説明

自動車用手動入力装置

【課題】ダイヤル自体を複数の位置に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える構成とし、操作性の向上が可能な、自動車用手動入力装置を提供する。
【解決手段】移動保持機構によって移動させて、所定位置で保持する他、回動操作可能なダイヤルと、ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段とを備える。
位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤル自体を所定の位置に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える構成とし、構成の単純化と共に、省スペースが可能で、操作性の向上が可能な、自動車用手動入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される種々の電装機器類は、ステアリングホイール近傍のインストルメントパネルや、コンソール近傍に設けた操作手段によって、操作モードの切換え表示を行ったり、操作指令を出力して所望の操作を行ってきた。
これらの操作は、運転操作に先立ち、または合間になされるものであるから、できるだけ、手数の少なく操作が単純であることが望ましい。
【0003】
このような操作手段としては、たとえば特許文献1に示すような、3連ダイヤル式ヒータコントロールがある。
この3連ダイヤル式ヒータコントロールでは、連続して操作することができ、また、レバーによりコントロールしやすいダイヤルを3個使用している。各ダイヤルには、温度、モード(風の吹き出し口の切換え)、ブロア(吹出し風の強さの切換え)をコントロールする機能が与えられている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−132025号公報
【0005】
また、特許文献2では、温度、モード(風の吹き出し口の切換え)、ブロア(吹出し風の強さの切換え)を、3つのプッシュボタンで切換え、1つのダイヤル操作でコントロールするヒータコントロールが記載されている。
【0006】
【特許文献2】特開2005−81906号公報
【0007】
さらに、特許文献3では、ディスプレイと組合わせて種々の機能をコントロールする車載用手動入力装置を開示している。この装置では、ダイヤル全体を左右に移動してモードを切換え、ダイヤルを回して、コントロールしている。
【0008】
【特許文献3】特開2002−149324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1では、ダイヤルが3つあるため、ダイヤル一つのみの構成のものに比較して、ダイヤルを選択する機能が必要なため、運転中での視認性、操作性に劣る。その上、限られた車両スペースに適度な大きさのダイヤルを配置しようとすると、どうしても、操作しにくい位置に一部のダイヤルが配置されることとなる。
一方、特許文献2では、ダイヤルを1つとしたことで、操作性が改善されてはいるが、逆に機能の切換えにプッシュボタンを押さねばならず、プッシュボタンを押すことと、ダイヤルを回すことと2系統の操作が必要となる。これでは、非常に煩雑であり、視認性、操作性、安全運転上も問題である。
さらに、特許文献3では、ノブが定位置に戻ると、以下のような問題がある。
例えば、風量、吹出し口モード、温度のいずれを頻繁に選択して操作するかは、人によって異なるため、定位置以外をよく使う人にとっては、その都度ダイヤルをスライドさせなければならない。
本発明は、以上のような不都合を改善するために提案されたものであって、ダイヤル自体を複数の位置に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える構成とし、構成の単純化と共に、省スペースが可能で、操作性の向上が可能な、自動車用手動入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車載用電装機器に操作指令を与えて車載用電装機器を操作するための自動車用手動入力装置であって、移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、保持可能であり、且つ回動操作可能な単一のダイヤルと、ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段と、位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行する制御部とを具備することを特徴とする。
【0011】
これにより、ダイヤルを移動させることで、移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、ダイヤルを保持することができる。
その際、位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、移動保持機構は、ハウジング内において、基端部を中心として揺動可能に取付けた、揺動体と、この揺動体に配設した節度機構とを具備するとしたことを特徴とする。
【0013】
これにより、ダイヤルを所望の位置に移動させることで、揺動体が基端部を中心として揺動し、その位置において、節度機構により揺動体を保持することで、ダイヤルをその位置に保持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、ダイヤルの保持位置は、2箇所以上であり、ダイヤルの保持位置に、選択した機能を表示する表示部を備えたことを特徴とする。
【0015】
ダイヤルを移動させることにより、機能の切換えと表示を行う。このため、ダイヤルノブ以外の操作部品が不要となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記ダイヤルの停止位置と表示が関連付けられた関係に設定する構成としたことを特徴とする。
【0017】
これにより、操作者は、操作に容易に習熟することができ、その分、運転に集中することができる。
【0018】
さらに請求項5に記載の発明では、ダイヤルと表示部とは別体で配置する構成としたことを特徴とする。
【0019】
これにより、ダイヤルを手操作のしやすいところに設置することができ、一層、設置自由度が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる自動車用手動入力装置について、好ましい実施形態を挙げ、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1、図2に、本発明にかかる自動車用手動入力装置1を示す。
この自動車用手動入力装置1は、車載用電装機器に操作指令を与えて車載用電装機器を操作するためのもので、例えば、運転席におけるステアリングホイール近傍のインストルメントパネルに設けられる。運転者が、運転中であっても、手を伸ばして、容易に操作できるようにするためである。
すなわち、自動車用手動入力装置1は、ハウジング2内に配設した移動保持機構3によって所定範囲で移動させ、所定位置で保持するように設けられた、操作手段であるダイヤル4を有している。かかるダイヤル4は、後述するが、ハウジング2表面のパネル5上面に操作軸(後述)を介して設けている。
また、ハウジング2内には、ダイヤル4の保持位置を検出する位置検出手段6と、ダイヤル4の回転量を電気信号に変換する回転量変換手段7とを内蔵している(図2参照)。この場合、回転量変換手段7は、ダイヤル4と同軸的に設けているが、回転量変換手段7に代えて非接触スイッチを用いる場合は、ダイヤルの回転を検出できれば、同軸でなくてもよい。
【0022】
ハウジング2は、表面のパネル5に、ほぼ中心位置にダイヤル4を位置させ、図中、ダイヤル4の上部側にダイヤル4の保持位置を表示し、且つ、各機能を表示するための表示部8を配設している。なお、パネル5中心には、ダイヤル4を支持する操作軸(後述)を挿通し、ダイヤル4を所定範囲で移動可能とするための挿通口(後述)を形成している。
【0023】
次に、ハウジング2内でダイヤル4を移動可能に支持する移動保持機構3について説明する。
移動保持機構3は、ハウジング2内において、ハウジング2表面のパネル5に向かって、直交するように植設されたボス9に、基端部を、ボス9の軸を中心として揺動可能に取付けた、揺動体であるプレート10と、ボス9近傍に配設した周知の節度機構11とを備えている。かかるプレート10先端側に、操作軸12を介してダイヤル4を取付けている。操作軸12は、パネル5に形成した長穴状の挿通口13を介してパネル上面に突出している。かかる機構により、ダイヤル4は、ハウジング2表面のパネル5上を、所定の範囲で、節度機構11により、節度的に揺動可能としている。
なお、節度機構11は、詳細には説明しないが、例えばボールとコイルスプリングを用いることができ、ダイヤル4を所定の範囲で移動したり、所定の位置(中心位置、左右位置)にて保持する機能を有する。
【0024】
位置検出手段6は、プレート10の節度機構11近傍に搭載している。位置検出手段6には、フォトセンサなど周知のものを用いることが可能である。
【0025】
回転量変換手段7は、ロータリエンコーダであり、プレート10先端側に取付けたダイヤル4の操作軸12と同軸的に取付けられている。
【0026】
次に、ハウジング2表面のパネル5の、ダイヤル4の上部側に位置する表示部8は、例えば機能として、中央が温度表示部T、図中、左がブロアB、右がモード表示部Mとなっていて、周知の表示手段(液晶、LED等)により、シンボルマークや、数字(7セグメントディスプレイ)を構成している。
かかる各表示部の位置に、ダイヤル4をプレート10の節度機構11によって移動し、保持する構成である。
【0027】
そして、以上のような構成の自動車用手動入力装置1において、プレート10の節度機構11近傍に搭載している位置検出手段6、プレート10先端側に取付けたダイヤル4の操作軸12と同軸的に取付けられているロータリエンコーダ7、並びに、ハウジング2表面パネル5の表示部8は、各信号を受け入れて信号処理を行い、種々判定を行うと共に、制御指令を発する制御部14と電気的に接続している。
【0028】
次に、自動車用手動入力装置1の作用を説明する。
当初、自動車用手動入力装置1において、ダイヤル4が、ハウジング2の表面のパネル5の中央、すなわち、表示部8の温度表示部Tの位置に、保持されていることは、プレート10の節度機構11近傍に搭載している位置検出手段6によって検出され、かかる検出信号は、制御部14に送られる。
制御部14には、ロータリエンコーダ7からパルス信号が送られており、ダイヤル4が位置検出手段6により、ダイヤル4が表示部8の温度表示部Tの位置に、保持されていると認識されると、制御部14はロータリエンコーダ7からのパルス信号を、温度コントロール信号と判断する。このため、ダイヤル4を回転操作することで、ロータリエンコーダ7が回転して、温度コントロール信号が調整され、温度制御が可能となる。
なお、ダイヤル4の回転操作による温度調整の度合いは、表示部8の温度表示部Tに表示されるので、容易に確認することができる。
【0029】
次に、かかる機能をブロアに切換えるときは、ダイヤル4を持って、図中、左方に移動させる。これにより、ダイヤル4を中央で保持する節度機構11による保持状態が解除され、プレート10が左方へ移動し、再び、左の保持位置において、節度機構11によりプレート10を保持することができる。
かかる状態で、位置検出手段6から検出信号が制御部14に送られると、制御部14は、ロータリエンコーダ7からのパルス信号を、ブロアコントロール信号として判断することになり、ダイヤル4を回転操作することで、ロータリエンコーダ7が回転して、ブロアコントロール信号が調整され、ブロアの出力制御が可能となる。
このブロアの出力調整においても、表示部8のブロアB(インジケータ)に調整度合いが表示されるので、調整操作をより確実なものとすることができる。
【0030】
さらにブロアの動作モードを切換えるときは、ダイヤル4を持って、図中、右方に移動させる。これによってプレート10が右方へ移動し、右の保持位置において、節度機構11によりプレート10を保持することができる。
かかる状態で、位置検出手段6から検出信号が制御部14に送られると、制御部14は、ロータリエンコーダ7からのパルス信号を、モード切換え信号として判断することになる。
モード表示部Mでは、この状態で、現在のブロアの動作モード(ブロアの吹出し方向)が表示されているので、ダイヤル4を回転操作することで、ブロアの動作モードを切換えることができる。
【0031】
以上のように自動車用手動入力装置1では、ダイヤル4が一つだけであり、移動操作量も、図1で示すように、ダイヤル4の径以下であるので、省スペース化を実現することができ、これまでの3連のダイヤル方式のように、操作しにくい位置に配置されるというようなことはない。
【0032】
また、ダイヤル4の位置は、表示部8によって、目視により容易に把握確認することができる。しかも、その操作は、操作したい位置に、ダイヤル4を移動させて、回転操作するだけであるから、これまでのような、それぞれ別の操作手段でプッシュ操作、回転操作というような、2系統の操作は不要となる。
【0033】
いずれにしても、上述の自動車用手動入力装置1では、位置検出手段6とロータリエンコーダ7と表示部8とからの信号の授受により制御し、且つ、一つのダイヤル4を移動保持する構成に過ぎないため、構成を格段に単純化することができ、製造コストも抑制することができる。
【0034】
本発明は、上述の自動車用手動入力装置1の実施態様に限られない。
すなわち、ダイヤル4を移動保持する構成として、プレート10を用いたリンク機構ではなく、スライド機構を用いることもできる。
また、ダイヤル4の移動方向は、車両への取付位置に応じて適宜である(例えば、縦、斜め等)。
【0035】
ダイヤル4の移動位置と表示は、相関をとり、設定位置を明確に確認可能なことが特徴であるが、さらにダイヤル4の移動距離を小さくして、表示にダイヤルの機能状態を示すインジケータや表示そのものの変更を加えてもよい。例えば、表示の手段として、明るさ、色、点滅などによって変化させるといった手法も考えられる。
【0036】
また、表示部8とダイヤル4とは、必ずしも、ハウジング2に一体で設ける必要はない。
例えば、図4に示すように、ダイヤル4は、ブラインド操作しやすいセンタコンソールC.C.上に配置し、表示部8は、インストルメントパネルIpに配置することが考えられる。
【0037】
さらに、本発明の自動車用手動入力装置1は、温度コントロールだけでなく、その他の切換え操作が必要な車載電装機類に応用することができる。
例えば、ダイヤルをプッシュしたときに、オンするスイッチを取付けることにより、ダイヤルの回転により選択して、プッシュ操作で決定するような操作にも応用することができる。
すなわち、プッシュ機能により、(1)ダイヤルそのものの位置、(2)回転位置、(3)プッシュ機能により、3段階の選択を、一つのダイヤルで操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる自動車用手動入力装置の一実施形態を示す、模式的な構成側面図である。
【図2】図1に示す、模式的な正面説明図である。
【図3】図1に示す自動車用手動入力装置の、電気系統のブロック図である。
【図4】本発明にかかる自動車用手動入力装置の別の実施形態を示す、斜視説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用手動入力装置
2 ハウジング
3 移動保持機構
4 ダイヤル
5 パネル
6 位置検出手段
7 ロータリエンコーダ
8 表示部
9 ボス
10 プレート
11 節度機構
12 操作軸
13 挿通口
14 制御部
T 温度表示部
B ブロア
M モード表示部
C.C. センタコンソール
IP インストルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用電装機器に操作指令を与えて車載用電装機器を操作するための自動車用手動入力装置であって、
移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、保持可能であり、且つ回動操作可能な単一のダイヤルと、
前記ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、
前記ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段と、
前記位置検出手段の検出した前記ダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、前記回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して前記機能を実行する制御部と、
を具備することを特徴とする自動車用手動入力装置。
【請求項2】
前記移動保持機構は、ハウジング内において、基端部を中心として揺動可能に取付けた、揺動体と、この揺動体に配設した節度機構とを具備するとしたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用手動入力装置。
【請求項3】
前記ダイヤルの保持位置は、2箇所以上であり、
前記ダイヤルの保持位置に、選択した機能を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動車用手動入力装置。
【請求項4】
前記ダイヤルの保持位置と前記表示部の表示が関連付けられた関係に設定する構成としたことを特徴とする請求項3記載の自動車用手動入力装置。
【請求項5】
前記ダイヤルと表示部とは別体で配置する構成としたことを特徴とする請求項3または4に記載の自動車用手動入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−255772(P2009−255772A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108141(P2008−108141)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】