説明

自動車

【課題】 面倒なく助手席側の足元スペースを広げることができるようにする。
【解決手段】
インパネ30の助手席側において、車両床面を向く底面部33には開口33aが形成されている。この開口33aに、浅いボックス形状の棚40が配置されている。この棚40は、支持機構50により、収容すべき物Aを載置可能な姿勢のまま、高さ調節可能に支持されている。支持機構50は、棚40に固定されて上下方向に延びるスライダ51と、車体側に設けられてスライダ51を上下方向に案内するガイド52と、スライダ51をガイド52に対してロックしたりロック解除するロック爪53とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の助手席側収容構造に関し、さらにこの収容構造を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車の助手席側収容構造は、特許文献1に示すように、インストルメントパネル(以下、インパネと称す)の助手席に対峙する正面部に開口が形成され、この開口に、上部が開放されたグローブボックスが回動可能に設置されている。このグローブボックスを手前に引くとグローブボックスが露出されて物を出し入れでき、グローブボックスを押し込むとグローブボックスの手前の壁がインパネの開口を閉じインパネの正面部と連続するようになっている。
【0003】
ところで、インパネの底面部と車両床面との間のスペースを広くして、助手席側の乗員の足元の自由度が大きくしたいという要望がある。しかし、上記インパネの助手席側の内部空間は、グローブボックスを設置するために広くせざるを得ず、そのためインパネの底面部が下方に位置することになり、上記要望に答えることができなかった。
【0004】
そこで、特許文献2では、グローブボックスから物の出し入れをしない場合に折り畳んで、助手席の足元のスペースを広くする工夫をしている。
【特許文献1】特開2000−95029号公報
【特許文献2】特開2003−267143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の構造では、折り畳まれたグローブボックスに物を収容しておくことができないため、グローブボックスに物が収容されている場合には、一旦物をグローブボックスから取り外して折り畳まなければならず、不便であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、自動車の助手席側収容構造において、(ア)助手席側において車両床面を向く底面部に開口を形成してなるインストルメントパネルと、(イ)上記インストルメントパネルと別体をなし、上記開口に配置された棚と、(ウ)上記棚を、収容すべき物を載置可能な姿勢のまま、高さ調節可能に支持する支持機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、インパネの底面部は、通常の自動車のようにグローブボックスを収容するために低くしなくて済む。そのため、棚を高い位置で支持すれば、助手席の足元スペースを広くすることができる。また、物を載せたまま棚の高さ調節を行なえるので、高さ調節に際して物を一旦取出す必要がなく、便利である。
【0008】
好ましくは、上記支持機構は、上記棚に固定されて上下方向に延びるスライダと、車体側に設けられて上記スライダを上下方向に案内するガイドと、上記スライダを上記ガイドに対してロックしたりロック解除するロック手段とを含む。この構成によれば、比較的簡単な構成で安定して棚を支持することができる。
【0009】
好ましくは、上記棚は、助手席を向く正面側が開口された周壁を有してボックス形状をなしている。これにより、助手席側からの出し入れを簡単に行なうことができるとともに、物を安定して収容できる。
【0010】
好ましくは、上記支持機構は、上記棚を収納位置と突出位置の少なくとも2位置で支持し、上記収納位置では上記棚が実質的に上記開口を閉じて上記底面部と連続し、上記突出位置では上記棚が上記インストルメントパネルの底面部から下方に突出する。通常の使用状態では、上記棚は突出位置にあり正面側開口を介して物の出し入れを行なうことができる。収納位置では棚は底面部と実質的に連続するので、助手席の足元スペースを最大限に広げることができる。
【0011】
好ましくは、上記棚は上側が開放されたボックス形状をなし、上記支持機構は、上記突出位置からさらに下方に突出する他の突出位置でも上記棚を支持する。これによれば、大きな物も収容することができる。
【0012】
本発明のさらなる態様では、上記助手席側収容構造を備えた自動車において、助手席側のシートを案内する案内機構が、折り畳み状態の当該シートの少なくとも一部を上記収納位置の棚と床面との間のスペースに収容できるように、前方へ延びている。これによれば、助手席の真後ろの座席の足元スペースを広げたり、この真後ろの座席を通常の自動車よりも前の位置に移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、助手席の足元スペースを広くすることができるとともに、棚の高さ調節を面倒なく行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態をなす自動車について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において前後とは、車両の進行方向における前後を意味する。図2において、符号10は運転席側のシートを示し、符号20は助手席側のシートを示す。これらシート10,20の前方にはインパネ30が設置されている。
【0015】
上記インパネ30の助手席側の部位は、図1に示すように、上面部31と正面部32と底面部33とを有している。
インパネ30の内部空間30aにはステアリングビーム41が左右に延びて配置されており、上面部31に近接してエアバック42が配置されている。正面部32の裏側には左右に延びる細長いプレート43が配置されており、このプレート43と正面部32とでベンチレーションダクト44を形成している。また、内部空間30aにはデフロストダクト45も配置されている。これら構成要素については発明の要旨と関係ないので詳細な説明を省略する。
【0016】
上記インパネ30の助手席側において、底面部33には矩形をなす開口33aが形成されている。この開口33aに棚40が配置されている。この棚40は、助手席に対峙する正面側に開口41aが形成された周壁41を有し、上側が開放されて浅いボックス形状をなしている。
【0017】
図1に示すように、上記棚40は支持機構50により昇降可能すなわち高さ調節可能に支持されている。この支持機構50は、棚40の周壁41の前壁部に固定されて上下方向に延びる直線状のスライダ51と、車両の床面60の前端から立ち上がるトーボード61(車両側)にブラケット62を介して固定されたガイドレール52と、ロック爪53(ロック手段)とを有している。
【0018】
上記スライダ51はガイドレール52に上下方向のスライド可能にして案内され、上下に離れた3つの係合穴51a、51b、51cを有している。上記ロック爪53は、上記ガイドレール52またはブラケット62に、上記係合穴51a〜51bのいずれかに係合したロック位置と非係合のロック解除位置との間で、回動可能に支持されている。ロック爪53は、図示しないバネによりロック位置に向かって付勢されている。ロック爪53は、インパネ10側に設けた操作部材(図示しない)とワイヤを介して連結されており、この操作部材の引張り操作でロック位置からバネに抗してロック解除位置まで回動されるようになっている。なお、上記ガイドレール52には上記ロック爪53が係合位置にある時にロック爪53を挿通させる穴が形成されている。
【0019】
上記インパネ30の底面部33は、通常の自動車のようにグローブボックスの下側を覆う必要がないため、通常の自動車の底面部より高くなっている。
また、助手席側のシート20を前後方向に位置調節する案内機構70は、一般の自動車より床面60に沿って前方に延びている。
【0020】
上記構成において、通常の使用状態では、図1(A)、図2に示すように、棚40はインパネ30の底面部33より下方に突出しており、棚40の正面開口41aから物Aを出し入れすることができる。棚40の突出位置は、ロック爪53が中間の係合穴51bに係合することにより維持される。
上記突出位置の棚40は、通常の自動車のインパネの助手席側底面部とほぼ同程度の高さか、それより若干上方に位置している。したがって、助手席のシート20に乗員が座っていても足元スペースSは通常の自動車と同程度である。
【0021】
助手席側のシート20に乗員が座っており、より一層足元の自由度を増大させたい場合で、しかも物Aの出し入れをしない場合には、図1(B)に示すように、ロック爪53によるロック状態を解除して棚40を上昇させ、棚40でインパネ30の開口33aを塞ぐようにする。この際、棚40はインパネ30の底面部33と面一をなし実質的に連続している。この棚40の収納位置は、ロック爪53が下側の係合穴51aに係合することにより維持される。この状態では、棚40および底面部33と床面60との間のスペースすなわち助手席側の乗員の足元スペースSを広くすることができ、この乗員の足元の自由度をより一層高めることができる。なお、収容位置にある棚40は、インパネ30の内部空間30aに入り込んでいるので物Aの出し入れはできないが、物Aを載せてその収容状態を維持することはできる。換言すれば、物Aを取出すことなる簡単に高さ調節を行なうことができる。
【0022】
上述したように棚40が収納位置にある時、図3に示すように助手席のシート20を折り畳んだ状態で(背もたれ部22をクッション部21に折り重ねた状態で)、その一部を案内機構70に沿って前方へ移動させ、上記スペースSへ収納することもできる。これにより、後部座席の乗員の足元スペースを広げることができる。また、助手席側の後部座席(運転席の斜め後に位置する後部座席)のシートの案内機構を前方へ延ばせば、助手席シート20の前方への移動により生じたスペースに向かって後部座席のシートを大きく前方へ移動させることもできる。
【0023】
助手席側に乗員が座っていない場合には、上記棚40を図1(A)に示す突出位置から、図1(C)に示すさらに下方の突出位置へと下降させることもできる。この状態では、ロック爪53は上側の係合穴51cに係合される。棚40の上側が開放されているので、このように棚40が大きく下方に突出していれば、より大きな物A’を棚40に載せることができる。
【0024】
通常の自動車のグローブボックスは、回動支持のために収容量が制約されるが、本実施形態のように昇降型の棚であれば、回動支持の制約がないため、面積を広げることにより収容量を増大させることができる。
【0025】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、棚40は実質的に無段階で高さ調節してもよい。この場合、棚40が底面部33と実質的に連続した収納位置を最上位とするのが好ましい。
なお、インパネの底面部の開口とインパネの内部空間とを連通させなくてもよい。この場合、インパネの底面部には大きな凹部が形成され、この凹部を区画する天井壁および周壁により凹部の開口とインパネの内部空間が隔てられる。
上記実施形態において、支持機構のスライダおよびガイドは左右一対あってもよい。支持機構はモータ等を用いて棚を昇降させてもよい。この場合モータがロック手段を兼ねる。支持機構は、スライダとガイドの代わりにパンタグラフ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態をなす自動車の助手席側の収容構造を示す断面図であり、(A)は棚が突出位置にある通常の使用状態、(B)は棚を収納位置にしてインパネの開口を閉じた状態、(C)は棚を(A)よりさらに下方に突出させた状態をそれぞれ示す。
【図2】同実施形態における自動車の通常の使用状態を示す斜視図である。
【図3】同実施形態において、助手席側シートを折り畳んでその一部をインパネの下の足元スペースへ収容した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
20 助手席側シート
30 インパネ(インストルメントパネル)
33 底面部
33a 開口
40 棚
41 周壁
41a 開口
50 支持機構
51 スライダ
52 ガイドレール
53 ロック爪(ロック手段)
60 床面
61 ト―ボード(車両側)
70 案内機構
S 足元スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)助手席側において車両床面を向く底面部に開口を形成してなるインストルメントパネルと、
(イ)上記インストルメントパネルと別体をなし、上記開口に配置された棚と、
(ウ)上記棚を、収容すべき物を載置可能な姿勢のまま、高さ調節可能に支持する支持機構と、
を備えたことを特徴とする自動車の助手席側収容構造。
【請求項2】
上記支持機構は、上記棚に固定されて上下方向に延びるスライダと、車体側に設けられて上記スライダを上下方向に案内するガイドと、上記スライダを上記ガイドに対してロックしたりロック解除するロック手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車の助手席側収容構造。
【請求項3】
上記棚は、助手席を向く正面側が開口された周壁を有してボックス形状をなしていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の助手席側収容構造。
【請求項4】
上記支持機構は、上記棚を収納位置と突出位置の少なくとも2位置で支持し、上記収納位置では上記棚が実質的に上記開口を閉じて上記底面部と連続し、上記突出位置では上記棚が上記インストルメントパネルの底面部から下方に突出することを特徴とする請求項3に記載の自動車の助手席側収容構造。
【請求項5】
上記棚は上側が開放されたボックス形状をなし、上記支持機構は、上記突出位置からさらに下方に突出する他の突出位置でも上記棚を支持することを特徴とする請求項4に記載の自動車の助手席側収容構造。
【請求項6】
請求項4または5に記載の助手席側収容構造を備えた自動車において、助手席側のシートを案内する案内機構が、折り畳み状態の当該シートの少なくとも一部を上記収納位置の棚と床面との間のスペースに収容できるように、前方へ延びていることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−62430(P2006−62430A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244597(P2004−244597)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】