説明

自動車用ルーフレール

【課題】
脚とルーフレール本体との接続に好適で、ルーフレール本体の内径寸法や脚の接続部の多少の寸法誤差を許容し、ルーフレール本体と接続部とを合理的かつ安価に接続できるとともに、ルーフレール本体と脚の接続部とを強固に取付けられるようにした、自動車用ルーフレールを提供すること。
【解決手段】
ル−フパネルに取付け可能な脚2の接続部2aをルーフレール本体1の端部に嵌合する
前記接続部2aの周面とルーフレール本体1内面との間に接着剤9を介在した自動車用ルーフレールであること。
前記接続部2aの端部に被着可能なスペーサ17を設ける。
前記スペーサ17は前記接続部2aの端面に取付け可能な接合片19を設ける。
前記接合片19に設けた係合部18と、該接合片19に突設した複数の弾圧片20とを備える。
前記接続部2aの周面に前記弾圧片20を保持可能な複数の圧接部10〜12を軸方向に設ける。
前記接続部2aの端面に前記係合部18と係脱可能なホルダー部16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚とルーフレール本体との接続に好適で、ルーフレール本体の内径寸法や脚の接続部の多少の寸法誤差を許容し、ルーフレール本体と接続部とを合理的かつ安価に接続できるとともに、ルーフレール本体と脚の接続部とを強固に取付けられるようにした、自動車用ルーフレールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続手段として、ボルト・ナットやビスを使用する代わりに、脚をルーフレール本体に嵌合し、それらを接着剤を介在して接続したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記接続法は、接着剤が硬化するまで、脚とルーフレール本体との接続部を無負荷状態に養生させて置く必要があり、そのためルーフレール本体を横置きに並べて養生させていたが、ルーフレールは比較的長尺なため、広い養生スペースを要するという問題があった。
【0004】
そこで、前記問題を解決するため、脚の接続端部周面にビード状の複数の凸部を設け、この凸部をルーフレール本体に圧入し、接着剤の硬化前に脚をルーフレール本体に所定強度で接続することによって、脚とルーフレール本体を縦置きまたは宙吊り状態で養生させ、養生スペースをコンパクト化するようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このような接続方法は、合成樹脂製の脚をアルミニウム製のルーフレール本体に圧入する場合を対象にし、圧入時に凸部が所定量弾性変形することで実現し得るものであった。
しかし、例えばルーフレールの強度を強化するため、脚を合成樹脂よりも硬質部材で構成する場合は、凸部に前述と同程度の弾性変形を得られなくなるため、脚をルーフレール本体に圧入することができず、前述の接続方法は採用できなくなる。
【0006】
しかも、凸部を硬質部材で構成する場合は、一定の弾性変形を得るための加工精度を要し、これを機械加工に依る場合は加工コストが高くなって、生産性が低下するため、これらを解決する接続方法の改良が望まれていた。
【0007】
一方、ルーフレール本体は一般に押し出し成形され、内型が磨耗やメンテナンスによって型痩せして、内径寸法が経時的に小さくなるため、脚とルーフレール本体との接続条件は、材質の硬軟に拘わらず次第に厳しくなり、それらの円滑な接続が損なわれ、生産性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許文献1;実用新案登録第2587183号公報
特許文献2;特開2007−62558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題を解決し、脚とルーフレール本体との接続に好適で、ルーフレール本体の内径寸法や脚の接続部の多少の寸法誤差を許容し、ルーフレール本体と接続部とを合理的かつ安価に接続できるとともに、ルーフレール本体と脚の接続部とを強固に取付けられるようにした、自動車用ルーフレールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ルーフパネルに取付け可能な脚の接続部をルーフレール本体の端部に嵌合し、前記接続部の周面とルーフレール本体内面との間に接着剤を介在した自動車用ルーフレールにおいて、前記接続部の端部に被着可能なスペーサを設け、該スペ−サは前記接続部の端面に取付け可能な接合片と、該接合片に設けた係合部と、該接合片に突設した複数の弾圧片とを備え、前記接続部の周面に前記弾圧片を保持可能な複数の圧接部を軸方向に設けるとともに、前記接続部の端面に前記係合部と係脱可能なホルダー部を設け、前記接続部の端部にスペーサを被着し、その係合部をホルダー部に係合して位置決めし、スペーサの位置ずれを防止し接続精度を向上するとともに、ルーフレール本体内面と圧接部との間に複数の弾圧片を配置して圧接し、弾圧片の弾性によって、ルーフレール本体内面と接続部との多少の寸法誤差を許容し、これらを合理的かつ強固に接続するとともに、弾圧片の弾性と接着剤によって、ルーフレール本体と接続部とを強固に接続し得るようにしている。
【0011】
請求項2の発明は、前記接続部周面の複数の隅角部に複数の圧接部を設け、これらの圧接部に弾圧片を係合配置して、ルーフレール本体と接続部とを安定かつ確実に接続し得るようにしている。
請求項3の発明は、前記接合片の中心から互いに距離を異にする外周部の複数位置に前記弾圧片を突設し、該弾圧片を所定の圧接部に配置可能にして、弾圧片の配置やスペーサの被着の誤りを未然に防止し得るようにしている。
【0012】
請求項4の発明は、前記接合片に複数の腕片を放射方向に突設し、該腕片の先端部に前記弾圧片を突設し、腕片の変位を促し弾圧片の位置調整やスペーサの被着位置の調整を図れるとともに、腕片を接続部の端面に接合することによって、接続部の端面の露出を図り、接着剤による広い接触面積を確保して、接続部の端面にスペーサを強固に取付けられるようにしている。
請求項5の発明は、前記接合片を接続部の端面と略同形状に形成し、接合片の剛性を強化して弾圧片を安定して支持し、スペーサの被着操作を容易かつ円滑に行なえるようにしている。
【0013】
請求項6の発明は、前記係合部を中空有底の角軸状に形成し、接続部の端面に対するスペーサの位置決めを安定かつ確実に行なえるとともに、係合部内に接着剤を収容可能にし、かつその底部からの接着剤の漏出を防止し、係合部を利用した関係部材の組み付けを確保し得るようにしている。
請求項7の発明は、前記接合片上に前記接着剤を付着かつ固化し、前記接合片を埋設可能にし、前記接合片を接続部の端面に強固に固定し、スペーサを接続部に強固に取付けられるようにしている。
請求項8の発明は、前記係合部の凹孔に前記接着剤を収容かつ固化可能にし、係合部の強度を強化し、接続部端面のホルダー部の強度を補強し、脚とスペーサとの接続強度を増強し得るようにしている。
【0014】
請求項9の発明は、前記ホルダー部を接続部の周面に形成した係止孔に連通し、該係止孔にキャップの係止爪を挿入かつ掛け止め可能にし、前記ホルダー部と係止孔との成形の容易化を図るとともに、係止爪を係止孔に容易かつ確実に挿入かつ掛け止め可能にし、脚にキャップを容易かつ確実に取付けられるようにしている。
請求項10の発明は、前記ホルダー部を係止孔と遮断して凹孔状に形成し、前記ホルダー部の構成を簡潔化し、スペーサを容易かつ安価に製作し得るようにしている。
請求項11の発明は、前記スペーサを可撓性部材でシート状に形成し、その複数の腕片を折り曲げ、かつ弾圧片を形成可能にし、前記スペーサの構成を簡潔化し、これを容易かつ安価に製作し得るようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、接続部の端部に被着可能なスペーサを設け、該スペーサは前記接続部の端面に取付け可能な接合片と、該接合片に設けた係合部と、該接合片に突設した複数の弾圧片とを備え、前記接続部の周面に前記弾圧片を保持可能な複数の圧接部を軸方向に設けるとともに、前記接続部の端面に前記係合部と係脱可能なホルダー部を設けたから、前記接続部の端部にスペーサを被着し、その係合部をホルダー部に係合して位置決めし、スペーサの位置ずれを防止し接続精度を向上するとともに、ルーフレール本体内面と圧接部との間に複数の弾圧片を配置して圧接し、弾圧片の弾性によって、ルーフレール本体内面と接続部との多少の寸法誤差を許容し、これらを合理的かつ強固に接続するとともに、弾圧片の弾性と接着剤によって、ルーフレール本体と接続部とを強固に接続することができる。
【0016】
請求項2の発明は、前記接続部周面の複数の隅角部に複数の圧接部を設けたから、これらの圧接部に弾圧片を係合配置して、ルーフレール本体と接続部とを安定かつ確実に接続することができる。
請求項3の発明は、前記接合片の中心から互いに距離を異にする外周部の複数位置に前記弾圧片を突設したから、該弾圧片を所定の圧接部に配置可能にして、弾圧片の配置やスペーサの被着の誤りを未然に防止することができる。
【0017】
請求項4の発明は、前記接合片に複数の腕片を放射方向に突設し、該腕片の先端部に前記弾圧片を突設したから、腕片の変位を促し弾圧片の位置調整やスペーサの被着位置の調整を図れるとともに、腕片を接続部の端面に接合することによって、接続部の端面の露出を図り、接着剤による広い接触面積を確保して、接続部の端面にスペーサを強固に取付けることができる。
請求項5の発明は、前記接合片を接続部の端面と略同形状に形成したから、接合片の剛性を強化して弾圧片を安定して支持し、スペーサの被着操作を容易かつ円滑に行なうことができる。
【0018】
請求項6の発明は、前記係合部を中空有底の角軸状に形成したから、接続部の端面に対するスペーサの位置決めを安定かつ確実に行なえるとともに、係合部内に接着剤を収容可能にし、かつその底部からの接着剤の漏出を防止し、係合部を利用した関係部材の組み付けを確保することができる。
請求項7の発明は、前記接合片上に前記接着剤を付着かつ固化し、前記接合片を埋設可能にしたから、前記接合片を接続部の端面に強固に固定し、スペーサを接続部に強固に取付けることができる。
請求項8の発明は、前記係合部の凹孔に前記接着剤を収容かつ固化可能にしたから、係合部の強度を強化し、接続部端面のホルダー部の強度を補強し、脚とスペーサとの接続強度を増強することができる。
【0019】
請求項9の発明は、前記ホルダー部を接続部の周面に形成した係止孔に連通し、該係止孔にキャップの係止爪を挿入かつ掛け止め可能にしたから、前記ホルダー部と係止孔との成形の容易化を図るとともに、係止爪を係止孔に容易かつ確実に挿入かつ掛け止め可能にし、脚にキャップを容易かつ確実に取付けることができる。
請求項10の発明は、前記ホルダー部を係止孔と遮断して凹孔状に形成したから、前記ホルダ−部の構成を簡潔化し、スペーサを容易かつ安価に製作することができる。
請求項11の発明は、前記スペーサを可撓性部材でシート状に形成し、その複数の腕片を折り曲げ、かつ弾圧片を形成可能にしたから、前記スペーサの構成を簡潔化し、これを容易かつ安価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した自動車用ルーフレールの要部を分解して示す斜視図で、ルーフレール本体とスペーサと脚との組み付け状況を示している。
【図2】本発明に適用したスペーサを示す斜視図である。
【図3】本発明を適用した自動車用ルーフレールの要部を示す断面図で、ルーフレール本体とスペーサと脚とを接続し、脚にキャップを組み付けた状況を示している。
【図4】前記脚の接続部の端面にスペーサを被着した状況を拡大して示す断面図である。
【図5】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【0021】
【図6】本発明を適用した自動車用ルーフレールの第2の実施形態の要部を示す断面図で、ルーフレール本体とスペーサと脚とを接続し、脚にキャップを組み付けた状況を示している。
【図7】前記第2の実施形態に適用したスペーサを示す斜視図である。
【図8】前記第2の実施形態の脚の接続部の端面にスペーサを被着した状況を拡大して示す断面図である。
【0022】
【図9】本発明を適用した自動車用ルーフレールの第3の実施形態の要部を示す断面図で、ルーフレール本体とスペーサと脚とを接続し、脚にキャップを組み付けた状況を示している。
【図10】前記第3の実施形態に適用したスペーサを示す正面図である。
【図11】図10のB−B線に沿う断面図である。
【図12】前記第3の実施形態の脚の接続部の端面にスペーサを被着した状況を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、図1乃至図5において1はルーフレールを構成するアルミニウム管製のルーフレール本体で、肉厚のアルミニウムを押し出しまたは引き出し成形し、かつこれを三次元方向へ湾曲して成形し、その断面形状は図4または図5のように略三角形または台形状に成形され、これを所定長さに裁断している。
【0024】
前記ルーフレール本体1は、自動車のルーフ(図示略)上に左右に離間して前後方向に配置され、その前後端部の開口縁部に大きな面取部1aが形成されている。
前記ルーフレール本体1の開口端部に、アルミニウムダイカスト製の脚2の接続部2aが取付けられ、該接続部2aの他側端部を、自動車のルーフパネル(図示略)に取付け可能にしている。
【0025】
図示の実施形態では、ルーフ(図示略)の片側に配置するルーフレール本体1と、その前側に取付ける前側脚2を図示しているが、その後側脚、および右側のルーフレール本体1の前後側脚についても、本発明が適用されている。
【0026】
前記接続部2aの断面形状は、ルーフレール本体1の断面形状と略相似形状で若干小形に成形され、該前記接続部2aの周面にビ−ド状の凸部3〜6が軸方向に突設され、また他側周面に幅広の凸部7が突設され、該凸部3〜7を介して、接続部2aの周面とルーフレール本体1の内面との間に環状の接続代8を形成し、該接続代8に所定温度に加温した接着剤9を充填している。
前記接着剤9は、水分と反応して接着力を増強し、固化後は適当な柔軟性と可撓性を有する、例えば反応性のホットメルトが使用される。
【0027】
前記接続部2aは、図1のように先細の緩やかなテーパ軸状に成形され、その三箇所の隅角部に断面が凹状湾曲面の圧接部10〜12を軸方向に形成している。
前記接続部2aの基端部側に角穴状の係止孔13が上向きに形成され、該係止孔13に、接続部2aに被着するキャップ14の略鉤形の係止爪15を挿入かつ掛け止め可能にしている。
【0028】
また、前記接続部2aの端面に角穴状のホルダー部16が形成され、該ホルダー部16にスペーサ17の係合部18が嵌合して取付けられている。図中、2bは接続部2aの端面の周縁に形成した大きな面取部である。
【0029】
この場合、実施形態のホルダー部16は係止孔13に連通し、ホルダー部16と係止孔13とを同時成形しているが、これらは必ずしも連通させる必要はなく、例えばホルダー部16を凹孔状に成形し、または接続部2aを中実軸状に形成し、その端面にホルダ−部16を凹孔状に機械加工することも可能である。
【0030】
前記スペーサ17は弾性を有する合成樹脂で一体成形され、これは接続部2aの端面に係合可能な板状の接合片19と、該接合片19の端部から、その厚さ方向に突設して略平行に配置した柱状の複数の弾圧片20と、前記接合片19の中間部から突設した角軸状の係合部18とで構成されている。
【0031】
このうち、接合片19は、図2および図4のように略海星状に形成され、その中央から放射方向へ三本の腕片21〜23を突出し、該腕片21〜23の先端部は、ルーフレール本体1の三箇所の隅角部の内面に近接して配置され、該腕片21〜23の先端部から三本の弾圧片20を同方向へ略平行に突設している。
【0032】
この場合、前記腕片21〜23の長さは、接合片19の中央、つまり係合部18の中心から互いに相違して形成され、各弾圧片20と圧接部10〜12との係合位置を特定し、弾圧片20の係合位置によるスペーサ17の誤った被着を防止可能にしている。
【0033】
前記腕片21〜23は先細の略方物曲線状に形成され、その外郭部は凹状の湾曲線状に切り欠かれ、スペーサ17の被着時に接続部2aの端面の露出を図り、前記切欠部を接着剤9の付着域に充当して、接合片19を接続部2aの端面に強固に接着可能にしている。
図中、24は腕片21〜23の周縁に形成した幅広の面取り部、25は係合部18の一の隅角部に近接する接合片19の一部を外側に突出した凸部である。
【0034】
前記弾圧片20は同長の円柱状に形成され、その長さは接続部2aの長さより若干短く形成され、その内外の周面を前記圧接部10〜12と、ルーフレール本体1の三箇所の隅角部内面とに圧接可能に配置している。
すなわち、前記三つの弾圧片20の内側周面は、圧接部10〜12に係合可能に配置され、弾圧片20の外側周面は、ルーフレール本体1の三箇所の隅角部の内面に係合可能に配置されている。
【0035】
前記係合部18は、前記ホルダー部16に係合可能な中空有底の大径の角軸状に形成され、その長さは前記角軸の一辺よりも若干長尺に形成されている。図中、26は係合部18内の凹孔で、その開口縁部に大きな面取部27を形成している。
【0036】
前記ルーフレール本体1に対する接続部2aの接続は、例えばエアーシリンダー等のアクチェータを駆使した圧入機(図示略)によって行なっている。
前記圧入機は、対向配置した一対の脚ホルダ−と、ルーフパネル(図示略)と同一の湾曲面に形成したセット面とを有し、該セット面に前後側脚の下面を密着後、接着剤9を内面に塗布したルーフレール本体1を接続部2a,2aの間に挿入し、前記一対の脚ホルダーを前記アクチェータを介して近接離反動し、ルーフレール本体1の両端部に前後側脚2,2を圧入可能にしている。
【0037】
このように構成した自動車用ルーフレールは、アルミニウム管製のルーフレール本体1と、該ルーフレール本体1よりも若干硬質のアルミニウムダイカスト製の脚2と、合成樹脂製のスペーサ17と、合成樹脂製のキャップ14とで構成され、ルーフレール本体1の両端部にスペーサ17,17を介して前後側脚2,2を接続し、該脚2,2にキャップ14,14を被着している。
【0038】
前記ルーフレール本体1は、肉厚のアルミニウムを押し出しまたは引き出し成形し、かつこれを三次元方向へ湾曲成形し、その断面形状を略三角形または台形状に成形し、これを所定長さに裁断し、その両側の開口部周縁に面取部1aを形成している。
【0039】
前記脚2はアルミニウムダイカストによって成形され、その一側に略三角軸状の接続部2aを成形し、該接続部2aの基端部側に角穴状の係止孔13を成形し、接続部2aの先端面に係止孔13に連通する角穴状のホルダ−部16を成形し、接続部2aの周面に複数の凸部3〜7を突設し、また接続部2aの三箇所の隅角部に圧接部10〜12を軸方向に形成している。
この場合、係止孔13とホルダー部16とを必ず連通させる必要はなく、ホルダー部16を凹孔状に形成しても良い。
【0040】
前記キャップ14は、接続部2aを除く脚2に被覆可能に形成され、その一端部に鉤状の係止爪15を突設し、該係止爪15を前記係止孔13に挿入かつ掛け止め可能に樹脂成形している。
前記スペーサ17は、略海星状の接合片19と、該接合片19の三箇所の先端部から突設した円柱状の弾圧片20と、接合片19の中央に突設した中空有底の係合部18とを一体に樹脂成形し、前記弾圧片20を圧接部10〜12に係合可能に配置し、係合部18をホルダ−部16に係合可能に配置している。
【0041】
このように実施形態の自動車用ルーフレールは、既存のものに比べスペーサ17と、脚2に対し係合部18を係合可能なホルダ−部16とを要し、その他の構成は従来と略同様であるから、構成が比較的簡単で容易かつ安価に製作し得る。
【0042】
そこで、実施形態の自動車用ルーフレールの製作に当たって、ルーフレール本体1の両端に前側および後側の脚2を接続する際、先ず前側および後側脚2,2の端部にスペ−サ17,17の被着を要する。
この状況は図1のようで、前側または後側脚2を保持し、そのホルダー部16に向けてスペーサ17を保持し、係合部18をホルダー部16に対向するとともに、三本の弾圧片20を所定の圧接部10〜12に向ける。
【0043】
こうして、スペーサ17を接続部2aの端面に位置決めしたところで、スペーサ17を接続部2aの軸方向へ移動し、各弾圧片20を所定の圧接部10〜12に係合する。この状況は図4のようである。
【0044】
この場合、スペーサ17は、各腕片21〜23の長さが互いに相違しているため、各弾圧片20と圧接部10〜12との係合位置が特定し、弾圧片20が誤って他の圧接部10〜12に係合し、取付けられることはない。
また、各弾圧片20は適当な硬度と剛性とを備え、それらの位置が安定しているから、各弾圧片20を圧接部10〜12に容易かつ円滑に係合し、配置し得る。
【0045】
しかも、前記複数の腕片21〜23は細幅に形成され、折曲可能に形成されているから、腕片21〜23の変位が促され、弾圧片20の位置調整が可能になる。
したがって、スペーサ17の被着位置の調整が可能になるとともに、腕片21〜23を接続部2aの端面に接合すると、腕片21〜23の外側部が露出する。
この後、スペーサ17を接続部2aに押し込むと、係合部18がホルダー部16に嵌合し、スペーサ17が回動を阻止されて位置決めされる。
【0046】
そして、スペーサ17を更に押し込み、接合片19が接続部2aの端面に密着したところで、スペーサ17が移動を停止する。
この状況は図3および図4のようで、各弾圧片20の全長が接圧接部10〜12に係合し、各弾圧片20の外周が接続部2aの周面から突出して配置され、この突出量は圧入代に相当しており、また係合部18がホルダー部16に嵌合かつ密着してホルダー部16を閉塞する。
【0047】
前記スペーサ17の被着を前側および後側脚2,2の端部に行ない、これらの被着後、前後側脚2,2を圧入機(図示略)の脚ホルダーに装着し、その下面を前記セット面に密着して、接続部2a,2aを離間して対向配置する。
【0048】
一方、ルーフレール本体1の両端部内に、所定温度に加温したゲル状の接着剤9を適宜手段で塗布し、該本体1の両端部の各隅角部を前記被着したスペ−サ17,17に向けて位置付け、これを前記接続部2a,2aに挿入する。
その際、ルーフレール本体1の開口縁に形成した大きな面取部1aは、上記挿入を促す
【0049】
この後、前記圧入機を作動し、前記接続部2a,2aをルーフレール本体1の開口端部に圧入する。
このようにすると、ルーフレール本体1内の空気が通孔(図示略)から外部へ押し出され、前記接続部2a,2aの圧入を促す。
前記接続部2a,2aの圧入は、各弾圧片20がルーフレール本体1の隅角部内面と、圧接部10〜12との間に介入し、かつ隅角部内面と圧接部10〜12とに圧接されて前記圧入代を押し縮められ、ルーフレール本体1内に押し込まれる。
【0050】
このような接続部2a,2aの圧入時は、接続部2a,2aが凸部3〜7とルーフレール本体1内面との間の環状の接続代8に沿って押し込まれ、かつ該接続代8にルーフレール本体1の内面に塗布した接着剤9が浸入して充填する。この状況は図5のようである。
【0051】
前記接着剤9は接続部2a,2aの端部に扱かれ、接続部2a,2aの端面を移動して、係合部18の凹孔26内へ流入し、該凹孔26内を充填するとともに、接合片19の表面に付着して、該接合片19を被覆する。この状況は図3のようである。
【0052】
この場合、脚2,2の端面のホルダー部16にスペーサ17の係合部18が嵌合し、ホルダー部16を閉塞しているから、前記接着剤9がホルダー部16の内部に侵入する惧れはない。
こうして、脚2,2の基端部にルーフレール本体1の開口端部が当接したところで、接続部2a,2aの移動を停止し、圧入を終了する。
【0053】
この後、前記圧入機を解除作動し、ルーフレール本体1を取り外して、これを所定の養生スペースへ移動する。前記養生時、接着剤9が固化し、ルーフレール本体1の両端に接続した脚2,2が固定される。
【0054】
こうして、ルーフレール本体1の両端に固定された脚2,2は、三本の弾圧片20が、ルーフレール本体1の隅角部内面と圧接部10〜12との間に圧入されて介在し、その弾性を隅角部内面と圧接部10〜12に作用して、ルーフレール本体1と脚2,2を強固に接続する。
また、ルーフレール本体1の内面と、接続部2a,2aの周面との間に介在した接着剤9と、スペーサ17の接合片19上に付着した接着剤9が固化し、ルーフレール本体1と脚2,2とを強力に接続するとともに、スペーサ17の剥離、離脱を阻止する。
【0055】
しかも、接合片19は海星状に形成され、腕片21〜23を凹状に湾曲させて脚2,2の端面を露出させ、接着剤9と脚2,2の端面との接触面積を広く確保しているから、その分接着剤9による接着力が増強し、ルーフレール本体1と脚2,2との接続強度を強化する。
また、ルーフレール本体1の内面に塗布した接着剤9の一部は、係合部18の凹孔26内に流入して固化し、凹孔26ないし係合部18の強度を強化し、脚2のホルダー部16の強度を補強するから、ルーフレール本体1と脚2,2との接続強度を強化する。
【0056】
この場合、前記接着剤9は固化後も適当な柔軟性と可撓性を保有しているから、ルーフレール本体1および脚2,2に作用する荷重や振動を吸収し、ルーフレール本体1と前後の脚2,2との接合部の負担を軽減し、接合部の変形や破損を防止する。
【0057】
一方、脚2,2をルーフレール本体1の両端に取付け後、該脚2,2にキャップ4,14を取付ける場合は、キャップ14,14の両端に突設した鉤形の係止爪15,15を、脚2,2の係止孔13に挿入して掛け止める。
【0058】
その際、前述のように脚2,2の端面のホルダー部16に、スペーサ17の係合部18を嵌合してホルダー部16を閉塞し、接着剤9のホルダー部16内部への侵入を阻止しているから、侵入した接着剤9が固化して係止爪15の挿入ないし係合を不能にし阻止する事態を未然に防止し、確実かつ容易にキャップ14,14を取付けられる。
【0059】
図6乃至図12は本発明の他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部に同一の符号を用いている。
このうち、図6乃至図8は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態は腕片21〜23の構成を省略し、接合片19を接続部2の端面と略同形状に形成して、接合片19の構成を簡潔にするとともに、接合片19ないしスペーサ17の強度ないし剛性を強化し、各弾圧片20を安定して支持し得るようにしている。
【0060】
そして、接続部2の端部にスペーサ17を被着する際は、図8のように接続部2の端面の略全域を接合片19で被覆し、接続部2の端面に接合片19を安定かつ密着して取付け、円柱状の各弾圧片20と圧接部10〜12との係合を安定させて、スペーサ17の被着作業を容易かつ円滑に行なえるようにしている。
【0061】
図9乃至図12は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態は接続部2の端部を中実構造に形成し、その端面に角軸状のホルダ−部16を突設し、該ホルダ−部16に係合部18を嵌合して、スペーサ17を被着している。
前記スペーサ17は、可撓性を有する柔軟な合成樹脂板を略海星形状に切断して形成され、その接合片19を円板状に形成し、該接合片19の中央に角穴状の係合部18を形成している。
【0062】
前記接合片19の外側に三本の腕片21〜23が放射状に突設され、該腕片21〜23は互いに長さを異にする細幅の帯状に形成され、その任意の位置を厚さ方向へ略直角に折り曲げ可能にされていて、その折り曲げ側を弾圧片20に充当している。
すなわち、前記スペーサ17は前述の立体構成の代わりに、柔軟なシート状に構成しているから、構成が簡単で、その製作も合成樹脂シートを切断すれば良く、特殊な機械設備を要さず、これを容易かつ安価に製作し得る。
【0063】
前記スペーサ17を接続部2aの端部に被着する場合は、係合部18をホルダー部16に嵌合し、スペーサ17の回動を阻止して位置決めする。
そして、各腕片21〜23を圧接部10〜12の端部に位置付け、該端部から略直角に折り曲げて圧接部10〜12上に接合可能にし、その折り曲げ状態を維持する。
このような被着を前側および後側脚2,2の端部に行ない、これらの被着後、前後側脚2,2を圧入機(図示略)の脚ホルダーに装着し、その下面を前記セット面に密着して、接続部2a,2aを離間して対向配置する。
【0064】
この後、ルーフレール本体1の両端部内に、所定温度に加温したゲル状の接着剤9を適宜手段で塗布し、該本体1の両端部の各隅角部を前記被着したスペーサ17,17に向けて位置付け、これを前記接続部2a,2aに挿入する。
その際、各腕片21〜23は各隅角部内面に係合して折曲され、各弾圧片20の内面が圧接部10〜12上に位置付けられ、その外面が隅角部内面に係合して、圧接部10〜12と隅角部内面との間に配置される。
【0065】
この後、前記圧入機を作動し、前記接続部2a,2aをルーフレール本体1の開口端部に圧入する。
前記接続部2a,2aの圧入は、前述の実施形態と同様に行なわれ、ルーフレール本体1内に押し込まれる。このような接続部2a,2aの圧入時は、接続代8にルーフレール本体1の内面に塗布した接着剤9が浸入して充填される。
【0066】
その際、接合片19は海星状に形成され、腕片21〜23の外側に脚2,2の端面が広域に露出し、この露出部に接着剤9が付着して接着力が増強し、ルーフレール本体1と脚2,2との接続強度を強化する。その他の作用効果は前述の実施形態と略同様である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
このように本発明の自動車用ルーフレールは、ルーフレール本体の内径寸法や脚の接続部の多少の寸法誤差を許容し、ルーフレール本体と接続部とを合理的かつ安価に接続できるとともに、ルーフレール本体と脚の接続部とを強固に取付けられるようにしたから、脚とルーフレール本体との接続に好適である。
【符号の説明】
【0068】
1 ルーフレール本体
2 脚
2a 接続部
9 接着剤
10〜12 圧接部
13 係止孔
【0069】
14 キャップ
15 係止爪
16 ホルダー部
17 スペーサ
【0070】
18 係合部
19 接合片
20 弾圧片
21〜23 腕片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルに取付け可能な脚の接続部をルーフレール本体の端部に嵌合し、前記接続部の周面とルーフレール本体内面との間に接着剤を介在した自動車用ルーフレールにおいて、前記接続部の端部に被着可能なスペーサを設け、該スペーサは前記接続部の端面に取付け可能な接合片と、該接合片に設けた係合部と、該接合片に突設した複数の弾圧片とを備え、前記接続部の周面に前記弾圧片を保持可能な複数の圧接部を軸方向に設けるとともに、前記接続部の端面に前記係合部と係脱可能なホルダー部を設けたことを特徴とする自動車用ルーフレール。
【請求項2】
前記接続部周面の複数の隅角部に複数の圧接部を設けた請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項3】
前記接合片の中心から互いに距離を異にする外周部の複数位置に前記弾圧片を突設した請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項4】
前記接合片に複数の腕片を放射方向に突設し、該腕片の先端部に前記弾圧片を突設した請求項3記載の自動車用ルーフレール。
【請求項5】
前記接合片を接続部の端面と略同形状に形成した請求項3記載の自動車用ルーフレール
【請求項6】
前記係合部を中空有底の角軸状に形成した請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項7】
前記接合片上に前記接着剤を付着かつ固化し、前記接合片を埋設可能にした請求項4または請求項5記載の自動車用ルーフレール。
【請求項8】
前記係合部の凹孔に前記接着剤を収容かつ固化可能にした請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項9】
前記ホルダー部を接続部の周面に形成した係止孔に連通し、該係止孔にキャップの係止爪を挿入かつ掛け止め可能にした請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項10】
前記ホルダー部を係止孔と遮断して凹孔状に形成した請求項1記載の自動車用ルーフレール。
【請求項11】
前記スペーサを可撓性部材でシート状に形成し、その複数の腕片を折り曲げ、かつ弾圧片を形成可能にした請求項4記載の自動車用ルーフレール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−188920(P2010−188920A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36688(P2009−36688)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(592049564)理研精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】