説明

自動車用ボデーシーラー

【課題】環境上の問題がない材料を用い、簡易な配合により、加熱硬化工程前に光硬化機能を付与して求められる諸性能を改善する。
【解決手段】本発明の自動車用ボデーシーラーは、光重合性成分と熱可塑性樹脂を必須成分として含む。重合性成分である単量体又はオリゴマーの好ましい形態はアクリル酸又はメタアクリル酸の誘導体である。重合性成分である単量体又はオリゴマーの配合割合は、ボデーシーラー全体の合計100重量部に対して0.5〜50重量部が適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機合成による接着剤、特に金属板などのパネルを接合するための自動車用接着剤に関し、特にボデーシーラーと称される自動車用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ボデーシーラーは、パネル接合部に塗布後、その上に仕上げ塗料が上塗りされる。ボデーシーラーは、その上に塗料が上塗りされるので平滑仕上げできることが必要であるため、低粘度で、塗布作業性が良く、比較的低温領域で硬化することが望ましい。そのため、ボデーシーラーとしては塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のものとの共重合樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、又はアクリルとメタアクリルの共重合樹脂(アクリル−メタアクリル共重合樹脂)などの樹脂の粉末とその可塑剤からなるオルガノゾル系の熱可塑性樹脂が使用される。
【0003】
ボデーシーラーは塗料を上塗りする前に仮硬化する必要がある。その仮硬化には一般に加熱法が採用されているので、工場の塗装領域における工程短縮と省エネルギーが望まれている。しかし、これまでの試みは各々欠点があり、この問題の解決には至ってない。
【0004】
溶剤を使用して塗布後その揮発による粘度上昇を仮硬化に利用する方法もあるが、自動車業界のVOC(揮発性有機化合物)規定に反することになるので現実的ではない。
【0005】
ホットアプライと称する方法は、常温では高粘度の接着剤を加熱して塗布可能な粘度にした状態で使用し、冷却時に高粘度に戻ることを仮硬化に代用する方法である。その方法は海外では使用されている。しかしながら、設備を新設しなければならない問題、及び常時加熱に要するエネルギーの問題がある。また、塗布後に塗料の焼付けの為に加熱されるが、ホットアプライ時の温度より焼付け温度の方が高いので、この焼付け時の温度で硬化反応が生じるように設計しなければならないという接着剤設計上の問題もある。さらに、常温で高粘度の接着剤は製造混合時に加熱が必要であるので、その時に反応が進行して貯蔵安定性が悪くなるという問題もある。
【0006】
2液混合型の瞬間硬化型の接着剤とすると、塗布直後に硬化するが、スタチックミキサーなどの混合装置を新設しなければならないという設備投資の問題が起きる。混合装置を用いないとすれば、被着面毎に別々の液を塗布して付き合わせるという工程を採用することになるが、そのような工法は現実的ではない。
【0007】
1液の湿気硬化型接着剤は建築など他の産業界では採用も多いが、自動車産業のラインスピードに追いつく硬化速度で特別な装置を必要とせず貯蔵安定の問題がないものは現実にはない。硬化剤をマイクロカプセル化して1液型とするアイデアもあるが、製造混合中は安定で、塗布後直ぐに割れたり溶けたりして硬化が進むような好都合なマイクロカプセルはまだない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紫外線硬化型接着剤は無溶剤であり、通常はゴム系又は(メタ)アクリル系(アクリル又はメタアクリルを(メタ)アクリルと表示する。)の主鎖に(メタ)アクリル基をもったオリゴマーと、(メタ)アクリル系単量体と、光ラジカル開始剤から成り立っており、充填材を含まない。紫外線照射装置も簡便で、特に最近はLEDなど更に省エネルギータイプのものが市販されている。加熱を必要としないので省エネルギー型であり、短時間硬化であり、カメラレンズなどのガラス同士の接着に使用されている。
【0009】
しかし、紫外線硬化型接着剤をボデーシーラーとして使用しようとすると、原材料価格が現在採用されているボデーシーラーに比較して非常に高価であるほか、以下の技術的な問題がある。
【0010】
一般にボデーシーラーの被着体は透明なガラスと異なり光に対し不透明な鋼板である。
【0011】
また、ガラス同士の場合の接着層厚みは0.1mm前後であるがボデーシーラーの場合は1〜5mmと極端に厚いので、全体に光が到達しにくく、底部が未硬化で残る虞がある。その場合には、押しつぶした時に、饅頭の餡子が飛び出す状態になる可能性がある。
【0012】
さらに、光開始剤によるアクリル系の単量体のラジカル重合の場合は、空気中の酸素がラジカルをトラップして安定化させる。そのため、処方によっては接着面以外で空気中に出ている表面部分は空気中の酸素によって硬化が阻害され、表面が硬化せずにベトベトの状態になりかねない。空気中の酸素の阻害を受けない技術として光で強酸を発生しカチオン重合する紫外線硬化型もある。これは一旦光を受けるとその後はそのまま反応が進行するという利点をもつ。しかし、ボデーシーラーとして多量に使用するには経済的理由から無機充填材を添加する必要がるので、その充填材が持ち込む水分によって反応を阻害されることもある。また、その光カチオン開始剤が高価である上に、アンチモン系であったりフッ素やリンを含んだりするため、昨今の環境関連の問題を含むものが多いので現実的に採用が難しい。
【0013】
既存のボデーシーラーは1〜5mm厚みで塗布した後、140℃程度の加熱で仮硬化の後に塗料を上塗りする。そして、平滑仕上げのためには、低粘度で塗布作業性がよく、比較的低温領域で硬化することが必要であり、硬化後の物性としてはED(電着)塗料に対する接着性と、上塗塗料に対する塗装性と密着性がよいこと、十分な伸び追従性が必要なことなどが要求されている。そのため、現在は塩化ビニル樹脂、その共重合樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、又はアクリル−メタアクリル共重合樹脂の粉末と、それらの樹脂の可塑剤からなるオルガノゾル系の熱可塑性樹脂が使用されている。もし、ボデーシーラーとして通常の紫外線硬化型接着剤を使用した場合、経済的問題のほかに、表面が未硬化で粘着性が残り塗料が塗れないという問題、又は厚みによっては内部が光による硬化が悪いなどの問題が起きる。
【0014】
そこで本発明は、塗布後に紫外線、可視光線、電子線などのエネルギー線を照射することで仮硬化又は硬化させる性能を付与することにより、既存のボデーシーラーに関して改善が望まれている上記の、省エネルギー、省工程が可能となり、またライン上の途中の変形、割れ、脱落又は歪みを防止することが可能な、簡易的かつ経済的に配合できるボデーシーラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、自動車用のボデーシーラーの各種被着体に対する付着力や引張り物性、ED塗料への付着性、上塗塗料の付着性などの特性を満たすように紫外線硬化型接着剤を開発することにより本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち、本発明のボデーシーラーは、単量体又はオリゴマーからなり紫外線、可視光線又は電子線により重合する重合性成分と、熱可塑性樹脂成分とを必須成分として含むものである。
【0017】
紫外線、可視光線、電子線などのエネルギー線により重合する重合性成分である単量体又はオリゴマーの形態としては、ビニル基、アリル基、アリール基などの不飽和結合をもつものでよいが、ラジカル重合性の高いアクリル系又はメタアクリル系のものが好ましい。
【0018】
重合性成分の選択基準はいくつかある。例えば、低皮膚刺激性、低価格、空気中の酸素による硬化阻害を受けにくい多官能基をもつことである。もう一つの必須成分である熱可塑性樹脂との組合わせに応じて、疎水性又は親水性などの相溶性、反応性、貯蔵安定性、伸びや低温曲げなどに関係するガラス転移温度なども選択基準となる。さらに、鋼板、亜鉛鋼板、アルミニウム板、ED塗装鋼板といった被着体の品種も、油面定着などの接着性も選択基準となる。また被着体に対する付着力向上には亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの金属塩構造を有する単量体又はオリゴマーの配合が有効である。これらの選択基準の1又は2以上を満たすように重合性成分を選択する。
【0019】
紫外線硬化型接着剤をボデーシーラーとして塗布後に光照射した場合に、問題にされたのは、内部まで硬化が進まないことと、経済的な充填材が少ないことであった。これらの問題を解決するには、充填材として霞長石、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ハイドロタルサイトなどの無機材料の粉末を使用するのが有効である。これらの無機材料は、接着剤に用いられる熱可塑性樹脂、ゴム、エポキシ樹脂や可塑剤の屈折率である1.5前後の屈折率をもち、透明性のある粉末だからである。もちろん状況をみて一般に使用される経済的な炭酸カルシウムの併用も可能である。また波長のより長い光線が物質により深く進入できる傾向があるので、紫外線によるラジカル開始剤の他に可視光線によるラジカル開始剤を併用して内部硬化性を付与することによりボデーシーラーとしての現実的なレベルまでの解決が可能となった。また後工程での加熱工程の温度があまり高くない場合でも、光照射による硬化を補うために単量体又はオリゴマーの重合を加熱工程でも進行させるために、熱によるラジカル発生剤を添加してもよい。
【0020】
重合性成分である単量体又はオリゴマーの配合割合は、ボデーシーラーの目的、成分又は用途に応じて異なるが、ボデーシーラー全体の合計100重量部に対して0.5〜50重量部が適当である。重合性成分の割合がこれより少ない場合は仮硬化状態で次の加熱硬化工程までの十分な強度や内部硬化や接着効果が得られにくくなり、また光照射により硬化した場合に加熱工程が後に入ったときに熱変形や更に別の機構での硬化が進行することによる収縮などが起きる。逆に重合性成分の割合これより多くなると、経済的になりたたなくなるだけでなく、硬化後の特性が既存のボデーシーラーに比べて、伸びや弾性が乏しくなったり脆くなったりしてボデーシーラーとして適さなくなる。重合性成分の配合割合は、仮硬化を主な目的にするのであれば5〜30重量部が好ましく、後工程での加熱により収縮などを起こさない硬化を期待するのであれば15〜40部が好ましい。
【0021】
本発明のボデーシーラーを塗布して紫外線照射装置や電子線照射装置でエネルギー線硬化した後に、塗装仕上げを実施できる表面状態かといった性能や物性に期待された改善効果が得られたかを観察する。さらに、後工程で受ける加熱硬化条件に従った後で問題がないかを確認する。紫外線照射装置としては発熱の少ない省エネルギー型のLEDが推奨されるが、本発明の実施例などでは、ハンデイータイプの高圧水銀灯であるHLR100T−2(セン特殊光源株式会社)を使用し、波長365nm付近で25mW/cm2の照度(約10cmの距離)で積算エネルギー4500mj/cm2(180秒)照射した。その後、仕上げ塗料を塗布後、その硬化のために140℃で20分間加熱した後に、物性や外観などの評価を実施した。
【発明の効果】
【0022】
本発明のボデーシーラーは、紫外線、可視光線、電子線などのエネルギー線による硬化又は仮硬化性を付与されているので、プレヒートと呼ばれる加熱工程を省略することができて、省エネルギー、省時間にて仕上げ塗装を可能とし、コストパフォーマンス(費用対効果)などにも優れた接着剤を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施例で使用した重合性成分は、単量体としてはアクリル酸誘導体としてイソボニルアクリレート、メタアクリル酸誘導体として2エチルヘキシルメタアクリレート、オリゴマーとしてはアクリル酸誘導体としてUN1255(根上工業株式会社の2官能の無黄変ウレタンアクリレートオリゴマー)、TEA1000(日本曹達株式会社の2官能ポリブタジエンゴム主鎖アクリレートオリゴマー)、メタアクリル酸誘導体としてTE2000(日本曹達株式会社の2官能ポリブタジエンゴム主鎖メタアクリレートオリゴマー)を使用した。金属塩構造を含むアクリル酸誘導としてジメタアクリル酸亜鉛を使用した。
【0024】
光ラジカル開始剤としてはイルガキュア184(日本チバガイギー株式会社の製品)、イルガキュア819(日本チバガイギー株式会社の製品で、可視光線開始剤)を使用した。
【0025】
実施例又は比較例で使用した熱可塑性樹脂のうち、塩化ビニル樹脂及びその共重合樹脂としてP440、P500(ヴイテック株式会社の製品)、アクリル、メタアクリル及びその共重合樹脂の粉末としてダイヤナールLP3109(三菱レイヨン株式会社のコア・シエル形アクリル粉末)を使用した。
【0026】
可塑剤としてはフタル酸ジイソノニル(ジエイプラスの製品DINP)を使用した。
【0027】
充填材としてはミネックス7(白石工業株式会社製品である霞長石)、グラスバブルスS22(住友スリーエム株式会社の製品であるガラスバルーン)、GB−G−P20PM(ポッターズ・バロデーニ株式会社の製品であるガラスビーズ)、DHT4A(協和化学工業株式会社の製品であるハイドロタルサイト粉末)を使用し、それらの一部は白艶華CCR(白石工業株式会社の合成炭酸カルシウム)に置き換え、水分による異状発泡を防ぐため十分に乾燥して使用した。比較例の一部にはミネックス7に変えて重質炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社の製品ホワイトンP−30)を使用した。
【0028】
実施例及び比較例では、それぞれの配合処方に従って組成物を三本ロールで混合後、攪拌しながら減圧脱泡して接着剤を調製した。接着剤は幅25mm、長さ100mm、厚さ1mmの冷間圧延鋼板(熱可塑性樹脂を使用したボデーシーラーではED塗料塗装鋼板)に厚さ2mmで塗り広げた後、前述のハンデイータイプの高圧水銀灯HLR100T−2(セン特殊光源株式会社の製品)を使用し、波長365nm付近で25mW/cm2の照度(約10cmの距離)で積算エネルギー4500mj/cm2(180秒)照射して硬化状態の確認を行った。
【0029】
硬化状態は、熱可塑性樹脂を使用したボデーシーラーでは仕上げ塗料を問題なく塗装できるかどうかにより判定した。
【0030】
もう一組の同じ試験体を用意し、上の条件での光照射の後、140℃で20分間加熱硬化して、硬度など最終的な状態で大きな問題を生じてないか比較観察を行った。
【0031】
他のテストでは、先の金属板(幅25mm、長さ100mm、厚さ1mm)の長さ方向の一方の端から25mm部分に、その金属板の全幅にわたる25mm幅の帯状に厚み2mmで接着剤を塗布した後、その金属板と同じ大きさで厚さ5mmのガラス板を接着剤上に金属板と対称的に重ね合わせ、ガラスを通して上記の条件で光照射した後、続いて上記の各温度条件(熱可塑性樹脂で処方した接着剤は140℃、ゴムで処方した接着剤は160℃、エポキシで処方した接着剤は180℃)で20分間加熱して硬化させた。
【0032】
ガラス板と鋼板を上記のように、光照射と加熱で硬化接合した試験片を引張り試験機にかけ、せん断引張り試験を行った。付着性の破断状態での評価は、接着剤の硬化体中央で破断するものとガラス界面付近で破断するものを○(試験体は光照射のモデルとして被着体の片側にガラスを使用したが本発明のボデーシーラーはガラス用途ではないので、このように評価した。)、金属面に接着剤硬化体が多少付着した状態で破断するものを△、接着剤硬化体と鋼板の界面で剥離するものを×と判定した。また引張り試験での破断強度が3MPa以上のものを◎、3未満で1MPa以上のものを○、1未満で0.5MPa以上のものを△、0.5MPa未満のものを×とし、実施例の結果の表1に、比較例の結果を表2にそれぞれ示した。
【0033】
各成分の配合割合は下記の実施例1〜14の通りに配合した。
(実施例1)
オリゴマーとしてTEA1000を20重量部、光開始剤としてイルガキュア184を0.4重量部、イルガキュア819を0.2重量部、塩化ビニル成分としてP500を20重量部、充填材としてミネックス7を45重量部、可塑剤としてDINPを15重量部、を配合して混練りし、ボデーシーラー用途の接着剤を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、オリゴマーを5重量部に減量し、可塑剤を30重量部に増量した。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、オリゴマーを40重量部に増量し、塩化ビニル成分を10重量部に減量し、可塑剤を5重量部に減量した。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、塩化ビニル成分をP440に変更した。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、充填材として実施例1ではミネックス7が45重量部であったのをミネックス7が30重量部、ガラスバルーンが15重量部となるように変更した。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、充填材をガラスビーズに変更した。
【0039】
(実施例7)
実施例1において、充填材をハイドロタルサイトに変更した。
【0040】
(実施例8)
実施例1において、充填材として実施例1ではミネックス7が45重量部であったのをミネックス7が35重量部、白艶華CCRが10重量部となるように変更した。
【0041】
(実施例9)
実施例1において、オリゴマーをメタアクリル系単量体である2エチルヘキシルメタアクリレートに変更した。
【0042】
(実施例10)
実施例1において、オリゴマーをアクリル系単量体であるイソボニルアクリレートに変更した。
(実施例11)
実施例1において、オリゴマーを主鎖アクリル系オリゴマーであるUN1255に変更した。
【0043】
(実施例12)
実施例1において、オリゴマーをメタアクリル系オリゴマーであるTE2000に変更した。
【0044】
(実施例13)
実施例1において、20重量部のオリゴマーのうちの5重量部だけをジメタアクリル酸亜鉛に変更した。
【0045】
(実施例14)
実施例1において、塩化ビニル成分をアクリル、メタアクリル及びその共重合樹脂の粉末であるダイヤナールLP3109に変更した。
【0046】
実施例の他に、従来使われている処方や添加量の範囲に関する比較例についても同様に評価し、評価結果を下記の表2に示す。
【0047】
比較例の各成分の配合割合は下記の比較例1〜6の通りに配合した。
(比較例1)
塩化ビニル成分としてP500を25重量部、充填材としてミネックス7を45重量部、可塑剤としてDINPを30重量部、を配合して混練りし、接着剤を得た。
これは、実施例1の組成からオリゴマー成分を除いたものに近い。
【0048】
(比較例2)
オリゴマーとしてTEA1000を0.5重量部、光開始剤としてイルガキュア184を0.2重量部、イルガキュア819を0.1重量部、塩化ビニル成分としてP500を25重量部、充填材としてミネックス7を45重量部、可塑剤としてDINPを30重量部、を配合して混練りし、接着剤を得た。これは実施例1のものと比較すると、成分は同じであるが、オリゴマー成分を極めて少なくしたものである。
【0049】
(比較例3)
オリゴマーとしてTEA1000を60重量部、光開始剤としてイルガキュア184を0.4重量部、イルガキュア819を0.2重量部、塩化ビニル成分としてP500を5重量部、充填材としてミネックス7を30重量部、可塑剤としてDINPを5重量部、を配合して混練りし、接着剤を得た。これは実施例1のものと比較すると、成分は同じであるが、オリゴマー成分を極めて多くしたものである。
【0050】
(比較例4)
実施例1において、充填材をミネックス7から重質炭酸カルシウムに変更した。
【0051】
(比較例5)
実施例1において、アクリル系オリゴマーを官能基にラジカル反応速度が遅いアリル基をもつDAPモノマー(ダイソー株式会社の製品ジアリルフタレート)に変更した。
【0052】
(比較例6)
比較例1において、塩化ビニル成分をアクリル樹脂粉末であるダイヤナールLP3109に変更した。これは実施例14でオリゴマーを抜いたものに近い。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
実施例と比較例では光硬化性を塗装性で判定した。すなわち電着塗装鋼板に塗布後、所定の条件で紫外線照射した物に、溶剤系の自動車用中塗り塗料を塗布して室温で5分間放置後、140℃で20分間塗料焼付けて外観判定した。実施例では全て問題なく、比較例ではオリゴマー過多の比較例3以外は、未硬化で塗装できないか、表面及び内部の硬化が悪く、塗装の仕上がりが悪かった。
【0056】
熱硬化後の引張り試験は、前述の様に電着塗装鋼板や冷間圧延鋼板に各接着剤を塗布した上にガラス板を乗せた後、ガラス面側から紫外線照射し、更に各温度条件での加熱硬化後、オートグラフ(島津製作所社の製品)にて引っ張り速度50mm/分で実施した。破断強度を評価した場合、実施例でも比較例でも破断強度が3MPa以上の◎と、破断強度が3未満で1MPa以上の○が半々であり、1未満で0.5MPa以上のものである△や0.5MPa未満のものである×はなかった。
【0057】
実施例では必要な破断強度で、破断位置も問題なかった。比較例もほぼ破断強度としては問題なかったが、オリゴマーが過多のもの(比較例3)で破断状態が悪く、鋼板面に接着剤硬化体が多少付着した状態で破断するもの△があった。これは紫外線硬化での硬化が強すぎて、加熱時に硬化反応を行う物質間の移動が十分にできなかったりすることなどが原因として考えられる。
【0058】
以上の結果に基づき、実施例のボデーシーラーは光照射による仮硬化及び硬化の性能を付与できていることがわかる。
【0059】
これは接着剤中に適正な範囲で紫外線、可視光線、電子線などのエネルギー線による重合性成分と、熱可塑性樹脂、ゴム又は熱硬化性樹脂を必須成分として含むことを特徴として、光硬化性を付与したボデーシーラーの開発ができたことを意味する。
【0060】
本発明は上記の実施例に限定されるものではない。
通常は単量体又はオリゴマーがアクリル酸誘導体又はメタアクリル酸誘導体であるが、これらの分子構造が、塩化ビニル樹脂や、アクリル樹脂、ゴム又はエポキシ樹脂であり、これらにアクリル基やメタアクリル基が付加されているものでも実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体又はオリゴマーからなり紫外線、可視光線又は電子線により重合する重合性成分、及び熱可塑性樹脂成分を含む自動車用ボデーシーラー。
【請求項2】
前記重合性成分はアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体である請求項1に記載の自動車用ボデーシーラー。
【請求項3】
前記アクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体は少なくとも一部が金属塩となっているものである請求項2に記載の自動車用ボデーシーラー。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は塩化ビニル、塩化ビニルと他のものとの共重合樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びアクリル−メタアクリル共重合樹脂からなる群から選ばれた樹脂の粉末とその樹脂の可塑剤からなるオルガノゾル系樹脂である請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車用ボデーシーラー。
【請求項5】
前記重合性成分の配合割合はボデーシーラー全体の合計100重量部に対して0.5〜50重量部である請求項1から4のいずれか一項に記載の自動車用ボデーシーラー。
【請求項6】
充填材として紫外線又は可視光線に対して透明性のある粉末を使用し、
紫外線によるラジカル開始剤及び可視光線によるラジカル開始剤をともに含んで内部硬化性を付与した請求項1から5のいずれか一項に記載の自動車用ボデーシーラー。
【請求項7】
前記粉末は霞長石、ガラスバルーン、ガラスビーズ及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれた無機材料の粉末である請求項6に記載の自動車用ボデーシーラー。

【公開番号】特開2009−67916(P2009−67916A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238826(P2007−238826)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(591084207)サンライズ・エム・エス・アイ株式会社 (9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】