説明

自動車用水系塗料

【課題】メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成できる自動車用水系塗料及び塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】水酸基含有樹脂、粘性調整剤及び疎水性溶媒を含有する自動車用水系塗料であって、該粘性調整剤が、(メタ)アクリル酸(塩)、下記一般式(1)
【化1】


[式中、Rは水素原子又はメチルを表し、R及びRは水素原子、メチル又はエチルを表し、Rは炭素数8〜24の炭化水素基を表し、nは3〜60の整数である]
で示されるモノマー、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート及び重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有するモノマーを含有するモノマー混合物の共重合体である自動車用水系塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用水系塗料及びこれを用いる塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の塗装は、一般に、下塗り塗料として電着塗料を塗装した後、中塗り塗料を塗装し、さらに上塗り塗料を塗装することにより行なわれる。
【0003】
上塗り塗料の塗装方法としては、例えば、1種類の上塗り塗料を塗装し、これを加熱硬化させる1コート1ベーク法;ベースコート塗料及びクリヤーコート塗料からなる2種類の上塗り塗料を用い、まずベースコート塗料を塗装し、これを硬化させることなく、その上にクリヤーコート塗料を塗装し、両塗膜を同時に加熱硬化させる2コート1ベーク法等を挙げることができる。このうち、2コート1ベーク法による塗装においては、ベースコート塗料として、アルミニウムフレーク、雲母等の光輝性顔料を含有するベースコート塗料を用いることにより、塗膜外観を向上させることが広く行なわれている。
【0004】
光輝性顔料は、キラキラとした輝きを持つとともに、見る方向によって色調が変化し、独特の意匠性を呈するものである。このうち、見る方向によって色調が変化するという特徴はフリップフロップ性と呼ばれ、この色調の変化が大きい方がフリップフロップ性が高く、光輝性顔料を含有する塗膜として優れた外観を呈する。
【0005】
また、近年、環境保全及び省資源の観点から、塗料の水性化が進められており、このため、光輝性顔料を含有する塗料においても、優れた光輝感を有する塗膜を形成し得る水性ベースコート塗料の開発が積極的に行なわれている。
【0006】
しかしながら、水性ベースコート塗料から形成される塗膜には、有機溶剤型ベースコート塗料を用いて形成される塗膜に比べ、フリップフロップ性や平滑性が劣ったり、メタリックムラが生じたりする場合があるなどの問題がある。
【0007】
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1には、水性ベースコート塗料に架橋重合体の微粒子を含有せしめることにより、フリップフロップ性を向上させる方法が開示されているが、この方法では、形成塗膜にメタリックムラが生じ易いという問題がある。
【0008】
また、特許文献2には、水性ベースコート塗料中に、増粘剤として、モンモリロナイト及び/又はその有機複合体とシリカ粉末を組み合わせて配合することにより、ヨリ、タレ、メタリックムラ等を抑制する方法が開示されているが、この方法では、塗料のフロー性(レベリング性)低下に起因すると考えられる塗面の平滑性低下が生じ易いという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献3には、特定の長鎖のモノマーを共重合させることにより得られる水分散体を使用することによって、塗装条件、特に湿度の変化によって生じるタレ、ムラ等の塗膜欠陥を抑制する方法が開示されているが、この方法においても、塗料のフロー性低下に起因すると考えられる塗面の平滑性の低下が生じ易いという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平2−97564号公報
【特許文献2】特開平5−140485号公報
【特許文献3】特開2001−104878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成し得る自動車用水系塗料及びそれを用いる塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、水酸基含有樹脂、特定の構造を有する粘性調整剤及び疎水性溶媒を含有する水系塗料が、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして、本発明は、水酸基含有樹脂(A)、粘性調整剤(B)及び疎水性溶媒(C)を含んでなる自動車用水系塗料であって、粘性調整剤(B)が、重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の合計質量を基準にして、(b−1)(メタ)アクリル酸(塩) 1〜50質量%、(b−2)下記一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
式中、
は水素原子又はメチルを表し、
及びRは水素原子、メチル又はエチルを表し、
は炭素数8〜24の炭化水素基を表し、
nは3〜60の整数である、
で表される重合性不飽和モノマー 5〜60質量%、(b−3)アルキル部分の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート 5〜60質量%及び(b−4)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.05〜5質量%を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体であることを特徴とする自動車用水系塗料を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従う自動車用水系塗料を使用することにより、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成せしめることができる。
【0017】
以下、本発明の自動車用水系塗料及びその塗装方法についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
水酸基含有樹脂(A)
本発明の水系塗料に用いられる水酸基含有樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂であり、具体的には、例えば、水酸基を含有し且つ必要に応じてさらにカルボキシル基などの酸基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0019】
水酸基含有樹脂(A)は、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜180mgKOH/g、さらに特に5〜160mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好まし
い。また、水酸基含有樹脂(A)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、一般に1〜200mgKOH/g、特に5〜150mgKOH/g、さらに特に10〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0020】
水酸基含有樹脂(A)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することが好ましく、なかでも、塗膜の平滑性及びフリップフロップ性向上の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を併用することがより好ましい。併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)との合計量を基準にして、前者が20〜80質量%、特に30〜70質量%の範囲内、そして後者が80〜20質量%、特に70〜30質量%であることが好ましい。
【0021】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、以下に述べる水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)を含む重合性不飽和モノマー成分を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により、(共)重合せしめることによって製造することができる。
【0022】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ
素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’ −ヒドロキシ−5’ −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称であり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルとメタクリロイルの総称である。
【0025】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、アミド基を有することが好ましい。該アミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの少なくとも一部として、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより製造することができる。
【0026】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、その一部を、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂と置き換えてもよい。
【0027】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)の使用割合は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、一般に1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは3〜30質量%の範囲内とすることができる。
【0028】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に5〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
【0029】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に5〜150mgKOH/g、さらに特に10〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
【0030】
さらに、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の平滑性等の観点から、一般に3,000〜5,000,000、特に4,000〜500,000、さらに特に6,000〜200,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好適である。
【0031】
なお、本明細書において、「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、テトラヒドロフランを溶媒として測定した、分子量既知のポリスチレンを標準物質とする換算値である。
【0032】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、得られる塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、(a1−2)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.1〜30質量%、及び(a1−3)重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー 70〜99.9質量%を共重合することにより得られる共重合体(I)のコアと、(a1−1)水酸基含有重合性不飽和モノマー 1〜40質量%、(a1−4)疎水性重合性不飽和モノマー 5〜50質量%ならびに(a1−5)上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー 10〜94質量%を共重合することにより得られる共重合体(II)のシェルを構成成分とするコア/シェル型複層構造を有し、共重合体(I)/共重合体(II)固形分質量比が10/90〜90/10の範囲内にある水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)を使用することが好ましい。
【0033】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチ
ロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレ−ト、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)の使用割合は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(a1−3)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜10質量%、さらに特に1〜7質量%の範囲内であることが好適である。
【0035】
なかでも、得られる塗膜のフリップフロップ性及び平滑性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、上記重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)がアミド基を有することが好ましく、このような重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0036】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)がアミド基を有する場合、該モノマーの使用割合は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(a1−3)の合計質量を基準として、一般に0.1〜25質量%、特に0.5〜9質量%、さらに特に1〜4質量%の範囲内であることが好適である。
【0037】
また、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(a1−3)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)と共重合可能な重合性不飽和モノマーであり、1分子中に1個の重合性不飽和基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などを含有する化合物が包含される。
【0038】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(a1−3)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート
などの芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)としては、前述したように、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)の使用割合は、モノマー(a1−1)、モノマー(a1−4)及び(a1−5)の合計量を基準として、一般に1〜40質量%、特に4〜25質量%、さらに特に7〜19質量%の範囲内であることが好適である。
【0041】
また、疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)には、炭素数が6以上の直鎖状、分岐状もしくは環状で飽和もしくは不飽和の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマーが包含され、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマー(a1−4)としては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)
アクリレ−ト、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
また、疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)としては、得られる塗膜の鮮映性の観点から、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いることが好ましく、スチレンを用いることがさらに好ましい。
【0043】
疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)の使用割合は、得られる塗膜の平滑性の観点から、前記モノマー(a1−1)、(a1−4)及び(a1−5)の合計量を基準として、一般に5〜50質量%、特に7〜40質量%、さらに特に9〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0044】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー(a1−5)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a1−6)等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー(a1−5)としては、その成分の少なくとも一部として上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a1−6)を含むことが、メタリックムラが抑制され、優れた塗膜外観を有する塗膜が得られるため、特に好適である。
【0046】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a1−6)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、なかでも、アクリル酸及びメタクリル酸が特に好適である。
【0047】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a1−6)の使用割合は、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)の水性媒体中における安定性と得られる塗膜の外観及び耐水性の観点から、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)、疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)ならびに水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー(a1−5)の合計質量を基準として、一般に1〜40質量%、特に4〜25質量%、さらに特に7〜19質量%の範囲内であることが好適である。
【0048】
水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)は、得られる塗膜の耐水性、フリップフロップ性、平滑性等の観点から、一般に1〜70mgKOH/g、特に2〜50mgKOH/g、さらに特に5〜30mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
【0049】
また、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)がカルボキシル基等の酸基を有する場合、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性、フリップフロップ性、平滑性等の観点か
ら、一般に5〜90mgKOH/g、特に8〜50mgKOH/g、さらに特に10〜35mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
【0050】
また、得られる塗膜のフリップフロップ性及び平滑性の向上並びにメタリックムラ防止の観点から、前記モノマー(a1−1)、(a1−4)及び(a1−5)として、重合性不飽和基を1分子中に1個のみ有する重合性不飽和モノマーを使用し、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)のシェルを未架橋型とすることが好ましい。
【0051】
水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)は、例えば、(a1−2)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.1〜30質量%、特に0.5〜10質量%、さらに特に1〜7質量%及び(a1−3)重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー 70〜99.9質量%、特に90〜99.5質量%、さらに特に93〜99質量%を含有するモノマー混合物(I)を乳化重合し、得られるエマルション中に、(a1−1)水酸基含有重合性不飽和モノマー 1〜40質量%、特に4〜25質量%、さらに特に7〜19質量%、(a1−4)疎水性重合性不飽和モノマー 5〜50質量%、特に7〜40質量%、さらに特に9〜30質量%ならびに(a1−5)上記モノマー(a1−1)及び(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー 10〜94質量%、特に35〜89質量%、さらに特に51〜84質量%を含有するモノマー混合物(II)を添加し、さらに乳化重合させることによって製造することができる。
【0052】
モノマー混合物(I)の乳化重合は、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば、乳化剤の存在下で重合開始剤を使用して行うことができる。
【0053】
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、また、該ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0054】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもでき、なかでも反応性アニオン性乳化剤を使用することが好適である。
【0055】
上記反応性アニオン性乳化剤としては、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。なかでも、得られる塗膜の耐水性の観点から、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「SR−1025A」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0056】
上記乳化剤は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、通常0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%の範囲内で使用することができる。
【0057】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、 tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用し、レドックス開始剤としてもよい。
【0058】
上記重合開始剤の使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、一般に0.1〜5質量%、特に0.2〜3質量%の範囲内が好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類や量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0059】
水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)は、上記のようにして得られる共重合体(I)を含むエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)、疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)ならびに上記モノマー(a1−1)及び(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー(a1−5)を含むモノマー混合物(II)を添加し、さらに重合させることによって得ることができる。
【0060】
モノマー混合物(II)は、必要に応じて、前記の如き重合開始剤及び乳化剤、さらに連鎖移動剤、還元剤等の成分を適宜含有することができる。
【0061】
また、上記モノマー混合物(II)は、そのまま滴下することもできるが、モノマー混合物(II)を水性媒体に分散し、得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0062】
上記モノマー混合物(II)の重合方法としては、例えば、乳化されていてもよいモノマー混合物(II)を一括で又は徐々に滴下して上記樹脂分散液に添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0063】
上記の如くして得られる水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(a1−3)を含有するモノマー混合物(I)から形成される共重合体(I)をコアとし、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)、疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)ならびに上記モノマー(a1−1)及び(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー(a1−5)を含有するモノマー混合物(II)から形成される共重合体(II)をシェルとするコア/シェル型複層構造を
有することができる。
【0064】
上記コア/シェル型複層構造の樹脂において、上記共重合体(I)と共重合体(II)の割合は、得られる塗膜のフリップフロップ性及びメタリックムラの観点から、共重合体(I)/共重合体(II)の固形分質量比で、一般に10/90〜90/10、特に50/50〜85/15、さらに特に65/35〜80/20の範囲内にあることが好適である。
【0065】
上記のようにして得られる水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)は、一般に10〜1000nm、特に20〜500nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0066】
なお、本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0067】
本発明においては、得られる水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)の粒子の機械的安定性を向上させるために、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)が有するカルボキシル基等の酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられ、これらの中和剤は、中和後の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0068】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)
本発明の自動車用水系塗料において、水酸基含有樹脂(A)として、水酸基含有ポリエステル樹脂を使用することにより、得られる塗膜の平滑性を向上させることができる。
【0069】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、通常、酸成分(a2−1)とアルコ−ル成分(a2−2)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0070】
上記酸成分(a2−1)としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができ、例えば、脂肪族多塩基酸(a2−1−1)、脂環族多塩基酸(a2−1−2)、芳香族多塩基酸(a2−1−3)等を使用することができる。
【0071】
上記脂肪族多塩基酸(a2−1−1)には、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物などが包含され、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸(a2−1−1)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
上記脂肪族多塩基酸(a2−1−1)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0073】
また、前記脂環族多塩基酸(a2−1−2)には、1分子中に少なくとも1個の脂環式
構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物などが包含され、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸(a2−1−2)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
上記脂環族多塩基酸(a2−1−2)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0075】
上記芳香族多塩基酸(a2−1−3)には、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物が包含され、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸(a2−1−3)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記芳香族多塩基酸(a2−1−3)としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸などを好適に使用することができる。
【0077】
また、前記脂肪族多塩基酸(a2−1−1)、脂環族多塩基酸(a2−1−2)及び芳香族多塩基酸(a2−1−3)以外の前記酸成分(a2−1)としては、特に制限されるものではなく、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。上記酸成分(a2−1)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0078】
前記アルコール成分(a2−2)としては、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2
,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0079】
また、上記多価アルコール以外の前記アルコール成分(a2−2)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させることにより得られるアルコール化合物等が挙げられる。
【0080】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造は、特に制限されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、前記酸成分(a2−1)とアルコール成分(a2−2)を窒素気流中において150〜250℃の温度で5〜10時間加熱し、該酸成分(a2−1)とアルコール成分(a2−2)のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法を用いることができる。
【0081】
上記酸成分(a2−1)及びアルコール成分(a2−2)をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、これらを一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分(a2−2)を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0082】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、例えば、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0083】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂の調製中、又はエステル化反応後もしくはエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0084】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0085】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
【0086】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)としては、得られる塗膜の平滑性及び耐水性の観点から、原料の酸成分(a2−1)中の脂環族多塩基酸(a2−1−2)の含有量が、該酸成分(a2−1)の合計量を基準として一般に30〜100モル%、特に35〜95モル%、さらに特に40〜90モル%の範囲内にあるものが好ましい。特に、得られる塗膜の平滑性の観点から、上記脂環族多塩基酸(a2−1−2)が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが好適である。
【0087】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、一般に10〜200mgKOH/g、特に30〜180mgKOH/g、さらに特に50〜160mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、一般に5〜150mgKOH/g、特に10〜100mgKOH/g、さらに特に15〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。さらに、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)一般に500〜50,000、特に1,000〜30,000、さらに特に1,200〜10,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0088】
粘性調整剤(B)
粘性調整剤(B)は、重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の合計質量を基準にして、(b−1)(メタ)アクリル酸(塩) 1〜50質量%、(b−2)下記一般式(1)
【0089】
【化2】

【0090】
式中、
は水素原子又はメチルを表し、
及びRは水素原子、メチル又はエチルを表し、
は炭素数8〜24の炭化水素基を表し、
nは3〜60の整数である、
で表される重合性不飽和モノマー 5〜60質量%、(b−3)アルキル部分の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート 5〜60質量%及び(b−4)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.05〜5質量%を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体である。
【0091】
(メタ)アクリル酸(塩)(b−1)
(メタ)アクリル酸(塩)(b−1)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩又はメタクリル酸塩を包含する。
【0092】
アクリル酸又はメタクリル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のモノ−、ジ−もしくはトリ−アルカノールアミン塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩等の炭素数1〜4のアルキルアミン塩等が含まれる。
【0093】
上記(メタ)アクリル酸(塩)(b−1)としては、アクリル酸、メタクリル酸及びメタクリル酸アンモニウム塩が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がさらに好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0094】
重合性不飽和モノマー(b−2)
重合性不飽和モノマー(b−2)は、下記一般式(1)
【0095】
【化3】

【0096】
式中、
は水素原子又はメチルを表し、
及びRは水素原子、メチル又はエチルを表し、
は炭素数8〜24の炭化水素基を表し、
nは3〜60の整数である、
で表される重合性不飽和モノマーである。
【0097】
上記式(1)において、上記R及びRは、得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、各々独立に水素原子又はメチル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。また、Rは好ましくは炭素数8〜24のアルキル基であって、例えば、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、直鎖状アルケニル基、分岐状アルケニル基等が含まれる。上記直鎖状アルキル基としては、例えば、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基等が挙げられ、分岐状アルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、イソトリデシル基、イソステアリル基等が挙げられる。また、直鎖状アルケニル基としては、例えば、n−オクテニル基、n−デセニル基、n−ウンデセニル基、n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基等が挙げられ、分岐状アルケニル基としては、例えば、イソオクテニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、インドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基等が挙げられる。
【0098】
は、得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、直鎖状アルキル基又は直鎖状アルケニル基であることが好ましく、特に、直鎖アルキル基、特にn−ヘキサデシル基、n
−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基及びn−ドコシル基からなる群より選ばれる直鎖状アルキル基であることが好ましい。
【0099】
また、上記式(1)において、nは3〜60の整数であり、得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、10〜50の整数であることが好ましく、20〜40の整数であることがさらに好ましい。
【0100】
上記重合性不飽和モノマー(b−2)としては、例えば、n−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ヘンエイコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−エイコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ノナデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ヘプタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn−ヘキサデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、n−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn−ヘキサデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、特に、n−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0101】
アルキル部分基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(b−3)
アルキル部分の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(b−3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレート、特に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びn−プロピル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0102】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(b−4)
重合性不飽和モノマー(b−4)としては、前記(メタ)アクリル酸(塩)(b−1)、重合性不飽和モノマー(b−2)及びアルキル(メタ)アクリレート(b−3)と共重合可能で且つ重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマーであれば特に制限されるものではなく、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個有する2官能重合性不飽和モノマー(b−4−1)、重合性不飽和基を1分子中に3個有する3官能重合性不飽和モノマー(b−4−2)、重合性不飽和基を1分子中に4〜8個有する4〜8官能重合性不飽和モノマー(b−4−3)等を使用することができる。
【0103】
2官能重合性不飽和モノマー(b−4−1)
2官能重合性不飽和モノマー(b−4−1)としては、例えば、ポリオールのジ(メタ)アクリレート、ポリオールアルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0104】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2、3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチルー1,3−ジオール、トリシクロデカンジ
メチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びグリセリン等が挙げられ、なかでも、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチルー1,3−ジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びグリセリンを好適に使用することができる。
【0105】
前記ポリオールアルキレンオキシド付加体には、上記ポリオールのアルキレンオキシド付加体が包含され、アルキレンオキシドの付加モル数はポリオール1molに対して、通常2〜100mol、特に4〜80mol、さらに特に6〜60molの範囲内であることが好適である。
【0106】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0107】
また、上記アルキレンオキシドはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上組み合わせて使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれであってもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはその一部としてエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、通常30〜99.9mol%、特に50〜99.9mol%、さらに特に70〜99.9mol%の範囲内であることが好適である。
【0108】
3官能重合性不飽和モノマー(b−4−2)
3官能重合性不飽和モノマー(b−4−2)としては、例えば、1分子中に少なくとも3個の水酸基を有するポリオールのトリ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0109】
上記1分子中に少なくとも3個の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びシクロヘキサンテトラオール等を使用することができる。
【0110】
また、ポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、通常3〜200mol、特に6〜150mol、さらに特に9〜100molの範囲内であることが好適である。
【0111】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0112】
また、上記アルキレンオキシドはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上組み合わせて使用する場合、該アルキレ
ンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれであってもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはその一部としてエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、通常30〜99.9mol%、特に50〜99.9mol%、さらに特に70〜99.9mol%の範囲内であることが好適である。
【0113】
4〜8官能重合性不飽和モノマー(b−4−3)
4〜8官能重合性不飽和モノマー(b−4−3)としては、例えば、1分子中に少なくとも4個の水酸基を有するポリオールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0114】
上記1分子中に少なくとも4個以上の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ヘキサペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン、シクロヘキサンテトラオール、ソルビタン等を挙げることができる。
【0115】
また、ポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、通常3〜200mol、特に6〜150mol、さらに特に9〜100molの範囲内であることが好適である。
【0116】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0117】
また、上記アルキレンオキシドはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上組み合わせて使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれであってもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはその一部としてエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、通常30〜99.9mol%、特に50〜99.9mol%、さらに特に70〜99.9mol%の範囲内であることが好適である。
【0118】
重合性不飽和モノマー(b−4)としては、仕上がり性等の観点から、前記2官能重合性不飽和モノマー(b−4−1)及び/又は3官能重合性不飽和モノマー(b−4−2)を使用することが好ましい。なかでも、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、特にポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びグリセリンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、さらに特にポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが好適である。
【0119】
その他の重合性不飽和モノマー(b−5)
粘性調整剤(B)としての共重合体を構成するための重合性不飽和モノマーは、前記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)以外に、その他の重合性不飽和モノマー(b−5)を含んでいてもよい。
【0120】
その他の重合性不飽和モノマー(b−5)としては、前記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)と共重合可能な重合性不飽和モノマーであれば特に制限されないが、得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキシドの付加mol数2〜100)(メタ)アクリル酸モノエステル、アルコキシポリアルキレングリコール(アルキレンオキシドの付加mol数2〜100)(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有重合性不飽和モノマー等が好ましく、特にクロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの付加mol数2〜100)モノ(メタ)アクリレート、炭素数1〜6の脂肪族アルコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシドの付加mol数2〜100)の(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド、さらに特にマレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド付加mol数2〜100)モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドを好適に使用することができる。
【0121】
上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−5)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0122】
本発明の自動車用水系塗料において使用される粘性調整剤(B)は、以上に述べた重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)ならびにさらに場合により重合性不飽和モノマー(b−5)を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる。共重合に際しての重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の使用割合は、重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の合計質量を基準にして、下記の範囲内とすることができる。
(メタ)アクリル酸(塩)(b−1):一般に1〜50質量%、好ましくは1〜45質量
%、さらに好ましくは7〜40質量%、
重合性不飽和モノマー(b−2):一般に5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%
、さらに好ましくは20〜50質量%、
アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(b−3):一般に5
〜60質量%、好ましくは7〜50質量%、さらに好
ましくは10〜40質量%、
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(b−4):一般に0
.05〜5質量%、好ましくは0.07〜4質量%、
さらに好ましくは0.1〜3質量%。
【0123】
また、粘性調整剤(B)がその他の重合性不飽和モノマー(b−5)を構成単位とする場合、その他の重合性不飽和モノマー(b−5)の使用割合は、重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の合計質量100質量部を基準として、一般に1〜100質量部、特に5〜70質量部、さらに特に10〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0124】
重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−5)の配合割合が上記範囲内である場合、仕上がり性等がさらに良好となる。
【0125】
重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−5)の共重合は、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等のそれ自体既知の方法(例えば、特開2004−27208号公報に記載)により行なうことができる。なかでも、乳化重合法及び溶液重合法、特に溶液重合法により行なうことが好適である。
【0126】
疎水性溶媒(C)
本発明の自動車用水系塗料において使用される疎水性溶媒(C)は、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下の有機溶媒であって、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルオール、キシロール、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−フェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0127】
疎水性溶媒(C)としては、得られる塗膜のフリップフロップ性及びメタリックムラなどの観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、特に、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒が好適である。
【0128】
自動車用水系塗料
本発明の自動車用水系塗料(以下、「本塗料」ということがある)は、以上に述べた粘性調整剤(B)及び疎水性溶媒(C)を、自動車用水系塗料中の水酸基含有樹脂(A)100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
粘性調整剤(B):一般に0.01〜20質量部、好ましくは0.05〜10質量部、さ
らに好ましくは0.1〜5質量部、
疎水性溶媒(C):一般に10〜150質量部、好ましくは15〜120質量部、さらに
好ましくは20〜100質量部。
【0129】
本発明の自動車用水系塗料を使用することにより、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成せしめることのできる理由は明確ではないが、疎水性溶媒(C)を含有する水系塗料において、特定の構造を有する粘性調整剤(B)を使用することにより、優れた塗膜外観を得ることができる最適な粘度挙動が発現することによるものと推察される。
【0130】
また、本発明の自動車用水系塗料は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基含有樹脂(A)と反応し得る官能基を有する硬化剤(D)を含有することが好ましい。
【0131】
硬化剤(D)としては、通常、前記水酸基含有樹脂(A)中の水酸基と反応し得る化合物を使用することできる。なかでも、アミノ樹脂(D1)、ポリイソシアネート化合物(D2)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(D3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤が好ましく、なかでも、アミノ樹脂(D1)及び/又はブロック化ポリ
イソシアネート化合物(D3)が好ましく、特に、アミノ樹脂(D1)が好ましい。
【0132】
アミノ樹脂(D1)としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。該アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられ、特に、ホルムアルデヒドが好適である。
【0133】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を適当なアルコールによって部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に使用し得るアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0134】
アミノ樹脂(D1)としてはメラミン樹脂が好ましい。なかでも、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂(D1−1)、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂(D1−2)、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂(D1−3)が好ましく、特に、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂(D1−3)が好ましい。
【0135】
また、得られる塗膜のフリップフロップ性及びメタリックムラの観点から、上記メラミン樹脂は一般に400〜6,000、特に1,000〜5,000、さらに特に1,200〜4,000、さらに一層特に1,500〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有するものが好ましい。
【0136】
上記メラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上いずれも商品名、日本サイテックインダストリーズ社製);「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上いずれも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。
【0137】
上記メラミン樹脂はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0138】
本発明の自動車用水系塗料としては、得られる塗膜のフリップフロップ性及び耐水性に優れる観点から、水酸基含有樹脂(A)として、前記水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)を使用し、且つ硬化剤(B)として、重量平均分子量が一般に1,000〜5,000、特に1,200〜4,000、さらに特に1,500〜3,000のメラミン樹脂を使用することが好ましい。
【0139】
また、上記メラミン樹脂を硬化剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸や、これらの酸とアミンとの塩などの硬化触媒を使用することができる。
【0140】
ポリイソシアネート化合物(D2)は、通常、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等が挙げられる。
【0141】
ブロック化ポリイソシアネート化合物(D3)は、通常、上記ポリイソシアネート化合物(D2)のイソシアネート基にブロック剤を付加することによって得られるものであり、加熱すると、該ブロック剤が解離してイソシアネート基が再生し、水酸基と反応することができるなる。該ブロック剤の解離温度としては通常60〜160℃、特に70〜140℃の範囲内であることが好適である。
【0142】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセ
チルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0143】
好ましいブロック剤としては、なかでも、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0144】
また、上記ブロック剤として、少なくとも1個のヒドロキシル基と少なくとも1個のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸なども使用することができ、特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
【0145】
また、水酸基含有樹脂(A)が、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有する場合には、硬化剤(D)として、該架橋性官能基と反応し得る官能基を有する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えば、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、なかでも、カルボジイミド基含有化合物を好適に使用することができる。
【0146】
上記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(D2)のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(以上いずれも商品名、日清紡社製)等を挙げることができる。
【0147】
以上に述べた硬化剤(D)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0148】
本塗料が硬化剤(D)を含有する場合、その配合比率は、水酸基含有樹脂(A)及び硬化剤(D)の合計固形分質量を基準にして、水酸基含有樹脂(A)は一般に30〜95質
量%、特に50〜85質量%、さらに特に60〜80質量%、そして硬化剤(D)は一般に5〜70質量%、特に15〜50質量%、さらに特に20〜40質量%の範囲内であることが好適である。
【0149】
また、本塗料が硬化剤(D)を含有する場合、水酸基含有樹脂(A)、粘性調整剤(B)、疎水性溶媒(C)及び硬化剤(D)は、塗料中の水酸基含有樹脂(A)及び硬化剤(D)の合計固形分100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
水酸基含有樹脂(A):一般に30〜95質量部、好ましくは50〜85質量部、さらに
好ましくは60〜80質量部
粘性調整剤(B):一般に0.01〜15質量部、好ましくは0.05〜8質量部、さら
に好ましくは0.1〜4質量部、
疎水性溶媒(C):一般に5〜120質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好
ましくは15〜80質量部、
硬化剤(D):一般に5〜70質量部、好ましくは15〜50質量部、さらに好ましくは
20〜40質量部。
【0150】
本発明の自動車用水系塗料は、水酸基含有樹脂(A)の他に、水酸基を実質的に含有しない、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂を含むことができる。得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性等の観点から、なかでも、水酸基を実質的に含有しないウレタンエマルション(E)を含むことが好ましい。
【0151】
ウレタンエマルション(E)としては、例えば、脂肪族および/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させることによりウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径0.001〜3μm程度の自己乳化型のウレタンエマルションを得ることができる。
【0152】
本塗料が、上記ウレタンエマルション(E)を含む場合、ウレタンエマルション(E)の配合量は、本塗料中の水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、一般に3〜30質量部、特に5〜20質量部の範囲内であることが好適である。
【0153】
上記改質用樹脂はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。本塗料が改質用樹脂を含む場合、該改質用樹脂の配合量は、本塗料中の水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常50質量部以下であることが好適である。
【0154】
また、本塗料は、上記改質用樹脂がカルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有する場合には、硬化剤(D)として、該官能基と反応し得る架橋性官能基を有する硬化剤を含有することができる。
【0155】
そのような硬化剤としては、上記架橋性官能基と反応し得る、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、なかでも、カルボジイミド基含有化合物を好適に用いることができる。
【0156】
また、本発明の自動車用水系塗料は、光輝性顔料(F)を含有することができる。光輝
性顔料(F)は、塗膜にキラキラとした光輝感又は光干渉性模様を付与する顔料であり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。
【0157】
光輝性顔料(F)としては、例えば、アルミニウム、蒸着アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン、酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母などを挙げることができ、これらのメタリック顔料は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。光輝性顔料(F)としては、特に、アルミニウム顔料が好ましい。アルミニウム顔料にはノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムが包含されるが、いずれも使用することができる。
【0158】
また、光輝性顔料(F)はりん片状であることが好ましい。りん片状光輝性顔料のサイズとしては、長手方向寸法が通常1〜100μm程度、特に5〜40μm程度で、厚さが0.0001〜5μm程度、特に0.001〜2μm程度の範囲内にあるものが好ましい。
【0159】
光輝性顔料(F)の配合量は、本発明の自動車用水系塗料中の水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、一般に1〜50質量部、特に5〜35質量部、さらに特に8〜20質量部の範囲内であることが好適である。
【0160】
また、本発明の自動車用水系塗料は、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、増粘剤、硬化触媒、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、前記疎水性溶媒(C)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0161】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられ、また、上記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0162】
また、前記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤(市販品として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等(以上いずれも商品名)が挙げられる);1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤(市販品として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上いずれも商品名);ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」(以上いずれも商品名);サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上いずれも商品名)等が挙げられる);カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等
のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤などが挙げられ、これらの増粘剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0163】
上記増粘剤としては、なかでも、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤、特に、会合型増粘剤、さらに特に、末端に疎水基を有し且つ分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤を好適に使用することができる。該ウレタン会合型増粘剤としては、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上いずれも商品名);サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上いずれも商品名)等が挙げられる。
【0164】
本塗料が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、本塗料中の固形分100質量部を基準として、一般に0.01〜10質量部、特に0.05〜3質量部、さらに特に0.1〜2質量部の範囲内であることが好適である。
【0165】
塗装方法
本塗料は、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車を被塗物とする自動車用塗料であって、具体的には、例えば、フード、フェンダー、ルーフパネル、ドア、トランクリッド等の自動車車体の外板部や、バンパー、スポイラー、ドアノブ等の自動車部品に塗装することができる。
【0166】
上記被塗物の素材としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料等を挙げることができる。
【0167】
上記金属材料の表面には、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されていてもよく、さらに、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されていてもよい。
【0168】
本発明の自動車用水系塗料の塗装方法としては、特に制限されるものではなく、それ自体既知の塗装法を用いることができ、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、なかでも、エアスプレー塗装及び回転霧化塗装が好ましい。これらの塗装方法により本塗料のウエット塗膜を形成せしめることができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよい。該自動車用水系塗料は、硬化膜厚として、通常5〜70μm、好ましくは10〜60μmの範囲内の膜厚で塗布することができる。
【0169】
ウエット塗膜の硬化は、通常、被塗物に本塗料を塗装した後、加熱することにより行われる。加熱は、それ自体既知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用して行うことができる。加熱温度は通常80〜180℃、好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜160℃の範囲内が適し
ており、また、加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常10〜60分間、好ましくは20〜40分間程度とすることができる。
【0170】
本発明の自動車用水系塗料は、被塗物上に、光輝性顔料及び/又は着色顔料を含有する水性ベースコート塗料を塗装し、次いでクリヤー塗料を塗装する塗装方法における水性ベースコート塗料として好適に使用することができる。
【0171】
本発明の自動車用水系塗料を水性ベースコート塗料として使用するにあたっては、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、本発明の自動車用水系塗料を塗装し、得られる塗膜を硬化させることなく、該未硬化塗膜上にクリヤー塗料を塗装した後、該未硬化塗膜とクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる2コート1ベーク方式を用いて、複層塗膜を形成せしめることができる。ここで、「未硬化塗膜」には、指触乾燥状態の塗膜及び半硬化乾燥状態の塗膜が包含される。
【0172】
本発明の自動車用水系塗料を、2コート1ベーク方式で塗装する場合、該自動車用水系塗料は硬化膜厚で5〜40μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内の膜厚となるように塗装することができ、また、クリヤー塗料は硬化膜厚で10〜80μm、特に15〜60μmの範囲内の膜厚となるように塗装することが好適である。
【0173】
また、上記2コート1ベーク方式で複層塗膜を形成する場合、ワキ、ハジキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、本発明の自動車用水系塗料の塗装後、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃の範囲内とすることができ、プレヒートの時間は通常30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間とすることができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。また、上記クリヤー塗料の塗装後は、必要に応じて室温で通常1〜60分間、好ましくは3〜20分間のインターバルをおいたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱することができる。
【0174】
上記自動車用水系塗料及びクリヤー塗料の硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができ、通常80〜180℃、好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜160℃の温度で10〜60分間、好ましくは20〜40分間程度加熱して両塗膜を同時に硬化させることが好適である。
【0175】
また、被塗物上に中塗り塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の中塗り塗膜上に水性ベースコート塗料として本発明の自動車用水系塗料を塗装し、さらに、該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の塗膜上にクリヤー塗料を塗装して、中塗り塗料、自動車用水系塗料及びクリヤー塗料の3層の塗膜を同時に加熱硬化させる3コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることもできる。
【0176】
上記3コート1ベーク方式において、中塗り塗料として水性塗料を用いる場合、ワキ、ハジキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、該中塗り塗料塗装後に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃とすることができ、プレヒートの時間は通常30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間とすることができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0177】
本発明の自動車用水系塗料の塗装後は、上記プレヒートやエアブローを行なうことが好ましく、さらに、クリヤー塗料の塗装後は、必要に応じて室温で1〜60分間程度、好ましくは3〜20分間程度のインターバルをおいたり、約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱することができる。
【0178】
塗膜の硬化は、前述したそれ自体既知の加熱手段により行うことができ、通常80〜180℃、好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜160℃の温度で10〜60分間程度、好ましくは20〜40分間程度加熱して3層の塗膜を同時に硬化させることが好適である。
【0179】
中塗り塗料としては、それ自体既知の熱硬化型中塗り塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂系等の架橋性官能基を有する基体樹脂、及びアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の該架橋性官能基と反応し得る官能基を有する硬化剤を含んでなる塗料を使用することができる。中塗り塗料としては、環境問題、省資源などの観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料、粉体塗料等を好適に使用することができる。
【0180】
また、クリヤー塗料としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂等の硬化剤を含んでなる有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化型粉体塗料、活性エネルギー線硬化型塗料等が挙げられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を含む熱硬化型塗料、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含む熱硬化型塗料及び水酸基含有樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。
【0181】
クリヤー塗料は、一液型塗料であってもよく或いは二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。また、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有することができ、さらに、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等を適宜含有することもできる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0183】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(
1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/g、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)を得た。
【0184】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」 0.72部、アリルメタクリレート2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0185】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」 0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、2−エチルヘキシルアクリレート3部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0186】
製造例2〜12
下記表1に示す配合とする以外、製造例1と同様に操作し、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−2)〜(A1−12)を得た。製造例1と併せて、得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−2)〜(A1−12)の固形分濃度、酸価及び水酸基価を下記表1に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
なお、水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)〜(A1−12)のうち、(A1−1)〜(A1−10)は、本願発明における水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)に該当する。
【0189】
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み、85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分濃度55%、重量平均分子量58,000、酸価47mgKOH/g、水酸基価72mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−13)を得た。
【0190】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例14
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間か
けて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、固形分濃度70%、数平均分子量が1,400であるポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。
【0191】
製造例15
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールをエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:0.5g)に代える以外は、製造例14と同様に操作して、ポリエステル樹脂溶液(PE2)を得た。
【0192】
製造例16
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールをジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:19g)に代える以外は、製造例14と同様に操作して、ポリエステル樹脂溶液(PE3)を得た。
【0193】
製造例17
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)に代える以外は、製造例14と同様に操作して、ポリエステル樹脂溶液(PE4)を得た。
【0194】
粘性調整剤(B)の製造
製造例18
メタクリル酸20部、n−オクタデシルアルコールエチレンオキシド60モル付加物のアクリレート19.5部、プロピルアクリレート60部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加体のジアクリレート0.5部からなる単量体混合物と、2,2’−アソビスイソブチロニトリルの1%メチルトリグリコール溶液50部とをそれぞれ滴下ロートから1.5時間かけて一定速度でメチルトリグリコール350部へ滴下しながら、均一撹拌して反応させた。反応温度は80〜90℃を保った。滴下終了後3時間同温度に保った後40℃まで冷却し、粘性調整剤(B−1)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0195】
製造例19
メタクリル酸45部、n−オクタデシルアルコールプロピレンオキシド10モル・エチレンオキシド40モル付加物(ランダム共重合)のアクリレート44.7部、エチルメタクリレート10部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加体のジメタクリレート0.3部からなる単量体混合物と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの0.5%ブチルグリコール溶液50部とをそれぞれ滴下ロートから1.5時間かけて一定速度でブチルグリコール350部へ滴下しながら、均一撹絆して反応させた。反応温度は80〜90℃を保った。滴下終了後3時間同温度に保った後40℃まで冷却し、粘性調整剤(B−2)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0196】
製造例20
メタクリル酸16.4部、イソオクタデシルアルコールエチレンオキシド30モル・プロピレンオキシド10モル付加物(ランダム共重合)のメタクリレート40部、エチルメタクリレート13.5部、グリセリンエチレンオキシド90モル付加物のトリアクリレート1.5部及びメタクリルアミド28.6部からなる単量体混合物と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの1%ブチルグリコール溶液50部とをそれぞれ滴下ロートから1.5時間かけて一定速度でブチルグリコール350部へ滴下しながら、均一撹絆して反応させた。反応温度は80〜90℃を保った。滴下終了後3時間同温度に保ち40℃まで冷
却し、粘性調整剤(B−3)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0197】
製造例21
水1100部、メタクリル酸169.9部、メチルアルコールエチレンオキシド90モル付加物のアクリレート44.6部、エチルメタクリレート58.5部、ドデシルアクリレート5.6部及びポリオキシエチレン(エチレンオキシド25モル付加物)ステアリルエーテルサルフェートナトリウム塩21.2部の混合物を撹拌下、過硫酸カリウム0.2%水溶液100部を3時間かけて一定速度で滴下し反応させた。反応温度は80〜90℃を保った。滴下終了後3時間同温度に保ち40℃に冷却し、粘性調整剤(B−4)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0198】
製造例22
水1100部、メタクリル酸111部、エチルアクリレート28部、アクリルアミド28部、ドデシルアルコールエチレンオキシド40モル付加物のメタクリレート28部、スチレン83部、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド8モル付加物)ラウリルエーテルリン酸ジエステルナトリウム塩10部及びポリオキシエチレン(エチレンオキシド20モル付加物)ラウリルエーテル12部の混合物を撹拌下、過硫酸カリウム0.2%水溶液100部を3時間かけて一定速度で滴下し反応させた。反応温度は80〜90℃を保った。滴下終了後3時間同温度に保ち40℃に冷却し、粘性調整剤(B−5)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0199】
光輝性顔料濃厚液の製造
製造例23
攪拌混合容器に2−エチル−1−ヘキサノール35部を入れ、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料濃厚液(P1)を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液: 温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー: 温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0200】
製造例24
2−エチル−1−ヘキサノール35部をエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル35部に代える以外は、製造例23と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P2)を得た。
【0201】
製造例25
2−エチル−1−ヘキサノール35部をジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル35部に代える以外は、製造例23と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P3)を得た。
【0202】
製造例26
2−エチル−1−ヘキサノール35部をエチレングリコールモノブチルエーテル35部に代える以外は、製造例23と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P4)を得た。
【0203】
自動車用水系塗料の実施例
実施例1
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)100部、製造例14で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)57部、製造例23で得た光輝性顔料濃厚液(P1)62部、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂(D1−3−1)(固形分80%、重量平均分子量1,400)38部及び製造例18で得た粘性調整剤(B−1)3部(固形分0.6部)を均一に混合し、更に、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えてpH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒の自動車用水系塗料(X1)を得た。
【0204】
実施例2〜22、比較例1〜5
実施例1において、配合組成を下記表2に示すとおり変更する以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒である自動車用水系塗料(X2)〜(X27)を得た。
【0205】
【表2】

【0206】
【表3】

【0207】
(注3)メラミン樹脂(D1−1−1): メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800。
(注4)メラミン樹脂(D1−3−2): メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000。
(注5)ユーコートUX−8100: 商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%。
【0208】
塗膜形成方法(試験板の作製)
上記実施例1〜22及び比較例1〜5で得られた自動車用水系塗料(X1)〜(X27)について、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0209】
(試験用被塗物の作製)
りん酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させてから、その上に中塗り塗料「アミラックTP−65−2」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型中塗り塗料)を硬化膜厚40μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0210】
実施例23
上記試験用被塗物上に、実施例1で得た自動車用水系塗料(X1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化の塗面上に「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚40μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
【0211】
実施例24〜44、比較例6〜10
実施例23における自動車用水系塗料(X1)を下記表3に示した自動車用水系塗料に代える以外は、実施例23と同様にして実施例24〜44及び比較例6〜10の試験板を作製した。
【0212】
評価試験
上記実施例23〜44及び比較例6〜10で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表3に示す。
【0213】
(試験方法)
フリップフロップ性: 角度を変えて各試験板を目視し、下記基準でフリップフロップ性を評価した。
◎:目視の角度による色調の変化が極めて大きく、極めて優れたフリップフロップ性を有する。
○:目視の角度による色調の変化が大きく、優れたフリップフロップ性を有する。
△:目視の角度による色調の変化がやや小さく、フリップフロップ性がやや劣る。
×:目視の角度による色調の変化が小さく、フリップフロップ性が劣る。
【0214】
メタリックムラ: 各試験板を目視観察し、下記基準でメタリックムラを評価した。
◎:メタリックムラが認められない。
○:メタリックムラがほとんど認められない。
△:メタリックムラが少し認められる。
×:メタリックムラが多く認められる。
【0215】
平滑性: 試験板の外観を目視にて評価した。
◎:極めて優れた平滑性を有する。
○:優れた平滑性を有する。
△:平滑性がやや劣る。
×:平滑性が劣る。
【0216】
鮮映性: 鮮映性測定器「PGD−IV型」(商品名、発売元:日本色彩研究所)を用いて、角度を55度に固定して、塗膜のPGD値を測定した。値が大きいほど鮮映性が良好であることを示す。
【0217】
耐水性: 試験板を、40℃の温水に240時間浸漬後引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板上の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。耐水密着性の評価基準は、次のとおりである。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、かつフチカケが生じていない。
○:ゴバン目塗膜が100個残存しているが、フチカケが生じている。
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存している。
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0218】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)、粘性調整剤(B)及び疎水性溶媒(C)を含んでなる自動車用水系塗料であって、粘性調整剤(B)が、重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−4)の合計質量を基準にして、(b−1)(メタ)アクリル酸(塩) 1〜50質量%、(b−2)下記一般式(1)
【化1】

式中、
は水素原子又はメチルを表し、
及びRは水素原子、メチル又はエチルを表し、
は炭素数8〜24の炭化水素基を表し、
nは3〜60の整数である、
で表される重合性不飽和モノマー 5〜60質量%、(b−3)アルキル部分の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート 5〜60質量%及び(b−4)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.05〜5質量%を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体であることを特徴とする自動車用水系塗料。
【請求項2】
水酸基含有樹脂(A)が水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の自動車用水系塗料。
【請求項3】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)が、(a1−2)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー 0.1〜30質量%、及び(a1−3)重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー 70〜99.9質量%を共重合することにより得られる共重合体(I)のコアと、(a1−1)水酸基含有重合性不飽和モノマー 1〜40質量%、(a1−4)疎水性重合性不飽和モノマー 5〜50質量%ならびに(a1−5)上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1−1)及び疎水性重合性不飽和モノマー(a1−4)以外の重合性不飽和モノマー 10〜94質量%を共重合することにより得られる共重合体(II)のシェルを構成成分とするコア/シェル型複層構造を有し、共重合体(I)/共重合体(II)固形分質量比が10/90〜90/10の範囲内にある水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1’)である請求項2に記載の自動車用水系塗料。
【請求項4】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(a1−2)がアミド基を有するものである請求項3に記載の自動車用水系塗料。
【請求項5】
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(b−4)が、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料。
【請求項6】
疎水性溶媒(C)がアルコール系疎水性溶媒である請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料。
【請求項7】
水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、粘性調整剤(B)を0.01〜20質量部、そして疎水性溶媒(C)を10〜150質量部の範囲内で含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料。
【請求項8】
硬化剤(D)をさらに含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料。
【請求項9】
硬化剤(D)が1,000〜5,000の範囲内の重量平均分子量を有するメラミン樹脂である請求項8に記載の自動車用水系塗料。
【請求項10】
水酸基含有樹脂(A)及び硬化剤(D)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有樹脂(A)を30〜95質量部、粘性調整剤(B)を0.01〜15質量部、疎水性溶媒(C)を5〜120質量部、そして硬化剤(D)を5〜70質量部の範囲内で含有する請求項8又は9に記載の自動車用水系塗料。
【請求項11】
光輝性顔料(F)をさらに含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料が塗装された物品。
【請求項13】
被塗物上に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車用水系塗料を塗装し、得られる未硬化の塗膜上にクリヤー塗料を塗装した後、加熱して両塗膜を同時に硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2009−91571(P2009−91571A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239426(P2008−239426)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】