側面の形状に沿って接着部材25の一方の面を貼着した後、接着部材25の他方の面を、窓枠3の上縁の形状に沿って貼着する。ここで、鍔部5と板部16との繋ぎ目が面一となるように形成されていることから、接着部材25を貼着した際には隙間を形成することがない。
【0014】
次に、排出部9を構成した状態の自動車用バイザー2の断面形状について説明する。図3(a)〜(c)は、自動車用バイザー2先端の断面形状を示したもので、図1(b)においてA−A線断面を示したものが図3(a)である。この位置では、上縁10の高さは約0.9mmに調整されているが、これは自動車用バイザー2と窓枠3との隙間を約0.7mmとし、接着部材25の厚みを約1.6mmとしていることによるものである。
また、図1(b)においてB−B線断面を示したものが図3(b)である。この位置では、凹部7の突起8に排水部材15の透孔19を嵌合して排出部9を構成することから、板部16上に接着部材25が貼着されている。
次に、図1(b)においてC−C線断面を示したものが図3(c)である。この位置では、排水部材15の凸部17が窓枠3に接触しており、接着部材25との間に隙間の生じない密着した状態である。
【0015】
以上の如く構成された自動車用バイザー2により、水が鍔部5の上縁10を伝って排出部9へと流下した後、自動車用バイザー2外側へと排出される過程について説明する。なお、図3(a)〜(c)の夫々において、図面左側を自動車用バイザー2外側とし、右側を自動車用バイザー2内側(自動車1側)とする。
まず初めに、自動車1表面の水が、図1(b)においてA−A線断面を示す位置まで流下する。この場合、殆どの水が上縁10から自動車用バイザー2外側へと矢印の方向(図3(a))に排出されるものの、そのうちの一部は上縁10から自動車用バイザー2の傾斜に従い、排水部材15側へと流下する。
【0016】
そして、図1(b)において、B−B線断面を示す位置まで水が流下すると、鍔部5には切り欠き6が形成される一方、排水部材15には段部20が形成されていることにより、排出部9から自動車用バイザー2外側へと排出される(図3(b))。
【0017】
この時に一部の水が、自動車用バイザー2外側へと排出されることなく排出部9上縁に残り、図1(b)においてC−C線断面を示す位置の手前まで流下する。この場合、上述のようにC−C線断面を示す位置の手前では、接着部材25との間に隙間が生じない状態で排水部材15の凸部17が窓枠3に接触していることから、残った水は全て凸部17により堰き止められて自動車用バイザー2外側へと排出される。従って、水がヒンジ部(図示せず)へ流下することはないため、ヒンジ部が凍結することもない。
【0018】
このように構成される自動車用バイザー2は、鍔部5における切り欠き6の形成部分に、この切り欠き6の形状に合わせて形成されて鍔部5と接着部材25との間に介在され、鍔部5と接着部材25との間をシールする排水部材15を設けたことにより、接着部材25の一部を切り取り、別体加工された接着部材を繋いで新たに貼り合わせる必要が無いことから、繋ぎ目で隙間を形成することがなく、水が自動車用バイザー2内側へと流下することはない。
【0019】
また、排水部材15は、切り欠き6の形成部分に排水部材15の形状に合わせて凹設された凹部7に嵌合して設けられることにより、接着部材25との間の隙間をより確実になくすことができる。
【0020】
他にも、排水部材15における水の流れ方向の下流側の端部に、窓枠3に当接する凸部17を形成したことにより、凸部17によって流下する水を自動車用バイザー2外側へと確実に排出することを可能とする。
【0021】
更に、凸部17の上縁を、鍔部5の上縁10以上の高さとしたことにより、流下する水が凸部17を超えることがなく、自動車用バイザー2外側へと確実に排出することを可能とする。
【0022】
また、排水部材15は、切り欠き6の形成部分に設けた突起8を排水部材15に設けた透孔19に挿通させて位置決めさせることにより、排水部材15を凹部7内で所定の位置へ簡単に位置決めすることが可能である。
【0023】
なお、本発明の自動車用バイザーの構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、バイザー内側への水入りを確実に防止し、且つ水が自動車用バイザー外側へと排出され、自動車内で凍結しないものであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
例えば、排水部材15は、凸部30のみ形成し、水が凸部30上流側側面に接触して全て自動車用バイザー2外側へと排出される構成であっても良く、適宜変更可能である。
この場合、図4(a)に示すように、上縁10から切り欠き6へ水が流下するように、上縁10一方の端部33先端がR状に形成されている。更に、縁部31を形成する一方、上縁10他方の端部32が、水の流れ方向の上流側へと伸び、鍔部5との間で凹状を形成し、図4(b)に示すように、縁部31が端部32に係止する位置で排水部材15を凹部7に重ねて排出部34を構成しても良い。なお、凸部30は、端部32よりも内側へ突出する高さとなるように形成されており、水が全て凸部30により堰き止められて自動車用バイザー2外側へと排出される。
【0024】
更に、図5(a)に示すように、T字状に形成した排水部材40としても良く、適宜変更可能である。
この場合、排水部材40の形状に合わせて凹設された凹部41内に、排水部材40を重ねることで、図5(b)に示す排出部42を構成しても良い。そして、排水部材40を、T字状に形成することで左右対称となり、車両左右のドアバイザーで共有することが可能であるから、コスト削減に加え、部品点数を低減することも可能である。
【0025】
また、突起8の形状は、必ずしも図2に示すように長方形状である必要はなく、凹部7内で位置決めを行うものであれば、円形に形成したり、突起8に抜け止めを形成しても良く、適宜変更可能である。更に、排水部材15の透孔19は、必ずしも一つである必要はなく、複数であっても良い。
【0026】
他にも、突起8を排水部材15に設けた透孔19に挿通させることで位置決めする構造である必要はなく、これらを凹凸で嵌合する構造としても良く、適宜変更可能である。
【0027】
なお、自動車用バイザー2は、アクリル樹脂等の合成樹脂によって形成されたものに限定されず、ポリカーボネートによって形成されたもの等に変更しても良く、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
1・・自動車、2・・自動車用バイザー、3・・窓枠、4・・バイザー本体、5・・鍔部、6・・切り欠き、7・・凹部、8・・突起、9・・排出部、10・・上縁、15・・排水部材、16・・板部、17・・凸部(前方側)、18・・凸部(後方側)、19・・透孔、20・・段部、25・・接着部材、30・・凸部、31・・縁部、32・・端部(前方側)、33・・端部(後方側)、34・・排出部、40・・排出部材、41・・凹部、42・・排出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の窓枠上辺に沿って形成されるバイザー本体と、そのバイザー本体の上縁に沿って形成され、前記窓枠に接着部材を介して接着される鍔部とを含み、前記鍔部に、前記鍔部に沿って流れる水を流下させる切り欠きを設けた自動車用バイザーであって、
前記鍔部における前記切り欠きの形成部分に、前記切り欠きの形状に合わせて形成されて前記鍔部と前記接着部材との間に介在され、前記鍔部と前記接着部材との間をシールする排水部材を設けたことを特徴とする自動車用バイザー。
【請求項2】
前記排水部材は、前記切り欠きの形成部分に前記排水部材の形状に合わせて凹設された凹部に嵌合して設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用バイザー。
【請求項3】
前記排水部材における前記水の流れ方向の下流側の端部に、前記窓枠に当接する凸部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用バイザー。
【請求項4】
前記凸部の上縁を、前記鍔部の上縁以上の高さとしたことを特徴とする請求項3に記載の自動車用バイザー。
【請求項5】
前記排水部材は、前記切り欠きの形成部分に設けた突起を前記排水部材に設けた透孔に挿通させて位置決めさせることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の自動車用バイザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82266(P2013−82266A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222205(P2011−222205)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000216531)田村プラスチック製品株式会社 (24)