説明

自動車用内装基材の製造方法

【課題】十分な剛性を有し軽量でかつ安価な自動車用内装基材の製造方法を提供する。
【解決手段】グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材7にウレタン生成液Lを含浸させ、ウレタン生成液Lの含浸した上記マット材7を加熱して当該マット材7内でウレタン発泡させるとともに熱硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用内装基材の製造方法に関し、特に軽量かつ安価に製造できる自動車用内装基材等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用内装基材、特に自動車天井に使用される内装基材は軽量で高い剛性を有する必要があり、その一例として図6に示す構造の内装基材が知られている。すなわち、図6に示す内装基材は、板状の硬質ウレタンフォーム91の上下面にそれぞれ、グラスファイバーのチョップドストランドマット92をイソシアネート系接着剤93で接合したものである。
【0003】
これの製造は以下のように行う。すなわち、イソシアネートとポリオールを衝突混合させてウレタンの発泡ブロック体94を製造し(図7(1))、このブロック体94を規定サイズにスライスして板状の上記硬質ウレタンフォーム91とする(図7(2))。そして、ウレタンフォーム91の上下面に、接着剤93を付けた上記チョップドストランドマット92を接合する(図7(3))。このようにして成形された内装基材の上下に表皮等の構成材を重ねてホットプレスすることによって内装材としての例えば天井材RFを成形する(図7(4))。
【0004】
なお、特許文献1には、繊維層の上下面に接着層を介して熱可塑性樹脂シート層を接合した構造の自動車用内装基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の製造方法により製造される自動車用内装基材はスライス工程や接合工程等を必要とするため未だ工数を要しコストが高いという問題があった。
【0007】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、十分な剛性を有し軽量でかつ安価な自動車用内装基材を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明の自動車用内装基材の製造方法は、グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材にウレタン生成液を含浸させ、ウレタン生成液の含浸した上記マット材を加熱して当該マット材内でウレタン発泡させるとともに熱硬化させたことを特徴とする。
【0009】
本第1発明の製造方法によれば、従来のようなスライス工程や接合工程を必要としないから製造コストが安価であり、かつ十分な剛性を有し軽量な内装基材を得ることができる。
【0010】
本第2発明の自動車用内装材の製造方法は、グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材にウレタン生成液を含浸させ、ウレタン生成液を含浸させた上記マット材の少なくとも一面にさらに他の構成材を重ねて加熱し上記マット材内でウレタン発泡させるとともに熱硬化させたことを特徴とする。
【0011】
本第2発明によれば、内装基材の少なくとも一面を覆う表皮等の他の構成材と一体化して内装材を成形する過程で内装基材も同時に成形され、製造コストの低減が図られる。
【0012】
本第3発明の自動車用内装基材は、グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材内にウレタン発泡体が一体的に生成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明で使用するグラスファイバーはその外径が3μm〜17μmの範囲にあり、9μm程度のものが好適である。マット材の厚みは用途に応じて変更する必要があるが、自動車天井に使用する場合には3mm〜10mmが好ましい。ウレタン生成液としては、例えばイソシアネートとポリオールを衝突混合させた混合液が使用できる。上記自動車用内装材を天井材として使用する場合には、上記他の構成材として表皮材や非通気性フィルム材、スクリム材等を採用する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の自動車用内装基材の製造方法によれば十分な剛性を有しかつ軽量で安価な内装基材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の自動車用内装基材の製造に使用する装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の自動車用内装基材の製造工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の自動車用内装基材の製造工程を示す斜視図である。
【図4】本発明の自動車用内装基材を使用した内装材の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の自動車用内装基材を使用した自動車用内装材たる天井材の斜視図である。
【図6】従来の自動車用内装基材の一例を示す断面図である。
【図7】従来の自動車用内装基材の製造工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
本発明の自動車用内装基材を製造する場合には、最初にマット材を製造する。その製造工程を図1に示す。図1において、二台のエアレイ式フォーミングマシン1A,1Bを備え、各フォーミングマシン1A,1Bにグラスファイバー2を投入する。グラスファイバーとしてはEグラスを使用した。シュータ11から投入されたグラスファイバー2は各フォーミングマシン1A,1B内の第1コンベア12によって搬送され(以下、図1中の矢印で示す)、次段の第2コンベア13によって幅方向が均一に揃えられた状態でメインシリンダ14に送られる。
【0018】
メインシリンダ14で解繊され、吹き飛ばされたグラスファイバーは第3コンベア15上でシート状に積層されて搬送される。そして、フォーミングマシン1Bから排出されてコンベア41,42で搬送されるシート状グラスファイバーに、フォーミングマシン1Aから排出されたシート状グラスファイバーが重ねられて、次段のニードルパンチ5へ送られる。シート状グラスファイバーを二層に重ねるのは、この方が目付の局部的なバラツキを緩和できるからである。二層に積層されたシート状グラスファイバーは、ニードルパンチ5で繊維同士が交絡させられて不織布シート材となり、これをマット材7としてロール状に巻き取る。
【0019】
この後、図2に示すように、ロール状のマット材7を規定サイズにカットし、続いて、このマット材7に向けて、図3に示すように、工業用ロボットRに装着した吹付けガンGから、イソシアネートとポリオールを衝突混合させた混合液Lを吹き付けてマット材7内に含浸させる。そして、混合液Lを含浸させたマット材7の上下面に表皮材71や非通気性フィルム材72等の他の構成材を重ねて(図4)、110℃〜150℃でホットプレスすることによって、マット材7内でウレタン発泡させて内装基材を成形させるとともに全体を熱硬化させ、同時に互いに接着させて図5に示すような内装材としての天井材RFを成形する。
【0020】
このようにして製造された天井材は単位面積当り重量が400g/m2程度で、従来方法により製造された天井材の単位面積当り重量の500g/m2程度に比して軽量であり、しかも剛性も30〜40N/50mm/cm程度と従来と同程度の剛性が得られる。なお、上記実施形態においてはマット材に他の構成材を重ねて内装基材と内装材を同時に成形するようにしているが、他の構成材を重ねることなく内装基材のみを成形するようにしても良い。
【符号の説明】
【0021】
1A,1B…フォーミングマシン、5…ニードルパンチ、7…マット材、71…表皮材(他の構成材)、72…非通気性フィルム材(他の構成材)、L…混合液(ウレタン生成液)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材にウレタン生成液を含浸させ、ウレタン生成液の含浸した前記マット材を加熱して当該マット材内でウレタン発泡させるとともに熱硬化させたことを特徴とする自動車用内装基材の製造方法。
【請求項2】
グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材にウレタン生成液を含浸させ、ウレタン生成液を含浸させた前記マット材の少なくとも一面にさらに他の構成材を重ねて加熱し前記マット材内でウレタン発泡させるとともに熱硬化させたことを特徴とする自動車用内装材の製造方法。
【請求項3】
グラスファイバーの不織布からなるシート状のマット材内にウレタン発泡体が一体的に生成されていることを特徴とする自動車用内装基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43374(P2013−43374A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182851(P2011−182851)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】