説明

自動車車体用強度部材

【課題】二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を有するとともに、引張強度が1100MPa超の超高強度を有する、例えばサイドメンバーやピラーといった自動車車体用強度部材を提供する。
【解決手段】二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部40aと、切断又は穴あけ加工予定部40bと、溶接予定部40cとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体40dにより構成され、筒体40dが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部40eと、超高強度熱処理部40eを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部40f、及び/又は、上述した切断又は穴あけ加工予定部40b及び溶接予定部40cであって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部とを備える自動車車体用強度部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造に関する。詳しくは、本発明は、例えばS字曲げのように曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工、又は曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を行われて製造される自動車車体用強度部材と、自動車車体を構成する強度部材であるフロントサイドメンバーと、自動車車体の側部構造、具体的には少なくともAピラー、Bピラー及びルーフレールサイドを備える自動車車体の側部構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
以前の自動車は、断面箱型の部材をハシゴ状に組み合わせて構成されるフレームに、エンジン、ラジエター、サスペンション、トランスミッション、デファレンシャルさらには燃料タンク等の部品を装着し、このフレームの上に、エンジンコンパートメント、キャビンおよびトランクルームからなるボディを搭載する、いわゆるフレーム構造が採用されていた。しかし、このフレーム構造は、ボディとは別部品である大重量のフレームを必ず用いることから車体の軽量化を図ることが難しいとともに、フレームとボディとを接合する工程も不可欠になるために生産性が低い。このため、近年生産される自動車の殆どは、このフレームとボディとを一体構造としたモノコックボディ(ユニット・コンストラクションボディ)により構成される。
【0003】
モノコックボディは、モノコックボディにおける下面、つまり床部分であってボディ構造上の基礎となる最重要部分であるアンダーボディ(プラットフォームともいう。)に、サイドシル、Aピラー、Bピラー、ルーフレールサイド、場合によってはCピラーにより構成されるボディーサイドを組み合わせて一体化したボディシェルで荷重を支えるものであり、外部から負荷される衝撃荷重に対してもボディ各部が縮んだり崩れたりする際にボディ各部の全体で衝撃エネルギーを吸収する。
【0004】
モノコックボディには、フレーム構造のような明確なフレームは存在しないものの、エンジンやサスペンションの取付け部といった負荷や応力が集中する部分には、例えばサイドメンバー、サスペンションメンバー、各種ピラー、クロスメンバー、ルーフレールさらにはサイドシル等といった閉断面の筒体からなる自動車車体用強度部材を適宜配置してボディシェルを補強する。また、ボディーサイドは、アンダーボディとともに自動車車体の曲げ剛性や捩じり剛性に大きく影響するのみならず、側面衝突の際にはキャビンの損傷をできるだけ抑制して搭乗者の安全性を高める機能を有する。特に全面衝突に比して側面衝突では乗員保護のための空間を十分に確保することが困難であるので、このボディーサイドの剛性を高めることが重要である。
【0005】
このように配置される強度部品の一つとして、メンバー(サブフレームともいう)がある。メンバーとは、サスペンションやエンジン、さらにはミッション等をアンダーボディに装着する際に介在される骨格である。アンダーボディは、サスペンションや駆動系を支持するためにボディの各種剛性(例えば曲げ剛性や捩じり剛性等)に大きく影響するので、メンバーやその他の補強材をアンダーボディの各部に適宜配置することによって、アンダーボディに十分な剛性を与える。この種のメンバーの一つとして、エンジンコンパートメント内の左右に前後方向へ略水平に延設して溶接されるフロントサイドメンバーがある。
【0006】
通常、フロントサイドメンバーは、例えば四角形や六角形、さらには円形等の閉断面を有する筒体からなる本体を備える。そして、この本体は、その軸方向の一方の端部から他方の端部へ向けて、車体の前後方向へ向けて延びて存在する先端部と、この先端部に連続するとともにエンジンコンパートメント及びキャビンの間の隔壁であるダッシュパネルに沿って傾斜する傾斜部と、この傾斜部に連続するとともにダッシュパネルに接合されるフロアーパネルの下面に沿って延びて存在する後端部とを有する。ボディの大きさによるが、フロントサイドメンバーの全長は600〜1200mm程度である。
【0007】
このフロントサイドメンバーは、上述したように、アンダーボディの強度の維持を第1に要求される強度部材であることから十分な強度を有するように設計される一方で、正面衝突事故の場合には負荷される衝撃荷重を負担する主体となる部材でもあるので、正面衝突事故の場合にはその先端側が座屈して蛇腹状(アコーディオン状)に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収できる衝撃吸収性能を有するように、設計される。このように、フロントサイドメンバーは、十分な強度を有することと、衝撃荷重が負荷されると先端側が蛇腹状に塑性変形し易いことといった、いわば相反する特性を具備することが要求される。
【0008】
さらに、上述したように、フロントサイドメンバーは、アンダーボディの補強部材として他のパネルに溶接されて配置されるものであることから、優れた溶接性と、前端部から後端部へかけて複雑な形状を有するとともに穴あけ加工や切断加工を行われることから優れた加工性も要求される。
【0009】
特許文献1には、中空のアルミニウム合金押出形材からなり、部分的に板厚が変化するエネルギー吸収部材に係る発明が開示され、特許文献2には車体の前後方向と平行に配置されたアーチ形状部を有する閉断面を有し、部分的に板厚が変化するフロントサイドメンバーに係る発明が開示され、特許文献3には先端部の一部に脆弱な部分を設けたフロントサイドメンバーに係る発明が開示され、特許文献4には前端部の形状を工夫することにより断面全域でより均等に変形して座屈することができるフロントサイドメンバーに係る発明が開示され、特許文献5には軽合金製鋳物からなるU字断面の下側部材と、軽合金製の板材からなる上側部材とからなる閉断面のフロントサイドメンバーに係る発明が開示されている。
【0010】
また、特許文献6には、ボディーサイドに関してAピラーの内部に補強チューブを配置することによってロールオーバー時のAピラーが座屈することを防止する発明が開示されている。
【0011】
近年、自動車車体用強度部材に対しては、地球温暖化抑制のためのCO排出量削減を図るための燃費向上、及び衝突事故の際における乗員のよりいっそうの安全性の向上の観点から、軽量化及び高強度化に対する要請がますます高まっている。このような要請に対応するため、従来よりもかなり高い強度レベルを有する高強度の素材、例えば、引張強度が780MPa以上、さらには900MPa以上という高張力鋼板が多用されている。
【0012】
一方、このような素材の高強度化に伴って、自動車車体用強度部材の構造を見直すことも推進されている。例えば、多様な自動車用部品に適用するために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、S字曲げのような曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工、又は曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を行われて製造される自動車車体用強度部材を、高精度で加工するための曲げ加工技術の開発も強く要請されている。
【0013】
このような要請に応えるため、これまでにも様々な加工技術が提案されている。例えば、特許文献7には、金属管等の被加工材の先端側を回転自在のアームにより掴み、加熱装置により加熱しながら、加熱部を軸方向に順次移動させることにより曲げ変形させ、その直後に冷却することにより、金属管等を熱処理しながら曲げ加工する方法に係る発明が開示されている。また、特許文献8には、金属管を掴んで加熱部にねじり力と曲げ力とを与えて金属管をねじりながら曲げ変形させることによって、金属管等を熱処理しながら曲げ加工する方法に係る発明が開示されている。
【0014】
曲げ加工製品の軽量化も考慮すれば、その引張強さを、900MPa以上に設定することが望ましく、1300MPa以上に設定することが望ましい。このような場合、これまでは特許文献7、8により開示されるように、引張強さが500〜700MPa程度の素管を出発材料として曲げ加工を行った後、熱処理によって強度を上昇させることにより所望の高強度を有する曲げ加工製品を製造していた。
【0015】
特許文献7、8により開示された発明は、いずれも、いわゆる掴み曲げ加工に属する加工方法を用いるものであり、いずれの発明を実施するにも被加工材の先端部を回転自在のアームにより掴む必要がある。このため、被加工材の送り速度を高速化することが難しく、しかも、アームにより被加工材を掴み直す毎にアームを原位置へ戻す必要があるので、被加工材の送り速度が大きく変動し、冷却速度を複雑に制御することが難しくなり、所望の焼入精度を確保することができない。このため、不均一な歪みが発生してしまう加熱や冷却の速度を複雑かつ高精度で制御しなければならなくなり、所定の焼き入れ精度を確保することが極めて難しい。このため、曲げ加工形状にばらつきが発生するとともに、特に高強度材の場合には残留応力に伴う遅れ破壊が生じ、高い信頼性を要求される自動車車体用強度部材を製造することは難しい。
【0016】
特許文献9には、支持手段により支持される被加工材を上流側から下流側へ向けて送り出し装置により送り出しながらこの支持手段の下流で曲げ加工を行う曲げ加工に基づくとともに、ローラを3次元方向へ移動自在に支持する高周波加熱ベンダーに係る発明が開示されている。特許文献9により開示された高周波加熱ベンダーによれば、ローラを、被加工材を跨いで反対方向の被加工材の側面へ移動させ、その側面に当接させて曲げ加工するので、例えば、S字曲げのように、曲げ方向が二次元的に異なる曲げ加工の場合であっても、被加工材を180度回転させる段取り作業を行う必要がなくなり、効率的に曲げ加工を行うことができる。
【0017】
しかし、特許文献9により開示された高周波加熱ベンダーには、被加工材の両側面をクランプする手段がない。このため、高周波による加熱後の冷却による残留応力に起因して変形が発生し易くなるために所定の寸法精度を確保することが難しくなり、加工速度が制約されるとともに曲げ加工度を高めることが難しい。
【0018】
さらに、特許文献10には、上述した掴み曲げ加工や高周波加熱ベンダーのローラに替えて、固定して配置される固定ダイと、三次元方向へ移動自在に配置される可動ジャイロダイとを離間して設けておき、さらに、可動ジャイロダイによる金属部材の曲げ加工の曲率に応じた温度に金属部材を加熱する加熱手段とを備える曲げ加工装置に係る発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平10−45023号公報
【特許文献2】特開平11−255146号公報
【特許文献3】特開2001−106002号公報
【特許文献4】特開2002−173055号公報
【特許文献5】特開2003−306171号公報
【特許文献6】特開2003−118633号公報
【特許文献7】特開昭50−59263号公報
【特許文献8】特許2816000号公報
【特許文献9】特開2000−158048号公報
【特許文献10】特許3195083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献1〜5により開示された従来の発明は、いずれも、フロントサイドメンバーを特有の構造を採用することにより、高強度及び優れた衝撃吸収能を得ようとするものであるので、よりいっそうの高強度化及び軽量化と、さらなる衝撃吸収性能の向上とを高い次元で両立することには限界がある。
また、特許文献6により開示された従来の発明は、確かにロールオーバー時のAピラーの座屈を防止することは可能であるが、側面衝突の際のさらなる安全性の向上の観点から、キャビン空間を充分に確保できるとはいえず、その改善が望まれる。
【0021】
さらに、特許文献10により開示された曲げ加工装置を構成する固定ダイ及び可動ジャイロダイは、いずれも、被加工材である金属材を回転自在に保持するものでない。このため、固定ダイ及び可動ジャイロダイのいずれの表面にも、金属材の保持に伴って焼付疵が発生し易い。また、特許文献10により開示された曲げ加工装置は、固定ダイ及び可動ジャイロダイに冷却流体を供給し、これらダイの強度の低下や、熱膨張による加工精度の低下を防止しようとしている。しかし、冷却流体の供給は、曲げ加工された金属材を焼入熱処理するためではないので、この加工時に焼入れを行って、例えば900MPa以上という高強度の曲げ加工製品を製造することはできない。
【0022】
このように、特許文献10により開示された曲げ加工装置は、曲げ加工に基づくものであるものの、低強度の金属素管を出発材料として熱間加工を行った後に焼入れによって強度を上昇し、高強度の金属材を得ることを意図するものではない。また、金属部材の加熱に伴って可動ジャイロダイの表面に焼付疵が発生し易く、曲げ加工装置として一層の改善が要求される。
【0023】
本発明の目的は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造を提供することであり、具体的には、例えばS字曲げのように曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工、又は曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を行われて製造される自動車車体用強度部材と、自動車車体を構成する強度部材であるフロントサイドメンバーと、自動車車体の側部構造、具体的には少なくともAピラー、Bピラー及びルーフレールサイドを備える自動車車体の側部構造とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記する知見(a)〜(d)を得て、本発明を完成した。
(a)特定の構造を有する曲げ加工装置を用いれば、例えば1100MPa以上、望ましくは1500MPa以上という超高強度の高周波焼入れ部を有するとともに軸方向に単一の部材により構成される筒体を本体とする自動車車体用強度部材を、工業的規模で現に量産できるようになること、
(b)特定の構造を有する曲げ加工装置を用いてフロントサイドメンバーを製造すれば、軸方向に単一の部材により構成されるとともにこれまでにはない高周波焼入れ部を部分的に有するフロントサイドメンバーを提供でき、これにより、フロントサイドメンバーのよりいっそうの高強度化及び軽量化と、さらなる衝撃吸収性能の向上とをこれまでにない高い次元で両立することができること、
(c)特定の構造を有する曲げ加工装置を用いて、軸方向に単一の部材により構成されるとともにこれまでにはない高周波焼入れ部を部分的に有するとともに、ボディーサイドを構成するAピラーやルーフレールサイド等の内部に配置される側部補強部材を製造すれば、ボディーサイドのよりいっそうの高強度化を図ることができ、これにより、衝突時におけるキャビンの空間の増加と、側部補強部材自体の断面寸法の縮小化による軽量化と、側部補強部材の一体構造化による部品点数の低減による製造コストの低下とを図ることができること、及び
(d)これらの自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び、側部補強部材は、軸方向に単一の部材により構成されるとともに部分的に高周波焼入れされた超強度部を有し、さらに閉断面の筒体を本体として備えるので、軽量、高強度、優れた衝撃吸収特性、部品点数低減、及び製造コスト低減を、従来には得られなかった高い次元で得ることができる。
【0025】
なお、フロントサイドメンバーやボディーサイドに関するものではないが、特開平10−17933号公報には、部分的に高周波焼入れ処理を行うことにより性能を高めたBピラーレインフォースに係る発明が開示されている。しかし、この公報には、フロントサイドメンバーやボディーサイドにどのようにして高周波焼入れ処理を行えば、フロントサイドメンバーやボディーサイドに要求される様々な特性を大幅に向上でき、さらに現に製造可能なフロントサイドメンバーやボディーサイドを提供できるかについては開示も示唆もされておらず、Bピラーの剛性を高めるための部材についてしか開示されていない。
【0026】
本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、この超高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0027】
また、本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、この超高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0028】
また、本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、この超高強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部と、超高強度熱処理部及び高強度熱処理部を除いた残余の部位であるとともに引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0029】
また、本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、超高強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部と、超高強度熱処理部及び高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0030】
また、本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つであって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第1の低強度熱処理部と、超高強度熱処理部及び第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第2の低強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0031】
また、本発明は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、この筒体が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つであって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第1の低強度熱処理部と、超高強度熱処理部及び第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部と、超高強度熱処理部、高強度熱処理部及び第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位であるとともに引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第2の低強度熱処理部とを備えることを特徴とする自動車車体用強度部材である。
【0032】
これらの本発明に係る自動車車体用強度部材では、曲げ加工部が、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部であることが例示される。
これらの本発明に係る自動車車体用強度部材では、閉断面が、外部へ向けたフランジを有さない閉断面であることが、望ましい。
【0033】
これらの本発明では、超高強度熱処理部を除いた部分は、衝撃荷重が負荷された場合に超高強度熱処理部よりも強度が低いことに起因して優先的に変形する、衝撃荷重に対する変形促進部位として、機能する。本発明では、これらの変形促進部位を設けることにより、衝撃荷重が製品に狙いとする潰れや変形形態を実現することができる。
【0034】
例えば、本発明に係る自動車車体用強度部材が、サイドメンバーのような軸方向への圧潰を受ける部材の場合には、変形促進部位を軸方向へ交互に配置することによって、衝撃荷重負荷方向へ座屈して最終的に蛇腹状に塑性変形することで吸収エネルギーを増大させることができる。また、本発明に係る自動車車体用強度部材が、各種のピラーのような三点曲げを受ける場合には、例えば、曲げ部を超高強度熱処理部にし、変形促進部位をこの超高強度熱処理部に隣接させて配置することにより、曲げ部の内周における座屈を抑制し、より吸収エネルギーを増大させることができる。また、3点曲げのみならず、軸方向への圧潰に関しても、同様の効果を得ることができる。
【0035】
このように、部品の形状や荷重の入力方向を考慮しつつ、超高強度熱処理部と変形促進部位を適切に配置することにより、吸収エネルギーを高めた、高効率な自動車車体用強度部材を得ることができる。
【0036】
別の観点からは、本発明は、閉断面を有するとともに軸方向に単一の部材により構成される筒体からなる本体を備え、この本体が、その軸方向の一方の端部から他方の端部へ向けて、車体の前後方向へ向けて延びて存在する先端部と、この先端部に連続するとともにダッシュパネルに沿って傾斜する傾斜部と、この傾斜部に連続するとともにダッシュパネルに接合されるフロアーパネルの下面に沿って延びて存在する後端部とを有するフロントサイドメンバーであって、先端部の一部が焼入れ処理を行われない非焼入れ部であるとともに、この一部を除いた残余の部分が高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部であり、傾斜部の全てが高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部であり、さらに、後端部の全てが高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部であること、あるいは、後端部の一部が焼入れ処理を行われない非焼入れ部であるとともに、この一部を除いた残余の部分が高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部であることを特徴とするフロントサイドメンバーである。
【0037】
この本発明に係るフロントサイドメンバーは、先端部における、非焼入れ部及び高周波焼入れ部が、筒体の軸方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられることが望ましい。
【0038】
この本発明に係るフロントサイドメンバーは、非焼入れ部及び高周波焼入れ部それぞれの軸方向への長さが、筒体の先端から後端に向かうにつれて大きくなることが望ましい。
本発明に係るフロントサイドメンバーは、先端部における高周波焼入れ部が、筒体の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に大きくなるように設けられるとともに、先端部における非焼入れ部は、筒体の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に小さくなるように設けられることが望ましい。
【0039】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、先端部における、非焼入れ部及び高周波焼入れ部が、筒体の周方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられることが望ましい。
【0040】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、筒体が多角形の横断面を有し、非焼入れ部は多角形の頂点を含まない領域に設けられるとともに高周波焼入れ部はこの多角形の頂点を含む領域に設けられることが望ましい。
【0041】
本発明に係る筒体が多角形の横断面形状を有し、非焼入れ部はこの多角形の頂点を含む領域に設けられるとともに高周波焼入れ部は該多角形の頂点を含まない領域に設けられることが望ましい。
【0042】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、多角形が対向する一対の略水平面を有し、非焼入れ部は一方の略水平面に設けられるとともに高周波焼入れ部は他方の略水平面に設けられることが望ましい。
【0043】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、多角形が対向する一対の略垂直面を有し、非焼入れ部が一方の略垂直面に設けられるとともに高周波焼入れ部が他方の略垂直面に設けられることが望ましい。
【0044】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、非焼入れ部が筒体の横断面における下側の領域に設けられ、高周波焼入れ部がこの下側の領域を除く上側の領域に設けられることが望ましい。
【0045】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、非焼入れ部が筒体の横断面における車体内側の領域に設けられ、高周波焼入れ部は車体内側の領域を除く車体外側の領域に設けられることが望ましい。
【0046】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、後端部における、非焼入れ部及び前記高周波焼入れ部が、後端部の先端から筒体の軸方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられることが望ましい。
【0047】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、非焼入れ部が、穴あけ加工による穴あき部及び溶接される溶接部を含む領域に設けられることが望ましい。
本発明に係るフロントサイドメンバーは、筒体が、外部へ向けたフランジを有さないことが望ましい。
【0048】
本発明に係るフロントサイドメンバーは、高周波焼入れ部の引張強度が、1100MPa超又は600MPa以上1100MPa以下であるとともに、非焼入れ部の引張強度が600MPa未満であることが望ましい。
【0049】
さらに、別の観点からは、本発明は、サイドシルに接続されて上方へ向けて延びて存在するとともに閉じた閉断面を有する第1の部分と、この第1の部分に連続して斜め方向へ向けて延びて存在するとともに閉断面を有する第2の部分とを備えるAピラーと、このAピラーに連続するとともにBピラーに接続し、閉断面を有するルーフレールサイドとを備える自動車車体の側部構造であって、閉断面を有するとともに三次元で屈曲した形状を有し、かつ高周波焼入れ処理された軸方向に単一の部材により構成された側部補強部材が、少なくとも、第2の部分の内部及び、ルーフレールサイドの内部であってBピラーの接続部よりも後方の位置までの間に、配置されることを特徴とする自動車車体の側部構造である。
【0050】
この本発明に係る自動車車体の側部構造では、側部補強部材における、Bピラーとの接続のために溶接される領域には、焼入れ処理が行われないことが望ましい。
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、自動車車体がルーフレールサイドに連続するとともに閉断面を有するCピラーとを備え、側部補強部材がCピラーの内部に配置されることが望ましい。
【0051】
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、第2の部分の内部に配置される側部補強部材の先端部には、焼入れ処理が行われないことが望ましい。
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、側部補強部材が、さらに、第1の部分の内部に配置されることが望ましい。
【0052】
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、側部補強部材が、外部へ向けたフランジを有さないことが望ましい。
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、側部補強部材における高周波焼入れ処理された部分の引張強度が、1100MPa超又は600MPa以上1100MPa以下であることが望ましい。
【0053】
これらの本発明に係る自動車車体の側部構造では、側部補強部材における焼入れ処理が行われない部分の引張強度が、600MPa未満であることが望ましい。
上述した本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー又は、自動車車体の側部構造における側部補強部材は、支持手段により支持される被加工材である金属材(自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー又は、側部補強部材の素材)を上流から下流へ向けて送り装置により送り出しながら、この支持手段の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と焼入れ部とを長手方向及び/又はこの長手方向と交差する面内の周方向へ向けて断続的又は連続的に有する曲げ加工製品を製造する方法であって、支持手段の下流で金属材の加熱手段により、送り出される金属材の一部を部分的に焼入れが可能な温度域に加熱するとともに、加熱手段の下流に配置される冷却手段により、加熱手段により加熱された部分に向けて冷却媒体を吹き付けることによって、金属材の少なくとも一部を焼き入れ、冷却手段の下流に配置され、加熱手段により加熱された金属材を軸方向へ送り出すことができる複数のロールを有する可動ローラダイスの位置を二次元又は三次元で変更することにより、軸方向へ送り出される金属材における、加熱手段により加熱された部分に曲げモーメントを付与することによって金属材に曲げ加工を行い、さらに、金属材における、可動ローラダイスを抜けた部分を支持することにより、曲げ加工による成形品の誤差を抑制することにより、製造される。
【0054】
本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造における側部補強部材は、このようにして製造されるので、二次元又は三次元に屈曲する屈曲部の曲率半径は、一定にすること(例えば円弧形状)もできるし、あるいは一定でないようにすること、すなわち長手方向の部位により曲率半径が変化する形状とすることもできる。特にフロントサイドメンバーや各種のピラー等の自動車車体用強度部材では、三次元に屈曲する屈曲部の曲率半径が、長手方向の部位により変化する形状であることが多いが、本発明によれば、このような自動車車体用強度部材も提供される。
【0055】
本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造における側部補強部材は、支持手段により支持される被加工材である金属材を上流側から下流側へ向けて送り出し装置により送り出しながら、この支持手段の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と焼入れ部とを長手方向及び/又は長手方向と交叉する面内の周方向へ向けて断続的又は連続的に有する曲げ加工製品を製造する装置であって、支持手段の下流の金属材の外周を包囲して配置され、金属材の一部を部分的に焼入れが可能な温度域に加熱するための加熱手段と、少なくとも1組のロール対を有するとともに、加熱手段の下流にその位置が二次元又は三次元で変更自在に配置され、加熱手段により加熱された金属材をその軸方向へ送り出しながら、その位置を二次元又は三次元で変更して、加熱手段により加熱された部分に曲げモーメントを付与することにより曲げ加工を行う可動ローラダイスと、金属材における、可動ローラダイスを抜けた部分を支持又は案内することにより、曲げ加工の後における金属材の誤差を抑制するためのサポートガイドとを備える製造装置を用いて、製造される。
【0056】
この製造装置では、さらに、加熱手段と可動ローラダイスとの間に配置され、加熱手段により部分的に加熱された金属材の一部を冷却することにより、金属材の一部を焼入れるための冷却手段を備えることが望ましく、また、可動ローラダイスが、その位置の変更時の移動速度が変更自在であることが望ましい。
【0057】
これらの装置を用いれば、金属材の曲げ加工に際し、金属材の下流側の部分を移動自在に支持して一定速度で送り出しながら熱処理することから、所定の冷却速度を確保でき、曲げ加工された金属材を均一に冷却することができるので、高強度であって形状凍結性がよく均一な硬さの自動車車体用強度部材を得られる。
【0058】
例えば、高周波加熱コイルにより被加工材である鋼管を断続的又は連続的にAC変態点以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで加熱し、加熱された部分を、可動ローラダイスを用いて塑性変形させて所望の形状に曲げ、その直後に水又は油を主体とする冷却媒体又はその他の冷却液、又は気体又はミストを、曲げ加工された鋼管の外面、又は内面及び外面に吹き付けることにより、100℃/sec以上の高い冷却速度を得ることができる。
【0059】
また、曲げモーメントを付与する可動ローラダイスは、金属材の表面に当接して回転しながら金属材を支持するので、表面における焼付疵の発生を抑制でき、効率的に曲げ加工できる。同様に、支持手段も金属材の表面に当接して回転しながら金属材を支持するため、金属材との焼付を抑制できる。
【0060】
これらの装置では、可動ローラダイスが、上下方向へのシフト機構、金属材の軸方向と直交する水平な左右方向へのシフト機構、上下方向に対して傾斜するチルト機構、及び金属材の軸方向と直交する水平な左右方向に対して傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することが望ましい。これにより、金属材の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が二次元的に異なる曲げ加工、さらには曲げ方向が三次元的に異なる曲げ加工を、効率的に行うことができる。
【0061】
また、可動ローラダイスが、金属材の軸方向への移動機構を有することが望ましい。この移動機構を有することにより、金属材の曲げ半径が小さい場合にも、最適なアーム長さLを確保しながら曲げ加工を行うことができるので、加工装置の大型化を防ぐことができ、これにより、曲げ加工の精度を高めることができる。
【0062】
これらの装置では、加熱手段及び/又は冷却手段が、上下方向へのシフト機構、金属材の軸方向と直交する左右方向へのシフト機構、上下方向に対して傾斜するチルト機構、及び金属材の軸方向と直交する水平方向に対して傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することが望ましい。これにより、可動ローラダイスと加熱手段及び冷却手段との動作を同調させることができ、これらの同調により、さらに高精度で均一な曲げ加工を行うことができる。
【0063】
この場合に、加熱手段及び/又は冷却手段が、金属材の軸方向への移動機構を有することが望ましい。加熱手段等が移動機構を有することにより、可動ローラダイスとの同調性に加え、曲げ加工開始時に金属管の先端を加熱することが可能になるとともに、金属管の取り付けや取り外し時の作業性及び操作性を向上することができる。
【0064】
これらの装置では、可動ローラダイスが、金属材の軸周りの周方向への回転機構を有することが望ましい。金属材の曲げ方向が二次元的に異なる曲げ形状や曲げ方向が三次元的に異なる曲げ形状に加え、ねじり形状を付与することができる。
【0065】
これらの装置では、送り出し装置が、金属材を把持してその軸周りの周方向へ回転する機構を有することが望ましい。可動ローラダイスの回転機構を用いない場合であっても、金属材の曲げ方向が二次元的に異なる曲げ形状や曲げ方向が三次元的に異なる曲げ形状に加え、ねじり形状を付与することができる。
【0066】
この場合、支持手段が、送り出し装置の回転に同調して金属材の軸周りの周方向へ回転する回転機構を有することが望ましい。金属材のねじり変形に際して、可動ローラダイスの周方向には回転させず、支持手段を同調させつつ送り出し装置の回転機構による金属材の後端部を捻じることにより、さらに高精度で捻じり形状を付与できる。もちろん、可動ローラダイスを軸周りの周方向へ回転させながら、支持手段を同調させつつ送り出し装置の回転機構による金属材の後端部を相対的にねじることによっても、さらに高精度でねじり形状を付加することができる。
【0067】
これらの装置では、可動ローラダイスが、一対のロールそれぞれが送り出し装置の送り量に応じて、例えば駆動モータ等によってそれぞれのロールを駆動回転する駆動回転機構を有することが望ましい。すなわち、可動ローラダイスが駆動回転機構を有さないと、これらロールの回転は摩擦抵抗によってのみ駆動されることとなり、曲げ加工部に圧縮応力が作用し、曲げ加工部の内周側で増肉が大きくなったり、あるいは座屈が発生するおそれがある。特に、被加工材が薄肉材であると、これらに起因して曲げ加工が困難になったり、加工精度が悪化するおそれがある。
【0068】
これに対し、可動ローラダイスが駆動回転機構を有することにより、曲げ加工部に作用する圧縮応力を緩和できるとともに、送り出し装置の送り量に応じて、これと同調するように可動ローラダイスのロール回転速度を変更することができるので、曲げ加工部に引張応力を付加することができる。このため、曲げ加工部の可能範囲が広がり、製品の加工精度が向上する。
【0069】
また、これらの装置における可動ローラダイスが、ロール対を2組、3組又は4組有することが望ましく、さらに、金属材が、閉じた横断面を有する中空部材、開いた横断面を有する中空部材又は異形断面を有する中空部材であることが望ましい。可動ローラダイスのロール型式は、被加工材となる金属材の断面形状に対応して適宜設定すればよい。
【0070】
また、これらの装置では、加熱手段の上流側に少なくとも1つ以上設けられる予熱手段により、金属材に対して複数回の加熱、又は金属材の軸周りの周方向について加熱の程度が一定でない不均一加熱を行うことが望ましい。予熱手段を複数段加熱として用いる場合には、金属材の加熱負荷を分散することができ、曲げ加工能率の向上を図ることができる。一方、予熱手段を金属材の不均一加熱として用いる場合には、可動ローラダイスによる金属材の曲げ方向に基づいて、例えば、金属材の加熱部における曲げ加工部の内面側の温度が、曲げ加工部の外面側の温度よりも低くなるように、制御することによって、曲げ加工部の内面側に発生するシワと、曲げ加工部の外面側に発生する割れとを、いずれも防止できる。
【0071】
これらの装置では、冷却手段として金属材の内面にマンドレルが装入され、冷却媒体が供給されることが望ましい。特に、金属材が厚肉材である場合に冷却速度を確保するために有効である。
【0072】
これらの装置では、冷却手段から供給される冷却媒体が、水を主成分とし、防錆剤及び/又は焼入れ剤が含有されることが望ましい。冷却装置から供給される冷却水によって摺動部が濡れると、冷却水に防錆剤が含有されない場合には錆が発生するので、冷却水に防錆剤を含有させることが望ましい。さらに、冷却手段から供給される冷却媒体を、水を主成分として焼入れ剤を含有させることができる。例えば、有機高分子剤を混入したものが焼入れ剤として知られている。焼入れ剤を所定の濃度混入することによって、冷却速度を調整し安定した焼入れ性能を確保することができる。
【0073】
これらの装置では、可動ローラダイスへ潤滑剤及び/又は冷却流体を供給することが望ましい。可動ローラダイスへ潤滑剤を供給する場合には、金属材の加熱部に発生するスケールを可動ローラダイスが巻き込んだ場合でも、潤滑作用により、焼付の発生を低減することができる。また、可動ローラダイスへ冷却流体を供給する場合には、可動ローラダイスが冷却流体により冷却されることから、可動ローラダイスの強度の低下、可動ローラダイスの熱膨張による加工精度の低下、さらに可動ローラダイスの表面の焼付の発生を、いずれも防止できる。
【0074】
さらに、これらの装置では、シフト機構、チルト機構及び移動機構のうち少なくとも1つの機構による可動ローラダイス、加熱手段又は冷却手段の動作を、可動ローラダイス、加熱手段又は冷却手段を支持するとともに少なくとも1つ以上の軸廻りに回動可能な関節を有する関節型ロボットにより行うことが望ましい。
【0075】
関節型ロボットを用いることにより、金属管の曲げ加工に際し、可動ローラダイス、加熱手段及び冷却手段が必要とする、マニピュレータが行う上下方向又は左右方向へのシフト動作、上下方向又は左右方向に傾斜するチルト動作、又は前後方向への移動動作を、制御信号に基づく一連の動作とすることが容易になり、曲げ加工の効率化とともに加工装置の小型化を図ることができる。
【0076】
別の面からは、本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造における側部補強部材は、電縫鋼管の製造ラインを構成する、帯状鋼板を連続的に繰り出すアンコイラーと、繰り出された帯状鋼板を所定の断面形状の管に成形する成形手段と、突き合わされた帯状鋼板の両側縁を溶接して連続する管を形成する溶接手段と、溶接ビード切削及び必要に応じてポストアニールやサイジングをする後処理手段と、この後処理手段の出側に配置される、上述した本発明に係る曲げ加工製品の製造装置とを備える曲げ加工製品の製造設備列により、製造される。
【0077】
また、本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造における側部補強部材は、ロールフォーミングラインを構成する、帯状鋼板を連続的に繰り出すアンコイラーと、繰り出された帯状鋼板を所定の断面形状に成形する成形手段と、この成形手段の出側に配置される、上述した本発明に係る曲げ加工製品の製造装置とを備える曲げ加工製品の製造設備列により、製造される。
【0078】
本発明に係る自動車車体用強度部材、フロントサイドメンバー及び自動車車体の側部構造における側部補強部材は、横断面が丸形の鋼管を用いることができるが、鋼管に限定されるものではなく、各種の横断面を有する長尺の筒体であれば、同様に適用できる。例えば鋼管以外に、矩形、台形又は複雑な横断面を有する閉断面部材であれば、適用可能である。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、曲げ加工部と引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部とをともに具備する点において従来には存在しなかった、例えばサイドメンバー、サスペンションメンバー、クラッシュボックス、各種ピラー、クロスメンバー、ルーフレールさらにはサイドシル等の自動車車体用強度部材を、形状凍結性がよく、所定の硬度分布を有するとともに所望の寸法精度を有し、さらに効率的かつ安価に、しかも、表面疵を発生させずに、提供することができるようになる。
【0080】
本発明によれば、これまでには得られなかった高強度及び軽量性と衝撃吸収能とを兼ね備え、さらに優れた溶接性及び加工性を有することから現に工業的規模で量産可能なフロントサイドメンバーを提供することができるようになる。
【0081】
さらに、本発明によれば、よりいっそうの高強度化及び軽量化と、さらなる車体製造コストの低下とを高い次元で両立することが可能となる自動車車体の側部構造を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態に係る、曲げ加工を実施するための曲げ加工製品の製造装置の全体構成を簡略化して示す説明図である。
【図2】実施の形態において金属材として適用可能な被加工材の横断面形状を示す説明図であり、図2(a)はロールフォーミング等により製造される開断面を有するチャンネルを示し、図2(b)は送り出し加工により製造される異型断面を有するチャンネルを示す。
【図3】実施の形態における支持手段として用いることができる支持ガイドの構成の一例を示す説明図であり、図3(a)は支持ガイドと支持ガイドを駆動する回転機構との配置を示す断面図であり、図3(b)は支持ガイドの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の製造装置の加工部の構成を示す説明図である。
【図5】実施の形態の製造装置における加熱装置及び冷却装置の構成例を模式的に示す説明図である。
【図6】厚肉材の冷却速度を確保するために中空の閉断面部材の内面にマンドレルを装入した状況を示す説明図である。
【図7】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスの上下方向及び左右方向へのシフト機構、並びに周方向への回転機構を示す説明図である。
【図8】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスの前後方向への移動機構の説明図である。
【図9】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスを構成するロールを示す図であり、図9(a)は金属材が中空の閉断面部材である場合を示し、図9(b)は金属材が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の開断面部材である場合を示し、図9(c)は金属材が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の異型断面部材である場合を示す。
【図10】予熱装置を金属材の不均一加熱として用いる場合の作用を説明する図である。
【図11】サポートガイドの一例を示す説明図である。
【図12】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図13】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図14】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図15】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図16】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図17】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図18】サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図19】実施の形態の製造装置で用いることができる関節型ロボットの構成を示す説明図である。
【図20】実施の形態の製造装置で用いられる関節型ロボットの他の構成例を示す説明図である。
【図21】被加工材の一例である電縫鋼管の製造工程の全体を示す説明図である。
【図22】被加工材の製造に用いられるロールフォーミング工程の全体構成を示す図である。
【図23】図23(a)及び図23(b)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるサイドメンバーとバンパーリインフォース一体構成部品40を示す説明図である。
【図24】図24(a)〜図24(e)は、フロントサイドメンバーを示す説明図である。
【図25】図25(a)及び図25(b)はBピラーを示す説明図である。
【図26】図26(a)及び図26(b)はクロスメンバーを示す説明図である。
【図27】図27(a)及び図27(b)はAピラー〜ルーフレールサイド一体構造品を示す説明図である。
【図28】図28(a)はAC3点以上に加熱した後に急冷する通常の焼入れ条件を示すグラフであり、図28(b)はAC3点以上に加熱した後に緩冷却する条件を示すグラフであり、図28(c)はAC1点以下に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、図28(d)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、さらに図28(e)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に緩冷却する条件を示すグラフである。
【図29】自動車車体のエンジンコンパートメント内の左右の縦壁部に前後方向へ略水平に延設して溶接されるフロントサイドメンバーを示す説明図である。
【図30】フロントサイドメンバーの第1の例を示す説明図である。
【図31】フロントサイドメンバーの第2の例を示す説明図である。
【図32】フロントサイドメンバーの第2の例の好適態様を示す説明図である。
【図33】フロントサイドメンバーの第3の例を示す説明図である。
【図34】図34(a)〜図34(d)は、フロントサイドメンバーの第4〜7の例を示す説明図である。
【図35】図35(a)及び図35(b)は、フロントサイドメンバーの第8、9の例を示す説明図である。
【図36】図36(a)及び図36(b)は、フロントサイドメンバーの第10、11の例を示す説明図である。
【図37】フロントサイドメンバーの第12の例を示す説明図である。
【図38】図31に示すフロントサイドメンバーの第2の例において、後端部の先端から本体の軸方向へ向けて非焼入れ部を一つ形成した第13の例を示す説明図である。
【図39】非焼入れ部が、穴あけ加工による穴あき部及び溶接される溶接部を含む領域に設けられるフロントサイドメンバーの第14の例を示す説明図である。
【図40】実施の形態1の自動車車体の側部構造の一例を示す説明図である。
【図41】実施の形態1の側部補強部材の一例を示す説明図である。
【図42】図42(a)は図40におけるA−A断面を示し、図42(b)は図40におけるB−B断面を示す。
【図43】実施の形態2の側部補強部材を示す説明図である。
【図44】図40におけるC−C断面図である。
【図45】図40におけるD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
[実施の形態1]
以下、本発明に係る自動車車体用強度部材を実施するための最良の形態を、その製造方法及び製造装置、ならびにその製造設備列とともに、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0084】
はじめに、本実施の形態の(I)全体構成及び支持手段、(II)加工部の構成及び加熱、冷却装置、(III)可動ローラダイス、(IV)予熱手段とその作用、(V)サポートガイド、(VI)関節型ロボットの構成配置、並びに(VII)曲げ加工設備列を、添付図面を参照しながら以下に順次説明する。
(I)全体構成及び支持手段
図1は、本実施の形態に係る、曲げ加工を実施するための曲げ加工製品の製造装置0の全体構成を簡略化して示す説明図である。
【0085】
本実施の形態では、支持手段2、2によりその軸方向へ移動自在に支持された被加工材である金属材1を、上流側から逐次又は連続的に送り出し装置3により送り出しながら、支持手段2、2の下流側で曲げ加工を行う。
【0086】
図1に示す金属材1は、横断面形状が丸形の鋼管である。しかし、本発明は鋼管に限定されるものではなく、閉断面を有する長尺の被加工材であれば、同様に適用できる。金属材1は、図1に示す鋼管以外に、矩形、台形又は複雑な形状の閉断面を有する。
【0087】
図2は、本実施の形態において金属材1として適用可能な被加工材1−1〜1−3の横断面を示す説明図であり、図2(a)はロールフォーミング等により製造される開断面を有するチャンネル1−1を示し、図2(b)は送り出し加工により製造される異型断面を有するチャンネル1−2、1−3を示す。本実施の形態の製造装置0では、適用される金属材1の横断面形状に応じて、後述する可動ローラダイス4や支持手段2における金属材1との接触部の形状を適宜設定すればよい。
【0088】
図1に示す製造装置0は、金属材1をその軸方向へ送り出しながら所定の位置で支持するため、金属材1の移動方向に離間して配置される2組の支持手段2、2と、支持手段2、2の上流側に配置されて金属材1を断続的又は連続的に送り出すための送り出し装置3とを備える。また、製造装置0は、2組の支持手段2、2の下流側に配置されて、金属材1をその軸方向へ送り出すとともにその設置位置が二次元又は三次元で変更自在である可動ローラダイス4を備える。
【0089】
可動ローラダイス4の入側には、金属材1の外周に配置され、金属材1の長手方向の一部を部分的に急速に加熱するための加熱手段である高周波加熱コイル5と、高周波加熱コイル5により部分的に急速に加熱された金属材1の被加熱部であって、可動ローラダイス4の二次元又は三次元の移動によって曲げモーメントが付与される部分の下流側に隣接する部分を急冷するための冷却手段である水冷装置6とが配置される。
【0090】
さらに、可動ローラダイス4の出側には、金属材1の、可動ローラダイス4を抜けた部分を支持することにより、曲げ加工の後における金属材1に生じる変形に起因した寸法の誤差を抑制するためのサポートガイド30が配置される。
【0091】
図1に示す本実施の形態では、金属管1として横断面が丸形の鋼管を用いるので、支持手段2として、それぞれの回転軸が平行になるように互いに離間して対向配置される2組の一対の孔型ロールを用いるが、支持手段2は、一対の孔型ロールに限定されるものではなく、金属材1の横断面形状に応じて適当なものを用いればよい。また、一対の孔型ロールを用いて支持手段を構成する場合であっても、図1に示すように2組の支持ロール対2、2により構成することには限定されず、1組又は3組以上の支持ロール対2を用いてもよい。
【0092】
図3は、本実施の形態における支持手段2として用いることができる支持ガイドの構成の一例を示す説明図であり、図3(a)は支持ガイド2と支持ガイド2を駆動する回転機構9との配置を示す断面図であり、図3(b)は支持ガイド2の外観を示す斜視図である。
【0093】
図3に示す例は、金属材1が、横断面が四角形である四角管の場合であり、支持ガイド2は、四角管1を回転可能に保持する。支持ガイド2は、高周波加熱コイル5に近接して設置されることから、加熱防止のために非磁性材により構成されるとともに、図3(b)に示すように二分割、又はそれ以上に分割され、分割された箇所にはテフロン(登録商標)等の絶縁物(図示しない)が装着されることが望ましい。
【0094】
支持ガイド2に直結して、駆動用モータ10及び回転ギア10aから構成される回転機構9が設けられ、これにより、後述するように、支持ガイド2は送り出し装置3の回転に同調して金属材1の軸周りの周方向へ回転することができる。これにより、金属材1をねじり変形する場合に、金属材1に高精度の捩じり変形を与えることができる。
【0095】
製造装置0は、金属材1の支持手段2として図1に示す支持ロール、又は図3に示す支持ガイドのいずれをも用いることができるが、以下の説明では、金属材として図1に示す鋼管1を用いるとともに一対の支持ロール2を用いる場合を例にとる。しかし、本発明では、金属材が丸管である場合のみならず丸管以外の閉断面部材であってもよい。また、本発明は、支持ロールに替えて支持ガイドを採用する場合にも同様に適用される。
(II)加工部の構成、加熱装置及び冷却装置
図4は、本実施の形態の製造装置0の加工部の構成を示す説明図である。
【0096】
同図に示すように、金属材1を保持する2組の支持ロール対2、2と、その下流側には可動ローラダイス4とが配置される。可動ローラダイス4の入側には、高周波加熱コイル5及び冷却装置6が配置される。さらに、2組の支持ロール対2、2の間には予熱装置5aが設けられ、さらに、可動ローラダイス4の入側の直近部には潤滑剤の供給装置8が配置される。
【0097】
図4において、2組の支持ロール対2、2を通過した金属材1を、可動ローラダイス4によって、その長手方向に送り出しながら支持し、この可動ローラダイス4の位置、さらには必要に応じて移動速度を、二次元又は三次元で制御しながら、金属材1の外周に配置された高周波加熱コイル5を用いて金属材1を部分的に、焼入れ可能な温度に急速に加熱することにより、金属材1を所定の形状の曲げ加工するとともに、冷却装置6を用いて曲げ加工された部分を部分的に急冷する。
【0098】
曲げ加工の際には、2組の支持ロール対2、2を通過した金属材1が高周波加熱コイル5により、焼入れが可能な温度域に加熱されることにより、可動ローラダイス4による金属材1の曲げ加工部の降伏点が低下して変形抵抗が低下するので、金属材1を容易に所望の形状に曲げ加工することができる。
【0099】
さらに、可動ローラダイス4は、孔型ロール対2、2により金属材1を軸方向へ送り出しながら支持することから、可動ローラダイス4の表面に発生する焼付疵を抑制できる。しかも、可動ローラダイス4へ潤滑剤を供給するので、金属材1の加熱部に発生するスケールが可動ローラダイス4の内部へ巻き込まれた場合にも、可動ローラダイス4の表面への潤滑作用により、焼付疵の発生を低減できる。
【0100】
また、この製造装置0では、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給することもできるので、可動ローラダイス4が冷却流体により冷却される。これにより、可動ローラダイス4の強度の低下、可動ローラダイス4の熱膨張による加工精度の低下、さらに可動ローラダイス4の表面の焼付疵の発生を、いずれも防止できる。
【0101】
図5は、本実施の形態における加熱装置5及び冷却装置6の構成例を模式的に示す説明図である。
加熱装置5は、加熱部を形成すべき金属材1の外周に環状に配置される高周波加熱コイル5により構成され、金属材1を部分的に焼入れが可能な温度域に加熱する。次いで、可動ローラダイス4が二次元又は三次元で移動することにより、加熱装置5による金属材1の加熱された部分に、曲げモーメントを付与する。
【0102】
また、冷却装置6から冷却媒体を金属材1の加熱部に噴射することにより、金属材1の加熱された部分を焼入れる。
上述したように、高周波加熱される前の金属材1は、2組の支持ロール対2、2によって支持される。本実施の形態は、加熱装置5及び冷却装置6を一体に構成した場合であるが、別々に構成するようにしてもよい。
【0103】
このようにして、金属材1を断続的又は連続的にAC3変態点以上で、かつ金属組織を構成する結晶粒が粗大にならない温度まで加熱することができ、さらに局部的な加熱部に可動ローラダイス4を用いて塑性変形を生じさせ、その直後に冷却媒体を噴射することにより100℃/sec以上の冷却速度による焼入れを行うことができる。
【0104】
したがって、曲げ加工が施された金属材1は、優れた形状凍結性及び安定した品質を確保できる。例えば、低強度の金属素材を出発材料として曲げ加工を行った場合でも、軸方向へ均一に焼入れることによって強度を上げ、引張強さが900MPa以上、さらには1300MPa級以上に相当する曲げ加工製品を製造することができる。
【0105】
金属材1が厚肉になると、100℃/sec以上の冷却速度を確保することが困難になる場合があるが、金属材1が丸管、矩形管さらには台形管等の中空の閉断面部材(金属管材)である場合には、所望の冷却速度を確保するための冷却手段として、閉断面部材の内部にマンドレルバーを挿入することが望ましい。
【0106】
図6は、厚肉材の冷却速度を確保するために中空の閉断面部材の内面にマンドレルバーを装入した状況を示す説明図である。
中空の閉断面部材が厚肉である場合には、冷却手段としてその内部にマンドレルバー6aを装入し、金属材1の外周に配置した冷却手段6と同調して、冷却媒体を供給することにより、所望の冷却速度を確保することができる。この場合、金属材1の内部を流体又はミストで冷却すればよく、マンドレルバー6aは非磁性体又は耐火物により構成することが望ましい。
【0107】
本実施の形態の製造装置0では、冷却手段6から供給される冷却媒体として、水を主成分として防錆剤を含有させたものを用いることが望ましい。供給される冷却水によって加工装置の摺動部が濡れると、冷却水に防錆剤が含有されない場合には錆が発生することから、冷却水に防錆剤を含有させることが有効である。
【0108】
さらに、冷却手段6から供給される冷却媒体として、水を主成分として焼入れ剤を含有させることが望ましい。例えば、有機高分子剤を混入したものが焼入れ剤として知られている。所定の濃度の焼入れ剤を添加することによって、冷却速度を調整して安定した焼入れ性能を確保できる。
(III)可動ローラダイス4の構成
図7は、本実施の形態の製造装置0における可動ローラダイス4の上下方向及び左右方向へのシフト機構、並びに金属管の軸周りの周方向への回転機構を示す説明図である。
【0109】
図7に示す可動ローラダイス4は、図1に示す可動ローラダイス4とは異なり、被加工材である金属材(丸管)1をその軸方向に送り出しながら支持する4つのロールを備えるものである。上下方向へのシフト機構は駆動モータ8により構成され、左右方向へのシフト機構は駆動モータ9により構成される。また、周方向への回転機構は駆動モータ10により構成される。
【0110】
図7には、可動ローラダイス4を上下方向及び左右方向に傾斜させるチルト機構の構成を示していないが、このチルト機構は特に限定を要するものではなく、周知慣用の機構を用いればよい。
【0111】
図8は、可動ローラダイス4の前後方向への移動機構の説明図である。図8に示すように、曲げ加工に必要な曲げモーメントMは、アーム長さ(金属材1の加工長さ)をLとすると、下記(A)式により定まる。
【0112】
M=P×L=P×Rsinθ ・・・・・・・・(A)
したがって、アーム長さLが大きくなるほど、ピンチロール(可動ローラダイス)4に作用する力Pは小さくなる。すなわち、曲げ半径が小径から大径までの加工範囲を対象にすると、可動ローラダイス4を前後方向へ移動させない場合には、曲げ半径が小さい金属材1の加工における加工力Pが設備の能力を超えることがある。このため、曲げ半径が小径の金属材1の加工に合わせてアーム長さLを大きく設定すると、曲げ半径が大径の金属材の加工に際し、可動ローラダイス4のシフト機構及びチルト機構を構成するためには大きなストロークが必要となり、加工装置が大型化する。
【0113】
一方、製造装置0の停止精度や許容誤差を考慮すると、アーム長さLを少なくした場合には加工精度が悪化する。このため、金属材1の曲げ半径に応じて、可動ロールダイス4を前後方向へ移動自在に配置することにより、最適なアーム長さLを、金属材1の曲げ半径に関わらず得られるので、加工可能範囲を拡大できる。しかも、この場合に加工装置を大型化させることなく、充分に加工精度を確保することができる。
【0114】
同様に、本実施の形態の製造装置0では、高周波加熱装置及び冷却装置についてもそれぞれ単独又は共通して前後方向への移動機構を有する。これにより、可動ローラダイス4との同調性を確保できるのに加え、曲げ加工開始時の金属材1の先端を加熱することができるようになるとともに、金属材1の取り付けや取り外し時の作業性及び操作性をいずれも向上することができる。
【0115】
図9は、本実施の形態の製造装置0の可動ローラダイス4を構成する各種のロールを示す説明図であり、図9(a)は金属材1が丸管などの閉断面部材である場合を示し、図9(b)は金属材1が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の開断面部材である場合を示し、図9(c)は金属材1が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の異型断面部材である場合を示す。
【0116】
可動ローラダイス4のロール型式は、金属材1の断面形状に応じて設計することができ、図9(a)〜図9(c)に示すように、2ロール又は4ロールで構成する以外に、可動ローラダイス4を3ロールで構成することもできる。
【0117】
通常、曲げ加工を行う金属材の断面形状を丸形、矩形、台形又は複雑な形状を有するロールフォーミング等による閉断面形状、または開断面形状、又は送り出し加工による異型断面形状にすることができるが、金属材1の断面形状が実質的に矩形である場合には、図9(c)に示すように、可動ローラダイス4を4ロールで構成することが望ましい。
【0118】
本実施の形態の製造装置0では、金属材1にねじり変形を付加するために、図7に示すように、可動ローラダイス4に金属材1の軸周りの周方向への回転機構を設けることが望ましい。同時に、図1では示していないが、送り出し装置3に、金属材1を把持して金属材1の軸周りの周方向へ回転可能なチャック機構7を設けることが望ましい。
【0119】
したがって、製造装置0により金属材1にねじり変形を付加する場合に、可動ローラダイス4の回転機構を用いて金属材1の先端部をねじり変形する方式と、送り出し装置3の回転機構を用いて金属材1の後端部をねじり変形する方式とを用いることができる。通常、送り出し装置3の回転機構を用いる方式ではコンパクトな装置構造になるのに対し、可動ローラダイス4の回転機構を用いる方式では、図7に示すように、装置の構成が大規模になるおそれがあるが、いずれの方式であっても金属材1にねじり変形を与えることができる。
【0120】
また、製造装置0では、さらに支持手段2(支持ローラ、または支持ガイド)に金属材1の軸周りの周方向への回転機構を設けることにより、送り出し送り装置3の回転に同調して金属材1をその軸周りの周方向へ回転させることができる。金属材1のねじり変形に際して、可動ローラダイス4の回転機構を用いて金属材1の先端部をねじり変形する方式、又は送り出し装置3の回転機構を用いて金属材1の後端部をねじり変形する方式のいずれを採用しても、支持手段2の同調により精度の良好なねじり変形を金属材1に与えることができる。
【0121】
製造装置0では、可動ローラダイス4を構成するロール対それぞれに、駆動回転機構を設けることにより、送り出し送り装置3の送り量に応じて駆動モータ等によってこのロール対それぞれに駆動回転を与えることができる。曲げ加工部分に作用する圧縮応力を緩和させるとともに、送り出し装置3の送り量に応じて、これと同調するように可動ローラダイス4のロールの回転速度を制御すれば、金属材1の曲げ加工部に引張応力を与えることができ、曲げ加工を行うことができる範囲が拡大し、製品の加工精度を向上することができる。
(IV)予熱手段とその作用
本実施の形態の製造装置0では、加熱装置5の上流側に設けられた予熱装置5aにより、金属材1の二段加熱、又はそれ以上の複数段加熱、または不均一加熱を行うことができる。
【0122】
予熱手段5aを複数段加熱として用いる場合には、金属材1の加熱負荷を分散することができ、曲げ加工の能率を向上することができる。
図10は、予熱装置5aを金属材1の不均一加熱として用いる場合の作用を説明する説明図である。
【0123】
予熱装置として予熱用高周波加熱コイル5aを金属材1の不均一加熱として用いる場合には、可動ローラダイス4による金属材1の曲げ方向に基づいて、金属材1を予熱用高周波加熱コイル5a内に偏って配置することにより、金属材1の加熱部における曲げ内面側の温度が曲げ外面側の温度よりも低くなるように設定する。
【0124】
具体的には、図10において、金属材1のA側を予熱用高周波加熱コイル5aに接近するように位置させることにより、曲げ加工の内面側に相当するB側の外面温度よりも、曲げ加工の外面側に相当するA側の外面温度を高くするようにする。これにより、曲げ加工の内面側に発生するシワと、曲げ加工の外面側に発生する割れとを、いずれも有効に防止することができる。
【0125】
製造装置0では、可動ローラダイス4へ潤滑剤を供給することができる。これにより、金属材1の加熱部に発生するスケールを可動ローラダイス4が巻き込んだ場合でも、供給された潤滑剤が奏する潤滑作用により、表面の焼付きの発生を低減することができる。
【0126】
同様に、製造装置0では、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給することができる。可動ローラダイス4の内部であって金属材1を保持する部位の近傍に冷却配管を設けて、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給することにより、可動ローラダイス4が冷却流体により冷却されることから、可動ローラダイス4の強度の低下、可動ローラダイス4の熱膨張による加工精度の低下、さらに可動ローラダイス4の表面の焼付の発生を防止できる。
(V)サポートガイド30
図11は、サポートガイド30の一例30Aを示す説明図である。サポートガイド30Aは、可動ローラダイス4を通過した金属材1を支持することにより曲げ加工後における金属材1の変形に起因する寸法誤差を抑制するためのものである。
【0127】
図11に示すサポートガイド30Aは、図1に示す横断面が円形の金属材1ではなく、横断面が矩形の金属材に曲げ加工を行う場合を示しており、可動ローラダイス4が、左右方向に対をなすロール対4a、4a及び上下方向に対をなすロール対4b、4bの合計4つのロールからなる可動ローラダイス4である場合を示す。また、金属材1の曲げ加工部は水平面内のみで形状が変化する2次元曲げ形状の場合である。
【0128】
可動ローラダイス4は、曲げ加工時には、金属材1の先端を、ロール対4b、4bにより上下方向へ、かつロール対4a、4aにより左右方向へそれぞれ位置決めしながら、所定の空間位置への移動、すなわち水平方向の移動(以降「左右シフト」という)と、平面内の回転(以降「左右チルト」という)とを行う。なお、金属材1が2次元の曲げ形状のみを有する場合には左右シフトのみ行うようにしてもよい。
【0129】
図11に示すように、この可動ローラダイス4の出側には、サポートガイド30Aが設置される。サポートガイド30Aは、可動ローラダイス4のハウジング(図示しない)、又はこのハウジングから縁切りされた他の部材に設置すればよい。
【0130】
サポートガイド30Aは、可動ローラダイス4の出側において曲げ加工された金属材1の下面を支持することにより、金属材1の曲げ加工を行われた部分への自重をはじめとして作用する上下方向のモーメントによる付加的な変形を防止する。このため、サポートガイド30Aを設けることにより、製造される曲げ加工製品の形状を所定の形状に高精度で安定して製造することができる。
【0131】
図12は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例30Bを示す説明図である。
本例も、横断面が矩形の金属材に曲げ加工を行う場合であり、図示しない可動ローラダイスは図4に示す可動ローラダイス4と同様の4ロール型である。また、金属材1の曲げ形状は、水平面内のみで曲げ変形する2次元曲げ形状である。可動ローラダイス4は、曲げ加工時には金属材1の先端を上下方向及び左右方向へ保持しながら所定の空間位置の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトを行う。
【0132】
本例は、図11に示す例と同様に、可動ローラダイス4の出側にサポートガイド30Bが設置されるが、さらに、サポートガイド30Bの上面に設けられた溝に、水平方向へ金属材1をガイドするロール111及び112が円周状に移動自在に設置される。また、ロール111及び112は、加工時における金属材1の移動に応じた移動、すなわち左右シフトや左右チルトを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0133】
図12に示すサポートガイド30Bでは、左右チルトは所定半径の動きであるが、2次元曲げ形状では左右シフトのみで構成してもよい。さらに、ロール111及び112の一方に、油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。
【0134】
サポートガイド30Bは、可動ローラダイス4のハウジング、あるいはこのハウジングとは縁切りされた他の部材に設置すればよい。なお、可動ローラダイス4をハウジングに固定すれば、左右シフトや左右チルトの可動範囲が小さくなるため、設備的には有利である。いずれにせよ、サポートガイド30Bにより可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面及び左右面をガイドし、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向や左右方向への付加的なモーメントが作用しても、可動ローラダイス4を抜けた部分の金属材1に生じる付加的な変形を防止でき、ばらつきなく所定の目標の形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0135】
図13は、本実施の形態に係るサポートガイド30Cの別の一例を示す説明図である。
本例は、そのほとんどが図12に示す例と同じであるが、図12に示す構成に加えて、金属材1の上下方向をガイドするロール113が追加されている。
【0136】
ロール113には、エアーシリンダーや油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置し、金属材1に圧力を負荷するようにしてもよい。可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面及び左右面をガイドし、金属材1の加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止することができ、ばらつきなく目標寸法を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0137】
図14は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例でも、図1と同様に横断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、曲げ加工製品は完全な3次元曲げ形状を有する。
【0138】
可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向へ位置決めしながら所定の空間位置の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトと、垂直方向の移動(以降「上下シフト」という)と、平面内の回転(以降「上下チルト」という)とを行う。
【0139】
本実施例では可動ローラダイス4の出側にロール状のアクティブガイド30Dが設置される。アクティブガイド30Dは、曲げ加工中の金属材1の移動に応じた移動、すなわち左右シフトや左右チルトを行うことにより、金属材1の下面に追従し、この下面を常に案内する。なお、左右チルトは設けなくてもよい。これらの動きは図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0140】
可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面がアクティブガイド30Dにより支持及び案内されるので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の変形を防止でき、ばらつきなく目標寸法を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0141】
図15は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例は、殆ど図7の構成と同様であるが、さらに金属材1の上下方向をガイドするロール30Eが追加されている。
【0142】
ロール30Eの代わりに、エアーシリンダーや油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。ロール30Eにより可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面をガイドすることにより、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0143】
図16は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例も、図11と同様に横断面が矩形である金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、金属材1に完全な3次元曲げ形状を与える。可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向に位置決めしながら所定の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトと、上下シフト及び上下チルトとを行う。
【0144】
本例は、これまでの実施例と同様に、可動ローラダイス4の出側に、水平方向及び上下方向に金属材1をガイドするロール111〜114を有するサポートガイド30Fが設置されている。また、サポートガイド30Fは、曲げ加工中の金属材1の移動に応じた移動、すなわち左右シフトや左右チルトを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0145】
さらに、ロール111及び112の一方に、例えば油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面及び左右面を位置決めするので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止でき、ばらつきなく目標寸法を有する曲げ加工製品を得ることができる。
【0146】
図17は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本例は、殆ど図16の構成と同様であるが、図16の構成に加えて、サポートガイド30Gにねじり機構が追加されている。
【0147】
これらの動きは図示しない制御手段に接続され、捻じれ方向にも移動自在に配置された送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面及び左右面を案内し、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向、さらにはねじれ方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止でき、ばらつきなく目標寸法を有する曲げ加工製品を得ることができる。
【0148】
また、図示しないが、本実施の形態のサポートガイド30の別の一例として、汎用の多軸ロボットにサポートガイド30をなすガイド部材を保持させ、このガイド部材を、所定の空間で移動自在に配置するようにしてもよい。
【0149】
図11〜17を参照しながら説明したように、3次元的な高精度の位置決め機構は複雑なものになることがあるが、汎用の多軸ロボットを用いることにより比較的単純な構成で、ガイド部材を、所定の空間で移動自在に設置することができる。いずれにせよ、曲げ加工製品の要求精度、重量さらには形状により具体的な装置の剛性等を考慮しながら、汎用の多軸ロボットを用いるか否かを決定すればよい。
【0150】
図18は、本実施の形態に係るサポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本例は、図1と同様に断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、曲げ加工製品の形状は完全な3次元曲げ形状である。すなわち、可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向へ位置決めしながら所定の空間位置の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトと、上下シフト及び上下チルトとを行う。
【0151】
本例は、これまでの例とは異なり、金属材1の先端を、多軸ロボット31に保持させたサポートガイド30Hにより完全に掴ませ、金属材1の送り出しとともに、多軸ロボット31も移動しながら3次元位置を完全に同期させる。曲げ加工中の金属材1の移動に応じて、空間位置の移動、すなわち左右シフトや左右チルトやねじれを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0152】
可動ローラダイス4の出側の金属材1の先端をサポートガイド30Hにより保持するので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止でき、ばらつきなく目標寸法を有する曲げ加工製品を得ることができる。
(VI)関節型ロボット
図19は、本実施の形態の製造装置0で用いることができる関節型ロボット11の構成を示す説明図である。
【0153】
図19に示すように、曲げ加工装置の下流側には、可動ローラダイス4を保持するための関節型ロボット11を配置することができる。
この関節型ロボット11は、作業面に固定された固定面12と、主軸となる3本のアーム13、14、15と、各アーム13、14、15を接続するとともに、軸の廻りで回動可能な手首軸となる3個の関節16、17、18とを有する。関節型ロボット11の先端のアーム15には可動ローラダイス4が取り付けられる。
【0154】
図20は、本実施の形態の製造装置0に用いられる関節型ロボットの他の構成例を示す説明図である。
図19に示す製造装置0では、可動ローラダイス4を保持する関節型ロボット11だけを配置するが、これとともに、加熱装置5及び冷却装置6用の関節型ロボット11を併設するようにしてもよい。これらの関節型ロボット11を設けることにより、さらに曲げ加工の効率化を図ることができる。
【0155】
この製造装置0は、軸廻りに回動可能な関節を3個有する関節型ロボット11を少なくとも1つ以上配置することにより、金属材1の曲げ加工に際し、可動ローラダイス4でのシフト機構、チルト機構及び移動機構が行う屈伸、旋回、並進等の動作、すなわち、合計6種類のマニピュレータが行う動作を、制御信号に基づく一連の動作とすることができる。これにより、曲げ加工の効率化とともに加工装置の小型化を図ることができる。
(VII)曲げ加工設備列
上述したように、本実施の形態の製造装置0により加工される被加工材としては、丸形等の形状を有する閉断面部材が用いられる。従来から丸管の閉断面部材として電縫鋼管が用いられる。
【0156】
図21は、被加工材の一例である電縫鋼管の製造工程の全体を示す説明図である。
電縫鋼管の製造工程19は、帯状鋼板20から鋼管を製造するための装置である。同図に示すように、帯状の鋼板ロールから帯状鋼板20を連続的に繰り出すアンコイラー21と、繰り出された帯状鋼板20を所定の断面形状の管に成形する複数のロール成形機を備える成形手段22と、管状に成形されて相互に突き合わされた帯状鋼板の両側縁を溶接して管を連続的に形成する溶接機を備える溶接手段23と、溶接ビード切削装置及びポストアニーラー装置、さらに連続する管を所要のサイズにする後処理手段24と、この所要サイズにされた管を所要長さに切断する走行切断機を備える切断手段25とを、上流から下流へ向けてこの順に配置される。
【0157】
図22は、被加工材の製造に用いられるロールフォーミング工程の全体構成を示す図である。
ロールフォーミング工程26は、帯状鋼板20を所定の形状に成形するための装置である。このため、金属素材としての帯状鋼板20が巻回され、この帯状鋼板20を繰り出すアンコイラー21と、このアンコイラー21によって繰り出された帯状鋼板20を所定の形状に成形するロール成形機を備える成形手段27と、このロール成形機によって所定の形状に成形された帯状鋼板20を所定の長さに連続的に切断する走行切断機を備える切断手段28とから構成される。
【0158】
図21に示す電縫鋼管の製造工程19や、図22に示すロールフォーミング工程26によって製造された被加工材は、加工用の金属材として曲げ加工装置に供給されるが、各ラインと装置とが分離し独立していると、ラインと装置間での処理スピードの相違から、被加工材をストックしておく場所を確保する必要が生じる。また、各々のラインと装置間で被加工材を搬送する必要があり、クレーンやトラック等の補助搬送手段を設ける必要も生じる。
【0159】
本実施の形態の製造装置では、電縫鋼管の製造工程19又はロールフォーミング工程26の出側に連続して、本実施の形態の製造装置0を配置することにより、被加工材の供給から曲げ加工製品の製造に至るまでの全体の設備列をコンパクトにできるとともに、その操業条件を適正に設定することにより、精度の優れた曲げ加工製品を、効率的かつ安価に製造できる。
【0160】
このようにして、本実施の形態によれば、多岐にわたる曲げ形状が要求され、金属材の曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工や、曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を行う場合であっても、さらに、高強度の金属材の曲げ加工が必要な場合であっても、金属材を均一に冷却できることから、高強度であっても形状凍結性がよく均一な硬度分布を有する曲げ加工製品を、効率的かつ安価に製造することができる。
【0161】
しかも、可動ローラダイスは、金属材をその軸方向に送り出しながら支持することができるので、可動ローラダイスの表面に発生する焼付疵を抑制でき、曲げ加工の精度を確保することができるとともに、作業能率に優れた曲げ加工を行うことができる。これにより、例えば、さらに高度化する自動車部品の曲げ加工技術として、広く適用可能である。
【0162】
図23(a)及び図23(b)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるサイドメンバーとバンパーリインフォース一体構成部品40を示す説明図である。
【0163】
同図に示すように、この一体構成部品40は、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部40aと、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体40hにより構成される。
【0164】
以降に説明する本実施の形態の自動車車体用強度部材は、いずれも、筒体がフランジを有さないことにより、省スペース化、軽量化さらには軸方向へ衝撃荷重を負荷された際の座屈変形挙動の安定による衝撃エネルギーの吸収量の増大化を図ることができる。
【0165】
筒体40hは、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部40e(ハッチング部)と、この超高強度熱処理部40eを除いた残余の部位であって車両の衝突時に負荷される衝撃荷重に対する変形促進部として機能する、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部40f、40g、あるいは引張強度が600MPaの低強度熱処理部40f、40g、あるいは、引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部40fと引張強度が600MPaの低強度熱処理部40gとを備える。
【0166】
これにより、衝突時における荷重が集中して付加される曲げ加工部40aは高い変形抵抗を有するとともに、超高強度熱処理部40eと高強度熱処理部40fとが交互に設けられた先端側は、衝突時に座屈変形して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0167】
なお、超高強度熱処理部40eを除いた残余の部位の熱処理及び強度をどのように設定するかは、それぞれの自動車車体用強度部品に要求される性能を勘案して適宜決定すればよい。また、設備能力や高周波加熱コイル5や冷却装置6の形状、製品の形状や肉厚等によって操業条件は異なるものの、事前に確認試験を行って最適な条件を決定すればよい。
【0168】
いずれにせよ、後述する加熱と冷却の組み合わせにより、簡単に自動車車体用強度部品の部位毎の硬度を所望の状態とすることができる。
図23(b)は、筒体40hにおける切断加工予定部40b、孔あけ加工予定部40c、及び溶接予定部40dを示す説明図である。切断加工予定部40bや孔あけ加工予定部40cを、引張強度が600MPa未満となるように熱処理することによって(ここで「熱処理」とは部分的に加熱を行わずに素材の部分をそのまま残すことにより素材の強度とする場合も包含する)、製品の切断や孔あけを行う工具の磨耗を減らし、工具寿命を延長することができる。また、溶接予定部40dを、引張強度が600MPa未満となるように熱処理することによって(熱処理には部分的に加熱を行わず、素材の部分を残し素材の強度とする場合も含める)、後工程での溶接の信頼性を向上させることが可能である。
【0169】
このように、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部40aと、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体40hにより構成され、筒体40hが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部40eと、切断加工予定部を40b、孔あけ加工予定部40c、溶接予定部40dを引張強度が600MPa未満となるように熱処理することは、有効である。さらに、上述したように衝撃荷重に対する変形を促進するための高強度熱処理部40e、あるいは低強度熱処理部40b〜40d、あるいは高強度熱処理部40eと低強度熱処理部40b〜40dと組み合わせると、よりいっそう有効である。
【0170】
図24(a)〜図24(e)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるフロントサイドメンバー41A〜41Eを示す説明図である。
図24(a)に示すフロントサイドメンバー41Aは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部41Aaと、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体41Ahにより構成される。
【0171】
筒体41Ahが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部41Ae(ハッチング部)と、この超高強度熱処理部41Aeを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部41Afとを備える。
【0172】
これにより、先端側(図面左部側)から衝撃荷重を負荷されると、曲げ加工部41Aaの引張強度が1100MPa以上の超高強度であるので、曲げ加工部41aの早期の曲げ変形の発生が抑制され、これにより、先端側の高強度熱処理部41Afが衝突時に負荷される衝撃荷重により座屈して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0173】
なお、先端側の41Afを低強度熱処理部としてもより衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
図24(b)に示すフロントサイドメンバー41Bは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部41Baと、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体41Bhにより構成される。
【0174】
筒体41Bhが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部41Be(ハッチング部)と、この超高強度熱処理部41Beを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部41Bf、41Bfとを備える。
【0175】
これにより、上述した図24(a)に示すフロントサイドメンバー41Aと同様の作用効果を得られるとともに、ダッシュパネルに接合される後端側に高強度熱処理部41Bfを備えるので、後端部でも衝撃荷重を吸収できるためトータルの吸収エネルギーを大きくでき、衝撃荷重を負荷された際にフロントサイドメンバー41Bによりダッシュパネルが早期に損傷することをも防止することができる。
【0176】
なお、先端側の高強度熱処理部41Bfを低強度熱処理部とすれば、さらに衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。さらに、先端側の高強度熱処理部41Bfを低強度熱処理部とするとともに後端側の高強度熱処理部41Bfを高強度熱処理部とすることによって、衝撃エネルギーを向上させつつ、軸方向への圧潰時の潰れモードを有効に制御することができる。
【0177】
図24(c)に示すフロントサイドメンバー41Cは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部41Caと、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体41Chにより構成される。
【0178】
筒体41Chが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部41Ce(ハッチング部)と、この超高強度熱処理部41Ceを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部41Cfとを備える。
【0179】
これにより、上述した図24(a)に示すフロントサイドメンバー41Aと同様の作用効果を得られるとともに、先端側に超高強度熱処理部41Ce及び高強度熱処理部41Cfを軸方向へ交互に備えるので、先端部が衝突時に負荷される衝撃荷重により座屈して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0180】
なお、先端側の高強度熱処理部41Cfを低強度熱処理部とすれば、さらに衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
図24(d)に示すフロントサイドメンバー41Dは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部41Daと、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体41Dhにより構成される。
【0181】
筒体41Dhが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部41De(ハッチング部)と、この超高強度熱処理部41Deを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部41Dfとを備える。
【0182】
これにより、衝撃荷重を負荷されると、曲げ加工部41Daの早期の屈曲変形が抑制され、ダッシュパネルが早期に損傷することをも防止することができ、さらに先端部が衝突時に負荷される衝撃荷重により座屈して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。さらに、高強度熱処理部41Dfでも衝撃荷重を吸収できるため、高い吸収エネルギーが得られる。先端にクラッシュボクスが設けられない小型車であっても、高効率に衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0183】
なお、先端側の高強度熱処理部41Dfを低強度熱処理部とすれば、さらに衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。さらに、先端側の高強度熱処理部41Dfを低強度熱処理部とするとともに後端側の41Dfを高強度熱処理部することによって、衝撃エネルギーを向上させながら圧潰の形態を有効に制御することができる。
【0184】
図24(e)は、フロントサイドメンバー41Eにおける切断加工予定部41Eb、孔あけ加工予定部41Ec及び溶接予定部41Edを示す説明図である。
図24(e)に示すように、41Eb、孔あけ加工予定部41Ecを、引張強度が600MPa未満となるように熱処理することによって(熱処理には部分的に加熱を行わず、素材の部分をそのまま残すことにより素材の強度とする場合も含める)、製品の切断や孔あけを行う工具の磨耗を減らし、工具寿命を延長することができる。また、溶接予定部41Edを、引張強度が600MPa未満となるように熱処理することによって(熱処理には部分的に加熱を行わず、素材の部分をそのまま残すことにより素材の強度とする場合も含む)、後工程での溶接の信頼性を向上させることもできる。
【0185】
このように、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部41Aa〜41Daと、外部へ向けたフランジを有さない閉断面とを有する筒体41Ah〜41Dhにより構成され、筒体41Ah〜41Dhは、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部41Ae〜41Deと、切断加工予定部41Eb、孔あけ加工予定部41Ec、溶接予定部41Edを引張強度が600MPa未満となるように熱処理することは、有効である。さらに、図24(a)〜(d)に示すような衝撃荷重に対する変形を促進するための高強度熱処理部41Ae〜41De、あるいは低強度熱処理部41Af〜41Df、あるいは高強度熱処理部41Ae〜41Deと低強度熱処理部41Af〜41Dfと組み合わせることはさらに有効である。
【0186】
なお、本発明例は、フロントサイドメンバーに適用した例を示したが、図24(c)及び図24(d)に示した先端部と同様な構造でいわゆるクラッシュボックスとすることも可能であり、また、曲げ加工部と組み合わせることにより、これまでとは異なる良好なエネルギー吸収特性を得ることができる。
【0187】
図25(a)及び図25(b)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるBピラー42A、42Bを示す説明図である。
図25(a)に示すBピラー42Aは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部42Aaと、切断加工予定部42Abと、穴あけ加工予定部42ACと、溶接予定部42Adとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体42Ahにより構成される。
【0188】
筒体42Ahが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部42Aeと、超高強度熱処理部42Aeを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部42Afとを備える。
【0189】
一方、図25(b)に示すBピラー42Bは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部42Baと、切断加工予定部42Bbと、穴あけ加工予定部42Bcと、溶接予定部42Bdとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体42Bhにより構成される。
【0190】
筒体42Bhが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部42Be、42Beと、超高強度熱処理部42Be、42Beを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部42Bfとを備える。
【0191】
これらにより、側面衝突時におけるBピラー上部の室内側への変位量を抑制でき、乗員の頭部損傷を軽減できるとともに、側面衝突時にBピラーの高さ方向の中央部付近の損傷を抑制できる。
【0192】
図26(a)及び図26(b)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるクロスメンバー43A、43Bを示す説明図である。
図26(a)に示すクロスメンバー43Aは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部43Aaと、切断加工予定部43Abと、穴あけ加工予定部43ACと、溶接予定部43Adとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体43Ahにより構成される。
【0193】
筒体43Ahが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部43Aeと、超高強度熱処理部43Aeを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部43Afとを備える。
【0194】
一方、図26(b)に示すクロスメンバー43Bは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部43Baと、切断加工予定部43Bbと、穴あけ加工予定部43Bcと、溶接予定部43Bdとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体43Bhにより構成される。
【0195】
筒体43Bhが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部43Beと、超高強度熱処理部43Beを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部43Bfとを備える。
【0196】
これらにより、クロスメンバーの中央部の強度を高めることができ、さらに側面衝突における軸方向への圧潰においてもその耐力を高めることができる。
図27(a)及び図27(b)は、本実施の形態により製造される自動車車体用強度部材の一例であるAピラー〜ルーフレールサイド一体構造品44A、44Bを示す説明図である。
【0197】
図27(a)に示す一体品44Aは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部44Aaと、切断加工予定部44Abと、穴あけ加工予定部44ACと、溶接予定部44Adとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体44Ahにより構成される。
【0198】
筒体44Ahが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部44Aeと、超高強度熱処理部44Aeを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa以上1100MPa以下となるように熱処理された高強度熱処理部44Afとを備える。
【0199】
一方、図27(b)に示す一体成形品44Bは、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部44Baと、切断加工予定部44Bbと、穴あけ加工予定部44Bcと、溶接予定部44Bdとを備え、かつ、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する筒体44Bhにより構成される。
【0200】
筒体44Bhが、引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部44Beと、超高強度熱処理部44Beを除いた残余の部位であって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された高強度熱処理部44Bfとを備える。
【0201】
これらにより、ルーフレールサイドと、Aピラー又はBピラーとの接合強度を高めることができる。
さらに、例えば、図25に示すBピラーと図26に示すクロスメンバーとを一体に構成した一体品としたり、ルーフ内面側に配置されるバーにより二つのBピラーをそれぞれの上部で接続して一体に構成する一体品としたり、あるいは片側のBピラーとルーフ内面側に配置されるバーの一部とクロスメンバーの一部を一体品とすることもできる。
【0202】
図28(a)はAC点以上に加熱した後に急冷する通常の焼入れ条件を示すグラフであり、図28(b)はAC点以上に加熱した後に図28(a)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフであり、図28(c)はAC点以下に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、図28(d)はAC点以上AC点以下の温度域に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、さらに図28(e)はAC点以上AC点以下の温度域に加熱した後に図28(d)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフである。
【0203】
本発明に係る補強部材を製造する際に行う熱処理は、上述した製造装置0における高周波加熱コイル5及び水冷装置6の作動を適宜制御することによって、図28(a)に示す通常の焼入れを行うとともに、図28(b)〜図28(e)に示す条件で、行われる。
【0204】
例えば、図28(a)に示すように部分的に通常の焼入れを行って所望の超高強度(例えばマルテンサイト100%の組織、1500〜1650MPa、55k鋼では1300MPa、45k鋼では1200MPa)を得るとともに、金属材1に対して部分的に高周波加熱コイル5の作動を停止することによりこの部分に対しては熱処理を行わないようにすることによって、素管の強度のまま(例えばフェライトとパーライトの二相組織,焼入れ鋼では500〜600MPa、550MPa鋼では550MPa、450MPa鋼では450MPa)とすることができる。
【0205】
また、図28(b)に示すように通常焼き入れと同等の加熱を行うとともに、冷却速度を低くすることにより、上述した超高強度よりも強度が若干低下した高強度(例えばマルテンサイトと微量のフェライトの2相組織,焼入れ鋼では1400〜1500MPa、550MPa鋼では700〜900MPa、450MPa鋼では600〜800MPa)とすることができる。具体的には、水冷装置6の水冷ジャケットの孔を、例えば電磁弁により全部あるいは部分的に閉鎖することにより水冷しない部分を設けることが例示される。この際の冷却速度は、周囲の温度により変化するため、製造条件により事前に実験を行うことにより水冷の方法を決定すればよい。
【0206】
また、図28(c)に示すように、AC1点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度と同じ冷却速度で冷却することにより、母材の強度よりも若干高い所望の強度(例えばフェライトとパーライトの2相組織、焼入れ鋼では5000MPa〜600MPaよりやや高い強度、550MPa鋼では550MPaよりやや高い強度、450MPa鋼では450MPaよりやや高い強度)とすることができる。素管の造管歪が大きい場合には、素管よりも強度が低下する場合もあるが、一般的にはセメンタイトが溶け込み、若干強度が上昇する。上述したようにオンーオフ制御を行う場合における高周波加熱コイル5の制御の応答性を勘案すると、この手段によれば加熱電源の出力の変化が少なくて済むため、温度変化のレスポンスが早く、強度変化の移行部が小さくなるため実際的には有効な方法である。
【0207】
また、図28(d)に示すように、AC1点以上AC3点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度と同じ冷却速度で冷却することにより、通常の焼き入れによる超高強度と素管の強度との中間の強度(焼入れ鋼では600〜1400MPa、55k鋼では550〜1300MPa、450MPa鋼では450〜1200MPa)を得ることができる。この場合、フェライトとマルテンサイトの2相組織となるため、一般的には、やや不安定で制御し難いが、製品の形状、寸法、用途等により所定の強度を得ることができる。
【0208】
さらに、図28(e)に示すように、AC1点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度よりも遅い冷却速度で冷却することにより、通常の焼き入れによる超高強度と素管の強度との中間の強度(焼入れ鋼では600〜1400MPaよりやや低い強度、550MPa鋼では550〜1300MPaよりやや低い強度、450MPa鋼では450〜1200MPaよりやや低い強度)を得ることができる。この場合、図28(d)に示す場合よりもやや強度が低下するが、制御はやや安定する。
【0209】
例えば、肉厚1.6mmの焼入れ鋼(C:0.20%、Si:0.22%、Mn:1.32%、P:0.016%、S:0.002%、Cr:0.20%、Ti:0.020%、B:0.0013%、残部Fe及び不純物、AC3=825℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は502MPa、図28(a)に示す条件(加熱温度910℃)の熱処理部は1612MPa、図28(b)に示す条件(加熱温度910℃)の熱処理部は1452MPa、図28(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は510MPa、図28(d)に示す条件(加熱温度770℃)の熱処理部は752MPa、図28(e)に示す条件(加熱温度770℃)の熱処理部は623MPaの強度をそれぞれ有する。
【0210】
一方、肉厚1.6mmの550MPa鋼(C:0.14%、Si:0.03%、Mn:1.30%、P:0.018%、S:0.002%、残部Fe及び不純物、AC3=850℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は554MPa、図28(a)に示す条件(加熱温度950℃)の熱処理部は1303MPa、図28(b)に示す条件(加熱温度950℃)の熱処理部は823MPa、図28(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は561MPa、図28(d)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は748MPa、図28(e)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は658MPaの強度をそれぞれ有する。
【0211】
さらに、例えば、肉厚1.6mmの450MPa鋼(C:0.11%、Si:0.01%、Mn:1.00%、P:0.021%、S:0.004%、残部Fe及び不純物、AC3=870℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は445MPa、図28(a)に示す条件(加熱温度980℃)の熱処理部は1208MPa、図28(b)に示す条件(加熱温度980℃)の熱処理部は737MPa、図28(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は451MPa、図28(d)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は629MPa、図28(e)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は612MPaの強度をそれぞれ有する。
[実施の形態2]
次に、実施の形態2を説明する。
【0212】
図29は、自動車車体51のエンジンコンパートメント52内の左右の縦壁部52aに前後方向へ略水平に延設して溶接されるフロントサイドメンバー53を示す説明図である。なお、以降の説明では、閉じた四角形の横断面形状を有するフロントサイドメンバー53を例にとるが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、例えば六角形や円形等の、四角形以外の閉じた横断面形状を有する筒体からなる本体を備えるものであっても同様に適用される。
【0213】
図29に示すように、フロントサイドメンバー53の本体54をなす筒体は、その軸方向の一方の端部54aから他方の端部54bへ向けて、車体前後方向へ向けて延びて存在する先端部55と、先端部55に連続するとともに、エンジンコンパートメント52とキャビン58との間の隔壁であるダッシュパネル59に沿って下方へ向けて傾斜する傾斜部56と、傾斜部56に連続するとともにダッシュパネル59に接合されるフロアーパネル50の下面に沿って延びて存在する後端部57とを有する。
【0214】
ここで、傾斜部56とは、フロントサイドメンバー53の設置高さがダッシュパネル59の下面へ向けて大幅に変化する領域を意味し、先端部55とはこの傾斜部56よりも車体前後方向の前側の領域をいい、後端部57とはこの傾斜部56よりも車体前後方向の後側の領域をいう。
【0215】
本実施の形態のフロントサイドメンバー53では、先端部55の一部が焼入れ処理を行われない非焼入れ部であるとともに、この一部を除いた残余の部分が高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部である。また、傾斜部56の全てが、高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部である。さらに、後端部57の一部が焼入れ処理を行われない非焼入れ部であるとともに、この一部を除いた残余の部分が、高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部であるか、または、後端部57は、高周波焼入れ処理を行われた高周波焼入れ部である。以下、具体例に則して説明する。
【0216】
図30は、このフロントサイドメンバー53の第1の例53−1を示す説明図である。
同図に示すように、第1の例53−1では、先端部55における非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bが、筒体の軸方向へ向けて交互に、それぞれ1つ設けられているとともに、傾斜部56及び後端部57は全て高周波焼入れ部である。これにより、衝突の際に衝撃エネルギーが本体54の軸方向に負荷された際に、フロントサイドメンバー53の重量の増加を生じることなく、先端部55における非焼入れ部55aにおいて軸方向への圧潰による変形が促進されるとともに、傾斜部56の耐曲げ性が向上してダッシュパネル59の損傷が軽減されるので、キャビン58の安全性が向上する。
【0217】
図31は、フロントサイドメンバー53の第2の例53−2を示す説明図である。
同図に示すように、第2の例53−2では、先端部55における非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bが、本体4の軸方向へ向けて交互に、それぞれ2つ以上(図示例ではそれぞれ3つ)設けられているとともに、傾斜部56及び後端部57は全て高周波焼入れ部である。これにより、衝突の際に衝撃エネルギーが本体54の軸方向に負荷された際に、フロントサイドメンバー53の重量の増加を生じることなく、先端部55における非焼入れ部55aにおいて軸方向への圧潰による変形が制御されてさらに促進されるとともに、傾斜部56の耐曲げ性が向上してダッシュパネル59の損傷が軽減されるので、キャビン58の安全性が向上する。
【0218】
図32は、図31に示すフロントサイドメンバー53の第2の例53−2の好適態様53−2’を示す説明図である。
同図に示すように、先端部5における非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bそれぞれの、本体54の軸方向(図4における両矢印方向)への長さが、本体54の先端から後端に向かうにつれて徐々に大きくなることが、軸方向への圧潰による変形を促進するためには望ましい。
【0219】
図33は、フロントサイドメンバー53の第3の例53−3を示す説明図である。
同図に示すように、第3の例53−3では、先端部55における高周波焼入れ部55bが、本体54の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に大きくなるように設けられるとともに、先端部55における非焼入れ部55aが、筒体の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に小さくなるように設けられることが望ましい。これにより、フロントサイドメンバー53に負荷される衝撃荷重を徐々に増加させることができるので、初期荷重を軽減しながら、先端部55における非焼入れ部55aにおいて軸方向への圧潰による変形が促進されるとともに、傾斜部56の耐曲げ性を向上できる。
【0220】
図34(a)〜図34(d)は、フロントサイドメンバー53の第4の例53−4、第5の例53−5、第6の例53−6、及び第6の例53−7を示す説明図である。
図34(a)〜図34(d)に示すように、第4〜7の例では、先端部55における非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bが、本体54の周方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられることが、先端部55と傾斜部56との荷重バランスをとりながら先端部55を強化するためには望ましい。
【0221】
図34(a)及び図34(b)は、筒体が四角形の横断面形状を有する場合であり、図34(c)及び図34(d)は筒体が八角形の横断面形状を有する場合である。
図34(a)及び図34(c)に示すように、非焼入れ部55aを横断面形状である多角形の頂点を含まない平面状の領域に設けるとともに高周波焼入れ部55bを多角形の頂点を含む屈曲した領域に設けることにより、衝撃荷重に対する耐力を高めることができる。
【0222】
一方、これとは逆に、図34(b)及び図34(d)に示すように、非焼入れ部55aを多角形の頂点を含む屈曲した領域に設けるとともに高周波焼入れ部55bを多角形の頂点を含まない平面状の領域に設けることにより、初期荷重を低下して衝撃荷重を制御することができ、軸方向への圧潰による変形を促進することができる。
【0223】
図35(a)及び図35(b)は、フロントサイドメンバー53の第8の例53−8、第9の例53−9を示す説明図である。
図35(a)に示すように、本体54の横断面である多角形が対向する一対の略垂直面を有する場合には、非焼入れ部55aが一方の略垂直面に設けられるとともに高周波焼入れ部55bがこれに対向する他方の略垂直面に設けられ、かつ非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bが本体54の軸方向へ交互に形成されることにより、衝撃荷重を負荷されたフロントサイドメンバー53に、車体の所望の幅方向への折れ曲がりを誘発させることができ、望ましい。
【0224】
一方、図35(b)に示すように、本体54の横断面である多角形が対向する一対の略水平面を有する場合には、非焼入れ部55aが一方の略水平面に設けられるとともに高周波焼入れ部55bがこれに対向する他方の略水平面に設けられ、かつ非焼入れ部55a及び高周波焼入れ部55bが本体54の軸方向へ交互に形成されることにより、衝撃荷重を負荷されたフロントサイドメンバー53に、車体の所望の上下方向への折れ曲がりを誘発させることができ、望ましい。
【0225】
図36(a)及び図36(b)は、フロントサイドメンバー53の第10の例53−10、第11の例53−11を示す説明図であり、両図の右の図面は先端部55のA−A段面図である。なお、図35(a)は高周波焼入れ部55bの面積が筒体の軸方向へ向けて徐々に増加するものを示し、図35(b)は一定であるものを示す。
【0226】
図36(a)及び図36(b)に示すように、非焼入れ部55aが筒体の横断面における下側の領域に設けられ、高周波焼入れ部55bがこの下側の領域を除く上側の領域に設けられることにより、衝撃荷重を負荷された本体54の折れ変形を抑制することができ、望ましい。
【0227】
図37は、フロントサイドメンバー53の第12の例53−12を示す説明図である。
図37に示すように、非焼入れ部55aが筒体の横断面における車体内側の領域に設けられ、高周波焼入れ部55bが車体内側の領域を除く車体外側の領域に設けられることにより、衝撃荷重を負荷された本体54が車体内側に屈曲して早期に衝撃吸収性能が低下することを抑制でき、望ましい。
【0228】
以上説明した、フロントサイドメンバー53の第1の例53−1〜第12の例53−12では、後端部57が全て高周波焼入れ部である場合を例にとった。しかし、これとは異なり、後端部57の一部に非焼入れ部を設けてもよい。
【0229】
図38は、図31に示すフロントサイドメンバー53の第2の例53−2において、後端部57の先端から本体54の軸方向へ向けて非焼入れ部57aを一つ形成した第13の例53−12を示す説明図である。なお、非焼入れ部57aは筒体の軸方向に向けて複数設けるようにしてもよい。
【0230】
この第13の例53−13によれば、図31に示す第2の例のフロントサイドメンバー53の効果に加えて、後端部57における軸方向への圧潰による変形を促進でき、フロアーパネル50及びキャビン58の損傷をさらに軽減することができる。
【0231】
以上説明した第1の例53−1〜第13の例53−13によれば、高周波焼入れによりフロントサイドメンバー53を部分的に高強度化できるとともに、非焼入れ部との間に適当な強度バランスを与えることができるので軸方向への圧潰による変形を促進することができ、これにより、これまでには得られなかった高強度と衝撃吸収能とを兼ね備えたフロントサイドメンバー53を提供することができる。
【0232】
ここで、フロントサイドメンバー53には、成形後に部分的に、穴あけのための穴あけ加工や、例えば切欠きの形成のための切断加工等の機械加工が施されることがあり、このような加工が行われる部位まで高周波焼入れを行ってしまうと、硬度の著しい上昇によりこれらの機械加工を行うことが難しくなってしまう。また、特にフロントサイドメンバー53の後端部は、フロアーパネル50の下面に溶接接合されるため、このような部分には高周波焼入れを行わないことが望ましい。
【0233】
図39は、このような観点から、非焼入れ部55a、57aが、穴あけ加工による穴あき部及び溶接される溶接部を含む領域に設けられるフロントサイドメンバー53の第14の例53−14を示す説明図である。
【0234】
図39に示す第14の例53−14では、先端部55における穴あけ加工部を含む領域に非焼入れ部55aを設けるとともに、後端部57におけるフロアーパネルとの溶接部にも非焼入れ部57aを設けている。この第14の例53−14は、優れた溶接性及び加工性を有することから現に工業的規模で量産可能である。
【0235】
次に、本発明に係るフロントサイドメンバー53の製造方法を説明する。
本発明に係るフロントサイドメンバー53は、図1〜22を参照しながら説明した曲げ加工法により製造することができる。これにより、高生産性や良好な寸法精度、さらには非焼入れ部及び高周波焼入れ部を確実かつ容易に形成しながら、本発明に係るフロントサイドメンバー53を製造することができる。
【0236】
これに対し、例えば、公知の適宜手段により、上述した先端部5、傾斜部6及び後端部7を有する、閉断面構造の筒体を成形し、成形されたこの筒体に曲げ成形を行って所望の形状とした後に、公知の手段により高周波焼入れを行うと、高周波焼入れにより、特に曲げ成形部の寸法精度を確保することが難しくなることから、本発明に係るフロントサイドメンバー53を製造することは事実上不可能である。
【0237】
このようにして、本実施の形態により、これまでには得られなかった高強度及び軽量性と衝撃吸収能とを兼ね備え、さらに優れた溶接性及び加工性を有することから現に工業的規模で量産可能なフロントサイドメンバーを提供することができるようになる。
[実施の形態3]
実施の形態3を説明する。
【0238】
図40は、本実施の形態の自動車車体61の側部構造62の一例を示す説明図である。
この側部構造62は、少なくとも、Aピラー63と、Bピラー64と、ルーフレールサイド65と、サイドシル66と、Cピラー67とにより構成される。
【0239】
Aピラー63は、フロアーパネル68の幅方向の両端部に固定されるサイドシル66に接続されて上方へ向けて延びて存在するとともに閉じた閉断面を有する第1の部分63aと、この第1の部分63aに連続して斜め方向へ向けて延びて存在するとともに閉断面を有する第2の部分63bとにより構成される。
【0240】
また、ルーフレールサイド65は、このAピラー63の第2の部分63bに連続するとともにBピラー64の上部に接続し、閉断面を有する筒状の部材である。
Bピラー64の下部は、サイドシル66に接続されており、ルーフレールサイド65はBピラー64を介してサイドシル66及びフロアーパネル68により支持される。また、ルーフレールサイド65の後端部はCピラー67に接続される。Cピラー67は、リアフェンダーに接続される。
【0241】
このように、本実施の形態の側部構造62は、閉じた断面を有する各種の構造部材により形成される骨格により構成される。
本実施の形態では、Aピラー63の第2の部分63bの内部及び、ルーフレールサイド65の内部であってBピラー64との接続部よりも後方の位置までの間に、側部補強部材70が配置される。
【0242】
図41は、この側部補強部材70の一例を示す説明図である。
この側部補強部材70は、八角形からなる閉じた横断面形状を有するとともに三次元で屈曲した形状を有する。この側部補強部材70は、高周波焼入れ処理された一体構造を有する。
【0243】
図42(a)は図40におけるA−A断面を示し、図42(b)は図40におけるB−B断面を示す。図42に示すように、Aピラー63の第2の部分63bの内部には側部補強部材70が配置されるとともに、ルーフレールサイド65の内部であってBピラー64との接続部よりも後方の位置までの間にもこの側部補強部材70が配置される。
【0244】
側部補強部材70における、Bピラー64との接続のために溶接される領域には、焼入れ処理が行われないことが、加工性及び溶接性を確保するためには望ましい。
また、側部補強部材70の先端部には焼入れを行わないようにすることにより、この先端部をエンジンコンパートメントの一部に溶接する際の溶接性を向上することができ、望ましい。
【0245】
このような側部補強部材70は、図1〜22を参照しながら説明した熱間三次元曲げ法により製造することができる。これにより、高生産性や良好な寸法精度、さらには非焼入れ部及び高周波焼入れ部を確実かつ容易に形成しながら、本発明に係る側部補強部材70を製造することができる。
【0246】
側部補強部材70を、Aピラー63の第2の部分63bの内部には側部補強部材70が配置されるとともに、ルーフレールサイド65の内部であってBピラー64との接続部よりも後方の位置までの間に配置するには、Bピラー補強部材の先端が側部補強部材70を覆うような形状とすればよく、通常の自動車車体のアーク溶接工程またはスポット溶接工程等において組み込むことが可能である。
【0247】
また、この側部補強部材70は略全域が高周波焼入れ処理されるので極めて高い強度を有することから、その横断面積を小さく設定しても、補強部材として十分に機能することができる。このため、側部補強部材70を追加することによる重量増を、最小限に抑制することができる。
【0248】
また、この側部補強部材70は一体的に製造することができるので、補強部材の部品点を低減することができ、これにより、車体61の製造コストの低減を図ることができる。
このようにして、本実施の形態により、自動車車体61の側部構造のよりいっそうの高強度化及び軽量化と、さらなる車体61の製造コストの低下とを高い次元で両立することが可能となる。
[実施の形態4]
実施の形態4を説明する。この説明では、上述した実施の形態3と相違する部分を説明し、共通する部分は同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0249】
本実施の形態では、Aピラー63の第2の部分63b〜ルーフレールサイド65〜Cピラー67の内部に、側部補強部材70−1を配置する。
図43は、この側部補強部材70−1を示す説明図である。また、図44は、図40におけるC−C断面図である。図43及び図45に示すように、本実施の形態では、Aピラー63の第2の部分63bの内部、ルーフレールサイド65の内部、及びCピラー67の内部に、側部補強部材70−1が配置される。
【0250】
略述すると、上述した実施の形態1の側部補強部材70を、Cピラー67の内部に収容できるように延長したものが本実施の形態に側部補強部材70−1である。これ以外は、全て実施の形態3と同じでよい。
【0251】
側部補強部材70−1を、このように配置するにはBピラー補強部材の先端を側部補強部材70−1を覆うような形状とすればよく、通常の自動車車体のアーク溶接工程またはスポット溶接工程等において組み込むことが可能である。
【0252】
また、この側部補強部材70−1は略全域が高周波焼入れ処理されるので極めて高い強度を有することから、その横断面積を小さく設定しても、補強部材として十分に機能することができる。このため、側部補強部材70−1を追加することによる重量増を、最小限に抑制することができる。
【0253】
また、この側部補強部材70−1は一体的に製造することができるので、補強部材の部品点を低減することができ、これにより、車体61の製造コストを低減することができる。
【0254】
このようにして、本実施の形態により、自動車車体61の側部構造62のよりいっそうの高強度化及び軽量化と、さらなる車体61の製造コストの低下とを高い次元で両立することが可能となる。
[実施の形態5]
図45は、図40におけるD−D断面図である。
【0255】
本実施の形態では、実施の形態3の側部補強部材70の先端側を、自動車車体61の下方側へ向けて延長したものであって、本実施の形態の側部補強部材70−2は、フロントピラー63の第1の部分63aの内部にも存在する。
【0256】
この側部補強部材70−3を用いることにより、実施の形態1の側部補強部材70の効果に加えて、前面衝突の際にダッシュパネルを補強することができる。
【符号の説明】
【0257】
1 金属材
2 支持手段
3 送り出し装置
4 可動ローラダイス、ピンチロール
5 加熱手段、加熱装置、高周波加熱コイル
5a 予熱手段、予熱装置、予熱用高周波加熱コイル
6 冷却手段、冷却装置
6a マンドレル
7 チャック機構
8、9、10 駆動モータ
10a 駆動ギア
11 関節型ロボット
12 固定面
13、14、15 アーム
16、17、18 関節
19 電縫鋼管製造ライン
20 帯状鋼板
21 アンコイラー
22、27 成形手段
23 溶接手段
24 後処理手段
25、28 切断手段
26 ロールフォーミングライン
30 サポートガイド
40 サスペンションメンバー及びサイドメンバー一体構成部品
40a 曲げ加工部
40b 切断又は穴あけ加工予定部
40c 溶接予定部
40d 筒体
40e 超高強度熱処理部
40f 高強度熱処理部
41A〜41D フロントサイドメンバー
41Aa 曲げ加工部
41Ab 切断又は穴あけ加工予定部
41AC 溶接予定部
41Ad 筒体
41Ae 超高強度熱処理部
41Af 高強度熱処理部
41B フロントサイドメンバー
41Ba 曲げ加工部
41Bb 切断又は穴あけ加工予定部
41Bc 溶接予定部
41Bd 筒体
41Be 超高強度熱処理部
41Bf 高強度熱処理部
41C フロントサイドメンバー
41Ca 曲げ加工部
41Cb 切断又は穴あけ加工予定部
41Cc 溶接予定部
41Cd 筒体
41Ce 超高強度熱処理部
41Cf 高強度熱処理部
41D フロントサイドメンバー
41Da 曲げ加工部
41Db 切断又は穴あけ加工予定部
41Dc 溶接予定部
41Dd 筒体
41De 超高強度熱処理部
41Df 高強度熱処理部
42A、42B Bピラー
42Aa,42Ba 曲げ加工部
42Ab,42Bb 切断又は穴あけ加工予定部
42AC,42Bc 溶接予定部
42Ad,42Bd 筒体
42Ae、42Be 超高強度熱処理部
42Af,42Bf 高強度熱処理部
43A、43B クロスメンバー
43Aa,43Ba 曲げ加工部
43Ab,43Bb 切断又は穴あけ加工予定部
43AC,43Bc 溶接予定部
43Ad,43Bd 筒体
43Ae,43Be 超高強度熱処理部
43Af,43Bf 高強度熱処理部
44A、44B Aピラー〜ルーフレールサイド一体構造品
44Aa,44Ba 曲げ加工部
44Ab,44Bb 切断又は穴あけ加工予定部
44AC,44Bc 溶接予定部
44Ad,44Bd 筒体
44Ae,44Be 超高強度熱処理部
44Af,44Bf 高強度熱処理部
50 フロアーパネル
51 自動車車体
52 エンジンコンパートメント
52a 縦壁部
53 フロントサイドメンバー
53−1〜53−14 第1の例〜第14の例
54 本体
54a 一方の端部
54b 他方の端部
55 先端部
55a 非焼入れ部
55b 高周波焼入れ部
56 傾斜部
57 後端部
57a 非焼入れ部
57b 高周波焼入れ部
58 キャビン
59 ダッシュパネル
61 自動車車体
62 側部構造
63 Aピラー
63a 第1の部分
63b 第2の部分
64 Bピラー
65 ルーフレールサイド
66 サイドシル
67 Cピラー
68 フロアーパネル
69 ホイールハウスアウター
70、70−1、70−2 側部補強部材
71 エンジンコンパートメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
該超高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600〜1100MPaとなるように熱処理された高強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項2】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
該超高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項3】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部を備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
該超高強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600〜1100MPaとなるように熱処理された高強度熱処理部と、
前記超高強度熱処理部及び前記高強度熱処理部を除いた残余の部位であるとともに引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項4】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
該超高強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600〜1100MPaとなるように熱処理された高強度熱処理部と、
前記超高強度熱処理部及び前記高強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された低強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項5】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
前記切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つであって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第1の低強度熱処理部と、
前記超高強度熱処理部及び前記第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位である、引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第2の低強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項6】
二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と、切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つとを備え、閉断面を有し、さらに、軸方向に単一の部材により構成される筒体を備え、該筒体は、
引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部と、
前記切断加工予定部、穴あけ加工予定部又は溶接予定部のうちの少なくとも一つであって引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第1の低強度熱処理部と、
前記超高強度熱処理部及び前記第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位の一部である、引張強度が600〜1100MPaとなるように熱処理された高強度熱処理部と、
前記超高強度熱処理部、前記高強度熱処理部及び前記第1の低強度熱処理部を除いた残余の部位であるとともに引張強度が600MPa未満となるように熱処理された第2の低強度熱処理部と
を備えることを特徴とする自動車車体用強度部材。
【請求項7】
前記曲げ加工部は引張強度が1100MPa超となるように熱処理された超高強度熱処理部である請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された自動車車体用強度部材。
【請求項8】
前記閉断面は、外部へ向けたフランジを有さない閉断面である請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された自動車車体用強度部材。
【請求項9】
閉断面を有するとともに軸方向に単一の部材により構成される筒体からなる本体を備え、該本体は、その軸方向の一方の端部から他方の端部へ向けて、車体前後方向へ向けて延びて存在する先端部と、該先端部に連続するとともにダッシュパネルに沿って下方へ向けて傾斜する傾斜部と、該傾斜部に連続するとともに前記ダッシュパネルに接合されるフロアーパネルの下面に沿って延びて存在する後端部とを有するフロントサイドメンバーであって、
前記先端部の一部は焼入れ処理が行われない非焼入れ部であるとともに、該一部を除いた残余の部分は高周波焼入れ処理が行われた高周波焼入れ部であり、
前記傾斜部の全ては、高周波焼入れ処理が行われた高周波焼入れ部であり、さらに、
前記後端部の一部は焼入れ処理が行われない非焼入れ部であるとともに、該一部を除いた残余の部分は、高周波焼入れ処理が行われた高周波焼入れ部であること
を特徴とするフロントサイドメンバー。
【請求項10】
前記先端部における、前記非焼入れ部及び前記高周波焼入れ部は、前記筒体の軸方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられる請求項9に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項11】
前記非焼入れ部及び前記高周波焼入れ部それぞれの前記軸方向への長さは、前記筒体の先端から後端に向かうにつれて大きくなる請求項10に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項12】
前記先端部における前記高周波焼入れ部は、前記筒体の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に大きくなるように設けられるとともに、前記先端部における前記非焼入れ部は、前記筒体の軸方向の先端から後端に向かうにつれてその面積が徐々に小さくなるように設けられる請求項9に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項13】
前記先端部における、前記非焼入れ部及び前記高周波焼入れ部は、前記筒体の周方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられる請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項14】
前記筒体が多角形の横断面形状を有し、前記非焼入れ部は該多角形の頂点を含まない領域に設けられるとともに前記高周波焼入れ部は該多角形の頂点を含む領域に設けられる請求項13に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項15】
前記筒体が多角形の横断面形状を有し、前記非焼入れ部は該多角形の頂点を含む領域に設けられるとともに前記高周波焼入れ部は該多角形の頂点を含まない領域に設けられる請求項13に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項16】
前記多角形は対向する一対の略水平面を有し、前記非焼入れ部は一方の略水平面に設けられるとともに前記高周波焼入れ部は他方の略水平面に設けられる請求項13から請求項15までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項17】
前記多角形は対向する一対の略垂直面を有し、前記非焼入れ部は一方の略垂直面に設けられるとともに前記高周波焼入れ部は他方の略垂直面に設けられる請求項13から請求項16までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項18】
前記非焼入れ部は前記筒体の横断面における下側の領域に設けられ、前記高周波焼入れ部は該下側の領域を除く上側の領域に設けられる請求項13から請求項17までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項19】
前記非焼入れ部は前記筒体の横断面における車体内側の領域に設けられ、前記高周波焼入れ部は該車体内側の領域を除く車体外側の領域に設けられる請求項13から請求項18までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項20】
前記後端部における、前記非焼入れ部及び前記高周波焼入れ部は、該後端部の先端から前記筒体の軸方向へ向けて交互に、それぞれ1つ又は2つ以上設けられる請求項9から請求項19までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項21】
前記非焼入れ部は、穴あけ加工による穴あき部及び溶接される溶接部を含む領域に設けられる請求項9から請求項20までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項22】
前記筒体は、外部へ向けたフランジを有さない請求項9から請求項21までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項23】
高周波焼入れ部の引張強度は、1100MPa超又は600〜1100MPaであるとともに、前記非焼入れ部の引張強度は、600MPa未満である請求項9から請求項22までのいずれか1項に記載されたフロントサイドメンバー。
【請求項24】
サイドシルに接続されて上方へ向けて延びて存在するとともに閉断面を有する第1の部分と、該第1の部分に連続して斜め方向へ向けて延びて存在するとともに閉断面を有する第2の部分とを備えるAピラーと、該Aピラーに連続するとともにBピラーに接続し、閉断面を有するルーフレールサイドとを備える自動車車体の側部構造であって、
閉断面を有するとともに三次元で屈曲した形状を有し、かつ高周波焼入れ処理された軸方向に単一の部材により構成された側部補強部材が、少なくとも、前記第2の部分の内部及び、前記ルーフレールサイドの内部であって前記Bピラーとの接続部よりも後方の位置までの間に、配置されること
を特徴とする自動車車体の側部構造。
【請求項25】
前記側部補強部材における、前記Bピラーとの接続のために溶接される領域には、焼入れ処理が行われない請求項24に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項26】
前記自動車車体は、前記ルーフレールサイドに連続するとともに閉断面を有するCピラーとを備え、前記側部補強部材は該Cピラーの内部に配置される請求項24又は請求項25に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項27】
前記第2の部分の内部に配置される前記側部補強部材の先端部には、焼入れ処理が行われない請求項24から請求項26までのいずれか1項に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項28】
前記側部補強部材は、さらに、前記第1の部分の内部に配置される請求項24から請求項26までのいずれか1項に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項29】
前記側部補強部材は、外部へ向けたフランジを有さない請求項24から請求項28までのいずれか1項に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項30】
前記側部補強部材における高周波焼入れ処理された部分の引張強度は、1100MPa超又は600〜1100MPaである請求項24から請求項29までのいずれか1項に記載された自動車車体の側部構造。
【請求項31】
前記側部補強部材における焼入れ処理が行われない部分の引張強度は、600MPa未満である請求項30に記載された自動車車体の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−52871(P2013−52871A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275025(P2012−275025)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2009−509253(P2009−509253)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】