説明

自動車用部品のエンブレム及びその製造方法

【課題】自動車用の各種部品からエンブレムが剥離しないように一体に成形させる自動車用部品のエンブレム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ロール形態で巻き取られたフィルムに一定の間隔でエンブレムを印刷するプリンティング工程(ステップS1)と、前記エンブレムが印刷されたフィルムを立体化させるフォーミング工程(ステップS2)と、前記フォーミング工程で立体化されたフィルムを切断機でカットし、エンブレムフィルムを得る切断工程(ステップS3)と、上部及び下部からなる金型内に、前記切断工程で切断されたエンブレムフィルムを挿入させる挿入工程(ステップS4)と、前記金型内に溶融された樹脂を注入し、前記樹脂と前記エンブレムフィルムとを一体化させるモルディング工程(ステップS5)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品のエンブレム及びその製造方法に関し、さらに詳細には、自動車のエアーバック、フードトップ、ホイールキャップ、サイドトリム、ギアノブなどに取り付けられ、製造社を示す自動車用部品のエンブレム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、エンブレムは、自社で製造された製品の表面または外観に取り付けることによって、自社製品であることを消費者に認識させるためのものである。
【0003】
すなわち、エンブレムは、会社名や団体、会社マーク、ロゴなどを示す図形、記号またはこれらを組み合わせて、特定の会社や団体を簡単に示す印章として使われるものである。
【0004】
かかるエンブレムは、容易に目立つように、プラスチックまたは金属の表面にクロムメッキを行う。メッキ方法には、電気的メッキ、化学的メッキ、溶融メッキなどが挙げられるが、ここでは、電気的メッキと化学的メッキについて簡略に説明する。
【0005】
電気的メッキ方法は、硫酸銅溶液が入っているメッキ槽を設け、電流が供給されるように電源を用意し、適正な電流が供給されるように加減抵抗器を設け、電源に連結した陰極棒をメッキ槽内に設ける。
【0006】
このような発電機において、陰極棒に電源を印加させる場合、メッキしたい材料に連結した陰極棒が負の電荷を帯びるようになり、陰極棒から放出された電子が銅イオン(Cu+)に伝達され、銅金属を析出させるようになる。
【0007】
さらに、メッキ槽内の硫酸イオン(SO−)が同じ数の陽極である銅金属に集まるようになり、硫酸溶液中に新しい硫酸銅が生成されることによって、メッキしたい材料の表面に正常な原子間の間隔をもって蓄積されるようになり、メッキが行われる。
【0008】
電気的メッキ方法は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、銀、カドミウム、金などのような多様な金属が適用され、製品の表面に光沢が生ずるように銅−ニッケル−クロム合金にてメッキすることができるので、耐腐食性、耐摩耗性などが要求される製品に適用される。
【0009】
また、化学的メッキ方法は、電気が導通しない製品、すなわち不導体であるプラスチック、繊維、紙などを化学メッキ液に装入しメッキするものであって、これは、脱脂槽内に装入し、メッキ対象物の表面に付着している有機物などを除去する脱脂工程と、メッキ対象物の表面に微細な凹凸を形成させることによって、アンカー効果(Anchoring Effect)によるメッキの密着性を向上させると同時に、メッキ対象物の表面に親水性を付与するエッチング(Etching)工程とから構成される。
【0010】
次に、凹凸部分にパラジウムと錫核を形成させる活性工程と、錫とパラジウムイオンのうち錫成分を完全に除去させる再活性工程を進行する。
【0011】
また、パラジウム触媒を用いてエッチングで形成された凹凸部分にニッケル(Ni)金属粉を薄くメッキし、不導体であるメッキ対象物を伝導体に転換させる伝導体転換工程と、前記ニッケルのメッキ部分に表面光沢及び面の平滑性を付与するように硫酸銅でメッキする第1光沢工程を進行する。
【0012】
次に、半光沢ニッケル、光沢ニッケル、ジュラルミンニッケルを用いて2層または3層に積層し、電着性及び高耐食性を付与する第2光沢工程と、メッキされた表面が大気中で変色しない耐食性及び耐久性を有するようにクロム(Cr)でメッキするが、この際、メッキされるクロムの厚さを0.1〜0.5μmで形成させるクロムメッキ工程とから構成される。
【0013】
このようにメッキがなされたメッキ対象物の表面に付着している異物を除去し且つ水洗不良が発生しないようにイオン浄水で水洗させる水洗工程と、水洗されたメッキ対象物を移動台車に移送させて、熱風乾燥器で乾燥させる乾燥工程とから構成される。
【0014】
前述のようなメッキ方法で成形されたエンブレムを自動車のフードトップ、エアーバックなどに取り付けるが、特に、エアーバックに取り付けられたエンブレムは、プラスチック射出で成形されたエアーバックアウトカバーの表面に取り付けることによって、自動車の衝突時、インフレータ(Inflator)により亜窒酸ナトリウムなどのガス発生剤を瞬間的に燃焼させて発生した窒素ガスによりエアーバックが膨らむ時、エアーバックアウトカバーからエンブレムが剥離する場合が発生するようになる。
【0015】
このようにエアーバックから剥離したエンブレムと搭乗者が接触するようになり、傷害を受けるようになる短所があり、エアーバックの展開時、エアーバックが飛び出すように、エアーバックアウトカバーにテアライン(Tear Line)を形成させるようになるが、エンブレムが取り付けられる面積を確保することによって、テアラインを設計するにあたって、設計上の制約が伴うようになるという不都合がある。
【0016】
また、エンブレムの製造時、クロムなどの重金属で光沢を付与するため、重金属による環境汚染、すなわち水質汚染または土壌汚染を発生させ、エアーバックアウトカバーにエンブレムを取り付けるための接着工程が付加されることによって、製品の生産性の低下はもちろん、作業能率を低下させるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、自動車用の各種部品からエンブレムが剥離しないように一体に成形させる自動車用部品のエンブレム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述のような目的を達成するために、本発明の一態様に係るエンブレムの製造方法は、ロール形態で巻き取られたフィルムに一定の間隔でエンブレムを印刷するプリンティング工程(ステップS1)と、前記エンブレムが印刷されたフィルムを立体化させるフォーミング工程(ステップS2)と、前記フォーミング工程で立体化されたフィルムを切断機でカットし、エンブレムフィルムを得る切断工程(ステップS3)と、上部及び下部からなる金型内に、前記切断工程で切断されたエンブレムフィルムを挿入させる挿入工程(ステップS4)と、前記金型内に溶融された樹脂を注入し、前記樹脂と前記エンブレムフィルムとを一体化させるモルディング工程(ステップS5)とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、図案を印刷してキャビティ内に挿入させて、成形物とエンブレムを一体に成形するので、エンブレムが剥離するようなおそれを防止することができ、自動車の衝突時、エンブレムと搭乗者とが接触に起因する傷害を受けないようになる。さらに、クロムなどの重金属によるメッキ工程無しにエンブレムを製造するので、環境汚染を誘発させないようになり、別途にエンブレムを付着する作業工程を省略することができ、製造コストを節減することができるという有用な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る好適な実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るエンブレムの製造方法の概略的な流れ図であり、図2は、本発明に係るエンブレムの製造方法の説明図である。
【0022】
図1に示されたように、本発明は、会社ロゴ、マークなどのエンブレムを印刷するプリンティング工程(ステップS1)と、エンブレムが印刷されたフィルムを立体化させるフォーミング工程(ステップS2)と、フォーミングされたフィルム(エンブレムフィルム)を切断する切断工程(ステップS3)と、キャビティ13内に挿入させる挿入工程(ステップS4)と、エンブレムフィルム12を樹脂が注入されるノズルを具備した上部及び下部金型のキャビティ13内に装入し、樹脂を注入させてエアーバックアウトカバー15を成形するモルディング工程(ステップS5)とから構成される。
【0023】
まず、プリンティング工程(ステップS1)は、エンブレム、すなわち会社のマーク、ロゴ、記号などからなる図案をフィルムに印刷する。この際、使われるフィルムは、ポリエチレンテレフタルレート(PET:Polyethylene Terephthalate)フィルム10をロール形態で巻き取り、切断に備えて、適正な間隔を維持しつつ図案を印刷する(図2a参照)。
【0024】
これとは異なって、所定のサイズを有するシート形態からなるPETフィルム10に図案を印刷することも可能であり、ポリカーボネート(PC:Poly Carbonate)フィルムをも使用可能であることもちろんである。
【0025】
印刷方法には、グラビヤ輪転印刷機を用いて印刷するグラビヤ印刷または半自動印刷機を用いた印刷方法を使用し、図案の色相に応じて多色印刷が可能なので、1度以上の多様な色相で印刷できることはもちろんである。
【0026】
プリンティング工程(ステップS1)が完了すれば、PETフィルム10の一方の面に接着剤を塗布し、PETフィルム10と同じ幅を有する板状の基材11を接着させる。また、PETフィルム10の両面に、薄くて且つ透明な保護フィルム(図示せず)を貼り付け、基材11から容易に剥離するようにする。
【0027】
前記基材11は、プレス、真空成形装置などを用いて熱、圧力または真空により形態的な変形が容易な合成樹脂材質を使用することが好ましい。
【0028】
このようにPETフィルム10が接着された基材11に、基材11が変形するように温度、圧力または真空を加える場合、基材11が変形すると共に、PETフィルム10も変形され、所定の立体形状からなる。すなわち、印刷された図案部分だけが変形するように、フォーミング工程(ステップS2)が行われる(図2b参照)。前記PETフィルム10の変形は、後述するモルディング工程(ステップS5)で成形されるエアーバックアウトカバーの屈曲面と同じ屈曲面からなる。
【0029】
フォーミング工程(ステップS2)では、PETフィルム10を立体化させる場合、図案によって平面でなく、凹凸形態で変形させることも可能である。
【0030】
次に、PETフィルム10を切断機(図示せず)に移送させ、切断機の切断刀でエンブレムの図案が印刷された部分だけをカットする切断工程(ステップS3)が行われる(図2c参照)。
【0031】
切断工程(ステップS3)によりエンブレムフィルム12を得た後、このエンブレムフィルム12を、射出成形装置(図示せず)の、上部及び下部金型からなるキャビティ13内に挿入させる挿入工程(ステップS4)が行われる。前記エンブレムフィルム12は、作業者による手作業またはロボットアームなどの自動化装備を用いてキャビティ13内に挿入され、キャビティ13内のノズル14と対向する位置に装着される(図2d参照)。
【0032】
すなわち、キャビティ13内に粘着剤または低接着力の接着剤などを塗布し、一時的にエンブレムフィルム12を固定させる。
【0033】
次に、上部及び下部金型からなるキャビティ13を密着させる。その後、射出成形装置(図示せず)のホッパーに粒子状に供給された樹脂をスクリューの回転で加圧または加熱し、加熱または加圧により溶融された樹脂がノズル14を介してキャビティ13内に供給される(図2e参照)。
【0034】
この溶融樹脂をキャビティ13内に継続的に充填させることによって、キャビティ13と同じ形状のエアーバックアウトカバー15などの成形品を成形するモルディング工程(ステップS5)が行われる。
【0035】
このように成形されたエアーバックアウトカバー15をキャビティ13から排出させると、図2fのようなエアーバックアウトカバー15が製造される(図2f参照)。
【0036】
また、前述したような工程により形成されたエアーバックアウトカバー15の表面に一体に成形されたエンブレムの表面に保護フィルムを取り付け、スプレーガンなどで光沢剤または色相を有する塗料などを塗布させると、エンブレムの表面状態はさらに良好に形成される。
【0037】
また、本発明は、自動車のホイールキャップを成形する時、前述したようなプリンティング工程(ステップS1)、フォーミング工程(ステップS2)及び切断工程(ステップS3)により製作されたエンブレムフィルム12を金型装置内に挿入させた状態で、ホイールキャップを成形することも可能である。
【0038】
しかも、エンジン室(engine bay)、ギアノブ(gear knob)、キーフォッブ (key fob)などの成形時にも適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るエンブレム製造方法の流れ図である。
【図2】本発明に係るエンブレム製造方法の概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 PETフィルム
11 基材
12 エンブレムフィルム
13 キャビティ
14 ノズル
15 エアーバックアウトカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール形態で巻き取られたフィルムに一定の間隔でエンブレムを印刷するプリンティング工程(ステップS1)と、
前記エンブレムが印刷されたフィルムを立体化させるフォーミング工程(ステップS2)と、
前記フォーミング工程で立体化されたフィルムを切断機でカットし、エンブレムフィルムを得る切断工程(ステップS3)と、
上部及び下部からなる金型内に、前記切断工程で切断されたエンブレムフィルムを挿入させる挿入工程(ステップS4)と、
前記金型内に溶融された樹脂を注入し、前記樹脂と前記エンブレムフィルムとを一体化させるモルディング工程(ステップS5)とを備えることを特徴とするエンブレムの製造方法。
【請求項2】
前記プリンティング工程後、前記エンブレムフィルムに透明な保護フィルムを貼り付ける工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエンブレムの製造方法。
【請求項3】
前記金型内に挿入されたエンブレムフィルムは、粘着剤または接着剤により前記金型内に一時的に固定されることを特徴とする請求項2に記載のエンブレムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムは、ポリエチレンテレフタルレート(PET)であることを特徴とする請求項3に記載のエンブレムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルムは、ポリカーボネート(PC)であることを特徴とする請求項3に記載のエンブレムの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のエンブレムの製造方法により製造されることを特徴とするエンブレム。
【請求項7】
前記エンブレムは、自動車用エアーバックのカバーに装着されることを特徴とする請求項6に記載のエンブレム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−261561(P2007−261561A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162660(P2006−162660)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(505245416)デルファイ コリア コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】