説明

自動車用排ガス希釈装置

【課題】 自動車の排ガスの全量をテールパイプの直後で希釈する。
【解決手段】 排ガス導入管2は、自動車のテールパイプに直列に挿入・接続される。フィルタ3は、希釈空気の取入口をなし、その内側に排ガス導入管2を囲む空気通路4を形成する。希釈ダクト6は、排ガス導入管2及び空気通路4の開口端を囲んで排ガス及び空気の噴出方向に延びる。希釈ダクト6の出口側には、定流量ポンプを配置し、希釈ダクト6内を希釈後の排ガスが一定流量で流れるように吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジン(例えばディーゼルエンジン)の排ガスを空気で希釈する排ガス希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる排気微粒子(PM;Particulate Matter)を捕集してPMを定量分析するのに、排ガスの一部をサンプリングして空気で希釈する排ガス希釈装置を用いている。
【特許文献1】特開2004−205253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のように、排ガスを少量サンプリングした後の希釈であると、サンプリング箇所での濃い薄い、温度差などにより、排ガス全体の性状を代表していない。
また、テープパイプから希釈装置までの距離が長くなると、希釈するまでに、排ガス性状が変化してしまう。特に、排気微粒子の計測では、テールパイプから希釈装置までの間で、排ガスの温度変化、揮発性粒子の蒸発、凝縮、粒子同士の凝集等により、粒子形状・粒子数が変化したり、管路の内面の付着物(堆積物)の剥離を生じて、これを誤計測したりするため、テールパイプから希釈装置までの距離が重要となる。
【0004】
本発明は、このような実状に鑑み、自動車のテールパイプ近傍で排ガスの全量を好適に希釈することができる排ガス希釈装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明に係る排ガス希釈装置は、自動車のテールパイプに直列に挿入・接続される排ガス導入管と、その外周を囲む環状のフィルタと、排ガス導入管の外周面とフィルタの内周面との間に形成される空気通路と、排ガス導入管及び空気通路の開口端を囲んで排ガス及び空気の噴出方向に延びる希釈ダクトと、を備え、更に、希釈ダクトの出口側に配置され、希釈ダクト内を希釈後の排ガスが一定流量で流れるように吸引する定流量ポンプを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動車の排ガスをテールパイプの直後で希釈することにより、これまでテールパイプから希釈装置までの間で起こっていた粒子形状・粒子数の変化や、管路内面からの付着物剥離の防止が可能である。
また、排ガス全量を希釈空気が外側から囲むように希釈することにより、より沿道に近い状態での希釈が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す希釈装置本体の外観図、図2(A)は左側面図、図2(B)は右側面図、図3は内部構造の断面図である。
希釈装置本体1は、主に、排ガス導入管2と、希釈空気取入口をなすフィルタ3と、希釈ダクト6とにより構成され、持ち運び可能である。
【0008】
排ガス導入管2は、その一端が自動車のテールパイプに直列に挿入・接続される。
フィルタ3は、環状(筒状)に形成されて、外周面がダストサイド(希釈空気の取入面)、内周面がクリーンサイドとなるもので、排ガス導入管2の他端側の外周に空隙を隔てて装着される。
ここにおいて、排ガス導入管2の外周面とフィルタ3の内周面との間に、前記空隙による空気通路4が形成され、この空気通路4は、一端が閉塞され、他端が排ガス導入管2の開口端を囲んで開口している。また、空気通路4の開口端にはオリフィス5が設けられている。オリフィス5は、脱着可能、より望ましくは開口面積を調整できるものがよい。
【0009】
希釈ダクト6は、筒状で、排ガス導入管2及び空気通路4の開口端を囲んで排ガス及び空気の噴出方向に延びている。
そして、この希釈ダクト6の出口側に、希釈後の排ガスが希釈ダクト6内を一定流量で流れるように吸引する定流量ポンプが配置される。流量は調整可能である。
従って、希釈装置本体1は、排ガス導入管2を自動車のテールパイプに接続し、希釈ダクト6の出口側に定流量ポンプを配置して、使用する。
【0010】
この状態では、自動車のテールパイプからの排ガスの全量が排ガス導入管2に導かれ、その開口端より希釈ダクト6内に導入される。その一方、希釈空気(外気)がフィルタ3をその外周面から内周面へ通過した後、空気通路4に至り、その開口端からオリフィス5を介して、前記排ガスを囲むように、希釈ダクト6内に導入される。
このように、自動車のテールパイプの直後で希釈することにより、希釈前の粒子形状の変化を防ぐことができ、より沿道に近い希釈状態での計測が可能となる。
【0011】
また、排ガスの全量を希釈することが可能で、希釈後のサンプリング箇所による計測ばらつきを低減できる。
また、希釈ダクト6にて、排ガスの全量を希釈空気が外側から囲むように希釈することにより、より沿道に近い状態での希釈が可能となる。
また、定流量ポンプで吸引することにより、その流量設定により、排ガス中の排気微粒子濃度などに応じた任意の希釈割合に調整可能となる。但し、定流量ポンプの流量により、希釈空気導入流速が変化するため、適切な希釈・混合が可能となるように、オリフィス5の開口面積を調整する。
【0012】
また、希釈装置本体1の前後にCO、CO2、NOx、THC(全炭化水素)のサンプルラインを取付けることにより、本装置での希釈割合を求めることができる。
このため、本実施形態では、排ガス導入管2の入口側に、(CO+CO2)ガスのサンプルライン7、及び、(NOx+THC)ガスのサンプルライン8を取付けると共に、希釈ダクト6の出口側に、同様に、(CO+CO2)ガスのサンプルライン9、及び、(NOx+THC)ガスのサンプルライン10を取付けている。
【0013】
また、本実施形態では、排気微粒子数(PM数)の計測に用いるため、希釈ダクト6の出口側に、PM数の計測ライン11を取付けている。
粒子数計測について、少量サンプリングした後に希釈する従来装置(RD装置)を用いた場合と、本希釈装置を用いた場合とについて、実際の沿道計測データと比較した結果、およそ50nm以上の粒子ではRD装置、本希釈装置使用時とも沿道計測結果と差異はなかったが、50nm以下の粒子数では本希釈装置使用時の方がより沿道での計測結果に近いものとなった。
【0014】
また、RD装置を使用しサンプリング箇所を数点ふって粒子数計測を行ったところ、計測ごとに粒子数のばらつきが大きかったが、本希釈装置を使用して同様の計測を行ったところ、計測結果のばらつきは小さかった。
また、本希釈装置を使用した場合は、管路内面からの付着物の剥離によると見られる粒子数の増加は見られなかった。
【0015】
図4は既存の希釈設備への適用例である。
既存の希釈設備20は、ガス取入口(ガス導入管)21及び空気取入口(フィルタ)22を有し、ガス取入口21からのガスを空気取入口22からの空気で希釈して流す希釈トンネル23と、希釈トンネル23の出口側に配置されて希釈トンネル23内を希釈後のガスが一定流量で流れるように吸引する定流量ポンプ24とを備える。
【0016】
ここにおいて、シャシ・ダイナモ装置30上の自動車40のテールパイプに、持ち運び可能な希釈装置本体1の排ガス導入管2を接続し、希釈装置本体1の希釈ダクト6の出口と希釈設備20のガス取入口21とを接続して、希釈設備20の定流量ポンプ24により、希釈装置本体1の希釈ダクト6内を希釈後の排ガスが一定流量で流れるようにする。
このように、希釈装置本体1を既存の希釈設備20に接続することにより、既存の定流量ポンプ24を用いることが可能となる。
【0017】
この場合、希釈設備20の空気取入口22は、閉止可能として、閉止しておけばよいが、希釈設備20の空気取入口22を利用して、二次希釈をすることも可能である。
尚、以上の説明では、希釈装置を排気微粒子数の計測に利用する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、希釈装置を各種の排ガス性状(たとえばTHC濃度)の計測に利用する場合にも適用できる。
【0018】
また、希釈装置本体1の希釈空気取入口(フィルタ3部分)に、温湿度調整装置を取付けるようにしてもよく、このようにすれば、実走行時の大気による排ガス希釈をより良く再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す希釈装置本体の外観図
【図2】同上の側面図
【図3】内部構造の断面図
【図4】既存の希釈設備への適用例を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 希釈装置本体
2 排ガス導入管
3 フィルタ
4 空気通路
5 オリフィス
6 希釈ダクト
7、8 サンプルライン
9、10 サンプルライン
11 PM数の計測ライン
20 希釈設備
21 ガス取入口
22 空気取入口
23 希釈トンネル
24 定流量ポンプ
30 シャシ・ダイナモ装置
40 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスを空気で希釈する自動車用排ガス希釈装置であって、
自動車のテールパイプに直列に挿入・接続される排ガス導入管と、
前記排ガス導入管の外周を囲み、外周面がダストサイド、内周面がクリーンサイドとなる環状のフィルタと、
前記排ガス導入管の外周面と前記フィルタの内周面との間に形成されて、一端が閉塞され、他端が前記排ガス導入管の開口端を囲んで開口する空気通路と、
前記排ガス導入管及び前記空気通路の開口端を囲んで排ガス及び空気の噴出方向に延びる希釈ダクトと、
前記希釈ダクトの出口側に配置され、前記希釈ダクト内を希釈後の排ガスが一定流量で流れるように吸引する定流量ポンプと、
を含んで構成される自動車用排ガス希釈装置。
【請求項2】
エンジンの排ガスを空気で希釈する自動車用排ガス希釈装置であって、
自動車のテールパイプに直列に挿入・接続される排ガス導入管と、
前記排ガス導入管の外周を囲み、外周面がダストサイド、内周面がクリーンサイドとなる環状のフィルタと、
前記排ガス導入管の外周面と前記フィルタの内周面との間に形成されて、一端が閉塞され、他端が前記排ガス導入管の開口端を囲んで開口する空気通路と、
前記排ガス導入管及び前記空気通路の開口端を囲んで排ガス及び空気の噴出方向に延びる希釈ダクトと、により、
持ち運び可能な希釈装置本体を構成する一方、
ガス取入口及び空気取入口を有し、ガス取入口からのガスを空気取入口からの空気で希釈して流す希釈トンネルと、前記希釈トンネルの出口側に配置され、前記希釈トンネル内を希釈後のガスが一定流量で流れるように吸引する定流量ポンプとを備える希釈設備を用い、
前記希釈装置本体の希釈ダクトの出口と前記希釈設備のガス取入口とを接続して、前記希釈設備の定流量ポンプにより、前記希釈装置本体の希釈ダクト内を希釈後の排ガスが一定流量で流れるようにしたことを特徴とする自動車用排ガス希釈装置。
【請求項3】
前記希釈設備の空気取入口は、閉止可能であることを特徴とする請求項2記載の自動車用排ガス希釈装置。
【請求項4】
前記空気通路の開口端にオリフィスを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の自動車用排ガス希釈装置。
【請求項5】
希釈率の算出のため、前記排ガス導入管に対し、排ガスのサンプルラインを取付けると共に、前記希釈ダクトに対し、希釈後の排ガスのサンプルラインを取付けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の自動車用排ガス希釈装置。
【請求項6】
排気微粒子数の計測のため、前記希釈ダクトに対し、排気微粒子数の計測ラインを取付けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の自動車用排ガス希釈装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−226893(P2006−226893A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42232(P2005−42232)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】