説明

自動車電装部品用保護構造

【課題】 上方からの水侵入を防いで、電装部品(高圧電装部品)をより確実に保護することが可能な自動車電装部品用保護構造を提供する。
【解決手段】 本発明の代表的な構成は、自動車100の車体床面(フロアパネル148)上に搭載された電装部品を保護する自動車電装部品用保護構造(保護構造130)において、電装部品の上方を覆うリッド132と、リッド132の周囲を支える1つ以上のパネル(フロントパネル138、リアパネル140、サイドパネル142、144)とを備え、1つ以上のパネルは、それぞれリッド132の周囲に沿う樋状の端部(樋状部156〜162)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体床面上に搭載された電装部品を保護する自動車電装部品用保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の枯渇や地球温暖化の懸念から自動車産業は脱石油へと向かいつつあり、開発の中心が電気自動車(EV)またはハイブリッドカー(HEV)もしくはプラグインハイブリッド(PHEV)に移行してきている。これらは、高電圧バッテリ(リチウムイオン二次電池)に蓄電した電力によってモータを駆動することで、排ガスを出さずに走行することが可能である。
【0003】
現在のところ上記の自動車において、高圧電装部品である充電器、DCDCコンバータ、EVコントローラ、あるいは高電圧バッテリ等は、リアシート近傍の車体床面上に設置される構成が多く採用されている。例えば、特許文献1では、車体床面を構成するフロアパネルに凹部を設け、この凹部にバッテリを設置している。
【0004】
高圧電装部品は被水すると機能停止に陥るおそれがあるため、被水を防ぐための技術について検討がなされている。例えば、特許文献1では、フロアパネルに設けた凹部に排水孔を設け、凹部内に入った水にバッテリが浸るのを抑制するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように排水孔を設けるだけでは、上方からの水浸入による高圧電装部品の被水を防ぐことはできない。特に、DCDCコンバータやEVコントローラは、上方から滴下した水滴の付着で機能停止に陥るおそれがあり、その他の高圧電装部品も上方からの水侵入により水没すると機能停止に陥るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、上方からの水侵入を防いで、電装部品(高圧電装部品)を確実に保護することが可能な自動車電装部品用保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の代表的な構成は、自動車の車体床面上に搭載された電装部品を保護する自動車電装部品用保護構造において、電装部品の上方を覆うリッドと、リッドの周囲を支える1つ以上のパネルとを備え、1つ以上のパネルは、それぞれリッドの周囲に沿う樋状の端部を有することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、上方からの水がリッドに遮られ、その水がリッドの周囲に沿う樋状の端部に流入する。そして、樋状の端部を通じて、その水を電装部品の直上外の問題のない位置に排水することができる。したがって、上方からの水侵入を防いで、電装部品を確実に保護することが可能となる。
【0010】
当該自動車電装部品用保護構造が、2つ以上の上記パネルを備え、そのパネル同士が合わさる部分に上記樋状の端部の排水口があるとよい。
【0011】
かかる構成によれば、樋状の端部の排水口が、パネル同士が合わさる部分に設定され、この位置より樋状の端部に流入した水が下方へと排水される。パネル同士が合わさる部分は電装部品の直上から離れた位置であるため、電装部品の上方に水がかかるのをより確実に防ぐことができる。なお、パネル同士が合わさる部分に樋状の端部の排水口を設定するのは、レイアウト上、不必要な大型化を招かずに行うことができる。
【0012】
上記リッドは平面視において略四角形であり、上記1つ以上のパネルは、リッドの前端に沿って車体幅方向に延びる樋状の端部を有するフロントパネルと、リッドの後端に沿って車体幅方向に延びる樋状の端部を有するリアパネルと、リッドの側端に沿って車体前後方向に延びる樋状の端部を有する一対のサイドパネルとを含むとよい。
【0013】
かかる構成によれば、リッドの前端に沿うフロントパネルの樋状の端部、リッドの後端に沿うリアパネルの樋状の端部、リッドの側端に沿う一対のサイドパネルの樋状の端部を通じて、リッドに遮られた上方からの水を電装部品の直上外の問題のない位置に排水することができる。
【0014】
上記リッドが、上面と、上面の四方の側面と、側面の下端から上面に平行に外側にそれぞれ延びる取付面とを有し、上記1つ以上のパネルの樋状の端部はそれぞれ、リッドの取付面の下に重ねられて固定されるとよい。
【0015】
かかる構成によれば、リッドの前端に沿うフロントパネルの樋状の端部、リッドの後端に沿うリアパネルの樋状の端部、リッドの側端に沿う一対のサイドパネルの樋状の端部がそれぞれ、リッドの取付面の下に重ねられて固定される。そのため、リッドに遮られた水を確実に樋状の端部へと導くことができる。
【0016】
上記リッドは車体幅方向に配列された2つのサブリッドを含み、2つのサブリッドはそれぞれ、上面と、上面の四方の側面と、側面の下端から上面に平行に外側にそれぞれ延びる取付面とを有し、当該自動車電装部品用保護構造は、車体前後方向に延び2つのサブリッドの内側の取付面の下にそれぞれ重なる樋状の両側端と、2つのサブリッドの前後の取付面とほぼ同様の形状の前後の取付面とを有するセンターパネルをさらに備え、上記1つ以上のパネルの樋状の端部はそれぞれ、2つのサブリッドおよびセンターパネルの取付面の下に重ねられて固定されるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、2つのサブリッドのうち、電装部品の点検や修理の際に必要な方だけ開ければ済む。これにより、点検や修理の作業性の向上が図られる。2つのサブリッドの間には車体前後方向に延びる樋状の両側端を有するセンターパネルが備えられ、2つのサブリッドの内側の取付面の下にその樋状の両側端が重ねられて固定される。したがって、2つのサブリッドの内側へと流入する水をセンターパネルの樋状の両側端を通じて、電装部品の直上外の問題のない位置に排水することができる。
【0018】
上記リッド、フロントパネル、リアパネル、一対のサイドパネルおよびセンターパネルが金属材料で形成され、当該自動車電装部品用保護構造が、上記車体床面に設置されセンターパネルを支持するスティフナをさらに備えるとよい。
【0019】
かかる構成によれば、リッド、フロントパネル、リアパネル、一対のサイドパネルおよびセンターパネルの強度を高め、上方からこれらに加わる荷重に対する耐久性を確保することができる。
【0020】
当該自動車電装部品用保護構造が、上記車体床面より高い位置に上記電装部品を支持する台座部をさらに備えるとよい。
【0021】
かかる構成によれば、水が仮に電装部品周辺の車体床面に達しても、電装部品が被水するのを回避することができる。
【0022】
当該自動車が、電気自動車またはハイブリッドカーもしくはプラグインハイブリッドであって、上記電装部品がモータ駆動用の高電圧で動作する高圧電装部品であるとよい。
【0023】
かかる構成によれば、車両の走行機能に関与する高圧電装部品を確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、自動車の車体床面上に搭載された電装部品への上方からの水をリッドで遮り、その水をリッドの周囲に沿った他のパネルの樋状の端部を通じて電装部品の直上外の問題のない位置に排水する。そのため、上方からの水侵入を防いで、電装部品を確実に保護することが可能である。
【0025】
特に、電気自動車またはハイブリッドカーもしくはプラグインハイブリッドにおける高圧電装部品は、車両の走行機能に関与する。すなわち、この高圧電装部品が被水して機能停止に陥ると、車両が走行できなくなるおそれがある。したがって、本発明を適用することにより製品信頼性の向上を図る効果は非常に大きい。延いてはこのようなモータ(電動モータ)を利用した車両の普及を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態にかかる自動車電装部品用保護構造が適用される自動車を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる自動車電装部品用保護構造を示す図である。
【図3】図2に示すサブリッド、フロントパネル、リアパネル、一対のサイドパネルおよびセンターパネルを取り外した図である。
【図4】図2に示すサブリッドを開閉した上面図である。
【図5】図2に示すサブリッド、フロントパネル、リアパネル、一対のサイドパネルおよびセンターパネルの分解斜視図である。
【図6】図4(a)のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図7】図4(a)の範囲Cの拡大図である。
【図8】図4(a)の範囲Dの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0028】
図1は、本実施形態にかかる自動車電装部品用保護構造が適用される自動車100を示す図である。図1(a)が自動車100の外観図であり、図1(b)が自動車100のEVシステムの概念図である。なお、図中の矢印FRは車体前方、矢印RHは車体右方、矢印UPは車体上方を示すものとする。図1(a)、(b)に示すように、自動車100は電気自動車であり、充電口102を開けて外部電源104を接続することで充電される。
【0029】
図1(b)に示すように、自動車100は、充電器110、DCDCコンバータ114、インバータ116、モータ118、ジャンクションボックス150、EVコントローラ120を含んでいる。上記外部電源104から供給された電力は、高電圧ケーブルにより各部に供給される。
【0030】
EVコントローラ120は、センサや各コントローラからの情報に基づき、EVシステムの制御(モータ118制御、外部充電制御等)を行う。DCDCコンバータ114は、数百ボルトに到るモータ駆動用の高電圧を落として、補機バッテリへ供給したり、各コントローラへの電源供給を行ったりする。インバータ116は、EVコントローラ120やモータ118に内蔵されたセンサ等からの信号を受けて、モータ118のトルクを最適にまたは効率的に変化させる。ジャンクションボックス150には、高電圧バッテリ系統(高電圧バッテリ、DCDCコンバータ114等)のヒューズや高電圧リレーが内蔵される。
【0031】
電気自動車である自動車100では、EVシステムが機能しなければ走行することができない。したがって、EVシステムを構成するモータ118駆動用の高電圧で動作する高圧電装部品は、高い信頼性が求められる。しかし、かかる高圧電装部品は被水により機能停止に陥るおそれがあるため、被水を確実に防ぐ必要がある。なお、本明細書において被水とは、純粋な水に限らず液体がかかることを意味するものとする。
【0032】
図2は、本実施形態にかかる自動車電装部品用保護構造(以下、「保護構造130」と称する)を示す図である。図3は、図2に示すサブリッド134、136、フロントパネル138、リアパネル140、一対のサイドパネル142、144およびセンターパネル146を取り外した図である。
【0033】
図3に示すように、自動車100では、車体床面を構成するフロアパネル148上に、高圧電装部品である充電器110、DCDCコンバータ114、EVコントローラ120、および配線(ワイヤハーネス)の中継ボックスであるジャンクションボックス150が設置される。また、空冷用の冷却ファン・ダクト152が設置される。
【0034】
充電器110、DCDCコンバータ114、EVコントローラ120、およびジャンクションボックス150は、当然ながら車内に存在するため外部から大量に水が浸入することは考えにくい。しかし、自動車100は、2シーター(運転席と助手席のみ)の商用車であって、運転席と助手席の後部に大量の荷物を積載できるように構成される。かかる自動車100では、積載した荷物から水がこぼれてフロアパネル148上のこれらの高圧電装部品に上方から滴下する可能性があり、充分な対策を講じる必要がある。
【0035】
これより、図2に示すように、本実施形態にかかる保護構造130を適用する。保護構造130はリッド132、フロントパネル136、リアパネル138、一対のサイドパネル140、142およびセンターパネル144を備え、これらで高圧電装部品を囲う。フロントパネル136、リアパネル138、一対のサイドパネル140、142は、フロアパネル148上に設置される。リッド132は高圧電装部品の上方を覆う蓋であり、ここでは車体幅方向に配列された2つのサブリッド134、136である。なお、センターパネル146を備えず、フロントパネル136、リアパネル138、一対のサイドパネル140、142の中央に平面視において略四角形の単一のリッドを備えてもよい。
【0036】
サブリッド134、136、フロントパネル138、リアパネル140、一対のサイドパネル142、144およびセンターパネル146は、ここでは金属材料で形成される。また、センターパネル146は、フロアパネル148上に設置される金属性の略直方体のスティフナ154(図3参照)によって支持される。これより、充分な強度を確保することができ、上方からこれらに加わる荷重に対する耐久性を確保することができる。よって、フロアパネル148と同様に、これらの上にも何ら問題なく荷物を積載することができる(これらの上をダミーフロアとして使用することができる)。
【0037】
図4は、図2に示すサブリッド134、136を開閉した上面図である。図4(a)がサブリッド134、136を閉めた状態を示す上面図であり、図4(b)がサブリッド134、136を開けた状態を示す上面図である。図4(a)、(b)に示すように、サブリッド134、136は、高圧電装部品の点検や修理の際に開けられる。特定の高圧電装部品を点検や修理する場合には、サブリッド134、136のうち必要な方だけ開ければ済む。したがって、点検や修理の作業のしやすさも確保される。
【0038】
図5は、図2に示すサブリッド134、136、フロントパネル138、リアパネル140、一対のサイドパネル142、144およびセンターパネル146の分解斜視図である。図5に示すように、サブリッド134、136は平面視において略四角形である。詳細には、サブリッド134、136は平面視において四隅を除去した四角形であって、上面134a、136aと、上面134a、136aの四方の側面134b、136bと、側面134b、136bの下端から上面134a、136aに平行に外側にそれぞれ延びる取付面134c、136cとを有する。すなわち、前後左右の取付面134c、136cは、互いに連続していない。なお、図中、サブリッド134、136では、4つのうち代表して1つの側面134b、136b、1つの取付面134c、136cに符号を付す。
【0039】
フロントパネル138は、サブリッド134、136の前端に沿って車体幅方向に延びる樋状の端部(以下、「樋状部156」と称する)を有する。リアパネル140は、サブリッド134、136の後端に沿って車体幅方向に延びる樋状の端部(以下、「樋状部158」と称する)を有する。一対のサイドパネル142、144は、サブリッド134、136の外側の側端に沿って車体前後方向に延びる樋状の端部(以下、「樋状部160、162」と称する)を有する。センターパネル146は、サブリッド134、136の内側の側端に沿って、車体前後方向に延びる樋状の両側端(以下、「樋状部164、166」と称する)を有する。
【0040】
センターパネル146は、サブリッド134、136の前後の取付面134c、136cとほぼ同様の形状の前後の取付面146a(図中、代表して1つに符号を付す)を有する。サブリッド134、136の取付面134c、136cと、センターパネル146の取付面146aの違いは、センターパネル146では四隅が除去されていないことである。センターパネル146では、その樋状部164、166が取付面146aまで延びており、取付面146aに連続している(図8等参照)。図2に示すように、フロントパネル138の樋状部156、リアパネル140の樋状部158、一対のサイドパネルの樋状部160、162は、お互いが交差する位置の直前(パネル同士が合わさる部分)まで延びている。
【0041】
なお、センターパネル146や一対のサイドパネル142、144等は、必ずしも一枚の板金から構成する必要はない。一枚の板金から構成するには絞り等の手間のかかるプレス加工が必要な場合、複数の部材を溶接して形成されたコンプ品として実現してよい。
【0042】
図6は、図4(a)のA−A断面図およびB−B断面図であり、図6(a)がそのA−A断面図、図6(b)がそのB−B断面図である。図7は図4(a)の範囲Cの拡大図であり、図7(a)、(b)は、それぞれ違う角度から図示したものである。図8は、図4(a)の範囲Dの拡大図である。なお、図7(a)、(b)および図8では、理解を容易にするために、フロントパネル138、サイドパネル142、センターパネル146にハッチを付している。
【0043】
それぞれの樋状部156〜166は同様の形状であるので、以下、代表してフロントパネル138の樋状部156を挙げて説明する。図6(a)、図7(a)に示すように、樋状部156は、樋底面156aと、樋底面156aの両端からそれぞれ立ち上がる樋側面156b、156cとで構成される。外側の樋側面156bはその上端がパネル上面138aに連続する。
【0044】
図8に示すように、センターパネル146の樋状部164、166は、サブリッド134、136の内側の取付面134c、136cの下に重ねられて固定される。フロントパネル138の樋状部156は、センターパネル146の前側の取付面146a、サブリッド134、136の前側の取付面134c、136cの下に重ねられて固定される。リアパネル140の樋状部158は、フロントパネル138と同様に、センターパネル146の後側の取付面146a、サブリッド134、136の後側の取付面134c、136cの下に重ねられて固定される。
【0045】
図7(a)、(b)に示すように、サイドパネル142、144の樋状部160、162は、サブリッド134、136の外側の取付面134c、136cの下に重ねられて固定される。サイドパネル142、144自体は、フロントパネル138、リアパネル140の下に重ねられて固定される。なお、固定はボルト等によって行う。
【0046】
上述した構成によれば、上方からの水がサブリッド134、136に遮られ、その水がサブリッド134、136の周囲を支える樋状部156〜166に流入する。サブリッド134、136の取付面134c、136cは、樋状部156〜166の中に収容されるように固定されている(樋底面156aに接続されている)ため、その水を確実に樋状部156〜166へと導くことができる。なお、センターパネル146ではその樋状部164、166と取付面146aとが連続しており、樋状部164、166に流入した水が、取付面146aが収容されるフロントパネルの樋状部156やリアパネルの樋状部158に確実に流入するように構成されている。
【0047】
よって、各パネルの樋状部156〜166を通じて、サブリッド134、136が遮った水を高圧電装部品の直上外の問題のない位置に排水することができる。図2に保護構造130における排水経路170および排水箇所172a、172b、172c、172dを図示する。各排水箇所172a〜172dから、樋状部156〜166に流入した水が下方のフロアパネル148へと排水される。なお、ここでは、各パネルの樋状部156〜166に傾斜をつけてはいないが、各排水箇所172a〜172dに遮った水が流れるように傾斜をつけてもよい。
【0048】
上記のように樋状部156〜162は、お互いが交差する位置の直前(パネル同士が合わさる部分)まで延びている。したがって、排水箇所172a、172b、172c、172dは、サブリッド134、136に対して右斜前、左斜前、右斜後、左斜後となり、1つの排水箇所172aには2つの樋状部156、158のそれぞれの排水口174、176が備えられる(図7(a)、(b)参照)。このように各パネル同士が合わさる部分に樋状部156〜162のそれぞれの排水口174、176を設定することで、レイアウト上、不必要な大型化を招くことなく、排水口174、176を高圧電装部品の直上からなるべく離すことができる。
【0049】
図8(a)、(b)に示すように、保護構造130には台座部178、180が備えられていて、高圧電装部品は台座部178、180によってフロアパネル148より高い位置に支持される。これにより、水が下方のフロアパネル148に排水されても、高圧電装部品の下側が被水することを回避できる。なお、フロアパネル148に落下した水は、フロアパネル148に形成されたビードにより保護構造130外(主に前方)に流れて排水される。
【0050】
以上、本実施形態にかかる保護構造130によれば、上方からの水侵入を防いで、充電器110、DCDCコンバータ114、EVコントローラ120、ジャンクションボックス150等の高圧電装部品を確実に保護することが可能である。また、保護構造130を適用することで高圧電装部品が通常時には外部から隔離される(点検や修理の際に必要なサブリッド134、136のみあけられる)ため、水だけではなく埃対策にもなる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車の車体床面上に搭載された電装部品を保護する自動車電装部品用保護構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100…自動車、102…充電口、104…外部電源、110…充電器、114…DCDCコンバータ、116…インバータ、118…モータ、120…EVコントローラ、130…保護構造(自動車電装部品用保護構造)、132…リッド、134、136…サブリッド、134a、136a…上面、134b、136b…側面、134c、136c…取付面、138…フロントパネル、138a…パネル上面、140…リアパネル、142、144…サイドパネル、146…センターパネル、146a…取付面、148…フロアパネル、150…ジャンクションボックス、152…冷却ファン・ダクト、154…スティフナ、156〜166…樋状部(樋状の端部)、156a…樋底面、156b、156c…樋側面、170…排水経路、172a、172b、172c、172d…排水箇所、174、176…排水口、178、180…台座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体床面上に搭載された電装部品を保護する自動車電装部品用保護構造において、
前記電装部品の上方を覆うリッドと、
前記リッドの周囲を支える1つ以上のパネルとを備え、
前記1つ以上のパネルは、それぞれ前記リッドの周囲に沿う樋状の端部を有することを特徴とする自動車電装部品用保護構造。
【請求項2】
2つ以上の前記パネルを備え、そのパネル同士が合わさる部分に前記樋状の端部の排水口があることを特徴とする請求項1に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項3】
前記リッドは平面視において略四角形であり、
前記1つ以上のパネルは、
前記リッドの前端に沿って車体幅方向に延びる前記樋状の端部を有するフロントパネルと、
前記リッドの後端に沿って車体幅方向に延びる前記樋状の端部を有するリアパネルと、
前記リッドの側端に沿って車体前後方向に延びる前記樋状の端部を有する一対のサイドパネルとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項4】
前記リッドが、上面と、該上面の四方の側面と、該側面の下端から前記上面に平行に外側にそれぞれ延びる取付面とを有し、
前記1つ以上のパネルの樋状の端部はそれぞれ、前記リッドの取付面の下に重ねられて固定されることを特徴とする請求項3に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項5】
前記リッドは車体幅方向に配列された2つのサブリッドを含み、
前記2つのサブリッドはそれぞれ、上面と、該上面の四方の側面と、該側面の下端から前記上面に平行に外側にそれぞれ延びる取付面とを有し、
当該自動車電装部品用保護構造は、車体前後方向に延び前記2つのサブリッドの内側の取付面の下にそれぞれ重なる樋状の両側端と、前記2つのサブリッドの前後の取付面とほぼ同様の形状の前後の取付面とを有するセンターパネルをさらに備え、
前記1つ以上のパネルの樋状の端部はそれぞれ、前記2つのサブリッドおよびセンターパネルの取付面の下に重ねられて固定されることを特徴とする請求項3に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項6】
前記リッド、フロントパネル、リアパネル、一対のサイドパネルおよびセンターパネルが金属材料で形成され、
当該自動車電装部品用保護構造が、前記車体床面に設置され前記センターパネルを支持するスティフナをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項7】
当該自動車電装部品用保護構造が、前記車体床面より高い位置に前記電装部品を支持する台座部をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の自動車電装部品用保護構造。
【請求項8】
当該自動車が、電気自動車またはハイブリッドカーもしくはプラグインハイブリッドであって、前記電装部品がモータ駆動用の高電圧で動作する高圧電装部品であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自動車電装部品用保護構造。

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−232705(P2012−232705A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104063(P2011−104063)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】