説明

自動車用ペダル

【課題】ペダルパッドがペダルアームから外れにくいペダルを提供すること
【解決手段】パーキングブレーキ装置に用いられるペダルアームは、上端部でブラケットに枢止され、下端部で運転者による操作荷重を受ける。下端部に設けられた取付部にペダルパッド4が装着され、運転者の足が置かれる。取付部は運転者の操作方向に凹状となっており、操作荷重は取付部の下縁部8cで受け、この操作荷重によってペダルパッド4は踏み込み面8dの下縁部8c側に押さえつけられる。そのため、運転者がペダルパッド4を上縁部8aから下縁部8c方向の踏みずらす操作を行ったとしても、ペダルパッド4はペダルアームから外れにくい構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足踏み式パーキングブレーキ装置用のペダル、ブレーキペダル及びアクセルペダル等の自動車用ペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動車用ペダルとしては、車体に固定されたブラケットに上端部が回動可能に取り付けられるとともに、下端部で運転者によって踏み込まれるペダルアームと、このペダルアームの下端部に設けられた取付部に取り付けられて運転者の足が置かれるペダルパッドとを備えたものが知られている。
【0003】
このような自動車用ペダルとして、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の足踏み式パーキングブレーキ装置において、ブレーキレバーは運転者の近傍の足元に延び、その先端には運転者の足方向に踏面を向けたペダルが固設され、このペダルの踏面にはパッドが取付けられている。パッドは、ペダルの周縁よりも外側に張り出さない外形とされて、その裏面に形成された二つの突起をペダル中央に形成された二つの穴に差込むことにより取付けられている。
【0004】
これにより、パッドの取り付けの容易性は確保され、しかも、運転者がブレーキレバーを操作しようとして引上げた足の先がパッドの周縁に引っ掛からず、不用意にパッドが外れてしまうことを防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−319226
【発明の概要】
【0006】
上述した特許文献1に記載の足踏み式パーキングブレーキ装置においては、運転者の足がペダルの裏側からパッドへの引っ掛かりによるパッドの外れを防止することができる。
【0007】
ところで、運転者がパッドを踏込む際に、足を下方に滑らしながら操作する場合や、足を捩りながら踏込み操作する場合や、足が滑りやすい状態で操作する場合などが考えられる。しかしながら、上述したようにパッドはその裏面に形成された二つの突起をペダル中央に形成された二つの穴に差込むことにより取り付けられているのみである。したがって、上記のようなパッドの下端部に踏み込みによる下向きの荷重がかかると、てこの原理で上端部が浮き上がる力が作用してペダルに差し込まれているパッドが容易に抜けるおそれがある。また、パッドに踏み込みによる捩じり荷重がかかると、パッドが突起を中心に捩じられて細い突起が破損してパッドが外れるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みて、ペダルパッドがペダルアームから外れにくいペダルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上端部が車体に回動可能に取り付けられるとともに、下端部が運転者によって操作されるペダルアームと、ペダルアームの下端部に設けられ、運転者の操作を受ける凹状の面を有した取付部と、取付部の凹状の面に密接する凸状部を有するとともに、取付部に係合するペダルパッドとを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、運転者がペダルアームを操作することによって下端部に発生する操作荷重は、ペダルパッドの凸状部に密接する凹状の取付部で受ける。すなわち取付部が凹状であるため、操作荷重の下方向(ペダルパッドの上端部から下端部方向)の成分をペダルパッドの凸状部から凹状の取付部で受けることとなる。そのため、ペダルパッドは操作荷重の下方向の荷重に対して外れにくくなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、ペダルパッドが取付部の縁部に係合していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、取付部の縁部にペダルパッドが係合しているため、取付面方向の荷重はペダルパッドで受ける。そのため、取付面に対してペダルパッドに回転方向の荷重がかかったとしても、ペダルパッドは取付面方向の荷重に対して外れにくくなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、取付部の縁部が操作方向に屈折していることを特徴とする。
【0014】
上記構成によると、操作方向に屈折した取付部の縁部にペダルパッドが係合する。操作方向に対して反対方向の荷重は、屈折した取付面の縁部で受けるため、運転者の操作方向の反対方向からの荷重に対して外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のパーキングブレーキ装置の概略図を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるペダルアームの下端部の拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるペダルアームの下端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態であるパーキングブレーキペダル、ブレーキペダル、アクセルペダルの自動車用ペダル構造について、足踏み式パーキングブレーキ装置のパーキングブレーキペダルを例にとり説明する。なお、パーキングブレーキペダルやアクセルペダルについても、ペダルアームの下端部及びペダルパッドの形状は同様である。
【0017】
図1は足踏み式パーキングブレーキ装置1を示す概略図である。足踏み式パーキングブレーキ装置1は、車体に固定されたブラケット2に回動可能にペダルアーム3が設けられている。
【0018】
ペダルアーム3は、その上端部6で車体に固定されたブラケット2に取り付けられることによりブラケット2に枢支されている。ペダルアーム3の下端部7にはペダルパッド4が設けられ、運転者により踏み込まれることで、ペダルアーム3がその上端部6を中心に回動する。
【0019】
足踏み式パーキングブレーキ装置1はロック機構5を有しており、運転者からペダルアーム3が踏み込まれることによって当該ペダルアーム3がロックされ、再度踏み込まれることによってペダルアーム3のロックが解除される。また、ペダルアーム3は、ブレーキケーブルを介して図示しないブレーキ機構に接続されている。これにより、運転者によってペダルパッド4が踏み込まれると、ペダルアーム3が回動されてブレーキケーブルを引っ張り、ブレーキ機構を作動させる。また、ペダルアーム3は図示しないリターンスプリングによって付勢されており、ブレーキ機構を作動させていないときにはブラケット2に設けたストッパに当接して回動が規制される。
【0020】
ペダルアーム3は、金属板をプレス加工して製造され、ペダルアーム3の断面は略コ字状に形成されている。そのため、容易かつ低コストで製造することができ、また、略コ字状であるため、足の踏み込む力に対抗する十分な剛性を得るとともに軽量化することができる。
【0021】
図2はペダルアーム3の下端部7の拡大図である。ペダルアーム3は上端部6から下端部7まで延びる側板9と、下端部7における側板9から延出する取付部8とが設けられている。
【0022】
取付部8は、上縁部8aと側縁部8bと下縁部8cとを有した板状で形成される。取付部8は、運転者の踏み込み操作方向かつ、上縁部8aと下縁部8cとの間方向に湾曲した凹状である。
【0023】
ペダルアーム3の取付部8には、ペダルパッド4が取り付けられている。ペダルパッド4は、ペダルアーム3が運転者によって踏込み操作される際に運転者の足が置かれるものである。ペダルパッド4は、足がペダルパッド4上を滑るのを防止したり踏込み時の感触を良くしたりするために、弾性を有するゴムまたは軟質合成樹脂で形成されている。
【0024】
ペダルパッド4は、取付部8の上縁部8aと側縁部8bと下縁部8cとに係合するとともに、ペダルアーム3の側板9に設けられた係合部10に係合することで取付部8を覆うようにペダルアーム3に取り付けられる。ペダルパッド4は取付部8に対して捻りこませるように取り付けられるため、容易に取付部8に取り付けることができる。この時、ペダルパッド4は取付部8の踏み込み面8dに密接に取り付けられることで、ペダルパッド4に与えられる踏力が取付部8に伝達される。ペダルパッド4は、取付部8の上縁部8aと側縁部8bと下縁部8cとに係合する部位や係合部10や踏み込み面8dに密接する部位はゴムまたは軟質合成樹脂で一体的に形成されている。また、取付部8の凹状の踏み込み面8dと密接するため、踏み込み面8dと密接するペダルパッド4の面は凸状となる。
【0025】
運転者によってペダルパッド4が踏まれると、ペダルパッド4を下端部7に設けられた取付部8を介して、ペダルアーム3が上端部6を中心に回動する。この時、運転者によってペダルパッド4上縁部8aから下縁部8c方向の踏みずらす操作を行ったとしても、運転者の踏み込みによる踏力を踏み込み面8dの下縁部8c側で受けることになり、踏力によってペダルパッド4が踏み込み面8dの下縁部8c側に押さえつけられるため、ペダルパッド4は取付部8から外れにくい構成となる。さらに、ペダルパッド4は取付部8の上縁部8aと側縁部8bと下縁部8cとに係合しているため、ペダルパッド4を捩じる操作を行ったとしても外れにくい構成となる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図3を用いて説明する。上述の第1実施形態と第2実施形態との相違点は取付部8の形状とペダルパッド4の取り付けであるため、以下相違点のみを説明する。第2実施形態の取付部8は、運転者の操作方向に屈折した上縁部8aと下縁部8cとを有している。取付部8の外縁に係合するペダルパッド4は運転者の操作方向に屈折した上縁部8aと下縁部8cとに係合する。そのため、運転者の足がペダルパッド4の裏から引っ掛かるような操作があったとしても、ペダルパッド4が取付部8から外れにくくすることができる。
【0027】
なお、第2実施形態において、取付部8の側縁部8bも運転者の操作方向に屈折させてもよい。これによると、取付部8の側縁部8b側の裏から引っ掛かる操作が行われたとしても、ペダルパッド4が取付部8から外れにくくすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ・・・パーキングブレーキ装置
2 ・・・ブラケット
3 ・・・ペダルアーム
4 ・・・ペダルパッド
5 ・・・ロック機構
6 ・・・上端部
7 ・・・下端部
8 ・・・取付部
8a・・・上縁部
8b・・・側縁部
8c・・・下縁部
8d・・・踏み込み面
9 ・・・側板
10・・・係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が車体に回動可能に取り付けられるとともに、下端部が運転者によって操作されるペダルアームと、
前記ペダルアームの下端部に設けられ、運転者の操作を受ける凹状の面を有した取付部と、
前記取付部の前記凹状の面に密接する凸状部を有するとともに、前記取付部に係合するペダルパッドとを備えたことを特徴とするペダル。
【請求項2】
前記ペダルパッドは、前記取付部の縁部に係合していることを特徴とする請求項1に記載のペダル。
【請求項3】
前記取付部の縁部は、操作方向に屈折していることを特徴とする請求項2に記載のペダル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−208784(P2012−208784A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74602(P2011−74602)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】