説明

自動車用空調装置

【課題】冷風の温度上昇を防止できるとともに、空調ケースの小型化を実現できる自動車用空調装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る自動車用空調装置1は、吹出口20(デフ吹出口DEF、ベント吹出口VENT及びフット吹出口FOOT)が形成される空調ケース10と、空調ケース10内に配設され、空気を冷却することによって冷風を生成するエバポレータ60と、エバポレータ60よりも空気の流れ方向の下流側に配設され、エバポレータ60を通過した空気を加熱することによって温風を生成するヒータコア70とを備える。また、自動車用空調装置1は、エバポレータ60を通過した冷風を吹出口20側とヒータコア側とに分配する第1のミックスドア100と、第1のミックスドア100と連動し、エバポレータ60を通過した冷風をヒータコア70に通過させずに、吹出口20側へ導く第2のミックスドア200とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ケース内に、エバポレータとヒータコアとが設けられる自動車用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に導入された空気を車室内に向けて吹き出す吹出口(デフ吹出口、ベント吹出口、フット吹出口)が形成される空調ケース内に、冷風を生成するエバポレータと、温風を生成するヒータコアとが配設される自動車用空調装置について、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、冷風と温風とを分配するエアミックスドアと、冷風と温風との合流域に設けられる回動式のロータリドアとをオーバーラップさせた自動車用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この自動車用空調装置によれば、冷風と温風とのエアミキシング性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6857号公報(第2〜第4頁、第1〜第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の自動車用空調装置では、冷風の温度上昇を防止するために、この冷風が通過する冷風通路とヒータコアとできる限り離すように配置する必要があった。このため、空調ケースの小型化については、未だ改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、冷風の温度上昇を防止できるとともに、空調ケースの小型化を実現できる自動車用空調装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、内部に導入された空気を車室内に向けて吹き出す吹出口(吹出口20)が形成される空調ケース(空調ケース10)と、前記空調ケース内に配設され、前記空気を冷却することによって冷風を生成するエバポレータ(エバポレータ60)と、前記エバポレータよりも前記空気の流れ方向の下流側に配設され、前記エバポレータを通過した前記空気を加熱することによって温風を生成するヒータコア(ヒータコア70)とを備える自動車用空調装置(自動車用空調装置1)であって、前記エバポレータを通過した前記冷風を前記吹出口側と前記ヒータコア側とに分配する第1のミックスドア(第1のミックスドア100)と、前記第1のミックスドアと連動し、前記エバポレータを通過した前記冷風を前記ヒータコアに通過させずに、前記吹出口側へ導く第2のミックスドア(第2のミックスドア200)とをさらに備えることを要旨とする。
【0008】
かかる特徴によれば、第2のミックスドアは、第1のミックスドアと連動し、エバポレータを通過した冷風をヒータコアに通過させずに、吹出口側へ導く。これにより、エバポレータを通過した冷風が、ヒータコアの周囲に停留している暖かい空気(温風)を引き込むヒートピックアップ現象を抑制でき、冷風の温度上昇を防止することができる。
【0009】
また、冷風の温度上昇を防止できることに伴い、冷風が通過する冷風通路と温風が通過する温風通路(すなわち、エバポレータとヒータコア)とをできる限り近づくように配設することが可能となる。従って、空調ケースの小型化をも実現できる。
【0010】
ところで、縦型の自動車用空調装置の場合、自動車用空調装置の形状によっては乗員の足元スペースを十分確保するために、自動車用空調装置を右ハンドル用及び左ハンドル用に共用化し難かった。つまり、自動車用空調装置を右ハンドル用又は左ハンドル用の何れかの配置にオフセットさせて車室内(インナーパネル内)に搭載せざるを得なかった。
【0011】
しかし、本発明の第1の特徴によれば、冷風が通過する冷風通路と温風が通過する温風通路(すなわち、エバポレータとヒータコア)とをできる限り近づくように配設(例えば、ヒータコアを高く配設)することが可能となるため、乗員の足元スペースを十分確保できる。このため、自動車用空調装置を右ハンドル用又は左ハンドル用の何れかの配置にオフセットさせて車室内に搭載する必要がなくなり、右ハンドル用及び左ハンドル用の両方に対して共用化できる。
【0012】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記第1のミックスドアは、前記冷風が通過する冷風通路(冷風通路32)を閉じ状態として前記冷風を全て前記ヒータコア側へ導入する全閉位置と、前記冷風通路を開け状態として前記冷風を全て前記吹出口側へ導く全開位置との間で回動する冷風側ミックスドア(冷風側ミックスドア110)と、前記冷風側ミックスドアが前記全閉位置にあるとき、前記温風が通過する温風通路(温風通路33)を開け状態として前記冷風を全て前記ヒータコア側へ導く全開位置と、前記冷風側ミックスドアが前記全開位置にあるとき、前記温風通路を閉じ状態として前記冷風を全て前記吹出口側へ導く全閉位置との間で回動する温風側ミックスドア(温風側ミックスドア120)とによって構成され、前記第2のミックスドアは、前記冷風側ミックスドアが前記全開位置にあるとき、前記温風通路を塞ぐとともに、前記冷風側ミックスドアが前記全閉位置にあるとき、前記温風通路を開放することを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、第2のミックスドアは、冷風側ミックスドアが全開位置にあるとき、温風通路を塞ぐとともに、冷風側ミックスドアが全閉位置にあるとき、温風通路を開放する。これにより、冷風通路を通過する冷風と温風通路を通る温風とが混合するエアミキシング領域において、この冷風と温風とを確実に混合できる(混合風を生成できる)ため、エアミキシング性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記冷風側ミックスドアは、前記冷風が通過する冷風通路を開閉可能な第1ドア本体(第1ドア本体111)と、前記第1ドア本体を回動させる回動支軸(回動支軸112)とによって構成され、前記第2のミックスドアは、前記第1ドア本体と所定の隙間を介して平行位置で配設される第2ドア本体(第2ドア本体210)によって構成されることを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、第2のミックスドアは、第1ドア本体と所定の隙間を介して平行位置で配設される第2ドア本体によって構成される。これにより、第2ドア本体が第1ドア本体の回動に連動して回動し、エアミキシング領域において冷風と温風とが混合し易くなる。
【0016】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、前記第2ドア本体は、前記ヒータコアを通過した前記温風が通る複数の通過ダクト(通過ダクト211)を有し、前記第1ドア本体と前記第2ドア本体との間を通過する前記冷風と前記通過ダクトを通る前記温風とを混合させることを要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、第2ドア本体は、ヒータコアを通過した温風が通る複数の通過ダクトを有する。これにより、エアミキシング領域において冷風と温風とがさらに混合し易くなる。
【0018】
本発明の第5の特徴は、本発明の第2乃至第4の特徴に係り、前記第2のミックスドアは、前記冷風側ミックスドアと一体に形成され、前記冷風側ミックスドアの回動に連動して回動することを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、前記第2のミックスドアは、前記冷風側ミックスドアと一体に形成される。これにより、第2のミックスドアが冷風側ミックスドアの回動に連動して回動し易くなり、エアミキシング領域において冷風と温風とがさらに混合し易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の特徴によれば、冷風の温度上昇を防止できるとともに、空調ケースの小型化を実現できる自動車用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の冷風モードを示す縦断側面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の温風モードを示す縦断側面図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の混合風モードを示す縦断側面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態の変更例に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の冷風モードを示す縦断側面図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の温風モードを示す縦断側面図である
【図8】図8は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の混合風モードを示す縦断側面図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る自動車用空調装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)その他の実施形態について説明する。
【0023】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0024】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0025】
(1)第1実施形態
(1.1)自動車用空調装置1の構成
まず、本実施形態に係る自動車用空調装置1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の冷風モードを示す縦断側面図である。図2は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の温風モードを示す縦断側面図である。図3は、第1実施形態に係る自動車用空調装置1の混合風モードを示す縦断側面図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、自動車用空調装置1は、合成樹脂等からなる空調ケース10を備える。この空調ケース10内には、内部に導入された空気を車室内に向けて吹き出す吹出口20と、画壁11等によって適宜に区画することで空気通路30(導入通路31や冷風通路32、温風通路33等)とが形成される。
【0027】
吹出口20は、デフ吹出口DEFと、ベント吹出口VENTと、フット吹出口FOOTとによって構成される。一方で、空気通路30の上流位置には、送風部品(ブロワ40、導入通路31)が設けられる。また、空気通路30の途中には、機能部品(フィルタ50、エバポレータ60、ヒータコア70等)が設けられる。
【0028】
ブロワ40は、空調ケース10内に空気を導入する。このブロワ40から排出された空気は、導入通路31に設けられたフィルタ50を経由することで清浄化される。このフィルタ50の後段(下流側)には、冷凍サイクルの一部を成すエバポレータ60が設けられている。
【0029】
エバポレータ60は、空気と冷媒との間で熱交換して空気を冷却することによって冷風を生成する。このエバポレータ60及び上述したフィルタ50は、ブロワ40の下側位置において縦方向に並列配置されており、上下垂直位置から上側を下流側に少しずらし、下側を上流側に少しずらした傾斜縦方向に設定されている。この傾斜縦方向の設定により、導入通路31を通過する空気を取り込み易く、且つ、エバポレータ60の下部に余裕スペースを形成できる。
【0030】
エバポレータ60の下流側のうち画壁11の上側には、エバポレータ60を通過することにより生成された冷風が通過する冷風通路32が設けられる。この冷風通路32には、第1のミックスドア100(冷風側ミックスドア110)及び第2のミックスドア200が配設される。
【0031】
一方、エバポレータ60の下流側のうち画壁11の下側には、ヒータコア70を通過することにより生成された温風が通過する温風通路33が設けられる。この温風通路33には、第1のミックスドア100(温風側ミックスドア120)、ヒータコア70が順に配設される。なお、第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の詳細については、後述する。
【0032】
ヒータコア70は、エバポレータ60よりも空気の流れ方向の下流側に配設され、エバポレータ60を通過した空気(冷風)を加熱することによって温風を生成する。このヒータコア70には、エンジンやラジエータ等と連結される配管72が設けられる。また、ヒータコア70は、画壁11により一端側が支持され、フィルタ50及びエバポレータ60と同様に傾斜縦方向に設定されている。この傾斜縦方向の設定により、温風通路33を通過する空気を取り込み易く、且つ、ヒータコア70の下部に余裕スペースを形成できる。また、ヒータコア70は、空調ケース10の底内面を回り込んだ空気を下側から取り込むように配設される。これにより、温風通路33についても、下から上に向かって温風が流れる通路となる。
【0033】
(1.2)第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の構成
次に、上述した第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の構成について、図1〜図4を参照しながら説明する。なお、図4は、第1実施形態に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。
【0034】
第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200は、空気の温度等の性状(冷風及び温風の配分比率)を調整する。なお、この調整された空気は、それぞれの吹出口20(デフ吹出口DEF、ベント吹出口VENT及びフット吹出口FOOT)近傍に設けられるデフドア21、ベントドア22、フットドア23の開閉位置によって、それぞれの吹出口20から吹き出すようになっている。
【0035】
(1.2.1)第1のミックスドア100
図1〜図4に示すように、第1のミックスドア100は、エバポレータ60を通過して生成された冷風を吹出口20側とヒータコア70側とに分配する。この第1のミックスドア100は、冷風側ミックスドア110と、温風側ミックスドア120とによって構成される。
【0036】
冷風側ミックスドア110は、冷風通路32中に配設される。この冷風側ミックスドア110は、冷風通路32を閉じ状態として冷風を全てヒータコア70側へ導入する全閉位置(図2参照)、冷風通路32を開け状態として冷風を全て吹出口側へ導く全閉位置(図1参照)との間で回動する。具体的には、図4に示すように、冷風側ミックスドア110は、冷風通路32を開閉可能な板状の第1ドア本体111と、第1ドア本体111を回動させる回動支軸112とによって構成される。なお、第1ドア本体111は、回動支軸112を介して第2のミックスドア200と一体に形成される。
【0037】
一方、温風側ミックスドア120は、温風通路33中に配設される。この温風側ミックスドア120は、冷風側ミックスドア110が全閉位置にあるとき、温風通路33を開け状態として冷風を全てヒータコア70側へ導く全開位置(図2参照)と、冷風側ミックスドア110が全開位置にあるとき、温風通路33を閉じ状態として冷風を全て吹出口側へ導く全閉位置(図1参照)との間で回動する。
【0038】
このような第1のミックスドア100(冷風側ミックスドア110及び温風側ミックスドア120)は、第2のミックスドア200と連動する。
【0039】
(1.2.2)第2のミックスドア200の構成
図1〜図4に示すように、第2のミックスドア200は、第1のミックスドア100と連動し、エバポレータ60を通過した冷風をヒータコア70に通過させずに、吹出口20(デフ吹出口DEF、ベント吹出口VENT及びフット吹出口FOOT)側へ導く。
【0040】
この第2のミックスドア200は、冷風側ミックスドア110が全開位置(図1参照)にあるとき、温風通路33を塞ぐとともに、冷風側ミックスドア110が全閉位置(図2参照)にあるとき、温風通路33を開放する。言い換えると、第2のミックスドア200は、冷風側ミックスドア110が全開位置にあるとき、ヒータコア70の吹出口20側の面71を覆うとともに、冷風側ミックスドア110が全閉位置にあるとき、ヒータコア70の吹出口20側の面71を開放する。
【0041】
このような第2のミックスドア200は、冷風側ミックスドア110と一体に形成され、回動支軸112を介して冷風側ミックスドア110の回動に連動して回動する。この第2のミックスドア200は、第1ドア本体111と所定の隙間を介して平行位置で配設される板状の第2ドア本体210と、第2ドア本体210と回動支軸112とを連結する連結部分220とによって構成される。
【0042】
(1.3)第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の動き
冷風モード(フルクールモード)では、図1に示すように、冷風側ミックスドア110が全開位置で温風側ミックスドア120が全閉位置にある際、空気は温風通路33には流れず、冷風通路32のみを流れる。このとき、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)は、温風通路33を塞いでいる。
【0043】
逆に、温風モード(フルホットモード)では、図2に示すように、冷風側ミックスドア110が全閉位置で温風側ミックスドア120が全開位置にある際、空気は冷風通路32には流れず、温風通路33のみを流れる。このとき、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)は、温風通路33を開放している。
【0044】
そして、混合風モード(フルクールとフルホットとの中間モード)では、図3に示すように、冷風側ミックスドア110が中途位置にある際、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)も中途位置にある。これにより、冷風通路32を通過した冷風と温風通路33を通過した温風とは、第1ドア本体111と第2ドア本体210との間等で混合し(混合風が生成され)、エアミキシング領域AMが形成される。
【0045】
その後、温度調整された空気は、それぞれの吹出口(ベントドア22、ベント吹出口VENT及びフット吹出口FOOT)から吹き出す。この吹出口20の選択は、デフドア21、ベントドア22、フットドア23の開閉によって制御される。なお、この吹出口20の選択制御(=モード選択制御)については、公知(例えば、特開2009−6857号公報)のものである。
【0046】
(1.4)作用・効果
以上説明した第1実施形態では、第2のミックスドア200は、第1のミックスドア100と連動し、エバポレータ60を通過した冷風をヒータコア70に通過させずに、吹出口20(ベントドア22、ベント吹出口VENT及びフット吹出口FOOT)側へ導く。これにより、エバポレータ60を通過した冷風が、ヒータコア70の周囲に停留している暖かい空気(図1のA線内)を引き込むヒートピックアップ現象を抑制でき、冷風の温度上昇を防止することができる。
【0047】
また、冷風の温度上昇を防止できることに伴い、冷風通路32と温風通路33(すなわち、エバポレータ60とヒータコア70)とをできる限り近づくように配設することが可能となる。従って、空調ケース10の小型化をも実現できる。
【0048】
ところで、縦型の自動車用空調装置の場合、自動車用空調装置の形状によっては乗員の足元スペースを十分確保するために、自動車用空調装置を右ハンドル用及び左ハンドル用に共用化し難かった。つまり、自動車用空調装置を右ハンドル用又は左ハンドル用の何れかの配置にオフセットさせて車室内(インナーパネル内)に搭載せざるを得なかった。
【0049】
しかし、第1実施形態によれば、冷風通路32と温風通路33(すなわち、エバポレータ60とヒータコア70)とをできる限り近づくように配設(例えば、ヒータコア70を高く配設)することが可能となるため、乗員の足元スペースを十分確保できる。このため、自動車用空調装置1を右ハンドル用又は左ハンドル用の何れかの配置にオフセットさせて車室内に搭載する必要がなくなり、右ハンドル用及び左ハンドル用の両方に対して共用化できる。
【0050】
第1実施形態では、第2のミックスドア200は、冷風側ミックスドア110が全開位置にあるとき、温風通路33を塞ぐとともに、冷風側ミックスドア110が全閉位置にあるとき、温風通路33を開放する。これにより、冷風通路32を通過する冷風と温風通路33を通る温風とが混合するエアミキシング領域AMにおいて、この冷風と温風とを確実に混合できる(混合風を生成できる)ため、エアミキシング性を向上させることができる。
【0051】
第1実施形態では、第2のミックスドア200は、第1ドア本体111と所定の隙間を介して平行位置で配設される第2ドア本体210によって構成される。これにより、第2ドア本体210が第1ドア本体111の回動に連動して回動し、エアミキシング領域AMにおいて冷風と温風とが混合し易くなる。
【0052】
第1実施形態では、第2のミックスドア200は、冷風側ミックスドア110と一体に形成される。これにより、第2のミックスドア200が冷風側ミックスドア110の回動に連動して回動し易くなり、エアミキシング領域AMにおいて冷風と温風とがさらに混合し易くなる。
【0053】
(1.5)変更例
次に、上述した第1実施形態に係る自動車用空調装置1の変更例について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態の変更例に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。なお、上述した第1実施形態に係る自動車用空調装置1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0054】
上述した第1実施形態では、第2ドア本体210は、連結部分220を介して第1ドア本体111(回動支軸112)と一体に形成される。これに対して、変更例では、第2ドア本体210は、第1ドア本体111と別体に形成される。
【0055】
具体的には、図5に示すように、第2のミックスドア200は、第1ドア本体111と所定の隙間を介して平行位置で配設される第2ドア本体210と、第2ドア本体210を回動させる回動支軸230とによって構成される。この場合であっても、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)は、第1のミックスドア100(第1ドア本体111)の回動に連動して回動する。
【0056】
このような変更例によれば、第2ドア本体210は、第1ドア本体111と別体に形成されていても、第1実施形態の作用・効果と同様に、冷風の温度上昇を防止できるとともに、空調ケース10の小型化を実現できる。
【0057】
(2)第2実施形態
以下において、第2実施形態に係る自動車用空調装置2について、図面を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の冷風モードを示す縦断側面図である。図7は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の温風モードを示す縦断側面図である。図8は、第2実施形態に係る自動車用空調装置2の混合風モードを示す縦断側面図である。図9は、第2実施形態に係る第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の一部を示す斜視図である。なお、上述した第1実施形態に係る自動車用空調装置1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0058】
上述した第1実施形態では、第2ドア本体210は、板状に形成される。これに対して、第2実施形態では、第2ドア本体210は、以下の構成となる。
【0059】
(2.1)第2ドア本体210の構成
図6〜図9に示すように、第2ドア本体210は、空調ケース10の底内面を回り込んでヒータコア70を通過した温風が通る複数(図面では3つ)の通過ダクト211を有する。この通過ダクト211は、第1ドア本体111側に向かって突出した形状である。また、通過ダクト211は、空気の流れ方向の下流側に向けて徐々に空間体積が増大するように形成される。
【0060】
また、第2ドア本体210は、第1ドア本体111と第2ドア本体210との間を通過する冷風と、通過ダクト211を通る温風とを混合させる。すなわち、冷風通路32を通過した冷風と温風通路33を通過した温風とが、第1ドア本体111と第2ドア本体210との間で混合し、エアミキシング領域AMが形成される。
【0061】
(2.2)第1のミックスドア100及び第2のミックスドア200の動き
冷風モードでは、図6に示すように、冷風側ミックスドア110が全開位置で温風側ミックスドア120が全閉位置にある際、空気は温風通路33には流れず、冷風通路32のみを流れる。このとき、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)は、温風通路33をほぼ塞いでいる。
【0062】
逆に、温風モードでは、図7に示すように、冷風側ミックスドア110が全閉位置で温風側ミックスドア120が全開位置にある際、空気は冷風通路32には流れず、温風通路33のみを流れる。このとき、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)は、温風通路33を開放している。
【0063】
そして、混合風モードでは、図8に示すように、冷風側ミックスドア110が中途位置にある際、第2のミックスドア200(第2ドア本体210)も中途位置にある。これにより、第1ドア本体111と第2ドア本体210との間を通過する冷風と、通過ダクト211を通る温風とは、第1ドア本体111と第2ドア本体210との間で混合し、上述したエアミキシング領域AMが形成される。
【0064】
(2.3)作用・効果
以上説明した第2実施形態では、第2ドア本体210が通過ダクト211を有していても、第1実施形態の作用・効果と同様に、冷風の温度上昇を防止できるとともに、空調ケース10の小型化を実現できる。
【0065】
具体的には、第2実施形態では、第2ドア本体210は、ヒータコア70を通過した温風が通る複数の通過ダクト211を有する。これにより、エアミキシング領域AMにおいて冷風と温風とが混合し易くなる。
【0066】
ここで、第2実施形態では、第2ドア本体210は、回動支軸112を介して第1ドア本体111と一体に形成されているが、これに限定されるものではなく、第1実施形態の変更例で説明したように、第1ドア本体111と別体に形成されていても勿論よい。
【0067】
(3)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0068】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、第2のミックスドアは、第1ドア本体111と所定の隙間を介して平行位置に設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、第1ドア本体111に対して多少傾いた位置に設けられていてもよい。すなわち、第1ドア本体111が冷風通路を塞ぎ、且つ第2ドア本体210が温風通路を塞げればよく、空調ケース10(空気通路)の形状に合わせて適宜設定できる。
【0069】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0070】
1,2…自動車用空調装置
10…空調ケース
11…画壁
20…吹出口
DEF…デフ吹出口
FOOT…フット吹出口
VENT…ベント吹出口
21…デフドア
22…ベントドア
23…フットドア
30…空気通路
31…導入通路
32…冷風通路
33…温風通路
40…ブロワ
50…フィルタ
60…エバポレータ
70…ヒータコア
100…第1のミックスドア
110…冷風側ミックスドア
111…第1ドア本体
112…回動支軸
120…温風側ミックスドア
200…第2のミックスドア
210…第2ドア本体
211…通過ダクト
220…連結部分
230…回動支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入された空気を車室内に向けて吹き出す吹出口が形成される空調ケースと、
前記空調ケース内に配設され、前記空気を冷却することによって冷風を生成するエバポレータと、
前記エバポレータよりも前記空気の流れ方向の下流側に配設され、前記エバポレータを通過した前記空気を加熱することによって温風を生成するヒータコアと、を備える自動車用空調装置であって、
前記エバポレータを通過した前記冷風を前記吹出口側と前記ヒータコア側とに分配する第1のミックスドアと、
前記第1のミックスドアと連動し、前記エバポレータを通過した前記冷風を前記ヒータコアに通過させずに、前記吹出口側へ導く第2のミックスドアとをさらに備えることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用空調装置であって、
前記第1のミックスドアは、
前記冷風が通過する冷風通路を閉じ状態として前記冷風を全て前記ヒータコア側へ導入する全閉位置と、前記冷風通路を開け状態として前記冷風を全て前記吹出口側へ導く全開位置との間で回動する冷風側ミックスドアと、
前記冷風側ミックスドアが前記全閉位置にあるとき、前記温風が通過する温風通路を開け状態として前記冷風を全て前記ヒータコア側へ導く全開位置と、前記冷風側ミックスドアが前記全開位置にあるとき、前記温風通路を閉じ状態として前記冷風を全て前記吹出口側へ導く全閉位置との間で回動する温風側ミックスドアとによって構成され、
前記第2のミックスドアは、前記冷風側ミックスドアが前記全開位置にあるとき、前記温風通路を塞ぐとともに、前記冷風側ミックスドアが前記全閉位置にあるとき、前記温風通路を開放することを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用空調装置であって、
前記冷風側ミックスドアは、
前記冷風が通過する冷風通路を開閉可能な第1ドア本体と、
前記第1ドア本体を回動させる回動支軸と
によって構成され、
前記第2のミックスドアは、前記第1ドア本体と所定の隙間を介して平行位置で配設される第2ドア本体によって構成されることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動車用空調装置であって、
前記第2ドア本体は、前記ヒータコアを通過した前記温風が通る複数の通過ダクトを有し、前記第1ドア本体と前記第2ドア本体との間を通過する前記冷風と前記通過ダクトを通る前記温風とを混合させることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載の自動車用空調装置であって、
前記第2のミックスドアは、前記冷風側ミックスドアと一体に形成され、前記冷風側ミックスドアの回動に連動して回動することを特徴とする自動車用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−240481(P2012−240481A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110247(P2011−110247)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】