説明

自動車用電気コネクタ

【課題】ピッチ変換を行いながら、放熱性の高い自動車用電気コネクタを提供する。
【解決手段】本発明の自動車用電気コネクタ1に搭載されるECU5が備える複数のパッド電極51のピッチaを変換するピッチ変換ボード4と、相手側の電気コネクタを受容するヘッダ・コネクタ8とを備える。ピッチ変換ボード4は、ECU5のパッド電極51と電気的に接続されるECU接続端46と、ECU接続端46と電気的に接続され、パッド電極51とは異なるピッチで配列されるコンタクト接続端431、を備える。ヘッダ・コネクタ8は、ピッチ変換ボード4のコンタクト接続端431と電気的に接続される複数のコンタクト87を備える。コンタクト87は、ECU5のパッド電極51が形成される面側に配置されるので、放熱フィンとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電気コネクタに関し、搭載されるECU(Electronic Control Unit)と相手側のコネクタとをピッチ変換を伴って接続する自動車用電気コネクタ(以下、単にコネクタ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジンの動作をきめ細かに制御するため、あるいは制御対象が増えることにより、ECUの高密度化が進められている。その中で、他の自動車用機器、部材と同様に、小型化の要請がECUにもなされている。ECUが小型化され、さらに多極化されると、ECUの電極間ピッチが従来にもまして狭くなる。
一方、ECUと接続される車体側ワイヤハーネスに設けられるコネクタは、ECUのように小型化は困難であり、従来から使用されている既存品を用いることが信頼性の面、コストの面からも好ましい。このコネクタは、コンタクト間のピッチがECUの電極間ピッチよりも広い。したがって、このコネクタを狭ピッチのECUに接続するためには、ピッチ変換を行なう必要がある。例えば特許文献1に記載されているようにピッチ変換を行うコネクタは公知であり、このピッチ変換コネクタを用いれば、既存のコネクタを狭ピッチのECUに接続できる。しかし、ピッチ変換コネクタはこれまで電子回路機器などの検査に専ら用いられていたものの、自動車、その他の装置にピッチ変換コネクタが組み込まれる例を見出せない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−253014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピッチ変換に加えて、ECUの高密度化、小型化に伴う技術的な課題として、ECUを正常に動作させるために、効率的にECUから放熱させる必要がある。表裏いずれかの面に電極が形成されるECUを想定すると、電極が形成されていない面(放熱面)にはヒートシンク等の放熱構造を設けることができるが、電極が形成される面には放熱構造を設けることができないので、放熱が不十分である。特に、ECUが小型化されると放熱面の面積が小さくなるので、放熱効率が著しく低下する。
本発明は、以上の技術的課題に基づいてなされたもので、ピッチ変換を行いながら、放熱効率の高いコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコネクタは、ピッチ変換部とコネクタ部とを備える。ピッチ変換部は、ECUを搭載し、ECUが備える複数の電極のピッチaを変換する。相手側の電気コネクタと接続されるコネクタ部は、ピッチ変換部と対向して配置される。
本発明のピッチ変換部は、ECUの電極と電気的に接続されるECU接続端と、ECU接続端と電気的に接続され、ピッチaとは異なるピッチbで配列されるコンタクト接続端とを備える。
また、コネクタ部は、ピッチ変換部のコンタクト接続端と電気的に接続される複数のコンタクトを備える。このコンタクトは、ECUの電極が形成される面側に配置される。
本発明のコネクタは、電極が配置されるために放熱を行なうことのできない面側にコンタクトを配置する。熱伝導性の高いCu等の金属で構成されるこのコンタクトが、放熱フィンとして機能することにより、通常は放熱できない面側から放熱できるので、ECUが小型化されても、高い放熱効率を実現できる。
【0006】
本発明のコネクタにおいて、複数のコンタクトは、ECUの平面方向に直交する方向を向き、かつ、一部のコンタクトがECUの投影面内に配置されることが好ましい。ECUの電極から放熱フィンとして機能するコンタクトまでの距離を短くすることで、より高い放熱効率を実現できる。
【0007】
本発明のコネクタにおいて、ピッチ変換部は、基部と配線部とを備える。基部は、コンタクト接続端が設けられるとともに、コンタクトの一端側が挿入されるコンタクト挿入孔を備える。配線部には、ECU接続端とコンタクト挿入孔内に設けられるコンタクト接続端とを繋ぐ配線パターンが埋設される。このように構成することで、ピッチ変換部とコネクタ部を組み付ける際に、ECUの電極にコンタクトが直接衝突することにより電極が削れるのを防ぐことができる。また、コンタクト挿入孔は配線部で塞がれるため、コンタクトが接触することによりコンタクト接続端が削れて金属塵が生じても、ECUの電極とピッチ変換部のECU接続端との間へ侵入して電気的短絡が生ずるのを防ぐことができる。さらにまた、コンタクトをコンタクト挿入孔に挿入すれば、コンタクト接続端と接続できるので、コンタクト接続端とコンタクトとの接続を容易かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極が配置されるために通常は放熱を行なうことのできないECUの面側にコンタクトを配置する。このコンタクトが、放熱フィンとして機能することにより、通常は放熱できない面側から放熱できるので、ECUが小型化されても、高い放熱効率を実現できる。
特に、ECU(コネクタ)が多極化されると、それに応じてコンタクトの本数が増えるので、放熱効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態におけるコネクタの斜視図であり、(a)は上面から視た図、(b)は背面から視た図である。
【図2】本実施の形態におけるコネクタのECU保持部とコネクタ部を分解して示す斜視図である。
【図3】本実施の形態におけるコネクタのヘッダ・コネクタの配列方向(図1のx軸方向)に沿う断面図である。
【図4】本実施の形態におけるコネクタのコンタクトの整列方向(図1のy軸方向)に沿う断面図である。
【図5】本実施の形態におけるコネクタのヘッダ・コネクタの整列方向に沿う断面斜視図である。
【図6】本実施の形態におけるコネクタのピッチ変換ボード上面を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態におけるコネクタのピッチ変換ボード近傍を示す拡大断面斜視図である。
【図8】本実施の形態におけるコネクタのピッチ変換ボードの部分拡大断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面1〜8に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態に係る自動車用電気コネクタ(以下、単にコネクタ)1は、図1に示すように、ECU保持部2とコネクタ部7から構成される。
ECU保持部2は、多極、例えば160極以上のパッド電極51(図7参照)を備えるECU5を保持する。また、ECU保持部2は、ECU5のパッド電極51のピッチを拡げてヘッダ・コネクタ8に導通させるピッチ変換機能を有する。パッド電極51は、例えば銅、銅合金等の導電性及び熱伝導性に優れた金属材料で構成される。
コネクタ部7は、車体側ワイヤハーネスに設けられる相手側コネクタと接続され、車体側ワイヤハーネスとECU保持部2に保持されるECU5との信号のやり取りを仲介する。なお、以下、単に「接続」と言う場合は、電気的な接続を意味するものとする。
コネクタ1において、図1(a)のx軸方向をヘッダ・コネクタ8の配列方向とし、同y軸方向をコンタクトの配列方向と定義する。
【0011】
<ECU保持部2,上部蓋3>
ECU保持部2は、図2に示すように、上部蓋3と、上部蓋3に対向して配置されるピッチ変換ボード4と、上部蓋3とピッチ変換ボード4との間に配置されるECU5とを備えている。
上部蓋3は、図3〜図5に示すように、コネクタ部7に対向する面(裏面とする)の中央部には、熱伝導シート6が収容される第1凹部31が形成されている。上部蓋3の裏面には、ピッチ変換ボード4が収容される。第1凹部31よりも大きな開口面積を有する第2凹部32が形成されている。また、上部蓋3は、四隅に上部蓋3を表面から裏面まで貫通するねじ孔33が形成されている(図1、図2参照)。ねじ孔33は、ねじSの頂部が収容されるように、表面側の径が大きく設定されている。上部蓋3は、例えばアルミニウム合金をダイカストすることにより作製される。
【0012】
<ECU保持部2,ピッチ変換ボード4>
ピッチ変換ボード4は、ピッチの狭いECU5のパッド電極51と、ピッチの広いヘッダ・コネクタ8のコンタクト87とをピッチ変換しながら接続する。
図3〜図5に示すように、ピッチ変換ボード4は、基部41と、基部41の表面に積層される配線部42とを備える。基部41及び配線部42は、絶縁性の樹脂で形成される。配線部42は基部41の表面の全面を覆うが、ECU5が配置される矩形領域49はそれ以外の部分よりも薄く形成されている。基部41及び配線部42内には、後述するようにピッチ変換を行う回路パターンが形成される。
【0013】
基部41には、図3、図8に示すように、複数のコンタクト挿入孔43が表裏面に貫通して形成されている。コンタクト挿入孔43は、ヘッダ・コネクタ8のコンタクト87の極数、位置に対応して設けられている。コンタクト挿入孔43の周囲及び底(図中では最上面)には、Sn、Au、Cu等の金属めっきからなるコンタクト接続端431が形成されている。なお、コンタクト接続端431は金属めっきに限定されるものではなく、金属製のフィルムにより形成してもよい。各々のコンタクト挿入孔43の底から表面に向けて突出する接続突部44が設けられており、この接続突部44はコンタクト挿入孔43の周囲に形成されるコンタクト接続端431と導通されている。
コンタクト挿入孔43内にコネクタ部7が保持するコンタクト87が挿入される。コンタクト87は、コンタクト挿入孔43内でコンタクト接続端431と接続されることにより、以下説明するように、ECU5と接続される。
【0014】
図7、図8に示す配線部42の内部に、基部41の平面方向に平行で一端が接続突部44と接続される配線パターン45が形成される。配線パターン45の他端はECU接続端46に接続される。ECU接続端46は、配線部42の厚さ方向に沿って形成され、その頂部は配線部42の表面からECU5に向けて突出する。図6に示すように、ECU接続端46はピッチ変換ボード4(配線部42)の矩形領域49の内部に、ECU5のパッド電極51に対応して配列される。
【0015】
以上の概略構成を有するピッチ変換ボード4は、コンタクト挿入孔43が形成される基部41を用意し、その一方の面側に配線部42、接続突部44、配線パターン45及びECU接続端46を積層法で形成することができる。積層法は当業者間において周知であるから、ここでの説明は省略する。
【0016】
<ECU保持部2,ECU5>
ECU5は、点火時期や燃料噴射、アイドルアップ、リミッターといったエンジンの基本的な制御に加えて、AT(Automatic Transmission:自動変速機)、駆動系、制動系、操舵系などの制御を各センサーから車体側ワイヤハーネスを介して伝えられる情報に基づいて行なう。このように、制御対象が多くなるのに伴って、これら機能が集約されるECU5はパッド電極51の数が増大する。
ECU5の基本的な構成は、CPU(Central Processing Unit)、EEPROM等のメモリ等から構成される従来のECUと同様であり、裏面にパッド電極51が形成される。このパッド電極51が、ピッチ変換ボード4のECU接続端46と接続される。
ECU5は、例えば15〜20mm×15〜20mm程度のサイズで作製される。
【0017】
<ECU保持部2,熱伝導シート6>
熱伝導シート6は、上部蓋3の第1凹部31内に収容される。熱伝導シート6は、表面が上部蓋3に接触し、裏面がECU5に接触して、ECU5で発生した熱を上部蓋3に効率よく伝える。熱伝導シート6としては、熱伝導性のよい炭素素材を使用したもの等公知の材質を広く適用できる。また、熱伝導シート6が表裏一方又は双方の面に粘着材を備えれば、上部蓋3、ECU5との接触を確実に行なうことができる。なお、熱伝導シート6を介在させることが本実施の形態において好ましいが、熱伝導シート6を用いることなくECU5の表面を上部蓋3の裏面に直接接触させてもよいことは言うまでもない。
【0018】
<コネクタ部7>
コネクタ部7は、車体側ワイヤハーネスに設けられる相手側のコネクタと接続される。コネクタ部7がECU保持部2と一体化されることにより、車体側ワイヤハーネスはピッチ変換ボード4を介してECU5に接続される。
コネクタ部7は、ヘッダ・コネクタ8と、ヘッダ・コネクタ8を保持する下部ケース9とから構成される。本実施の形態では、同様の構成を有する6つのヘッダ・コネクタ8が、3つずつに区分して下部ケース9に保持される。
【0019】
<コネクタ部7,ヘッダ・コネクタ8>
ヘッダ・コネクタ8は、ハウジング81と、ハウジング81に保持されるコンタクト87とから構成される。
外形が直方体状のハウジング81は、高さ方向の所定位置にコンタクト87を保持する保持壁82が設けられる。保持壁82には、コンタクト87が挿入される保持孔85が形成されている。コンタクト87は、保持孔85に圧入されることにより、保持壁82に保持される。なお、ハウジング81は、樹脂を射出成形することにより作製できる。
【0020】
ハウジング81の内部は、保持壁82により、上部領域83と下部領域84に区分される。コンタクト87は、保持壁82の上部に突出する部分が、上部領域83を貫通し、さらにピッチ変換ボード4のコンタクト挿入孔43に挿入され、コンタクト挿入孔43の周囲に形成されるコンタクト接続端431に接続される。コンタクト87はまた、保持壁82の下部に突出する部分が下部領域84内に収容される。車体側ワイヤハーネスに設けられる相手側コネクタは、下部領域84内に受容され、ヘッダ・コネクタ8と接続される。
【0021】
ハウジング81の長さ方向の両端部には、位置決め突条86が高さ方向に沿って形成されている。ヘッダ・コネクタ8は、位置決め突条86が下部ケース9に形成される位置決め溝96に案内されながら、下部ケース9に挿入される。
【0022】
<コネクタ部7,コンタクト87>
コンタクト87は、一方端にリセプタクル接点部87R、他方端にタブ接点部87Tを備える。コンタクト87は、弾性、導電性及び熱伝導性に優れる銅又は銅合金を、機械加工することにより作製される。
リセプタクル接点部87Rは、上部領域83を貫通してピッチ変換ボード4のコンタクト挿入孔43に挿入される。リセプタクル接点部87Rは、コンタクト挿入孔43の周囲に形成されるコンタクト接続端431との確実な接続を弾性変形により確保するために、屈曲部87bを備えている。ただし、弾性変形による確実な接続の確保のための形態は、屈曲部87bに限るものでなく、例えばリセプタクル接点部87Rの先端をU字状に屈曲させるものでもよい。
タブ接点部87Tは、下部領域84内に配置される。直線状のタブ接点部87Tは、下部領域84に挿入される相手側コネクタのコンタクトと接続される。
【0023】
<コネクタ部7,下部ケース9>
下部ケース9は、例えばアルミニウム合金をダイカストすることにより作製されるケース本体91を備える。ケース本体91は、ヘッダ・コネクタ8を収容するコネクタ収容部92と、コネクタ収容部92の上端から外側に向けて突出する縁部97とから構成される。
コネクタ収容部92は、高さ方向に貫通する収容キャビティ93を備える。収容キャビティ93は、区画壁94の両側に1つずつ形成されており、1つの収容キャビティ93に3つのヘッダ・コネクタ8が収容される。コネクタ収容部92は、収容キャビティ93に収容したヘッダ・コネクタ8を支持するための支持体95が設けられる。支持体95は、収容キャビティ93の幅方向の縁、および収容キャビティ93を幅方向に3分割する位置に、収容キャビティ93の長手方向に沿って形成される。収容キャビティ93に収容されるヘッダ・コネクタ8は、その下端縁が支持体95に支持されることにより、下部ケース9に保持される。
収容キャビティ93の幅方向の両端には、ヘッダ・コネクタ8の位置決め突条86が挿入される位置決め溝96が形成される。ヘッダ・コネクタ8を収容キャビティ93に収容する際には、位置決め突条86が位置決め溝96で案内されながら、支持体95に突き当たるまでヘッダ・コネクタ8を収容キャビティ93に押し込む。
【0024】
縁部97は、上部蓋3と対向するように形成される。縁部97には、その四隅に表裏を貫通するねじ孔98が形成されている。また、縁部97の内側であって、コネクタ収容部92の頂部には、ねじ孔99が形成されている(図2参照)。後述されるように、ねじ孔98は、上部蓋3と下部ケース9とを固定するために用いられ、ねじ孔99はピッチ変換ボード4を下部ケース9に固定するために用いられる。
【0025】
コネクタ1は、以下のようにして組み付けることができる。ただし、以下の手順は一例であって、本発明を限定するものではない。
ヘッダ・コネクタ8が収容された下部ケース9の所定位置にピッチ変換ボード4を配置する。このとき、ヘッダ・コネクタ8のコンタクト87(リセプタクル接点部87R)を、ピッチ変換ボード4のコンタクト挿入孔43に挿入する。しかる後に、固定ねじSをピッチ変換ボード4のねじ孔48を貫通し、かつ下部ケース9のねじ孔99にねじ込むことで、ピッチ変換ボード4をコネクタ収容部92に固定する。
ピッチ変換ボード4が固定された後に、ECU5をピッチ変換ボード4上の矩形領域49に置く。このとき、各々対応するピッチ変換ボード4のECU接続端46とECU5のパッド電極51とが接続される。
【0026】
一方、上部蓋3の第1凹部31内に熱伝導シート6を収容する。第1凹部31へ熱伝導シート6を収容するには、熱伝導シート6の表面に設けた粘着テープで上部蓋3に粘着すればよい。
【0027】
熱伝導シート6が粘着された上部蓋3を、ヘッダ・コネクタ8が収容された下部ケース9の上面に覆い被せる。このとき、熱伝導シート6がECU5の上面に接する正規の位置に位置決めされる。しかる後に、固定ねじSを上部蓋3のねじ孔33を貫通し、かつ下部ケース9のねじ孔98にねじ込むことで、上部蓋3を下部ケース9に固定する。ECU5は、上部蓋3とピッチ変換ボード4の間に挟まれることにより、固定される。
【0028】
以上のように構成されたコネクタ1は、ECU5のパッド電極51とヘッダ・コネクタ8のコンタクト87をピッチ変換ボード4によりピッチ変換する。したがって、ECU5が小型化された場合でも、コネクタ1は、車体側ワイヤハーネスに設けられる相手側コネクタを極数を増やす以外は既存のものを用いることができるが、さらに以下の特徴的な作用・効果を奏する。
コネクタ1は、ECU5のパッド電極51が形成されていない上面(放熱面)には熱伝導シート6、上部蓋3を介して放熱が行なわれる。しかるに、ECU5が小型化されると、放熱面の面積が小さくなり、放熱効率が劣る。これに対して、コネクタ1は、パッド電極51が形成されている裏面側からも以下説明するように放熱が行なわれる。つまり、ECU5で発生した熱は、パッド電極51にも伝わり、さらにピッチ変換ボード4のECU接続端46、配線パターン45、接続突部44を通って、コンタクト挿入孔43周囲に形成されるコンタクト接続端431に伝わる。コンタクト接続端431に伝わった熱はコンタクト接続端431に接触するコンタクト87に伝わる。このように熱が伝わるパッド電極51、ECU接続端46、配線パターン45、接続突部44、コンタクト接続端431及びコンタクト87は、熱伝導性に優れる金属、とりわけ銅又は銅合金で構成されている。しかも、コンタクト87はコンタクト挿入孔43内に挿入されているものの、それ以外の部分は外気に露出している。したがって、コンタクト87があたかも放熱フィンとして機能することで、ECU5で発生した熱はこれら熱伝導経路を経て速やかにコンタクト87から放熱される。しかも、ECU5が多極になることに対応してコンタクト87の本数が増えれば、それだけECU5からの放熱が促進されることになる。このように、コネクタ1は、ECU5の小型化に伴う放熱の困難性を、多極化を利用することにより解消できる。
【0029】
コンタクト87の放熱フィンとしての機能を効果的に発揮させるためには、ピッチ変換ボード4内に埋設されるECU接続端46、配線パターン45、接続突部44及びコンタクト接続端431で形成される熱伝導経路を短くすることが好ましい。そうするためには、ECU5の投影面内に一部又は全部のコンタクト87が配設されるように設計すればよい。ただし、これは本発明の好ましい形態であって、ECU5の投影面内にコンタクト87が配設されていない場合であっても、コンタクト87の放熱フィンとしての機能が発揮されることは言うまでもない。
【0030】
コネクタ1は、コンタクト87がECU5の平面方向に直交する方向を向いており、かつ一部のコンタクト87はECU5の投影面内に配置されている(図4参照)。これらコンタクト87は、ECU5の電極51からの距離が短いので、高い放熱効率を実現する上で好ましい。
【0031】
コネクタ1において、ピッチ変換ボード4は、基部41と配線部42とを備える。基部41は、コンタクト接続端431が設けられるとともに、コンタクト87の一端側が挿入されるコンタクト挿入孔43を備える。配線部42には、ECU接続端46とコンタクト挿入孔43内に設けられるコンタクト接続端431とを繋ぐ配線パーン45が埋設される。このように構成することで、ピッチ変換ボード4とコネクタ部7を組み付ける際に、ECU5のパッド電極51にコンタクト87が直接衝突することによりパッド電極51が削れるのを防ぐことができる。また、コンタクト挿入孔43は配線部42で塞がれるため、コンタクト87が接触することによりコンタクト接続端431が削れて金属塵が生じても、ECU5のパッド電極51とピッチ変換ボード4のECU接続端46との間へ侵入して電気的短絡が生ずるのを防ぐことができる。さらにまた、コンタクト87をコンタクト挿入孔43に挿入すれば、コンタクト接続端431と接続できるので、コンタクト接続端431とコンタクト87との接続を容易かつ確実に行うことができる。
【0032】
上記実施の形態では、ヘッダ・コネクタ8と下部ケース9を別体として作製しているが、一体として作製することができる。この場合、全体を樹脂で作製することになる。
また、ピッチ変換ボード4について、コンタクト挿入孔43内にコンタクト接続端431を設ける形態は望ましいが、ピッチ変換を行うことのできる部材を本発明は広く適用できる。例えば、コンタクト接続端431をコンタクトとしてピッチ変換ボード4から突出させて、ヘッダ・コネクタ8のコンタクトと接続させることもできる。この場合、ヘッダ・コネクタ8をそれに適した形態に変更することになる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…自動車用電気コネクタ、
2…ECU保持部、
3…上部蓋、
4…ピッチ変換ボード、
41…基部、42…配線部、43…コンタクト挿入孔、431…コンタクト接続端、
44…接続突部、45…配線パターン、46…ECU接続端、48…ねじ孔、
49…矩形領域、
5…ECU、51…パッド電極、
6…熱伝導シート、
7…コネクタ部、
8…ヘッダ・コネクタ、
81…ハウジング、82…保持壁、83…上部領域、
84…下部領域、85…保持孔、86…位置決め突条、
87…コンタクト、87R…リセプタクル接点部、87T…タブ接点部、87b…屈曲部、
9…下部ケース、
91…ケース本体、92…コネクタ収容部、93…収容キャビティ、94…区画壁、
95…支持体、96…位置決め溝、97…縁部、98、99…ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載されるECUが備える複数の電極のピッチaを変換するピッチ変換部と、
前記ピッチ変換部と対向して配置されるとともに、相手側の電気コネクタと接続されるコネクタ部とを備え、
前記ピッチ変換部は、
前記ECUの前記電極と電気的に接続されるECU接続端と、
前記ECU接続端と電気的に接続され、前記ピッチaとは異なるピッチbで配列されるコンタクト接続端と、を備え、
前記コネクタ部は、
前記ピッチ変換部の前記コンタクト接続端と電気的に接続される複数のコンタクトを備え、
前記コンタクトは、前記ECUの前記電極が形成される面側に配置されることを特徴とする自動車用電気コネクタ。
【請求項2】
複数の前記コンタクトは、
前記ECUの平面方向に直交する方向を向いており、
かつ、その一部の前記コンタクトが前記ECUの投影面内に配置される請求項1に記載の自動車用電気コネクタ。
【請求項3】
前記ピッチ変換部は、
前記コンタクト接続端が設けられるとともに、前記コンタクトの一端側が挿入されるコンタクト挿入孔を備える基部と、
前記ECU接続端と前記コンタクト挿入孔内に設けられる前記コンタクト接続端とを繋ぐ配線パターンが埋設される配線部と、が積層して構成される請求項1又は2に記載の自動車用電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−257895(P2010−257895A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109642(P2009−109642)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】