自動車用内装品
【課題】部品点数が少なく安価に構成することができ、ゆっくりと開く開閉扉付きの自動車用内装品を提供することである。
【解決手段】収納庫10に開閉扉21が設置され、収納庫10の開口が開閉扉21で開閉される。開閉扉21は、常時開方向に付勢されており、全閉状態を維持するロック機構が設けられている。収納庫10の側壁12a,12bに軸部材1の中央部材である軸4を設け、開閉扉21側に軸部材1の外郭部材である外筒3を設ける。軸4の周囲にばね2を固定する。軸4とばね2の周囲に外筒3を配置して軸部材1を組立てると、ばね2の自由端2a,2bが外筒3の内面を押圧する。ロック機構を解除すると、開閉扉21が開動作を開始し、ばね2の自由端2a,2bと外筒3の内面の間に摩擦力が生じる。その結果、開閉扉21がゆっくりと開く。
【解決手段】収納庫10に開閉扉21が設置され、収納庫10の開口が開閉扉21で開閉される。開閉扉21は、常時開方向に付勢されており、全閉状態を維持するロック機構が設けられている。収納庫10の側壁12a,12bに軸部材1の中央部材である軸4を設け、開閉扉21側に軸部材1の外郭部材である外筒3を設ける。軸4の周囲にばね2を固定する。軸4とばね2の周囲に外筒3を配置して軸部材1を組立てると、ばね2の自由端2a,2bが外筒3の内面を押圧する。ロック機構を解除すると、開閉扉21が開動作を開始し、ばね2の自由端2a,2bと外筒3の内面の間に摩擦力が生じる。その結果、開閉扉21がゆっくりと開く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物入れを有する自動車用内装品に関するものであり、例えばインストルメントパネルに設けられた開閉扉付きの収納庫である自動車用内装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルには、様々な小物を収納できる収納庫が設けられている。この収納庫の開口に開閉扉が設けられている。開閉扉は、ワンタッチで開閉できると利便性が高い。ところが、開閉扉が勢いよく開くと重厚なイメージがせず、また、衝撃音が生じて高級感に欠ける。そのため、開閉扉の開動作に制動を掛け、ゆっくりと開く構造として図12に示すようなものが提案されている。
【0003】
図12は、インストルメントパネルに設置される収納庫51の開口51aを開閉する従来の開閉扉50の側面図である。収納庫51の側壁にはギヤ53とオイルダンパ54とが設けられている。ギヤ53は収納庫51に回動可能に支持されている。また、オイルダンパ54は、図示していないがオイル内に配置された回転体に複数のインペラを設け、回転体がオイル内で回転する際に、インペラによって回転動作に抵抗を付与するものである。そしてオイルダンパ54の回転体がギヤ53と一体に接続されており、ギヤ53は、オイルダンパ54によって制動力を受けながら回動動作が可能である。
【0004】
一方、開閉扉50にはギヤ52が一体に設けられている。ギヤ52は扇形を呈しており、その中心部分が軸55を介して収納庫51側に支持されている。すなわち、開閉扉50は、軸55を中心に回動可能である。さらにギヤ52は、収納庫51側のギヤ53と噛み合っている。また、軸55には図示しないばねが設けられている。ばねの弾性力は、開閉扉50を開く方向に作用している。さらに開閉扉50には図示しないロック機構が設けられており、ロック機構によって開閉扉50が開口51aの閉鎖状態を維持することができる。そして開閉扉50が開口51aを閉鎖しているときには、開閉扉50はインストルメントパネル(図示せず)の表面と略一致している。
【0005】
ここでロック機構を解除し、図示しないばねの弾性力によって開閉扉50が開動作を開始すると、開閉扉50(ギヤ52)が軸55を中心に回動し、ギヤ52に噛み合っているギヤ53が回動する。ここでギヤ53の回動動作は、オイルダンパ54の抵抗を受けるので、ギヤ53及びギヤ52は勢いよく回動することができない。そのため、開閉扉50の開動作はゆっくりと行われるようになっている。このように開閉扉50の開動作に制動をかけるオイルダンパ54を採用すると、開閉扉50が勢いよく開くのを防止することができ、安全である。
このような構造の開閉扉を有する収納庫は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−300434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の収納庫51では、オイルダンパ54やギヤ52,53等が必要である。オイルダンパ54は、多くの部材で構成されている上に、精密な製造過程が必要なために高価である。また、オイルダンパは、オイルの粘性を利用しているため、温度依存性があり、高温環境下でオイルの粘性が低下し、必要な性能を発揮できなくなることがあり得る。また、低温環境下では、オイルの粘性が高くなり過ぎて、開閉扉50が開きにくくなる恐れがある。さらに、ギヤ52,53を製造するには精度の高い金型が必要であり、型費がかかる。
【0008】
そこで本発明は、部品点数が少なく安価に構成することができる開閉扉付きの自動車用内装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、本体部と扉部とを有し、前記本体部には物品を収納可能な収納部があり、当該収納部には物品を出し入れするための開口があり、前記本体部と、扉部との間には軸支部があり、前記扉部は前記軸支部を中心に本体部に対して回動することによって本体部の開口を開閉する自動車用内装品において、前記軸支部は中央部材と、外郭部材と、摺接片を有し、前記外郭部材は、前記中央部材を覆うと共に中央部材との間に空隙部を形成し、摺接片は弾性を有し、中央部材に対して片持ち状に支持されていてその自由端側が前記空隙部にあり、自己の弾性によって自由端側が外郭部材の内壁を押圧し、前記中央部材は本体部又は扉部の一方側にあり、前記外郭部材は本体部又は扉部の他方側にあり、扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動して摩擦力を発生させることを特徴とする自動車用内装品である。
【0010】
請求項1の発明の自動車用内装品は、本体部と扉部とを有する。そして本体部と扉部の間には、中央部材と、外郭部材と、摺接片とを有する軸支部が設けられている。
中央部材と外郭部材の間には空隙部が形成されているので、両者は相対的に回転又は回動可能である。空隙部には弾性を有する摺接片を配置可能である。
摺接片は、中央部材に対して片持ち状に支持されており、摺接片の自由端側が外郭部材の内壁を押圧している。よって、中央部材と外郭部材が相対回転すると、摺接片によって回転又は回動に制動をかける抵抗力が生じる。
ここで中央部材が本体部又は扉部の一方側にあり、外郭部材が本体部又は扉部の他方側にあるので、扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動し、両者の間に回動を抑制する摩擦力が作用する。その結果、本体部に対する扉部の回動動作に制動をかけることができる。
【0011】
請求項2の発明は、摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであり、長手方向の中央が曲げられていて係合凹部があり、当該係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で前記摺接片が中央部材に取り付けられ、摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装品である。
【0012】
請求項2の発明の自動車用内装品では、摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであるので、構造が簡単であり容易に製造することができる。また摺接片を曲げ加工して長手方向の中央に係合凹部を形成し、係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で摺接片が中央部材に取り付けられる。よって、摺接片の中央部材への取付構造が簡単である。さらに摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって、摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧しているので、中央部材と外郭部材が相対回転すると、摺接片によって回転又は回動に制動をかける抵抗力が生じる。よって、安価な構成で扉部の回動動作に制動をかけることができる。摺接片が外郭部材の内壁を押圧する力は、摺接片のたわみ量で任意に調整することができる。すなわち、摺接片を曲げ加工する際の曲げの度合いによって、外郭部材の内壁を押圧する力を任意に調整可能である。
【0013】
外郭部材や中央部材は、本体部又は扉部と一体に成形されていてもよい。外郭部材や中央部材が本体部又は扉部と一体に成形されていると、組立工程が簡素化される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動車用内装品は、部品点数が少なく、しかも各部材の構造が簡単であるので、各部材を製造するための金型構造も簡単になり、金型の製造費が安価となる。また、オイルダンパのような、性能が温度条件に左右される構成がなく、弾性を有する摺接片の自由端側が外郭部材の内壁を押圧して、摺接片と外郭部材の内壁の間の摩擦力で制動をかけるので、安定した性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の自動車用内装品を備えた自動車のインストルメントパネル部分の斜視図であり、自動車用内装品の開閉扉が閉じている状態を示す。
【図2】図1において、自動車用内装品の開閉扉が開いている状態の自動車のインストルメントパネル部分の斜視図である。
【図3】自動車用内装品の収納庫と開閉扉とを分解した斜視図である。
【図4】自動車用内装品に設けた軸部材の分解斜視図である。
【図5】図4とは逆方向から見た軸部材の分解斜視図である。
【図6】組み立てられた状態の軸部材の正面図である。
【図7】軸部材の断面図であり、(a)は組み立てた状態を示し、(b)は分解した状態を示す。
【図8】図6に示す軸部材とは別の形態の軸部材の正面図である。
【図9】図6,図8に示す軸部材とはさらに別の形態の軸部材の正面図である。
【図10】図6の軸部材とは、外筒の構造が相違する軸部材の正面図であり、(a)は開閉扉が全閉状態のときの軸部材を示しており、(b)は開閉扉が全開状態のときの軸部材を示している。
【図11】図10の軸部材の変形例を示す正面図であり、(a)は開閉扉が全閉状態のときの軸部材を示しており、(b)は開閉扉が全開状態のときの軸部材を示している。
【図12】従来の自動車用内装品の主要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図3に示すように、自動車の助手席周辺のインストルメントパネル20には、アッパグローブボックス15(自動車用内装品)が設けられている。アッパグローブボックス15は、収納庫10(本体部)と開閉扉21(扉部)と軸部材1(軸支部)とを有する。
以下、収納庫10に対して開閉扉21を回転可能に接続する構造について説明する。
【0017】
収納庫10は、一対の側壁12a,12b、上壁12c、下壁12d、及び底壁12eを有する略直方体の箱形状を呈する容器であり、収納部10bを有する。そして、側壁12a,12b、上壁12c、下壁12dで開口10aが仕切られている。収納庫10は、開口10aがインストルメントパネル20の孔20aと略一致する姿勢で自動車の車体側に固定されている。
【0018】
収納庫10の側壁12a,12bは、自動車の車幅方向に離間して対向配置されている。これら側壁12a,12bの外側面であって、上壁12c側の開口10a付近には、各々軸4(中央部材)が設置されている。軸4における収納庫10の側壁12aとの接続部分(すなわち根元部分)にはブロック部5が設けられている。ブロック部5は略直方体形状であって、一方の側部が湾曲して曲面部5aを構成している。曲面部5aと軸4の外面4aは滑らかに連続している。また、ブロック部5は当接部5bを有している。当接部5bは、軸4の外面4aから逸脱している。軸4の中心には穴4bが設けられている。
【0019】
開閉扉21は、本体部21aと軸装着部11とを有する。
本体部21aは、インストルメントパネル20の孔20aと略一致する大きさ及び形状を有する板状の部材である。また、軸装着部11は、本体部21aの対向する縁付近に各々立設された板状の部材である。すなわち両軸装着部11は対向している。両軸装着部11の間隔は、収納庫10の両側壁12aの間隔と略一致しているか、又は若干大きい。
【0020】
軸装着部11には開口が円形の窪み11aが設けられている。窪み11aの底壁11bには、窪み11aと同芯の孔11cが設けられている。孔11cは、窪み11aの反対側から軸装着部11に対して蓋9(後述)を装着するための孔である。
【0021】
軸部材1は、ばね2(摺接片),外筒3(外郭部材),蓋9を有する。
ばね2は、金属製の板状部材が屈曲または湾曲変形されて図4に示すような形状を呈している。すなわち、中央部分が軸4と同径の半円形状に湾曲形成されて装着部7を構成している。装着部7の内側の面は装着面7aである。装着面7aの両端には直線状にのびる当接面8a,8bが連続している。
【0022】
当接面8aとばね2の端部2a(自由端)の間には屈曲部2cが設けられている。屈曲部2cから端部2aの間の部位は、外側へ突出するように湾曲している。同様に、当接面8bとばね2の端部2b(自由端)の間には屈曲部2dが設けられている。屈曲部2dから端部2bの間の部位は、外側へ突出するように湾曲している。屈曲部2cと屈曲部2dの間で挿入部6(係合凹部)が形成されている。すなわち挿入部6は、当接面8a,8bと装着面7aとで形成されるU字状の開口部分に相当する。
【0023】
外筒3は、内面3aと内向きのフランジ部3bとを有する。
【0024】
蓋9は、小径部9aと大径部9bとを有し、中心に孔9cが設けてある。さらに蓋9には、孔9cと同芯の段部9dが設けてある。小径部9aの外径は、軸装着部11の孔11cの内径よりも若干小さい。また、孔9cにおける段部9d部分の内径は、軸4の外径と略一致している。
【0025】
以上説明した開閉扉21と収納庫10の間に軸部材1を配置して各部材を組み立てる。
まず、図5に示すようにばね2を軸4に装着する。すなわち、ばね2の挿入部6に、軸4(ブロック部5)を挿入する。その際、ばね2の装着部7の装着面7aが軸4の外面4aに密着し、ばね2の挟持部8がブロック部5の当接部5bを挟持する。すなわち、挟持部8の当接面8a,8bが、ブロック部5の当接部5bに当接する。その結果、ばね2は軸4に対して回動不能に固定され、ばね2と軸4(収納庫10)側とが一体化される。
【0026】
このとき、ばね2の中央部分が軸4に固定され、ばね2の端部2a及び端部2bは各々自由端となる。すなわち、ばね2の中央部分が軸4に固定された結果、端部2aを片持ちの自由端と見なすことができ、同様に端部2bも片持ちの自由端と見なすことができる。
【0027】
次に、外筒3の内部にばね2,軸4,及びブロック部5を収容する。その際、ばね2の端部2a、2bは若干互いが接近するように押圧変形させて外筒3内に収容する。そして端部2a,2bの押圧を解除すると、端部2a,2bは外筒3の内面3aに当接して押圧する。すなわち、ばね2は圧縮ばねとして機能する。換言すると、外筒3と軸4の間には環状の空隙部13が形成され、空隙部13にばね2が配置される。
【0028】
さらに外筒3に対して、開閉扉21の軸装着部11を固定する。すなわち、軸装着部11に対して外筒3を圧入するか、又は接着剤で両者を固定する。その際、軸装着部11の窪み11aに外筒3を挿入し、軸装着部11の底壁11bに外筒3のフランジ部3bを当接させる。その結果、軸装着部11の孔11cと、軸4の外面4aの間には環状の空間が形成される。
【0029】
この環状の空間に蓋9を配置し、蓋9の孔9c(段部9d)に軸4を圧入する。すなわち、軸4は穴4bによって若干内側へ変形可能であり、軸4は蓋9の段部9d(孔9c)に圧入可能である。そして軸4の先端を段部9dに当接させる。その結果、軸4(収納庫10)と蓋9とが一体化される。
【0030】
軸装着部11の孔11cの径よりも、蓋9の大径部9bの直径の方が大きい。そのため開閉扉21は、蓋9に阻止されて収納庫10から外れることがない。すなわち、収納庫10に対して、開閉扉21が回動可能に支持される。
【0031】
また、開閉扉21は、捩りばね(図示せず)によって開方向に常時付勢されている。さらにアッパグローブボックス15には、開閉扉21の全閉状態を維持するロック機構(図示せず)が設けられている。図示しないロック機構を解除すると、捩りばねの弾性力によって開閉扉21は開くようになっている。
【0032】
捩りばねの弾性力は強力であり、ロック機構によるロックを解除すると、開閉扉21は捩りばねの弾性力によって急激に開こうとする。ところが、軸部材1のばね2が外筒3の内面3aに押圧されているので、開閉扉21の開動作に制動が掛かる。よって、開閉扉21が急激に開くのが防止される。すなわち、収納庫10の収納部10bに物品(小物)を収納する際には、開閉扉21はゆっくりと開いて重厚なイメージの高級感を醸し出す。
【0033】
図6に示す軸部材1は、ちょうどリーディングシュー・トレーディングシュー式のドラムブレーキと同様の制動効果を発揮することができる。すなわち、開閉扉21は、捩りばねの弾性力に抗して閉じる際にも制動が掛かる。よって、開閉扉21が急激に閉じられて、大きな衝撃音が生じるのを防止することができる。
【0034】
軸部材1において、外筒3を収納庫10の側壁12a,12b側に設け、軸4を開閉扉21側(軸装着部11側)に設けても同様の効果が得られる。
【0035】
次に、図8を参照しながら図6に示す軸部材1の変形例を説明する。
図8に示す軸部材25は、外筒26(外郭部材)、ばね27(摺接片)、軸28(中央部材)を有する。外筒26及び軸28の構成は、図6の外筒3及び軸4の構成と同様であるが、ばね27の構造が図6のばね2の構造と相違する。よって、重複する説明は省略する。
【0036】
ばね27は、端部27a、屈曲部27b、端部27cを有する。図8に示すように端部27cは屈曲して軸28と一体のブロック体29の角に係合している。また、屈曲部27bは、ブロック体29の別の角に係合している。そしてばね27における屈曲部27bから端部27aの間の部位は、途中までがブロック体29及び軸28の外面に沿っており、途中から離れて端部27aが外筒26の内面26aに当接している。すなわち、ばね27は軸28の外面28aに沿う部分から端部27aに至る部分が湾曲しており、端部27aがばね27の弾性力によって外筒26の内面26aを押圧する。ばね27は片持ち状であり、端部27c側が固定端であり、端部27a側が自由端である。
【0037】
図8に示す軸部材25では、開閉扉が開動作するときのみ制動がかかり、閉動作時には制動がかからない。すなわち、開動作はゆっくりと行われるが、閉動作は速やかに実施できる。
【0038】
次に、軸部材のさらに別の変形例を、図9を参照しながら説明する。
図9に示す軸部材30は、外筒31(外郭部材)、ばね32(摺接片)、軸33(中央部材)を有する。軸部材30においては、ばね32の構造と、ブロック体34の形状のみが図6の軸部材1と相違している。よって、重複する説明は省略する。
【0039】
軸33は、正面視して正方形形状(長方形形状でも可)のブロック体34を一体に備えている。また、ばね32は、端部32a,折返し部32b、32c、屈曲部32d、端部32eを有する。ばね32の中央部分は、ブロック体34の3つの側面に沿い、ブロック体34の残りの1つの側面の途中の部位で折り返している。すなわち、図9に示すように2つの折返し部32b、32cは対向している。そして、端部32aが外筒31の内面31aに当接し、ばね32における折返し部32bから端部32aに至る部位は湾曲している。そしてこの湾曲によって弾性力が付与され、端部32aが外筒31の内面31aに押圧されている。同様に端部32eも外筒31の内面31aに押圧されている。図9に示すばね32の端部32aと端部32eも、図6のばね2の端部2a、2bと同様に片持ち状である。
【0040】
図9に示す軸部材30も、図8の軸部材25と同様に開閉扉21の開動作時にのみ制動をかける。図9の軸部材30では、ばね32の2つの端部32a、32eが外筒31の内面31aを押圧しているので、軸部材30は図8の軸部材25(ばね27の1つの端部27aのみが外筒26の内面26aを押圧)よりも安定した制動力が得られる。
【0041】
次に、図10及び図11を参照しながらさらに別の自動車用内装品の実施例を説明する。図10(a)に示す軸部材40と図6に示す軸部材1とでは、外筒43の構造が相違する。すなわち、軸部材40の外筒41は、内面41a(内壁)に隆起部44を有する。ばね42(図6の軸部材1のばね2と同じ)の端部42aは、外筒43の半径方向内方へ若干屈曲しており、内面43aから離れている。また、ばね42は、端部42aに連続する密着部42cと、端部42bに連続する密着部42dとを有する。
【0042】
隆起部44は、一端側(ばね42の端部42b側)が内面43aと滑らかに連続しており、他端側(ばね42の端部42a側)には段44aが形成されている。また、段44aが図10(a)に示す位置にあるときに自動車用内装品の開閉扉が全閉になり、段44aが図10(b)に示す位置にあるときに開閉扉が全開になるように設定されている。そして図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態へ、外筒43側が矢印Aで示す方向に回転移動すると、ばね42の端部42b(密着部42d)が隆起部44に乗り上げ、ばね42の端部42b側のたわみ量が増大する。
【0043】
その結果、ばね42の弾性力が増し、外筒43の回転を阻止する制動力が増大する。そして、図10(b)に示す状態に近付くにつれて徐々にばね42の端部42b側のたわみ量が増大し、図10(b)に示す状態で外筒43の回転を阻止する制動力が最大になる。よって、自動車用内装品の開閉扉の開閉速度は、全開に近付くにつれて遅くなり、高級感を醸し出すことができる。
【0044】
次に、図11(a)に示す軸部材45は、図6に示す軸部材1と比較して、外筒47の内面47aに凸部48が設けられており、ばね46の端部46b付近に湾曲部46cが設けられている点が相違する。
【0045】
図11(a)に示すように、ばね46の湾曲部46cは、外筒47の内面47aから離間するように凹んでいる。また、ばね46は、図10(a)に示すばね42の密着部42c,42dと同様の密着部46d,46eを有する。
【0046】
軸部材45は、図11(a)に示す状態では、凸部48がばね46の端部46a付近に配置されている。凸部48が図11(a)に示す位置にあるときには、自動車用内装品の開閉扉は全閉状態となるように設定されている。
そして図11(a)に示す状態から、外筒47が矢印Bで示す方向に回転すると、凸部48がばね46の端部46bに接近する。そして図11(b)に示す状態の直前になると、凸部48がばね46の端部46bに衝突する。ばね46の端部46bは、外筒47の内面47aから離間しており、さらに端部46bの先端部分は外筒47の半径方向内方側を向いている。よって、端部46bに衝突した凸部48は、ばね46を撓ませ、その直後に湾曲部46cに嵌まる。
【0047】
凸部48が図11(b)に示す位置にくると、開閉扉は全開状態となる。そして、ばね46の湾曲部46cが、凸部48とちょうど嵌まる形状に湾曲しており、凸部48が湾曲部46cに嵌まると、ばね46の弾性力によって密着部46eが外筒47の内面47aに密着する。
【0048】
そのため、外筒47がさらに回転しようとしても、凸部48と湾曲部46cが干渉し合い、外筒47の矢印Bで示す方向の回転が停止される。すなわち、凸部48と湾曲部46cとで外筒47の回転のストッパの機能を発揮する。よって、自動車用内装品の開閉扉は全開の状態で確実に停止する。
【符号の説明】
【0049】
1 軸部材(軸支部)
2 ばね(摺接片)
2a、2b ばねの端部
3 外筒
3a 内面(内壁)
4 軸(中央部材)
5 ブロック部
6 挿入部(係合凹部)
9 蓋9
10 収納庫(本体部)
10a 開口
10b 収納部
11 軸装着部
12a,12b 収納庫の側壁
13 外筒と軸の間の空隙部
15 アッパグローブボックス(自動車用内装品)
20 インストルメントパネル
21 開閉扉(扉部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物入れを有する自動車用内装品に関するものであり、例えばインストルメントパネルに設けられた開閉扉付きの収納庫である自動車用内装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルには、様々な小物を収納できる収納庫が設けられている。この収納庫の開口に開閉扉が設けられている。開閉扉は、ワンタッチで開閉できると利便性が高い。ところが、開閉扉が勢いよく開くと重厚なイメージがせず、また、衝撃音が生じて高級感に欠ける。そのため、開閉扉の開動作に制動を掛け、ゆっくりと開く構造として図12に示すようなものが提案されている。
【0003】
図12は、インストルメントパネルに設置される収納庫51の開口51aを開閉する従来の開閉扉50の側面図である。収納庫51の側壁にはギヤ53とオイルダンパ54とが設けられている。ギヤ53は収納庫51に回動可能に支持されている。また、オイルダンパ54は、図示していないがオイル内に配置された回転体に複数のインペラを設け、回転体がオイル内で回転する際に、インペラによって回転動作に抵抗を付与するものである。そしてオイルダンパ54の回転体がギヤ53と一体に接続されており、ギヤ53は、オイルダンパ54によって制動力を受けながら回動動作が可能である。
【0004】
一方、開閉扉50にはギヤ52が一体に設けられている。ギヤ52は扇形を呈しており、その中心部分が軸55を介して収納庫51側に支持されている。すなわち、開閉扉50は、軸55を中心に回動可能である。さらにギヤ52は、収納庫51側のギヤ53と噛み合っている。また、軸55には図示しないばねが設けられている。ばねの弾性力は、開閉扉50を開く方向に作用している。さらに開閉扉50には図示しないロック機構が設けられており、ロック機構によって開閉扉50が開口51aの閉鎖状態を維持することができる。そして開閉扉50が開口51aを閉鎖しているときには、開閉扉50はインストルメントパネル(図示せず)の表面と略一致している。
【0005】
ここでロック機構を解除し、図示しないばねの弾性力によって開閉扉50が開動作を開始すると、開閉扉50(ギヤ52)が軸55を中心に回動し、ギヤ52に噛み合っているギヤ53が回動する。ここでギヤ53の回動動作は、オイルダンパ54の抵抗を受けるので、ギヤ53及びギヤ52は勢いよく回動することができない。そのため、開閉扉50の開動作はゆっくりと行われるようになっている。このように開閉扉50の開動作に制動をかけるオイルダンパ54を採用すると、開閉扉50が勢いよく開くのを防止することができ、安全である。
このような構造の開閉扉を有する収納庫は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−300434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の収納庫51では、オイルダンパ54やギヤ52,53等が必要である。オイルダンパ54は、多くの部材で構成されている上に、精密な製造過程が必要なために高価である。また、オイルダンパは、オイルの粘性を利用しているため、温度依存性があり、高温環境下でオイルの粘性が低下し、必要な性能を発揮できなくなることがあり得る。また、低温環境下では、オイルの粘性が高くなり過ぎて、開閉扉50が開きにくくなる恐れがある。さらに、ギヤ52,53を製造するには精度の高い金型が必要であり、型費がかかる。
【0008】
そこで本発明は、部品点数が少なく安価に構成することができる開閉扉付きの自動車用内装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、本体部と扉部とを有し、前記本体部には物品を収納可能な収納部があり、当該収納部には物品を出し入れするための開口があり、前記本体部と、扉部との間には軸支部があり、前記扉部は前記軸支部を中心に本体部に対して回動することによって本体部の開口を開閉する自動車用内装品において、前記軸支部は中央部材と、外郭部材と、摺接片を有し、前記外郭部材は、前記中央部材を覆うと共に中央部材との間に空隙部を形成し、摺接片は弾性を有し、中央部材に対して片持ち状に支持されていてその自由端側が前記空隙部にあり、自己の弾性によって自由端側が外郭部材の内壁を押圧し、前記中央部材は本体部又は扉部の一方側にあり、前記外郭部材は本体部又は扉部の他方側にあり、扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動して摩擦力を発生させることを特徴とする自動車用内装品である。
【0010】
請求項1の発明の自動車用内装品は、本体部と扉部とを有する。そして本体部と扉部の間には、中央部材と、外郭部材と、摺接片とを有する軸支部が設けられている。
中央部材と外郭部材の間には空隙部が形成されているので、両者は相対的に回転又は回動可能である。空隙部には弾性を有する摺接片を配置可能である。
摺接片は、中央部材に対して片持ち状に支持されており、摺接片の自由端側が外郭部材の内壁を押圧している。よって、中央部材と外郭部材が相対回転すると、摺接片によって回転又は回動に制動をかける抵抗力が生じる。
ここで中央部材が本体部又は扉部の一方側にあり、外郭部材が本体部又は扉部の他方側にあるので、扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動し、両者の間に回動を抑制する摩擦力が作用する。その結果、本体部に対する扉部の回動動作に制動をかけることができる。
【0011】
請求項2の発明は、摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであり、長手方向の中央が曲げられていて係合凹部があり、当該係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で前記摺接片が中央部材に取り付けられ、摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装品である。
【0012】
請求項2の発明の自動車用内装品では、摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであるので、構造が簡単であり容易に製造することができる。また摺接片を曲げ加工して長手方向の中央に係合凹部を形成し、係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で摺接片が中央部材に取り付けられる。よって、摺接片の中央部材への取付構造が簡単である。さらに摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって、摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧しているので、中央部材と外郭部材が相対回転すると、摺接片によって回転又は回動に制動をかける抵抗力が生じる。よって、安価な構成で扉部の回動動作に制動をかけることができる。摺接片が外郭部材の内壁を押圧する力は、摺接片のたわみ量で任意に調整することができる。すなわち、摺接片を曲げ加工する際の曲げの度合いによって、外郭部材の内壁を押圧する力を任意に調整可能である。
【0013】
外郭部材や中央部材は、本体部又は扉部と一体に成形されていてもよい。外郭部材や中央部材が本体部又は扉部と一体に成形されていると、組立工程が簡素化される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動車用内装品は、部品点数が少なく、しかも各部材の構造が簡単であるので、各部材を製造するための金型構造も簡単になり、金型の製造費が安価となる。また、オイルダンパのような、性能が温度条件に左右される構成がなく、弾性を有する摺接片の自由端側が外郭部材の内壁を押圧して、摺接片と外郭部材の内壁の間の摩擦力で制動をかけるので、安定した性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の自動車用内装品を備えた自動車のインストルメントパネル部分の斜視図であり、自動車用内装品の開閉扉が閉じている状態を示す。
【図2】図1において、自動車用内装品の開閉扉が開いている状態の自動車のインストルメントパネル部分の斜視図である。
【図3】自動車用内装品の収納庫と開閉扉とを分解した斜視図である。
【図4】自動車用内装品に設けた軸部材の分解斜視図である。
【図5】図4とは逆方向から見た軸部材の分解斜視図である。
【図6】組み立てられた状態の軸部材の正面図である。
【図7】軸部材の断面図であり、(a)は組み立てた状態を示し、(b)は分解した状態を示す。
【図8】図6に示す軸部材とは別の形態の軸部材の正面図である。
【図9】図6,図8に示す軸部材とはさらに別の形態の軸部材の正面図である。
【図10】図6の軸部材とは、外筒の構造が相違する軸部材の正面図であり、(a)は開閉扉が全閉状態のときの軸部材を示しており、(b)は開閉扉が全開状態のときの軸部材を示している。
【図11】図10の軸部材の変形例を示す正面図であり、(a)は開閉扉が全閉状態のときの軸部材を示しており、(b)は開閉扉が全開状態のときの軸部材を示している。
【図12】従来の自動車用内装品の主要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図3に示すように、自動車の助手席周辺のインストルメントパネル20には、アッパグローブボックス15(自動車用内装品)が設けられている。アッパグローブボックス15は、収納庫10(本体部)と開閉扉21(扉部)と軸部材1(軸支部)とを有する。
以下、収納庫10に対して開閉扉21を回転可能に接続する構造について説明する。
【0017】
収納庫10は、一対の側壁12a,12b、上壁12c、下壁12d、及び底壁12eを有する略直方体の箱形状を呈する容器であり、収納部10bを有する。そして、側壁12a,12b、上壁12c、下壁12dで開口10aが仕切られている。収納庫10は、開口10aがインストルメントパネル20の孔20aと略一致する姿勢で自動車の車体側に固定されている。
【0018】
収納庫10の側壁12a,12bは、自動車の車幅方向に離間して対向配置されている。これら側壁12a,12bの外側面であって、上壁12c側の開口10a付近には、各々軸4(中央部材)が設置されている。軸4における収納庫10の側壁12aとの接続部分(すなわち根元部分)にはブロック部5が設けられている。ブロック部5は略直方体形状であって、一方の側部が湾曲して曲面部5aを構成している。曲面部5aと軸4の外面4aは滑らかに連続している。また、ブロック部5は当接部5bを有している。当接部5bは、軸4の外面4aから逸脱している。軸4の中心には穴4bが設けられている。
【0019】
開閉扉21は、本体部21aと軸装着部11とを有する。
本体部21aは、インストルメントパネル20の孔20aと略一致する大きさ及び形状を有する板状の部材である。また、軸装着部11は、本体部21aの対向する縁付近に各々立設された板状の部材である。すなわち両軸装着部11は対向している。両軸装着部11の間隔は、収納庫10の両側壁12aの間隔と略一致しているか、又は若干大きい。
【0020】
軸装着部11には開口が円形の窪み11aが設けられている。窪み11aの底壁11bには、窪み11aと同芯の孔11cが設けられている。孔11cは、窪み11aの反対側から軸装着部11に対して蓋9(後述)を装着するための孔である。
【0021】
軸部材1は、ばね2(摺接片),外筒3(外郭部材),蓋9を有する。
ばね2は、金属製の板状部材が屈曲または湾曲変形されて図4に示すような形状を呈している。すなわち、中央部分が軸4と同径の半円形状に湾曲形成されて装着部7を構成している。装着部7の内側の面は装着面7aである。装着面7aの両端には直線状にのびる当接面8a,8bが連続している。
【0022】
当接面8aとばね2の端部2a(自由端)の間には屈曲部2cが設けられている。屈曲部2cから端部2aの間の部位は、外側へ突出するように湾曲している。同様に、当接面8bとばね2の端部2b(自由端)の間には屈曲部2dが設けられている。屈曲部2dから端部2bの間の部位は、外側へ突出するように湾曲している。屈曲部2cと屈曲部2dの間で挿入部6(係合凹部)が形成されている。すなわち挿入部6は、当接面8a,8bと装着面7aとで形成されるU字状の開口部分に相当する。
【0023】
外筒3は、内面3aと内向きのフランジ部3bとを有する。
【0024】
蓋9は、小径部9aと大径部9bとを有し、中心に孔9cが設けてある。さらに蓋9には、孔9cと同芯の段部9dが設けてある。小径部9aの外径は、軸装着部11の孔11cの内径よりも若干小さい。また、孔9cにおける段部9d部分の内径は、軸4の外径と略一致している。
【0025】
以上説明した開閉扉21と収納庫10の間に軸部材1を配置して各部材を組み立てる。
まず、図5に示すようにばね2を軸4に装着する。すなわち、ばね2の挿入部6に、軸4(ブロック部5)を挿入する。その際、ばね2の装着部7の装着面7aが軸4の外面4aに密着し、ばね2の挟持部8がブロック部5の当接部5bを挟持する。すなわち、挟持部8の当接面8a,8bが、ブロック部5の当接部5bに当接する。その結果、ばね2は軸4に対して回動不能に固定され、ばね2と軸4(収納庫10)側とが一体化される。
【0026】
このとき、ばね2の中央部分が軸4に固定され、ばね2の端部2a及び端部2bは各々自由端となる。すなわち、ばね2の中央部分が軸4に固定された結果、端部2aを片持ちの自由端と見なすことができ、同様に端部2bも片持ちの自由端と見なすことができる。
【0027】
次に、外筒3の内部にばね2,軸4,及びブロック部5を収容する。その際、ばね2の端部2a、2bは若干互いが接近するように押圧変形させて外筒3内に収容する。そして端部2a,2bの押圧を解除すると、端部2a,2bは外筒3の内面3aに当接して押圧する。すなわち、ばね2は圧縮ばねとして機能する。換言すると、外筒3と軸4の間には環状の空隙部13が形成され、空隙部13にばね2が配置される。
【0028】
さらに外筒3に対して、開閉扉21の軸装着部11を固定する。すなわち、軸装着部11に対して外筒3を圧入するか、又は接着剤で両者を固定する。その際、軸装着部11の窪み11aに外筒3を挿入し、軸装着部11の底壁11bに外筒3のフランジ部3bを当接させる。その結果、軸装着部11の孔11cと、軸4の外面4aの間には環状の空間が形成される。
【0029】
この環状の空間に蓋9を配置し、蓋9の孔9c(段部9d)に軸4を圧入する。すなわち、軸4は穴4bによって若干内側へ変形可能であり、軸4は蓋9の段部9d(孔9c)に圧入可能である。そして軸4の先端を段部9dに当接させる。その結果、軸4(収納庫10)と蓋9とが一体化される。
【0030】
軸装着部11の孔11cの径よりも、蓋9の大径部9bの直径の方が大きい。そのため開閉扉21は、蓋9に阻止されて収納庫10から外れることがない。すなわち、収納庫10に対して、開閉扉21が回動可能に支持される。
【0031】
また、開閉扉21は、捩りばね(図示せず)によって開方向に常時付勢されている。さらにアッパグローブボックス15には、開閉扉21の全閉状態を維持するロック機構(図示せず)が設けられている。図示しないロック機構を解除すると、捩りばねの弾性力によって開閉扉21は開くようになっている。
【0032】
捩りばねの弾性力は強力であり、ロック機構によるロックを解除すると、開閉扉21は捩りばねの弾性力によって急激に開こうとする。ところが、軸部材1のばね2が外筒3の内面3aに押圧されているので、開閉扉21の開動作に制動が掛かる。よって、開閉扉21が急激に開くのが防止される。すなわち、収納庫10の収納部10bに物品(小物)を収納する際には、開閉扉21はゆっくりと開いて重厚なイメージの高級感を醸し出す。
【0033】
図6に示す軸部材1は、ちょうどリーディングシュー・トレーディングシュー式のドラムブレーキと同様の制動効果を発揮することができる。すなわち、開閉扉21は、捩りばねの弾性力に抗して閉じる際にも制動が掛かる。よって、開閉扉21が急激に閉じられて、大きな衝撃音が生じるのを防止することができる。
【0034】
軸部材1において、外筒3を収納庫10の側壁12a,12b側に設け、軸4を開閉扉21側(軸装着部11側)に設けても同様の効果が得られる。
【0035】
次に、図8を参照しながら図6に示す軸部材1の変形例を説明する。
図8に示す軸部材25は、外筒26(外郭部材)、ばね27(摺接片)、軸28(中央部材)を有する。外筒26及び軸28の構成は、図6の外筒3及び軸4の構成と同様であるが、ばね27の構造が図6のばね2の構造と相違する。よって、重複する説明は省略する。
【0036】
ばね27は、端部27a、屈曲部27b、端部27cを有する。図8に示すように端部27cは屈曲して軸28と一体のブロック体29の角に係合している。また、屈曲部27bは、ブロック体29の別の角に係合している。そしてばね27における屈曲部27bから端部27aの間の部位は、途中までがブロック体29及び軸28の外面に沿っており、途中から離れて端部27aが外筒26の内面26aに当接している。すなわち、ばね27は軸28の外面28aに沿う部分から端部27aに至る部分が湾曲しており、端部27aがばね27の弾性力によって外筒26の内面26aを押圧する。ばね27は片持ち状であり、端部27c側が固定端であり、端部27a側が自由端である。
【0037】
図8に示す軸部材25では、開閉扉が開動作するときのみ制動がかかり、閉動作時には制動がかからない。すなわち、開動作はゆっくりと行われるが、閉動作は速やかに実施できる。
【0038】
次に、軸部材のさらに別の変形例を、図9を参照しながら説明する。
図9に示す軸部材30は、外筒31(外郭部材)、ばね32(摺接片)、軸33(中央部材)を有する。軸部材30においては、ばね32の構造と、ブロック体34の形状のみが図6の軸部材1と相違している。よって、重複する説明は省略する。
【0039】
軸33は、正面視して正方形形状(長方形形状でも可)のブロック体34を一体に備えている。また、ばね32は、端部32a,折返し部32b、32c、屈曲部32d、端部32eを有する。ばね32の中央部分は、ブロック体34の3つの側面に沿い、ブロック体34の残りの1つの側面の途中の部位で折り返している。すなわち、図9に示すように2つの折返し部32b、32cは対向している。そして、端部32aが外筒31の内面31aに当接し、ばね32における折返し部32bから端部32aに至る部位は湾曲している。そしてこの湾曲によって弾性力が付与され、端部32aが外筒31の内面31aに押圧されている。同様に端部32eも外筒31の内面31aに押圧されている。図9に示すばね32の端部32aと端部32eも、図6のばね2の端部2a、2bと同様に片持ち状である。
【0040】
図9に示す軸部材30も、図8の軸部材25と同様に開閉扉21の開動作時にのみ制動をかける。図9の軸部材30では、ばね32の2つの端部32a、32eが外筒31の内面31aを押圧しているので、軸部材30は図8の軸部材25(ばね27の1つの端部27aのみが外筒26の内面26aを押圧)よりも安定した制動力が得られる。
【0041】
次に、図10及び図11を参照しながらさらに別の自動車用内装品の実施例を説明する。図10(a)に示す軸部材40と図6に示す軸部材1とでは、外筒43の構造が相違する。すなわち、軸部材40の外筒41は、内面41a(内壁)に隆起部44を有する。ばね42(図6の軸部材1のばね2と同じ)の端部42aは、外筒43の半径方向内方へ若干屈曲しており、内面43aから離れている。また、ばね42は、端部42aに連続する密着部42cと、端部42bに連続する密着部42dとを有する。
【0042】
隆起部44は、一端側(ばね42の端部42b側)が内面43aと滑らかに連続しており、他端側(ばね42の端部42a側)には段44aが形成されている。また、段44aが図10(a)に示す位置にあるときに自動車用内装品の開閉扉が全閉になり、段44aが図10(b)に示す位置にあるときに開閉扉が全開になるように設定されている。そして図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態へ、外筒43側が矢印Aで示す方向に回転移動すると、ばね42の端部42b(密着部42d)が隆起部44に乗り上げ、ばね42の端部42b側のたわみ量が増大する。
【0043】
その結果、ばね42の弾性力が増し、外筒43の回転を阻止する制動力が増大する。そして、図10(b)に示す状態に近付くにつれて徐々にばね42の端部42b側のたわみ量が増大し、図10(b)に示す状態で外筒43の回転を阻止する制動力が最大になる。よって、自動車用内装品の開閉扉の開閉速度は、全開に近付くにつれて遅くなり、高級感を醸し出すことができる。
【0044】
次に、図11(a)に示す軸部材45は、図6に示す軸部材1と比較して、外筒47の内面47aに凸部48が設けられており、ばね46の端部46b付近に湾曲部46cが設けられている点が相違する。
【0045】
図11(a)に示すように、ばね46の湾曲部46cは、外筒47の内面47aから離間するように凹んでいる。また、ばね46は、図10(a)に示すばね42の密着部42c,42dと同様の密着部46d,46eを有する。
【0046】
軸部材45は、図11(a)に示す状態では、凸部48がばね46の端部46a付近に配置されている。凸部48が図11(a)に示す位置にあるときには、自動車用内装品の開閉扉は全閉状態となるように設定されている。
そして図11(a)に示す状態から、外筒47が矢印Bで示す方向に回転すると、凸部48がばね46の端部46bに接近する。そして図11(b)に示す状態の直前になると、凸部48がばね46の端部46bに衝突する。ばね46の端部46bは、外筒47の内面47aから離間しており、さらに端部46bの先端部分は外筒47の半径方向内方側を向いている。よって、端部46bに衝突した凸部48は、ばね46を撓ませ、その直後に湾曲部46cに嵌まる。
【0047】
凸部48が図11(b)に示す位置にくると、開閉扉は全開状態となる。そして、ばね46の湾曲部46cが、凸部48とちょうど嵌まる形状に湾曲しており、凸部48が湾曲部46cに嵌まると、ばね46の弾性力によって密着部46eが外筒47の内面47aに密着する。
【0048】
そのため、外筒47がさらに回転しようとしても、凸部48と湾曲部46cが干渉し合い、外筒47の矢印Bで示す方向の回転が停止される。すなわち、凸部48と湾曲部46cとで外筒47の回転のストッパの機能を発揮する。よって、自動車用内装品の開閉扉は全開の状態で確実に停止する。
【符号の説明】
【0049】
1 軸部材(軸支部)
2 ばね(摺接片)
2a、2b ばねの端部
3 外筒
3a 内面(内壁)
4 軸(中央部材)
5 ブロック部
6 挿入部(係合凹部)
9 蓋9
10 収納庫(本体部)
10a 開口
10b 収納部
11 軸装着部
12a,12b 収納庫の側壁
13 外筒と軸の間の空隙部
15 アッパグローブボックス(自動車用内装品)
20 インストルメントパネル
21 開閉扉(扉部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と扉部とを有し、
前記本体部には物品を収納可能な収納部があり、当該収納部には物品を出し入れするための開口があり、
前記本体部と、扉部との間には軸支部があり、前記扉部は前記軸支部を中心に本体部に対して回動することによって本体部の開口を開閉する自動車用内装品において、
前記軸支部は中央部材と、外郭部材と、摺接片を有し、
前記外郭部材は、前記中央部材を覆うと共に中央部材との間に空隙部を形成し、
摺接片は弾性を有し、中央部材に対して片持ち状に支持されていてその自由端側が前記空隙部にあり、自己の弾性によって自由端側が外郭部材の内壁を押圧し、
前記中央部材は本体部又は扉部の一方側にあり、前記外郭部材は本体部又は扉部の他方側にあり、
扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動して摩擦力を発生させることを特徴とする自動車用内装品。
【請求項2】
摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであり、長手方向の中央が曲げられていて係合凹部があり、当該係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で前記摺接片が中央部材に取り付けられ、摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装品。
【請求項1】
本体部と扉部とを有し、
前記本体部には物品を収納可能な収納部があり、当該収納部には物品を出し入れするための開口があり、
前記本体部と、扉部との間には軸支部があり、前記扉部は前記軸支部を中心に本体部に対して回動することによって本体部の開口を開閉する自動車用内装品において、
前記軸支部は中央部材と、外郭部材と、摺接片を有し、
前記外郭部材は、前記中央部材を覆うと共に中央部材との間に空隙部を形成し、
摺接片は弾性を有し、中央部材に対して片持ち状に支持されていてその自由端側が前記空隙部にあり、自己の弾性によって自由端側が外郭部材の内壁を押圧し、
前記中央部材は本体部又は扉部の一方側にあり、前記外郭部材は本体部又は扉部の他方側にあり、
扉部の回動に伴って中央部材と外郭部材が相対的に回動して摩擦力を発生させることを特徴とする自動車用内装品。
【請求項2】
摺接片は一枚の板が曲げ加工されたものであり、長手方向の中央が曲げられていて係合凹部があり、当該係合凹部が中央部材の周囲を取り巻いた状態で前記摺接片が中央部材に取り付けられ、摺接片の両端側が中央部材に対して片持ち状であって摺接片の両端側が外郭部材の内壁を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−103697(P2013−103697A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250958(P2011−250958)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(304053957)日本IAC株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(304053957)日本IAC株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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