説明

自動車用導風ダクト及びその配設構造

【課題】冷却系部品の大きさが互いに異なる複数種類の自動車への設置コストの削減が実現可能な導風ダクトを提供する。
【解決手段】上下方向と車幅方向のうちの何れか一方の方向において互いに対向配置される、互いの対向方向に相対変位可能な一対の第一側壁部16,18を、上下方向と車幅方向のうちの何れか他方の方向において互いに対向配置される一対の第二側壁部20,22に対して、連結手段52a,52b,52c,60により、対向面間距離が異なる複数の変位位置のうちの任意の位置において連結することにより、それら一対の第一側壁部16,18と一対の第二側壁部20,22とを筒状に連結して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用導風ダクトとその配設構造とに係り、特に、自動車の前部に配置されて、自動車前面から取り入れられた走行風を冷却系部品に導く筒状の自動車用導風ダクトと、そのような自動車用導風ダクトの自動車への配設構造のそれぞれの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車では、その走行によって生ずる、車両前方から後方に向かう流れの走行風が、自動車前面に設けられたフロントバンパやフロントグリルの開口部からなる空気取入口を通じて、自動車前部のエンジンルーム内に取り入れられるようになっている。そして、この走行風が、エンジンルーム内に設置されたラジエータや空調用コンデンサ等の冷却系部品に導かれて、それらの冷却系部品の冷却に利用されている。
【0003】
また、多くの自動車においては、エンジンルーム内のフロントバンパと冷却系部品との間に、走行風を冷却系部品に導くための導風部材が配置されている。この導風部材には、各種の構造を有するものがあり、その中の一種として、例えば、特開2010−254119号公報(特許文献1)等に明らかにされるような、所謂導風ダクトが、知られている。この導風ダクトは、四つの導風板が一体的に組み付けられてなる筒状体にて構成されており、エンジンルーム内におけるフロントバンパとラジエータ等の冷却系部品との間に、車両前後方向に延びるように配置される。かくして、自動車前面の空気取入口から取り入れられた走行風が、導風ダクトにより、冷却系部品に対して、よりスムーズに且つ無駄なく導かれて、冷却系部品の冷却効率の向上が図られているのである。
【0004】
ところが、そのような従来の導風ダクトには、以下の如き問題が内在していた。
【0005】
すなわち、従来から、同一の車種に、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのうちの何れかを搭載して、同一車種のガソリン車とディーゼル車を製造したり、或いは同一の車種に、ガソリンエンジンとハイブリッドエンジン(電動モータとガソリンエンジン)の何れかを搭載して、同一車種のガソリン車とハイブリッド車を製造したりすることが、一般に行われている。このような同一車種のガソリン車とディーゼル車、或いは同一車種のガソリン車とハイブリッド車には、それぞれ、同じ種類のフロントバンパが設置される。
【0006】
一方、従来の導風ダクトにあっては、フロントバンパとの間に形成される隙間を可及的に小さくして、それらの隙間からの走行風の抜け出しを防止するために、導風ダクトの前端面が、フロントバンパの内側面に対応した形状とされている。それ故、同一車種のガソリン車とディーゼル車、或いは同一車種のガソリン車とハイブリッド車にそれぞれ搭載される導風ダクトは、フロントバンパよりも車両後方側に配置される導風ダクトの前側部分の形状を含めた全体形状が同様な形状とされる。
【0007】
また、よく知られているように、ラジエータ等の冷却系部品は、その大きさが、ガソリン車に搭載されるものと、ディーゼル車に搭載されるものと、ハイブリッド車に搭載されるものとの間で、それぞれ異なっている。それ故、導風ダクトをガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車にそれぞれ搭載する場合には、冷却系部品の前面の全領域に走行風を十分に吹き付け得るように、導風ダクトの大きさを、ガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車との間で、冷却系部品の大きさに応じた互いに異なる大きさとする必要がある。
【0008】
このため、従来の導風ダクトをガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車に搭載する際には、たとえ車種が同一であって、全体形状が同様なものであっても、ガソリン車用とディーゼル車用とハイブリッド車用の、互いに大きさの異なる3種類の導風ダクトを準備する必要があった。ところが、それら3種類の導風ダクトを準備した際に、例えば、3種類のうちの何れかのものが必要な数を超えて製造されると、必要数以外の導風ダクトは、使い道が無くなって余ってしまう。そうなると、そのような余分な導風ダクトの製造に要した費用が、全くの無駄となってしまい、それによって、導風ダクトの製造コストが圧迫されるといった問題が生じていたのである。
【0009】
しかも、同一車種の自動車に設置される導風ダクトを、とりわけ、樹脂材料を用いた金型成形によって製造する際には、全体形状が同様な形状とされているにも拘わらず、成形キャビティの大きさが異なる複数種類の金型の使用を余儀なくされ、それが、大きな経済負担となっていたのである。
【0010】
また、従来においては、導風ダクトの後端部を、ラジエータを収容するシュラウドの前端部に直接に固定することによって、導風ダクトをフロントバンパとラジエータとの間に配設する場合がある。例えば、導風ダクトの後端部と、ラジエータを収容するシュラウドの前端部とに、それぞれ側方に突出するフランジ部を一体形成し、それら両フランジ部を互いに重ね合わせた状態で、樹脂クリップ等を用いて固定するようにしたものが、それである。
【0011】
そのように、導風ダクトをシュラウドに直接に固定するには、シュラウドの大きさを導風ダクトの大きさに対応させる必要がある。そのため、ガソリン車用とディーゼル車用とハイブリッド車用の3種類の導風ダクトを準備したときには、シュラウドも、それら3種類の導風ダクトに対応した大きさの3種類のものを準備しなければならず、それにより、シュラウドにおいて、従来の導風ダクトと同様な問題が惹起されていた。それ故、導風ダクトをシュラウドに直接に固定する、従来の導風ダクトの配設構造を採用した場合にあっても、ラジエータの大きさが互いに異なる自動車への設置コストが高くなってしまうことが避けられなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−254119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その第一の解決課題とするところは、冷却系部品の大きさが互いに異なる複数種類の自動車に対して、可及的に低いコストで設置が可能となるように改良された導風ダクトを提供することにある。また、本発明は、冷却系部品の大きさが互いに異なる複数種類の自動車に対して、可及的に低いコストで設置が可能となるように改良された導風ダクトの配設構造を提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、本発明は、第一の課題の解決のために、自動車の前面に設置されたフロントバンパと、該フロントバンパよりも車両後方側に設置された冷却系部品との間に、車両前後方向に延びるように配置されて、自動車前面から取り入れられた走行風を冷却系部品に導く筒状の自動車用導風ダクトであって、(a)上下方向と車幅方向のうちの何れか一方の方向において互いに対向配置される、互いの対向方向に相対変位可能な一対の第一側壁部と、(b)上下方向と車幅方向のうちの何れか他方の方向において互いに対向配置される一対の第二側壁部と、(c)該一対の第一側壁部を、対向面間距離が異なる複数の変位位置において、該一対の第二側壁部に連結可能な連結手段とを有し、前記一対の第一側壁部と前記一対の第二側壁部とが、前記連結手段により筒状に連結されて、形成されていることを特徴とする自動車用導風ダクトを、その要旨とするものである。
【0015】
なお、本発明の好ましい態様の一つによれば、前記第一側壁部と前記第二側壁部の少なくとも何れか一方が、前記フロントバンパよりも車両後方側に配置される前側部分と、該前側部分とは別個の部材にて構成された、前記冷却系部品よりも車両前方側に配置される後側部分とを、車両前後方向に組み合わせることにより形成される。
【0016】
また、本発明の有利な態様の一つによれば、前記前側部分が、前記後側部分に対して分離可能に組み合わされていると共に、自動車に対して取り外し可能に設置されるように構成される。
【0017】
さらに、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記前側部分の後端部と前記後側部分の前端部との間をシールするシール部を有して、構成される。そして、好ましくは、そのようなシール部が、前側部分の後端部と後側部分の前端部のうちの少なくとも何れか一方に、一体形成される。
【0018】
更にまた、本発明の有利な態様の一つによれば、前記一対の第一側壁部と前記一対の第二側壁部とが、何れも、前記前側部分と前記後側部分とにて構成されて、該一対の第一側壁部の前側部分と該一対の第二側壁部の前側部分とが筒状に連結される一方、該一対の第一側壁部の後側部分と該一対の第二側壁部の後側部分とが筒状に連結されて、構成されることとなる。なお、かかる構成を採用する場合には、好ましくは、前記連結手段が、該一対の第一側壁部の前側部分と該一対の第二側壁部の前側部分とを筒状に連結する第一の連結手段と、該一対の第一側壁部の後側部分と該一対の第二側壁部の後側部分とを筒状に連結する第二の連結手段とを含んで構成される。
【0019】
また、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記フロントバンパと前記冷却系部品との間に車幅方向に延びるように配設されるバンパリーンフォースメントを挿通するための切欠部が、前記前側部分のみに形成される。
【0020】
さらに、本発明の好適な態様の一つによれば、切欠部が、前記前側部分の後側端面に、後方に開口するように形成されることとなる。
【0021】
また、本発明の有利な態様の一つによれば、前記一対の第一側壁部が、前記一対の第二側壁部の対向方向に延びる板材からなる一方、該一対の第二側壁部が、該一対の第一側壁部の対向方向に延びる板材からなり、更に、該第一側壁部の延出方向の一端部又は両端部に、該第二側壁部の延出方向に延び出して、該第二側壁部の延出方向の端部に重ね合わされる連結用板部が一体形成されると共に、該第一側壁部が前記複数の変位位置のうちの任意の位置に配置されたときに、該連結用板部が、前記連結手段にて、該第二側壁部の延出方向の端部に連結されることにより、該第一側壁部が、該任意の変位位置において、該第二側壁部に連結されるように構成される。
【0022】
さらに、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記第一側壁部の連結用板部と前記第二側壁部の延出方向の端部とにそれぞれ形成された貫通孔と、それら第一側壁部の連結用板部と第二側壁部の延出方向の端部にそれぞれ設けられた貫通孔に挿通せしめられて、該第一側壁部の連結用板部と該第二側壁部の延出方向の端部とを相互に連結する連結部材とにて、前記連結手段が構成され、更に、該第一側壁部の連結用板部と該第二側壁部の延出方向の端部のうちの何れか一方に設けられた該貫通孔が、該連結用板部又は該第二側壁部の延出方向に間隔を隔てて複数並んで配置されており、該第一側壁部が前記複数の変位位置のうちの任意の位置に配置されたときに、該複数並んで配置された貫通孔のうちの何れかが、該第一側壁部の連結用板部と該第二側壁部の延出方向の端部のうちの何れか他方に設けられた該貫通孔に対応位置せしめられて、それら互いに対応位置する貫通孔に前記連結部材が挿通されることにより、該第一側壁部が、該任意の変位位置において、該第二側壁部に連結されるように構成される。
【0023】
そして、本発明は、第二の課題の解決のために、自動車の前面に設置されたフロントバンパと、該フロントバンパよりも車両後方側に設置された冷却系部品との間に、自動車前面から取り入れられた走行風を該冷却系部品に導く筒状の自動車用導風ダクトを配設するための構造であって、前記冷却系部品の外周縁部に、第一の係合部が複数設けられた固定用部材を嵌着固定する一方、前記自動車用導風ダクトの筒壁部の軸方向一端部に、該第一の係合部に係合する第二の係合部を複数形成し、該複数の第二の係合部を該複数の第一の係合部にそれぞれ係合させて、該自動車用導風ダクトを該固定用部材に固定することにより、該自動車用導風ダクトを、前記冷却系部品に固定した状態で、該冷却系部品と前記フロントバンパとの間に配設するようにしたことを特徴とする自動車用導風ダクトの配設構造をも、また、その要旨とするものである。
【0024】
また、本発明は、前記した特徴を有する自動車用導風ダクトを、前記フロントバンパと前記冷却系部品との間に配設する自動車用導風ダクトの配設構造において、前記冷却系部品の外周縁部に、第一の係合部が複数設けられた固定用部材を嵌着固定する一方、前記第一側壁部と前記第二側壁部のうちの少なくとも何れか一方の後端部に、該第一の係合部に係止する第二の係合部を複数形成し、該複数の第二の係合部を該複数の第一の係合部にそれぞれ係合させて、該第一側壁部と該第二側壁部のうちの少なくとも何れか一方を、該固定用部材に固定することにより、該第一側壁部の一対と該第二側壁部の一対とが筒状に連結されてなる前記自動車用導風ダクトを前記冷却系部品に固定した状態で、該冷却系部品と前記フロントバンパとの間に配設するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
すなわち、本発明に従う自動車用導風ダクトにあっては、その製造工程で、一対の第一側壁部を連結手段にて一対の第二側壁部のそれぞれに連結する際に、複数の変位位置のうちから選択される連結位置を適宜に変更することにより、一対の第一側壁部の対向面間距離を変えて、全体の大きさを種々変更することができる。
【0026】
それ故、かかる自動車用導風ダクトでは、設置されるべき自動車が、例えば、ラジエータの大きさが互いに異なるガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車のうちの何れであっても、一対の第一側壁部や一対の第二側壁部等の部品の共通化が可能となる。それにより、ガソリン車用とディーゼル車用とハイブリッド車用として、全体の大きさが互いに異なる専用の導風ダクトをそれぞれ製造する必要が解消される。そして、その結果、それらガソリン車用とディーゼル車用とハイブリッド車用の導風ダクトのうちの何れかのものの過剰生産による経済的及び労力的な無駄の発生が、有利に解消され得る。また、導風ダクトが樹脂材料を用いた金型成形によって製造される場合には、製造に使用される第一側壁部の成形用金型と第二側壁部の成形用金型が、それぞれ、一種類で済み、これによって、第一側壁部や第二側壁部の製造コスト、ひいては導風ダクト全体の製造コストの低減が、効果的に図られ得る。
【0027】
従って、かくの如き本発明に従う自動車用導風ダクトにあっては、冷却系部品の大きさが互いに異なる複数種類の自動車、例えばガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車の3種類の自動車のうちの何れに対しても、十分に低いコストで設置することができるのである。
【0028】
また、本発明に従う自動車用導風ダクトの配設構造においては、導風ダクトを、冷却系部品に固定することができる。それ故、冷却系部品のうちの、例えばラジエータを収容するシュラウドに対して、導風ダクトを固定する場合とは異なって、通風ダクトの大きさが変化しても、シュラウドの大きさを変える必要がない。
【0029】
従って、かくの如き本発明に従う自動車用導風ダクトの配設構造によれば、冷却系部品の大きさが互いに異なる複数種類の自動車、例えばガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車の3種類の自動車のうちの何れに対しても、自動車用導風ダクトを、十分に低いコストで、フロントバンパと冷却系部品との間に配設することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従う導風ダクトの一実施形態をフロントバンパとラジエータとの間に設置した状態において示す説明図であって、図2のI−I断面に相当する図である。
【図2】図1のII−II断面説明図である。
【図3】図1に示された導風ダクトの後部を構成するダクト後部を示す斜視説明図である。
【図4】図3のIV−IV断面における部分拡大説明図である。
【図5】本発明に従う導風ダクトの配設構造において導風ダクトをラジエータに固定する際に利用される固定用部材をラジエータに固定した状態を示す説明図である。
【図6】本発明に従う導風ダクトの別の実施形態をフロントバンパとラジエータとの間に設置した状態において示す、図1に対応する図である。
【図7】図6のVII−VII断面説明図である。
【図8】本発明に従う導風ダクトの更に別の実施形態の後部を構成するダクト後部を示す、図3に対応する図である。
【図9】本発明に従う導風ダクトの他の実施形態の後部を構成するダクト後部を示す、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、図1と図2には、本発明に従う自動車用導風ダクトの一実施形態の縦断面形態と横断面形態とが、ディーゼルエンジンを搭載する自動車(ディーゼル車)のエンジンルーム:E内に設置された形態において、それぞれ示されている。それら図1及び図2から明らかなように、本実施形態の自動車用導風ダクト10(以下、単に、導風ダクト10と言う)は、全体として、略四角筒形状を呈する角筒体からなり、エンジンルーム:E内のフロントバンパ12と、冷却系部品としての、ディーゼル車用のラジエータ14との間に、車両の前後方向に延びるように、換言すれば、軸方向が車両前後方向と一致する状態で配置されるようになっている。なお、以下の説明では、導風ダクト10のエンジンルーム:E内への配置状態に基づいて、車両の上下方向(図1の上下方向)と前後方向(図1の左右方向)と左右方向、つまり車幅方向(図1の紙面に垂直な方向)に対応した方向を、それぞれ、導風ダクト10の上下方向、前後方向、及び左右方向(車幅方向)と言うこととする。
【0033】
導風ダクト10は、車幅方向において互いに対向して、車両上下方向に延びる、一対の第一側壁部としての右側壁部16及び左側壁部18と、車両上下方向において互いに対向して、車幅方向に延びる、一対の第二側壁部としての上側壁部20及び下側壁部22とを有している。上側壁部20と下側壁部22は、互いに同一形状を呈する樹脂平板からなり、それぞれが、単一部材にて構成されている。右側壁部16と左側壁部18は、それぞれ、樹脂平板からなる前側部分24と後側部分26とが前後方向に組み合わされて、構成されている。
【0034】
そして、上側壁部20と下側壁部22と右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26とが、筒状に組み付けられる一方、かかる筒状の組付体の前面に、右側壁部16の前側部分24と左側壁部18の前側部分24とが組み合わされて、導風ダクト10が構成されている。即ち、本実施形態の導風ダクト10は、右及び左側壁部16,18のそれぞれの後側部分26,26と上及び下側壁部20,22とが相互に組み付けられた筒状体からなるダクト後部27と、右及び左側壁部16,18のそれぞれの後側部分26,26とは別個の部材からなる、右及び左側壁部16,18のそれぞれの前側部分24,24にて構成されたダクト前部28とが、前後方向に組み合わされてなる構造を有しているのである。
【0035】
より詳細には、導風ダクト10のダクト前部28の右側部分を構成する、右側壁部16の前側部分24は、上下方向寸法(長さ)がラジエータ14の高さと略同じ寸法とされた、縦長の略矩形状の樹脂平板からなり、厚さ方向の一方の面が、平坦な案内面29とされている。また、右側壁部16の前側部分24は、前後両端において上下方向に延びる前側端面30及び後側端面32と、上下両端において前後方向に延びる上側端面34及び下側端面36とを有している。それら四つの端面30,32,34,36のうち、後側、上側、及び下側端面32,34,36は、上下方向又は前後方向に真っ直ぐに延びる平面からなっている。そして、前側端面30だけが、フロントバンパ12の内面形状に対応して、前側に向かって凸となる湾曲面とされている。
【0036】
かかる右側壁部16の前側部分24における前側端面30の上下方向中央部位には、矩形状を呈する切欠部38が、前方に向かって開口するように形成されている。この切欠部38は、後述するように、エンジンルーム:E内に配設されたバンパリーンフォースメント40が挿通されるものである。また、右側壁部16の案内面29とは反対側の面における切欠部38よりも上側と下側の部位には、平板状を呈する二つの取付突起42,42が、上下方向に対向して互いに平行に延びる状態で、一体的に突設されている。
【0037】
さらに、右側壁部16の前側部分24における案内面29の後端部には、シール部44が、その一部を右側壁部16の前側部分24の後側端面32から後方に突出させた状態で、一体形成されている。このシール部44は、右側壁部16の前側部分24の後端縁に沿って、その略全長に亘って連続して延びる細長い薄肉平板形状乃至はリップ形状を呈しており、適度な可撓性を有している。
【0038】
なお、このようなシール部44を一体的に有する右側壁部16の前側部分24の形成材料としては、例えば、ポリプロピレンとゴムのブレンド材が用いられる。このブレンド材は、十分な厚さとされることにより、十分な曲げ剛性を発揮する一方、薄肉とされることにより、適度な可撓性を発揮する特性を備えている。従って、このようなブレンド材にて形成された右側壁部16の前側部分24は、導風ダクト10の一部として、走行風をスムーズに導き得ると共に、シール部44が撓み変形下で他部材と接触することによって、かかる他部材との間のシール性が十分に確保され得るようになっている。
【0039】
また、ダクト前部28の左側部分を構成する、左側壁部18の前側部分24は、大きさと構造と材質が右側壁部16の前側部分24と同じで、且つ右側壁部16の前側部分24と左右対称な形状を有する樹脂平板からなっている。即ち、左側壁部18の前側部分24にあっても、厚さ方向一方の面が案内面29とされている。そして、前側端面30の上下方向中央部に、切欠部38が、前方に向かって開口するように形成され、この切欠部38を上下方向において間に挟んだ部位に、二つの取付突起42,42が突設されている。また、前側部分24の案内面29の後端部にも、狭幅で薄肉平板状のシール部44が、後端縁に沿って、その全長に連続して延びるように一体形成されている。
【0040】
一方、ダクト後部27の右側部分を構成する、右側壁部16の後側部分26は、図1乃至図3に示されるように、上下方向に延びる細長い樹脂平板からなっている。この右側壁部16の後側部分26は、その厚さ及び上下方向寸法(長さ)が、右側壁部16の前側部分24の厚さ及び上下方向寸法(長さ)と略同一の寸法とされている。そして、厚さ方向一方の面が、案内面45とされている。また、右側壁部16の後側部分26も、右側壁部16の前側部分24と同じ材質からなっている。
【0041】
かかる右側壁部16の後側部分26における案内面45の上下方向両端部には、平板状の連結用板部46が、直角に延び出すように、それぞれ一体形成されている。この連結用板部46は、右側壁部16の後側部分26と同じ厚さと前後方向寸法(幅)とを有している。即ち、右側壁部16の後側部分26は、全体としてコ字形状を呈する板材からなり、かかるコ字状の二つの脚部が、それぞれ連結用板部46,46とされているのである。そして、そのような各連結用板部46の延出方向の基端部には、厚さ方向に貫通する貫通孔48が、幅方向に並んで、それぞれ二つずつ形成されている(図4参照)。なお、ここでは、連結用板部46の長さが、ディーゼル車用のラジエータ14の幅(車幅方向に対応する左右方向寸法)と、図示しないガソリン車用のラジエータの幅(車幅方向に対応する左右方向寸法)との差の1/2よりも所定寸法長い長さとされている。
【0042】
また、ダクト後部27の左側部分を構成する、左側壁部18の後側部分26は、形状と大きさと構造と材質が、右側壁部16の後側部分26と全て同じ樹脂平板からなっている。即ち、左側壁部18の後側部分26も、厚さ方向一方の面が案内面45とされている。そして、かかる案内面45の上下方向両端部に、連結用板部46,46が、比較的に長い延出長さを有して、直角に延び出すように一体形成されている。また、それら各連結用板部46の基端部には、二つの円形の貫通孔48,48が、前後方向(幅方向)に並んでそれぞれ形成されている。
【0043】
一方、ダクト後部27の上側部分を構成する上側壁部20は、全体として、細長い長手矩形の樹脂平板からなっている。この上側壁部20は、その厚さと前後方向寸法(幅)が、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の厚さ及び前後方向寸法(幅)と略同一の寸法とされている。また、左右方向寸法(長さ)が、ディーゼル車用のラジエータ14の幅よりも所定寸法だけ大きくされている。そして、厚さ方向一方の面が、案内面50とされている。
【0044】
そのような上側壁部20の左右両端部には、第一貫通孔52aと第二貫通孔52bと第三貫通孔52cとが、長さ方向に一定の間隔を隔てて、幅方向に二つずつ並んで、合計六つずつ形成されている。換言すれば、上側壁部20の左右両端部においては、それらの右側又は左側の端縁側部位に、二つの第一貫通孔52a,52aが、前後方向に並んで形成され、また、かかる端縁側部位よりも左右方向(長さ方向)の中央部に偏倚した位置に、二つの第二貫通孔52b,52bが、前後方向に並んで形成され、更に、それら二つの第二貫通孔52b,52b形成部位よりも左右方向(長さ方向)の中央部に更に偏倚した位置に、二つの第三貫通孔52c,52cが、幅方向に並んで形成されている。
【0045】
それら第一、第二、及び第三貫通孔52a,52b,52cは、何れも、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46にそれぞれ二つずつ設けられた貫通孔48と同じ大きさの円形状を有している。また、上側壁部20の前後方向に並んで配置された第一貫通孔52a,52a同士の間隔と第二貫通孔52b,52b同士の間隔と第三貫通孔52c,52c同士の間隔は、何れも、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46に設けられた二つの貫通孔48同士の間隔と同じ大きさとされている。
【0046】
そして、ここでは、上側壁部20の左右方向の第一貫通孔52aと第二貫通孔52bとの間隔(図3にL1 にて示される寸法)が、ディーゼル車用のラジエータ14の幅と図示しないハイブリッド車用ラジエータの幅との差の略1/2程度の大きさとされている。また、上側壁部20の左右方向の第二貫通孔52bと第三貫通孔52cとの間隔(図3にL2 にて示される寸法)が、図示しないハイブリッド車用ラジエータの幅と図示しないガソリン車用ラジエータの幅との差の略1/2程度の大きさとされている。
【0047】
さらに、上側壁部20の左右方向の中間部の後端部には、第二の係合部としての第一係合突起54が、左右方向に間隔を隔てて、四つ設けられている。この第一係合突起54は、上側壁部20の案内面50とは反対側の面の後端縁から後方に向かって一体的に突出する、薄肉小片状の板状可撓片部56と、かかる板状可撓片部56の突出先端に一体形成された、縦断面略直角三角形状を呈する返り状の爪部58とにて構成されている。
【0048】
このような第一係合突起54を一体的に有する上側壁部20は、可撓性を備えたシール部44が一体形成された右及び左側壁部16,18の前側部分24の形成材料と同じポリプロピレンとゴムのブレンド材を用いて形成されている。これにより、第一係合突起54の板状可撓片部56において、十分な可撓性が確保され得るようになっている。
【0049】
一方、ダクト後部27の下側部分を構成する下側壁部22は、形状と大きさと構造と材質が上側壁部20と全て同じ樹脂平板からなっている。即ち、下側壁部22も、厚さ方向一方の面が案内面50とされている。そして、かかる下側壁部22の左右方向の両端部のそれぞれには、第一貫通孔52aと第二貫通孔52bと第三貫通孔52cとが、左右方向に間隔を隔てて、前後方向に二つずつ並んで、合計六つずつ形成されている。それら第一、第二、及び第三貫通孔52a,52b,52cのそれぞれの大きさと形状、及び互いの配置間隔は、上側壁部20に設けられた第一、第二、及び第三貫通孔52a,52b,52cと同一とされている。また、図3には明示されてはいないものの、下側壁部22の左右方向中間部の後端部にも、左右方向に間隔を隔てた四箇所に、第二の係合部としての第一係合突起54が、案内面50とは反対側の面の後端縁から後方に突出するように、それぞれ、一体形成されている。
【0050】
そして、上記の如き構造とされた右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26とが、左右方向において、ラジエータ14の幅よりも所定寸法だけ大きな距離を隔てて、それぞれの案内面45同士を互いに対向させつつ、平行に延びるように配置されている。また、そのような配置状態下で、上側壁部20が、その左右方向の両端部において、右及び左側壁部16,18のそれぞれの上端部に設けられた連結用板部46,46の上面に重ねさわれて、摺動可能に配置されている。一方、下側壁部22も、その左右方向の両端部において、右及び左側壁部16,18のそれぞれの下端部に設けられた連結用板部46,46の下面に重ねさわれて、摺動可能に配置されている。
【0051】
なお、上及び下側壁部20,22の各連結用板部46への重合せ状態では、上側壁部20と下側壁部22のそれぞれの案内面50,50が、上下方向において互いに対向配置される。また、上及び下側壁部20,22の左右両端部にそれぞれ二つずつ設けられた第一貫通孔52a,52aが、各連結用板部46にそれぞれ二つずつ設けられた貫通孔48,48に対して、それぞれ同軸的に位置させられる。更に、上及び下側壁部20,22にそれぞれ四つずつ設けられた第一係合突起54が、後方に突出するように配置される。
【0052】
そして、そのような状態下において、同軸的に位置する上及び下側壁部20,22の第一貫通孔52a,52aと各連結用板部46の貫通孔48,48に対して、連結用樹脂クリップ60が、それぞれ挿通されて、固定されている。これにより、上及び下側壁部20,22が、それぞれの左右方向両端部において、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46に連結されている。
【0053】
かくして、右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26と上側壁部20と下側壁部22とが、四角筒状に連結されている。そして、そのような四角筒状の連結体にて、内周面が、右及び左側壁部16,18の後側部分26,26の平坦な案内面45,45と、上及び下側壁部20,22の平坦な案内面50,50とにて構成された、導風ダクト10のダクト後部27が、形成されているのである。このことから明らかなように、ここでは、上及び下側壁部20,22の第一乃至第三貫通孔52a,52b,52cと、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46の貫通孔48,48と、連結用樹脂クリップ60とにて、連結手段が構成されている。
【0054】
なお、図3及び図4に示されるように、本実施形態では、連結用樹脂クリップ60が、キャップ部62と、キャップ部62に突設された二つの挿通部64,64と、それら各挿通部64の突出先端部に一体形成された係合爪66とからなっている。
【0055】
キャップ部62は、連結用板部46の貫通孔48や、上及び下側壁部20,22の第一乃至第三貫通孔52a,52b,52cよりも大径の円板形状を有している。二つの挿通部64,64は、キャップ部62の一方の面から突出するテーパ状の筒体が径方向に二つに分割された分割体からなっている。また、それら二つの分割体からなる挿通部64,64は、半周に満たない周方向長さを有し、径方向において互いに隙間を開けて配置されている。これにより、二つの挿通部64,64が、径方向において弾性変形乃至は撓み変形可能とされている。係合爪66は、各挿通部64の先端部の外周面に、縦断面略直角三角形状の返り形態を有して、一体形成されている。そして、キャップ部62から係合爪66までの挿通部64の長さが、上側壁部20(下側壁部22)の厚さと連結用板部46の厚さの合計寸法よりも極僅かに長い長さとされている。
【0056】
かくして、ここでは、同軸的に配置された上及び下側壁部20,22の第一貫通孔52a(又は第二貫通孔52b或いは第三貫通孔52c)と、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46の貫通孔48とに対して、連結用樹脂クリップ60の二つの挿通部64,64を挿入し、キャップ部62が、第一貫通孔52aの開口周縁部に当接する位置まで、各挿通部64,64を第一貫通孔52aと貫通孔48に押し込むだけのワンタッチの操作によって、上側壁部20と連結用板部46とを、或いは下側壁部22と連結用板部46とを、簡単に且つ迅速に連結し得るようになっている。
【0057】
また、本実施形態にあっては、特に、導風ダクト10のダクト後部27における右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26とが、それらの対向方向において、互いに相対変位可能とされている。そして、それぞれの案内面45,45間の距離、換言すれば、ダクト後部27の左右方向寸法(車幅方向に対応する寸法)が互いに異なる三つの相対変位位置で、右及び左側壁部16,18の各後側部分26と上及び下側壁部20,22とが筒状に連結され得るようになっている。これにより、ダクト後部27が、互い異なる幅寸法を有するディーゼル車用のラジエータ14とハイブリッド車用のラジエータ(図示せず)とガソリン車用のラジエータ(図示せず)にそれぞれ対応した、互いに異なる3種類の大きさに変更可能とされているのである。
【0058】
すなわち、ダクト後部27の大きさをディーゼル車用のラジエータ14に対応した大きさとする場合には、前記した如く、また図3に実線で示されるように、上側壁部20と下側壁部22の左右両端にそれぞれ二つずつ設けられた第一貫通孔52a,52aを、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の連結用板部46に二つずつ設けられた貫通孔48,48に対して同軸的に位置させる。そして、それら同軸的に位置させられた第一貫通孔52aと貫通孔48に対して連結用樹脂クリップ60をそれぞれ挿通させて、右及び左側壁部16,18の各後側部分26と上及び下側壁部20,22とを四角筒状に連結する。これによって、ダクト後部27の左右方向寸法を、互いに異なる3種類の大きさのうちの最大の大きさとして、ダクト後部27全体を、ディーゼル車用のラジエータ14に対応した大きさと為すのである。
【0059】
なお、このとき、上及び下側壁部20,22の左右両端部にそれぞれ二つずつ設けられた第二貫通孔52b,52bと第三貫通孔52c,52cは、各連結用板部46の先端側部分にて閉塞される(図2参照)。これによって、後述するように、ダクト後部27が、ダクト前部28と共に、フロントバンパ12とディーゼル車用のラジエータ14との間に設置された際に、エンジンルーム:E内に取り入れられて、ダクト前部28とダクト後部27とにて導かれる走行風が、第二及び第三貫通孔52b,52cから外部に抜け出すことが防止されるようになっている。
【0060】
また、ダクト後部27の大きさを、ディーゼル車用のラジエータ14に対応した大きさからハイブリッド車用のラジエータに対応した大きさに変更する場合には、先ず、右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26を、図3に実線で示される位置から図3に二点鎖線で示される位置まで、それらの対向方向の内側に相対変位させて、それら各後側部分26の案内面45,45間の距離を小さくする。
【0061】
そして、図3に二点鎖線で示されるように、上側壁部20と下側壁部22の左右両端にそれぞれ二つずつ設けられた第二貫通孔52b,52bを、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の連結用板部46に二つずつ設けられた貫通孔48,48に対して同軸的に位置させる。その後、それら同軸的に位置させられた第二貫通孔52bと貫通孔48に対して連結用樹脂クリップ60をそれぞれ挿通させて、右及び左側壁部16,18の各後側部分26と上及び下側壁部20,22とを四角筒状に連結する。
【0062】
これによって、ダクト後部27の左右方向寸法を、互いに異なる3種類の大きさのうちの中間の大きさと為す。前記したように、ここでは、上及び下側壁部20,22の左右方向での第一貫通孔52aと第二貫通孔52bとの間の距離:L1 が、ディーゼル車用のラジエータ14の幅とハイブリッド車用のラジエータの幅との差の1/2程度の大きさとされている。それ故、上記のようにして、ダクト後部27の左右方向寸法を中間の大きさとすることにより、ダクト後部27全体を、ハイブリッド車用のラジエータに対応した大きさとすることができる。
【0063】
なお、このとき、上及び下側壁部20,22の左右両端部にそれぞれ二つずつ設けられた第三貫通孔52c,52cは、各連結用板部46の先端側部分にて閉塞される(図2参照)。これによって、後述するように、ダクト後部27が、ダクト前部28と共に、フロントバンパ12とディーゼル車用のラジエータ14との間に設置された際に、第三貫通孔52b,52cからの走行風の抜け出しが防止されるようになっている。また、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の上下両端から側方にはみ出した上及び下側壁部20,22の左右両側の端部は、必要に応じて切除される。
【0064】
一方、ダクト後部27の大きさを、ハイブリッド車用のラジエータに対応した大きさからガソリン車用のラジエータに対応した大きさに変更する場合には、先ず、右側壁部16の後側部分26と左側壁部18の後側部分26を、図3に二点鎖線で示される位置から図3に一点鎖線で示される位置まで、それらの対向方向の内側に更に相対変位させて、各後側部分26の案内面45,45間の距離を小さくする。
【0065】
そして、図3に一点鎖線で示されるように、上側壁部20と下側壁部22の左右両端にそれぞれ二つずつ設けられた第三貫通孔52c,52cを、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の連結用板部46に二つずつ設けられた貫通孔48,48に対して同軸的に位置させる。その後、それら同軸的に位置させられた第三貫通孔52cと貫通孔48に対して連結用樹脂クリップ60をそれぞれ挿通させて、右及び左側壁部16,18の各後側部分26と上及び下側壁部20,22とを四角筒状に連結する。
【0066】
これによって、ダクト後部27の左右方向寸法を、互いに異なる3種類の大きさのうちの最小の大きさと為す。前記したように、ここでは、上及び下側壁部20,22の左右方向での第二貫通孔52bと第三貫通孔52cとの間の距離:L2 が、ハイブリッド車用のラジエータの幅とガソリン車用のラジエータの幅との差の1/2程度の大きさとされている。それ故、上記のようにして、ダクト後部27の左右方向寸法を最小の大きさとすることにより、ダクト後部27全体を、ガソリン車用のラジエータに対応した大きさとすることができる。なお、このとき、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の上下両端から側方にはみ出した上及び下側壁部20,22の左右両側の端部は、必要に応じて切除される。
【0067】
そして、上記の如き構造とされたダクト後部27とダクト前部28とが、例えば、以下のようにして、エンジンルーム:E内に設置されて、前後方向に組み合わされることにより、導風ダクト10が形成されるようになっているのである。
【0068】
すなわち、図1及び図2に示されるように、先ず、ダクト前部28を構成する右側壁部16の前側部分24と左側壁部18の前側部分24とを、エンジンルーム:E内のフロントバンパ12とラジエータ14との間に設置するのであるが、それら右及び左側壁部16,18の各前側部分24のエンジンルーム:E内への設置作業は、好適には、ダクト後部27とラジエータ14をエンジンルーム:E内に設置する前に実施される。
【0069】
より詳細には、ここでは、ラジエータ14が、全体として矩形の枠状樹脂成形品からなるシュラウド68内に収容配置されている。また、このシュラウド68は、エンジンルーム:E内に位置するフレーム等に固定された、シュラウド68よりも一周り大きな矩形枠状のラジエータサポート70内に収容されて、支持されている。それにより、ラジエータ14が、シュラウド68を介して、ラジエータサポート70に支持された状態で、エンジンルーム:E内に固定されている。
【0070】
そのため、ダクト前部28をエンジンルーム:E内に設置する際には、ラジエータ14とシュラウド68とをエンジンルーム:E内のラジエータサポート70に支持させる前であって、且つダクト後部27をエンジンルーム:E内に配置する前に、右及び左側壁部16,18の各前側部分24を、上側又は下側から、ラジエータサポート70とバンパリーンフォースメント40との間に挿入する。これによって、ラジエータサポート70とバンパリーンフォースメント40との間に、右及び左側壁部16,18の各前側部分24を挿入する作業が、ダクト後部27やラジエータ14及びシュラウド68等に邪魔されることなく、極めて容易に且つ迅速に実施される。
【0071】
次に、それら右及び左側壁部16,18の各前側部分24を、フロントバンパ12の後方において、前側端面30とフロントバンパ12の内面との間に僅かな隙間が形成される位置に、各前側部分24の案内面29同士が互いに対向するように配置すると共に、右及び左側壁部16,18の各前側部分24の切欠部38にバンパリーンフォースメント40をそれぞれ挿通させる。その後、右及び左側壁部16,18の各前側部分24にそれぞれ二つずつ突設された取付突起42を、バンパリーンフォースメント40にボルト固定する。
【0072】
かくして、ダクト前部28を構成する右及び左側壁部16,18の各前側部分24を、エンジンルーム:E内におけるフロントバンパ12の後方に、前後方向に延びるように位置させると共に、ダクト後部27とは独立して、容易に取り外し可能に設置する。このような設置状態下では、右及び左側壁部16,18の各前側部分24が、フロントバンパ12に設けられた空気取入口72の右側及び左側の開口周縁部よりも外側に配置される。それによって、空気取入口72からエンジンルーム:E内に取り入れられる走行風が、右及び左側壁部16,18の各前側部分24のそれぞれの案内面29間に、確実に導入されるようになっている。
【0073】
なお、右及び左側壁部16,18の各前側部分24のエンジンルーム:E内への設置状態下では、それら各前側部分24の案内面29間の距離が、ダクト後部27における右及び左側壁部16,18の各後側部分26の案内面45間の距離(ダクト後部27の左右方向寸法)と略同一の大きさとされる。従って、前記したように、ラジエータ14の大きさに応じて、ダクト後部27の左右方向寸法が変更された場合には、それに対応して、ダクト前部28のエンジンルーム:E内への設置状態下での右及び左側壁部16,18の各前側部分24の案内面29間の距離も、適宜に変更されることとなる。
【0074】
次に、ダクト後部27を、エンジンルーム:E内のフロントバンパ12とラジエータ14との間に設置するのであるが、ここでは、エンジンルーム:E外で、ダクト後部27をラジエータ14に取り付ける。これによって、ラジエータ14をエンジンルーム:E内に設置すると同時に、ダクト後部27をフロントバンパ12とラジエータ14との間に設置する。
【0075】
すなわち、ダクト後部27のエンジンルーム:E内への設置に際しては、先ず、図5に示されるように、エンジンルーム:E外で、ラジエータ14の外周縁部の一部たる右側部分の上端部と下端部とに対して、右側固定用部材74,74を、また、ラジエータ14の外周縁部の別の一部たる左側部分の上端部と下端部とに対して、左側固定用部材76,76を、それぞれ嵌着固定する。
【0076】
図1、図2、及び図5に示されるように、右側固定用部材74は、平板部78と、この平板部78の厚さ方向一方の面に一体的に立設された三つの嵌合用突起80,80,80と、平板部78の厚さ方向他方の面に一体的に突設された、第一の係合部としての第二係合突起82,82とを有する樹脂成形品にて、構成されている。
【0077】
平板部78は、全体として、長手矩形状を呈し、その長さが、ラジエータ14の左右方向寸法(幅)の半分に満たない寸法とされている。三つの嵌合用突起80,80,80は、平板部78の長手方向の一方側に位置する辺縁部を除く三つの辺縁部のそれぞれに対して、平板部78の厚さ方向一方側に突出し、且つ各辺縁部の全長に連続して延びるように一体形成されている。また、それら三つの嵌合用突起80,80,80のうち、平板部78の幅方向において互いに対向する二つの嵌合用突起80,80の対向面間距離が、ラジエータ14の前後方向寸法(厚さ)と略同一の寸法とされている。
【0078】
第二係合突起82は、小片状の矩形平板からなり、中央部に、矩形の係合孔84が穿設されている。この係合孔84は、上及び下側壁部20,22に一体形成された前記第一係合突起54の板状可撓片部56と爪部58とが挿通可能な大きさを有している(図1参照)。そして、そのような第二係合突起82の二つのものが、平板部78における嵌合用突起80の形成側の面とは反対側の面の前端部に、長さ方向に所定の間隔を隔てて、一体的に突設されている。なお、平板部78の長さ方向での二つの第二係合突起82,82の配置間隔は、上及び下側壁部20,22の左右方向で互いに隣り合う二つの第一係合突起54,54間の配置間隔と同一寸法とされている。
【0079】
一方、左側固定用部材76は、大きさと構造と材質が右側固定用部材74と同じで、且つ右側固定用部材74と左右対称な形状を有する樹脂成形品からなっている。即ち、左側固定用部材76も、長手矩形状の平板部78と、平板部78の厚さ方向一方の面に一体的に立設された三つの嵌合用突起80,80,80と、平板部78の厚さ方向他方の面の前端部に一体的に突設された第二係合突起82,82とを有する樹脂成形品にて、構成されている。
【0080】
そして、上記の如き構造とされた右側固定用部材74の各平板部78が、ラジエータ14の右側部分の上端面や下端面に重ね合わされるように、三つの嵌合用突起80,80,80をラジエータ14の右側部分の上端部や下端部に嵌合させる。また、左側固定用部材の各平板部78が、ラジエータ14の左側部分の上端面や下端面に重ね合わされるように、三つの嵌合用突起80,80,80をラジエータ14の左側部分の上端部や下端部に嵌合させる。
【0081】
これにより、二つの右側固定用部材74,74を、ラジエータ14の右側部分の上端部と下端部にそれぞれ固定する一方、二つの左側固定用部材76,76を、ラジエータ14の左側部分の上端部と下端部にそれぞれ固定する。また、そのような固定状態下において、右側及び左側固定用部材74,76にそれぞれ設けられた第二係合突起82を、ラジエータ14の右側部分や左側部分の上面と下面からそれぞれ突出位置させる。
【0082】
なお、ここでは、右側及び左側固定用部材74,76が、ディーゼル車用のラジエータ14だけでなく、ハイブリッド車用のラジエータとガソリン車用のラジエータにも使用できるように、平板部78の長さが、ハイブリッド車用のラジエータとガソリン車用のラジエータのそれぞれの幅の半分に満たない寸法とされている。また、平板部78の幅方向において互いに対向する二つの嵌合用突起80,80の対向面間距離も、ハイブリッド車用のラジエータとガソリン車用のラジエータの厚さと略同一の寸法とされている。
【0083】
次に、図1及び図2に示されるように、二つの右側固定用部材74,74と二つの左側固定用部材76,76が嵌着固定されたラジエータ14の前方に、ダクト後部27を配置する。このとき、右及び左側壁部16,18の各連結用板部46と上及び下側壁部20,22のそれぞれの後側端面を、右側及び左側固定用部材74,76の嵌合用突起80の前面に当接させる。また、それと共に、上及び下側壁部20,22にそれぞれ一体形成された各第一係合突起54の板状可撓片部56を、ラジエータ14の上下両端部に嵌着固定された右側及び左側固定用部材74,76にそれぞれ設けられる各第二係合突起82の係合孔84内に挿通して、各板状可撓片部56の爪部58を係合孔84の開口周縁部に係合させる。
【0084】
これにより、ダクト後部27を、ラジエータ14の前面側に、右側及び左側固定用部材74,76を介して固定する。このような固定状態下では、ダクト後部27が、ラジエータ14の前面の外周部を囲繞するように配置されて、ダクト後部27の後側開口部が、ラジエータ14側に向かって開口させられる一方、ラジエータ14の前面の略全域が、ダクト後部27の前側開口部を通じて、前方に向かって露出させられる。
【0085】
このダクト後部27のラジエータ14への固定工程では、係合孔84内への第一係合突起54の挿通時に、爪部58が係合孔84の内周面に摺動して、板状可撓片部56が厚さ方向一方側に撓み変形させられる。そして、係合孔84内への第一係合突起54の挿通完了と同時に、板状可撓片部56の撓み変形状態が解消される。それ故、ここでは、係合孔84内への第一係合突起54の挿通操作と、係合孔84の開口周縁部に対する爪部58の係合操作が、第一係合突起54を係合孔84内に単に押し込むだけのワンタッチの操作で、極めてスムーズに行われる。
【0086】
なお、上記では、エンジンルーム:E内に設置されたラジエータ14に対するダクト後部27の固定状態を示す図1及び図2を参照しつつ、ラジエータ14にダクト後部27を固定する工程を説明したが、前記したように、ここでは、好ましくは、エンジンルーム:E内に設置される前のラジエータ14に対して、ダクト後部27が、エンジンルーム:E外で固定されることとなる。また、ハイブリッド車用のラジエータやガソリン車用のラジエータにダクト後部27を固定する際には、ダクト後部27の全体の大きさを、ハイブリッド車やガソリン車用のラジエータに対応した大きさに変更する一方、右側及び左側固定用部材74,76を、それらハイブリッド車やガソリン車用のラジエータに固定した後、上記と同様な操作が実施されることとなる。
【0087】
そして、ダクト後部27をラジエータ14に固定したら、図1及び図2に示されるように、ダクト後部27が固定されたラジエータ14をシュラウド68内に収容させる。この作業は、好適には、エンジンルーム;E外で行われる。その後、ダクト後部27が固定されたラジエータ14とシュラウド68とを、エンジンルーム:E内に設置されたラジエータサポート70内に後部から挿入して、ラジエータサポート70に固定的に支持させる。
【0088】
これにより、ダクト後部27を、エンジンルーム:E内のラジエータ14とフロントバンパ12との間において、ダクト前部28の後方側に、前後方向に延びように位置させると共に、ダクト前部28とは独立して設置する。
【0089】
かかる設置状態下では、右側壁部16の前側部分24と後側部分26とが、また、左側壁部18の前側部分24と後側部分26とが、前後方向に一直線に延びるように配置されると共に、ダクト後部27の前側開口部が、空気取入口72とを通じて、外部に連通させられる。このとき、右及び左側壁部16,18の各前側部分24に一体形成されたシール部44が、その先端部において、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の案内面45の前端部に接触、位置させられる。そのため、右及び左側壁部の前側部分24と後側部分26との間に僅かな隙間86が形成されていても、そのような隙間86が、シール部44にてシールされる。
【0090】
かくして、エンジンルーム:E内のフロントバンパ12とラジエータ14との間において、車幅方向に互いに対向配置された二つの板状部材からなるダクト前部28と筒状のダクト後部27とを前後方向に組み合わせて、導風ダクト10を形成すると共に、かかる導風ダクト10を、ダクト前部28とダクト後部27とが分離可能な状態で、前後方向に延びるように設置するのである。
【0091】
そして、この導風ダクト10にあっては、エンジンルーム:E内への配置状態下で、前側開口部88(ダクト前部28の前側開口部)が、フロントバンパ12の空気取入口72を通じて、エンジンルーム:E外に前方に向かって開口している一方、後側開口部90(ダクト後部27の後側開口部)が、ラジエータ14の前面に向かって開口している。また、かかる導風ダクト10の内孔が、ダクト前部28の二つの案内面29,29とダクト後部27の四つの案内面45,45,50,50とにて囲まれてなる通風路92とされている。
【0092】
これにより、自動車の走行時に、フロントバンパ12の空気取入口72から取り入れられた走行風が、導風ダクト10の前側開口部88を通じて通風路92内に送り込まれ、更に、かかる通風路92を構成する各案内面29,45,50にて後方にスムーズに導かれて、後側開口部90からラジエータ14の前面に吹き付けられるようになる。なお、ここでは、ダクト後部27が筒体にて構成されていることに加えて、ダクト前部28とダクト後部27の繋ぎ目に存在する隙間86がシール部44にてシールされている。そのため、ダクト前部28やダクト後部27から側方への走行風の抜け出しと、それらの間の隙間86からの走行風の抜け出しが良好に防止される。
【0093】
従って、本実施形態の導風ダクト10にあっては、エンジンルーム:E内への設置状態下で、走行風をラジエータ14の前面にスムーズに且つ確実に導くことができる。そして、その結果、ラジエータ14の冷却効率と自動車の空力性能とを、共に有利に高めることができるのである。
【0094】
そして、かかる導風ダクト10においては、ダクト後部27の幅寸法が、ディーゼル車用のラジエータ14とハイブリッド車用のラジエータとガソリン車用のラジエータのそれぞれの幅に対応した大きさに変更可能となっている。また、ダクト前部28を構成する右及び左側壁部16,18の各前側部分24の案内面29間の距離を変更して、それら各前側部分24が固定されるバンパリーンフォースメント40の固定位置を適宜に変更することにより、ダクト前側部分28の幅寸法も、ディーゼル車用のラジエータ14とハイブリッド車用のラジエータとガソリン車用のラジエータのそれぞれの幅に対応した大きさに変更することができる。
【0095】
それ故、本実施形態の導風ダクト10にあっては、設置されるべき自動車が、ガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車のうちの何れであっても、導風ダクト10を構成する右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22として、それぞれ単一種類のものが用いられる。それによって、ガソリン車用とディーゼル車用とハイブリッド車用のそれぞれ専用の導風ダクト10を製造する必要が解消される。そして、その結果、それら3種類の自動車用の導風ダクト10のうちの何れかのものが過剰に生産されたときに、そのような余剰品が無駄となって、経済的損失が生ずるといった従来の導風ダクトにおいて惹起されていた問題が、効果的に解消され得る。
【0096】
また、本実施形態の導風ダクト10にあっては、ガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車の3種類の自動車にそれぞれ使用されるものを製造する際に、右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22を、それぞれ1種類ずつの成形用金型を用いて製造することができる。それ故、3種類の自動車用の導風ダクト10をそれぞれ製造する際に、右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22を、それぞれ3種類ずつの成形用金型を用いて製造しなければならなかった従来品に比して、製造時の設備コストの削減も、有利に図られ得る。
【0097】
しかも、本実施形態の導風ダクト10は、ダクト後部27が、ラジエータ14に固定された右側及び左側固定用部材74,76に対して直接に固定される。また、それら右側及び左側固定用部材74,76は、それぞれ1種類のものが、互いに大きさが異なる複数種類のラジエータ14の何れに対しても、確実に固定されるようになっている。
【0098】
それ故、かかる導風ダクト10によれば、例えば、ダクト後部27をシュラウド68に固定する従来品とは異なって、たとえ、ダクト後部27の大きさが変化しても、シュラウド68を異なる大きさのものに変更する必要がない。
【0099】
従って、かくの如き本実施形態に係る導風ダクト10にあっては、ラジエータ14の大きさが互いに異なるガソリン車とディーゼル車とハイブリッド車のうちの何れに対しても、十分に低いコストで設置され得るのである。
【0100】
また、かかる導風ダクト10は、ダクト前部28とダクト後部27とを有する分割構造とされているため、ラジエータ14のエンジンルーム:E内への設置前に、ダクト前部28をバンパリーンフォースメント40に固定する一方、エンジンルーム:E外で、ラジエータ14にダクト後部27を取り付けた後、かかるダクト後部27をラジエータ14と共に、エンジンルーム:E内の所定位置に設置することができる。
【0101】
それ故、例えば、フロントバンパ12とラジエータ14との間のスペースが狭く、しかも、かかるスペース内にバンパリーンフォースメント40が存在しているために、導風ダクト10の全体を、フロントバンパ12とラジエータ14との間に、上側又は下側から一度に挿入して、設置することが困難な場合にも、上記のように、ダクト前部28とダクト後部27とを、バンパリーンフォースメント40とラジエータ14とに対して別々に取り付けることで、導風ダクト10の全体を、フロントバンパ12とラジエータ14との間の狭いスペース内に、極めて容易に且つスムーズに設置することができる。
【0102】
さらに、本実施形態の導風ダクト10にあっては、ダクト前部28を構成する右及び左側壁部16,18の各前側部分24の前側端面30が、フロントバンパ12の内面形状に対応した特殊な形状とされているものの、ダクト後部27が、ラジエータ14の大きさに対応した大きさを備えた、極めて単純な四角筒状の全体形状を有している。このため、かかる導風ダクト10が、フロントバンパ12の形状が互いに異なる幾つかの種類の自動車に適用される場合には、ダクト前部28を、それぞれの車種に応じた専用品として準備する必要があるものの、ダクト後部27は、それら複数の車種に共通した共通部品として準備可能である。
【0103】
従って、本実施形態の導風ダクト10によれば、例えば、所定の車種に適用されるダクト前部28とダクト後部27とがそれぞれ余分に製造されたとしても、余ったダクト後部27の他車種への使い回しができる。これによって、様々な車種の自動車に設置する場合に、余剰品による無駄の発生が可及的に抑制されて、余剰品の製造に掛かる無駄なコスト負担や作業負担が有利に省かれ得る。その結果として、導風ダクト10の多品種生産でのコストの削減と作業性の向上とが、共に効果的に図られ得ることとなる。
【0104】
また、本実施形態の導風ダクト10は、ダクト前部28とダクト後部27とがフロントバンパ12とラジエータ14との間に、分割可能な状態で設置されている。その上、ダクト前部28が、それのみに、バンパリーンフォースメント40を挿通する切欠部38が形成される程の十分な前後方向寸法を有している。そのため、例えば、軽衝突の発生時に、フロントバンパ12の変形に伴って導風ダクト10が変形しても、衝突の規模によっては、導風ダクト10の変形部分をダクト前部28だけに止めることができる。この場合には、変形した導風ダクト10を交換する際に、ダクト後部27を何等交換することなく、ダクト前部28だけの交換で済む。しかも、ダクト前部28は、バンパリーンフォースメント40にボルト固定されるだけであるため、容易に取り外しが可能となっている。
【0105】
それ故、このような導風ダクト10によれば、軽衝突の発生後の修理費用と修理作業の作業負担とが、効果的に軽減され得ることとなる。
【0106】
また、かかる導風ダクト10では、ダクト前部28とダクト後部27との間に隙間86が形成されているため、ダクト前部28の変形時の衝撃のダクト後部27への伝達が効果的に防止される。一方、そのような隙間86が、シール部44にてシールされている。これによって、ダクト前部28とダクト後部27との繋ぎ目からの風抜けを効果的に阻止しつつ、軽衝突時における導風ダクト10全体の変形を可及的に防止することが可能となっている。
【0107】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0108】
例えば、前記第一の実施形態では、右側壁部16と左側壁部18とが、それぞれ、前後方向に分割された前側部分24と後側部分26とにて構成されて、導風ダクト10が、ダクト前部28とダクト後部27とが前後方向に組み合わされてなる分割構造を有していた。しかしながら、それら右側壁部16と左側壁部18とを、それぞれ単一部材にて構成して、通風ダクト10を非分割構造としても良い。
【0109】
また、導風ダクト10を分割構造とする場合にあっても、右側壁部16と左側壁部18だけでなく、上側壁部20と下側壁部22のうちの少なくとも何れか一方を、前後方向に分割した前側部分と後側部分とにて構成しても良い。
【0110】
例えば、図6及び図7に示されるように、右側壁部16と左側壁部18に加えて、上側壁部20と下側壁部22も、それぞれ、前後方向に分割した前側部分24と後側部分26とにて構成する。なお、本実施形態、更には後述する別の実施形態に関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、それら幾つかの実施形態を示す図6乃至図9に、前記第一の実施形態を示す図1乃至図5と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0111】
本実施形態では、右及び左側壁部16,18の各後側部分26が、前記第一の実施形態の導風ダクト10における右及び左側壁部16,18の各後側部分26と同様な構造とされている。また、右及び左側壁部16,18の各前側部分24における案内面29の上下両端部にも、連結用板部46が、それぞれ一体形成されている。この連結用板部46は、二つの貫通孔48,48を有し、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の上下両端部に設けられる連結用板部46と同様な構造とされている。そして、それら右及び左側壁部16,18の案内面29の後端部と、各連結用板部46の互いの対向面の後端部とには、シール部44が、それぞれ、一体形成されている。それらのシール部44は、このシール部44は、前記第一の実施形態の導風ダクト10における右及び左側壁部16,18の前側部分24に一体形成されるものと同様な構造とされている。
【0112】
また、上及び下側壁部20,22の各後側部分26は、前記第一の実施形態の導風ダクト10の上及び下側壁部20,22と同一の構造を有している。上及び下側壁部20,22の各前側部分24は、第一係合突起54が省略されている以外、それらの後側部分26と同様な構造とされている。
【0113】
そして、本実施形態では、右及び左側壁部16,18の各後側部分26と、上及び下側壁部20,22の各後側部分26とが、前記第一の実施形態の導風ダクト10における右及び左側壁部16,18の各後側部分26と上及び下側壁部20,22との連結構造と同様な構造により四角筒状に連結されて、筒状のダクト後部27が形成されている。また、右及び左側壁部16,18の各前側部分24と、上及び下側壁部20,22の各前側部分24も、それらの各後側部分26の連結構造と同様な構造により四角筒状に連結されて、筒状のダクト前部28が形成されている。なお、それらダクト前部28とダクト後部27は、何れも、前記第一の実施形態の導風ダクト10におけるダクト後部27と同様な構造により、大きさ(左右方向寸法)が、ディーゼル車用とハイブリッド車用とガソリン車用のラジエータ14の幅に対応した3種類の大きさに変更可能とされている。
【0114】
そして、上及び下側壁部20,22の各後側部分26に設けられた複数の第一係合突起54が、ラジエータ14の右側及び左側の上下両端部に嵌着固定された右側及び左側固定用部材74,76の複数の第二係合突起82に係合されることにより、ダクト後部27がラジエータ14に固定されるようになっている。また、前側及び左側壁部16,18の各前側部分24に設けられた切欠部38にバンパリーンフォースメント40が挿通された状態で、ダクト前部28が、バンパリーンフォースメント40にボルト固定されるようになっている。これによって、筒状のダクト前部28と筒状のダクト後部27とが組み合わされて、筒状の導風ダクト10が構成されていると共に、かかる導風ダクト10が、フロントバンパ12とラジエータ14との間に、前後方向に延びるように設置されている。
【0115】
このような本実施形態の導風ダクト10にあっても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が有効に享受され得る。そして、それに加えて、ダクト前部28とダクト後部27の両方が筒形状を呈しているため、空気取入口72から取り入れられた走行風を、ラジエータ14に対して、よりスムーズに且つ確実に導くことができる。
【0116】
前記第一及び第二の実施形態では、右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22が、互いに別個の単一部材にて、それぞれ構成されていた。しかしながら、例えば、図8に示されるように、右側壁部16と上側壁部20とを接合部のない単一部材にて構成する一方、左側壁部18と下側壁部22とを接合部のない単一部材にて構成しても良い。また、図示されてはいないものの、右側壁部16と下側壁部22とを接合部のない単一部材にて構成する一方、左側壁部18と上側壁部20とを接合部のない単一部材にて構成することも可能である。
【0117】
図9に示されるように、右側壁部16を単一部材にて構成する一方、左側、上側、及び下側壁部18,20,22を接合部のない単一部材にて構成しても良い。或いは図示されていないものの、左側壁部18を単一部材にて構成する一方、右側、上側、及び下側壁部16,18,22を接合部のない単一部材にて構成することも可能である。
【0118】
連結用板部46を、右側壁部16や左側壁部18に代えて、上側壁部20や下側壁部22の右側端部と左側端部のうちの少なくとも何れか一方に、上下方向に延びるように一体形成すると共に、右側壁部16や左側壁部18の右側端部や左側端部に、第一、第二、及び第三貫通孔52a,52b,52cを形成しても良い。この場合には、導風ダクト10の高さが可変とされる。そして、上側壁部20と下側壁部22とにて、一対の第一側壁部が構成される一方、右側壁部16と左側壁部18とにて、一対の第二側壁部が構成されることとなる。
【0119】
連結用板部46に形成される貫通孔52a,52b,52cの数は、導風ダクト10の大きさの変更数に応じて、適宜に変えられるものである。また、右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22を筒状に連結する際に、連結用板部46に形成される貫通孔52a,52b,52cと同軸的に位置させられる貫通孔48の数も、適宜に変更可能である。
【0120】
右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22を筒状に連結する連結手段の構造も、例示のものに、何等限定されるものではない。連結されるべき側壁部を互いに異なる複数の位置で連結可能なものであれば、従来より公知の連結構造が、何れも採用可能である。
【0121】
ラジエータに嵌着固定される固定用部材は、ラジエータの上端部と下端部とに、それぞれ一つずつ固定されるものであっても良い。更に、固定用部材に形成される第一の係合部と、導風ダクトに形成される第二の係合部は、互いに係合することにより、固定用部材を介して、導風ダクトをラジエータに固定可能な構造を有するものであれば、形成個数や構造が、何等限定されるものではない。
【0122】
切欠部38を、右及び左側壁部16,18の各前側部分24の後側端面32に、後方に向かって開口するように形成することもできる。このような構成によれば、フロントバンパ12を取り外した状態において、右及び左側壁部16,18の各前側部分24を前側からバンパリーンフォースメント40に固定することができる。それによって、ダクト後部27をラジエータ14に取り付けたままでのダクト前部28の交換が容易となる。
【0123】
また、右及び左側壁部16,18の各前側部分24の後側端面32に対して、切欠部38を後方に向かって開口するように形成すると共に、右及び左側壁部16,18の各後側部分26の前側端面にも、切欠部38を前方に向かって開口するように形成しても良い。即ち、切欠部38を、ダクト前部28とダクト後部27とに跨って形成することも可能なのである。
【0124】
右側、左側、上側、及び下側壁部16,18,20,22の形成材料も、例示のものに、何等限定されるものではなく、樹脂材料以外の、例えば、アルミニウム等の軽量の金属材料等も使用可能である。そして、それら各側壁部16,18,20,22の形成材料は、同種の材料であっても、或いは異種の材料であっても良い。
【0125】
前記実施形態では、ダクト前部28とダクト後部27とが、互いに非連結とされていたが、それらダクト前部28とダクト後部27とを、例えば、ボルト止めやクリップ止め等により互いに連結しても良い。更に、ダクト前部28とダクト後部27のエンジンルーム:Eへの取付構造も、例示のものに、何等限定されるものではいのは言うまでもないところである。
【0126】
なお、軽衝突の発生後等において、ダクト前部28のみの交換を可能とするには、ダクト前部28とダクト後部27のうちの、少なくともダクト前部28を自動車に対して取り外し可能に設置すると共に、ダクト前部28とダクト後部27とを非連結とするか又は取り外し可能に連結する必要がある。
【0127】
加えて、前記実施形態では、本発明を、走行風をラジエータに導く自動車用導風ダクトに適用した例が示されていたが、本発明は、ラジエータ以外の冷却系部品に走行風を導く自動車用導風ダクトの何れに対しても有利に適用され得ることは勿論である。
【0128】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0129】
10 送風ダクト 12 フロントバンパ
14 ラジエータ 16 右側壁部
18 左側壁部 20 上側壁部
22 下側壁部 24 前側部分
26 後側部分 27 ダクト後部
28 ダクト前部 29,45,50 案内面
46 連結用板部 48 貫通孔
52a 第一貫通孔 52b 第二貫通孔
52c 第三貫通孔 54 第一係合突起
60 連結用樹脂クリップ 74 右側固定用部材
76 左側固定用部材 82 第二係合突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前面に設置されたフロントバンパと、該フロントバンパよりも車両後方側に設置された冷却系部品との間に、車両前後方向に延びるように配置されて、自動車前面から取り入れられた走行風を該冷却系部品に導く筒状の自動車用導風ダクトであって、
車両上下方向と車幅方向のうちの何れか一方の方向において互いに対向配置される、互いの対向方向に相対変位可能な一対の第一側壁部と、
車両上下方向と車幅方向のうちの何れか他方の方向において互いに対向配置される一対の第二側壁部と、
該一対の第一側壁部を、対向面間距離が異なる複数の変位位置において、該一対の第二側壁部に連結可能な連結手段と、
を有し、前記一対の第一側壁部と前記一対の第二側壁部とが、前記連結手段により筒状に連結されて、形成されていることを特徴とする自動車用導風ダクト。
【請求項2】
前記第一側壁部と前記第二側壁部の少なくとも何れか一方が、前記フロントバンパよりも車両後方側に配置される前側部分と、該前側部分とは別個の部材にて構成された、前記冷却系部品よりも車両前方側に配置される後側部分とを、車両前後方向に組み合わせることにより形成されている請求項1に記載の自動車用導風ダクト。
【請求項3】
自動車の前面に設置されたフロントバンパと、該フロントバンパよりも車両後方側に設置された冷却系部品との間に、自動車前面から取り入れられた走行風を該冷却系部品に導く筒状の自動車用導風ダクトを配設するための構造であって、
前記冷却系部品の外周縁部に、第一の係合部が複数設けられた固定用部材を嵌着固定する一方、前記自動車用導風ダクトの筒壁部の軸方向一端部に、該第一の係合部に係合する第二の係合部を複数形成し、該複数の第二の係合部を該複数の第一の係合部にそれぞれ係合させて、該自動車用導風ダクトを該固定用部材に固定することにより、該自動車用導風ダクトを、前記冷却系部品に固定した状態で、該冷却系部品と前記フロントバンパとの間に配設するようにしたことを特徴とする自動車用導風ダクトの配設構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10411(P2013−10411A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143830(P2011−143830)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】