説明

自動車

【課題】動力を弾性エネルギに変換して蓄力可能であると共に該蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力可能な蓄力装置を乗員スペースなどを確保して自動車に搭載できるようにする。
【解決手段】動力を弾性エネルギに変換して蓄力(蓄勢)すると共に蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力する蓄力装置30と、後輪66a,66bからの動力を蓄力装置30に伝達したり蓄力装置30からの動力をエンジン22の出力軸や後輪66a,66bに伝達したりする倍進装置40と、を備えるものにおいて、蓄力装置30をクロスメンバとして車両に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリを電源とする主動力部からの駆動力を用いて部品(ワーク)を搬送する無人の搬送車において、補助駆動輪に連結されて動力を弾性力に変換して備蓄可能であると共に備蓄した弾性力を動力として補助駆動輪に出力可能なぜんまいばねを含むエネルギ備蓄機構を有する補助動力部を搭載するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この搬送車では、補助動力部に、停止状態からの発進時などに主動力部による走行を補助(アシスト)させることにより、発進を容易に行なえるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−215142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の補助動力部を人間が乗車する自動車に搭載する場合、乗員の乗車スペースなどを確保する必要があり、無人の搬送車などに比して搭載スペースが限定されることが多いため、補助動力部、特に、エネルギ備蓄機構をどこに搭載するかが課題となる。
【0005】
本発明の自動車は、動力を弾性エネルギに変換して蓄力可能であると共に該蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力可能な蓄力装置を乗員スペースなどを確保して自動車に搭載できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
動力を弾性エネルギに変換して蓄力可能であると共に該蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力可能な蓄力装置と、前記蓄力装置と駆動輪との間で動力を伝達可能な伝達装置と、を備える自動車であって、
前記蓄力装置は、クロスメンバとして車両に搭載されてなる、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の自動車では、動力を弾性エネルギに変換して蓄力可能であると共に蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力可能な蓄力装置と、蓄力装置と駆動輪との間で動力を伝達可能な伝達装置と、を備えるものにおいて、蓄力装置をクロスメンバとして車両に搭載する。これにより、蓄力装置を乗員スペースなどを確保して自動車に搭載できるようにすることができる。もとより、駆動輪から伝達装置を介して伝達された動力を弾性エネルギに変換して蓄力したり、蓄力した弾性エネルギを動力に変換して伝達装置を介して駆動輪に出力したりすることができる。したがって、発進時や走行中に、蓄力装置からの出力を駆動輪に出力することにより、発進時には発進補助によって発進をより容易に行なえるようにすることができ、走行中には走行補助によって要求動力により十分に対応できるようにすることができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、走行用の動力を出力可能なエンジンを備え、前記伝達装置は、前記蓄力装置からの出力を前記エンジンの出力軸に伝達可能な装置である、ものとすることもできる。この場合、蓄力装置からの出力をエンジンのクランキングに用いることができる。ここで、「伝達装置」は、駆動輪から蓄力装置に動力が伝達されるようにする蓄力伝達状態,蓄力装置からエンジンの出力軸に動力が伝達されるようにするエンジン伝達状態,蓄力装置から駆動輪に動力が伝達されるようにする駆動輪伝達状態,蓄力装置をエンジンの出力軸や駆動輪から遮断すると共に蓄力装置に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させるエンジン駆動輪遮断状態を切り替え可能に構成されてなる、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の自動車において、走行用の動力を出力可能なモータと、前記モータと電力のやりとりが可能なバッテリと、前記バッテリに送風する送風機と、を備え、前記伝達装置は、前記蓄力装置からの出力を前記送風機に伝達可能な装置である、ものとすることもできる。この場合、蓄力装置からの出力を用いて送風機を駆動してバッテリを冷却することができる。ここで、「伝達装置」は、駆動輪から蓄力装置に動力が伝達されるようにする蓄力伝達状態,蓄力装置から駆動輪に動力が伝達されるようにする駆動輪伝達状態,蓄力装置から送風機に動力が伝達されるようにする送風機伝達状態,蓄力装置を駆動輪や送風機から遮断すると共に蓄力装置に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させる駆動輪送風機遮断状態を切り替え可能に構成されてなる、ものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の自動車において、蓄力装置は、筐体と、筐体に収容されたばねとを備える装置であり、筐体は、車体剛性を確保可能に構成されてなる、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例としての自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】蓄力装置30や倍進装置40の構成の概略を示す構成図である。
【図3】蓄力装置30の車両への搭載の様子を示す説明図である。
【図4】第1実施例の電子制御ユニット70により実行される蓄力ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】、第1実施例の電子制御ユニット70により実行される始動補助ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】電子制御ユニット70により実行される動力補助ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】変形例の自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】本発明の第2実施例としての自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図9】第2実施例の電子制御ユニット70により実行されるブロワ駆動ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】変形例の自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1実施例としての自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、蓄力装置30や倍進装置40の構成の概略を示す構成図であり、図3は、蓄力装置30の車両への搭載の様子を示す説明図である。
【0015】
第1実施例の自動車20は、図1に示すように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22をクランキングするスタータモータ23と、エンジン22からの動力を変速して前輪63a,63bに伝達する無段変速機24と、動力(パワー)を弾性エネルギに変換して蓄力(蓄勢)すると共に蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力する蓄力装置30と、後輪66a,66bからの動力(後輪66a,66bからデファレンシャルギヤ65を介して伝達された動力)を蓄力装置30に伝達したり蓄力装置30からの動力をエンジン22の出力軸や後輪66a,66bに伝達したりする倍進装置40と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット70と、を備える。
【0016】
蓄力装置30は、図2に示すように、図中左右方向が長手方向となる筐体31と、筐体31内に収容されて筐体31の内壁に図中左側の端部が取り付けられて図中左右方向に伸縮可能なコイルばね32と、コイルばね32と共に筐体31に収容されると共にコイルばね32の図中右側の端部に取り付けられたラックギヤ34と、を備える。
【0017】
筐体31は、図3に示すように、筐体31の長手方向が車幅方向となるようクロスメンバとして車体に搭載されており、車体剛性や側面衝突時の衝撃吸収を確保できるように構成されている。このように、筐体31(蓄力装置30)をクロスメンバとして車両に搭載する、即ち、蓄力装置30としての機能(エネルギの蓄力)とクロスメンバとしての機能(車体剛性の確保など)とを共用させることにより、乗車スペースなどを確保して即ち車両のスペースを有効利用して蓄力装置30を車両に搭載することができる。
【0018】
コイルばね32は、高張力鋼板(ハイテン材)やカーボンファイバー,カーボンナノチューブなどによって構成されている。また、ラックギヤ34は、図2に示すように、図中左右方向に延伸しており、倍進装置40の歯車機構42の歯車43と噛合している。この蓄力装置30では、歯車機構42の歯車43が図中時計回りに回転すると、その回転に応じてラックギヤ34が図中左方向に移動してコイルばね32が基準長L0より図中左方向に縮むことにより、歯車43側の動力を弾性エネルギに変換して蓄力(蓄勢)することができる。一方、コイルばね32が基準長L0より図中左方向に縮んでいる状態から図中右方向に伸びてラックギヤ34が図中右方向に移動して歯車43を図中反時計回りに回転させることにより、蓄力装置30の弾性エネルギを動力に変換して歯車43側に出力することができる。
【0019】
倍進装置40は、図2や図3に示すように、蓄力装置30のラックギヤ34と噛合する歯車43を含む複数の歯車からなる歯車機構42と、歯車機構42とエンジン22の出力軸や後輪66a,66bとの接続や遮断を行なったり動力の伝達方向を切り替えたり蓄力装置30に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させたりする切替保持機構46(図1参照)と、を備える。ここで、歯車機構42は、蓄力装置30の方がエンジン22の出力軸やデファレンシャルギヤ65より高回転数低トルクとなるよう調節されている。また、切替保持機構46は、複数の遊星歯車機構や複数のブレーキを含んで構成されており、複数のブレーキのオンオフにより、後輪66a,66bから蓄力装置30に動力が伝達されるようにする蓄力伝達状態,蓄力装置30からエンジン22の出力軸に動力が伝達されるようにするエンジン伝達状態,蓄力装置30から後輪66a,66bに動力が伝達されるようにする後輪伝達状態,蓄力装置30をエンジン22の出力軸や後輪66a,66bから遮断すると共に歯車機構42の各歯車を回転停止させて蓄力装置30に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させるエンジン後輪遮断状態を切り替えることができるようになっている。
【0020】
電子制御ユニット70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。電子制御ユニット70には、図1に示すように、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号や、無段変速機24の駆動状態を検出する各種センサからの信号,蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)を検出する蓄力量センサ39からの蓄力量E,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット70からは、エンジン22への制御信号や、スタータモータ23への制御信号,無段変速機24への制御信号,倍進装置40への制御信号などが出力ポート介して出力されている。ここで、蓄力量センサ39は、第1実施例では、コイルばね32の長さLを取得(入力)し、取得したコイルばね32の長さLの基準長L0(蓄力量Eが値0のときの長さ)に対する変化量ΔLを演算し、変化量ΔLとコイルばね32の蓄力量Eとの予め定められた関係に演算した変化量ΔLを適用して蓄力量Eを求めるセンサを用いるものとした。なお、蓄力量センサ39は、この手法によって蓄力量Eを検出するものに限定されるものではなく、例えば、蓄力量Eを直接検出するものなどとしてもよい。
【0021】
こうして構成された第1実施例の自動車20では、停車中は、自動停止条件が成立するとエンジン22の運転を自動停止し、エンジン22の自動停止中に自動始動条件が成立するとエンジン22を自動始動する、いわゆるアイドルストップ制御を実行する。ここで、自動停止条件の成立の判定は、アクセル開度Accが値0である即ちアクセルオフである条件や、ブレーキペダルポジションBPが値0でない即ちブレーキオンである条件,車速Vが値0である即ち車両が停止している条件,エンジン22がアイドル運転されている条件などの全ての条件が成立したときに行なうものとした。また、自動始動条件としては、アクセル開度Accが値0でない即ちアクセルオンである条件や、ブレーキペダルポジションBPが値0である即ちブレーキオフである条件などの少なくとも一つが成立したときに行なうものとした。
【0022】
次に、こうして構成された第1実施例の自動車20の動作、特に、蓄力装置30で動力を弾性エネルギに変換して蓄力する際の動作や蓄力装置30で弾性エネルギを動力に変換して出力する際の動作について説明する。以下、まず、蓄力装置30で動力を弾性エネルギに変換して蓄力する際の動作について説明し、その後、蓄力装置30で弾性エネルギを動力に変換して出力する際の動作について説明する。
【0023】
図4は、第1実施例の電子制御ユニット70により実行される蓄力ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは繰り返し実行される。なお、このルーチンの実行開始時には、切替保持機構46はエンジン後輪遮断状態となっているものとした。
【0024】
蓄力ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、まず、蓄力量センサ39からの蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)Eを入力し(ステップS100)、蓄力装置30に蓄力可能なパワーがあるか否かを判定すると共に(ステップS110)、入力した蓄力装置30の蓄力量Eを閾値Echと比較する(ステップS120)。ここで、蓄力装置30に蓄力可能なパワーがあるか否かは、第1実施例では、運転者によってアクセルオフやブレーキオンとされているか否かによって判定するものとした。また、閾値Echは、蓄力装置30の蓄力量Eが十分であるか否かを判定するのに用いられるものであり、蓄力装置30に蓄力可能な最大蓄力量Emaxより若干小さな値などを用いることができる。
【0025】
蓄力装置30に蓄力可能なエネルギがあり、蓄力量Eが閾値Ech未満のときには、蓄力伝達状態となるなるよう切替保持機構46を制御して(ステップS130)、ステップS100に戻る。このように切替保持機構46を蓄力伝達状態とすることにより、後輪66a,66bからの動力が切替保持機構46を介して蓄力装置30に伝達されて蓄力装置30で弾性エネルギに変換されて蓄力されるようにすることができる。なお、いま、アクセルオフやブレーキオンとされているときを考えているから、アクセルオフやブレーキオンに応じた要求制動パワーが、蓄力装置30への動力の伝達によって後輪66a,66bに作用する制動パワー(以下、蓄力起因制動パワーという)と、図示しない油圧ブレーキによる制動パワー(以下、油圧起因制動パワーという)と、によって車両に作用するようにすればよいが、切替保持機構46については蓄力伝達状態,エンジン伝達状態,後輪伝達状態,エンジン後輪遮断状態を切り替えるだけであることから、油圧ブレーキを制御して油圧起因制動パワーを調節することによって要求制動パワーに対応することになる。
【0026】
ステップS110で蓄力装置30に蓄力可能なパワーがないときや、ステップS120で蓄力装置30の蓄力量Eが十分であるときには、切替保持機構46が蓄力伝達状態かエンジン後輪遮断状態かを判定し(ステップS140)、切替保持機構46が蓄力伝達状態のときには、エンジン後輪遮断状態となるよう切替保持機構46を制御して(ステップS150)、本ルーチンを終了し、切替保持機構46がエンジン後輪遮断状態のときにはそのまま本ルーチンを終了する。なお、切替保持機構46がエンジン後輪遮断状態でアクセルオフやブレーキオンとされているときには、油圧ブレーキを制御して油圧起因制動パワーを調節することによって要求制動パワーに対応すればよい。
【0027】
次に、蓄力装置30で弾性エネルギを動力に変換して出力する際の動作について説明する。図5は、第1実施例の電子制御ユニット70により実行される始動補助ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の始動要求がなされたときに実行される。第1実施例の自動車20では、上述したように、アイドルストップ制御を実行するものとしたから、エンジン22の始動要求がなされたときとしては、例えば、停車中に自動始動条件が成立したときを考えることができる。なお、このルーチンの実行開始時には、切替保持機構46はエンジン後輪遮断状態となっているものとした。
【0028】
始動補助ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、まず、蓄力量センサ39からの蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)Eを入力し(ステップS200)、入力した蓄力装置30の蓄力量Eを閾値Estartと比較する(ステップS210)。ここで、閾値Echは、エンジン22のクランキングに要するエネルギが蓄力装置30に蓄力されているか否かを判定するために用いられるものであり、エンジン22を始動用回転数(例えば、600rpmや800rpm,1000rpmなど)までクランキングするのに要する蓄力量Eやそれより若干大きな値などを用いることができる。
【0029】
蓄力量Eが閾値Estart以上のときには、エンジン22のクランキングに要するエネルギが蓄力装置30に蓄力されていると判断し、エンジン伝達状態となるよう切替保持機構46を制御する(ステップS220)。これにより、蓄力装置30で弾性エネルギが動力に変換されて切替保持機構46を介してエンジン22の出力軸に伝達されるようにすることができるから、蓄力装置30からの動力を用いてエンジン22をクランキングすることができる。そして、エンジン22の回転数が始動用回転数に至ったときにエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始することによってエンジン22を始動することができる。
【0030】
そして、エンジン22の始動が完了するのを待って(ステップS230)、遮断保持S状態となるよう切替保持機構46を制御して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。
【0031】
ステップS210で蓄力量Eが閾値Estart未満のときには、エンジン22のクランキングに要するエネルギが蓄力装置30に蓄力されていないと判断してそのまま本ルーチンを終了する。この場合、スタータモータ23を用いてエンジン22をクランキングすると共にエンジン22の回転数が始動用回転数に至ったときにエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始することにより、エンジン22を始動することができる。
【0032】
以上説明した第1実施例の自動車20によれば、動力(パワー)を弾性エネルギに変換して蓄力すると共に蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力する蓄力装置30をクロスメンバとして車両に搭載するから、乗車スペースなどを確保して即ち車両のスペースを有効利用して蓄力装置30を車両に搭載することができる。
【0033】
また、第1実施例の自動車20によれば、エンジン22の始動指示がなされたときに、エンジン22のクランキングに要するエネルギが蓄力装置30に弾性エネルギとして蓄力(蓄勢)されているときには、蓄力装置30からエンジン22の出力軸に動力が伝達されるようにするエンジン伝達状態となるよう切替保持機構46を制御するから、蓄力装置30からの動力を用いてエンジン22をクランキングして始動することができる。
【0034】
第1実施例の自動車20では、蓄力装置30に蓄力した弾性エネルギを動力に変換してエンジン22のクランキングに用いるものとしたが、これに限られず、発進時や走行時の動力補助などに用いるものとしてもよい。図6は、電子制御ユニット70により実行される動力補助ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、発進時や走行中(例えばアクセルペダル83が大きく踏み込まれたとき)に実行される。なお、これらのルーチンの実行開始時には、切替保持機構46はエンジン後輪遮断状態となっているものとした。
【0035】
動力補助ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、まず、蓄力量センサ39からの蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)Eを入力し(ステップS300)、入力した蓄力装置30の蓄力量Eを値0と比較する(ステップS310)。このステップS210の処理は、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがある(残っている)か否かを判定する処理である。
【0036】
蓄力装置30の蓄力量Eが値0より大きいときには、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがあると判断し、後輪伝達状態となるよう切替保持機構46を制御する(ステップS320)。これにより、蓄力装置30で弾性エネルギが動力に変換されて切替保持機構46,デファレンシャルギヤ65を介して後輪66a,66bに伝達されるようにすることができるから、発進時には発進補助によって発進をより容易に行なえるようにすることができ、走行中には走行補助によって要求動力により十分に対応できるようにすることができる。なお、走行中に動力補助を行なう際には、無段変速機24の制御(具体的には変速比の調節)により、エンジン22の回転数を、走行に要求される要求動力から走行補助による動力を減じた動力をエンジン22から出力する際にエンジン22を効率よく運転できる回転数に調整するものとしてもよい。こうすれば、エンジン22をより効率よく運転しながら要求動力に対応することができる。
【0037】
ステップS210で蓄力装置30の蓄力量Eが値0のときには、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがないと判断し、切替保持機構46が蓄力伝達状態かエンジン後輪遮断状態かを判定し(ステップS330)、切替保持機構46が蓄力伝達状態のときには、エンジン後輪遮断状態となるよう切替保持機構46を制御して(ステップS340)、本ルーチンを終了し、切替保持機構46がエンジン後輪遮断状態のときにはそのまま本ルーチンを終了する。
【0038】
この変形例では、発進時や走行中(例えばアクセルペダル83が大きく踏み込まれたとき)に、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがあるときには、蓄力装置30から後輪66a,66bに動力が伝達されるようにする後輪伝達状態となるよう切替保持機構46を制御するから、発進時には発進補助によって発進をより容易に行なえるようにすることができ、走行中には走行補助によって要求動力により十分に対応できるようにすることができる。
【0039】
第1実施例の自動車20や変形例の自動車120では、エンジン22からの動力を無段変速機24によって変速して前輪63a,63bに出力するものとしたが、無段変速機24に代えて有段変速機を用いるものとしてもよい。
【0040】
第1実施例の自動車20では、後輪66a,66bからの動力を蓄力装置30に伝達したり蓄力装置30からの動力をエンジン22や後輪66a,66bに伝達したりする倍進装置40を用いるものとしたが、図7の変形例の自動車120に例示するように、後輪66a,66bからの動力を蓄力装置30に伝達したり蓄力装置30からの動力を前輪63a,63bや後輪66a,66bに伝達したりする倍進装置140を用いるものとしてもよい。具体的には、実施例では、倍進装置40の切替保持機構46を、蓄力伝達状態,エンジン伝達状態,後輪伝達状態,エンジン後輪遮断状態を切り替えることができるものとしたが、倍進装置140の切替保持機構146を、蓄力伝達状態,後輪伝達状態,蓄力装置30から前輪63a,63bに動力が伝達されるようにする前輪伝達状態,蓄力装置30から前輪63a,63b,後輪66a,66bの両方に動力が伝達されるようにする前輪伝達状態,蓄力装置30を前輪63a,63bや後輪66a,66bから遮断すると共に歯車機構42の各歯車を回転停止させて蓄力装置30に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させる前後輪遮断状態を切り替えることができるものとしてもよい。この変形例の自動車120では、前輪伝達状態や後輪伝達状態となるよう切替保持機構46を制御することにより、蓄力装置30で弾性エネルギが動力に変換されて切替保持機構46を介して前輪63a,63bや後輪66a,66bに伝達されるようにすることができるから、発進時には発進補助によって発進をより容易に行なえるようにすることができ、走行中には走行補助によって要求動力により十分に対応できるようにすることができる。
【実施例2】
【0041】
図8は、本発明の第2実施例としての自動車220の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の自動車220は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22の出力軸にキャリアが接続されると共に前輪63a,63bにデファレンシャルギヤ262を介して連結された駆動軸226にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ224と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ224のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸226に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ227,228と、リチウムイオン二次電池として構成されてインバータ227,228を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ250と、バッテリ250に送風するブロワ252と、動力(パワー)を弾性エネルギに変換して蓄力(蓄勢)すると共に蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力する蓄力装置30と、後輪66a,66bからの動力を蓄力装置30に伝達したり蓄力装置30からの動力を後輪66a,66bやブロワ252に伝達したりする倍進装置240と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット70と、を備える。なお、重複する説明を回避するため、第2実施例の自動車20のハード構成のうち第1実施例の自動車20のハード構成と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0042】
倍進装置240の切替保持機構246は、後輪66a,66bから蓄力装置30に動力が伝達されるようにする蓄力伝達状態,蓄力装置30から後輪66a,66bに動力が伝達されるようにする後輪伝達状態,蓄力装置30からブロワ252に動力が伝達されるようにするブロワ伝達状態,蓄力装置30を後輪66a,66bやブロワ252から遮断すると共に歯車機構42の各歯車を回転停止させて蓄力装置30に蓄力量(弾性エネルギ)を保持させる後輪ブロワ遮断状態を切り替えることができるようになっている。
【0043】
ブロワ252は、図示しない低電圧バッテリ(いわゆる12Vバッテリ)からの電力や蓄力装置30からの動力を用いてバッテリ250に送風できるように構成されている。
【0044】
電子制御ユニット70には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号や、モータMG1,MG2の駆動状態を検出する各種センサからの信号,バッテリ250の状態を検出する各種センサからの信号(例えば、バッテリ250の温度を検出する温度センサ251からの電池温度Tbなど),蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)を検出する蓄力量センサ39からの蓄力量E,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット70からは、エンジン22への制御信号や、インバータ227,228のスイッチング素子へのスイッチング制御信号,ブロワ252への制御信号,倍進装置240への制御信号などが出力ポート介して出力されている。
【0045】
次に、こうして構成された第2実施例の自動車220の動作、特に、蓄力装置30で動力を弾性エネルギに変換して蓄力する際の動作や蓄力装置30で弾性エネルギを動力に変換して出力する際の動作について説明する。
【0046】
まず、第2実施例の自動車220では、第1実施例の自動車20と同様に、図4の蓄力ルーチンを実行することにより、蓄力装置30で動力を弾性エネルギに変換して蓄力することができる。
【0047】
次に、蓄力装置30で弾性エネルギを動力に変換して出力する際の動作について説明する。図9は、第2実施例の電子制御ユニット70により実行されるブロワ駆動ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、イグニッションオフされたときに実行される。なお、このルーチンの実行開始時には、切替保持機構46は後輪ブロワ遮断状態となっているものとした。
【0048】
ブロワ駆動ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、まず、蓄力量センサ39からの蓄力装置30の蓄力量(弾性エネルギ)Eや温度センサ251からのバッテリ250の電池温度Tbを入力し(ステップS400)、入力した蓄力装置30の蓄力量Eを値0と比較すると共に(ステップS410)、バッテリ250の電池温度Tbを閾値Tbrefと比較する(ステップS420)。ここで、ステップS410の処理は、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがある(残っている)か否かを判定する処理である。また、閾値Tbrefは、バッテリ250を冷却する必要があるか否かを判定するために用いられるものであり、バッテリ250の仕様などに応じて設定することができる。
【0049】
蓄力装置30の蓄力量Eが値0より大きくバッテリ250の電池温度Tbが閾値Tbref以上のときには、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがあり且つバッテリ250を冷却する必要があると判断し、ブロワ伝達状態となるよう切替保持機構46を制御する(ステップS430)。これにより、蓄力装置30で弾性エネルギが動力に変換されて切替保持機構46を介してブロワ252に伝達されるようにすることができるから、蓄力装置30の弾性エネルギを動力に変換して用いてブロワ252を駆動してバッテリ250を冷却することができる。しかも、蓄力装置30の弾性エネルギを動力に変換してブロワ252の駆動に用いるから、ブロワ252の駆動のために図示しない低電圧バッテリから放電させる必要がなく、電力消費を抑制することができる。
【0050】
ステップS410で蓄力装置30の蓄力量Eが値0のときには、蓄力装置30に蓄力されている弾性エネルギがないと判断し、また、ステップS420でバッテリ250の電池温度Tbが閾値Tbref未満のときには、バッテリ250を冷却する必要がないと判断し、切替保持機構46が蓄力伝達状態かエンジン後輪遮断状態かを判定し(ステップS440)、切替保持機構46が蓄力伝達状態のときには、後輪ブロワ遮断状態となるよう切替保持機構46を制御して(ステップS450)、本ルーチンを終了し、切替保持機構46が後輪ブロワ遮断状態のときにはそのまま本ルーチンを終了する。なお、バッテリ250の電池温度Tbが閾値Tbref以上であるにも拘わらず、蓄力装置30の蓄力量Eが値0になったことによって、蓄力装置30からの動力を用いたブロワ252の駆動を終了したときには、低電圧バッテリからの電力を用いてブロワ252を駆動することによってバッテリ250を冷却するものとしてもよい。
【0051】
以上説明した第2実施例の自動車220によれば、イグニッションオフされたときに、蓄力装置30に蓄力(蓄勢)されている弾性エネルギがありバッテリ250の電池温度Tbが閾値Tbref以上のときには、蓄力装置30からブロワ252に動力が伝達されるようにするブロワ伝達状態となるよう切替保持機構46を制御するから、蓄力装置30からの動力を用いてブロワ252を駆動してバッテリ250を冷却することができる。
【0052】
第2実施例の自動車220では、蓄力装置30からの動力をブロワ252の駆動に用いるものとしたが、第1実施例の変形例と同様に、蓄力装置30からの動力を後輪66a,66bの駆動、即ち、発進時や走行時の動力補助などに用いるものとしてもよい。
【0053】
第2実施例の自動車220では、切替保持機構246は、蓄力伝達状態,後輪伝達状態,ブロワ伝達状態,後輪ブロワ遮断状態を切り替えることができるものとしたが、第1実施例の切替保持機構46と同様に、蓄力伝達状態,エンジン伝達状態,後輪伝達状態,エンジン後輪遮断状態を切り替えることができるものとしてもよいし、第1実施例の変形例の切替保持機構146と同様に、蓄力伝達状態,前輪伝達状態,後輪伝達状態,前後輪遮断状態を切り替えることができるものとしてもよい。第1実施例の切替保持機構46と同様の場合、蓄力装置30からの動力をエンジン22のクランキングに用いるものとしてもよい。また、第1実施例の変形例の切替保持機構146と同様の場合、蓄力装置30からの動力を前輪63a,63bや後輪66a,66bの駆動、即ち、発進時や走行時の動力補助などに用いるものとしてもよい。
【0054】
第2実施例の自動車220では、図示しない低電圧バッテリからの電力や蓄力装置30からの動力を用いてバッテリ250に送風可能なブロワ252を備えるものとしたが、これに代えてまたは加えて、低電圧バッテリからの電力や蓄力装置30からの動力を用いて、モータMG1,MG2やインバータ227,228を含む循環流路内で冷却水を循環させる圧送ポンプなどを備えるものとしてもよい。
【0055】
第2実施例の220では、前輪63a,63bが連結された駆動軸226には、モータMG2だけでなく、プラネタリギヤ224を介してエンジン22およびモータMG1も接続するものとしたが、図10の変形例の自動車320に例示するように、駆動軸226には、モータMG2のみを接続するものとしてもよい。
【0056】
第1実施例や第2実施例の自動車20,220,それらの変形例の自動車120,320では、蓄力装置30は、コイルばね32を備えるものとしたが、コイルばね32に代えてゼンマイばねを備えるものとしてもよい。
【0057】
第1実施例や第2実施例の自動車20,220,それらの変形例の自動車120,320では、倍進装置40は、歯車機構42を備えるものとしたが、歯車機構42に代えて、油圧を用いて動力を伝達するいわゆる油圧シリンダなどを備えるものとしてもよい。
【0058】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、蓄力装置30が「蓄力装置」に相当し、倍進装置40が「伝達装置」に相当する。また、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、バッテリ250が「バッテリ」に相当し、ブロワ252が「送風機」に相当する。
【0059】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
20,120,220,320 自動車、22 エンジン、23 スタータモータ、24 無段変速機、30 蓄力装置、31 筐体、32 コイルばね、34 ラックギヤ、39 蓄力量センサ、40,140,240 倍進装置、42 歯車機構、43 歯車、46,146,246 切替保持機構、63a,63b 前輪、65 デファレンシャルギヤ、66a,66b 後輪、70 電子制御ユニット、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、224 プラネタリギヤ、226 駆動軸、227,228 インバータ、250 バッテリ、251 温度センサ、252 ブロワ、262 デファレンシャルギヤ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を弾性エネルギに変換して蓄力可能であると共に該蓄力した弾性エネルギを動力に変換して出力可能な蓄力装置と、前記蓄力装置と駆動輪との間で動力を伝達可能な伝達装置と、を備える自動車であって、
前記蓄力装置は、クロスメンバとして車両に搭載されてなる、
ことを特徴とする自動車。
【請求項2】
請求項1記載の自動車であって、
走行用の動力を出力可能なエンジンを備え、
前記伝達装置は、前記蓄力装置からの出力を前記エンジンの出力軸に伝達可能な装置である、
自動車。
【請求項3】
請求項1記載の自動車であって、
走行用の動力を出力可能なモータと、
前記モータと電力のやりとりが可能なバッテリと、
前記バッテリに送風する送風機と、
を備え、
前記伝達装置は、前記蓄力装置からの出力を前記送風機に伝達可能な装置である、
自動車。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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