説明

自動車用バンパ構造体の構造部品

自動車のフェンダ組立体の下部領域に設けられる構造部材が、長手方向に拡張し、この構造部材は、その長手方向に対して略横断する方向(x)において曲げ荷重を受けるとそのばね特性が、構造部材(10)の頂側部に隣接しているフェンダ組立体の一部のばね特性と略一致するような仕方で設計された断面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバンパ構造体又はバンパ組立体の下方領域に設けられる構造部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最新型の自動車に取り付けられるバンパ構造体又はバンパ組立体は、かかるパンパ構造体が現行の事故予防要件を満たすためには種々の要件、例えば、有利な空気抵抗係数、自動車の視覚的差別化又は効果的な歩行者用衝突保護手段等の観点からの要件を同時に満たさなければならないので、全体として複雑な組立体となる。
【0003】
ドイツ国特許出願公開第19921480号明細書は、自動車用のフロントスポイラを記載している。このフロントスポイラは、いわゆる張出し角度βを所望の値に適合させることができるようにするために自動車の長手方向に延長されたものであり、その目的は、自動車による良好な全地形型性能と歩行者用の効果的な衝撃保護作用の組合せにある。
【0004】
ドイツ国特許出願公開第4307837号明細書は、事故により生じた衝撃力を吸収するようになった自動車用フロントバンパの横方向キャリヤ構造体を開示している。横方向キャリヤ構造体は、互いに平行に延びる2つのキャリヤ異形材を有し、これらキャリヤ異形材は、これらの寸法形状及び相互配置状態において、力が加えられると、2つのキャリヤ異形材のうちの一方がいわゆる逆変形(inverted deformation)を生じるように設計されている。この場合に作用する変形エネルギーは、事故の衝撃力を吸収するのに役立つ。
【0005】
ドイツ国特許第19912272号明細書は、横方向キャリヤ及びこの横方向キャリヤの下に設けられた横方向バーを有するバンパ構造体を示している。横方向キャリヤは、スペーサブラケットを介して車体の長手方向キャリヤに取り付けられ、横方向キャリヤ及び(又は)スペーサブラケットは、少なくとも部分的に、自動車の長手方向に相前後して設けられた力レベルの互いに異なる2つの変形領域の状態に細分されている。しかしながら、このバンパ構造体の欠点は、横方向キャリヤ又は横方向バーに垂直な方向における剛性は、横方向バーに隣接した領域、即ち、バンパ構造体の下方領域において高く、それにより、歩行者の下肢に対する骨折の恐れが高いということにある。
【0006】
欧州特許出願公開第1046546号明細書は、自動車に取り付けられるバンパを開示しており、この場合、バンパの機械的性質は、歩行者のための効果的な衝撃保護に適合している。具体的に説明すると、このバンパは、その下方領域がその上方領域よりも剛性が高い。かくして、歩行者と衝突した場合の衝撃力は、バンパの下方領域に集中する。この技術の欠点は、歩行者の脚領域に力の望ましくない高い局所集中が生じる場合があり、この場合も又、骨折の恐れを伴うということにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの従来型のバンパシステムは、歩行者安全策に関する現行のEU規則の要点の完全なリスト、即ち、いわゆるEURO NCAPを満たしていない、又は部分的にしか満たしていないという欠点を持っている。特に、公知のバンパシステムは、中実横方向キャリヤ要素等の結果として、歩行者との正面衝突の場合に、非常に剛性なので、下肢の付近における耐骨折力よりも大きな力が発生する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、自動車用バンパ構造体の下方領域に設けられて歩行者に当たった際に下肢に対する骨折の恐れを極力小さくすると共に上述したような先行技術の欠点を解決する構造部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する構造部品によって解決される。本発明の構造部品の有利な別の特徴は、従属形式の請求項の記載内容である。
【0010】
本発明の構造部品では、もし万が一、歩行者と正面衝突しても、衝突の際の歩行者の下肢の曲げ角度が、バンパに制限される。というのは、下肢が、前側カバーと接触した際に略平行に保たれるからである。したがって、本発明によれば、下肢の回転が制限され、この結果、施行中の歩行者安全対策指針、即ち、現行のEU規則EURO・NCAPに従った衝撃ゾーンの高さ全体にわたる一様な特性を実現することができる。バンパ構造体の下方領域に設けられる本発明の構造部品は、曲げ応力に関し、その長手方向広がりに略垂直であって、その上方に位置するバンパ構造体の隣接部分のばね特性に一致するばね特性を有するので、従来型構造と比べて、走行方向、即ち、バンパ構造体の長手方向広がりに垂直な方向における曲げ変形においてバンパ構造体について一層堅い応答(harder response )が達成される。このとき、バンパ構造体は、その高さ全体にわたって一様に変形する。本発明の構造部品又はこの構造部品と共に提供されるバンパ構造体のこのいわゆる硬い応答により、衝突された歩行者の下肢に関し既に説明したように曲げ角度が減少する。
【0011】
本発明の構造部品のばね特性に関するこの性質は、少なくとも1つの補強要素が構造部品の長手方向に略垂直な方向に構成されることにより有利に達成できる。補強要素は、走行方向後方に伸長し、それによりバンパ構造体の下方領域のばね特性が向上する。補強要素に関して寸法形状、例えば、長手方向広がりに垂直な方向における長さ、肉厚等を適当に選択することによって、構造部品のばね特性を構造部品の長手方向広がりに略垂直な方向における曲げに関して所望通りに調節することができる。更に、ばね特性を例えば、複数個の補強要素によってバンパ構造体に関する要件にも適合させることができる。
【0012】
本発明の有利な特徴によれば、構造部品は、自動車の走行方向を向き、エンジンコンパートメントを向いた通路を形成する少なくとも1つの空気入口を有するのがよい。っこれによって、構造部品は、エンジンコンパートメントの方向における空気入口又は空気通路を提供するようにも働き、エンジンの冷却を向上させると共に場合によってはエンジンの熱衝撃を阻止するのに役立つ。
【0013】
構造部品は、同時に、バンパ構造体内のインサートとしての機能において、空気入口グリルとしての役目を果たし、したがって、この空気入口グリルは、バンパ構造体の正面からは容易に目に見えず、したがって、上述したような受動的安全性の観点においてかかる厳しい要件に適合するようになっている。換言すると、本発明の構造部品は、最新式の自動車においては大部分が空気取入口等で占められるバンパ構造体の外観を変えない。
【0014】
本発明の別の特徴によれば、構造要素は、構造部品の上縁部に隣接して位置するバンパ構造体の残部の領域に対して張り出しが略ゼロである。これは有利には、歩行者との正面衝突の場合、歩行者の脚領域が平らに当てられ、曲げ角度がそれに応じて僅かであるようにする。
【0015】
本発明の有利な別の特徴によれば、構造部品は、その上縁部に隣接して位置するバンパ構造体の空気入口グリルと一体に形成されるのがよい。さらに、構造部品の下縁部は、その上に配置された冷却用モジュールキャリヤ等を少なくとも部分的に下から遮蔽するためにエンジンコンパートメントの方向に伸長するのがよい。このようにすると、冷却用モジュールキャリヤは、例えば、舗道の縁石等に乗り上げても保護される。このように又はこれと同様な仕方で、構造部品は、バンパ構造体と関連して、特に、ラジエータグリル、空調コンポーネント又はスポイラ領域における補強材としての役目を果たすいわゆる多機能コンポーネント又は部品として役立つ。
【0016】
有利な特徴によれば、フレーム部分を側方補強材となるように本発明の構造部品の各側方端部に設けるのがよい。この目的のため、フレーム部分は例えば、構造部品の長手方向に略垂直に延びる少なくともボックス型構造体であるのがよい。それぞれのフレーム部分はいずれも互いに別個の部品として提供し、インターロック係合方式で構造部品の側方端部に取り付けるのがよい。変形例として、構造部品は、フレーム部分と一体に形成されてもよい。
【0017】
特に車体の側方外側部分のところ、即ち、できるだけ外方に遠くに設けられた車体に対する対応の固定箇所を設けることによって、フレーム部分の非ねじり方式の固定が達成されるのが有利である。正面衝突が側方に取り付けられたフレーム部分の付近で生じた場合、車体へのフレーム部分を介する衝撃力の伝達は有利には、問題のフレーム部分が車体部分に隣接して、略垂直に延びる支持面を有するということにより改善され、この支持面は、構造部品がその組立て位置にあるとき、対応の車体部分に当接する。このインターロック係合方式は、フレーム部分を背部で車体部分に対して支持し、衝突の際のエンジンコンパートメントに向かうフレーム部分の望ましくない摺動を阻止する。
【0018】
本発明の構造部品又は上述したようなバンパ構造体の機能の統合により、部品の個数、これら部品の重量及びコストが減少する。具体的に説明すると、コストの減少は、たった1つの部品の製造費用が安くなったこと及び組立体のサイズが減少したことの結果である。また、成形としての設計により、スポイラ領域におけるバンパ被覆材の所要の硬度を選択する上で高い自由度が与えられる。
【0019】
本発明の有利な別の特徴によれば、構造部品は、硬質プラスチック材料で作られ、射出成形による製造が特に適している。変形例として、構造部品を熱成形法又は射出圧縮成形法により同様な仕方で製造できる。有利には、製造に使用されるプラスチック材料は、ポリプロピレンであるのがよく、これは、その良好な機械的性質及びその有利な原料費に鑑みて特に適している。
【0020】
外部カバー又は被覆材が、望ましい視覚的外観に関する従来の要件に適合するために構造部品に設けられるのが有利である。外部カバーを、例えば膨張リベット連結部、クリップ連結部、押し込み金属クリップナット等によるインターロック係合方式によって構造部品に取り付けるのがよい。これらの形式の連結方式は全て、組立て中容易に行うことができ、かかる連結は、構造部品へのカバーの堅固且つ正確な固定と共に非常に短い組立て時間を保証する。
【0021】
好ましい実施形態では、構造部品及び(又は)これに取り付けられたフレーム部分並びにカバーはそれぞれ、支持突起を有し、これら支持突起によって互いに係合する。支持突起はそれぞれ、略構造部品の長手方向に形成される。正面衝突の場合、したがって、外部カバーに外部から走行方向とは逆に作用する衝撃力の場合、互いに係合する支持突起はそれぞれ、カバー及び構造部品又はフレーム部分が互いに対して摺動するのを阻止する。この結果、自動車の長手方向軸線の方向における車体への衝撃力の伝達が限定される。
【0022】
正面衝突の場合の力の吸収性の向上は、本発明の構造部品を備えたバンパ構造体を車体の横方向キャリヤに取り付ける緩衝器によって得られ、この緩衝器は、垂直方向にキャビティを有している。キャビティは、横方向キャリヤに隣接して緩衝器の側面に設けられている。正面衝突の場合の緩衝器の適当に制御される変形の結果として、歩行者の下肢は、ソフトな動きで構造体上を通り、この結果、骨折の恐れが一段と減少する。
【0023】
本発明の別の特徴及び別の実施形態は、詳細な説明及び添付の図面から明らかになる。
【0024】
上述した特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の組合せだけでなく、他の組合せ又はそれ自体で利用できることは理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、図示の実施形態によって概略的に示されており、図面を参照して本発明について以下に詳細に説明する。
【0026】
図1は、後ろから、即ち、エンジンコンパートメント側から見た本発明の構造部品10の一実施形態の斜視図である。構造部品の構造は対称なので、その左側の領域のみが図1に示されている。構造部品10は、方向yに長手方向寸法を有する。構造部品の幅全体にわたり、即ち、方向yにおける長手方向寸法に沿って、補強リブの形態をした複数個の補強要素11が設けられ、これらリブは、構造部品の長手方向寸法に略直角に、即ち、方向xに延びている。
【0027】
それぞれの補強リブ11は、図1では破線で示されている。自動車の走行方向に一致した方向xにおけるそれぞれの補強リブ11のアラインメント並びに補強リブについて適当に選択された厚さ及び方向xにおけるこれらの長さは、方向x、即ち、構造部品の長手方向寸法に略垂直な方向における曲げ応力に関し、構造部品のばね特性に所望の仕方で影響を及ぼす。換言すると、構造部品10を製造するのに用いられる材料の一般的な性質に加えて、構造部品の長手方向寸法に略垂直な方向における曲げ応力に関し、方向xにおける構造部品の剛性、即ち、対応のばね特性に大きな影響を及ぼす。この方向における構造部品の上述のばね特性は、構造部品の上方に位置するバンパ構造体の隣接の部分(図1には示さず)のばね特性に一致させられるよう適当に選択される。これについては図6を参照して以下に詳細に説明する。
【0028】
構造部品10は、走行方向を向いたその側に、複数個の空気入口12を有し、これら空気入口は、構造部品の後方に設置されたエンジンコンパートメントへの空気通路を形成する。一方において、これは、エンジンコンパートメント内への空気の供給量を増大させるという利点をもたらすと共に車両に正面に所望の外観を与える。ごく最近、自動車に、空気取入口等を多くとったに正面外観をもたせる技術的傾向が強まっている。
【0029】
構造部品10の上縁部13には、空気入口グリル14が設けられ、この空気入口グリルは、方向yに延びている。経済的に製造できるようにするため、空気入口グリル14を構造部品10と一体品の状態で形成すれば有利であり、これは、特に、プラスチック、例えばポリプロピレン等の射出成形により達成できる。変形例として、プラスチックについて他の製造法、例えば、熱成形法、射出圧縮成形法等が可能である。空気入口グリル14は、その頂縁部又は上縁部15のところに、複数個の凹部16を更に有し、これら凹部により、空気入口グリル14及びこれと共に構造部品10をこれに隣接し且つこの上に位置するバンパ構造体の部分(図1には示さず)に例えばスナップ嵌め連結部、ねじ連結部等によって適当に連結することができる。
【0030】
構造部品10の各側方端部には、フレーム部分17が設けられ、このフレーム部分は、バンパ構造体の側方の剛性を向上させている。ここに図示する実施形態では、フレーム部分17にはフランジ部分18がこれに側方に形成された状態で連結されており、このフランジ部分は、構造部品10の側部領域19とインターロック方式で又はロックし合うように係合する。フレーム部分17は、その後方側部に、突き出たバー20を有し、貫通穴20aがこの突出バーに形成されている。フレーム部分17を貫通穴20aを貫通するねじ連結部により適当な仕方で車体の一部に容易に連結することができる。フレーム部分17は、その上方側部に複数個の凹部16を更に有し、これら凹部により、フレーム部分をこの上方に位置するバンパ構造体の隣接の部分に空気入口グリル14と同一の仕方で連結し又は取り付けることができる。
【0031】
方向xにおいて、フレーム部分17は、2つのボックス(箱)形延長部21を有し、これらボックス形延長部は、特に方向xにおける曲げ応力を受けた場合に備えて比較的大きな剛性をフレーム部分17に与えている。延長部21はそれぞれ、その後ろ側に、支持面22を有し、この支持面は、略上下方向に、即ち、方向zに延びている。構造部品10がフレーム部分17と一緒に車体に取り付けられた場合、支持面22は、車体のこれに対応して形成された接触面23(図4参照)と接触当接状態になる。これにより、方向xにおける車体の接触面23の方向におけるフレーム部分17の所望の摩擦連結が達成される。
【0032】
フレーム部分17は、中央凹部21aを更に有し、この中央凹部は、フォグランプ、追加のヘッドランプ等を収納するのに役立つ。フレーム部分17並びに空気入口グリル14は、他の車用アクセサリ、例えば、温度センサ等を受け入れる追加のホルダ等を更に有するのがよい。このように、構造部品10及び空気入口グリル14、そして更にフレーム部分17は、いわゆる多機能部品としての役目を果たす。
【0033】
外部カバー24が、構造部品10の外部に設けられている。構造部品10及び車体へのカバー24の取付け方について以下に詳細に説明する。
【0034】
図2は、図1に示す構造部品10の中央領域の横断面図である。カバー24は、空気入口グリルの下方縁部から構造部品10の外面25をおおって延び、更に方向xに、図2においてアルファベット文字Mによって表されたエンジンコンパートメントの下に位置する領域内へ延びている。カバー24は、少なくともスナップ嵌め連結部26によって空気入口グリル14に形成されている凹部16内で空気入口グリル14の下縁部に取り付けられている。エンジンコンパートメントMの下方の特定領域において、カバー24は又、適当なねじ連結部27によって車体に固定されている。この目的のため、カバー24は、その後縁部に、複数個の貫通穴28を有し、それぞれのねじがかかる嵌通穴に通され、車体部分29にこれに対応して設けられたねじ山付き受け口等にねじ込まれるようになっている。カバー24は、複数個の膨張リベット30によって構造部品の中央領域に更に取り付けられ、したがって、カバー24は、正確な嵌め合い方式で、それ故に高信頼度で、しかも、フラッピング(羽ばたき運動)を生じないで、構造部品の長手方向広がりにわたり、即ち、方向yに取り付けられるようになっている。
【0035】
構造部品の外面25、更にカバー24の内面31には、構造部品10に向いて、それぞれ支持突起32,33が設けられており、これら突起は、カバーを装着すると互いに係合する。構造部品10の外面25に形成された支持突起32は、カバーの内面31に形成された支持突起33の下に係合するよう設計されている。これにより、図2において矢印Fによって指示されるように力が外部から加えられた場合でもカバー24と構造部品の互いに対する相対運動が阻止される。換言すると、外力が上述したように加えられると、カバー24は、外面25上においてこれに沿って方向zに下方には摺動せず、その結果、衝撃力は制御された仕方で構造部品10を介して車体に向けられる。
【0036】
図2の上部には、空気入口グリル14の上縁部15のところに形成された凹部16が示されている。空気入口グリル14の上縁部15は、これに隣接してこの上に位置するバンパ構造体の部分(図示せず)に適当なスナップ嵌め連結部26′によって適当に連結されている。
【0037】
図3は、図2と類似した横断面図で構造部品10の中央領域を示している。図2とは対照的に、カバー24は、クリップ連結部34によって構造部品10に取り付けられており、このクリップ連結部は、膨張リベット30を用いる上述の連結方式と同じ仕方でカバー24の高信頼度の且つ正確な取付けを保証している。
【0038】
図4は、フレーム部分17が構造部品10に取り付けられた構造部品の側部領域の横断面図である。フレーム部分の前方縁部は、ボックス形延長部21の端フェース35の付近に、支持突起36を有し、この支持突起は、構造部品10の支持突起32と同じ仕方で、カバー24の支持突起33と係合しており、その目的は、上述したように方向zにおける望ましくない摺動を阻止することにある。
【0039】
組立て状態のフレーム部分17は、エンジンコンパートメントMとは反対側の側部がその支持面22により車体側の接触面23に接触しており、かくして、方向xにおける非常に堅固な固定が得られている。カバー24は、その側縁部領域に、別の貫通穴28を更に有し、この貫通穴は、フレーム部分17の突出バー20に形成された貫通穴20aと同軸状に位置合わせされている。このように、カバー24とフレーム部分17は、共同して、ねじ連結部27により車体部分に取り付けられるのがよい。車体29へのねじ連結部27の取付けのための対応の連結又はねじ留め箇所ができるだけ外方へ遠くに位置していれば都合がよく、その結果、車体への信頼性の高い、それ故品質の高い取付けがバンパ構造体の外側領域であっても保証されるようになる。
【0040】
カバー24は、その上縁部への固定のために、カラー37によりフレーム部分17の端フレーム35の上縁部周りに係合している。この種のカラー37は、例えば接着剤による結合、クリップ留め、ねじ留め等によって、フレーム部分17の端フェース35上でのカバー24のしっかりとした取付けを保証する。
【0041】
ボックス形延長部21は、フレーム部分17にいわゆるハードスプリング(hard spring)の特性を与え、それにより、フレーム部分17は、方向xにおける曲げ応力に関して隣接の構造部品10と同一のばね特性を有している。その結果、構造部品10又はフレーム部分17が収納されたバンパ構造体は、フレーム部分及び構造部品が本質的に同一のばね特性を有するので、方向xにおける車両の幅全体にわたり一定の変形特性を有する。さらに、構造部品及びフレーム部分のばね特性は、これらの上方に位置するバンパ構造体の隣接部分のばね特性に一致しており、その結果、正面衝突が万一起きた場合にバンパ上における歩行者の脚の転動運動中に生じるいわゆる曲げ角度が、最小限に抑えられ、いわゆるソフトな転動(softer rolling)が生じる。
【0042】
図5は、構造部品が取り付けられたバンパ構造体60を極めて単純化された横断面図で示している。バンパ構造体60の上方領域38は、いわゆる緩衝器又はショックアブソーバ39により、横方向バーの形態をしている車体の別の部分29′に固定されている。緩衝器39は、車体部分29′に向いた内側側部40に設けられた凹状キャビティ41を有し、この凹状キャビティは、緩衝器39の対応の変形の結果として、歩行者の脚領域のいわゆるソフトな転動をもたらす。
【0043】
上述したように、構造部品10は、バンパ構造体60の下方領域42に設けられている。構造部品10及びこれと関連したそれぞれのフレーム部分17は、方向xにおけるバンパ構造体の上方領域38に向かう張出しが最小限に抑えられるように適切に構成されている。この張出しは、図5では“Δ”で示されている。これにより、正面衝突が起きた場合でも、歩行者の脚領域は、所望の仕方で平らな状態で当たり、しかも、生じるいわゆる曲げ角度がほんの僅かであるようになる。換言すると、正面衝突の場合、歩行者の下肢は、略平行に保たれる。図6の極めて概略な図では、これは、横断面図で示されている。この図は、歩行者の脚50を破線で示した状態で記載している。張出しΔが最小限であり、これは好ましくはゼロなので、歩行者の脚50は、膝領域51と向こうずね領域52の両方が事実上同時にバンパ構造体の前方縁部に接触し、したがって、太腿53が膝関節51回りに回動する曲げ角度αが非常に僅かに過ぎないようになっている。
【0044】
車両のバンパ構造体の下方領域に設けられるべき本発明の構造部品によって、現行のEURO・NCAP規格に従って歩行者安全策に関する適切な規制に完全に適合することが可能であり、それにより、大人と小柄な人達、例えば、子供や老人のような市民の両方への外傷の恐れが著しく減少する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の構造部品の横方向詳細斜視図である。
【図2】図1の構造部品の中央部分の横断面詳細図であり、外部カバーがこれに取り付けられている状態を示す図である。
【図3】図2に類似した本発明の構造部品の横断面図である。
【図4】本発明の構造部品の外側部分の横断面詳細図であり、側方フレーム部分がこれに取り付けられている状態を示す図である。
【図5】ダンパ構造体を備えた組立て状態の本発明の構造部品を示す横断面図である。
【図6】構造部品が収納されていて、歩行者の脚と相互作用するバンパ構造体の極めて単純化された横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用バンパ構造体(60)の下方領域(42)に設けられる構造部品(10)であって、
該構造部品は、長手方向寸法を有し、前記構造部品の長手方向寸法(y)に略垂直な方向(x)の曲げ応力に対する前記構造部品のばね特性が、前記構造部品(10)に隣接して該構造部品の上方に位置する前記バンパ構造体の部分(38)のばね特性に略一致するよう構成されている、
ことを特徴とする構造部品(10)。
【請求項2】
少なくとも1つの補強要素(11)が、前記長手方向寸法(y)に略直角な方向(x)に形成されている、
請求項1に記載の構造部品(10)。
【請求項3】
前記自動車の走行方向(x)を向いた少なくとも1つの空気入口(12)を有し、該空気入口が、エンジンコンパートメントMの方向に通路を形成している、
請求項1又は2に記載の構造部品(10)。
【請求項4】
前記構造部品の上縁部(13)に隣接して位置する前記バンパ構造体の領域に対して略ゼロの張出し(Δ)を有する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項5】
前記構造部品の上縁部(13)に隣接して設けられた空気入口グリル(14)等と一体に形成されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項6】
下縁部(15a)が、前記エンジンコンパートメントMの上方に配置された冷却用モジュールキャリヤ等を少なくとも部分的に下から遮蔽するために前記エンジンコンパートメントMの方向に延びている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項7】
前記下縁部(15a)は、少なくとも1つの箇所で車体部分(29)に取り付けられている、
請求項6に記載の構造部品(10)。
【請求項8】
フレーム部分(17)が、側方端部(19)の各々のところに取り付けられ、側方補強作用をもたらしている、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項9】
前記フレーム部分(17)は、前記構造部品(10)の前記長手方向(x)に略垂直に延びる少なくとも1つのボックス状構造体(21)を有する、
請求項8に記載の構造部品(10)。
【請求項10】
前記フレーム部分(17)は、少なくとも1つの箇所で車体部分(29)に固定され、前記固定箇所は、詳細には、前記車体の側方外側領域に設けられている、
請求項8又は9に記載の構造部品(10)。
【請求項11】
前記フレーム部分(17)は、車体部分(29)に隣接して、略垂直方向に延びる支持面(22)を有し、該支持面は、前記構造部品(10)を組み立てると、前記車体部分(29)の接触面(23)に当接する、
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項12】
前記フレーム部分(17)は各々、互いに別個の部品であり、インターロック係合方式により前記構造部品の前記側方端部(19)に取り付けられている、
請求項8ないし11のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項13】
前記フレーム部分(17)と一体に形成されている、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項14】
硬質プラスチック材料で作られている、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項15】
ポリプロピレンプラスチックで作られている、
請求項14記載の構造部品(10)。
【請求項16】
外部カバー(24)が取り付けられている、
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項17】
前記外部カバー(24)は、膨張リベット継手(30)、クリップ連結部(34)、押し込み金属クリップナット等を用いるインターロック係合方式によって取り付けられている、
請求項16に記載の構造部品(10)。
【請求項18】
前記構造部品(10)及び(又は)前記フレーム部分(17)並びに前記カバー(24)はそれぞれ、支持突起(32,33,36)を有し、前記支持突起により互いに係合している、
請求項16又は17に記載の構造部品(10)。
【請求項19】
前記支持突起(32,33,36)はそれぞれ、本質的に前記構造部品(10)の長手方向(x)に形成されている、
請求項18に記載の構造部品(10)。
【請求項20】
前記バンパ構造体に設けられた空気バッフルの形態をしている、
請求項1ないし19のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項21】
前記バンパ構造体中の多機能部品としての役目を果たす、
請求項1ないし20のいずれか1項に記載の構造部品(10)。
【請求項22】
フォグランプ、予備ヘッドランプ、少なくとも1つの温度センサ等を収納する、
請求項21に記載の構造部品(10)。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載の構造部品(10)を有する自動車用バンパ構造体(38,42)。
【請求項24】
前記垂直方向(y)にキャビティ(41)を有する緩衝器(39)により車体の横方向キャリヤ(29′)に取り付けられる、
請求項23に記載のバンパ構造体(38,42)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−513832(P2007−513832A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543650(P2006−543650)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004054
【国際公開番号】WO2005/056344
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505156352)デコマ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)