説明

自動車用導風板及びシール構造

【課題】自動車用部品との間に形成される隙間に対する安定したシール性が、容易に且つ低コストに実現可能な導風板を提供する。
【解決手段】樹脂製の導風板本体12の端縁部18,20に対して、可撓性を有する薄肉のシール片26,28を一体的に突設すると共に、かかるシール片26,28の基端部34,44に、該シール片26,28の該基端部34,44を除く他の部位よりも薄肉の薄肉部38,48と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方を形成した。そして、それにより、該シール片26,28の曲げ剛性を、該基端部34,44において局部的に小さくして、該基端部34,44を、該他の部位よりも容易に撓み変形可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用導風板及びシール構造に係り、特に、自動車の前部に配置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板の改良された構造と、そのような導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に形成される隙間をシールするための新規な構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車において、互いに異なる別個の自動車用部品同士を近接して組み付ける際には、それらの自動車用部品同士が、自動車の走行中の入力振動等により接触して、異音を発生したり、或いは各自動車用部品が損傷したり、変形したりするのを防止するために、互いに近接する自動車用部品同士の間に、所定の間隙、所謂設計隙が形成される。
【0003】
例えば、自動車の前部には、走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板が、ラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、ラジエータの前方に位置するバンパとの間に、車幅方向に対向配置された状態で、又はそれに加えて、上下方向にも対向配置された状態で、前後方向に延びるように設置されている。そして、そのような導風板の周囲に位置するシュラウドやラジエータ、ラジエータサポート、バンパ、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いはエアコンホース等の各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等の様々な自動車用部品と導風板との間には、上記の如き設計隙としての隙間が形成されている。
【0004】
しかしながら、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に隙間が形成されていると、導風板の案内面にて導かれた風が、かかる隙間を通じて外部に逃げてしまい、その分だけ、ラジエータの冷却効率が低下してしまう。また、そのような隙間を通じて、エンジンの熱気がラジエータ側に送り込まれることがあり、そうした場合にも、ラジエータの冷却効率の低下が惹起される恐れがある。更には、導風板と自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けによって、空力性能が低下するといった問題も生ずる。
【0005】
そこで、従来では、スポンジ等の各種のクッション材が、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間の隙間内に、かかる隙間を埋めるように取り付けられ、それによって、導風板と自動車用部品との間がシールされるようになっていた。ところが、そのようなクッション材は、通常、隙間を隔てて互いに対向位置する導風板と自動車用部品のそれぞれの対向部位に対して、両面テープ等により接着、固定されている。そのため、例えば、隙間が比較的に複雑な形状とされている場合等においては、導風板と自動車用部品の各対向部位に対するクッション材の接着力にバラツキが生じて、安定したシール性を確保することが困難となる可能性があった。しかも、自動車の走行時の入力振動等により、導風板と自動車用部品が、それぞれ、互いに離間する方向に相対変位したときに、クッション材が、導風板と自動車用部品のうちの何れか一方から剥がれてしまう恐れさえもあった。加えて、クッション材の接着工程が面倒であるといった問題も存していた。
【0006】
また、従来においては、導風板の本体の外周部に、ゴム製やエラストマ製のシール部材を二色成形により一体形成し、導風板の自動車への設置状態下で、導風板に一体形成されたシール部材を、導風板の周囲に位置する自動車用部品に接触、配置することによって、そのような自動車用部品と導風板との間の隙間からの風抜けを防止する対策も採用されている。しかしながら、そこで用いられる導風板は、一般に、導風板本体が樹脂材料にて形成されている。そのため、ゴム製やエラストマ製のシール部材が一体形成された導風板は、ゴム材料又はエラストマ材料と樹脂材料の互いに異なる2種類の材料を用いて形成されることとなる。それ故、かかる導風板にあっては、材料費が嵩んでコスト高となるといった欠点を有していた。その上、使用済みとなった後に再利用するに際して、導風板本体とシール部材を分離しなければならず、リサイクルが面倒であるといった問題をも内在していたのである。
【0007】
かかる状況下、例えば、特開平8−295122号公報(特許文献1)には、車両用空調装置に適用される樹脂製の通風ダクトとして、弾性変形乃至は撓み変形可能な薄肉のシール片をダクト本体に一体成形してなる構造を有するものが、開示されている。この通風ダクトでは、ダクト本体に設けられたシール片を撓み変形させた状態で、通風ダクトに連結(接続)される相手部品に接触させることにより、互いに連結される通風ダクトと相手部品との間の隙間のシールが実現されるようになっている。
【0008】
このような通風ダクトにおけるシール部の形成構造を自動車用導風板に採用することが、考えられる。即ち、樹脂製の導風板本体に、可撓性を有する薄肉のシール片を一体成形し、かかるシール片を撓み変形させた状態で、導風板の周囲に位置する自動車用部品に接触させることにより、それら導風板と自動車用部品との間の隙間をシールするように為すのである。そうすれば、導風板と自動車用部品との間の隙間を埋めるためのクッション材を導風板に接着する場合や、導風板本体にゴム製やエラストマ製のシール部材を二色成形により一体形成する場合等において生ずる、前述した数々の問題を一挙に解消することが可能となる。
【0009】
ところが、そのような従来のシール片付き通風ダクトの構造を、そのまま自動車用導風板に採用した場合には、以下の如き問題が新たに生ずることが、本発明者の研究によって明らかとなった。
【0010】
すなわち、従来のシール片付き通風ダクトでは、シール片が、一定の厚さを有して、ダクト本体の端縁部から一体的に延び出している。そこで、本発明者は、導風板本体の端縁部に、一定の厚さを有するシール片が一体的に突設された自動車用導風板を作製し、この自動車用導風板の性能について、様々な角度から検証を行った。その際、シール片の撓み変形量と撓み変形したシール片において生ずる反力の大きさとの関係を調べたところ、シール片の撓み変形量を徐々に大きくしていくと、シール片の撓み変形量がある程度の量となるまでの間は、シール片において生ずる反力の大きさが、略比例的に漸増していくものの、シール片の撓み変形量が所定の量を超えると、シール片において生ずる反力の大きさが急上昇して、加速度的に増大することが判明した。
【0011】
このようなシール片の反力の急激な上昇は、シール片が一体成形されるダクト本体と撓み変形したシール片が接触する相手部品とが互いに連結されて、それらダクト本体と相手部品とが相対変位しない従来の通風ダクトでは、シール片の撓み変形量が変化することがないため、何等、問題とならない。しかしながら、自動車への装着状態下で、撓み変形したシール片が接触する自動車部品との間で相対変位が生ずる導風板においては、上記の如きシール片の反力の急激な上昇によって、深刻な問題が惹起される可能性がある。
【0012】
つまり、導風板の自動車への装着状態下で、撓み変形したシール片と自動車部品との間で比較的に大きな相対変位が繰り返し惹起されると、自動車部品に対して、それに接触するシール片から大きな反力が及ぼされ、それによって、自動車部品のシール片との接触部分や、シール片の自動車部品との接触部分が、摩耗したり、或いは削れたりする恐れがある。そして、そうなった場合には、シール片と自動車部品との間のシール性が低下する事態等が生ずる可能性がある。
【0013】
なお、シール片の撓み変形量の増大による反力の急激な上昇を抑えるには、シール片の全体の厚さを、従来のものよりも更に薄くして、シール片全体の剛性を一段と低下させることが考えられる。ところが、シール片が、樹脂製の導風板本体の端縁部に対して、例えば、射出成形等により一体成形されているため、シール片を更に薄肉化した場合には、シール片を形成するキャビティ内での溶融樹脂の流動性が著しく低下して、それに起因した様々な成形不良が惹起される恐れがある。また、シール片の薄肉化によって耐熱性が低下し、そのために、高温となるエンジンルーム内での導風板の使用環境下で、シール片が熱変形してしまう可能性がある。加えて、導風板本体よりも薄肉化されて、剛性が低くされたシール片全体の剛性を更に低くすると、撓み変形したシール片の反力不足が生じて、十分なシール性が発揮され難くなる恐れさえもあるのである。
【0014】
【特許文献1】特開平8−295122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、周囲に配置される自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けを防止可能なシール性が、容易に且つ低コストに、しかもより安定的に実現可能な自動車用導風板の新規な構造を提供することにある。また、本発明にあっては、容易に且つ低コストに製造が可能な導風板が用いられて、かかる導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けが、より確実に防止され、以て、そのような自動車用部品と導風板との間の安定したシール性が極めて有利に確保され得るように改良されたシール構造を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0017】
<1> 自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、自動車の前部において、該前部に配置された自動車部品と非連結の状態で、自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉で、可撓性を備えたシール片とを有すると共に、該シール片の基端部に、該シール片の該基端部を除く他の部位よりも薄肉の薄肉部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方が設けられていることにより、該シール片の曲げ剛性が、該基端部において局部的に小さくされて、該基端部が、該他の部位よりも容易に撓み変形可能とされていることを特徴とする自動車用導風板。
【0018】
<2> 前記薄肉部が、前記シール片の基端部に対して部分的に形成されている上記態様<1>に記載の自動車用導風板。
【0019】
<3> 前記導風板本体と前記シール片とを形成する樹脂材料として、ポリプロピレンとゴムとのブレンド材が用いられている上記態様<1>又は<2>に記載の自動車用導風板。なお、ここで言うゴムには、熱可塑性エラストマが含まれる。
【0020】
<4> 前記導風板本体と前記シール片とを形成する樹脂材料の曲げ弾性率が、250〜1200MPaの範囲内の値とされている上記態様<1>乃至<3>のうちの何れか一つに記載の自動車用導風板。
【0021】
<5> 前記導風板本体の厚さが1.2〜2.5mmの範囲内の値とされ、且つ前記シール片の厚さが0.3〜0.8mmの範囲内の値とされている上記態様<1>乃至<4>のうちの何れか一つに記載の自動車用導風板。
【0022】
<6> 前記薄肉部の厚さが0.1〜0.5mmとされている上記態様<5>に記載の自動車用導風板。
【0023】
<7> 自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、自動車の前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く導風板であって、前記シュラウドと前記バンパとの間において、それらシュラウド及びバンパと非連結の状態で、自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉で、可撓性を備えたシール片とを有すると共に、該シール片の基端部に、該シール片の該基端部を除く他の部位よりも薄肉の薄肉部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方が設けられていることにより、該シール片の曲げ剛性が、該基端部において局部的に小さくされて、該基端部が、該他の部位よりも容易に撓み変形可能とされていることを特徴とする自動車用導風板。
【0024】
<8> 自動車の前部に前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、前記導風板として、上記態様<1>乃至<6>のうちの何れか一つに記載の導風板を用いて、該導風板の前記導風板本体を、前記自動車部品と非連結で自動車の前後方向に延びるように、自動車の前部に設置すると共に、前記シール片を、少なくとも前記基端部において撓み変形させた状態で、該自動車部品に接触させて配置することにより、該導風板本体と該自動車部品との間に形成される前記隙間を該シール片にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。
【0025】
<9> 前記自動車部品と前記導風板本体とが互いの接近方向に相対変位したときに、前記シール片の更なる撓み変形が許容される状態において、該シール片が、該自動車部品に対して接触配置されるようになっている上記態様<8>に記載のシール構造。
【0026】
<10> 自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、自動車の前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く導風板と、該シュラウド及び該バンパとの間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、前記導風板として、前記シュラウドと前記バンパとの間において、それらシュラウド及びバンパと非連結の状態で、自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉で、可撓性を備えたシール片とを有すると共に、該シール片の基端部に、該シール片の該基端部を除く他の部位よりも薄肉の薄肉部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方が設けられていることにより、該シール片の曲げ剛性が、該基端部において局部的に小さくされて、該基端部が、該他の部位よりも容易に撓み変形可能とされているものを用いて、前記導風板の前記導風板本体を、該シュラウド及び該バンパと非連結の状態で、自動車の前後方向に延びるように設置すると共に、前記シール片を、少なくとも前記基端部において撓み変形させた状態で、該シール片を該シュラウドと該バンパとに接触させて配置することにより、該シュラウド及び該バンパと該導風板との間に形成される前記隙間を該シール片にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従う自動車用導風板にあっては、自動車の走行時に生ずる気流を、ラジエータに対してよりスムーズに導くことができる。また、周囲に配置される自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けを防止可能なシール性を、容易に且つ低コストに実現できる。
【0028】
しかも、本発明に係る自動車用導風板では、シール片の撓み変形量の増大により、シール片において生ずる反力が急激に大きくなるようなことが有利に回避乃至は抑制され得る。従って、自動車部品のシール片との接触部分や、シール片の自動車部品との接触部分での摩耗や削れの発生が効果的に防止され、以て、自動車用導風板と、それの周囲に配置される自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けを防止するシール性が、より一層安定的に確保され得る。
【0029】
そして、本発明に従うシール構造によれば、本発明に従う自動車用導風板と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従う構造を有する導風板の一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1のA−A断面における部分拡大説明図である。
【図3】図1に示された導風板をシュラウドとバンパとの間に設置して、それら導風板とシュラウド及びバンパとの間にそれぞれ形成される隙間をシールした状態を示す縦断面説明図である。
【図4】図2のB−B断面における部分説明図である。
【図5】本発明に従う構造を有する導風板と従来構造を有する導風板とにおいて、シール片に接触して、導風板本体に接近移動することにより、シール片を圧縮して、撓み変形させる圧縮治具の導風板本体への接近移動量と、かかる圧縮治具の導風板本体への接近によって撓み変形するシール片で生ずる反力との関係を示すグラフである。
【図6】図1示された導風板を、シュラウドとバンパとの間に、図3に示される形態とは異なる形態で設置した状態を示す、図3に対応する図である。
【図7】本発明に従う構造を有する導風板の更に別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図8】本発明に従う構造を有する導風板の更に別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図9】本発明に従う構造を有する導風板の他の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図10】本発明に従う構造を有する導風板の更に他の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図11】本発明に従う構造を有する導風板の別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図12】本発明に従う構造を有する導風板の更に別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図13】本発明に従う構造を有する導風板の他の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図14】本発明に従う構造を有する導風板の更に他の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図15】本発明に従う構造を有する導風板の別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、図1には、本発明に従う自動車用導風板の一実施形態として、自動車のバンパカバーとシュラウドとの間に設置される導風板が、その正面形態において示されており、また、図2には、かかる導風板が、その断面形態において示されている。それら図1及び図2から明らかなように、本実施形態の導風板10は、樹脂製の導風板本体12を有している。なお、以下からは、導風板10の自動車への設置状態(図3及び図4参照)に基づいて、図1の上下方向を、導風板10の上下方向と言い、また、図1の左右方向を、導風板10の前後方向と言うこととする。
【0033】
より具体的には、導風板本体12は、全体として、略長手矩形の平板形状を呈している。そして、一方の板面(図2中の上側の面)が、平坦な案内面13とされている。この案内面13は、導風板10が自動車の前部に対して前後方向に延びるように立設された状態下において、自動車内に取り込まれた気流をバンパカバー側からシュラウド側に導くようになっている。
【0034】
また、導風板本体12は、上下方向に真っ直ぐに延びる第一長辺部14a及び第二長辺部14bと、それら第一及び第二長辺部14a,14bの上端部同士を連結するように延びる第一短辺部16aと、第一及び第二長辺部14a,14bの下端部同士を連結するように延びる第二短辺部16bとを有している。そして、第一長辺部14aを含む導風板本体12の端縁部が、後述するシュラウドの縦壁部の前端面の形状に対応した形状、つまり、上下方向に真っ直ぐに延びる形状を呈する後側端縁部18とされている。また、第二長辺部14bを含む導風板本体12の端縁部が、後述するバンパカバーの内面形状に対応した形状、つまり、上側の一部が湾曲しつつ上下方向に延び、且つそれ以外の部分が上下方向に真っ直ぐに延びる形状を呈する前側端縁部20とされている。この前側端縁部20の長さ方向の略中央部には、矩形の切欠部22が設けられている。また、導風板本体12の厚さ方向一方の面における切欠部22の周辺部には、平板状を呈する二つの取付突起24,24が、一体的に突設されている。
【0035】
そして、導風板本体12の後側端縁部18には、かかる後側端縁部18から後方に突出する突出片からなる後側シール片26が、一体的に設けられている。また、前側端縁部20の切欠部22を間に挟んだ上下両側の部分には、それら上下両側部分から前方に突出する突出片からなる前側シール片28が、それぞれ一体的に設けられている。そのような後側シール片26と前側シール片28,28は、何れも、導風板本体12よりも薄い厚さと一定の狭い幅とを備えている。そして、後側端縁部18(第一長辺部14a)や前側端縁部20(第二長辺部14b)に沿って、その全長に亘って連続して延びる細長い薄肉平板形状を呈している。
【0036】
すなわち、導風板10は、導風板本体12と後側及び前側シール部26,28,28とが同一の樹脂材料を用いて一体成形された一体成形品(例えば、射出成形品)にて構成されている。そして、ここでは、かかる導風板10を形成する樹脂材料として、ポリプロピレンとゴムのブレンド材が、用いられている。このポリプロピレンとゴムのブレンド材は、公知の如く、十分な厚さとされることにより、十分な曲げ剛性を発揮する一方、薄肉とされることにより、適度な可撓性を発揮する特性を備えている。
【0037】
従って、ポリプロピレンとゴム材料のブレンド材からなる、本実施形態の導風板10にあっては、一体成形品でありながら、導風板本体12が厚肉で広幅の平板形状を有していることによって、導風板本体12の曲げ剛性が大きくされている一方、後側及び前側シール部26,28が薄肉で狭幅の平板形状を呈していることによって、それら後側及び前側シール部26,28の全体に対して、適度な可撓性が付与されている。
【0038】
なお、導風板10の形成材料には、ポリプロピレンとゴム材料のブレンド材以外の各種の公知の樹脂材料が適宜に用いられ得る。例えば、ポリプロピレンとポリエチレン(低密度ポリエチレン)のブレンド材(ポリマーアロイ)や、ポリエチレン(低密度ポリエチレン)とゴムのブレンド材、或いはポリプロピレン単独の材料やポリエチレン単独の材料等が、導風板10の形成材料として、適宜に使用可能である。ポリプロピレンやポリエチレンとブレンドされるゴムの種類は、特に限定されるものではなく、従来からポリプロピレンやポリエチレンに対するブレンドゴムとして用いられる公知のものが、何れも使用できる。また、そのようなゴムには、公知の熱可塑性エラストマが含まれる。
【0039】
また、そのような各種の材料の中でも、曲げ弾性率が250〜1200MPa程度の範囲内の値とされたものが、導風板10の形成材料として好適に用いられる。何故なら、導風板10の形成材料の曲げ弾性率が250MPa未満である場合には、導風板本体12を厚肉化しても十分な曲げ剛性が得られない恐れがあるからであり、また、かかる形成材料の曲げ弾性率が1200MPaを超える場合には、薄肉の後側及び前側シール部26,28における可撓性が不十分となる可能性があるからである。
【0040】
導風板本体12と後側及び前側シール片26,28のそれぞれの厚さも、何等限定されるものではないものの、導風板本体12の厚さは、好ましくは1.2〜2.5mm程度とされる。何故なら、導風板本体12の厚さが1.2mmを下回る場合には、導風板本体12の曲げ剛性が不十分となり、そのために、バンパカバーとシュラウドとの間に設置されたときに、バンパカバー側からシュラウド側に気流をスムーズに導くことが困難となる恐れがあるからである。また、導風板本体12の厚さが2.5mmを上回る場合には、導風板本体12ひいては導風板10の全体重量が増大するといった問題が生ずる可能性があるからである。
【0041】
後側及び前側シール片26,28の厚さは、望ましくは0.3〜0.8mm程度とされる。何故なら、後側及び前側シール片26,28のそれぞれの厚さが0.3mmを下回る場合には、各シール片26,28の強度や剛性が極端に小さくなって、使用耐久性に問題が生じたり、或いは各シール片26,28が撓み変形したときの反力不足が生じ、それによって、後述するように、撓み変形した各シール片26,28がシュラウドやバンパカバーに接触して、それらシュラウド及びバンパカバーと導風板本体12と間の隙間を塞いでシールするシール性が十分に発揮され難くなったりする恐れがあるからである。また、後側及び前側シール片26,28のそれぞれの厚さが0.8mmを上回る場合には、各シール片26,28において十分な可撓性が得られなくなる可能性があるからである。
【0042】
さらに、後側及び前側シール片26,28のそれぞれの幅(図2にW1 ,W2 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないものの、好ましくは5〜50mmの範囲内の値とされる。何故なら、後側及び前側シール片26,28の幅が5mm以上とされることにより、かかる幅が、導風板本体10とシュラウドとの間に形成される隙間(後述する後側隙間64)や、導風板本体10とバンパカバーとの間に形成される隙間(後述する前側隙間66)の一般的な幅よりも大きくされて、後側及び前側シール片26,28の曲げ変形下で、それらの先端側部分が、シュラウドやバンパカバーに確実に接触するようになるからである。また、後側及び前側シール片26,28の幅が50mm以下とされることにより、後側及び前側シール片26,28が必要以上に大きな幅となることが防止されて、それら後側及び前側シール片26,28の形成による導風板10の重量の増大が可及的に抑制されるようになるからである。
【0043】
ところで、図2から明らかなように、後側シール片26は、導風板本体12の後側端縁部18側に位置する後側端面30の幅方向(図2中、上下方向)の中央より案内面13側(図2中、上側)に偏倚した部分から、後方に向かって、案内面13と平行に延び出している。また、かかる後側シール片26の二つの板面(厚さ方向両側の面)のうち、導風板本体12の案内面13側に位置して、案内面13と連続面を形成する一方の板面が、平坦な後側ガイド面32とされている。
【0044】
そして、後側シール片26の基端部34(後側シール片26の幅方向両端部のうちの導風板本体12側の部分)には、後側ガイド面32側とは反対側の面において開口する凹部36が、複数(ここでは、4個)設けられている。それら複数の凹部36は、何れも、狭幅の長手矩形状を呈し、後側シール片26の長さ方向に等間隔を隔てて、直列に並んで配置されている。そして、そのような凹部36の底部部位が、後側シール片26の基端部34を除く部分よりも薄い厚さの薄肉部38とされている。より正確には、薄肉部38は、後側シール片26のうちの凹部36の形成部位以外の部分、つまり、基端部34における凹部36の形成部位以外の部分と後側シール片26の先端側部分と幅方向中間部分よりも薄い厚さとされている。
【0045】
一方、前側シール片28は、導風板本体12の前側端縁部20側に位置する前側端面40の幅方向(図2中、上下方向)の中央より案内面13側(図2中、上側)に偏倚した部分から、前方に向かって、案内面13と平行に延び出している。また、かかる前側シール片28の二つの板面(厚さ方向両側の面)のうち、導風板本体12の案内面13側に位置して、案内面13と連続面を形成する一方の板面が、平坦な前側ガイド面42とされている。
【0046】
そして、前側シール片28の基端部44(後側シール片26の幅方向両端部のうちの導風板本体12側の部分)には、前側ガイド面42側とは反対側の面において開口する凹部46が、複数(ここでは、2個)設けられている。それら複数の凹部46は、何れも、後側シール片26の基端部34に設けられる凹部36と同様に、狭幅の長手矩形状を呈し、前側シール片28の長さ方向に所定間隔を隔てて、直列に並んで配置されている。そして、そのような凹部46の底部部位が、前側シール片28の基端部44を除く部分よりも薄い厚さの薄肉部48とされている。より正確には、薄肉部48は、前側シール片28のうちの凹部46の形成部位以外の部分、つまり、基端部44における凹部46の形成部位以外の部分と前側シール片28の先端側部分と幅方向中間部分よりも薄い厚さとされている。
【0047】
かくして、本実施形態の導風板10においては、後側シール片26と前側シール片28の各基端部34,44に対して、複数の薄肉部38,48が、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて位置するように、それぞれ設けられている。つまり、各基端部34,44に対して、薄肉部38,48が部分的に形成されている。これにより、複数の薄肉部38,48が設けられた各基端部34,44の曲げ剛性が、薄肉部38,48よりも厚い一定の厚さを有する、後側シール片26と前側シール片28の各基端部34,44を除く部分の曲げ剛性に比して、小さくされている。即ち、後側シール片26と前側シール片28のそれぞれの曲げ剛性が、各基端部34,44において局部的に小さくされている。
【0048】
このため、本実施形態の導風板10においては、後側シール片26の後側ガイド面32の先端側部分に対して、斜め前方(図2に矢印アで示される方向)に向かって押圧力が加えられたときに、複数の薄肉部38に応力が集中して、基端部34における複数の薄肉部38の形成部位が、後側シール部26の先端側部分や幅方向中間部分よりも容易に撓み変形するようになっている。そして、それにより、図2に二点鎖線で示されるように、後側シール片26の全体が、基端部34を屈曲部として、後側ガイド面32と案内面13とのなす角の大きさが小さくなるように、曲げ変形させられるようになっているのである。
【0049】
また、前側シール片28の前側ガイド面42の先端側部分に対して、斜め後方(図2に矢印イで示される方向)に向かって押圧力が加えられたときには、複数の薄肉部48に応力が集中して、基端部44における複数の薄肉部48の形成部位が、前側シール部28の先端側部分や幅方向中間部分よりも容易に撓み変形するようになっている。それによって、図2に二点鎖線で示されるように、前側シール片28の全体が、基端部44を屈曲部として、前側ガイド面42と案内面13とのなす角の大きさが小さくなるように、曲げ変形させられるようになっているのである。
【0050】
そして、後側及び前側シール片26,28のそれぞれの先端側部分に対して、図2中の矢印ア及びイで示される前方や後方に加えられる押圧力が徐々に大きくされていったときには、主に、基端部34,44の撓み変形量が漸増していき、それに伴って、後側及び前側シール片26,28の全体の曲げ変形量が、増大させられるようになっている。また、そのような後側及び前側シール片26,28全体の曲げ変形時には、各シール片26,28の薄肉部38,48よりも厚肉で、基端部34,44よりも剛性の高い先端側部分と幅方向中間部分も撓み変形させられるが、それらの撓み変形量は、基端部34,44の撓み変形量よりも十分に小さいものとされる。
【0051】
それ故、本実施形態の導風板10では、後側及び前側シール片26,28のそれぞれの基端部34,44を除く部分の厚さが、従来の導風板の、全体が薄肉部38,48よりも厚い一定の厚さとされたシール片と同程度の厚さとされていても、曲げ変形させられた後側及び前側シール片26,28において生ずる反力が、一定厚さのシール片を曲げ変形乃至は撓み変形させたときに、かかるシール片において生ずる反力よりも、効果的に小さくされている。そして、基端部34,44の撓み変形量の増大に伴う後側及び前側シール片26,28全体の曲げ変形量が、ある程度の大きさを超えたときに、後側及び前側シール片26,28において生ずる反力が急激に大きくなることも、有利に解消されるようになっている。
【0052】
また、後側及び前側シール片26,28全体の曲げ変形時には、基端部34,44よりも厚肉で、剛性の高い、後側及び前側シール片26,28の先端側部分と幅方向中間部分も、比較的に小さな量ではあるものの、基端部34,44と共に撓み変形させられており、それによって、撓み変形した後側及び前側シール片26,28の先端側部分と幅方向中間部分とにおいて反力が生ずるようになっている。そのため、後側及び前側シール片26,28の先端側部分と幅方向中間部分の厚さが、基端部34,44の薄肉部38,48と同じ程度の薄肉とされる場合とは異なって、曲げ変形乃至は撓み変形した後側及び前側シール片26,28において生ずる反力が、極端に小さくなってしまうようなことも、有利に回避されるようになっているのである。
【0053】
なお、後側及び前側シール片26,28の薄肉部38,48の厚さは、特に限定されるものではなく、各基端部34,44の厚さ等に応じて適宜に決定されるところであるが、好ましくは0.1〜0.5mm程度の範囲内の値とされる。何故なら、薄肉部38,48の厚さが0.1mm未満とされていると、余りに薄いために、薄肉部38,48が設けられる各シール片26,28の基端部の強度や剛性が極端に小さくなって、使用耐久性に問題が生じたり、或いは各シール片26,28が撓み変形したときの反力不足が生じて、シール性に問題が生じたりする恐れがあるからである。また、薄肉部38,48の厚さが0.5mmを上回る場合には、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44への薄肉部38,48の形成によるメリットが、十分に得られなくなる可能性があるからである。
【0054】
そして、かくの如き構造を有する本実施形態の導風板10にあっては、図3及び図4に示されるように、例えば、自動車用部品としてのバンパカバー50と、それの後方に位置するラジエータ52を外側から取り囲んで配置された、別の自動車用部品たるシュラウド54との間において、自動車の幅方向(車幅方向)に間隔を隔てて、案内面13同士を互いに対向させた状態で、それぞれ1個ずつ配されて、自動車の前後方向に延びるように設置される。これにより、自動車の走行時に生ずる気流が、二つの導風板10,10の各案内面13にて、ラジエータ52に向かって導かれるようになっているのである。
【0055】
バンパカバー50は、その縦断面形状が、前方に向かって凸となる湾曲形状を呈している。そして、かかるバンパカバー50は、自動車の前部に対して、車幅方向に延びるように設置されたバンパリーンホースメント56に固定されている。また、バンパカバー50には、車幅方向に沿って延びる延出方向の中間部に、空気取入口58が設けられている。
【0056】
シュラウド54は、全体として、ラジエータ52よりも一周り大きな矩形の筒形状を呈している。そして、自動車の前後方向に延びるように配置され、ラジエータ52に対して外嵌された状態で固定されている。換言すれば、シュラウド54は、上下方向に真っ直ぐに延びる二つの縦壁部60a,60bと、車幅方向に真っ直ぐに延びる二つの横壁部62a,62bとを一体的に有し、それら二つの縦壁部60a,60bと二つの横壁部62a,62bとが、ラジエータ52の上下左右の四つの側面のそれぞれから側方に所定距離を隔てた位置において、ラジエータ52の四つの側面をそれぞれ外側から覆うように配置されているのである。
【0057】
そして、そのようなバンパカバー50とシュラウド54との間に設置される二つの導風板10,10は、シュラウド54の二つの縦壁部60a,60bのそれぞれの前方における各縦壁部60a,60bよりも車幅方向外側に位置して、後側シール片26を車幅方向内側に延び出させた状態で配置されている。また、それら二つの導風板10,10の各導風板本体12は、後側端面30,30を、各縦壁部60a,60bの前端面に対して、前後方向に所定距離を隔てて位置させた状態で、各縦壁部60a,60bに沿って上下方向に延出させるように配置されている。これによって、後側端面30,30と各縦壁部60a,60bの前端面との間に、設計隙としての後側隙間64,64が、上下方向に延びるように、それぞれ形成されている。つまり、各導風板本体12が、シュラウド54に対して非連結とされている(何等固定されていない)のである。
【0058】
また、二つの導風板10,10は、バンパカバー50の後方において、各導風板本体12の前側端縁部20をバンパカバー50の内面に沿って上下方向に延出させるように配置されている。更に、そのような配置下において、各導風板本体12の前側端面40とバンパカバー50の内面とが、前後方向に所定距離を隔てて対向配置されている。これによって、それら前側端面40とバンパカバー50の内面との間にも、設計隙としての前側隙間66が、上下方向に延びるように、それぞれ形成されている。つまり、各導風板本体12が、バンパカバー50に対しても非連結とされている(何等固定されていない)のである。
【0059】
さらに、二つの導風板10,10は、前側端縁部20の切欠部22内に挿通されたバンパリーンホースメント56に対して、前記取付突起24においてボルト止めされること等により、固定されて、自動車の前部に取り付けられている。なお、各導風板10を、ラジエータサポート等のバンパリーンホースメント56とは異なる部材に取り付けることも、勿論可能である。
【0060】
そして、そのようにして自動車の前部に取り付けられた二つの導風板10,10の各後側シール片26,26が、主に、基端部34における複数の薄肉部38の形成部位において撓み変形させられて、後側ガイド面32と案内面13とのなす角の大きさが90°を超え且つ180°未満の値となるように曲げ変形させられた状態で、後側ガイド面32とは反対側の面の先端側部分において、シュラウド54の各縦壁部60a,60bの前端面に接触している。また、各前側シール片28も、主に、基端部44における複数の薄肉部48の形成部位において撓み変形させられて、前側ガイド面42と案内面13とのなす角の大きさが90°を超え且つ180°未満の値となるように曲げ変形させられた状態で、前側ガイド面42とは反対側の面の先端側部分において、バンパカバー50の内面に接触している。
【0061】
これによって、二つの導風板10,10の各導風板本体12,12の後側端縁部18,18とシュラウド54の二つの縦壁部60a,60bとの間にそれぞれ形成される後側隙間64,64が、後側シール片26,26にて確実に閉塞されるようになっている。また、各導風板本体12,12の前側端縁部20,20とバンパカバー50との間にそれぞれ形成される前側隙間66,66が、前側シール片28,28にて確実に閉塞されるようになっている。
【0062】
さらに、曲げ変形した後側及び前側シール片26,28の各先端側部分のシュラウド54やバンパカバー50への接触状態下で、特に、後側シール片26の後側ガイド面32と案内面13とのなす角の大きさが90°を超え且つ180°未満の値とされているため、導風板本体12の案内面13に沿って導かれた気流を、後側シール片26の後側ガイド面32にて、ラジエータ52に向かってスムーズに且つ効率的に流動させ得るようになっている。
【0063】
また、後側ガイド面32と案内面13とは、それらの間に段差等が何等存在することのない連続面とされている。また、基端部34の後側ガイド面32部分に凹部36が形成されている。これらによっても、導風板本体12の案内面13に沿って導かれた気流が、ラジエータ52に向かって更にスムーズに導かれ得るるようになっている。
【0064】
そして、導風板10の後側シール片26と前側シール片28は、各基端部34,44の撓み変形による曲げ変形下で、シュラウド54とバンパカバー50に接触した状態において、各基端部34,44の更なる撓み変形が可能とされている。
【0065】
それ故、導風板10がバンパカバー50とシュラウド54との間に設置された状態下で、例えば、自動車の走行中の入力振動等により、自動車の前後方向において、導風板本体12とシュラウド54とが相対変位したり、或いは導風板本体12とバンパカバー50とが相対変位した際に、それらの相対変位に追従して、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44の撓み変形量が増減し、各シール片26,28の曲げ変形量が変化するようになっている。それによって、各シール片26,28のシュラウド54やバンパカバー50との接触状態が可及的に維持され、その結果、自動車の走行中においても、後側及び前側隙間64,66の後側及び前側シール片26,28による閉塞状態が、有利に確保されるようになっている。
【0066】
従って、本実施形態の導風板10がバンパカバー50とシュラウド54との間に設置されることにより、自動車の走行時に生ずる気流がラジエータ52に向かって良好に導かれると共に、前側隙間66や後側隙間64を通じての風抜けの発生が、より確実に且つ安定的に防止され得る。そして、それによって、シュラウド54との間やバンパカバー50との間の安定したシール性が、効果的に発揮され得るのである。
【0067】
そして、本実施形態の導風板10では、曲げ変形した後側及び前側シール片26,28において生ずる反力が有利に小さくされている。そのため、それら後側及び前側シール片26,28による後側及び前側隙間56,58の閉塞状態下で、後側シール片26や前側シール片28からシュラウド54の各縦壁部60a,60bやバンパカバー50に及ぼされる、各シール片26,28の曲げ変形に対する反力が可及的に小さくされている。また、後側及び前側シール片26,28の曲げ変形量が、ある程度の大きさを超えたときに、それら各シール片26、28からシュラウド54やバンパカバー50に及ぼされる反力が急激に上昇することも防止されている。
【0068】
それ故、かかる導風板10においては、自動車への振動入力等により、シュラウド54及びバンパカバー50と導風板本体12との間で相対変位が繰り返し惹起されたときにも、シュラウド54の後側シール片26との接触部分や、バンパカバー50の前側シール片28との接触部分、更には、後側及び前側シール片26,28のシュラウド54やバンパカバー50との接触部分が、摩耗したり、或いは削れたりするようなことが効果的に解消される。そして、その結果として、後側シール片26とシュラウド54との間のシール性と、前側シール片28とバンパカバー50との間のシール性とが、更に一層、安定的に確保され得る。
【0069】
従って、本実施形態の導風板10によれば、ラジエータ52の冷却効率の向上と空力性能の向上とが、極めて有利に達成され得ることとなるのである。
【0070】
また、本実施形態の導風板10では、後側及び前側シール片26,28の基端部34,44のみに薄肉部38,48が設けられて、後側及び前側シール片26,28の基端部34,44を除く先端側部分と幅方向中間部分とが、従来の導風板の薄肉のシール片と同程度の厚さとされている。しかも、各シール部26,28の基端部34,44に対して、薄肉部38,48が部分的に形成されていることにより、隣り合う薄肉部38,48同士の間には、先端側部分と幅方向中間部分と同一厚さを有する部分が存在している。
【0071】
それ故、かかる導風板10においては、後側及び前側シール片26,28の全体が薄肉部38,48と同様な厚さとされる場合とは異なって、導風板10全体が、例えば射出成形にて成形される際に、後側及び前側シール片26,28を形成するキャビティ内での溶融樹脂の流動性が極端に低下することが未然に阻止され、そによって、溶融樹脂の流動性の低下に起因した成形不良が生ずることが有利に回避され得る。また、後側及び前側シール片26,28の全体が必要以上に薄肉化されることで、耐熱性が低下して、高温環境下での使用耐久性が損なわれたり、或いは剛性の低下に起因した撓み変形時の反力不足により、シール性が低下したりすることも、効果的に防止され得る。
【0072】
さらに、本実施形態の導風板10では、導風板本体12が、シュラウド48の各縦壁部60a,60bよりも車幅方向外側に配置されている。これによって、例えば、衝突事故の発生時等に、導風板本体12が車両後方側に大きく変位したときにも、導風板本体12がシュラウド48やラジエータ52に接触することが有利に回避され、以て、それらシュラウド48やラジエータ52が損傷するようなことが、効果的に防止され得る。
【0073】
そして、かかる導風板10においては、導風板本体12と後側及び前側シール片26,28とが同一の樹脂材料からなっている。このため、各シール片(26,28)と導風板本体(12)とが互いに異なる種類の材料からなる従来品とは異なって、形成材料が1種類で済み、それによって、材料コストの低減化が有利に図られている。また、使用済みとなったときに、導風板本体12と各シール片26,28とを分離することなく、そのままリサイクルに供することが出来る。
【0074】
また、本実施形態の導風板10は、導風板本体12と後側及び前側シール片26,28とを有する一体成形品にて構成されている。そのため、導風板本体(12)の外周部に対して、シール片(26,28)の代わりに、クッション材が接着されてなる従来品とは異なって、導風板本体12の成形工程の他に、後接着工程を行う必要がなく、それによって、製作性の向上が有利に図られ得る。
【0075】
それ故、本実施形態の導風板10にあっては、後側及び前側シール片26,28にて安定したシール性を発揮する構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、極めて容易に且つ低コストに実現され得るのである。
【0076】
また、本実施形態の導風板10においては、シュラウド54とバンパカバー50とに対して非連結とされている。このため、軽衝突等による衝撃荷重が入力されて、シュラウド54やバンパカバー50と導風板10とが互いの接近方向に相対変位した際に、シュラウド54やバンパカバー50と撓み変形下で接触する後側及び前側シール片26,28の更なる撓み変形によって、衝撃荷重が有利に緩和乃至は吸収され得ることとなる。
【0077】
ここにおいて、本発明に従う構造を有する導風板が、前記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確かめるために、本発明者が実施した試験について、以下に詳述する。
【0078】
すなわち、先ず、平板状の導風板本体の後側端縁部と前側端縁部とに対して、薄肉の後側シール片と前側シール片とが一体的に突設されると共に、後側シール片と前側シール片の各基端部に複数の凹部がそれぞれ設けられて、それら各凹部の底部部位にて薄肉部が形成されてなる、図1及び図2に示される如き構造を有する導風板を成形して、準備した。そして、この導風板を発明例とした。
【0079】
なお、発明例の導風板は、1000MPaの曲げ弾性率を有するポリプロピレンとゴムのブレンド材を用いて、射出成形を実施することにより成形した。また、それら各導風板の導風板本体の厚さを1.5mm、後側及び前側シール片のそれぞれの厚さを0.5mm、後側及び前側シール片のそれぞれの幅を25mmとした。更に、後側及び前側シール片の基端部に設けられた各薄肉部の厚さを0.1mmとした。
【0080】
一方、比較のために、平板状の導風板本体の後側端縁部と前側端縁部とに対して、薄肉の後側シール片と前側シール片とが一体的に突設されているものの、それら後側シール片と前側シール片の各基端部には、複数の凹部が設けられておらず、各シール片の全体が一定の厚さとされた、従来構造を有する導風板を成形して、準備した。かくして得られた導風板を比較例とした。なお、この比較例の導風板は、発明例の導風板の形成材料と同一の材料を用いて、射出成形を行うことにより成形した。また、比較例の導風板の導風板本体の厚さや、後側及び前側シール片の厚さ及び幅は、発明例の導風板のそれらと同一の寸法とした。
【0081】
そして、上記のようにして得られた発明例と比較例の2種類の導風板を用い、それら各導風板に設けられた後側シール片の先端側部分を押圧して、後側シール片を撓み変形させたときに、後側シール片において生ずる反力の大きさを、それぞれ、以下のようにして調べた。
【0082】
すなわち、市販のオートグラフ[型番:AG−50kNG、(株)島津製作所製]を用いて、先ず、発明例の導風板の導風板本体を、オートグラフに位置固定にセットする一方、後側シール片の先端側部分に対して、オートグラフの圧縮治具を無負荷で接触させた。その後、圧縮治具を1mm/秒の速度で導風板本体側に移動させて、後側シール片に負荷を掛けることにより、後側シール片の基端部を撓み変形させつつ、後側シール片の曲げ変形量を漸増させた。そして、そのときに後側シール片から圧縮治具に及ぼされる荷重の大きさを、逐次、測定した。それによって、圧縮治具の導風板本体への接近移動量(後側シール片の撓み変形量に相当する)と後側シール片にて生ずる反力の大きさとの関係を調べた。
【0083】
引き続き、比較例の導風板を用いて、上記と同様な試験を実施した。それにより、比較例の導風板について、圧縮治具の導風板本体への接近移動量と後側シール片にて生ずる反力の大きさとの関係を調べた。発明例と比較例の導風板を用いた試験の結果を、図5に併せて示した。
【0084】
図5の結果から明らかなように、発明例の導風板と比較例の導風板とを比較した場合、圧縮治具の導風板本体への接近移動量の大きさに拘わらず、それが同一の値であるとき、発明例の各導風板の後側シール片において生ずる反力の大きさが、比較例の導風板の後側シール片において生ずる反力の大きさよりも小さな値となっている。しかも、比較例の導風板では、圧縮治具の接近移動量が所定の値を超えたときから、後側シール片において生ずる反力の大きさが急上昇している。これに対して、発明例の各導風板においては、そのような後側シール片の反力の急激な上昇は、何等認められない。
【0085】
これらの結果は、本発明に従う構造を有する導風板が自動車に設置されて、シール片が、その基端部を撓み変形させつつ、先端部において自動車部品と接触して、かかる自動車部品との間に形成される隙間をシールしたときに、シール片から自動車部品に及ぼされる、シール片の曲げ変形に対する反力を、従来構造を有する導風板よりも効果的に小さく為し得ることを、如実に示している。
【0086】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0087】
例えば、図6に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、各基端部34,44を厚さ方向に貫通する貫通孔68をそれぞれ設けても良い。図示されてはいないものの、それらの貫通孔68は、ここでは、前記第一の実施形態に係る導風板10における後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に設けられた凹部36,46と同様に、狭幅の長手矩形状を呈し、各シール片26,28の長さ方向に、一定の、或いは一定でない間隔を互いに隔てて配置されている。なお、図6に示される本実施形態、及び後述する図7乃至図15に示される各実施形態に関しては、図1及び図2に示される前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1及び図2と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0088】
これによって、各シール片26,28の基端部34,44を形成する樹脂量が、各シール片26,28の基端部34,44以外の部分たる先端側部分や幅方向中間部分を形成する樹脂量よりも少なくされ、以て、各シール片26,28の曲げ剛性が、基端部34,44において局部的に小さくされて、各シール片26,28の基端部34,44が、各シール片26,28の先端側部分や幅方向中間部分よりも容易に撓み変形可能とされている。このような構造によっても、前記第一の実施形態と同様な作用・効果が有効に享受され得る。
【0089】
また、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、狭幅で長手矩形状の凹部36,46と、それと同様な形状の貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ形成し、それにより、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44の剛性を低くして、それら各基端部34,44を、それ以外の部分よりも容易に撓み変形可能と為すこともできる。
【0090】
さらに、後側シール片26の基端部34や前側シール片28の基端部44に凹部36,46を設ける場合には、それら各基端部34,44の後側ガイド面32とは反対側の面や、前側ガイド面42とは反対側の面に設けても、何等差し支えない。
【0091】
また、図7に示されるように、導風板10を自動車の前部に取り付けた状態下で、前側シール片26を、主に、基端部44における複数の薄肉部48(又は貫通孔68)の形成部位において撓み変形させることにより、前側ガイド面42と案内面13とのなす角の大きさが180°を超え且つ270°未満の値となるように曲げ変形させて、かかる前側シール片28の前側ガイド面42の先端側部分を、バンパカバー50の内面に接触、配置させても良い。この場合には、前側シール片部28の薄肉部48を撓み変形させて、その先端側部分をバンパカバー50の内面に接触させた状態で、前側シール片28の案内面13を、バンパカバー50の空気取入口58の開口周縁部のうちの車幅方向に対向する部分に対して、前後方向において対応位置させることができる。これによって、空気取入口58から取り入られる空気を、より効率的にラジエータ52側に導くことが可能となる。
【0092】
なお、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に設けられる凹部36,46と貫通孔68の形成個数や形状は、上記に例示したものに、何等限定されるものではなく、以下のものであっても良い。
【0093】
例えば、図8に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、それら各シール片26,28の全長に満たない長さを有する、狭幅で長手矩形状の凹部36,46を、それぞれ、1個ずつ設けて、それら各凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に、それぞれ1個ずつ設けることも可能である。
【0094】
図9に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、狭幅で長円形状を呈する複数の凹部36,46を、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、狭幅で長円形状を呈する凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0095】
図10に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、楕円形状を呈する複数の凹部36,46を、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、楕円形状を呈する凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0096】
図11に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、円形の凹部36,46の複数を、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、円形の凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0097】
なお、円形の凹部36,46や円形の貫通孔68を、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に、それぞれ複数個ずつ設ける場合には、例えば、図12に示されるように、各基端部34,44の長さ方向両端縁部に、半円状の凹部36,46や半円状の貫通孔68を、長さ方向に両端側に向かって開口するように設けても良い。また、図示されてはいないものの、凹部36,46や貫通孔68が円形でなくとも、それらの形状に拘わらず、各基端部34,44の長さ方向両端縁部に、凹部36,46や貫通孔68を、長さ方向に両端側に向かって開口するように設けることもできる。
【0098】
図13に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、三角形状を呈する凹部36,46の複数を、底辺部分が、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20と対応位置するように、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に対して、凹部36,46の配置形態と同様な配置形態で設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、三角形状の凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0099】
図14に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、三角形状を呈する凹部36,46の複数を、一つの頂点部分が、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20と対応位置するように、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に対して、凹部36,46の配置形態と同様な配置形態で設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、三角形状の凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0100】
図15に示されるように、後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44に対して、菱形の凹部36,46の複数を、一つの頂点部分が、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20と対応位置するように、それぞれ、各シール片26,28の長さ方向に所定間隔を隔てて形成し、それらの凹部36,46の底部部位にて、薄肉部38,48を形成しても良い。また、図示されてはいないものの、そのような凹部36,46に代えて、それと同様な形状を呈する貫通孔68を、各基端部34,44に対して、凹部36,46の配置形態と同様な配置形態で設けることも可能である。更に、各基端部34,44に対して、三角形状の凹部36,46と貫通孔68とを、それぞれ少なくとも一つずつ設けても良い。
【0101】
凹部36,46と貫通孔68の形状としては、上記に例示されたもの以外の形状、例えば、三角形状、長手矩形状、及び菱形以外の多角形形状や不定形状も、適宜に採用可能である。また、各基端部34,44に凹部36,46や貫通孔68を複数個設ける場合には、それら複数の凹部36,46や貫通孔68の少なくとも一つが、それ以外のものと異なる形状とされていても、何等差し支えない。
【0102】
さらに、凹部36,46と貫通孔68の形成個数も、凹部36,46と貫通孔68のそれぞれの大きさや後側及び前側シール片26,28の各基端部34,44の長さ等に応じて、適宜に決定されるところである。
【0103】
また、図示されてはいないものの、各シール片26,28の基端部34,44に対して、その全長に連続して延びる凹溝を形成し、かかる凹溝の底部部位にて、薄肉部を構成することも可能である。
【0104】
さらに、導風板本体12に対するシール片26,28の形成位置も、例示のものに、何等限定されるものではない。シール片26,28は、導風板本体12の端縁部に一体形成されておれば良い。従って、例えば、導風板本体12の後側及び前側端縁部18,20に加えて、或いはそれに代えて、導風板本体12の上側端縁部や下側端縁部にシール片を一体成形したり、或いは導風板本体12の切欠部22の周縁部にシール片を一体形成しても良い。切欠部22の周縁部にシール片を設けたときには、切欠部22に嵌め込まれるバンパリーンホースメント56と導風板本体12との間をシールすることができる。そうした場合には、導風板本体12とバンパリーンホースメント56とが相対移動したときに、シール片の先端部にて、例えば、バンパリーンホースメント56の表面に形成された防錆用の被膜等を剥離させてしまうようなことが有利に回避され得る。
【0105】
また、前側及び後側隙間64,66のシール構造は、必ずしも、導風板本体12の端縁部に一体形成された後側及び前側シール片26,28のみによって実現されるものではない。即ち、導風板本体12の端縁部の一部分に対して、クッション材等からなるシール片材を接着し、このシール片材にて、前側及び後側隙間64,66の一部をシールすることも可能である。
【0106】
例えば、ラジエータ52の下側に位置するシュラウド54の横壁部62bと導風板本体12の後側端縁部18との間に、エアコンホース等のように高温となる自動車部品等が存在する場合には、かかる後側端縁部18の下端部に、耐熱性を有するクッション材からなるシール片材を取り付けて、このシール片材をエアコンホース等の自動車用部品に接触、配置することにより、導風板本体12の後側端縁部18とエアコンホース等の自動車用部品との間に形成される隙間をシールしても良い。また、導風板本体12の外周部の周囲に、隙間を隔てて位置する自動車用部品の外面が複雑な形状を有する場合にも、かかる自動車用部品に対する導風板本体12の対向部位に、クッション材等の変形自由度の高いシール片材を取り付けて、このシール片材を自動車用部品の外面に接触、配置することにより、かかる自動車用部品と導風板本体12との間に形成される隙間をシールしても良い。
【0107】
導風板本体12との間で、シールされるべき隙間を形成する自動車用部品は、上記に例示されたシュラウドやバンパカバー、エアコンホース等に何等限定されるものではなく、導風板10の自動車への設置状態下で、導風板本体12の周囲に位置して、導風板本体12との間に隙間を形成する全ての自動車用部品(例えば、ラジエータ、ラジエータサポート、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いは各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等)が、その対象となる。
【0108】
また、前記実施形態では、シュラウド54と導風板本体12との間に形成される後側隙間64と、バンパカバー50と導風板本体12との間に形成される前側隙間66との両方が、後側及び前側シール片26,28にてシールされるようになっていた。しかしながら、後側及び前側シール片26,28のうちの何れかを省略して、後側隙間64と前側隙間66のうちの何れか一方のみをシールするように構成しても良い。
【0109】
導風板本体12の全体形状は、それが設置されるべき自動車前部の設置空間の形状等に応じて、適宜に変更され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0110】
シール片は、導風板本体の端縁部に一体成形により突設されて、基端部に、薄肉部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方が設けられているものであれば、その個数や形状等が、特に限定されるものではない。例えば、シール片が、湾曲板形状を有していても良い。
【0111】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0112】
10 導風板 12 導風板本体
13 案内面 18 後側端縁部
20 前側端縁部 26 後側シール片
28 前側シール片 34,44 基端部
36,46 凹部 38,48 薄肉部
50 バンパカバー 54 シュラウド
64 後側隙間 66 前側隙間
68 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、
自動車の前部において、該前部に配置された自動車部品と非連結の状態で、自動車の前後方向に延びるように設置される、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の端縁部に対して一体成形により突設された、該導風板本体よりも薄肉で、可撓性を備えたシール片とを有すると共に、
該シール片の基端部に、該シール片の該基端部を除く他の部位よりも薄肉の薄肉部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方が設けられていることにより、該シール片の曲げ剛性が、該基端部において局部的に小さくされて、該基端部が、該他の部位よりも容易に撓み変形可能とされていることを特徴とする自動車用導風板。
【請求項2】
前記薄肉部が、前記シール片の基端部に対して部分的に形成されている請求項1に記載の自動車用導風板。
【請求項3】
自動車の前部に前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、
前記導風板として、請求項1又は請求項2に記載の導風板を用いて、該導風板の前記導風板本体を、前記自動車部品と非連結で自動車の前後方向に延びるように、自動車の前部に設置すると共に、前記シール片を、少なくとも前記基端部において撓み変形させた状態で、該自動車部品に接触させて配置することにより、該導風板本体と該自動車部品との間に形成される前記隙間を該シール片にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−158266(P2012−158266A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19902(P2011−19902)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】