説明

自動車用ロック装置

【課題】容易に組立てることができるとともに、ロック状態でのガタつきを確実に防止でき、また使い勝手の良い自動車用ロック装置を得る。
【解決手段】基板1に、ストライカ2と噛み合うラッチ部材3と、このラッチ部材3と係脱するポール部材5とを装着するとともに、互いに連動する一対の拘束部材7、8を進入溝1aを挟んで配設し、拘束部材7,8に、それぞれストライカ2と当接可能な拘束カム部7a,8aを設け、ラッチ部材3がストライカ2と噛み合う位置で拘束カム部7a,8aのうちの少なくとも一方をストライカ2に当接させることで、基板1に対するストライカ2の取付け位置が多少ずれても、ロック時にラッチ部材3がストライカ2と噛み合う状態でストライカ2を確実に拘束できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア、エンジンフード、トランクリッド、車室内のシートや起倒式シートバックなどをロックするための自動車用ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用ロック装置として、車室内の座席シート部をロックするシートロック、および背もたれ部をロックするシートバックロックが実用化されている。
【0003】
この種の従来技術に関連するものとして、基板に、座席などに固設されるストライカと噛み合うラッチ部材と、このラッチ部材を回動不能に拘束するポール部材と、ストライカに当接可能な当接部を有する拘束部材とを備えた自動車用ロック装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
この従来技術では、座席などのロック時に、ラッチ部材がストライカと噛み合う状態で、拘束部材の当接部がストライカに当接して、当接部の拘束カム域のくさび作用により隙間をつめることによりストライカが拘束されるので、着座時あるいは空席時のいずれであっても車両走行中に座席などのガタつきを防止できる。次いで、操作レバーでロック解除操作を行なうことにより、拘束部材によるストライカの拘束状態が解除された後、上記の拘束部材にポール部材が連動してラッチ部材から離脱するので、ラッチ部材がストライカと噛み合う状態が解除される。なお、基板には、ストライカが進入する進入溝が形成されている。
【特許文献1】特開平8−218711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、基板に対するストライカの取付け位置がずれてもストライカを拘束できるように、進入溝の幅を広くするとともに、拘束部材の当接部の拘束カム域を拡大させた場合、座席などのロック解除時に前記の当接部をストライカから離脱させるために必要な操作レバーの解除操作ストロークが増加するため、使いにくくなるという問題があった。また、上記操作レバーの解除操作ストロークを抑制するため、上記拘束カム面の形状を変更してカム角度をきつくすることも考えられるが、この場合には噛み合い状態にあるストライカへの当接部の拘束カム域のくさび作用が弱くなるので、車両走行中に座席などのガタつき防止の役目が果たせなくなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、容易に組立てることができるとともに、ロック状態でのガタつきを確実に防止でき、また使い勝手の良い自動車用ロック装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、ストライカ用の進入溝が形成される基板を有し、この基板に、前記ストライカと噛み合うラッチ部材と、このラッチ部材と係脱するポール部材とが装着された自動車用ロック装置であって、前記基板に、互いに連動する一対の拘束部材を前記進入溝を挟んで配設し、前記拘束部材に、それぞれ前記ストライカと当接可能な拘束カム部を設け、前記ラッチ部材が前記ストライカと噛み合う位置で前記拘束カム部のうちの少なくとも一方が前記ストライカに当接する構成にした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロック時に、基板に形成される進入溝にストライカが進入して、ラッチ部材が所定位置まで回動してストライカと噛み合う状態で、ラッチ部材とポール部材とが係合するので、ラッチ部材がストライカと噛み合う状態が保持される。同時に、一対の拘束部材のうちの少なくとも一方の拘束カム部がストライカに当接して拘束するので、ロック状態でのガタつきが防止される。次いで、ロック解除操作を行なうと、一対の拘束部材が連動して拘束カム部がそれぞれストライカから離脱するので、このストライカの拘束状態も解除されるとともに、ポール部材がラッチ部材から離脱して、ラッチ部材がストライカと噛み合う状態が解除されるので、ロック状態が解除される。これによって、基板に対するストライカの取付け位置が多少ずれても、上述したように一対の拘束部材のうちの少なくとも一方の拘束カム部がストライカに当接して拘束することにより、ロック状態でのガタつき防止を確実に行なうことができるとともに、基板とストライカの高い取付け精度を必要とせずにすむので容易に組立てることができる。また、上述したようにストライカの取付け位置が多少ずれてもロック状態でのガタつき防止を行なうことができるので、拘束カム部のカム域を拡大させる必要がなく、ロック解除時に拘束部材をストライカから離脱するために必要な解除操作ストロークを抑制することができるため、使い勝手が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、自動車のシートロック装置を例に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる自動車用ロック装置を示す正面図、図2は、ラッチ部材がストライカと噛み合う状態を示す正面図、図3は、ラッチ部材とストライカとの噛み合い位置が車幅方向の左側へずれた状態を示す正面図、図4は、ラッチ部材とストライカとの噛み合い位置が車幅方向の右側へずれた状態を示す正面図、図5は、ロック解除操作を開始した状態を示す正面図、図6は、ロック解除時にポール部材がラッチ部材から離脱する状態を示す正面図、図7は、ラッチ部材とストライカとの噛み合いを解除した状態を示す正面図、図8は、図1のA−A線に沿う断面図である。なお、図1〜図7は本実施形態に設けられる基板の一部を省略した状態で示す正面図である。
【0011】
本実施形態にかかる自動車用ロック装置は、図1に示すように、図示しないシートに固着される基板1に、図示しない車体側に固着されるストライカ2と噛み合うラッチ部材3と、このラッチ部材3と係脱するポール部材5と、互いに連動する一対の拘束部材7,8とが設けられている。
【0012】
基板1の下部には、ストライカ2が進入する進入溝1aが車体の上下方向に形成されており、この進入溝1aを挟んで一対の拘束部材7,8が配設されている。拘束部材7は進入溝1aの左側(図1の左側)に配置され、拘束部材8は進入溝1aの右側(図1の右側)に配置されている。
【0013】
ラッチ部材3は、回転軸4を介して枢着されるとともに、図示しないばねにより図1の反時計方向に付勢されている。ポール部材5は、回転軸6により基板1に枢着されるとともに、図示しないばねにより図1の反時計方向に付勢されている。また、ポール部材5は、ラッチ部材3の段部3aに係脱可能な爪部5aと、図1の上方へ突出するアーム部5bとを有し、上記の爪部5aがラッチ部材3の段部3aに係合することによりラッチ部材3の回動を阻止可能である。
【0014】
拘束部材7は、ポール部材5と重ね合わされて回転軸6により基板1に枢着されるとともに、図示しないばねにより図1の反時計方向に付勢されている。また、拘束部材7は、先端にストライカ2と当接可能な拘束カム部7aが形成され、長手方向の略中間部にポール部材5のアーム部5bと当接可能な一対の折り曲げ部7b、7cが形成され、他端に図示しない操作部材に連結される連結部7dが形成されている。
【0015】
拘束部材8は、回転軸9により基板1に枢着されるとともに、先端にストライカ2と当接可能な拘束カム部8aが形成されている。拘束部材7および拘束部材8には、クロス(交差)する方向に延びる長孔7e,8bがそれぞれ設けられ、これら長孔7e,8bに遊動ピン10が嵌装されている。
【0016】
本実施形態にあっては、図1に示す離脱状態からシート(図示せず)を正規の位置に据えると、ストライカ2が基板1に対して相対的に移動して進入溝1aに進入し、ラッチ部材3を付勢することにより、ラッチ部材3がばねの付勢力に抗して時計方向へ回動する。次いで、図2に示すように、ラッチ部材3が所定位置まで回動したとき、ラッチ部材3の段部3aとポール部材5の爪部5aとが係合するので、ラッチ部材3がストライカ2と噛み合う状態が保持される。このとき、拘束部材7の拘束カム部7aと拘束部材8の拘束カム部8aとでストライカ2を左右方向から挟持することにより、シートのガタつきを防止している。
【0017】
また、図3に示すように、ストライカ2が拘束部材7側へずれた場合、ストライカ2が進入溝1aに進入して、正規の進入軌跡L1より拘束部材7側へずれた進入軌跡L2を通ってラッチ部材3に当接しこれを押圧することにより、ラッチ部材3が回動して、ラッチ部材3の段部3aとポール部材5の爪部5aとが係合する。このとき、拘束部材7の拘束カム部7aがストライカ2に当接して、ストライカ2を拘束することによりシートのガタつきを防止している。
【0018】
同様に、図4に示すように、ストライカ2が拘束部材8側へずれた場合、ストライカ2が進入溝1aに進入して正規の進入軌跡L1より拘束部材8側へずれた進入軌跡L3を通ってラッチ部材3に当接しこれを押圧することにより、ラッチ部材3が回動してラッチ部材3の段部3aとポール部材5の爪部5aとが係合する。このとき、拘束部材8の拘束カム部8aがストライカ2に当接し、ストライカ2を拘束することによりシートのガタつきを防止している。
【0019】
また、図示しない操作部材の解除操作により、図5に示すように、正規の位置で拘束部材7を時計方向へ回動させると、拘束カム部7aがストライカ2から離脱するとともに、遊動ピン10を介して拘束部材8が連動して反時計方向へ回動し、拘束カム部8aがストライカ2から離脱するので、ストライカ2の拘束状態が解除される。このとき、拘束部材7の折り曲げ部7bがポール部材5のアーム部5bの側面に当接する。さらに、操作部材の解除操作を続けて、図6に示すように、拘束部材7を時計方向へ回動させると、拘束部材7の折り曲げ部7bがポール部材5のアーム部5bを押圧することにより、ポール部材5が時計方向へ回動して、ポール部材5の爪部5aがラッチ部材3の段部3aから外れる。その結果、図7に示すように、ラッチ部材3が反時計方向へ回動して、ラッチ部材3とストライカ2との噛み合いが解除されるので、ロック状態が解除される。
【0020】
このように構成した実施形態では、基板1に対するストライカ2の取付け位置がずれても、拘束部材7の拘束カム部7aおよび拘束部材8の拘束カム部8aの少なくとも一方をストライカ2に当接させて拘束できるので、ロック状態でのガタつき防止を確実に行なうことができるとともに、基板1とストライカ2の高い取付け精度を必要とせずにすむので、容易に組立てることができる。また、上述したようにストライカ2の取付け位置が多少ずれてもロック状態でのガタつき防止を行なうことができるので、拘束カム部7a,8aの拘束カム域を拡大させる必要がなく、ロック解除時に拘束部材7,8をストライカ2から離脱するために必要な解除操作ストロークを抑制することができるため、使い勝手が良い。
【0021】
以上、本発明にかかる自動車用ロック装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0022】
例えば、上記実施形態にあっては、一対の拘束部材にクロス(交差)する方向に延びる長孔をそれぞれ設けて、これら長孔に遊動ピンを嵌装することにより、一対の拘束部材が互いに連動するように構成したが、拘束部材のいずれか一方に突起体を設けて、他方にこの突起体が嵌装される長孔を設けてもよく、あるいは、一対の拘束部材をギアを介して互いに連動するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車用ロック装置を示す正面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかるラッチ部材がストライカと噛み合う状態を示す正面図。
【図3】本発明の一実施形態にかかるラッチ部材とストライカとの噛み合い位置が車幅方向の左側へずれた状態を示す正面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかるラッチ部材とストライカとの噛み合い位置が車幅方向の右側へずれた状態を示す正面図。
【図5】本発明の一実施形態にかかるロック解除操作を開始した状態を示す正面図。
【図6】本発明の一実施形態にかかるロック解除時にポール部材がラッチ部材から離脱する状態を示す正面図。
【図7】本発明の一実施形態にかかるラッチ部材とストライカとの噛み合いを解除した状態を示す正面図。
【図8】図1のA−A線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 基板
1a 進入溝
2 ストライカ
3 ラッチ部材
5 ポール部材
7 拘束部材
7a 拘束カム部
8 拘束部材
8a 拘束カム部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカ用の進入溝が形成される基板を有し、この基板に、前記ストライカと噛み合うラッチ部材と、このラッチ部材と係脱するポール部材とが装着された自動車用ロック装置であって、
前記基板に、互いに連動する一対の拘束部材を前記進入溝を挟んで配設し、前記拘束部材に、それぞれ前記ストライカと当接可能な拘束カム部を設け、
前記ラッチ部材が前記ストライカと噛み合う位置で前記拘束カム部のうちの少なくとも一方が前記ストライカに当接することを特徴とする自動車用ロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−57242(P2008−57242A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236299(P2006−236299)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】