説明

自動車車体の塗装方法

【課題】自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装する場合において、内板部及び境界部に2コート1ベーク方式または3コート1ベーク方式で外板部の塗膜外観に近い外観を呈する塗膜を形成することができる塗装法及びその自動車車体の提供。
【解決手段】自動車車体の外板部20を4コート1ベーク方式で塗装し、自動車車体の内板部22及び境界部21に対しては、自動車車体の内板部及び境界部に白系カラーベース塗料を塗装する工程(B)の内の少なくとも一方の工程を実施した後、自動車車体の外板部にクリヤ塗料を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に光輝性顔料をクリヤ塗料に含有させた塗料に相当する光輝材含有クリヤ塗料を塗装する工程を実施し、自動車車体の外板部の積層塗膜の焼付けと同時に、自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜の焼付けを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体の外板部、内板部、及び内板部と外板部の間の境界部の電着塗膜層の上に、積層塗膜を形成する自動車車体の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車車体の塗装は、電着塗装により電着塗膜層を形成した後、その上に中塗り塗装を施し、この中塗り塗膜を焼付けて硬化した後に、上塗り塗装が施されている。
【0003】
アルミフレークやマイカ粉等の光輝性顔料を配合した上塗り塗装の場合、中塗り塗膜の上に、ベース塗料を塗装し、その上に光輝性顔料を含有した光輝材含有ベース塗料を塗装し、その上にクリヤ塗料を塗装した後、この3層を1度に焼付ける3コート1ベーク方式で塗装される場合が多い。
【0004】
自動車車体の塗装においては、一般に、外板部を塗装機で塗装し、表面形状が複雑な内板部、及び内板部と外板部との間の境界部は、人またはロボット等により塗装している。
【0005】
図5は、3コート1ベーク方式で塗装する場合の一般的な自動車車体の塗装ラインの一例を示す平面図であり、塗装ラインを上方向から見た図である。自動車車体は、図面の左から右に搬送されて塗装が施され、塗膜を焼付けるための焼付け炉に送られる。
【0006】
塗装機としては、左から順番に1段目の塗装機1、2段目の塗装機2、及び3段目の塗装機3が設置されている。塗装機は、一般にそれぞれの箇所において複数設置されている。
【0007】
1段目の塗装機1の手前には、作業箇所4が設けられている。作業箇所4は、例えば自動車車体の内側の内板部及び、内板部と外板部との間の境界部を塗装するためのスペースであり、上述のように、人またはロボット等により自動車の内板部及び境界部を塗装する。
【0008】
1段目の塗装機1と2段目の塗装機2の間にも、作業箇所5が設けられており、作業箇所5においても、人またはロボット等により自動車車体の内板部及び境界部を塗装することができる。
【0009】
同様に、2段目の塗装機2と3段目の塗装機3の間にも、作業箇所6が設けられており、作業箇所6においても、人またはロボット等により自動車車体の内板部及び境界部を塗装することができる。
【0010】
図5に示す塗装ラインで、ベース塗料、光輝材含有ベース塗料、及びクリヤ塗料を3コート1ベーク方式で塗装する場合、まず、作業箇所4において、自動車の車体の内板部及び境界部に、ベース塗料を塗装し、次に塗装機1により、自動車車体の外板部にベース塗料を塗装する。
【0011】
次に、作業箇所5において、自動車車体の内板部及び境界部に、光輝材含有ベース塗料を塗装し、塗装機2によって自動車の外板部に、光輝材含有ベース塗料を塗装する。
【0012】
次に、作業箇所6において、自動車の内板部及び境界部に、クリヤ塗料を塗装し、塗装機3によって自動車の外板部に、クリヤ塗料を塗装する。
【0013】
以上のようにして、自動車車体の外板部、内板部及び境界部に、ベース塗料、光輝材含有ベース塗料、及びクリヤ塗料を塗装した後、焼付け炉に送り、各塗膜を焼付け硬化する。
【0014】
ところで、近年、さらに消費エネルギーを軽減させ、製造工程を簡略化するため、電着塗膜層の上に中塗り層を塗装した後、その上にウエットオンウエットでベース塗料を塗装し、その上に従来の3コート1ベーク方式で塗装することで、全体として4コート1ベーク方式により塗装することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0015】
このような4コート1ベーク方式による塗装を、図5に示す塗装ラインで行うには無理があり、例えば、第2の塗装機2を、前段の塗装機2aと後段の塗装機2bに分け、前段の塗装機2aでベース塗料を塗装し、後段の塗装機2bで光輝材含有ベース塗料を塗装する方法等を考える必要がある。
【0016】
しかしながら、このような場合、作業箇所5または作業箇所6のいずれかにおいて、自動車車体の内板部及び境界部に2度の塗装を施さなければならないという問題を生じる。作業箇所5及び作業箇所6は空間的に制限されており、2種類の塗装を施すと作業工程が煩雑になるという問題を生じる。また、1度目の塗装後すぐに2度目の塗装を施す必要があるので、塗膜界面における乱れを生じやすく、良好な塗膜外観が得られないという問題を生じる。
【0017】
特許文献2には、自動車車体の外板部に3コート1ベーク方式の塗装を施す場合における自動車車体の内板部及び境界部の塗装方法が開示されているが、4コート1ベーク方式の塗装については何ら記載されていない。
【特許文献1】特開2004−298837号公報
【特許文献2】特開平10−272415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装する場合において、内板部及び境界部に2コート1ベーク方式または3コート1ベーク方式で外板部の塗膜外観に近い外観を有する塗膜を形成することができる自動車車体の塗装方法及び該塗装方法により塗装された自動車車体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、自動車車体の外板部、内板部、及び内板部と外板部の間の境界部の電着塗膜層の上に、積層塗膜を形成する自動車車体の塗装方法であって、自動車車体の外板部に対しては、電着塗膜層の上にN7〜9.5の白系中塗り塗料(1)を塗装し、その上にウェットオンウェットでN7〜9.5の白系カラーベース塗料(2)を塗装し、その上にウェットオンウェットで光輝性顔料を含有する光輝材含有ベース塗料(3)を塗装し、さらにその上にウエットオンウエットでクリヤ塗料(4)を塗装した後に焼付け硬化する4コート1ベーク方式で塗装し、自動車車体の内板部及び境界部に対しては、自動車車体の外板部に白系中塗り塗料(1)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に白系中塗り塗料(1)を塗装する工程(A)、及び自動車車体の外板部に白系カラーベース塗料(2)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に白系カラーベース塗料(2)を塗装する工程(B)の内の少なくとも一方の工程を実施した後、自動車車体の外板部にクリヤ塗料(4)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に光輝性顔料をクリヤ塗料(4)に含有させた塗料に相当する光輝材含有クリヤ塗料(5)を塗装する工程(C)を実施し、自動車車体の外板部の積層塗膜の焼付けと同時に、自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜の焼付けを行うことを特徴としている。
【0020】
本発明においては、上述のように、以下に示す工程(A)及び工程(B)の内の少なくとも一方の工程を実施した後、以下に示す工程(C)を実施している。
【0021】
工程(A):自動車車体の外板部に白系中塗り塗料(1)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に白系中塗り塗料(1)を塗装する工程
工程(B):自動車車体の外板部に白系カラーベース塗料(2)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に白系カラーベース塗料(2)を塗装する工程
工程(C):自動車車体の外板部にクリヤ塗料(4)を塗装する前に、自動車車体の内板部及び境界部に、上記光輝性顔料を上記クリヤ塗料(4)に含有させた塗料に相当する光輝材含有クリヤ塗料(5)を塗装する工程
【0022】
従って、本発明によれば、以下の第1の実施形態、第2の実施形態、及び第3の実施形態で自動車車体の内板部及び境界部に積層塗膜を形成することができる。
【0023】
すなわち、第1の実施形態においては、工程(A)の後に工程(C)を実施し、自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜を、白系中塗り塗料(1)及び光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成する。
【0024】
第2の実施形態においては、工程(B)の後に工程(C)を実施し、自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜を、白系カラーベース塗料(2)及び光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成する。
【0025】
第3の実施形態においては、工程(A)及び工程(B)の後に工程(C)を実施し、自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜を、白系中塗り塗料(1)、白系カラーベース塗料(2)及び光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成する。
【0026】
本発明によれば、自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装する場合おいて、内板部及び境界部に2コート1ベーク方式または3コート1ベーク方式で、外板部の塗膜外観に近い外観を有する塗膜を内板部及び境界部に形成することができる。従って、従来の塗装ラインを用いて、自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装することができ、自動車車体の内板部及び境界部に、外板部の塗膜外観に近い外観を有する塗膜を形成することができる。
【0027】
以下、本発明において用いる白系中塗り塗料(1)、白系カラーベース塗料(2)、光輝材含有ベース塗料(3)、クリヤ塗料(4)、及び光輝材含有クリヤ塗料(5)について説明する。
【0028】
<白系中塗り塗料(1)>
本発明における白系中塗り塗料(1)は、マンセル値でN7〜9.5の値を有するものである。このような白系中塗り塗料は、二酸化チタンなどの白色系顔料を含有することにより、このようなマンセル値の範囲に調整される。
【0029】
白系中塗り塗料(1)としては、水性中塗り塗料が好ましく用いられる。水性中塗り塗料の樹脂成分としては、(a)水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂、(b)水溶性エポキシ変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0030】
本発明で用いる水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂(a)は、ビニル重合体部分を有する脂肪酸鎖が結合した水分散性ポリエステル樹脂である。上記水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂(a)は、例えば、不飽和脂肪酸の存在下で、カルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体、及びその他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体をラジカル重合させることによって得られるビニル重合体部分を有するビニル変性脂肪酸と、水酸基を有するポリエステル樹脂を縮合させる方法により製造することができる。
【0031】
水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂(a)の酸価は、20〜100mgKOH/gが好ましい。また、水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂(a)は、その15〜45質量%がビニル重合体部分となるようにすることが好ましい。
【0032】
水分散性ビニル変性ポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量は、10000〜150000の範囲であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定値をポリスチレン標準で換算した値である。
【0033】
本発明で用いる水溶性エポキシ変性ポリエステル樹脂(b)は、エポキシ基を有する水溶性ポリエステル樹脂である。水溶性エポキシ変性ポリエステル樹脂(b)は、エポキシ樹脂により、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステル樹脂を変性することで得られる。例えば、付加、縮合、グラフトなどの反応が挙げられるが、具体的には、エポキシ樹脂のエポキシ基とポリエステル樹脂のカルボキシル基または水酸基との反応や、ポリイソシアネート化合物を使用した際の、当該化合物とエポキシ樹脂及びポリエステル樹脂の水酸基との反応が挙げられる。
【0034】
水溶性エポキシ変性ポリエステル樹脂(b)の重量平均分子量は5000〜30000の範囲であることが好ましい。
【0035】
また、水酸基価は75〜200mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価は25〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0036】
水性中塗り塗料は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のその他のポリマーを併用するものであってもよい。
【0037】
水性中塗り塗料は、さらに硬化剤を含有するものである。硬化剤としては、上記樹脂成分と硬化反応を生じ、水性塗料組成物中に配合することができるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂等を挙げることができる。
【0038】
水性中塗り塗料に含有させる顔料としては、上記の白色系顔料の他に、クレー、タルク、カオリン、硫酸バリウム等の体質顔料や、その他の顔料を用いることができる。顔料の水性中塗り塗料中における全顔料濃度(PWC)は、10〜60%の範囲であることが好ましい。
【0039】
水性中塗り塗料は、水性であれば特に限定されるものではなく、例えば水溶性、水分散性または水性エマルション等の形態を挙げることができる。
【0040】
<白系カラーベース塗料(2)>
本発明における白系カラーベース塗料(2)は、マンセル値でN7〜9.5の範囲の値を有するものである。このような白系カラーベース塗料は、上記の白系中塗り塗料(1)と同様に、二酸化チタンなどの白色系顔料を含有させることにより調製することができる。
【0041】
本発明における白系カラーベース塗料(2)は、水性ベース塗料であることが好ましい。
【0042】
白系カラーベース塗料の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。また、硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂などが挙げられる。
【0043】
塗料中における樹脂成分及び硬化剤の含有量は、30〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
顔料としては、上記白系中塗り塗料(1)と同様に、白色系顔料以外に、体質顔料や、その他の顔料を含有することができる。塗料中における全顔料濃度(PWC)は、3〜70%の範囲であることが好ましい。
【0045】
水性ベース塗料は、水性であれば特に限定されるものではなく、例えば、水溶性、水分散性、水性エマルション等の形態を挙げることができる。
【0046】
<光輝材含有ベース塗料(3)>
光輝材含有ベース塗料(3)の樹脂成分及び硬化剤としては、上記白系カラーベース塗料(2)の樹脂成分及び硬化剤として説明したものを用いることができる。また、その含有量としても、同様の含有量の範囲が挙げられる。
【0047】
光輝材含有ベース塗料(3)に含有する光輝性顔料としては、通常メタリック塗料に用いられているものを用いることができ、例えば、上記顔料の基質として、マイカ粉(雲母、合成雲母)、アルミナ粉、シリカ粉などが挙げられる。マイカ粉としては、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料などが挙げられる。干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料及びホワイトマイカ顔料はマイカ顔料の表面に、TiO、SnO、ZrO、Fe、ZnO、Cr、V等及びそれらの含水物等の金属酸化物をコーティングしたマイカ顔料であってもよい。
【0048】
アルミナ粉としては、アルミニウムの酸化物であり、フレーク状の光輝性顔料を、上述した金属酸化物でコーティングしたのが挙げられる。
【0049】
シリカ粉としては、フレーク状の二酸化ケイ素に、上述した金属酸化物をコーティングしたものが挙げられる。
【0050】
光輝材含有ベース塗料(3)には、光輝性顔料以外にその他の顔料が含まれていてもよい。
【0051】
光輝材顔料ベース塗料(3)中における全顔料濃度(PWC)としては、0.1〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜40%であり、特に好ましくは1.0〜30%である。
【0052】
<クリヤ塗料(4)>
クリヤ塗料(4)の樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。クリヤ塗料(4)の硬化系の一例としては、アクリル樹脂及び/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせや、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/またはポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0053】
クリヤ塗料(4)中の固形分含有量としては、20〜60質量%であることが好ましい。
【0054】
本発明に用いるクリヤ塗料(4)の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、必要により、硬化触媒、表面調整剤等を用いることができる。
【0055】
<光輝材含有クリヤ塗料(5)>
本発明において用いる光輝材含有クリヤ塗料(5)は、光輝材含有ベース塗料(3)中に含有させる光輝性顔料を、クリヤ塗料(4)に含有させた塗料に相当する塗料である。従って、クリヤ塗料(4)に、光輝材含有ベース塗料(3)中に含有させた光輝性顔料を添加混合することにより、光輝材含有クリヤ塗料(5)を調製することができる。
【0056】
しかしながら、必ずしもクリヤ塗料(4)を用いる必要はなく、クリヤ塗料(4)の塗装により得られるクリヤ塗膜と同程度の外観を呈するクリヤ塗料であればその他の種類のクリヤ塗料を用いることができる。また、光輝性顔料も、必ずしも光輝材含有ベース塗料(3)中に含有させた光輝性顔料を用いる必要がなく、その他の光輝性顔料を用いてもよい。
【0057】
また、光輝材含有ベース塗料(3)において、光輝性顔料以外の顔料を含有させる場合には、光輝性顔料以外の顔料を、光輝材含有クリヤ塗料(5)に含有させてもよい。
【0058】
光輝材含有クリヤ塗料(5)における全顔料濃度(PWC)としては、0.1〜5%であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3%であり、特に好ましくは0.5〜2%である。
【0059】
<塗装方法>
本発明において、自動車車体の外板部を塗装する方法としては、特に限定されないが、例えば、エアー静電スプレー、回転霧化式の静電塗装等を用いることができる。
【0060】
また、本発明において、内板部及び境界部を塗装する方法としては、特に限定されるものではないが、人またはロボット等によるスプレー塗装などの手吹き塗装等を挙げることができる。
【0061】
水性塗料を塗装した後は、プレヒート等を行うことが好ましい。プレヒートの条件としては、室温〜100℃の温度で、30秒〜15分間の条件が挙げられる。
【0062】
本発明において、自動車車体の外板部の積層塗膜の焼付け及び自動車車体の内板部及び境界部の積層塗膜の焼付けは、使用する塗料に応じて適宜選択される温度で焼付けることができる。例えば、110℃〜180℃の範囲内の温度で焼付け硬化させることができる。また、焼付けの時間は、例えば、10〜60分間の範囲内とすることができる。
【0063】
本発明における電着塗膜層は、自動車車体に一般に下塗り塗膜として形成されるものを用いることができ、例えば、カチオン電着塗料により形成することができる。
【0064】
本発明において、白系中塗り塗料(1)により形成される白系中塗り塗膜の厚みとしては、例えば、10〜40μmの範囲が挙げられる。また、白系カラーベース塗料(2)により形成される白系カラーベース塗膜の厚みとしては、例えば、5〜30μmの範囲が挙げられる。
【0065】
また、光輝材含有ベース塗料(3)の塗装により形成される光輝材含有ベース塗膜の厚みとしては、例えば、10〜30μmの厚みが挙げられる。また、クリヤ塗料(4)の塗装により形成されるクリヤ塗膜の厚みとしては、例えば、10〜70μmの範囲が挙げられる。また、光輝材含有クリヤ塗料(5)の塗装により形成される光輝材含有クリヤ塗膜の厚みとしては、例えば、10〜70μmの範囲が挙げられる。
【0066】
本発明の自動車車体は、上記本発明の塗装方法により塗装されたことを特徴とする自動車車体である。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装する場合において、内板部及び境界部に2コート1ベーク方式または3コート1ベーク方式で外板部の塗膜外観に近い外観を有する塗膜を形成することができる。従って、本発明によれば、従来の塗装ラインを用いて自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式の塗装を行うことができる。また、自動車車体の外板部と、内板部及び境界部に、互いに塗膜外観の近い塗膜を効率良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明を具体的な実施形態及び実施例により説明するが、本発明は以下の実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0069】
図5を参照して、本発明に従う塗装方法の一実施形態を説明する。
【0070】
化成処理後、電着塗装により電着塗膜層を形成した自動車車体が、図5に示す塗装工程ラインに搬送される。
【0071】
作業箇所4では、自動車車体の内板部及び境界部に、白系中塗り塗料(1)が人またはロボット等により塗装される。また、作業箇所5においては、自動車車体の内板部及び境界部に、白系カラーベース塗料(2)が、人またはロボット等により塗装される。本発明においては、作業箇所4及び作業箇所5の内の少なくともいずれか一方において塗装が行われる。
【0072】
本発明に従う第1の実施形態においては、作業箇所4において塗装が行われ、作業箇所5においては塗装が行われない。
【0073】
本発明に従う第2の実施形態においては、作業箇所4において塗装が行われず、作業箇所5において塗装が行われる。
【0074】
本発明に従う第3の実施形態においては、作業箇所4及び作業箇所5の両方において塗装が行われる。
【0075】
本発明に従う第1の実施形態では、電着塗膜層が形成された自動車車体の内板部及び境界部に、作業箇所4において、白系中塗り塗料(1)が塗装される。
【0076】
次に、1段目の塗装機1により、電着塗膜層が形成された自動車車体の外板部に、白系中塗り塗料(1)が塗装される。
【0077】
次に、作業箇所5においては、塗装がなされず、2段目の塗装機2における前段の塗装機2aにより、自動車車体の外板部に、白系カラーベース塗料(2)が塗装される。
【0078】
次に、2段目の塗装機における後段の塗装機2bにより、光輝材含有ベース塗料(3)が塗装される。
【0079】
次に、作業箇所6において、自動車車体の内板部及び境界部に、人またはロボット等により、光輝材含有クリヤ塗料(5)が塗装される。
【0080】
次に、3段目の塗装機3により、自動車の外板部に、クリヤ塗料(4)が塗装される。
【0081】
以上のようにして、本発明の第1の実施形態に従い、外板部、内板部及び境界部に積層塗膜が形成された自動車車体は、焼付け炉に送られ、積層塗膜の焼付けが行われる。
【0082】
本発明に従う第2の実施形態においては、作業箇所4において塗装が行われず、電着塗膜層が形成された自動車車体の外板部に、1段目の塗装機1により、白系中塗り塗料(1)が塗装される。
【0083】
次に、作業箇所5において、電着塗膜層が形成された自動車車体の内板部及び境界部に、白系カラーベース塗料(2)が塗装される。
【0084】
次に、2段目の塗装機2における前段の塗装機2aにより、自動車車体の外板部に、白系カラーベース塗料(2)が塗装される。
【0085】
次に、2段目の塗装機2における後段の塗装機2bにより、自動車車体の外板部に、光輝材含有ベース塗料(3)が塗装される。
【0086】
次に、作業箇所6において、自動車車体の内板部及び境界部に、光輝材含有クリヤ塗料(5)が塗装される。
【0087】
次に、3段目の塗装機3により、自動車車体の外板部に、クリヤ塗料(4)が塗装される。
【0088】
以上のようにして、本発明の第2の実施形態に従い、自動車車体の外板部、内板部及び境界部に積層塗膜を形成した自動車車体は、焼付け炉に送られ、積層塗膜の焼付けが行われる。
【0089】
本発明に従う第3の実施形態においては、作業箇所4において、自動車車体の内板部及び境界部に、白系中塗り塗料(1)が塗装される。
【0090】
次に、1段目の塗装機1により、自動車車体の外板部に、白系中塗り塗料(1)が塗装される。
【0091】
次に、作業箇所5において、自動車車体の内板部及び境界部に、白系カラーベース塗料(2)が塗装される。
【0092】
次に、2段目の塗装機2における前段の塗装機2aにより、自動車車体の外板部に、白系カラーベース塗料(2)が塗装される。
【0093】
次に、2段目の塗装機2における後段の塗装機2bにより、自動車車体の外板部に、光輝材含有ベース塗料(3)が塗装される。
【0094】
次に、作業箇所6において、自動車車体の内板部及び境界部に、光輝材含有クリヤ塗料(5)が塗装される。
【0095】
次に、3段目の塗装機3により、自動車車体の外板部に、クリヤ塗料(4)が塗装される。
【0096】
以上のようにして、自動車車体の外板部、内板部及び境界部に積層塗膜が形成された自動車車体は、焼付け炉に送られ、焼付け炉で積層塗膜が焼き付けられる。
【0097】
以上のように、本発明によれば、従来の塗装工程ラインにおいて、自動車車体の外板部に4コート1ベーク方式で塗装すると共に、自動車車体の内板部及び境界部に2コート1ベーク方式または3コート1ベーク方式で外板部の塗膜外観に近い外観を有する塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に従う具体的な実施例について説明する。特に断らない限り、配合量は重量基準である。
【0099】
〔水性白系中塗り塗料の調製(PWC45%)〕
日本ペイント社製ビニル変性ポリエステル樹脂溶液(不揮発分40.0%、固形分酸価32.5mgKOH/g、水酸基価138、重量平均分子量57000、中和率90%)30部、CR−97(商品名、石原産業社製二酸化チタン)24.5部、及びB−34(商品名、堺化学社製沈降性硫酸バリウム)12部を、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加えて、室温で1時間混合分散し、粒度5μm以下の中塗り塗料用顔料ペーストを得た。このペーストに対してウォーターゾールS−370(大日本インキ化学工業製エポキシ変性ポリエステル樹脂、商品名、水酸基価100、酸価40、重量平均分子量17000、固形分55%)溶液21.8部、デナコールEX−861(ナガセケムテック社製水性エポキシ樹脂、商品名、固形分)4部、サイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂、固形分80%、商品名)10部、サイメル303(三井サイテック社製、固形分100%、商品名)8部及び架橋樹脂粒子(日本ペイント社製粘性調整剤、固形分20%)44部を混合して10分間ディスパーにて攪拌混合し、水性白系中塗り塗料を得た。
【0100】
〔水性白系カラーベース塗料の調製(PWC40%)〕
日本ペイント社製アクリルエマルション(平均粒子径150nm、不揮発分20%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g)を97.1部、ジメチルエタノールアミン10質量%水溶液を5部、日本ペイント社製水溶性アクリル樹脂(不揮発分は30.0%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g)を13.1部、プライムポールPX−1000(三洋化成工業社製2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、水酸基価278mgKOH/g、一級/二級水酸基価比=63/37、不揮発分100%)を3.5部、サイメル204(三井サイテック社製混合アルキル化型メラミン樹脂、不揮発分100%)を10.0部、ラウリルアシッドフォスフェートを0.2部、CR−97(商品名、石原産業社製二酸化チタン)を24.5部混合し、これらを均一に分散することにより水性白系カラーベース塗料を得た。
【0101】
〔水性マイカ含有ベース塗料(PWC10%)の調製〕
日本ペイント社製アクリルエマルション(平均粒子径150nm、不揮発分20%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g)を285.4部、ジメチルエタノールアミン10質量%水溶液を15部、日本ペイント社製水溶性アクリル樹脂(不揮発分は30.0%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g)を38.6部、プライムポールPX−1000(三洋化成工業社製2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、水酸基価278mgKOH/g、一級/二級水酸基価比=63/37、不揮発分100%)を10.4部、サイメル204(三井サイテック社製混合アルキル化型メラミン樹脂、不揮発分100%)を29.4部、ラウリルアシッドフォスフェートを0.3部、マイカフレーク顔料「イリオジン103W2」(メルク社製)を12.0部混合し、これらを均一に分散することにより水性マイカ含有ベース塗料を得た。
【0102】
〔クリヤ塗料〕
クリヤ塗料として、「マックフロー O−1820クリヤ」(日本ペイント社製酸・エポキシ硬化型クリヤ塗料、商品名)を用いた。
【0103】
〔マイカ含有クリヤ塗料(PWC0.5%)の調製〕
クリヤ塗料としての「マックフロー O−1820クリヤ」(日本ペイント社製酸・エポキシ硬化型クリヤ塗料、商品名)100部に、マイカフレーク顔料「イリオジン103W2」(メルク社製)0.25部を加えて均一分散することにより水性マイカ含有クリヤ塗料を得た。
【0104】
<実施例1〜3及び比較例1〜4>
以下、上記のようにして作製した各塗料を用いて、自動車車体の内板部及び境界部に形成する積層塗膜を基材上に形成し、塗装板を作製した。
【0105】
(実施例1)
図1に示した積層順序となるように、自動車車体の内板部を想定して、以下の工程を行った。
【0106】
30cm×40cm、厚み0.8mmのダル鋼板をリン酸亜鉛処理した後、カチオン電着塗料「パワートップV−6」(日本ペイント社製)により電着塗膜層を形成し、基材とした。
【0107】
電着塗膜層を形成した上記基材の上に、上記の水性白系中塗り塗料を、乾燥膜厚が20μmとなるようにスプレー塗装し、1分間セッティングの後、80℃で3分間プレヒートした。
【0108】
次に、上記の水性白系カラーベース塗料を、乾燥膜厚が8μmとなるように、白系中塗り塗膜の上にスプレー塗装した。スプレー塗装後、1分間セッティングを行った後、80℃で3分間プレヒートを行った。
【0109】
次に、上記のマイカ含有クリヤ塗料を、乾燥膜厚が20μmとなるように、白系カラーベース塗膜の上にスプレー塗装した。塗装後7分間セッティングを行った後、得られた塗装板を、乾燥機で140℃で20分間焼付けを行った。
【0110】
このようにして、図4に示した積層塗膜を得た。
【0111】
(実施例2)
白系中塗り塗料を塗装した後、白系カラーベース塗料を塗装せずに、マイカ含有クリヤ塗料を塗装する以外は、実施例1と同様にして塗装した。このようにして、図3に示した積層塗膜を得た。
【0112】
(実施例3)
電着塗膜層が形成された基材の上に、白系中塗り塗料を塗装せずに、白系カラーベース塗料を塗装し、次にマイカ含有クリヤ塗料を塗装する以外は、実施例1と同様にして塗装した。このようにして、図3に示した積層塗膜を得た。
【0113】
(比較例1)
図2に示した積層順序となるように自動車車体の内板部を想定して以下の工程を行った。
【0114】
白系カラーベース塗料を塗装した後、乾燥膜厚が7μmとなるように、上記の水性マイカ含有ベース塗料を塗装し、塗装後1分間セッティングを行った後、80℃で3分間プレヒートした。次に、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記のクリヤ塗料を塗装し、7分間セッティングした。
【0115】
上記以外は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0116】
(比較例2)
クリヤ塗料を塗装しない以外は、比較例1と同様にして塗装板を作製した。
【0117】
(比較例3)
白色カラーベース塗料を塗装した後、マイカ含有ベース塗料を塗装せずに、クリヤ塗料を塗装する以外は、比較例1と同様にして塗装板を作製した。
【0118】
(比較例4)
白系中塗り塗料を塗装した後、白系カラーベース塗料及びマイカ含有ベース塗料を塗装せずに、クリヤ塗料を塗装する以外は、比較例1と同様にして塗装板を作製した。
【0119】
図3は、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に従い形成される積層塗膜を示す断面図であり、実施例2及び実施例3の積層塗膜を示すものである。
【0120】
図3に示すように、基材9の上には電着塗膜層10が形成されており、電着塗膜層10の上に、白系中塗り塗膜11または白系カラーベース塗膜12が形成されており、その上に光輝材含有クリヤ塗膜15が形成されている。
【0121】
図4は、本発明に従う第3の実施形態の積層塗膜を示す断面図であり、実施例1の積層塗膜を示すものである。
【0122】
図4に示すように、基材9の上には電着塗膜層10が形成されており、電着塗膜層10の上に白系中塗り塗膜11が形成され、白系中塗り塗膜11の上に白系カラーベース塗膜12が形成され、白系カラーベース塗膜12の上に光輝材含有クリヤ塗膜15が形成されている。
【0123】
〔実施例1〜3及び比較例1〜4の塗装板の評価〕
実施例1〜3及び比較例1〜4の塗装板について、「工数」、「タレ・スケ」、「仕上り外観」及び「色相」を以下の判断基準で評価した。
【0124】
・工数
〇:工程が少なく、好適である。
〇△:工数がライン工程上、許容できる。
×:工数がライン工程上、許容困難である。
【0125】
・タレ・スケ
〇:タレ、スケし難く、作業上、好適である。
△:タレ、スケし易く、作業上に注意を要する。
【0126】
・仕上がり外観
〇:目視外観が非常に良い。
〇△:目視外観が良い。
×:艶がなく、また肌も悪く、外観が非常に悪い。
【0127】
・色相
〇:色相が外板部と全く同じであり、好適である。
〇△:色相が内外板境界部で違和感がなく、許容できる。
×:光輝感がなく、内板部と外板部とで色相が全く異なる。
【0128】
以上の評価結果を表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
比較例1は、自動車の外板部と同様の積層塗膜を有するものであるが、このような積層塗膜を3つの作業箇所で作製する場合、1つの作業箇所で2つの塗装工程を行う必要があり、工程が煩雑になる。また、1つの作業箇所で2つの塗装を行うため、塗膜にタレ・スケが生じやすくなる。
【0131】
比較例2においては、表面にクリヤ塗膜層が形成されていないので、艶が悪く仕上り外観において著しく劣っている。
【0132】
比較例3及び比較例4においては、積層塗膜中に光輝性顔料であるマイカ顔料が含まれていないので、色相において著しく外板部と異なるものとなる。
【0133】
これに対し、実施例1〜3においては、3箇所または2箇所で内板部及び境界部を塗装することができる。また、仕上り外観及び色相において、外板部の積層塗膜とほぼ近い塗膜を形成することができる。
【0134】
図1は、実施例1の積層塗膜を内板部に形成する場合の外板部20、境界部21、及び内板部22における積層塗膜の状態を示す模式的断面図である。
【0135】
図1に示すように、基材9の上に電着塗膜層10が形成されている。外板部20においては、電着塗膜層10の上に、白系中塗り塗膜11、白系カラーベース塗膜12、光輝材含有ベース塗膜13、及びクリヤ塗膜14が積層されている。
【0136】
境界部21及び内板部22においては、電着塗膜層10の上に、白系中塗り塗膜11及び白系カラーベース塗膜12が形成され、白系カラーベース塗膜12の上に、光輝材含有クリヤ塗膜15が形成されている。境界部21及び内板部22における白系中塗り塗膜11は、外板部に中塗り塗膜11を形成する前に形成されている。また、境界部21及び内板部22の白系カラーベース塗膜12は、外板部に白系カラーベース塗膜12を形成する前に形成されている。また、境界部21及び内板部22における光輝材含有クリヤ塗膜15は、外板部20にクリヤ塗膜14を形成する前に形成されている。
【0137】
図2は、境界部21及び内板部22に、比較例1の積層塗膜を形成する場合の外板部20、境界部21及び内板部22における積層塗膜の状態を示す模式的断面図である。
【0138】
図2に示すように、境界部21及び内板部22において、光輝材含有ベース塗膜13及びクリヤ塗膜14を形成する必要があるので、外板部20に光輝材含有ベース塗膜13を形成した後、クリヤ塗膜14を形成する前に、境界部21及び内板部22において、光輝材含有ベース塗膜13及びクリヤ塗膜14を重ねて形成している。
【0139】
境界部21及び内板部22に、このように2種類の塗料を重ねて塗装する場合、作業環境のスペースに限りがあるため、十分に均一な塗膜を形成することが困難となる。
【0140】
これに対し、本発明においては、境界部及び内板部を塗装する1つの箇所において、1つの塗料を塗装すればよいので、作業工程を簡略化することができ、また均一な塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明に従う一実施形態の自動車車体の外板部、内板部及び境界部における積層塗膜の状態を示す模式的断面図。
【図2】比較例における自動車車体の外板部、内板部及び境界部の積層塗膜の状態を示す模式的断面図。
【図3】本発明に従う実施例2及び実施例3における積層塗膜を示す断面図。
【図4】本発明に従う実施例1における積層塗膜を示す断面図。
【図5】3コート1ベーク方式の塗装に用いられている自動車車体の塗装ラインを示す平面図。
【符号の説明】
【0142】
1…1段目の塗装機
2…2段目の塗装機
2a…2段目の塗装機における前段の塗装機
2b…2段目の塗装機における後段の塗装機
3…3段目の塗装機
4…1段目の塗装機前の作業箇所
5…2段目の塗装機前の作業箇所
6…3段目の塗装機前の作業箇所
9…基材
10…電着塗膜層
11…白系中塗り塗膜
12…白系カラーベース塗膜
13…光輝材含有ベース塗膜
14…クリヤ塗膜
15…光輝材含有クリヤ塗膜
20…自動車車体の外板部
21…自動車車体の境界部
22…自動車車体の内板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体の外板部、内板部、及び内板部と外板部の間の境界部の電着塗膜層の上に、積層塗膜を形成する自動車車体の塗装方法であって、
前記自動車車体の前記外板部に対しては、前記電着塗膜層の上にN7〜9.5の白系中塗り塗料(1)を塗装し、その上にウェットオンウェットでN7〜9.5の白系カラーベース塗料(2)を塗装し、その上にウェットオンウェットで光輝性顔料を含有する光輝材含有ベース塗料(3)を塗装し、さらにその上にウェットオンウェットでクリヤ塗料(4)を塗装した後に焼付け硬化する4コート1ベーク方式で塗装し、
前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部に対しては、
前記自動車車体の前記外板部に前記白系中塗り塗料(1)を塗装する前に、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部に前記白系中塗り塗料(1)を塗装する工程(A)、及び
前記自動車車体の前記外板部に前記白系カラーベース塗料(2)を塗装する前に、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部に前記白系カラーベース塗料(2)を塗装する工程(B)の内の少なくとも一方の工程を実施した後、
前記自動車車体の前記外板部に前記クリヤ塗料(4)を塗装する前に、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部に前記光輝性顔料を前記クリヤ塗料(4)に含有させた塗料に相当する光輝材含有クリヤ塗料(5)を塗装する工程(C)を実施し、
前記自動車車体の前記外板部の積層塗膜の焼付けと同時に、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部の積層塗膜の焼付けを行うことを特徴とする自動車車体の塗装方法。
【請求項2】
前記工程(A)の後に前記工程(C)を実施し、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部の前記積層塗膜を、前記白系中塗り塗料(1)及び前記光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成することを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の塗装方法。
【請求項3】
前記工程(B)の後に前記工程(C)を実施し、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部の前記積層塗膜を、前記白系カラーベース塗料(2)及び前記光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成することを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の塗装方法。
【請求項4】
前記工程(A)及び前記工程(B)の後に前記工程(C)を実施し、前記自動車車体の前記内板部及び前記境界部の前記積層塗膜を、前記白系中塗り塗料(1)、前記白系カラーベース塗料(2)及び前記光輝材含有クリヤ塗料(5)から形成することを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の塗装方法。
【請求項5】
前記光輝性顔料が、マイカ粉、アルミナ粉、及びシリカ粉から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車車体の塗装方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で塗装されたことを特徴とする自動車車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−29765(P2010−29765A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193518(P2008−193518)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】