自動車用ホイール
【課題】ハブボルト挿通孔回りの変形、特に挫屈してしまうことを防止することが出来るアルミニュームで製造された自動車用ホイールの提供。
【解決手段】アルミニューム製の自動車用ホイールにおいて、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、402〜407)に形成されており、該インサート(40、402〜407)はアルミニュームと別素材で構成されており、ディスク(2)を構成するアルミニューム(鋳造アルミニューム、鍛造アルミニューム)に摩擦圧接により接合されている。
【解決手段】アルミニューム製の自動車用ホイールにおいて、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、402〜407)に形成されており、該インサート(40、402〜407)はアルミニュームと別素材で構成されており、ディスク(2)を構成するアルミニューム(鋳造アルミニューム、鍛造アルミニューム)に摩擦圧接により接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽合金(主としてアルミニューム合金)の鋳造又は鍛造で製造される自動車用ホイールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ホイールは、従来は、鋼製ホイールが主であった。
車両の軽量化や、車両のばね下質量、即ち懸架装置に取り付く車軸及びホイールの質量の軽量化による乗り心地及び運動性能の向上のため、そして、デザイン上の自由度が高い等の理由によって、近年、自動車用ホイールは、鋼製ホイールからアルミニューム製ホイールへの転換が進んでいる。
【0003】
アルミニューム製ホイールには、鋳造アルミホイールと、鍛造アルミホイールがある。
図13において、鋳造アルミニューム製の大型車両用ホイール1のカットモデルを立体的に示す。
アルミホイールは、鋼製ホイールに対して軽量であり、また、熱伝導率が優れていると言う利点を有している。
図13において、鋳造アルミホイールにおける熱伝導率が優れていると言う利点を活かして、符号15で示すフィン、或いは同図の符号17で示すリブを形成することにより、ホイール1に組込まれるタイヤや、ホイール1内に配置される図示しないブレーキやハブベアリングにおける空冷効果を向上することが出来る。また、鋳造アルミホイールは、デザインの自由度が高い。
【0004】
ところで、アルミニュームは、鉄に比較してヤング率が低く、変形し易い。換言すれば、アルミニュームは、鉄や鋼に比較して、いわゆる「強度」が低い。
そのため、アルミニューム製ホイールは、鋼製ホイールに比較して、厚さ寸法を大きくし、或いは、断面形状や加工を工夫して、変形を防止する必要がある。
【0005】
アルミニュームで製造された自動車用ホイールは、鋼製のホイールに比較して軟らかく、変形し易い。特に、ディスク取付用ボルト孔周辺の領域(ホイールディスクのハブボルト取り付け部)は、ハブボルトの締め付け力と、ハブボルトに作用する外力が過大になると変形し易い(凹み易い)。
【0006】
図14は、大型車両の車軸側のハブへ一般的なアルミニューム製ホイールを取り付けた状態を示している。
図14において、ハブ100のフランジ102には、複数(例えば8個所)のディスク取付用ボルト孔(ハブボルト取付孔)103が形成されている。
ハブボルト取付孔103には、フランジ102の(図14における)下方の面102a側からハブボルトBが挿入されている。
【0007】
ハブボルト取付孔103に挿入されたハブボルトBは、ホイール1のディスク2に形成されたハブボルト挿通孔4を貫通している。そして、ディスク2の車両外側(図14における上方)の面2aから、ホイールナットNが、ハブボルトBに螺合している。
【0008】
ホイールナットNは、ホイール1と接する側の端部外周が、球面Nrに形成されている。球面Nrは、図14の下方へ凸状に形成されている。
ホイール1のハブボルト挿通孔4には、ディスク2の表裏2面2a、2bの近傍個所に、凹状の球面座4rが形成されている。凹状の球面座4rは、ホイールナットNの凸状の球面Nrと相補形状となっている。
ホイールナットNを締め込むことによって、ホイールナットNの球面座Nrとハブボルト挿通孔4の球面座4rとは、係合して密着する。
【0009】
ここで、ホイールナットNの締め込みは、例えば、圧縮空気によって駆動されるナットランナー等によって行われる。ナットランナーによる締め込みは、緩みを防止するために、締め付けトルクを過大にする傾向がある。
係る過大な締め付けトルクに加え、締め付け完了間際には、衝撃トルクが加わるので、アルミニュームの球面座4rが変形してしまうという問題が存在する。
【0010】
また、車両は、長年に亘り、タイヤ交換を繰り返す。そしてタイヤ交換時には、ホイールはハブから取り外され、再びハブに取り付けられる。その様なタイヤ交換を繰り返すことにより、アルミホイール1のハブボルト挿通孔4における球面座4rは変形してしまう。
かかる変形の発生は、重要保安部品であるホイールにおいて、看過できない問題である。
【0011】
そのような問題に対処するために、ハブボルト挿通孔周辺の領域(ディスクのハブ取り付け部)に対して、従来より、種々の強度対策が施されている。
その様な強度対策としては、例えば、アルミホイールのハブボルト挿通孔周辺の領域に対するバニシング加工、ショットピーニング加工等、素材表面の密度を高める処理がある。
しかし、母材であるアルミニュームの強度自体が低いので、係る加工を行っても、締め付けトルクが過大の場合には、アルミホイール1のハブボルト挿通孔4(図14)の周辺部、例えば球面座4rの変形を防止することは困難であった。
【0012】
その他の技術として、成形した第1次成形部品の一部を、成形型のキャビティ内の溶湯が最も遅く凝固する個所近傍に押し付けて、第1次成形品と第2次成形品との密着性を向上する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、係る従来技術は、ハブボルト挿通孔周辺の変形という上述した従来技術の問題点を解決するものではない。
【特許文献1】特開2005−81377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、アルミニュームで製造された自動車用ホイールであって、ハブボルト挿通孔回り(ディスクのハブ取り付け部)の変形を防止することが出来る自動車用ホイールの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の自動車用ホイール(1)の製造方法は、軽合金製の自動車用ホイールの製造方法において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、401〜407)に形成されており、該インサート(40、401〜407)はディスク(2)の素材(軽合金。例えば鋳造アルミニューム、鍛造アルミニューム)とは別素材(例えば鋼鉄系材料)で構成されており、前記ディスク(2)を構成する軽合金に摩擦圧接により接合されており、前記インサート(40、401〜407)を前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代(λ)が、前記ディスク(2)の板厚方向の位置で異なっていることを特徴としている(請求項1)。
ここで、インサート(40、401〜407)は、例えばステンレス鋼(SUS)、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)で構成されるのが好ましい。
【0015】
本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも大きい形状であるのが好ましい(請求項2:図3、図4)。
ここで、「インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)」とは、「インサート(40)の傾斜した外周面(40S)のディスク平面(2fr)に対する傾き角(θs)」であり、「インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)」とは、「インサート接合用の傾斜した孔(40BA)の内壁面のディスク平面(2fr)に対する傾き角(θh)」である。
【0016】
また本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(401)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも小さい形状であるのが好ましい(請求項3:図5、図6)。
【0017】
そして本発明において、インサート(402)における摩擦圧接の際に圧入する側の縁部にはフランジ(40f)が設けられているのが好ましい(請求項4:図7)。
【0018】
さらに本発明において、前記インサート(403)は、前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に構成されているのが好ましい(請求項5:図8)。
換言すれば、前記インサート(403)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、フランジ(40f)が設けられている側の傾斜角度(θs1)に対して、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の傾斜角度(θs2)が大きくなる様に構成することが出来る。
【0019】
或いは前記ディスク(2)のインサート接合用孔(40BA)は、インサート(404)を摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に形成されているのが好ましい(請求項6:図9)。
換言すれば、ディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)は、フランジ(40f)が設けられている側の傾斜角度(θh1)に対して、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の傾斜角度(θh2)が小さくなる様に構成することが出来る。
【0020】
そして本発明において、インサート(405〜407)の外周面(40S)には、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)とが形成されているのが好ましい(請求項7:図10〜図12)。
ここで、いわゆる「山」(40sm)の数と「谷」(40sv)の数を複数個ずつ設けても良い(図12)。
または、インサート(406)の外周面(40S)に、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)を1個所形成しても良い(図11)。この場合、ディスク(2)の厚さ方向の両端部(図11では上下両端部)が、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)である。
【発明の効果】
【0021】
上述する構成を具備する本発明によれば、例えば鋼鉄系材料(例えばSUS、S40C〜S55C、STK400〜STK540、SS400)で構成されたインサート(40、401〜407)は、ホイール本体よりも高強度であり、当該インサート(40、401〜407)にディスク取付用のボルト孔(4)が設けられている。そのため、ナットの締め付けトルクが強大である場合にも、インサート(40、401〜407)は鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームに比較して変形し難く、長年に亘り、タイヤ交換等を繰り返してもナットの座面等のボルト孔(4)周辺が「いびつ」になることは防止される。
【0022】
そして、アルミニューム鋳造或いはアルミニューム鍛造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、デザインの自由度が高いというメリット(特に鋳造アルミニューム)、軽量であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)、特に鋳造アルミホイールはフィンやリブが形成し易く、熱伝導率が良好であることも手伝って、ホイール全体の空冷効果が良好であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)等のメリットを損なうこと無く、そのようなメリットを十分に享受することが出来る。
【0023】
これに加えて本発明によれば、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)が基材であるアルミニュームよりも強度の高い材質のインサート(40、401〜407)で形成されるため、ボルト孔(4)周辺領域の強度が十分に得られる。その結果、アルミホイール(1)のディスク(2)の厚さ方向寸法を、低減することも可能になる。
【0024】
そして本発明によれば、インサート(40、401〜407)はディスク(2)を構成する軽合金(例えばアルミニューム合金)に摩擦圧接により接合されているので、インサート(40、401〜407)をディスク(2)内に鋳くるむ場合に比較して、製作が容易となる。
【0025】
本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とが異なる様に適宜設定することにより(請求項2、請求項3)、ディスク(2)の厚さ寸法を大きくしなくても、インサート(40)を摩擦圧接することが可能である。インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とが等しい場合には、押し付け圧力が不足するため、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして(ディスク2の厚みをアップして)、不足する押し付け圧力を補わなければならない。それに対して、本発明では、インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とを異なる角度に設定し、押し付け圧力が増大しているので、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして、押し付け圧力の不足を補う必要が無い。
そして本発明によれば、摩擦圧接されることにより、インサート(40)がディスク(2)の材料(母材)であるアルミニュームを押しのけるように圧入され、ディスク(2)と一体的に接合するので、インサート(40)がディスク(2)に対して強固に接合される。
さらに、摩擦圧接に必要な傾斜角度を大きく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来る。
【0026】
本発明において、インサート(402)における摩擦圧接した側(図7では上方)の縁部にフランジ(40f)を設ければ(請求項4)、インサート(402)とディスク(2)との接合をさらに強固にすると共に、インサート(402)がディスク(2)から抜け出してしまう(剥離する)ことが防止される。
【0027】
さらに本発明において、インサート(403、404)の外周面(40S)において、その傾斜角度(θs)が途中で変化して、インサート(403、404)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔の内壁面の傾斜角度(θh)と異なる様に構成された領域を設ければ(請求項5、請求項6)、インサート(403、404)がディスク(2)の材料を押しのけて圧入する領域(締め代λ)が大きくなり、インサート(403、404)がディスク(2)に接合する力がさらに大きくなる。
【0028】
これに加えて、インサート(405〜407)の外周面(40S)に、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)とが形成されていれば(請求項7:図10〜図12)、摩擦圧接に必要な傾斜角度(θs)を小さく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来ると共に、前記傾斜角度(θs)とは逆方向に傾斜した傾斜角度をインサート(40)の外周面(40S)に形成することが出来る。
従って、フランジ(40f)を設けなくても(図12)、インサート(407)がディスク(2)から抜け出してしまう(剥離する)ことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図4を参照して第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係るアルミホイール1の1/4の部分を正面から見た状態を示している。図1におけるA1−O−A2断面が、図2に示されている。図1において、符号Cpは、ハブボルト挿通孔4及びインサート40が配列されているピッチサークルである。
図1、図2において、アルミホイール(ホイール)1は傾斜部1T(図2)を有しており、ディスク2と図示しないリムとは傾斜部1Tにより接続されている。
ディスク2と傾斜部1Tは、以下で詳述するインサート40の部分を除き、鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームを素材(母材)としている。
なお、図2では、傾斜部1Tの任意の点Pを通過する断面Lcよりも、左側の領域が省略された状態で示されている。
【0031】
図1及び図2において、ディスク2の中心部の領域にはハブ嵌合孔3が形成されている。ハブ嵌合孔3には、図示しない車軸のハブの先端が嵌め込まれる。
ハブ嵌合孔3の周辺近傍の領域であって、ハブボルト挿通孔4を含む領域には、複数の円環形状のインサート40が、摩擦圧接によりディスク2へ接合されている。ここで、インサート40をディスク2へ摩擦圧接する詳細については、図3以下を参照して後述する。また、ハブボルト挿通孔4の構成についても、図3以下の断面図を参照して後述する。
【0032】
図2で示す様に、ディスク2の表面(ホイール1が凸状に突出した面。図2では右側の面)2aと、表面2aの反対側に位置する裏面2b(図2では左側の面)とにおいて、インサート40における半径方向内方端部には、球面座4rが形成されている。
そして、表面2a側の球面座4rと、裏面2b側の球面座4rとが、ストレート孔4sで貫通する様な形状で、ハブボルト挿通孔4が構成されている。
【0033】
インサート40の材料としては、ディスク2を形成する母材(例えばアルミウム)に対して十分に硬く、且つ、耐食性が良好な材料であるステンレス鋼(SUS)が好ましい。
また、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)等をインサートの材料として用いても良い。
【0034】
図2において、ディスク2表面に露出している円環状部分であるインサート40の厚さ寸法(図2における左右方向寸法)は、ディスク2の厚さ寸法T2と同一である。
また図2において、インサート40とディスク2との境界が、符号40Bで示されている。
【0035】
ハブボルト挿通孔4及びインサート40の詳細が、図3で示されている。
図3において、インサート40を摩擦圧接する前のディスク2では、インサート接合用の孔は、その内壁面が符号40BAで示される位置である。
これに対して、インサート40を摩擦圧接した後のディスク2では、インサート接合用の孔40BAの内壁面と、インサート40の外周面40Sとの境界が、符号40Bで示されている。
インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度は、図3において符号「θs」で示されている。そして、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度は、図3において符号「θh」で示されている。
【0036】
ここで、「傾斜角度θs」は、インサート40の傾斜した外周面40Sのディスク平面2frに対する傾き角である。そして「傾斜角度θh」は、インサート接合用の傾斜した孔40BAの内壁面のディスク平面2frに対する傾き角である。
図3において、インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度θsは、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも大きい。すなわち、
θs>θh
となっている。
【0037】
この様に設定することにより、図3の符号「λ(締め代)」で示す個所の分だけ、インサート40がディスク2の材料(母材)を押しのけるように圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート40がディスク2に対して、強固に接合される。
そして、ディスク2の厚さ寸法が大きくなくても、インサート40が十分な強度で摩擦圧接される。
さらに、摩擦圧接に必要な傾斜角度θsを小さく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来る。インサート40の傾斜角度θsと、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θhとが等しい場合には、押し付け圧力が不足するため、ディスク2の板厚方向寸法を大きくして、不足する押し付け圧力を補わなければならないのに対して、上述した様に傾斜角度θs>傾斜角度θhとすれば、押し付け圧力が増大し、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして、押し付け圧力の不足を補う必要が無くなるのである。
【0038】
インサート40をディスク2に摩擦圧接する態様について、図4を参照して説明する。
インサート40をディスク2に摩擦圧接する時に、そのインサート40(鋼製)における棒状部材R(鋼製)は、図4において点線で示す様に、中空に構成されている。
【0039】
摩擦圧接を行うに当っては、棒状部材Rを押し込む側と反対側(図4では下方)に治具Dを設置して、棒状部材Rを高速回転させながら押し込む。その際に、治具Dは、ディスク2のハブ嵌合孔3等を利用して、位置合わせ(芯合わせ)をする作用を奏する。
治具Dは、棒状部材Rの先端の受容部が凹み部分Duを有して構成されている。凹み部分Duは、摩擦圧接時にインサート接合用孔40BA及びインサート40から発生する金属粉の逃げ空間を構成している。
治具D(図4における下方)にはガス抜き用の穴Hgが形成されており、穴Hgを介して摩擦圧切の際に発生した高圧気体が逃げるようになっている。
【0040】
図4は、摩擦圧接により、中空の棒状部分Rがディスク2のインサート接合用孔40BAに圧入されて、ディスク2の材料と一体化した状態が示されている。
係る状態から、図4において符号C1、C2で示す仮想線に沿って、中空の棒状部分Rを切断する。切断後、ディスク2の材料と一体化した鋼材が、インサート40としてディスク2内に残存する。
その後、インサート40の半径方向内方の軸方向端部(図3、図4の上下方向端部)を切削加工或いは研削加工して、球面座4rを形成する。
【0041】
図1〜図4の第1実施形態によれば、インサート40はステンレス鋼(SUS)、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)等により構成されている。
基材である鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームに比較して、インサート40は硬く、強度が高いので、ナットの締め付けトルクが強大であっても、変形し難い。
そのため、長年に亘って、タイヤ交換等によりハブの着脱を繰り返しても、球面座4r(図2、図3)の変形は防止される。
また、インサート40にハブボルト挿通孔4が形成されており、ハブボルト挿通孔4周辺領域はインサート40で構成されることになるので、ハブボルト挿通孔4周辺領域の強度が十分に得られ、タイヤ交換等によりハブ着脱を繰り返しても、挿通孔4の変形や挫屈が回避できる。
その結果、従来のアルミニュームホイール(鋳造アルミニュームホイールまたは鍛造アルミニュームホイール)に比較して、ホイール1の厚さ方向寸法を、低減することも可能になる。
【0042】
このように、図1〜図4の第1実施形態によれば、アルミニュームの鋳造または鍛造により形成された自動車用ホイールにおける前述の種々の問題点を解消することが出来る。
そして、アルミニュームの鋳造または鍛造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、鋼製ホイールよりも軽量であるメリット、鉄製ホイールよりも熱伝導率が良好であり、鋳造アルミニュームホイールでは、フィン(或いは、リブ)形状による空冷効果が良好であるというメリットや、デザインの自由度が高いと言うメリットを損なわずに、十分に享受することが出来る。
【0043】
さらに第1実施形態では、インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度θsが、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも大きい(θs>θh)ので、図3の符号「λ(締め代)」で示す個所の分だけ、インサート40がディスク2の材料(母材)を押しのけるように圧入される。インサート40圧入の際にディスク2の母材を押しのける抵抗は、インサート40を押し込む側と反対側(図3の下方)に行くにしたがって徐々に小さくなるが、これを補償する様に、第1実施形態では、締め代λがインサート40を押し込む側と反対側に行くにしたがって大きくなっているので、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、大きな外力に対しても、インサート40がディスク2から剥離して外れてしまうことが防止される。
【0044】
ここで、第1実施形態では、インサート40の外周面における傾斜角度θsと、インサート接合用孔の内壁面の傾斜角度θhとは、共にインサートを摩擦圧接する側(図3、図4における上方)の径が大きく、その反対側(図3、図4における下方)が小さくなるような傾斜が設けられている。そのため、図3、図4において上方から下方へ向かう外力によって、インサート40がディスク2から剥離して、図3、図4における下方へ抜けてしまうことはない。
そして明確には図示されていないが、θs及びθhの数値を適宜設定することにより、或いは好適な締め代を設定することにより、図3、図4において下方から上方へ向かう外力に対しても、インサート40がディスク2から、図3、図4における上方へ剥離して抜けてしまうのを防止できる。
【0045】
次に、図5、図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、図1、図2で示す構成については、第1実施形態とその他の実施形態では共通である。
図5において、第2実施形態に係るインサート401では、その外周面40Sにおける傾斜角度θsが、インサート401を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも小さくなっている。すなわち、 θs<θh となっている。
【0046】
θs<θh とすることにより、第2実施形態における締め代(インサート401がディスク2の材料を押しのけるように圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する領域)は、図5において符号「λ(締め代)」で示す様に、インサート401を摩擦圧接する側(図5、図6の上方)の領域が大きくなるように形成される。
【0047】
図6では、摩擦圧接により、中空の棒状部分RAがディスク2のインサート接合用孔40BAに圧入されて、ディスク2の材料と一体化した状態が示されている。
図5で説明した締め代λの形状の相違に起因して、図6で示す棒状部分RAは、ディスク2に摩擦接合された部分の形状が、図5で示す形状とは異なっている。
ここで図5の形状は、インサート40の外周面における傾斜角度θsが小さくとれる様なスペースがある場合に、好適である。
図5、図6で示す第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0048】
なお、図示の実施形態(特に図3〜図6)において、説明の便宜のため、傾斜角度θs、θhおよび締め代λは、実際の数値とは異なり、ディフォルメして表現されていることを付記する。
【0049】
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図7において、第3実施形態に係るインサート402では、図1〜図4の第1実施形態に対して、インサート402に、フランジ40fが設けられている。
【0050】
図7で示す第3実施形態のインサート402では、ディスク2のインサート打ち込み側の面2f側にフランジ40fが設けられている。
係るフランジ40fを設けることにより、図7において上方から下方に向かう外力がインサート402に負荷されたとしても、インサート402が図7の下方へ抜け出してしまうことが防止される。
図7において上方から下方に向かう外力がインサート402に負荷されても、フランジ40fがディスク2に当接する部分が抵抗するからである。
【0051】
第3実施形態においてもインサート402の外周面における傾斜角度θsと、インサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhとは、共に図7における上方の半径方向寸法が大きく、図7における下方の半径方向寸法が小さくなるような傾斜角が設けられている。そのため、図7において上方から下方へ向かう外力によって、インサート402がディスク2から抜けてしまうことはない。
そしてθs及びθhの数値を適宜設定することにより、或いは好適な締め代λを設定することにより、図7において下方から上方へ向かう外力が作用しても、ディスク2からインサート402が図7の上方へ抜けてしまうことが防止できる。
【0052】
図7において、フランジ40fの周縁部40fdにも、図7の上下方向について傾斜を設けることが可能である。
フランジ40fの周縁部40fdに傾斜を設ければ、傾斜を設けない場合に比較して、インサート402を摩擦圧接する際に、軸中心或いはインサート接合用孔との芯合わせが容易且つ正確に行われる。そのため、摩擦圧接されたインサート402とディスク2との間に、隙間が形成されるのが防止できる。
なお、フランジ40fの周縁部40fdに傾斜を設けないことも可能である。
【0053】
図7で示す第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図6の実施形態と同様である。
【0054】
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図1〜図7の実施形態では、インサート40、401、402の外周面における傾斜角度θsの数値は単一である。
これに対して、図8の第4実施形態では、フランジ40fから離隔した側(図8では下側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs2と、フランジ40f側(図8では上側)の領域におけるインサート403の外周面における傾斜角度θs1とが異なっている。
【0055】
より詳細には、フランジ40f側(図8では上側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs1は、インサート403を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhと同一である。ただし、傾斜角度θhと傾斜角度θs1とが同一である必要は無く、傾斜角度θhが傾斜角度θs1より小さくても良いし、傾斜角度θhが傾斜角度θs1より大きくても良い。
フランジ40fから離隔した側(図8では下側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs2は、傾斜角度θh(図8ではθs1に等しい)よりも大きく、例えば90°に設定されている。
すなわち、 θh=θs1<θs2=90° となっている。
ここで、θs2=90°の場合は、フランジ40f側の領域におけるインサート403の外周面40Sは、いわゆる「円筒」となっている。なお、傾斜角度θs2は90°以上でも、90°以下でも良い。
【0056】
図8において、インサート403の外周面40Sで傾斜角度がθs1とθs2とで変化する境界部分が、符号Bcで示されている。
図8において、インサート403の境界Bcより下方の領域では、 θh<θs2 となっているので、締め代λの内、フランジ45が設けられている側と反対側における締め代λ2がフランジ40fが設けられている側の端部における締め代λ1よりも大きくなり、図1、図2の第1実施形態及び図7の第3実施形態と同様に、インサート403がディスク2の材料(母材)をより多く押しのけるように高い接触圧力で圧入され且つディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート403がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0057】
図8で示す第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図7の実施形態と同様である。
【0058】
次に、図9を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図9の第5実施形態では、インサート404の外周面40Sにおける傾斜角度θsは一定であるが、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔の内壁面40BAの傾斜角度θh1、θh2が、境界Bdで変化している。
すなわち、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAは、その内壁面において、フランジ40fから離隔した側(図9では下側)の領域における傾斜角度θh2と、フランジ40f側(図9では上側)の領域における傾斜角度θh1とが異なっている。
【0059】
より詳細には、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は、フランジ40f側(図9では上側)の領域における傾斜角度θh1は、インサート404の外周面40Sにおける傾斜角度θsと同一である。ただし、傾斜角度θh1と傾斜角度θsとが同一である必要は無く、傾斜角度θh1が傾斜角度θsより小さくても良いし、傾斜角度θh1が傾斜角度θsより大きくても良い。
フランジ40fから離隔した側(図9では下側)の領域における傾斜角度θh2は、インサート404の外周面における傾斜角度θsよりも小さく設定されている。
すなわち、 θs=θh1>θh2 となっている。
【0060】
図9において、インサート404の境界Bdより下方の領域では、 θs>θh2 となっているので、締め代λの内、フランジ45が設けられている側と反対側における締め代λ2がフランジ40fが設けられている側の端部における締め代λ1よりも大きくなり、図1〜図8の実施形態と同様に、インサート404がディスク2の材料(母材)をより多く押しのけるように高い接触圧力で圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート404がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0061】
図9で示す第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図8の実施形態と同様である。
【0062】
次に、図10を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。
図10の第6実施形態では、インサート405の外周面40Sには、半径方向寸法が大きい部分(いわゆる「山」)40smと、半径方向寸法が小さい部分(いわゆる「谷」)40svとが、鉛直方向について2個所ずつ形成されている。
図10において、インサート405の境界40svより下方の領域では、インサート405の傾斜角度θs3とインサート接合用孔40BAの傾斜角度θh3は、θs3>θh3となっているので、図1〜図9の実施形態と同様に、インサート405がディスク2の材料(母材)をより大きく押しのけるように高い接触圧力で圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合して、「締め代」λを構成する。その結果、インサート405がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0063】
図10において、谷40svから下方の山40smに向かう部分は、「逆向きの傾斜」を構成している。図10において、「逆向きの傾斜」部分は2個所形成されている。
図10において、インサート405を摩擦接合する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は円筒形状になっているが、適切な締め代を設けるのであれば、インサート接合用孔40BAの内壁面を傾斜して形成しても良い。そして、インサート接合用孔40BAの内壁面における係る傾斜は、押し込み側(図10では上方)に開いている傾斜に限る必要は無く、押し込み側とは反対側(図10では下方)に開いた傾斜であっても良い。押し込み側とは反対側(図10では下方)に開いた傾斜の場合には、ディスク2の材料(母材)が流動して塑性変形する。
なお、押し込み側とは反対側(図10では下方)に向かって極端に開いていると、インサート405との間に隙間を生じてしまう恐れがあるので、好ましくない。
【0064】
図10では、「山」40smと「谷」40svとは湾曲面で構成されているが、当該「山」40smと「谷」40svとを湾曲面ではなく角(或いは段部)で構成することが可能である。
【0065】
図10において、インサート405を下方から上方に押圧する外力が作用しても、谷40svから下方の山40smにおける「逆向きの傾斜」部分が、係る外力に抵抗する。そのため、インサート405がディスク2から図10の上方へ抜け出てしまうことが防止される。
一方、谷40svからその上方の山40smまでの傾斜部分は、図10において上方から下方に押圧する外力が作用した際に、当該外力に抵抗して、インサート405がディスク2から図10の下方へ抜け出るのを防止している。
図10の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図9の実施形態と同様である。
【0066】
次に、図11を参照して、本発明の第7実施形態について説明する。
図10の第6実施形態では山40smが2個所と谷40svが2個所ずつ形成され、図10の下方から上方へ向かう外力に抵抗する「逆向きの傾斜」部分も2個所に形成されている。
それに対して図11の第7実施形態では、インサート406の外周面40Sには、半径方向寸法が大きい部分(いわゆる「山」)40smが2個所と、半径方向寸法が小さい部分(いわゆる「谷」)40svが、1個所形成されている。
そして、谷40svとその下方の山40smとで形成される「逆向きの傾斜」部分は、1個所設けられている。
【0067】
図11において、インサート406における谷40svの下方の山40smは「逆向きの傾斜」部分を構成しており、当該山40smにおける傾斜角度θs4は、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θh4よりも大きい。
図11の第7実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図10の第6実施形態と同様である。
【0068】
次に、図12を参照して、本発明の第8実施形態について説明する。
図12の第8実施形態では、インサート407の外周面40Sに、半径方向寸法が大きい部分(山)40smが4個所と、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svが3個所形成されている。そして、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svからその下方に存在する山40smまでの「逆向きの傾斜」部分も3個所形成されている。
例えば、図12で最も下方に存在する山40smが「逆向きの傾斜」部分を構成しており、当該山40smの傾斜角度θs5は、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θh5よりも大きい。
【0069】
逆向きの傾斜部分は、図10、図11の各実施形態と同様に、図12において下方から上方に押圧する外力が作用した際に、当該外力に抵抗して、インサート407がディスク2から図12の上方へ抜け出るのを防止している。
【0070】
一方、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svからその上方に存在する山40smまでの傾斜部分は、図12において上方から下方に押圧する外力が作用した際に、当該外力を支持して、インサート407がディスク2から図12の下方へ抜け出るのを防止している。
図12において上方から下方に押圧する外力を支持する傾斜部分がインサート407の外周面40Sに3個所設けられており、インサート407を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は、インサート407を押し込む際に適切な締め代を有しているのであれば、上方から下方へ作用する外力に対して十分に抵抗することが出来る。そのため、図12の第8実施形態では、フランジ(図7〜図11の符号40f)を設ける必要がない。
【0071】
図12の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図11の実施形態と同様である。
ここで、図10〜図12の各実施例では、傾斜部分に加えて逆向きの傾斜部分を有しており、ディスク2の両面の何れから力が作用してもインサート405〜407のディスク2からの逸脱(抜け)が防止できる。したがって、このように構成された自動車用ホイールは、商業車の後輪等におけるダブルタイヤに適用することが、特に好ましい。
ただし、図1〜図9の実施形態においても、傾斜角度θs、θs1、θs2、θh、θh1、θh2を適宜設定することにより、ダブルタイヤに適用可能である。
【0072】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、「逆向きの傾斜」部分が1個所〜3個所形成されているが、より多くの個所に「逆向きの傾斜」部分を構成することが可能である。また、「傾斜」および「逆向きの傾斜」の形状は、角度、山と谷のピッチ、山と山の直径方向寸法、谷と谷の直径方向寸法、あるいは山と谷の直径方向寸法の差が異なるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態の部分正面図。
【図2】図1のA1−O−A2断面図。
【図3】ハブボルト挿通孔及びインサートのA1−O−A2断面拡大図。
【図4】第1実施形態において摩擦圧接した状態を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図6】第2実施形態において摩擦圧接した状態を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図8】本発明の第4実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図9】本発明の第5実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図10】本発明の第6実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図11】本発明の第7実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図12】本発明の第8実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図13】従来技術の鋳造アルミホイールにおける断面斜視図。
【図14】ハブにホイールを取り付ける場合の締結部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0074】
1・・・ホイール
2・・・ディスク
3・・・ハブ嵌合孔
4・・・ハブボルト挿通孔
4r・・・球面座
40・・・インサート
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽合金(主としてアルミニューム合金)の鋳造又は鍛造で製造される自動車用ホイールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ホイールは、従来は、鋼製ホイールが主であった。
車両の軽量化や、車両のばね下質量、即ち懸架装置に取り付く車軸及びホイールの質量の軽量化による乗り心地及び運動性能の向上のため、そして、デザイン上の自由度が高い等の理由によって、近年、自動車用ホイールは、鋼製ホイールからアルミニューム製ホイールへの転換が進んでいる。
【0003】
アルミニューム製ホイールには、鋳造アルミホイールと、鍛造アルミホイールがある。
図13において、鋳造アルミニューム製の大型車両用ホイール1のカットモデルを立体的に示す。
アルミホイールは、鋼製ホイールに対して軽量であり、また、熱伝導率が優れていると言う利点を有している。
図13において、鋳造アルミホイールにおける熱伝導率が優れていると言う利点を活かして、符号15で示すフィン、或いは同図の符号17で示すリブを形成することにより、ホイール1に組込まれるタイヤや、ホイール1内に配置される図示しないブレーキやハブベアリングにおける空冷効果を向上することが出来る。また、鋳造アルミホイールは、デザインの自由度が高い。
【0004】
ところで、アルミニュームは、鉄に比較してヤング率が低く、変形し易い。換言すれば、アルミニュームは、鉄や鋼に比較して、いわゆる「強度」が低い。
そのため、アルミニューム製ホイールは、鋼製ホイールに比較して、厚さ寸法を大きくし、或いは、断面形状や加工を工夫して、変形を防止する必要がある。
【0005】
アルミニュームで製造された自動車用ホイールは、鋼製のホイールに比較して軟らかく、変形し易い。特に、ディスク取付用ボルト孔周辺の領域(ホイールディスクのハブボルト取り付け部)は、ハブボルトの締め付け力と、ハブボルトに作用する外力が過大になると変形し易い(凹み易い)。
【0006】
図14は、大型車両の車軸側のハブへ一般的なアルミニューム製ホイールを取り付けた状態を示している。
図14において、ハブ100のフランジ102には、複数(例えば8個所)のディスク取付用ボルト孔(ハブボルト取付孔)103が形成されている。
ハブボルト取付孔103には、フランジ102の(図14における)下方の面102a側からハブボルトBが挿入されている。
【0007】
ハブボルト取付孔103に挿入されたハブボルトBは、ホイール1のディスク2に形成されたハブボルト挿通孔4を貫通している。そして、ディスク2の車両外側(図14における上方)の面2aから、ホイールナットNが、ハブボルトBに螺合している。
【0008】
ホイールナットNは、ホイール1と接する側の端部外周が、球面Nrに形成されている。球面Nrは、図14の下方へ凸状に形成されている。
ホイール1のハブボルト挿通孔4には、ディスク2の表裏2面2a、2bの近傍個所に、凹状の球面座4rが形成されている。凹状の球面座4rは、ホイールナットNの凸状の球面Nrと相補形状となっている。
ホイールナットNを締め込むことによって、ホイールナットNの球面座Nrとハブボルト挿通孔4の球面座4rとは、係合して密着する。
【0009】
ここで、ホイールナットNの締め込みは、例えば、圧縮空気によって駆動されるナットランナー等によって行われる。ナットランナーによる締め込みは、緩みを防止するために、締め付けトルクを過大にする傾向がある。
係る過大な締め付けトルクに加え、締め付け完了間際には、衝撃トルクが加わるので、アルミニュームの球面座4rが変形してしまうという問題が存在する。
【0010】
また、車両は、長年に亘り、タイヤ交換を繰り返す。そしてタイヤ交換時には、ホイールはハブから取り外され、再びハブに取り付けられる。その様なタイヤ交換を繰り返すことにより、アルミホイール1のハブボルト挿通孔4における球面座4rは変形してしまう。
かかる変形の発生は、重要保安部品であるホイールにおいて、看過できない問題である。
【0011】
そのような問題に対処するために、ハブボルト挿通孔周辺の領域(ディスクのハブ取り付け部)に対して、従来より、種々の強度対策が施されている。
その様な強度対策としては、例えば、アルミホイールのハブボルト挿通孔周辺の領域に対するバニシング加工、ショットピーニング加工等、素材表面の密度を高める処理がある。
しかし、母材であるアルミニュームの強度自体が低いので、係る加工を行っても、締め付けトルクが過大の場合には、アルミホイール1のハブボルト挿通孔4(図14)の周辺部、例えば球面座4rの変形を防止することは困難であった。
【0012】
その他の技術として、成形した第1次成形部品の一部を、成形型のキャビティ内の溶湯が最も遅く凝固する個所近傍に押し付けて、第1次成形品と第2次成形品との密着性を向上する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、係る従来技術は、ハブボルト挿通孔周辺の変形という上述した従来技術の問題点を解決するものではない。
【特許文献1】特開2005−81377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、アルミニュームで製造された自動車用ホイールであって、ハブボルト挿通孔回り(ディスクのハブ取り付け部)の変形を防止することが出来る自動車用ホイールの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の自動車用ホイール(1)の製造方法は、軽合金製の自動車用ホイールの製造方法において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、401〜407)に形成されており、該インサート(40、401〜407)はディスク(2)の素材(軽合金。例えば鋳造アルミニューム、鍛造アルミニューム)とは別素材(例えば鋼鉄系材料)で構成されており、前記ディスク(2)を構成する軽合金に摩擦圧接により接合されており、前記インサート(40、401〜407)を前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代(λ)が、前記ディスク(2)の板厚方向の位置で異なっていることを特徴としている(請求項1)。
ここで、インサート(40、401〜407)は、例えばステンレス鋼(SUS)、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)で構成されるのが好ましい。
【0015】
本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも大きい形状であるのが好ましい(請求項2:図3、図4)。
ここで、「インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)」とは、「インサート(40)の傾斜した外周面(40S)のディスク平面(2fr)に対する傾き角(θs)」であり、「インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)」とは、「インサート接合用の傾斜した孔(40BA)の内壁面のディスク平面(2fr)に対する傾き角(θh)」である。
【0016】
また本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(401)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも小さい形状であるのが好ましい(請求項3:図5、図6)。
【0017】
そして本発明において、インサート(402)における摩擦圧接の際に圧入する側の縁部にはフランジ(40f)が設けられているのが好ましい(請求項4:図7)。
【0018】
さらに本発明において、前記インサート(403)は、前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に構成されているのが好ましい(請求項5:図8)。
換言すれば、前記インサート(403)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、フランジ(40f)が設けられている側の傾斜角度(θs1)に対して、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の傾斜角度(θs2)が大きくなる様に構成することが出来る。
【0019】
或いは前記ディスク(2)のインサート接合用孔(40BA)は、インサート(404)を摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に形成されているのが好ましい(請求項6:図9)。
換言すれば、ディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)は、フランジ(40f)が設けられている側の傾斜角度(θh1)に対して、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の傾斜角度(θh2)が小さくなる様に構成することが出来る。
【0020】
そして本発明において、インサート(405〜407)の外周面(40S)には、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)とが形成されているのが好ましい(請求項7:図10〜図12)。
ここで、いわゆる「山」(40sm)の数と「谷」(40sv)の数を複数個ずつ設けても良い(図12)。
または、インサート(406)の外周面(40S)に、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)を1個所形成しても良い(図11)。この場合、ディスク(2)の厚さ方向の両端部(図11では上下両端部)が、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)である。
【発明の効果】
【0021】
上述する構成を具備する本発明によれば、例えば鋼鉄系材料(例えばSUS、S40C〜S55C、STK400〜STK540、SS400)で構成されたインサート(40、401〜407)は、ホイール本体よりも高強度であり、当該インサート(40、401〜407)にディスク取付用のボルト孔(4)が設けられている。そのため、ナットの締め付けトルクが強大である場合にも、インサート(40、401〜407)は鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームに比較して変形し難く、長年に亘り、タイヤ交換等を繰り返してもナットの座面等のボルト孔(4)周辺が「いびつ」になることは防止される。
【0022】
そして、アルミニューム鋳造或いはアルミニューム鍛造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、デザインの自由度が高いというメリット(特に鋳造アルミニューム)、軽量であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)、特に鋳造アルミホイールはフィンやリブが形成し易く、熱伝導率が良好であることも手伝って、ホイール全体の空冷効果が良好であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)等のメリットを損なうこと無く、そのようなメリットを十分に享受することが出来る。
【0023】
これに加えて本発明によれば、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)が基材であるアルミニュームよりも強度の高い材質のインサート(40、401〜407)で形成されるため、ボルト孔(4)周辺領域の強度が十分に得られる。その結果、アルミホイール(1)のディスク(2)の厚さ方向寸法を、低減することも可能になる。
【0024】
そして本発明によれば、インサート(40、401〜407)はディスク(2)を構成する軽合金(例えばアルミニューム合金)に摩擦圧接により接合されているので、インサート(40、401〜407)をディスク(2)内に鋳くるむ場合に比較して、製作が容易となる。
【0025】
本発明において、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とが異なる様に適宜設定することにより(請求項2、請求項3)、ディスク(2)の厚さ寸法を大きくしなくても、インサート(40)を摩擦圧接することが可能である。インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とが等しい場合には、押し付け圧力が不足するため、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして(ディスク2の厚みをアップして)、不足する押し付け圧力を補わなければならない。それに対して、本発明では、インサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)と、インサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)とを異なる角度に設定し、押し付け圧力が増大しているので、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして、押し付け圧力の不足を補う必要が無い。
そして本発明によれば、摩擦圧接されることにより、インサート(40)がディスク(2)の材料(母材)であるアルミニュームを押しのけるように圧入され、ディスク(2)と一体的に接合するので、インサート(40)がディスク(2)に対して強固に接合される。
さらに、摩擦圧接に必要な傾斜角度を大きく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来る。
【0026】
本発明において、インサート(402)における摩擦圧接した側(図7では上方)の縁部にフランジ(40f)を設ければ(請求項4)、インサート(402)とディスク(2)との接合をさらに強固にすると共に、インサート(402)がディスク(2)から抜け出してしまう(剥離する)ことが防止される。
【0027】
さらに本発明において、インサート(403、404)の外周面(40S)において、その傾斜角度(θs)が途中で変化して、インサート(403、404)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔の内壁面の傾斜角度(θh)と異なる様に構成された領域を設ければ(請求項5、請求項6)、インサート(403、404)がディスク(2)の材料を押しのけて圧入する領域(締め代λ)が大きくなり、インサート(403、404)がディスク(2)に接合する力がさらに大きくなる。
【0028】
これに加えて、インサート(405〜407)の外周面(40S)に、半径方向寸法が大きい部分(40sm:いわゆる「山」)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv:いわゆる「谷」)とが形成されていれば(請求項7:図10〜図12)、摩擦圧接に必要な傾斜角度(θs)を小さく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来ると共に、前記傾斜角度(θs)とは逆方向に傾斜した傾斜角度をインサート(40)の外周面(40S)に形成することが出来る。
従って、フランジ(40f)を設けなくても(図12)、インサート(407)がディスク(2)から抜け出してしまう(剥離する)ことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図4を参照して第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係るアルミホイール1の1/4の部分を正面から見た状態を示している。図1におけるA1−O−A2断面が、図2に示されている。図1において、符号Cpは、ハブボルト挿通孔4及びインサート40が配列されているピッチサークルである。
図1、図2において、アルミホイール(ホイール)1は傾斜部1T(図2)を有しており、ディスク2と図示しないリムとは傾斜部1Tにより接続されている。
ディスク2と傾斜部1Tは、以下で詳述するインサート40の部分を除き、鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームを素材(母材)としている。
なお、図2では、傾斜部1Tの任意の点Pを通過する断面Lcよりも、左側の領域が省略された状態で示されている。
【0031】
図1及び図2において、ディスク2の中心部の領域にはハブ嵌合孔3が形成されている。ハブ嵌合孔3には、図示しない車軸のハブの先端が嵌め込まれる。
ハブ嵌合孔3の周辺近傍の領域であって、ハブボルト挿通孔4を含む領域には、複数の円環形状のインサート40が、摩擦圧接によりディスク2へ接合されている。ここで、インサート40をディスク2へ摩擦圧接する詳細については、図3以下を参照して後述する。また、ハブボルト挿通孔4の構成についても、図3以下の断面図を参照して後述する。
【0032】
図2で示す様に、ディスク2の表面(ホイール1が凸状に突出した面。図2では右側の面)2aと、表面2aの反対側に位置する裏面2b(図2では左側の面)とにおいて、インサート40における半径方向内方端部には、球面座4rが形成されている。
そして、表面2a側の球面座4rと、裏面2b側の球面座4rとが、ストレート孔4sで貫通する様な形状で、ハブボルト挿通孔4が構成されている。
【0033】
インサート40の材料としては、ディスク2を形成する母材(例えばアルミウム)に対して十分に硬く、且つ、耐食性が良好な材料であるステンレス鋼(SUS)が好ましい。
また、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)等をインサートの材料として用いても良い。
【0034】
図2において、ディスク2表面に露出している円環状部分であるインサート40の厚さ寸法(図2における左右方向寸法)は、ディスク2の厚さ寸法T2と同一である。
また図2において、インサート40とディスク2との境界が、符号40Bで示されている。
【0035】
ハブボルト挿通孔4及びインサート40の詳細が、図3で示されている。
図3において、インサート40を摩擦圧接する前のディスク2では、インサート接合用の孔は、その内壁面が符号40BAで示される位置である。
これに対して、インサート40を摩擦圧接した後のディスク2では、インサート接合用の孔40BAの内壁面と、インサート40の外周面40Sとの境界が、符号40Bで示されている。
インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度は、図3において符号「θs」で示されている。そして、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度は、図3において符号「θh」で示されている。
【0036】
ここで、「傾斜角度θs」は、インサート40の傾斜した外周面40Sのディスク平面2frに対する傾き角である。そして「傾斜角度θh」は、インサート接合用の傾斜した孔40BAの内壁面のディスク平面2frに対する傾き角である。
図3において、インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度θsは、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも大きい。すなわち、
θs>θh
となっている。
【0037】
この様に設定することにより、図3の符号「λ(締め代)」で示す個所の分だけ、インサート40がディスク2の材料(母材)を押しのけるように圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート40がディスク2に対して、強固に接合される。
そして、ディスク2の厚さ寸法が大きくなくても、インサート40が十分な強度で摩擦圧接される。
さらに、摩擦圧接に必要な傾斜角度θsを小さく取らなくても、接合強度を大きくすることが出来る。インサート40の傾斜角度θsと、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θhとが等しい場合には、押し付け圧力が不足するため、ディスク2の板厚方向寸法を大きくして、不足する押し付け圧力を補わなければならないのに対して、上述した様に傾斜角度θs>傾斜角度θhとすれば、押し付け圧力が増大し、ディスク(2)の板厚方向寸法を大きくして、押し付け圧力の不足を補う必要が無くなるのである。
【0038】
インサート40をディスク2に摩擦圧接する態様について、図4を参照して説明する。
インサート40をディスク2に摩擦圧接する時に、そのインサート40(鋼製)における棒状部材R(鋼製)は、図4において点線で示す様に、中空に構成されている。
【0039】
摩擦圧接を行うに当っては、棒状部材Rを押し込む側と反対側(図4では下方)に治具Dを設置して、棒状部材Rを高速回転させながら押し込む。その際に、治具Dは、ディスク2のハブ嵌合孔3等を利用して、位置合わせ(芯合わせ)をする作用を奏する。
治具Dは、棒状部材Rの先端の受容部が凹み部分Duを有して構成されている。凹み部分Duは、摩擦圧接時にインサート接合用孔40BA及びインサート40から発生する金属粉の逃げ空間を構成している。
治具D(図4における下方)にはガス抜き用の穴Hgが形成されており、穴Hgを介して摩擦圧切の際に発生した高圧気体が逃げるようになっている。
【0040】
図4は、摩擦圧接により、中空の棒状部分Rがディスク2のインサート接合用孔40BAに圧入されて、ディスク2の材料と一体化した状態が示されている。
係る状態から、図4において符号C1、C2で示す仮想線に沿って、中空の棒状部分Rを切断する。切断後、ディスク2の材料と一体化した鋼材が、インサート40としてディスク2内に残存する。
その後、インサート40の半径方向内方の軸方向端部(図3、図4の上下方向端部)を切削加工或いは研削加工して、球面座4rを形成する。
【0041】
図1〜図4の第1実施形態によれば、インサート40はステンレス鋼(SUS)、機械構造用炭素鋼(S40C〜S55C)、一般構造用炭素鋼(STK400〜STK540)、一般棒鋼(SS400)等により構成されている。
基材である鋳造アルミニュームまたは鍛造アルミニュームに比較して、インサート40は硬く、強度が高いので、ナットの締め付けトルクが強大であっても、変形し難い。
そのため、長年に亘って、タイヤ交換等によりハブの着脱を繰り返しても、球面座4r(図2、図3)の変形は防止される。
また、インサート40にハブボルト挿通孔4が形成されており、ハブボルト挿通孔4周辺領域はインサート40で構成されることになるので、ハブボルト挿通孔4周辺領域の強度が十分に得られ、タイヤ交換等によりハブ着脱を繰り返しても、挿通孔4の変形や挫屈が回避できる。
その結果、従来のアルミニュームホイール(鋳造アルミニュームホイールまたは鍛造アルミニュームホイール)に比較して、ホイール1の厚さ方向寸法を、低減することも可能になる。
【0042】
このように、図1〜図4の第1実施形態によれば、アルミニュームの鋳造または鍛造により形成された自動車用ホイールにおける前述の種々の問題点を解消することが出来る。
そして、アルミニュームの鋳造または鍛造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、鋼製ホイールよりも軽量であるメリット、鉄製ホイールよりも熱伝導率が良好であり、鋳造アルミニュームホイールでは、フィン(或いは、リブ)形状による空冷効果が良好であるというメリットや、デザインの自由度が高いと言うメリットを損なわずに、十分に享受することが出来る。
【0043】
さらに第1実施形態では、インサート40の外周面40Sにおける傾斜角度θsが、インサート40を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも大きい(θs>θh)ので、図3の符号「λ(締め代)」で示す個所の分だけ、インサート40がディスク2の材料(母材)を押しのけるように圧入される。インサート40圧入の際にディスク2の母材を押しのける抵抗は、インサート40を押し込む側と反対側(図3の下方)に行くにしたがって徐々に小さくなるが、これを補償する様に、第1実施形態では、締め代λがインサート40を押し込む側と反対側に行くにしたがって大きくなっているので、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、大きな外力に対しても、インサート40がディスク2から剥離して外れてしまうことが防止される。
【0044】
ここで、第1実施形態では、インサート40の外周面における傾斜角度θsと、インサート接合用孔の内壁面の傾斜角度θhとは、共にインサートを摩擦圧接する側(図3、図4における上方)の径が大きく、その反対側(図3、図4における下方)が小さくなるような傾斜が設けられている。そのため、図3、図4において上方から下方へ向かう外力によって、インサート40がディスク2から剥離して、図3、図4における下方へ抜けてしまうことはない。
そして明確には図示されていないが、θs及びθhの数値を適宜設定することにより、或いは好適な締め代を設定することにより、図3、図4において下方から上方へ向かう外力に対しても、インサート40がディスク2から、図3、図4における上方へ剥離して抜けてしまうのを防止できる。
【0045】
次に、図5、図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、図1、図2で示す構成については、第1実施形態とその他の実施形態では共通である。
図5において、第2実施形態に係るインサート401では、その外周面40Sにおける傾斜角度θsが、インサート401を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhよりも小さくなっている。すなわち、 θs<θh となっている。
【0046】
θs<θh とすることにより、第2実施形態における締め代(インサート401がディスク2の材料を押しのけるように圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する領域)は、図5において符号「λ(締め代)」で示す様に、インサート401を摩擦圧接する側(図5、図6の上方)の領域が大きくなるように形成される。
【0047】
図6では、摩擦圧接により、中空の棒状部分RAがディスク2のインサート接合用孔40BAに圧入されて、ディスク2の材料と一体化した状態が示されている。
図5で説明した締め代λの形状の相違に起因して、図6で示す棒状部分RAは、ディスク2に摩擦接合された部分の形状が、図5で示す形状とは異なっている。
ここで図5の形状は、インサート40の外周面における傾斜角度θsが小さくとれる様なスペースがある場合に、好適である。
図5、図6で示す第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0048】
なお、図示の実施形態(特に図3〜図6)において、説明の便宜のため、傾斜角度θs、θhおよび締め代λは、実際の数値とは異なり、ディフォルメして表現されていることを付記する。
【0049】
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図7において、第3実施形態に係るインサート402では、図1〜図4の第1実施形態に対して、インサート402に、フランジ40fが設けられている。
【0050】
図7で示す第3実施形態のインサート402では、ディスク2のインサート打ち込み側の面2f側にフランジ40fが設けられている。
係るフランジ40fを設けることにより、図7において上方から下方に向かう外力がインサート402に負荷されたとしても、インサート402が図7の下方へ抜け出してしまうことが防止される。
図7において上方から下方に向かう外力がインサート402に負荷されても、フランジ40fがディスク2に当接する部分が抵抗するからである。
【0051】
第3実施形態においてもインサート402の外周面における傾斜角度θsと、インサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhとは、共に図7における上方の半径方向寸法が大きく、図7における下方の半径方向寸法が小さくなるような傾斜角が設けられている。そのため、図7において上方から下方へ向かう外力によって、インサート402がディスク2から抜けてしまうことはない。
そしてθs及びθhの数値を適宜設定することにより、或いは好適な締め代λを設定することにより、図7において下方から上方へ向かう外力が作用しても、ディスク2からインサート402が図7の上方へ抜けてしまうことが防止できる。
【0052】
図7において、フランジ40fの周縁部40fdにも、図7の上下方向について傾斜を設けることが可能である。
フランジ40fの周縁部40fdに傾斜を設ければ、傾斜を設けない場合に比較して、インサート402を摩擦圧接する際に、軸中心或いはインサート接合用孔との芯合わせが容易且つ正確に行われる。そのため、摩擦圧接されたインサート402とディスク2との間に、隙間が形成されるのが防止できる。
なお、フランジ40fの周縁部40fdに傾斜を設けないことも可能である。
【0053】
図7で示す第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図6の実施形態と同様である。
【0054】
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図1〜図7の実施形態では、インサート40、401、402の外周面における傾斜角度θsの数値は単一である。
これに対して、図8の第4実施形態では、フランジ40fから離隔した側(図8では下側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs2と、フランジ40f側(図8では上側)の領域におけるインサート403の外周面における傾斜角度θs1とが異なっている。
【0055】
より詳細には、フランジ40f側(図8では上側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs1は、インサート403を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面の傾斜角度θhと同一である。ただし、傾斜角度θhと傾斜角度θs1とが同一である必要は無く、傾斜角度θhが傾斜角度θs1より小さくても良いし、傾斜角度θhが傾斜角度θs1より大きくても良い。
フランジ40fから離隔した側(図8では下側)の領域におけるインサート403の外周面40Sにおける傾斜角度θs2は、傾斜角度θh(図8ではθs1に等しい)よりも大きく、例えば90°に設定されている。
すなわち、 θh=θs1<θs2=90° となっている。
ここで、θs2=90°の場合は、フランジ40f側の領域におけるインサート403の外周面40Sは、いわゆる「円筒」となっている。なお、傾斜角度θs2は90°以上でも、90°以下でも良い。
【0056】
図8において、インサート403の外周面40Sで傾斜角度がθs1とθs2とで変化する境界部分が、符号Bcで示されている。
図8において、インサート403の境界Bcより下方の領域では、 θh<θs2 となっているので、締め代λの内、フランジ45が設けられている側と反対側における締め代λ2がフランジ40fが設けられている側の端部における締め代λ1よりも大きくなり、図1、図2の第1実施形態及び図7の第3実施形態と同様に、インサート403がディスク2の材料(母材)をより多く押しのけるように高い接触圧力で圧入され且つディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート403がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0057】
図8で示す第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図7の実施形態と同様である。
【0058】
次に、図9を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図9の第5実施形態では、インサート404の外周面40Sにおける傾斜角度θsは一定であるが、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔の内壁面40BAの傾斜角度θh1、θh2が、境界Bdで変化している。
すなわち、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAは、その内壁面において、フランジ40fから離隔した側(図9では下側)の領域における傾斜角度θh2と、フランジ40f側(図9では上側)の領域における傾斜角度θh1とが異なっている。
【0059】
より詳細には、インサート404を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は、フランジ40f側(図9では上側)の領域における傾斜角度θh1は、インサート404の外周面40Sにおける傾斜角度θsと同一である。ただし、傾斜角度θh1と傾斜角度θsとが同一である必要は無く、傾斜角度θh1が傾斜角度θsより小さくても良いし、傾斜角度θh1が傾斜角度θsより大きくても良い。
フランジ40fから離隔した側(図9では下側)の領域における傾斜角度θh2は、インサート404の外周面における傾斜角度θsよりも小さく設定されている。
すなわち、 θs=θh1>θh2 となっている。
【0060】
図9において、インサート404の境界Bdより下方の領域では、 θs>θh2 となっているので、締め代λの内、フランジ45が設けられている側と反対側における締め代λ2がフランジ40fが設けられている側の端部における締め代λ1よりも大きくなり、図1〜図8の実施形態と同様に、インサート404がディスク2の材料(母材)をより多く押しのけるように高い接触圧力で圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合する。その結果、インサート404がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0061】
図9で示す第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図8の実施形態と同様である。
【0062】
次に、図10を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。
図10の第6実施形態では、インサート405の外周面40Sには、半径方向寸法が大きい部分(いわゆる「山」)40smと、半径方向寸法が小さい部分(いわゆる「谷」)40svとが、鉛直方向について2個所ずつ形成されている。
図10において、インサート405の境界40svより下方の領域では、インサート405の傾斜角度θs3とインサート接合用孔40BAの傾斜角度θh3は、θs3>θh3となっているので、図1〜図9の実施形態と同様に、インサート405がディスク2の材料(母材)をより大きく押しのけるように高い接触圧力で圧入され、ディスク2の材料と一体的に接合して、「締め代」λを構成する。その結果、インサート405がディスク2から外れてしまうことが防止される。
【0063】
図10において、谷40svから下方の山40smに向かう部分は、「逆向きの傾斜」を構成している。図10において、「逆向きの傾斜」部分は2個所形成されている。
図10において、インサート405を摩擦接合する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は円筒形状になっているが、適切な締め代を設けるのであれば、インサート接合用孔40BAの内壁面を傾斜して形成しても良い。そして、インサート接合用孔40BAの内壁面における係る傾斜は、押し込み側(図10では上方)に開いている傾斜に限る必要は無く、押し込み側とは反対側(図10では下方)に開いた傾斜であっても良い。押し込み側とは反対側(図10では下方)に開いた傾斜の場合には、ディスク2の材料(母材)が流動して塑性変形する。
なお、押し込み側とは反対側(図10では下方)に向かって極端に開いていると、インサート405との間に隙間を生じてしまう恐れがあるので、好ましくない。
【0064】
図10では、「山」40smと「谷」40svとは湾曲面で構成されているが、当該「山」40smと「谷」40svとを湾曲面ではなく角(或いは段部)で構成することが可能である。
【0065】
図10において、インサート405を下方から上方に押圧する外力が作用しても、谷40svから下方の山40smにおける「逆向きの傾斜」部分が、係る外力に抵抗する。そのため、インサート405がディスク2から図10の上方へ抜け出てしまうことが防止される。
一方、谷40svからその上方の山40smまでの傾斜部分は、図10において上方から下方に押圧する外力が作用した際に、当該外力に抵抗して、インサート405がディスク2から図10の下方へ抜け出るのを防止している。
図10の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図9の実施形態と同様である。
【0066】
次に、図11を参照して、本発明の第7実施形態について説明する。
図10の第6実施形態では山40smが2個所と谷40svが2個所ずつ形成され、図10の下方から上方へ向かう外力に抵抗する「逆向きの傾斜」部分も2個所に形成されている。
それに対して図11の第7実施形態では、インサート406の外周面40Sには、半径方向寸法が大きい部分(いわゆる「山」)40smが2個所と、半径方向寸法が小さい部分(いわゆる「谷」)40svが、1個所形成されている。
そして、谷40svとその下方の山40smとで形成される「逆向きの傾斜」部分は、1個所設けられている。
【0067】
図11において、インサート406における谷40svの下方の山40smは「逆向きの傾斜」部分を構成しており、当該山40smにおける傾斜角度θs4は、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θh4よりも大きい。
図11の第7実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図10の第6実施形態と同様である。
【0068】
次に、図12を参照して、本発明の第8実施形態について説明する。
図12の第8実施形態では、インサート407の外周面40Sに、半径方向寸法が大きい部分(山)40smが4個所と、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svが3個所形成されている。そして、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svからその下方に存在する山40smまでの「逆向きの傾斜」部分も3個所形成されている。
例えば、図12で最も下方に存在する山40smが「逆向きの傾斜」部分を構成しており、当該山40smの傾斜角度θs5は、インサート接合用孔40BAの傾斜角度θh5よりも大きい。
【0069】
逆向きの傾斜部分は、図10、図11の各実施形態と同様に、図12において下方から上方に押圧する外力が作用した際に、当該外力に抵抗して、インサート407がディスク2から図12の上方へ抜け出るのを防止している。
【0070】
一方、半径方向寸法が小さい部分(谷)40svからその上方に存在する山40smまでの傾斜部分は、図12において上方から下方に押圧する外力が作用した際に、当該外力を支持して、インサート407がディスク2から図12の下方へ抜け出るのを防止している。
図12において上方から下方に押圧する外力を支持する傾斜部分がインサート407の外周面40Sに3個所設けられており、インサート407を摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔40BAの内壁面は、インサート407を押し込む際に適切な締め代を有しているのであれば、上方から下方へ作用する外力に対して十分に抵抗することが出来る。そのため、図12の第8実施形態では、フランジ(図7〜図11の符号40f)を設ける必要がない。
【0071】
図12の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図11の実施形態と同様である。
ここで、図10〜図12の各実施例では、傾斜部分に加えて逆向きの傾斜部分を有しており、ディスク2の両面の何れから力が作用してもインサート405〜407のディスク2からの逸脱(抜け)が防止できる。したがって、このように構成された自動車用ホイールは、商業車の後輪等におけるダブルタイヤに適用することが、特に好ましい。
ただし、図1〜図9の実施形態においても、傾斜角度θs、θs1、θs2、θh、θh1、θh2を適宜設定することにより、ダブルタイヤに適用可能である。
【0072】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、「逆向きの傾斜」部分が1個所〜3個所形成されているが、より多くの個所に「逆向きの傾斜」部分を構成することが可能である。また、「傾斜」および「逆向きの傾斜」の形状は、角度、山と谷のピッチ、山と山の直径方向寸法、谷と谷の直径方向寸法、あるいは山と谷の直径方向寸法の差が異なるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態の部分正面図。
【図2】図1のA1−O−A2断面図。
【図3】ハブボルト挿通孔及びインサートのA1−O−A2断面拡大図。
【図4】第1実施形態において摩擦圧接した状態を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図6】第2実施形態において摩擦圧接した状態を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図8】本発明の第4実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図9】本発明の第5実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図10】本発明の第6実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図11】本発明の第7実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図12】本発明の第8実施形態の要部を示す部分拡大断面図。
【図13】従来技術の鋳造アルミホイールにおける断面斜視図。
【図14】ハブにホイールを取り付ける場合の締結部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0074】
1・・・ホイール
2・・・ディスク
3・・・ハブ嵌合孔
4・・・ハブボルト挿通孔
4r・・・球面座
40・・・インサート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽合金製の自動車用ホイールの製造方法において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、401〜407)に形成されており、該インサート(40、401〜407)はディスク(2)の素材とは別素材で構成されており、前記ディスク(2)を構成する軽合金に摩擦圧接により接合されており、前記インサート(40、401〜407)を前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代(λ)が、前記ディスク(2)の板厚方向の位置で異なっていることを特徴とする自動車用ホイールの製造方法。
【請求項2】
インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも大きい形状である請求項1の製造方法。
【請求項3】
インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(401)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも小さい形状である請求項1の製造方法。
【請求項4】
インサート(402)における摩擦圧接の際に圧入する側の縁部にはフランジ(40f)が設けられている請求項1〜3の何れか1項の製造方法。
【請求項5】
前記インサート(403)は、前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に構成されている請求項4の製造方法。
【請求項6】
前記ディスク(2)のインサート接合用孔(40BA)は、インサート(404)を摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に形成されている請求項4の製造方法。
【請求項7】
インサート(405〜407)の外周面(40S)には、半径方向寸法が大きい部分(40sm)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv)とが形成されている請求項1〜4の何れか1項の製造方法。
【請求項1】
軽合金製の自動車用ホイールの製造方法において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、401〜407)に形成されており、該インサート(40、401〜407)はディスク(2)の素材とは別素材で構成されており、前記ディスク(2)を構成する軽合金に摩擦圧接により接合されており、前記インサート(40、401〜407)を前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代(λ)が、前記ディスク(2)の板厚方向の位置で異なっていることを特徴とする自動車用ホイールの製造方法。
【請求項2】
インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも大きい形状である請求項1の製造方法。
【請求項3】
インサート(40)をディスク(2)に摩擦圧接した後におけるインサート(40)の外周面(40S)の傾斜角度(θs)は、インサート(401)をディスク(2)に摩擦圧接する前におけるインサート接合用孔(40BA)の内壁面の傾斜角度(θh)よりも小さい形状である請求項1の製造方法。
【請求項4】
インサート(402)における摩擦圧接の際に圧入する側の縁部にはフランジ(40f)が設けられている請求項1〜3の何れか1項の製造方法。
【請求項5】
前記インサート(403)は、前記ディスク(2)に摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に構成されている請求項4の製造方法。
【請求項6】
前記ディスク(2)のインサート接合用孔(40BA)は、インサート(404)を摩擦圧接したときに、相対する各部の締め代の内、フランジ(40f)が設けられている側と反対側の端部における締め代(λ2)が、フランジ(40f)が設けられている側の端部における締め代(λ1)よりも大きくなる様に形成されている請求項4の製造方法。
【請求項7】
インサート(405〜407)の外周面(40S)には、半径方向寸法が大きい部分(40sm)と、半径方向寸法が小さい部分(40sv)とが形成されている請求項1〜4の何れか1項の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−274468(P2009−274468A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124540(P2008−124540)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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