説明

自動車用水系中塗り塗料

【課題】従来の欠点を解決したポリウレタンゲル粒子を含む自動車用水系中塗り塗料を提供すること。
【解決手段】少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子と、該粒子Aの表面を被覆している、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子とからなるポリウレタンゲル粒子を含有してなることを特徴とする自動車用水系中塗り塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用水系中塗り塗料に関し、さらに詳しくはポリウレタンゲル粒子を含有する自動車用水系中塗り塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車の溶剤系塗料を用いる塗装システムは、錆止めを目的とする電着塗装、小石などが当たった際の衝撃を緩和させる中塗り塗装および着色や艶出しを表現する上塗り塗装(ベース塗装やクリアー塗装)の構成体である。この場合、各塗装工程に乾燥工程(焼き付け)が必要である。例えば、電着塗装(錆止め)→焼付け工程→中塗り塗装→焼付け工程→ベース塗装→プレ乾燥工程→上塗り塗装(クリヤー塗層)→焼付け工程の如くである。
【0003】
近年、大気汚染防止法改正(2006年4月施行)で、自動車塗装の際に使用するトルエン、キシレンなどの揮発性有機溶剤(VOC)の排出規制の強化に加え、塗装焼付けでのエネルギー消費による地球温暖化の原因であるCO2排出量を低減させる環境対応型の塗装システム・環境対応型の塗料の開発が課題となっている。
【0004】
現行の塗装システムは、中塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程→ベース塗装(溶剤型塗料)→予備乾燥工程→上塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程である。環境対応型塗料の考え方は、様々なシステムがあり、例えば、
1.中塗り塗装(溶剤型塗料)→予備乾燥工程→ベース塗装(溶剤型塗料)→予備乾燥工程→上塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程
2.中塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程→ベース塗装(水系型塗料)→予備乾燥工程→上塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程
3.中塗り塗装(水系型塗料)→焼付け工程→ベース塗装(水系型塗料)→予備乾燥工程→上塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程
などが提案されている。
【0005】
例示した上記システム1は、焼付け工程の削減によりCO2排出量を低減する考えであり、システム2は、ベース塗料を水性化塗料に代替することでVOCの排出量を低減する考えであり、さらにシステム3は、中塗り塗料とベース塗装を水性化塗料に代替することでVOCの排出量を考慮したものである。上塗り塗料(クリアー塗装)は、銀面調に仕上げなければならないために溶剤型塗料で塗装するケースが多い。
【0006】
ポリウレタンを主成分とする塗料に適切な添加物を適量添加することにより、塗装加工適性が良好で、外観も平滑性が確保できる手法が提案されているが、この場合には1液型ポリウレタン塗料であるのために、形成される塗膜には耐久性の問題がある(特許文献1)。
【0007】
また、水酸基および酸基含有ポリエステル樹脂、アミノ樹脂および脂環式エポキシ化合物からなる水系塗料を用いる塗装システムを提案しているが、電着塗装形成層との密着性、耐黄変性、耐候性および耐加水分解性にやや劣るといった問題がある(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開平5−5080号公報
【特許文献2】特開平5−98209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、前記の提案技術では、前記した全ての機能を満足しているわけではない。そのうえ、従来よりもさらに高性能で環境に優しい自動車用中塗り塗料が求められている。
【0010】
従って、本発明の目的は、ポリウレタンゲル粒子を含有する自動車用水系中塗り塗料に設計することで、塗膜の耐チッピング性能を向上させ、さらには下地(電着層)との密着性や下地隠蔽性(面平滑性)、耐黄変性および耐候性などの諸物性や自動車用中塗り塗料としての塗装適性が優れることに加え、塗装の際に使用する有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)の排出量の削減や焼付け工程の低減によるCO2排出量の削減を考慮した環境対応型の自動車用水系中塗り塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(以下「粒子A」と云う場合がある)と、該粒子Aの表面を被覆している、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(以下「粒子B」と云う場合がある)とからなるポリウレタンゲル粒子(以下「粒子C」と云う場合がある)を含有してなることを特徴とする自動車用水系中塗り塗料を提供する。
【0012】
上記本発明においては、粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであること;粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていることが好ましい。
【0013】
また、上記本発明においては、粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲であること;粒子Cの下記式で示される円形度が、0.9〜1.0の範囲であること;
円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長
粒子Cの圧縮強度が、0.01〜50MPaの範囲であり、回復率が60〜100%の範囲であること;粒子Cの熱軟化点温度が、200℃以上であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明においては、さらに、水系樹脂と、水系架橋剤とを含み、前記水系樹脂が、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、変性ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、変性エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、変性オレフィン系樹脂、アルキッド系樹脂およびビニル変性アルキッド系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、前記水系架橋剤が、ポリイソシアネート(ブロック型を含む)架橋剤、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤および無機架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤であること;ポリウレタンゲル粒子(粒子C)の含有量が、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記本発明で使用する粒子Cが、円形度が高く均一な粒子径であり、かつ機械強度、耐屈曲性、耐熱性、低温特性、耐摩耗性、耐薬品性に優れており、自動車用水系中塗り塗料として特に必要とされる耐チッピング性に対して弾性、変形回復性が付与でき、さらに耐溶剤性、耐水性かつ粒度分布の狭く真球状であることから、該粒子Cを自動車用水系中塗り塗料の成分として使用すること、および水系樹脂や水系架橋剤を併用することで、前記従来技術の課題が解決されることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用する粒子Cおいては、粒子Aを被覆している前記粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであること、前記粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていることが好ましく、また、前記粒子Cは、その粒子径が0.5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0017】
さらに、粒子Cは、[円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長]で示される円形度が0.9〜1.0であることが好ましい。ここで円形度は、株式会社セイシン企業の粒子形状画像解析装置PITA−1により上記式で算出されるものであり、円形度を円相当径(実際に撮像された周囲長と同じ投影面積を持つ真円の直径)から算出された周囲長を実際に撮像された粒子の周囲長で割った値として定義し、真円で1になり、形状が複雑になるほど小さい値となる。このため、円形度は0.9以上の極めて球状性が高い粒子が好ましく、粒子を水などに分散した分散体は、電荷的反発により、極めて安定的に分散しており、製品に使用した際には分散安定性、増粘効果を有する。なお、円形度が0.9より小さい粒子Cの場合には球形でなくなり、安定的な分散性を喪失するとともに、該粒子Cを含む自動車用水系中塗り塗料は塗装適性の低下や塗膜面の平滑性に不具合が生じる。
【0018】
さらに、粒子Cの圧縮強度は0.01から50MPaであり、回復率が60から100%の範囲であることが好ましい。圧縮強度において、粒子Cは、粒子Aが粒子Bによって被覆されたポリウレタンゲル粒子であることから、0.01MPa以上で十分なさらさら感を得ることができ、塗膜強度、環境対応性(耐光性、耐熱性、耐水性)の観点から粒子Cの圧縮強度は50MPa以下が好ましい。
【0019】
さらに、粒子Cの回復率は、圧力により変形した場合、力が解放されると同時に、元の形状に復元することが求められ、粒子Cの弾性、変形回復性があることで耐チッピング性が向上することから、60から100%の範囲であることが好ましい。ここで圧縮強度および回復率とは、樹脂粒子を株式会社島津製作所の微小圧縮試験機MCT−W500にて圧縮試験を行った場合に、粒子径に対して10%変形した時の荷重と粒子径から式[圧縮強度(MPa)=2.8×荷重(N)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}]によって算出される値である。
【0020】
さらに、粒子Cの回復率は、粒子に50mNの圧力をかけ、変位した距離(L1)と圧力を解放した時に変位した距離(L2)から式[回復率(%)=L2/L1×100]によって計算される値である。なお、粒子Cの圧縮強度および回復率は、粒子Aの構成成分であるポリイソシアネートおよび分子内に活性水素含有基を有する化合物の種類と配合量を制御することにより調節できる。
【0021】
さらに、粒子Cの熱軟化点は、200℃以上であることが好ましい。熱軟化点が低いと粒子Cを含む自動車用水系中塗り塗料組成物を焼付け工程する際に140℃〜180℃環境下30分程度で加工するため、高温で粒子Cが溶融するなどの不具合が起こることがある。粒子Cの熱軟化点は熱機械分析装置(TMA、リガク(株))を用い、粒子と同じ樹脂組成のシートを作製し測定を行った。
【0022】
以上の粒子Cは、その原料であるポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物を、後述のポリウレアコロイド溶液(粒子Bの分散液)を分散剤として、不活性溶媒中に乳化分散させて重合することで得られる。この際、上記ポリウレアコロイド溶液が、原料であるポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物とを不活性溶媒中に容易に粒子状に乳化すること、およびこの状態でポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物とを重合反応して、粒子Aを生成し、生成した粒子Aの周囲には、上記ポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが均一に付着しており、粒子Cを分散溶媒から分離した状態において、粒子Aが上記粒子Bによって均一に被覆されている。
【0023】
さらに、従来の粒子AまたはCの合成過程においては、通常著しい粘度上昇が発生するが、ポリウレアコロイド溶液の存在下に上記粒子Aを合成すると、合成過程において重合液の著しい粘度上昇は発生せず、生成した粒子Cが凝集することなく、優れた分散安定性を維持するという特徴がある。この作用は従来公知の有機系乳化剤や分散安定剤とは根本的に異なる作用である。
【0024】
本発明で使用する粒子Cは上記方法によって得られるが、好ましい方法は、ポリウレアコロイド溶液を、撹拌機や乳化機付きのジャケット式合成釜中の不活性溶媒中に仕込み、この中に少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物を不活性溶媒溶液に添加および乳化し、これらの合成原料を反応させて粒子Cを合成する方法や、少なくとも一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物を夫々別個に、ポリウレアコロイド溶液の存在下に不活性溶媒中に乳化させ、これらを反応させる方法などが挙げられる。
【0025】
上記合成方法における合成温度は特に限定されないが、好ましい温度は40℃〜140℃である。また、合成時に使用するポリウレアコロイド溶液は、その固形分としての使用量は、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物夫々100質量部当たり0.01質量部以上を使用することができ、好ましくは0.1〜20質量部である。使用量が0.01質量部未満では生成する粒子Cの安定性が不十分で、合成過程で粒子Aの大きい凝集塊が発生し、目的とする粒子Cの分散体が得難い。一方、使用量が20質量部を越えると、ポリウレタンの原料の乳化性には問題はなく、粒子Cの分散体は製造することができるが、乳化剤としての作用として過剰な量であり特に利点はない。
【0026】
ポリイソシアネートと分子内に活性水素含有基を有する化合物の不活性溶媒中における濃度は、低い程小さい粒径の粒子Cが得られ易いが、生産性から好ましい濃度は20〜70質量部である。
【0027】
粒子Aの合成に使用される分子内に活性水素含有基を有する化合物としてのポリオールとしては、好ましくはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、分子内に活性水素含有基を有する化合物としてのポリアミンとしてはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジアミン、高分子ポリアミンなどが使用できるが、これらは特に限定されない。以下に使用するそれぞれの化合物について説明する。
【0028】
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどの化合物が挙げられる。
【0029】
また、3官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または、複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールのジオールおよび/または3官能以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールなど、
【0031】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールのジオールおよび/または3官能以上の水酸基を有するポリエステルポリオールなど、
【0032】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールおよび/またはポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどのジオールおよび/または3官能基以上の水酸基を有するポリラクトンポリオールなど、
(4)ポリカーボネートポリオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのジオールおよび/または3官能以上の水酸基を有するポリカーボネートポリオールなど、
【0033】
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物などのジオールおよび/または3官能以上の水酸基を有するポリオレフィンポリオールなど、
(6)水素添加ダイマーポリオール、ヒマシポリオールなどのジオールおよび/または3官能以上の水酸基を有する水素添加ダイマーポリオールなど、
(7)ポリメタクリレートポリオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなど、および3官能以上の水酸基を有するアクリル系ポリオールが挙げられる。
【0034】
これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、ポリイソシアネートと反応するものは全て使用可能であり、通常数平均分子量(末端定量法で測定した水酸基価による換算)は500〜2,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールしては、活性水素が2個以上のポリオールが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素含有基を有するポリオールである。
【0035】
前記粒子Aの合成に使用するポリイソシアネートとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネートとして好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDIおよび水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0036】
また、これらの化合物をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもので従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0037】
これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0038】


【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】
上記のポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物の種類、使用量および使用比率は、得られる粒子Cの使用目的によって決定されるが、いずれか一方の成分が3官能以上であることが必要である。例えば、ポリイソシアネートが2官能である場合には、活性水素含有基を有する化合物が3官能以上であり、また、活性水素含有基を有する化合物が2官能である場合には、3官能以上ポリイソシアネートが必要であり、使用目的に応じて使用する官能基数を使い分ける。勿論、全ての成分が3官能以上であってもよい。また、NCO/OH比は、使用する前記原料化合物と得られる粒子Cに要求される性能によって決定されるが、好ましくは0.5〜1.2の範囲である。
【0046】
上記粒子Cの合成反応に使用し、生成する粒子Cの分散体の連続相を形成する不活性溶媒は、生成する粒子Aに対して実質的に非溶媒でありかつ活性水素を有しないものである。その例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられ、これらの不活性溶媒は、該不活性溶媒と合成された粒子Cの分離工程の生産性の点からは150℃以下の沸点を有するものが好ましい。前記粒子Aの合成に際しては公知の触媒を使用すれば低温でもよいが、作業面から40℃以上の反応温度が好ましい。
【0047】
上記粒子Aの合成時に乳化剤として使用するポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が好ましくは0.01μm〜1.0μmの粒子であり、かかるポリウレアコロイド溶液は、例えば、非水溶媒中で、油脂変性ポリオールとポリイソシアネート(またはこれらの化合物からなる末端NCOプレポリマー)とポリアミンとの反応で得られる。
【0048】
この反応では、反応が進むにつれて、ウレア結合同士の水素結合により、溶媒中に不溶解のウレアドメインが形成され、同時に油脂変性ポリオール鎖が溶媒中で溶媒和されることにより、非溶解性のウレアドメインの凝集などによる粒子Bの巨大化が防止され、安定なポリウレアコロイド溶液が容易に得られる。
【0049】
さらに、使用する油脂変性ポリオールが、非水溶媒中での結晶性が少なく、反応が進むにつれて生じる高分子化の過程でも、溶媒中で油脂変性ポリオールを主体とするポリマー鎖がある程度自由に動き得るために、非溶解性結晶部分と溶解性非結晶部分の分離が容易に行われ、ウレア結合同士の水素結合による非溶解性結晶部分を粒子Bの中心とするウレアドメインを形成し、その周囲に溶媒和されたポリマー鎖が規則正しく外向きに配向される。これは従来のミセル下に重合することにより得られる公知のコロイド溶液の製造方法における界面活性剤とは根本的に異なる作用である。
【0050】
上記ポリウレアコロイド溶液の製造方法をさらに具体的に説明する。先ず、最初に油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとを非水溶媒中または無溶媒で反応させ、NCO基を有するプレポリマーを合成する。次にこのプレポリマーを撹拌機付きのジャケット式合成釜に仕込み、濃度が5〜70質量%になるように非水系溶媒を添加して濃度を調整する。この溶液を撹拌しながら、予め1〜20質量%の濃度に調整したポリアミンの溶液を徐々に添加し反応を行い、ポリウレア化反応においてポリウレアコロイド溶液を製造する。
【0051】
ポリアミンの添加方法は、上記の方法の他にポリアミン溶液に前記プレポリマーまたはその溶液を添加する方法でもよい。ポリマー合成のための温度は特に限定されないが、好ましい温度は20〜120℃である。ポリマー合成のための反応濃度、温度、撹拌機の形態、撹拌力、ポリアミン溶液およびプレポリマーまたはその溶液の添加速度などは特に限定されないが、ポリアミンとプレポリマーのイソシアネート基との反応は速いので、急激な反応が行われないように、反応を制御することが好ましい。
【0052】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオールは、官能基が2個以下のポリオールであって、好ましい分子量は700〜3,000であるが、これに限定されない。油脂変性ポリオールの具体例としては、例えば、各種の油脂を低級アルコールやグリコールを用いてアルコリシス化する方法、油脂を部分鹸化する方法、水酸基含有脂肪酸をグリコールによりエステル化する方法などによって、油脂に約2個以下の水酸基を含有させたものが好ましく、上記の水酸基含有脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。
【0053】
油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、1<NCO/OH≦2の条件で行い、溶媒和されるプレポリマー鎖の分子量をコントロールする。このように合成されるプレポリマーの分子量は、特に限定されないが、好ましい範囲は約500〜15,000である。上記で使用されるポリイソシアネートとしては、公知のポリイソシアネートの全てが挙げられる。特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート、水添加TDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、水添XDIなどの脂肪族または脂環族系ジイソシアネートである。
【0054】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する非水系溶媒としては、使用原料である油脂変性ポリオール、ジイソシアネートおよびポリアミンを溶解するもので、活性水素を有さない全ての非水系溶媒を使用することができる。特に好ましいものはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられる。なお、本発明において「溶解」とは常温および高温下での溶解の両方を包含する。
【0055】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用するポリアミンとして、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族系ポリアミンおよびヒドラジンなどが挙げられる。短鎖ジアミンおよび脂肪族系ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、トリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンおよびポリオキシプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス−アミノプロピルピペラジン、チオ尿素、メチルイミノビスプロピルアミン、ノルボルナンジアミンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジンが挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、得られるプレポリマーの種類、使用量および使用比率は、使用する溶媒中での粒子Bの大きさおよび安定性などを制御する目的で決定される。すなわち、前記のポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒中で溶媒和されない結晶部分のウレアドメインと、そのウレアドメインから伸びて溶媒中で溶媒和されたポリマー鎖により形成されている。
【0057】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bのウレアドメインの大きさおよび溶媒和されたポリマー鎖の大きさと形態がポリウレアコロイド溶液の性質を左右する。このように、ウレアドメインと溶媒和されたポリマー鎖とで形成された粒子Bは、溶媒中で安定なポリウレアコロイド溶液であり、その溶液中の粒子Bのウレアドメインの粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、溶媒和されているポリマー鎖の1個の分子量は約500〜15,000であり、両者の質量比はウレアドメイン(ウレア結合またはポリアミン)/ポリマー鎖が0.5〜30の範囲が好ましい。ウレア結合の割合が上記範囲未満であると、得られる粒子B中の非溶媒和性ウレアドメインが形成されにくく、粒子Bが非水溶媒に溶解し易くなり、良好なポリウレアコロイド溶液が生成されない。一方、ウレア結合の割合が上記範囲を越えると、非溶媒和性ウレアドメインが大きくなり、得られるポリウレアコロイド溶液の安定性が低下し、粒子Bの凝集が生じ易くなる。
【0058】
本発明で使用する粒子Bの溶媒中における形態は、図1に示すようなものと想像される。この粒子Bの粒径の制御については、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインを含んだ粒子B全体の大きさと、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインのそれぞれの大きさについて、両者ともに制御が可能である。なお、先に記載の粒子Bの粒径は、ウレアドメイン部分を表現している。
【0059】
安定に制御されたポリウレアコロイド溶液を製造するためには、図1のように、溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が明瞭に相分離しているのが望ましく、そのためには溶媒和されるポリマー鎖と結晶部分のウレアドメインとが混在しないように製造することが必要である。このためには、合成過程で溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が分離しやすい合成条件が要求される。
【0060】
ポリウレアコロイド溶液の合成は、NCO基を有するプレポリマーの溶液およびポリアミンの溶液の両方の濃度が低く、一方の溶液に他方の溶液を添加する添加速度が遅いほど良好な結果が得られ、撹拌はプロペラミキサー撹拌で充分である。また、原料溶液の濃度が高い場合や溶液の添加速度が速い場合には、ホモジナイザーなどの使用による高剪断力の混合を行いながら合成することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類と、その溶媒に対するウレアドメインの溶解度により決まるが、好ましい温度は合成を制御し易い20〜120℃であるが、この温度範囲に特に限定されない。ウレアドメインの形成は合成過程で形成する方法、或いは高温で合成したものを冷却過程で形成する方法でもよい。
【0061】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bの重要な因子は、その表面基の種類および濃度であり、さらには不活性溶媒中における分散性と分散粒径である。すなわち、ポリウレアコロイド溶液の乳化剤としての作用は、W/O、O/O型の乳化剤であり、ポリイソシアネート、活性水素含有基を有する化合物の親水性、疎水性の強さと不活性溶媒との相関性で作用する。これらの条件を加味して検討を加えた結果として、ポリイソシアネート、活性水素含有基を有する化合物に対するポリウレアコロイド溶液の添加量の調整で、粒子Cの粒径をコントロールすることが可能であり、前記の範囲で添加量が多い程粒径は小さくなり、少ない程粒径が大きくなる。
【0062】
以上の如き原材料から得られた粒子Cの分散溶液から、常圧または減圧下で不活性溶媒を分離することによって、前記の粒子Cが得られる。粒子化に用いる装置としてスプレイドライヤー、濾過装置付き真空乾燥機、撹拌装置付真空乾燥機、棚式乾燥機など公知のものがいずれも使用でき、好ましい乾燥温度は不活性溶媒の蒸気圧、ゲル粒子の軟化温度、粒径などに影響されるが、好ましくは減圧下40〜130℃である。
【0063】
このようにして製造された粒子Cの粒径は、0.5μm〜100μmで円形度が0.9〜1.0の真球状である。粒径のコントロールは、ポリウレタンの組成が同一の場合、合成釜の乳化型式(プロペラ式、錨型式、ホモジナイザー、螺旋帯式など)および撹拌力の大小に左右されるが、特に不活性溶媒中のポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物の濃度、ポリウレアコロイド溶液の種類および添加量に影響される。ポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物を乳化するための機械的撹拌や剪断力は乳化の初期段階で決定され、これが強力な程分散体の粒径が小さくなる。その後の撹拌および剪断力は大きくは影響しない。かえってその力が強すぎると分散体同士の凝集を促進することになり好ましくない。
【0064】
また、本発明では、上記の粒子Cの製造に当たり、原料の少なくとも一部または全部に染料や顔料などの着色剤、アルミ、マイカ、パール、紫外線吸収および/または紫外線カット成分、酸化防止剤、安定剤、体質顔料などの各種添加剤を混合して、ポリウレタンの合成を行い種々の自動車用水系中塗り塗料用途に適した粒子Cを得ることも可能である。
【0065】
これらの粒子Cは、図2の電子顕微鏡写真(倍率500倍)に示すように、ほぼ完全に真球状の粒子であり、図3の想像図に示す如く個々の粒子Aの表面にはポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが付着或は被覆されており、かつ粒子Bが非粘着性と耐熱性に優れているため、該粒子Cを分散溶媒から単に除去するのみで極めて流動性に富んだ粒子Cとなり、粒子化に当たっては従来技術における如き煩雑かつコスト高な粉砕工程や分級操作を何ら要しないなどの種々の利点を有している。
【0066】
本発明の自動車用水系中塗り塗料は、上記の粒子Cを必須成分として含み、その他の従来公知の自動車用水系中塗り塗料成分と配合して得られる。本発明の塗料における粒子Cの含有量は、塗料全量中で0.01〜30質量%を占める割合が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。粒子Cの含有量が0.01質量%未満であると、粒子Cの特徴である変形回復性の効果が劣り、一方、上記含有量が30量%を超えるとスプレー塗装した際、プレ乾燥仕上がりの塗膜に凹凸が生じたり、下地密着性が低下する場合がある。
【0067】
本発明の塗料は自動車用水系中塗り塗料用の樹脂(被膜形成樹脂)を含むことが好ましい。被膜形成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、変性ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、変性エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、変性オレフィン系樹脂、アルキッド系樹脂、ビニル変性アルキッド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中では、後記の架橋剤によって架橋される反応基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など)を有する反応性樹脂を使用することが好ましい。本発明の塗料において、通常は塗料全体中で5〜70質量%の割合で使用することが好ましい。被膜形成樹脂の使用量が5質量%未満では、塗膜の成膜性、美粧性、下地密着性に劣り、一方、上記使用量が70質量%を超えると、塗料の粘度安定性に悪影響を及ぼし、さらにスプレー適性などの加工性が劣る。
【0068】
本発明の塗料は、上記被膜形成樹脂を架橋させる水系の架橋剤を含むことが好ましい。水系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート(ブロック型を含む)架橋剤、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、無機架橋剤など、その他、各種添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。架橋剤の使用量は前記被膜形成樹脂100質量部あたり1〜50質量部の割合で使用することが好ましい。架橋剤の使用量が1質量部未満では、塗膜の耐水性、耐候性、耐溶剤性(耐ガソリン性)に劣り、一方、上記使用量が50質量部を超えると、中塗り塗膜の耐チッピング性を低下させたり、塗膜が脆弱化する場合がある。
【0069】
本発明の塗料には、必要に応じて種々の添加剤を加えてもよい。酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上の併用が挙げられる。
【0070】
さらに顔料、有機微粒子、無機微粒子やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ナイロン微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子などが挙げられ、耐チッピング性や塗装適正が向上することができる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、有機顔料および無機顔料、アルミ顔料、マイカ、パールなどが挙げられ、意匠性が向上する。その他、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤などは、塗装環境と塗料性能に応じて添加するのが望ましい。
【0071】
本発明の塗料は、前記成分を水系媒体に溶解若しくは分散させて製造することができる。水系媒体としては、一般の水、脱イオン水などが挙げられ、さらに本発明の目的達成を妨げない範囲において、アルコールやグルコールなどに水溶性有機溶剤や界面活性剤なども含み得る。本発明の塗料中の全固形分は特に限定されないが、一般的には20〜70質量%である。
【0072】
本発明の塗料は、実質的にVOCを含まず、その使用に際してVOC排出量を著しく削減することができ、また、中塗り塗装後の焼付け工程を無くすことでCO2排出量を顕著に削減することができる。本発明の塗料は自動車の各種部材に対して、該部材表面をさび止め処理した後に、その表面の中塗り塗装用として有用である。例えば、電着塗装(さび止め)→中塗り塗装(水系型塗料)→予備乾燥工程→ベース塗装(水系型塗料)→予備乾燥工程→上塗り塗装(溶剤型塗料)→焼付け工程を有する塗装システムの中塗り塗料として有用である。塗装方法は従来公知の方法でよく、塗布厚みは10〜50μm程度である。
【実施例】
【0073】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
(ポリウレアコロイド溶液の作成)
[合成例1]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート47.3部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。この物の分子量は1,383である。
【0074】
上記のPP−1の40部と、n−オクタン60部を撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した、撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%のポリウレアコロイド溶液(固形分18.0%)(C−1)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
【0075】
[合成例2]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=1.1になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート26.0部を1時間掛けて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、4時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を0.36%含有するプレポリマー溶液(PP−2)を得た。この物の分子量は11,834である。
【0076】
上記のPP−2の20部とn−オクタン80部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記プレポリマー溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの1%溶液14.4部を8時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン/プレポリマー鎖)×100=1.44%のポリウレアコロイド溶液(固形分8.9%)(C−2)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
【0077】
(ポリウレタンゲル粒子Cの製造)
[合成例3]
平均分子量1,000のポリブチレンアジペート20部を60℃で溶解し、さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)7.3部を添加し均一に混合した。この物を予め1リットルのステンレス容器に準備した合成例1のポリウレアコロイド溶液(C−1)5.0部とn−オクタン25部の混合液の中に徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで分離もなく安定な乳化液であった。
【0078】


【0079】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了しポリウレタンゲル粒子(粒子C)の溶液を得た。この溶液を100Torrで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離し粒子C(1)を得た。このものは平均粒子径が5μmで円形度が0.92の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.35MPaで回復率は89%であった。
【0080】
[合成例4]
500ミリリットルのセパラブルフラスコに、ポリウレアコロイド溶液(C−2)4部とイソオクタン150部とを仕込み混合した。次にこの液をホモミキサーで混合しながら予め50℃に加温した平均分子量785の3官能のポリラクトンポリオール100部を徐々に添加して乳化させた。さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートアダクトポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネート24A−100、NC0%=23.5)68.3部を徐々に添加した。
【0081】

【0082】
次にホモミキサーを回転しながら、温度を80℃に上げ、3時間の反応後に反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.005部を加え、さらに4時間の反応を行ない、粒子Cの分散液を得た。この分散液から実施例1と同様にして粒子C(2)を得た。このものは平均粒子径が15μmで円形度が0.94の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.60MPaで回復率は92%であった。
【0083】
[合成例5]
撹拌機および還流冷却器を具備した1,000ミリリットルのセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート50部、エチルアクリレート35部、プロピレングリコールジアクリレート5部、エチレングリコールジメタクリレート10部およびベンゾイルパーオキサイド0.3部を仕込み、さらに、ポリビニルアルコール(GH−17、日本合成化学工業社製)の5質量%水溶液30部およびイオン交換水250部を添加し、ホモミキサーにて4,000〜6,000rpmで10分間分散処理し分散液(1)を調製した。さらに分散液(1)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃、5時間ラジカル重合した。得られたアクリレート系粒子分散液を脱水、洗浄、乾燥後、解砕、篩いを掛けアクリル微粒子(1)を得た。このものは平均粒子径が10μmの真球状の白色粉末状であった。
【0084】
(活性水素を含有するアクリル系樹脂の合成)
[合成例6]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、脱イオン水300部仕込み80℃にセットした。次にマンホールより、窒素雰囲気下で以下のモノマー乳化液を3時間かけて滴下した。モノマー乳化液は、アクリル酸ブチル195部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50部、スチレン150部およびアクリル酸5部を30%ニューコール707SF(界面活性剤、日本乳化剤(株)製)20.0部、10%ペルオキソ二硫酸アンモニウム19.0部、および水380部に予め乳化したものである。
【0085】
滴下終了後10%過硫酸アンモニウム1.0部を加え80℃にて2時間熟成を行い、その後25℃の冷却を行い10%ジメチルエタノールアミン水溶液でpH7.5に調整を行った。得られた活性水素を含有するアクリル樹脂組成物は固形分40.0%、酸価10mgKOH/g、水酸基価61mgKOH/g、平均粒径150nmであった。これをアクリル系樹脂NO.1とする。
【0086】
(活性水素を含有するエステル系樹脂の合成)
[合成例7]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、無水フタル酸22.6部、アジピン酸22.6部、トリメチロールプロパン20.4部、1,4−シクロヘキサンジメタノール16.3部およびネオペンチルグリコール12.3部を仕込み230℃まで昇温を行った。反応は200℃到達時点より3時間行った。180℃まで冷却後、無水トリメリット酸4.9部を添加して反応させ、ジメチルエタノールアミンで中和後水に溶解させた。得られた活性水素を含有するエステル系樹脂液はpH7.5、固形分40.0%、酸価36mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/gの水溶液の状態であった、これをエステル系樹脂No.1とする。
【0087】
(活性水素を含有するウレタン樹脂の合成)
[合成例8]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、親水基含有化合物成分としてジメチロールプロピオン酸10.72部、高分子ジオール成分として数平均分子量1000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール100.0部、鎖伸長剤(短鎖ジオール成分)として1,3−ブチレングリコール1.80部およびアセトン108.6部を加えた。
【0088】
続いてポリイソシアネート成分としてヘキサメチレンジイソシアネート50.4部を加えて80℃にてジブチルチンジラウレートを触媒として樹脂のNCO%が理論値となる迄反応を行った。次いで、固形分に対し40%となるイオン交換水として260.7部、中和剤としてトリエチルアミン8.10部を所定量加え、攪拌条件下で系内を均一になる迄乳化させた。得られたウレタン水分散体に少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基が共存する化合物としてアミノプロパノール3.00部、ポリアミンとしてイソホロンジアミン15.0部を各々等量の水で希釈し加え、ウレタン水分散体のNCO基と反応させた。反応は赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄行った(残NCO基は水と反応してNCO基がなくなることを考慮)。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収した。得られたウレタン樹脂組成物は固形分40.3%、酸価25mgKOH/g、水酸基価13mgKOH/g、平均粒径20nmであった。これをウレタン樹脂NO.1とする。
【0089】
(中塗り塗料の配合)
[実施例1]
合成例8で得られたウレタン樹脂(ウレタン樹脂NO.1)とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)が8対2(メラミン)となるような固形分比率で調整した後に、二酸化チタン分散顔料ペーストであるマスターファインカラー5765(大日精化工業(株)製)を塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が50%となる量と、粒子C(1)が塗料固形分中の粒子の比率が3%となるように配合した。さらにウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて40秒(20℃)、固形分47%の中塗り塗料を配合した。
【0090】
[実施例2]
合成例6で得られたアクリル樹脂NO.1とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)が8対2(メラミン)となるような固形分比率で調整した後に、二酸化チタン分散顔料ペーストであるマスターファインカラー5765(大日精化工業(株)製)を塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が50%となる量と、粒子C(2)が塗料固形分中の粒子の比率が2%となるように配合した。さらにウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて40秒(20℃)、固形分47%の中塗り塗料を配合した。
【0091】
[実施例3]
合成例7で得られたエステル樹脂NO.1とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)が8対2(メラミン)となるような固形分比率で調整した後に、二酸化チタン分散顔料ペーストであるマスターファインカラー5765(大日精化工業(株)製)を塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が50%となる量と、粒子C(2)が塗料固形分中の粒子の比率が3%となるように配合した。さらにウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて40秒(20℃)、固形分47%の中塗り塗料を配合した。
【0092】
[比較例1]
合成例6で得られたアクリル樹脂NO.1とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)が8対2(メラミン)となるような固形分比率で調整した後に、二酸化チタン分散顔料ペーストであるマスターファインカラー5765(大日精化工業(株)製)を塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が50%となるように配合した。さらにウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて40秒(20℃)、固形分47%の中塗り塗料を配合した。
【0093】
[比較例2]
合成例6で得られたアクリル樹脂NO.1とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)が8対2(メラミン)となるような固形分比率で調整した後に、二酸化チタン分散顔料ペーストであるマスターファインカラー5765(大日精化工業(株)製)を塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が50%となる量と、アクリル微粒子(1)が塗料固形分中の粒子の比率が3%となるように配合した。さらにウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて40秒(20℃)、固形分47%の中塗り塗料を配合した。
【0094】
<試験例>
前記の実施例および比較例の中塗り塗料より得られた中塗り塗膜、および本発明の中塗り層を含む自動車用複合塗膜の性能を以下の項目について試験し、表1、2の結果を得た。
【0095】
(中塗り塗膜の試験)
市販のカチオン電着塗装板上に中塗り塗料をエアースプレーにて30μmの乾燥膜厚となるように塗装し、予備乾燥(80℃、1分)後、140℃、30分焼付けを行い中塗り塗膜の評価をした。
【0096】
[塗膜外観]
実施例および比較例の中塗り塗料を前記の条件で塗装乾燥し、中塗り塗膜を得た。得られた中塗り塗膜を目視にて塗膜外観を評価した。
評価基準;
○=下地隠蔽性良好、滑らかな美塗膜表面であり、ブツ、ハジキ、粘着性がない。
×=下地隠蔽性不良、美塗膜表面でなく、ブツ、ハジキ、粘着性がある。
【0097】
[耐水性試験]
同様に、実施例および比較例の中塗り塗料を前記条件で塗装乾燥し、得られた中塗り塗膜の耐水性試験(煮沸状態で1時間浸漬)を行い、外観変化および密着性を確認した。
・耐水試験(外観)
評価基準;
○=白化、ブリスターなど、塗膜の状態変化が認められない。
△=一部、白化、ブリスターが確認できる。
×=白化、ブリスターが確認できる。
・耐水試験(密着)
【0098】
評価基準;
碁盤目試験(セロハンテープ剥離クロスカット法)にて
○=剥がれが発生しない。
△=一部、剥がれが発生する。
×=剥がれが発生する。
【0099】

【0100】
(総合積層塗膜としての評価)
市販のカチオン電着塗装板上に中塗り塗料をエアースプレーにて30μmの乾燥膜厚となるように塗装し、予備乾燥(80℃、1分)を行い、さらに後記のベース塗料をエアースプレーにて20μmの乾燥塗膜となる膜厚で塗後し予備乾燥(80℃、1分)し、さらに後記の上塗り塗料をスプレーにて40μmの乾燥塗膜となるよう塗装し140℃、30分焼付け工程を経て総合積層塗膜を得た。得られた総合積層塗膜の中塗り形成層についての評価をした。
【0101】
[ベース塗料の作成]
合成例5で得られたアクリル樹脂NO.1とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)を固形分比8対2の比率で混合したものに、塗料固形分中の顔料の比率(PWC)が10%となるように水性用アルミ顔料(NV=65%)を配合し、ウレタン会合型増粘剤、イオン交換水を用いて粘度調整を行い、フォードカップNO.4にて50秒(20℃)、固形分23%の水性メタリックベース塗料を作成した。
【0102】
[上塗り塗料の作成]
水酸基を含有するアクリル樹脂であるJDX−H2000(ジョンソンポリマー(株)製)、JDX−H2012(ジョンソンポリマー(株)製)の質量比(1:1)の混合物とイミノ基含有メラミン架橋剤であるサイメル 211(日本サイテックインダストリーズ(株)製)と固形分比(アクリル対メラミン)7対3の比率で混合し、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびキシレンの質量比(1:1)のシンナーにて希釈を行い、フォードカップNO.4にて30秒(20℃)、固形分60%のクリヤー塗料を作成した。
【0103】
[耐候性試験]
前記条件にて積層塗料塗膜形成後、耐候性試験を行い、キセノンウェザオメーターにて耐候促進試験を行い、塗膜の外観変化を確認した。
耐候性試験条件;キセノンウェザオメーターの照射条件は、照度(50〜150w/m2、300〜400nm)、ブラックパネル温度90℃、照射時間8週間(2000kj)。
耐光性試験(外観)評価基準;
○=変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがない。
×=変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがある。
【0104】
[耐チッピング試験]
積層塗膜塗膜作成後、飛石試験機(スガ試験機(株)製、JA−400LA)を使用し、−20℃条件下にて7号花崗岩砕石100g、35cm距離、3.0kgf/cm2の空気圧、塗膜への進入角45℃で試験を行った。試験後の塗膜をセロハンテープ剥離試験を行い、塗膜の剥がれ、破壊場所を特定した。
耐チッピング試験評価基準:
○=中塗り層に起因した剥がれ、塗膜破壊が発生しない。
×=中塗り層に起因した剥がれ、塗膜破壊が発生した。
【0105】
[耐熱性]
熱機械分析(TMA)測定により、積層塗膜の熱挙動(軟化温度)を確認した。
【0106】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は下記の効果を奏する。
1.粒径のコントロールされたポリウレタンゲル粒子Cを含む自動車用水系中塗り塗料の提供が可能である。
2.得られたポリウレタンゲル粒子Cは真球状(円形度が0.9〜1.0)であり、該ポリウレタンゲル粒子Cの表面にはポリウレアコロイド溶液から析出したポリウレアコロイド粒子Bが均一に付着または被覆されているため、該粒子Cは極めて流動性に優れ、取り扱いが容易であり、自動車用水系中塗り塗料として種々の応用が可能である。
3.以上の効果から、本発明のポリウレタンゲル粒子Cを含む塗料は、耐チッピング性能、下地(電着層)との密着性や下地隠蔽性(面平滑性)、耐黄変性および耐候性などの諸物性や自動車用中塗り層形成塗料としての塗装適性が優れることに加え、自動車塗装の際に使用する有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)の排出削減や焼付け工程低減によるCO2排出削減を考慮した環境対応型の自動車用水系中塗り塗料として有益である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明で使用するポリウレアコロイド溶液中のポリウレアコロイド粒子Bの断面の想像図。
【図2】本発明で使用するポリウレタンゲル粒子Cの写真。
【図3】本発明で使用するポリウレタンゲル粒子Cの断面の想像図。
【符号の説明】
【0109】
1:溶媒和されているポリマー鎖(油脂セグメント)
2:非溶媒和部分のウレアドメイン
3:ポリウレタンゲル粒子A
4:ポリウレアコロイド粒子B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(粒子A)と、該粒子Aの表面を被覆している、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(粒子B)とからなるポリウレタンゲル粒子(粒子C)を含有してなることを特徴とする自動車用水系中塗り塗料。
【請求項2】
粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmである請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項3】
粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項4】
粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項5】
粒子Cの下記式で示される円形度が、0.9〜1.0の範囲である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長
【請求項6】
粒子Cの圧縮強度が、0.01〜50MPaの範囲であり、回復率が60〜100%の範囲である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項7】
粒子Cの熱軟化点温度が、200℃以上である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項8】
さらに、水系樹脂と、水系架橋剤とを含み、前記水系樹脂が、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、変性ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、変性エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、変性オレフィン系樹脂、アルキッド系樹脂およびビニル変性アルキッド系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、前記水系架橋剤が、ポリイソシアネート(ブロック型を含む)架橋剤、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤および無機架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。
【請求項9】
ポリウレタンゲル粒子(粒子C)の含有量が、0.01〜30質量%である請求項1に記載の自動車用水系中塗り塗料。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−1711(P2009−1711A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165068(P2007−165068)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】