説明

自動車用空調装置

【課題】 1つの両軸のモータと、このモータの両軸に各々のフィンが接続している一対(デュアル)ブロワにあって、両ブロワからの送風能力を均一化して、冷却用熱交換器前面の風速分布を良好にすること。
【解決手段】 空調ケース2内に空気を導入する一対のブロワ4a,4bと、この導入空気を温調する熱交換器5と、前記一対のブロワ4a,4bの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックス19を備えている。前記一対のブロワ4a,4bは1個の両軸のモータ12により2個のファン13a,13bが駆動される。この一対のブロワ4a,4bの吸込口は、内外気切換ボックス側が反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成される。そしてまた、内外気切換ボックス側のブロワケース14aの径が前記反内外気切換ボックス側のブロワケース14bの径よりも小さく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車に搭載され、車室内の空調を図る自動車用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開発される小型車にあって、インストルメントパネルの下部に配される自動車用空調装置の前後並びに左右方向のスペースが減少してきている。このような車両に適する空調装置として、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を縦置き(車両の前後方向に設定)し、且つブロワも一体型のものが開発され、当出願人も例えば特許文献1及び2に示すようなセンター置きで一体型の自動車用空調装置を開発するに至っている。
【特許文献1】特開2002−79820
【特許文献2】特開2002−337533
【0003】
この特許文献に示す例では、ユニットケース5内にエバポレータ2が車両の前後方向の前側に、その後側にヒータコア3が配され、この両熱交換器2,3に空気を供給する一つのブロワ1は、前記冷却用熱交換器2の上方で且つ前側に配されている。この一つのブロワにより風量を得るために、直径が140mm程の大きなファンを使用しなければならないし、また回転数も増加させなければならない。このため、大型化や騒音の増加が生じていた。
【0004】
そこで、ブロワスペースの小型化のみならず、通気抵抗を低減させ、低騒音化を実現するため、1つの両軸のモータと、このモータの両軸にそれぞれのファンと、それを収納する空調ケースの一部となる一対のブロワケースを備えたデアルブロワが開発されている。例えば特許文献3に示されている。
【特許文献3】特開2003−80921
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献3にあっては、車両の前後方向に余裕を残している例であるが、前記したように近年の小型車に搭載例では、車室内空気又は車外空気を導入するための内外気切換ボックスを車両の前後方向に設けるスペースは無い。そこで、前記のブロワの一方側(車両左右方向)に設けられるが、左右のブロワへの導入空気量が通路抵抗のアンバランスから、内外気切換ボックス側のブロワに比して遠い方の反内外気切換ボックス側のブロワからの風量が数割減少する不都合が起きている。この結果、冷却用熱交換器前面の風速分布が悪化して、車室内への吹出風量の不均一、吹出温度の不均一が起きてしまう。
【0006】
そこで、この発明は、1つの両軸のモータと、このモータの両側に各々のフィンを持つ一対(デュアル)ブロワにあって、両ブロワからの送風能力を均一化して、冷却用熱交換器前面の風速分布を良好とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る自動車用空調装置は、空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、前記一対のブロワは1個の両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側が反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記内外気切換ボックス側のブロワケースの径が前記反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも小さくしたことにある(請求項1)。
【0008】
これにより。内外気切換ボックス側のブロワケースの径が反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも縮少したことから、両ブロワからの送風能力が均一化され、冷却用熱交換器前面の風速分布を良好に(均一)にすることができる。したがって、吹出風量のみならず吹出温度も均一化に寄与することができる。
【0009】
また、この発明に係る自動車用空調装置は、空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、前記一対のブロワは両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側にあって反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことにある(請求項2)。
【0010】
これによりモータを内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことから、反内外気切換ボックス側のブロワケースの吸込口周辺の通路抵抗を低減させ、もって、両ブロワから送風能力が均一化され、冷却用熱交換器前面の風速分布を良好(均一)にすることができる。
【0011】
さらに、この発明に係る自動車用空調装置は、空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、前記一対のブロワは1個の両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側が反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記内外気切換ボックス側のブロワケースの径を前記反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも小さくし、さらに前記モータを前記内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことにある(請求項3)。
【0012】
これにより、第1に内外気切換ボックス側のブロワケースの径が反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも減少したことや、第2にモータを内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことから、反内外気切換ボックス側の吸込口の通路抵抗を低減させることから、両ブロワの送風能力が均一化され、冷却用熱交換器前面の風速分布を良好(均一)にすることができる。
【0013】
前記一対のブロワは1個のモータと、その両側に一対のファンと、それを収納する前記空調ケースの一部となる一対のスクロールが形成のブロワケースとより成っている。(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、請求項1の発明によれば、一対のブロワケースの径の変更により両ブロワからの送風能力が均一化される。請求項2の発明によれば、一対のブロワの反内外気切換ボックス側の吸込口周辺の通路抵抗を低減させて、両ブロワからの送風能力が均一化される。さらに請求項3の発明によれば、一対のブロワケースの径の変更と共に、両ブロワの反内外気切換ボックス側の吸込口周辺の通路抵抗を低減させて、両ブロワからの送風能力が均一化される。このようにして、両ブロワの送風能力の均一化が図られ、冷却用熱交換器の前面の風速が均一化され、もって、車室内へ吸出す風量のみならず吹出温度も均一化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1,図2において、この発明の第1の実施例が示されている。この図に示す自動車用空調装置1は、車両のインストルメントパネルの下部のセンターに設置されるセンタータイプのもので、空調ケース2には、空気を導入する一対のブロワ4a,4b、導入空気を冷却、加熱するエバポレータ5とヒータコア6、所望の温度に温度制御するエアミックスドア7、そして選択された吹出モードに従って吹出すベント吹出用開口、デフロスト吹出用開口、足元吹出用開口8,9,10を有している。
【0017】
前記ブロワ4a,4bは、2つ設けられ、自動車用空調装置1の車両のファイヤーウォール11側(車両前後方向の前側)にあって且つ上方に設けられ、図1から明らかなように、車両の左右方向に添って両軸のモータ12が中央に、その左右に該ブロワ4a,4bが配されている。
【0018】
このブロワ4a,4bは、空調ケース2の一部となるスクロールが形成のブロワケース14a,14bと、これら内に収納の遠心形のファン13a,13bとで構成され、前記両ファン13a,13bの径が下記する内外気切換ボックス19側が小さく、反内外気切換ボックス19側が大きく構成されている。したがって、それぞれを包むブロワケース14a,14bも、それぞれに対応して内外気切換ボックス19側であるブロワケース14aの径Aは小さく、反内外気切換ボックス側であるブロワケース14bの径Bは大きく構成されている。したがって、ブロワ4a,4bの送風能力だけを見れば、ブロワ4aはブロワ4bよりも低くなっている。
【0019】
ブロワケース14a,14bは、巻き始めのノーズから徐々に拡大するスクロール形状となっており、その最終端はブロワ4a,4bの出口となり、エバポレータ5を収納する通路へ拡大し継がっている。また、ブロワケース14aは、その左側に吸込口17を持ち、内外気切換ボックス19から選択された車外空気又は車室内空気が吸込まれる。ブロワケース14bは、モータ12側に吸込口18を持ち、下記する凹んだ空間15に開口している。
【0020】
前記モータ12は、両軸タイプのもので、前述したように、ブロワケース14a,14b間に配され、その径はブロワケース14a,14bの半分程のため、該両ブロワケース14a,14bとの間に凹んだ空間15が形成されている。
【0021】
前記した吸込口18は、前記凹んだ空間に開口しており、その開口径は前述の吸込口17よりも大径となっているし、この吸込口18へ至る通風路20は、前記ブロワケース14aの径が小さく構成されているため、比較的大きな断面積を取ることができる。
【0022】
内外気切換ボックス19は、外気導入口21と内気導入口22とが形成され、切換ドア(図示せず)により、車外空気又は車内空気を選択して導入するもので、空調ケース2に一体化され、図1にあって、該ブロワ4a,4bの上流で且つ空調ケース2の左側に配され、前記したブロワ4aの吸込口17と、前記した通風路20を介して右側のブロック4bの吸込口18とそれぞれ連通している。
【0023】
以上の構成から、ファン13a,13bの回転により、選択された車外空気又は車内空気がそれぞれのブロワ4a,4bの吸込口17,18から吸込まれる。そして、エバポレータ5に向けて吹出される。前記吸込口18が前記吸込口17よりも大きいことから、通路抵抗による損失を補い、両ブロワ4a,4bからの送風能力の均一化が図られ、エバポレータ5の前面の風速分布を均一化することができる。
【実施例2】
【0024】
図3において、この発明の第2の実施例が示されている。この実施例では内外気切換ボックス19より遠いブロワ4bの通路抵抗による低減分の改善を図ったものである。即ち、ブロワ4a,4bのファン13a,13bを回転させるモータ12を、前記ブロワ4aのブロワケース14a内に食い込ませることで、モータ12をブロワ4bの吸込口18より距離Cだけ離したこと。これにより、吸込口18の前面の通風抵抗が低減し、ブロワ4aの送風能力を向上させ、もってブロワ4aの送風能力に近い値とすることができる。これにより、エバポレータ5前面の風速分布を良好(均一)にすることができる。なお、その他の部分は前記第1の実施例と同一のため、図面に同一の番号を付して説明を省略する。
【実施例3】
【0025】
図4において、この発明の第3の実施例が示されている。この実施例では前記第1の実施例と第2の実施例とを結合させたものである。第1にブロワ4aのフィン13aの小径化のみならずブロワケース14a小径化を図ったものである。具体的には、ブロワケース14aの径Aがブロワケース14bの径Bよりも小さくしている。第2にファン13a,13bを回転させるモータ12を前記ブロワ4aのブロワケース14a内に食い込ませたことにある。具体的には、モータ12を吸込口18より距離Cだけ離したことにある。
【0026】
これにより、内外気切換ボックス側のブロワ4aの送風能力が径の縮小、反内外気切換ボックス側のブロワ4bの吸込口18付近の通風抵抗の減少の効果から、両ブロワ4a,4bの送風能力の均一化が図られる。これにより、エバポレータ5の前面の風速分布を良好(均一)にすることができる。なおその他の部分は前記第1及び第2の実施例と同一のため、図面に同一の番号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施例を示す要部付近の横断面図である。
【図2】同上の縦断面図である。
【図3】この発明の第2の実施例を示す要部付近の横断面図である。
【図4】この発明の第3の実施例を示す要部付近の横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車用空調装置
2 空調ケース
4a,4b ブロワ
5 エバポレータ
6 ヒータコア
12 モータ
13a,13b ファン
14a,14b ブロワケース
15 凹んだ空間
17 吸込口
18 吸込口
19 内外気切換ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、
前記一対のブロワは1個の両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側が反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記内外気切換ボックス側のブロワケースの径が前記反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも小さくしたことを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項2】
空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、
前記一対のブロワは両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側にあって反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記モータを前記内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項3】
空調ケース内に空気を導入する一対のブロワと、この導入空気を温調する熱交換器と、前記一対のブロワの上流で且つ側方に配され、車室内空気又は車外空気を選択的に導入する内外気切換ボックスとを備え、
前記一対のブロワは1個の両軸のモータにより2個のファンが駆動され、さらに、該一対のブロワの吸込口は、前記内外気切換ボックス側が反モータ側に、反内外気切換ボックス側がモータ側に形成されると共に、前記内外気切換ボックス側のブロワケースの径を前記反内外気切換ボックス側のブロワケースの径よりも小さくし、さらに前記モータを前記内外気切換ボックス側のブロワケースに食い込ませ、反内外気切換ボックス側の吸込口より離したことを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項4】
前記一対のブロワは1個のモータと、その両側に一対のファンと、それを収納する前記空調ケースの一部となる一対のスクロールが形成のブロワケースとより成ることを特徴とする請求項1,2又は3記載の自動車用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−7946(P2006−7946A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187377(P2004−187377)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(500309126)株式会社ゼクセルヴァレオクライメートコントロール (282)
【Fターム(参考)】