説明

自動車用手動入力装置

【課題】ダイヤル自体を複数の位置に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える他、自動運転指令機能も有し、操作性の向上が可能な、自動車用手動入力装置を提供する。
【解決手段】移動保持機構によって移動させて、所定位置で保持する他、回動操作可能なダイヤルと、ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段とを備える。
位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行する。
また、自動運転指令用操作手段の操作時に、ダイヤルの移動保持機構により、ダイヤルを特定の機能を実行する位置に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤル自体を手動的に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える一方、自動運転指令機能も有し、自動運転指令により、頻繁に使用される動作機能に自動的に復帰させるようにした、自動車用手動入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される種々の電装機器類は、ステアリングホイール近傍のインストルメントパネルや、コンソール近傍に設けた操作手段によって、操作モードの切換え表示を行ったり、操作指令を出力して所望の操作を行ってきた。
【0003】
例えば、自動車用エアコンでは、特許文献1に示すように、インストルメントパネルに配設したオートエアコンのスイッチを安定した空調制御を可能とする他、誤操作されないように、非接触スイッチを配設している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−168282号公報
【0005】
このようにエアコンの操作は、運転操作に先立ち、または合間になされるものであるから、できるだけ、手数の少なく操作が単純であることが望ましい。
【0006】
また、インストルメントパネルは、空調用スイッチだけでなく、ナビゲーション関係の操作パネルが配設されるため、非常に煩雑化している。
そこで、本出願人は、すでに手数の少なく操作が簡単な、一つのダイヤル式の自動車用手動入力装置を提案している。
すなわち、この自動車用手動入力装置1では、図7に示すように、移動保持機構2によって複数の位置へ移動させて、保持可能であり、且つ回動操作可能な単一のダイヤル3と、ダイヤル3の保持位置を検出する位置検出手段4と、ダイヤル3と同軸的に設けて、ダイヤル3の回転量を電気信号に変換する回転量変換手段5とを備えている。
そして、位置検出手段4の検出したダイヤル3の保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段5からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行するようにしている。
【0007】
このように、自動車用手動入力装置1は、位置検出手段4と回転量変換手段5と、表示部6と、且つ、一つのダイヤル3を移動保持する構成に過ぎないため、構成を格段に単純化することができ、製造コストも抑制することができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の自動車用手動入力装置1では、特に、車載用エアコンを操作するものとして提案され、種々の機能(ここでは、温度調節、風量調節、吹出し方向選択)を切換え実行するようにしている。
このような、自動車用手動入力装置1をオートエアコンに用いることができるようにするためには、自動運転への切換えスイッチが必要である。
また、オートエアコンの機能に対応するためには、オートエアコンでは、車室内外の温度変化や日射の影響を車室内外に配設した各種センサによって検知し、車室内外の温度を設定温度に保つように制御する機能を主な動作機能としており、このために、自動運転への切換えスイッチによってオート運転に切換えた場合に、手動用ダイヤル3のポジションを、温度調節の機能を実行する位置に手動的に操作しなくてはならない。
【0009】
本発明は、以上のような不都合を改善するために提案されたものであって、ダイヤル自体を手動的に移動保持させることで、車両搭載用機器類の動作機能を切換える一方、自動運転指令機能も有し、自動運転指令により、頻繁に使用される動作機能に自動的に復帰させるようにした、自動車用手動入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車載用電装機器に操作指令を与えて車載用電装機器を操作する他、自動運転指令用操作手段を有する自動車用手動入力装置であって、移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、保持可能であり、且つ回動操作可能な単一のダイヤルと、ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段と、位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行する制御部と、自動運転指令用操作手段の操作時に、ダイヤルの移動保持機構により、ダイヤルを特定の機能を実行する位置に復帰させる復帰手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
これにより、ダイヤルを移動させることで、移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、ダイヤルを保持することができる。
その際、位置検出手段の検出したダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して機能を実行することができる。
ここで、自動運転指令用操作手段により切換え指令が出されると、復帰手段により、自動運転にて頻繁に実行される特定の機能にダイヤルを移動保持機構によって移動させることができ、操作の手間が省ける。
【0012】
請求項2に記載の発明は、移動保持機構は、ハウジング内において、基端部を中心として揺動可能に取付けた第1揺動体と、この第1揺動体を介してダイヤルを複数の位置へ節度的に移動させて保持する節度機構とを具備するとしたことを特徴とする。
【0013】
これにより、ダイヤルを所望の位置に移動させることで、第1揺動体が基端部を中心として、節度機構により、節度的に移動すると共に、その位置において第1揺動体を保持することで、ダイヤルをその位置に保持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、節度機構は、第1揺動体側に弾発的に支持したボールを備え、第1揺動体に交差するように設けた第2揺動体上に配置した節度盤を備えていることを特徴とする。
【0015】
これにより、第1揺動体側に弾発的に支持したボールが、第2揺動体上に配置した節度盤を、節度的に移動することで、第1揺動体を移動させ、ダイヤルを所望の位置に、確実に保持することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、節度盤は、第1揺動体側に弾発的に支持したボールを節度的に係止させることでダイヤルの複数の保持位置を決める複数の節度溝を備えたことを特徴とする。
【0017】
これにより、第1揺動体側に弾発的に支持したボールが、節度盤の複数の節度溝に節度的に係止させることで、ダイヤルを複数の保持位置に、確実に保持することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、復帰手段は、ダイヤルを複数の位置へ節度的に移動させて保持する移動保持機構を構成する第1揺動体と、第1揺動体と交差して、移動保持機構を構成する節度機構を介して第1揺動体と独立して揺動可能な第2揺動体と、この第2揺動体を揺動させるアクチュエータとを具備し、節度機構は、第1揺動体側に弾発的に支持したボールと、第1揺動体に交差するように設けた第2揺動体上に配置した節度盤とを備え、節度盤は、手動時の手動ガイド部と、自動運転指令用操作手段の操作により、自動運転切換え時のオートガイド部とを併設し、手動ガイド部には、第1揺動体側に弾発的に支持した節度機構のボールが節度的に移動係止して、ダイヤルの複数の保持位置を決める等高の複数の節度溝を備え、オートガイド部には、手動ガイド部における節度溝と等高で特定の機能を実行する位置を決める節度溝を備えると共に、この節度溝の箇所を谷部として形成し、手動ガイド部と、オートガイド部の節度溝以外の箇所とは、段差路でつながっていることを特徴とする。
【0019】
これにより、簡単な構成の復帰手段によって、オート運転モードに対応して、ダイヤルを特定の機能を実行するポジションに、自動的に移動させ、保持することができる。
【0020】
さらに請求項6に記載の発明は、ダイヤルの保持位置に、選択した機能を表示する表示部を備え、ダイヤルの保持位置と表示部の表示が関連付けられた関係に設定する構成としたことを特徴とする。
【0021】
これにより、ダイヤルを移動させることにより、機能の切換えと表示を行う。このため、ダイヤルノブ以外の操作部品が不要となる。
ダイヤルの停止位置と表示が関連付けられた関係に設定されているため、操作者は、操作に容易に習熟することができ、その分、運転に集中することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかる自動車用手動入力装置について、好ましい実施形態を挙げ、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1、図2に、本発明にかかる自動車用手動入力装置10を示す。
この自動車用手動入力装置10は、車載用電装機器(ここでは車載用エアコン)に操作指令を与えて車載用電装機器を操作するためのもので、例えば、運転席におけるステアリングホイール近傍のインストルメントパネルに設けられる。運転者が、運転中であっても、手を伸ばして、容易に操作できるようにするためである。
すなわち、自動車用手動入力装置10は、ハウジング11内に配設した移動保持機構12によって所定範囲で移動させ、所定位置で保持するように設けられた、操作手段であるダイヤル13を有している。かかるダイヤル13は、後述するが、ハウジング11表面のパネル14上面に操作軸(後述)を介して設けている。
また、ハウジング11内には、ダイヤル13の保持位置を検出する位置検出手段15と、ダイヤル13の回転量を電気信号に変換する回転量変換手段16とを内蔵している(図2参照)。
この場合、回転量変換手段16は、ダイヤル13と同軸的に設けているが、回転量変換手段16に代えて非接触スイッチを用いる場合は、ダイヤルの回転を検出できれば、同軸でなくてもよい。
【0024】
ハウジング11は、表面のパネル14に、ほぼ中心位置にダイヤル13を位置させ、図中、ダイヤル13の上部側にダイヤル13の保持位置を表示し、且つ、各機能を表示するための表示部17を配設している。また、表面のパネル14に、表示部17に近接して自動運転指令用操作手段としてのAUTOスイッチ18を配置している。
なお、パネル14中心には、ダイヤル13を支持する操作軸(後述)を挿通し、ダイヤル13を所定範囲で移動可能とするための挿通口(後述)を形成している。
【0025】
次に、ハウジング11内でダイヤル13を移動可能に支持する移動保持機構12について説明する。
移動保持機構12は、ハウジング11内において、ハウジング11表面のパネル14に向かって、直交するように植設されたボス19に、基端部を、ボス19の軸を中心として揺動可能に取付けた、第1揺動体20と、ボス19近傍に配設した周知の節度機構21とを備えている。かかる第1揺動体20先端側に、操作軸22を介してダイヤル13を取付けている。操作軸22は、パネル14に形成した長穴状の挿通口23を介してパネル14上面に突出している。かかる機構により、ダイヤル13は、ハウジング11表面のパネル14上を、所定の範囲で、節度機構21により、節度的に揺動可能としている。
【0026】
位置検出手段15は、第1揺動体20の節度機構21近傍に搭載している。位置検出手段15には、フォトセンサなど周知のものを用いることが可能である。
【0027】
回転量変換手段16は、ロータリエンコーダであり、第1揺動体20先端側に取付けたダイヤル13の操作軸22と同軸的に取付けられている。
【0028】
次に、ハウジング11表面のパネル14の、ダイヤル13の上部側に位置する表示部17は、例えば機能として、中央が温度表示部T、図中、左がブロアB、右がモード表示部Mとなっていて、周知の表示手段(液晶、LED等)により、シンボルマークや、数字(7セグメントディスプレイ)を構成している。
かかる各表示部の位置に、ダイヤル13を第1揺動体20の節度機構21によって移動し、保持する構成である。
【0029】
そこで、節度機構21について、詳細に説明する。
節度機構21は、ダイヤル13を揺動可能に支持する第1揺動体20側に設けたポスト内に配置したコイルスプリング(図示省略)に、弾発的に支持したボールbとを有し、第1揺動体20に直交するように配置した第2揺動体24上に固設した節度盤25とを備えている(図3参照)。第1揺動体20側のボールbは、第2揺動体24上に固設した節度盤25に移動可能に当接している。節度盤25は、第2揺動体24上に、第2揺動体24の長軸方向に沿って設けられている。
なお、第2揺動体24は、ハウジング11内に、図1中、右端側をボス26によって揺動可能に軸止めされ、左端側を、アクチュエータ27の作動ロッド27aと連結している。通常時は、第2揺動体24は、ハウジング11内に、図1中、水平方向に保持されている。
【0030】
節度盤25は、上面が、すなわち、節度機構21のボールbの転動面として、ボールbの移動保持位置、すなわち、ダイヤル13の移動保持位置を決める、手動時の手動ガイド部25aと、オート切換え時のオートガイド部25bとが並列するように形成されている(図3参照)。
【0031】
手動ガイド部25aには、第1揺動体20の軸方向に、中心位置と中心位置を挟んで左右に、ボールbの節度溝28L、28C、28Rが形成されている。これにより、ダイヤル13を支持する第1揺動体20を、ボス19の軸心を中心に変位させたときに、節度機構21のボールbが、節度溝28L、28C、28Rの位置で係止することでダイヤル13を、温度表示部T、ブロアB、モード表示部Mの位置に保持するようにしている。
【0032】
オートガイド部25bには、手動ガイド部25a同様、第1揺動体20の軸方向、中心位置に、ボールbの節度溝28Cが形成されている。かかるオートガイド部25bでは、節度溝28Cの箇所が手動ガイド部25aと同じ高さにあり、節度溝28Cの箇所を谷部として、左端側、右端側の、手動ガイド部25aにおける節度溝28L、28Rに対応する箇所を、それぞれ、節度溝28L、28Rの箇所の高さ位置より、高い位置に形成している(図4参照)。
これにより、手動ガイド部25aにおける節度溝28L、28Rと、対応するオートガイド部25bの左端側、右端側の箇所とは、段差路Rでつながっている(図5参照)。
【0033】
そして、以上のような構成の自動車用手動入力装置1において、第1揺動体20の節度機構21近傍に搭載している位置検出手段15、第1揺動体20先端側に取付けたダイヤル13の操作軸22と同軸的に取付けられているロータリエンコーダ16、並びに、ハウジング11表面パネル14の表示部17、AUTOスイッチ18、アクチュエータ27は制御部29と電気的に接続している。
制御部29は、これら位置検出手段15、ロータリエンコーダ16やAUTOスイッチ18から、検出信号、指令信号等、各種信号を受け入れて信号処理を行い、種々判定を行うと共に、表示部17に表示信号を発したり、アクチュエータ27に制御指令を発する。
【0034】
次に、自動車用手動入力装置1の作用を説明する。
当初、自動車用手動入力装置1において、AUTOスイッチ18がオート運転か、手動操作時にあるかは、AUTOスイッチ18がスイッチ操作がされているかどうかを、制御部29によって判定することができる。
【0035】
AUTOスイッチ18がスイッチ操作されておらず、手動運転時とされたとき、ダイヤル13が、ハウジング11の表面のパネル14の中央、すなわち、表示部17の温度表示部Tの位置に、保持されていることは、第1揺動体20の節度機構21近傍に搭載している位置検出手段15によって検出され、かかる検出信号は、制御部29に送られる。
その際、ダイヤル13を支持する第1揺動体20の節度機構21のボールbは、第2揺動体24上の節度盤25のうち、手動ガイド部25aの中央の節度溝28C上に保持されている。
【0036】
また制御部29には、ロータリエンコーダ16からパルス信号が送られており、ダイヤル13が位置検出手段15により、ダイヤル13が表示部17の温度表示部Tの位置に、保持されていると認識されると、制御部29はロータリエンコーダ16からのパルス信号を、温度コントロール信号と判断する。このため、ダイヤル13を回転操作することで、ロータリエンコーダ16が回転して、温度コントロール信号が調整され、温度制御が可能となる。
なお、ダイヤル13の回転操作による温度調整の度合いは、制御部29から表示信号として出力され、表示部17の温度表示部Tに表示されるので、容易に確認することができる。
【0037】
次に、かかる機能をブロアに切換えるときは、ダイヤル13を持って、図1中、左方に移動させる。これにより、ダイヤル13を中央で保持する節度機構21のボールbが、手動ガイド部25aの中央の節度溝28C上から外れることで保持状態が解除され、第1揺動体20が手動ガイド部25a上を左方へ移動し、再び、左の保持位置において、節度機構21のボールbが、手動ガイド部25aの節度溝28Lに係止することで、第1揺動体20を保持することができる。
【0038】
かかる状態で、位置検出手段15から検出信号が制御部29に送られると、制御部29は、ロータリエンコーダ16からのパルス信号を、ブロアコントロール信号として判断することになり、ダイヤル13を回転操作することで、ロータリエンコーダ16が回転して、ブロアコントロール信号が調整され、ブロアの出力制御が可能となる。
このブロアの出力調整においても、制御部29から表示信号として出力され、表示部17のブロアB(インジケータ)に調整度合いが表示されるので、調整操作をより確実なものとすることができる。
【0039】
また、ブロアの動作モードを切換えるときは、ダイヤル13を持って、図1中、右方に移動させる。これによって第1揺動体20が右方へ移動し、右の保持位置において、節度機構21のボールbが、手動ガイド部25aの節度溝28Rに係止することで、第1揺動体20を保持することができる。
かかる状態で、位置検出手段15から検出信号が制御部29に送られると、制御部29は、ロータリエンコーダ16からのパルス信号を、モード切換え信号として判断することになる。
モード表示部Mでは、この状態で、現在のブロアの動作モード(ブロアの吹出し方向)が表示されているので、ダイヤル13を回転操作することで、ブロアの動作モードを切換えることができる。
【0040】
次に、AUTOスイッチ18のスイッチ操作がなされると、制御部29にスイッチ信号が送られ、制御部29は、オート運転に入ったと判定することができる。
かかるオート運転状態に入る際、直前で、手動動作時に、ダイヤル13が左方に位置して機能がブロア運転にあるときには、ダイヤル13を支持する第1揺動体20は、左の保持位置において、節度機構21のボールbが、手動ガイド部25aの節度溝28Lに係止している。
【0041】
かかる運転状態の際、AUTOスイッチ18のスイッチ操作がなされると、制御部29は、オート運転に入ったと判定して、第2揺動体24を駆動するアクチュエータ27に通電され、作動ロッド27aの引き込み動作がなされる。これにより、第2揺動体24は、ボス26の軸を中心として、時計回りに変位し、節度盤25も追随して変位する。
【0042】
すると、ダイヤル13を支持する第1揺動体20の、節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの節度溝28Lから外れて、段差路Rを乗り越えて(図5参照)、対応するオートガイド部25bの左端側の箇所に至る(図4参照)。
このオートガイド部25bの左端側の箇所では、節度溝はなく、しかも、中央の節度溝28Cよりも高い位置にあるため、ボールbは、オートガイド部25bの左端側の箇所から、中央の節度溝28Cまで転動下降し、節度溝28Cで止まる。
従って、ダイヤル13を支持する第1揺動体20は、左方の位置から、中央の位置まで変位する。
そして、アクチュエータ27を復帰させると、第2揺動体24は元の位置に戻り、これにより、第1揺動体20の、節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの中央の節度溝28Cに至る。
これにより、ダイヤル13は、表示部17の温度表示部Tの位置に、保持されることになり、ダイヤル13を回転操作することで、ロータリエンコーダ16が回転して、温度コントロール信号が調整され、温度制御が可能となる。
【0043】
一方、オート運転状態に入る際、直前で、手動動作時に、機能がブロアの動作モードにあるときは、第1揺動体20は、節度機構21のボールbが、右の保持位置である手動ガイド部25aの節度溝28Rに係止している。
かかる状態で、AUTOスイッチ18のスイッチ操作がなされると、制御部29は、オート運転に入ったと判定して、第2揺動体24を駆動するアクチュエータ27に通電され、作動ロッド27aの引き込み動作がなされ、第2揺動体24は、ボス26の軸を中心として、時計回りに変位し、節度盤25も追随して変位する。
【0044】
これによって、ダイヤル13を支持する第1揺動体20の、節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの節度溝28Rから外れて、段差路Rを乗り越えて(図5参照)、対応するオートガイド部25bの右端側の箇所に至る(図4参照)。
このオートガイド部25bの右端側の箇所においても節度溝はなく、しかも、中央の節度溝28Cよりも高い位置にあるため、ボールbは、オートガイド部25bの右端側の箇所から、中央の節度溝28Cまで転動下降し、節度溝28Cで止まる。
従って、ダイヤル13を支持する第1揺動体20は、右方の位置から、中央の位置まで変位する。
そして、アクチュエータ27を復帰させると、第2揺動体24は元の位置に戻り、これにより、第1揺動体20の、節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの中央の節度溝28Cに至る。
これにより、ダイヤル13は、表示部17の温度表示部Tの位置に、保持されることになり、ダイヤル13を回転操作することで、ロータリエンコーダ16が回転して、温度コントロール信号が調整され、温度制御が可能となる。
【0045】
なお、オート運転状態に入る際、直前で、手動動作時に、ダイヤル13が、ハウジング11の表面のパネル14の中央、すなわち、表示部17の温度表示部Tの位置に保持されているときは、AUTOスイッチ18のスイッチ操作がなされて、アクチュエータ27に通電され第1揺動体20が変位しても、ダイヤル13を支持する第1揺動体20の節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの中央の節度溝28C上から、オートガイド部25b側の中央の節度溝28Cに移動するだけであり、アクチュエータ27の動作解除によって、結局は、ダイヤル13を支持する第1揺動体20の節度機構21のボールbは、手動ガイド部25aの中央の節度溝28C上に戻るだけであり、ダイヤル13は表示部17の温度表示部Tの位置に保持されたままの状態である。
【0046】
以上のように自動車用手動入力装置1では、ダイヤル13が一つだけであり、移動操作量も、図1で示すように、ダイヤル13の径以下であるので、省スペース化を実現することができる。
また、自動車用手動入力装置1は、上述のように機能するものであるため、手動操作から、自動運転に切換えても、手動用ダイヤル13のポジションを、温度調節の機能を実行する位置に手動的に操作する必要はなく、頻繁に使用される動作機能である、車室内外の温度を設定温度に保つように制御する機能に自動的に復帰させることができる。
【0047】
このように、位置検出手段15とロータリエンコーダ16と表示部17とからの信号の授受により制御し、且つ、一つのダイヤル13を移動保持する構成に過ぎない上述の自動車用手動入力装置1を、自動運転モードの電装機器(オートエアコン)に用いることができるため、構成を格段に単純化することができ、インストルメントパネル等に配置する際のスペースも抑制することができ、製造コストも抑制することができる。
【0048】
なお、上述の自動車用手動入力装置1は、本実施形態に限られない。
すなわち、ダイヤル13を移動保持する構成として、第1揺動体20を用いたリンク機構ではなく、スライド機構を用いることもできる。
また、ダイヤル13の移動方向は、車両への取付位置に応じて適宜である(例えば、縦、斜め等)。
【0049】
ダイヤル13の移動位置と表示は、相関をとり、設定位置を明確に確認可能なことが特徴であるが、さらにダイヤル13の移動距離を小さくして、表示にダイヤルの機能状態を示すインジケータや表示そのものの変更を加えてもよい。例えば、表示の手段として、明るさ、色、点滅などによって変化させるといった手法も考えられる。
【0050】
さらに、本発明の自動車用手動入力装置1は、車載用エアコンだけでなく、その他の切換え操作が必要な車載用電装機類に応用することができる。
例えば、ダイヤルをプッシュしたときに、オンするスイッチを取付けることにより、ダイヤルの回転により選択して、プッシュ操作で決定するような操作にも応用することができる。
すなわち、プッシュ機能により、(1)ダイヤルそのものの位置、(2)回転位置、(3)プッシュ機能により、3段階の選択を、一つのダイヤルで操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかる自動車用手動入力装置の一実施形態を示す、模式的な構成正面説明図である。
【図2】図1に示す、模式的な側面説明図である。
【図3】図1に示す自動車用手動入力装置に用いられる節度機構における節度盤と、復帰手段の作用を示した、要部説明図である。
【図4】図3に示す節度機構の復帰動作を説明するための、A方向からの、要部作用図である。
【図5】図3に示す節度機構の復帰動作を説明するための、B方向からの、要部作用図である。
【図6】図1に示す自動車用手動入力装置の、電気系統のブロック図である。
【図7】自動車用手動入力装置の一例を示す、模式的な構成正面説明図である。
【符号の説明】
【0052】
10 自動車用手動入力装置
11 ハウジング
12 移動保持機構
13 ダイヤル
14 パネル
15 位置検出手段
16 ロータリエンコーダ
17 表示部
18 AUTOスイッチ
19 ボス
20 第1揺動体
21 節度機構
22 操作軸
23 挿通口
24 第2揺動体
25 節度盤
25a 手動ガイド部
25b オートガイド部
26 ボス
27 アクチュエータ
27a 作動ロッド
28L、28C、28R 節度溝
29 制御部
T 温度表示部
B ブロア
M モード表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用電装機器に操作指令を与えて車載用電装機器を操作する他、自動運転指令用操作手段を有する自動車用手動入力装置であって、
移動保持機構によって複数の位置へ移動させて、保持可能であり、且つ回動操作可能な単一のダイヤルと、
前記ダイヤルの保持位置を検出する位置検出手段と、
前記ダイヤルの回転量を電気信号に変換する回転量変換手段と、
前記位置検出手段の検出した前記ダイヤルの保持位置から、予め定められている機能種類を導出し、前記回転量変換手段からの出力信号に基づき、導出された機能に対する制御系を決定して前記機能を実行する制御部と、
前記自動運転指令用操作手段の操作時に、前記ダイヤルの移動保持機構により、前記ダイヤルを特定の機能を実行する位置に復帰させる復帰手段と、
を具備することを特徴とする自動車用手動入力装置。
【請求項2】
前記移動保持機構は、ハウジング内において、基端部を中心として揺動可能に取付けた、第1揺動体と、
この第1揺動体を介して前記ダイヤルを複数の位置へ節度的に移動させて保持する節度機構と、
を具備するとしたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用手動入力装置。
【請求項3】
前記節度機構は、前記第1揺動体側に弾発的に支持したボールを備え、
前記第1揺動体に交差するように設けた第2揺動体上に配置した節度盤を備えていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用手動入力装置。
【請求項4】
前記節度盤は、前記第1揺動体側に弾発的に支持したボールを節度的に係止させることで前記ダイヤルの複数の保持位置を決める複数の節度溝を備えたことを特徴とする請求項3に記載の自動車用手動入力装置。
【請求項5】
前記復帰手段は、前記ダイヤルを複数の位置へ節度的に移動させて保持する前記移動保持機構を構成する第1揺動体と
前記第1揺動体と交差して、前記移動保持機構を構成する節度機構を介して前記第1揺動体と独立して揺動可能な第2揺動体と、
この第2揺動体を揺動させるアクチュエータとを具備し、
前記節度機構は、前記第1揺動体側に弾発的に支持したボールと、
前記第1揺動体に交差するように設けた第2揺動体上に配置した節度盤とを備え、
前記節度盤は、手動時の手動ガイド部と、前記自動運転指令用操作手段の操作により、自動運転切換え時のオートガイド部とを併設し、
前記手動ガイド部には、前記第1揺動体側に弾発的に支持した前記節度機構のボールが節度的に移動係止して、前記ダイヤルの複数の保持位置を決める等高の複数の節度溝を備え、
前記オートガイド部には、前記手動ガイド部における節度溝と等高で特定の機能を実行する位置を決める節度溝を備えると共に、この節度溝の箇所を谷部として形成し、
前記手動ガイド部と、前記オートガイド部の節度溝以外の箇所とは、段差路でつながっていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用手動入力装置。
【請求項6】
前記ダイヤルの保持位置に、選択した機能を表示する表示部を備え
前記ダイヤルの保持位置と前記表示部の表示が関連付けられた関係に設定する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用手動入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255831(P2009−255831A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109211(P2008−109211)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】