説明

自動車用外装面材、自動車用外装部材および自動車

【課題】柔軟性を有する樹脂フィルム材を用いた新規な自動車用外装面材、これを用いた自動車用外装部材および自動車を提供する。
【解決手段】1層の樹脂フィルムまたは2層以上の樹脂フィルムの積層体からなる樹脂フィルム材であって、エレメンドルフ引裂強度が7N以上であり、引張強度が40MPa以上であり、かつ高温引張強度が25MPa以上である樹脂フィルム材を備えてなる自動車用外装面材。該自動車用外装面材を用いて自動車の屋根開閉式幌1を構成する。該自動車用外装面材を用いて二重空気膜構造体12、13を形成し、該二重空気膜構造体を用いて車体2、バンパー3を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する樹脂フィルム材を備えた自動車用外装面材、該自動車用外装面材を用いてなる自動車用外装部材、および該自動車用外装部材を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体(ボディ、ボンネット等)、バンパー、ドアミラーなど、自動車の外面を構成する外装部材の材料(外装面材)として、従来は、鉄やガラスなどの剛性を有する材料が用いられてきた。また、近年ではそれらに代わって、ポリプロピレン製バンパーやポリカーボネート製グレージングなどのプラスチック成形品が開発されている(特許文献1)。
また乗車時に開放感を得るために自動車の屋根の一部をガラス等の透明材料を用いる、いわゆるサンルーフがある。サンルーフの材質は前記ガラスだけでなく軽量化の観点からアクリルやポリカーボネートを基材とするものが提案されている(特許文献2)。
さらに屋根を開閉できるいわゆるオープンカーと類される自動車があり、一部をガラスや樹脂として幌を閉めた場合でも開放感を得られるようにした構造が提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0003】
自動車の外装面材の中で、オープンカー等の幌材料は柔軟性を有する外装面材である。かかる幌材料としては布地にゴムコートしたものが用いられており、耐光性の観点から光線透過をさせないのが一般的である(特許文献5)。このため、幌材料の外観色は黒、茶色など限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−136804号公報
【特許文献2】特開2006−256007号公報
【特許文献3】特開2010−215227号公報
【特許文献4】特開2009−220613号公報
【特許文献5】特開2009−133043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまでに無かった、柔軟性を有する樹脂フィルム材を用いた新規な自動車用外装面材、これを用いた自動車用外装部材、および該自動車用外装部材を備えた自動車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車用外装面材は、1層の樹脂フィルムまたは2層以上の樹脂フィルムの積層体からなる樹脂フィルム材であって、エレメンドルフ引き裂き強度が7N以上であり、引張強度が40MPa以上であり、かつ高温引張強度が25MPa以上である樹脂フィルム材を備えてなる。
前記樹脂フィルム材が、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、および着色顔料からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
前記樹脂フィルムを構成する樹脂が、含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリカーボネートからなる群より選ばれる一種、または二種以上の混合樹脂であることが好ましい。
【0007】
前記樹脂フィルム材を構成する樹脂フィルムのうちの少なくとも1層は、該樹脂フィルムを構成する樹脂が含フッ素ポリマーであることが好ましい。
前記含フッ素ポリマーが、四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、および下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種または二種以上の含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
CF=CFOR …(1)
(Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を示す。)
前記含フッ素ポリマーが、さらにエチレンに由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0008】
前記樹脂フィルム材の全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
さらに補強材層を備えることが好ましい。
さらに面状の発光体を備えてもよい。
【0009】
本発明は、本発明の自動車用外装面材と、該自動車用外装面材を支持するフレームを有する、自動車用外装部材を提供する。
前記自動車用外装部材として屋根開閉式自動車用幌が好適である。
【0010】
本発明は、本発明の自動車用外装面材からなる外膜と内膜との間に空気が閉じ込められた二重空気膜構造体を有する、自動車用外装部材を提供する。
さらに該二重空気膜構造体を支持するフレームを有してもよい。
前記自動車用外装部材として自動車用バンパーが好適である。
本発明は、本発明の自動車用外装部材を備えた自動車を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柔軟性を有する樹脂フィルム材を用いた自動車用外装面材、これを用いた自動車用外装部材、および該自動車用外装部材を備えた自動車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の自動車用外装部材を備えた自動車の例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における、樹脂フィルム材の「エルメンドルフ引裂強度(単位:N)」の値は、測定対象の樹脂フィルム材から、JIS K7128−2に記載されている短冊状試験片を切り抜き、該試験片についてエルメンドルフ引裂試験機(東洋精機製作所社製)にて引裂強度を測定して得られる値である。
本発明における、樹脂フィルム材の「引張強度(単位:MPa)」の値は、測定対象の樹脂フィルム材から、JIS K7162に記載されている5B型試験片を切り抜き、JIS K7127により測定される値である。該試験片について引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、常温で200mm/分の引張速度で引張試験を行い、破断時の引張強度を測定して得られる値である。
本発明における樹脂フィルム材の「高温引張強度(単位:MPa)」の値は、測定対象の樹脂フィルム材を60℃の雰囲気中に2時間放置した後、該雰囲気中で前記引張試験を実施し、破断時の引張強度を測定して得られる値である。
本発明における、樹脂フィルム材の「全光線透過率」の値は、日本電飾工業株式会社製NDH−5000(製品名)を用い、JIS K7361−1に基づいて全光線透過率を測定して得られる値である。
【0014】
<自動車用外装面材>
本発明の自動車用外装面材は樹脂フィルム材を備えている。従来の自動車用外装面材である、鉄、ガラス、プラスチック成形品等が剛性を有するのに対して、本発明の自動車用外装面材は柔軟性を有する。ここでの柔軟性を有するとは、例えば布地のように、容易に折り畳むことができることを意味する。
樹脂フィルム材は自動車用外装面材の最外層であることが好ましい。本発明の自動車用外装面材を備えた自動車用外装部品において、樹脂フィルム材が、自動車用外装部品の外面を構成することが好ましい。
【0015】
[樹脂フィルム材]
樹脂フィルム材は、一層の樹脂フィルムまたは2層以上の樹脂フィルムの積層体からなる。積層体である場合、該積層体を構成する2層以上の樹脂フィルムは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
樹脂フィルム材のエレメンドルフ引裂強度は7N以上であり、30N以上が好ましく、40N以上がより好ましい。該エレメンドルフ引裂強度は大きいほど好ましい。
樹脂フィルム材の引張強度は40MPa以上であり、50MPa以上が好ましく、55MPa以上がより好ましい。該引張強度は大きいほど好ましい。該引張強度の上限は特に限定されないが、現実的には1GPa以下程度である。
樹脂フィルム材の高温引張強度は25MPa以上であり、35MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましい。該高温引張強度は大きいほど好ましい。
エレメンドルフ引裂強度、引張強度、および高温引張強度が上記の範囲にあると、樹脂フィルム材を展張した状態で次に挙げる外力を受けた場合でも、裂けにくく、また破れにくい。外力の一例としては、飛来物が衝突することにより生じた外力、強風による外力、該フィルム上への積雪により生ずる外力などがあげられる、また夏季の高温下においても飛来物や強風による外力が加わったとしても、フィルムが破断しにくい。
【0016】
樹脂フィルム材の伸び率は50〜1000%が好ましく、300〜500%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な柔軟性が得られやすく、上限値以下であると良好な強度が得られやすい。
本発明における、樹脂フィルム材の「伸び率」の値は、JIS K7127により測定される値である。
樹脂フィルム材の厚さは特に制限はないが、好ましくは6〜500μmであり、10〜300μmがより好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な強度が得られやすく、上限値以下であると良好な柔軟性が得られやすい。
【0017】
樹脂フィルム材は、樹脂組成、分子量、結晶形状、添加剤等を調整することによって、透明度を広い範囲で調整可能である。樹脂フィルム材が、例えば屋根開閉式自動車用幌や自動車の屋根等、光透過性が要求される用途に用いられる場合、透明性の尺度である光線透過率が10%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0018】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムを構成する樹脂は、特に限定されないが、好ましい物性が得られやすい点で、含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリカーボネートからなる群より選ばれる一種、または二種以上の混合樹脂が好ましい。
これらのうち、良好な耐候性、耐光性、耐薬品性および耐久性が得られやすい点で含フッ素ポリマーが好ましい。
樹脂フィルム材を構成する樹脂フィルムのうちの少なくとも1層は、該樹脂フィルムを構成する樹脂が含フッ素ポリマーであることが好ましい。
特に、樹脂フィルム材を構成する樹脂フィルムのうち最も外側の層は、該樹脂フィルムを構成する樹脂が含フッ素ポリマーであることが好ましい。
【0019】
含フッ素ポリマーは、フッ素を含有する化合物(モノマー)に由来する繰り返し単位を有する樹脂(ポリマー)である。
含フッ素ポリマーは、四フッ化エチレン(以下、TFEと記すこともある。)、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと記すこともある。)、CH=CHC、CH=CHC、CH=CFC、CH=CF(CFHなどのフルオロアルキル基の炭素数が2〜10のフルオロアルキルエチレン類、および下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種または二種以上の含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
CF=CFOR …(1)
(Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を示す。)
式(1)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、Rの炭素数が3である、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVE記すこともある。)が挙げられる。
【0020】
含フッ素ポリマーが、含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位のほかに、フッ素原子を含有しない炭化水素化合物からなる炭化水素モノマーに由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
炭化水素モノマーとしては、エチレン(以下、Eと記すこともある。)、プロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
含フッ素ポリマーの好ましい例として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、Eに由来する繰り返し単位とTFEに由来する繰り返し単位を必須として有する共重合体(以下、ETFEと記すこともある。)、TFEに由来する繰り返し単位とHFPに由来する繰り返し単位を必須として有する共重合体(以下、FEPと記すこともある。)が好ましい。これらのうちでETFEがより好ましい。
【0021】
ETFEは、さらにHFPに由来する繰り返し単位および/またはPPVEに由来する繰り返し単位を有する共重合体が好ましい。
ETFEにおける各モノマーに由来する繰り返し単位の比率(共重合比率)は、E/TFEのモル比が10/90〜60/40であり、HFPに由来する繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して0〜20モル%、PPVEの含有量が全繰り返し単位に対して0.1〜10モル%であることが好ましい。
ETFEにおけるE/TFEのモル比は35/65〜50/50が好ましく、45/55〜50/50がより好ましい。該モル比がこの範囲内であると、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れる樹脂フィルムが得られやすい。
ETFEの分子量は、特に限定されないが、フィルムの物性や製造性が良好なる点から、分子量の目安となる容量流速(以下「Q値」ということもある。)として、297℃における容量流速が0.1〜30mm/秒が好適である。該容量流速は、フローテスターを使用して、297℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの単位時間に流出する測定対象樹脂の容量で表される値(mm/秒)で定義される。
ETFEの成形温度は320℃以下が好ましい。
【0022】
樹脂フィルムの製造方法としては、射出成型、ブロー成型、圧縮成型、押出成形など公知の方法を用いることができる。押出し機を用いて溶融した樹脂材料をTダイから吐出させ、ロールで巻き取る方法を好ましく用いることができる。
【0023】
[添加剤]
本発明の自動車用外装面材は、自動車用外装面材の柔軟性を損なわない範囲で、樹脂フィルム材に添加剤を配合することができる。添加剤としては紫外線吸収剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、着色剤など、樹脂フィルムの分野において公知の添加剤を適宜用いることができる。公知の添加剤としては、例えば特開平6−46683号公報または特開2008−163139号公報に記載されている添加剤を例示できる。
【0024】
[表面処理]
本発明の自動車用外装面材は、自動車用外装面材の柔軟性を損なわない範囲で、樹脂フィルム材に表面処理をすることができる。例えば、樹脂フィルム材の表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、ウェットコーティング法、スプレー塗工などの方法で光線反射性、撥水性、防汚性など種々の機能を付与してもよい。また、表面に凹凸を付けてもよい。樹脂フィルム材を構成する樹脂フィルムのうち最も外側の層として、光拡散顔料を添加した樹脂フィルムや、表面にカラー印刷を行った樹脂フィルムを用いてもよい。
【0025】
[補強材層]
本発明の自動車用外装面材は、自動車用外装面材の柔軟性を損なわない範囲で、樹脂フィルム材のほかに補強材層を備えることができる。補強材層としてはガラス繊維や炭素繊維、アラミド繊維からなる織物、またはその不織布などを含む層が好ましい。
例えば国際公開第2008/105298号パンフレットに記載されているように、ガラス繊維をバインダーで固着してなる織布または不織布を補強材層として、樹脂フィルム材を自動車用に積層してもよい。該補強材層を含フッ素ポリマーからなる樹脂フィルム上に固着して用いる場合、補強材層のバインダーとして、四フッ化エチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する繰り返し単位と、ビニルエーテル、ビニルエステル、イソプロペニルエーテル、イソプロペニルエステル、アリルエーテルおよびアリルエステルからなる群から選択される少なくとも1種の非含フッ素単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含有するバインダーを用いることが好ましい。かかる補強材層は含フッ素ポリマーからなる樹脂フィルムに加熱下で積層することができる。
【0026】
[発光体]
本発明の自動車用外装面材は、自動車用外装面材の柔軟性を損なわない範囲で、面状の発光体を備えることができる。発光体を備えた自動車用外装面材を用いて自動車用外装部材を構成することにより、該自動車用外装部材の外観色を制御することができる。
面状の発光体は、消費電力が少なく、発熱も少ない点で、発光ダイオード(LED)や有機発光ダイオードを用いて構成されたものが好ましい。光ファイバーシステムなどと組み合わせることもできる。
例えば、自動車用外装面材を自動車用部材に用いたときに内面となる樹脂フィルム材上、または二重空気膜構造体としたときに内方側の面となる樹脂フィルム材上に、面状の発光体を接着積層してもよい。また面状の発光体と樹脂フィルム材との間に空気層や光拡散層を介在させてもよい。該発光体の発光色を切り替える手段を設けることにより、自動車用外装部材の外観色を任意に変更することが可能となる。
【0027】
[太陽電池]
本発明の自動車用外装面材は、自動車用外装面材の柔軟性を損なわない範囲で、太陽電池を備えることができる。太陽電池として、例えば一対の導電層の間に1以上の薄膜光電変換層を積層した構造を有し、太陽光側に表面材を有するものが好ましい。かかる太陽電池は、自動車用外装面材を自動車用部材に用いたときに内面となる樹脂フィルム材上、または二重空気膜構造体における外膜の内方側の面となる樹脂フィルム材上に積層して用いることが好ましい。また、樹脂フィルム材が太陽電池の表面材を兼ねる構成とすることもできる。
太陽電池を備えた自動車用外装面材を用いることにより、自動車用外装部材に車両用太陽電池パネルとしての機能を付与できる。
【0028】
<自動車用外装部材>
図1は、本発明の自動車用外装面材を用いて構成された自動車用外装部材(屋根開閉式自動車用幌、開口部材、車体、およびバンパー)を備えた自動車の例を示した概略構成図である。
図中符号1は、屋根開閉式自動車用幌1である。該幌1は、従来の布地にゴムコートが施された幌材料に替えて、本発明の自動車用外装面材が用いられている。すなわち、金属製の細板を用いて形成されたフレーム(骨組み)(図示せず)に、本発明の自動車用外装面材11を展張して、屋根開閉式自動車用幌1が形成されている。
図中符号2は車体(ボディ、ボンネット)を示す。車体2には、従来の鋼板に替えて、本発明の自動車用外装面材からなる二重空気膜構造体12が用いられている。すなわち、本発明の自動車用外装面材を2枚重ね合わせ(外膜および内膜)、接着部12aにより複数区域に区画し、接着部12aで囲まれた区域内を空気室とし、該空気室に空気を封入して二重空気膜構造体12を形成する。この二重空気膜構造体12を、フレーム(骨組み)(図示せず)に取り付けて車体2が形成されている。二重空気膜構造体12は、空気室の空気圧によって膜面に張力を与えることによって、剛性を有する面材のような形状保持性および外力に対する強度を実現できる。
図中符号3はバンパーを示す。バンパー3には、従来のプラスチック成型体に替えて、本発明の自動車用外装面材からなる二重空気膜構造体13が用いられている。すなわち、本発明の自動車用外装面材で構成された二重空気膜構造体13を、フレーム(骨組み)(図示せず)に取り付けてバンパー3が形成されている。
【0029】
フレーム(骨組み)の材質は、特に限定されるものではなく、要求される強度を有するものであればよい。各種鉄鋼材料および非鉄材料を使用することができる。例えば鋼材(鋼板)、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはチタン合金などが挙げられる。これらのうち、汎用性、加工性の点で材またはアルミニウム合金が好適である。
【0030】
二重空気膜構造体の接着部12aを形成する方法は、公知の接着方法を用いることができる。例えば、含フッ素ポリマーからなる樹脂フィルム同士の接合には、特許第3952020号公報に記載されているように、2枚のフィルムを重ね合わせ、帯状の接合部の幅方向の中央部分を、該含フッ素ポリマーの融点の−5℃以上+20℃以下の温度で加熱圧着し、次いで帯状の接合部の全面を、該融点の−30℃以上−5℃未満の温度で加熱圧着して、接合部を融着させる方法を用いることができる。
含フッ素ポリマーからなる樹脂フィルムと他の材料と接着が必要な場合には、接着剤として、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着材、アクリル系接着剤等が挙げられる。ポリエステル系接着剤の具体的例としては、東亜合成社製のPES111SK−20、PES140(いずれも製品名)等が挙げられる。
【0031】
二重空気膜構造体における空気室の形状および大きさは、該二重空気膜構造体を用いて形成する自動車用外装部材の形状や要求される強度等に応じて適宜設計できる。
二重空気膜構造体を建築物の部材に用いることは公知であり、これらの技術を応用することができる。例えば、二重空気膜構造体を用いて建築物の屋根を構成する方法が、特開平7−293046号公報、特開平10−159392号公報(ケーブルエアドーム型)、特開2003−82887号公報(スライド開閉型)等に記載されている。
また、二重空気膜構造体は、例えば特開平11−36667号公報に記載されているような、チューブ状の空気室が連結された構造を有していてもよい。
さらに、特開2008−115633号公報に記載されているような、外膜と内膜との間に、可撓性膜内に気体を封入した気嚢からなるコアが密着して配置されるとともに、外膜とコアの間および内膜とコアの間が減圧されて、コアの外面が外膜および内膜とそれぞれ密着している、減圧二重膜型の構造を有していてもよい。
【0032】
本発明の自動車用外装面材は、柔軟性を有し、透明度を広い範囲で調整が可能であり、耐光性、耐候性、耐薬品性、耐久性に優れる。また二重空気膜構造体とすることにより、充分な形状保持性および強度を有する面材となる。
本発明の自動車用外装面材は、屋根開閉式自動車用幌、自動車の車体(ボディ、ボンネット)、自動車用バンパー、ドアミラー等の自動車用外装部材の材料として好適に用いることができる。
透明度が高い自動車用外装面材を屋根開閉式自動車用幌に用いることにより、耐候性、耐光性、耐薬品性、耐久性に優れるとともに、透明性に優れ、オープンカーの幌を閉じた際でも開放感を味わえる幌が得られる。
面状の発光体を備えた自動車用外装面材を用いて自動車用外装部材を構成することにより、自動車用外装部材の外観色を制御することができる。また自動車用外装面材が面状の発光体を有しない場合であっても、自動車用外装部材を構成する際に、自動車用外装面材とは別に発光手段を設けることにより、外観色を制御できる自動車用外装部材を得ることもできる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明にかかる自動車用外装部材の例を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
以下の例では、本発明における樹脂フィルム材として、含フッ素共重合体からなる単層の樹脂フィルムを用いた。
樹脂フィルムの融点は、走査型示差熱分析器(セイコーインスツルメンツ社製、製品名:DSC220CU)を用いて、300℃まで10℃/分で加熱した際の吸熱ピークから融点を求めた。
【0034】
[製造例1]
内容積が94リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの70.6kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、以下、AK225cbという。)の20.4kg、PPVEの1.62kg、HFPの2.25kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、圧力が1.5MPa−GになるまでTFE/E=76/24(モル比)の混合ガスを圧入し、ついで重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの1質量%AK225cb溶液の65mLを仕込み、重合を開始させた。重合の進行に伴い圧力が低下するので、重合中圧力が1.5MPa−Gを保持するようにTFE/E=50/50(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。重合開始7.3時間後、モノマー混合ガスの7.1kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0035】
こうして得られたスラリー状の含フッ素共重合体1を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、7.4kgの含フッ素共重合体造粒物1が得られた。該含フッ素共重合体造粒物1を押出し機にてペレット化し、ペレット1を得た。得られたペレット1を単軸押出機を用いて310℃の成型温度で、厚さ200μmのフィルムに成型し、樹脂フィルム1とした。
含フッ素共重合体1の組成を、溶融NMR分析およびフッ素含有量分析により調べた結果、TFEに由来する繰り返し単位/Eに由来する繰り返し単位/HFPに由来する繰り返し単位/PPVEに由来する繰り返し単位=50.6/48.2/0.7/0.6(モル%)であった。含フッ素共重合体1の融点は269℃、容量流速は5.8mm/秒であった。
樹脂フィルム1について測定した結果、全光線透過率は90%、エルメンドルフ引裂強度は40N、引張強度は56.2MPa、高温引張強度は43.7MPaであった。
【0036】
[製造例2]
製造例1において、HFPを仕込まず、PPVEの仕込み量を2.16kgに変更した以外は製造例1と同様に重合反応を行い、含フッ素共重合体2、含フッ素共重合体造粒物2を得た。含フッ素共重合体造粒物2を押出し機にてペレット化し、ペレット2を得た。製造例1と同様の方法で、厚さ200μmの樹脂フィルム2を得た。
製造例1と同様にして、含フッ素共重合体2の組成を調べた結果、TFEに由来する繰り返し単位/Eに由来する繰り返し単位/PPVEに由来する繰り返し単位=50.7/48.5/0.8(モル%)であった。含フッ素共重合体2の融点は272℃、容量流速は6.1mm/秒であった。
樹脂フィルム2について測定した結果、全光線透過率は90%、エルメンドルフ引裂強度は34N、引張強度は53.3MPa、高温引張強度は45.6MPaであった。
【0037】
[製造例3]
製造例1において、PPVEを仕込まず、HFPの仕込み量を2.57kgに変更した以外は製造例1と同様に重合反応を行い、含フッ素共重合体3、含フッ素共重合体造粒物3を得た。含フッ素共重合体造粒物3を押出し機にてペレット化し、ペレット3を得た。製造例1と同様の方法で、厚さ200μmの樹脂フィルム3を得た。
製造例1と同様にして、含フッ素共重合体3の組成を調べた結果、TFEに由来する繰り返し単位/Eに由来する繰り返し単位/HFPに由来する繰り返し単位=50.7/48.5/0.8(モル%)であった。含フッ素共重合体3の融点は275℃、容量流速は8.5mm/秒であった。
樹脂フィルム3について測定した結果、全光線透過率は90%、エルメンドルフ引裂強度は48N、引張強度は43.8MPa、高温引張強度は41.8MPaであった。
【0038】
[製造例4]
製造例1において、重合槽にPPVE、HFPを仕込まず、パ−フルオロブチルエチレン(CH2=CHC4F9)0.24kgを加えた。
また製造例1におけるAK225cbを26.1kgとし、1.5MPa−GになるまでTFE/E(モル比)84.5/15.5の混合ガスを圧入し、重合中圧力が1.5MPa−Gを保持するようにTFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。そのほかは、製造例1と同様に重合反応を行い含フッ素共重合体4、含フッ素共重合体造粒物4を得た。含フッ素共重合体造粒物4を押出し機にてペレット化し、ペレット4を得た。製造例1と同様の方法で、厚さ200μmの樹脂フィルム4を得た。
製造例1と同様にして、含フッ素共重合体4の組成を調べた結果、TFEに由来する繰り返し単位/Eに由来する繰り返し単位/パ−フルオロブチルエチレンに由来する繰り返し単位=53.5/45.6/0.9(モル%)であった。含フッ素共重合体4の融点は267℃、容量流速は8.5mm/秒であった。
樹脂フィルム4について測定した結果、全光線透過率は90%、エルメンドルフ引裂強度は48N、引張強度は43.8MPa、高温引張強度は41.8MPaであった。
【0039】
[実施例1]
金属製の細板を用いて、屋根開閉式自動車用の幌の骨組み(フレーム)を形成した。上記で得た樹脂フィルム1、樹脂フィルム2、樹脂フィルム3、および樹脂フィルム4をそれぞれ、公知の方法で所定の形状に裁断し、所定の形状に貼り合わせた後、前記骨組みに展張して取り付け、屋根開閉式自動車用の幌を製造した。
【0040】
[実施例2]
金属製の細板を用いて、バンパー形状のフレームを形成した。上記で得た樹脂フィルム1、樹脂フィルム2、樹脂フィルム3、および樹脂フィルム4をそれぞれ、公知の方法で所定の形状に裁断し、所定の形状に貼り合わせた後、前記フレームに展張して取り付け、バンパーを製造した。
【符号の説明】
【0041】
1 屋根開閉式自動車用幌、
2 車体(ボディ、ボンネット)、
3 バンパー、
11 自動車用外装面材、
12、13 自動車用外装面材からなる二重空気膜構造体、
12a 接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の樹脂フィルムまたは2層以上の樹脂フィルムの積層体からなる樹脂フィルム材であって、エレメンドルフ引裂強度が7N以上であり、引張強度が40MPa以上であり、かつ高温引張強度が25MPa以上である樹脂フィルム材を備えた、自動車用外装面材。
【請求項2】
前記樹脂フィルム材が、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、および着色顔料からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1記載の自動車用外装面材。
【請求項3】
前記樹脂フィルムを構成する樹脂が、含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリカーボネートからなる群より選ばれる一種、または二種以上の混合樹脂である、請求項1又は2に記載の自動車用外装面材。
【請求項4】
前記樹脂フィルム材を構成する樹脂フィルムのうちの少なくとも1層は、該樹脂フィルムを構成する樹脂が含フッ素ポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用外装面材。
【請求項5】
前記含フッ素ポリマーが、四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、および下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種または二種以上の含フッ素モノマーに由来する繰り返し単位を有する、請求項3または4に記載の自動車用外装面材。
CF=CFOR …(1)
(Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項6】
前記含フッ素ポリマーが、さらにエチレンに由来する繰り返し単位を有する、請求項5に記載の自動車用外装面材。
【請求項7】
前記樹脂フィルム材の全光線透過率が10%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車用外装面材。
【請求項8】
さらに補強材層を備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車用外装面材。
【請求項9】
さらに面状の発光体を備えた、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車用外装面材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動車用外装面材と、該自動車用外装面材を支持するフレームを有する、自動車用外装部材。
【請求項11】
前記自動車用外装部材が屋根開閉式自動車用幌である、請求項10記載の自動車用外装部材。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動車用外装面材からなる外膜と内膜との間に空気が閉じ込められた二重空気膜構造体を有する、自動車用外装部材。
【請求項13】
さらに該二重空気膜構造体を支持するフレームを有する、請求項12記載の自動車用外装部材。
【請求項14】
前記自動車用外装部材が自動車用バンパーである、請求項12または13記載の自動車用外装部材。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一項に記載の自動車用外装部材を備えた自動車。

【図1】
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【公開番号】特開2012−219216(P2012−219216A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88175(P2011−88175)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】