説明

自動食器洗浄洗剤組成物

a)組成物1グラム当たり少なくとも0.05mgの活性アミラーゼであって、前記アミラーゼは、a1)SEQ ID NO:1に対する以下の位置:9、26、149、182、186、202、257、295、299、323、339及び345における1つ以上の、好ましくは3つ以上の置換を有する変異体;および、a2)存在する場合には好ましくはR118K、D183*、G184*、N195F、R320K及び/又はR458Kを含む、以下の位置:118、183、184、195、320及び458における1つ以上の、好ましくは全ての置換及び/又は欠失を有していてもよい変異体であるか;又はa3)配列がSEQ ID NO:5と示され、好ましくは以下の位置:M202、M208、S255、R172及び/又はM261の1つ以上において変異を含む、Bacillus sp.707由来のアミラーゼである、活性アミラーゼと、b)組成物1グラム当たり少なくとも0.1mgの低温プロテアーゼと、を含む自動食器洗浄洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤の分野に属する。特に、本発明は、新規酵素系を含む自動食器洗浄洗剤組成物に関する。本組成物は優れた洗浄及び仕上がりを提供し、本組成物は従来の組成物よりも環境に優しく、エネルギー効率により優れた自動食器洗浄プロセスを可能にする。加えて、酵素系は、改善された製品安定性、並びに、洗浄を通しての漂白剤適合性を提供する。
【背景技術】
【0002】
自動食器洗浄洗剤は長い年月の間に改善されてきたが、それでも一部の消費者ニーズは、洗浄及び仕上がりの点で満たされていない。近年、より安全で環境に優しい洗剤組成物に対してかつてないほどに増加している流行が存在している。この流行は、自動食器洗浄調合剤に追加的な制約を課す。エネルギー効率及び原材料節約の点で、低温においても及び化学物質、特に容易には生分解可能ではない化学物質、の量を低減しても良好な性能を提供する製品を設計することが望ましい。
【0003】
近年、洗剤からのリン酸塩の排除に向かう傾向がある。この排除は、洗剤の洗浄だけでなく、安定性にも影響を有する。リン酸塩は、水分溜め(moisture sink)として作用することができ、これにより洗剤中に含有される酵素などの他の水分感受性成分を保護する。現在の課題は、リン酸塩を含まない組成物中での酵素の安定性である。
【0004】
漂白剤と酵素とを含む洗剤において遭遇する更なる問題は、製品内だけでなく洗浄を通しての、これら2つの成分の相互作用である。漂白剤は、洗浄を通して酵素を劣化させ、洗浄プロセスのために残される酵素の量を低減する場合がある。
【0005】
自動食器洗浄において見られる頻発する問題は、洗浄した物品上の粗粒子の存在である。たとえ、食器洗浄機に入れる前に物品が粗粒子を有してなくても、粗粒子は自動食器洗浄プロセス後に時々食器/食卓用食器内に見られる。粗粒子は、食器洗浄プロセス中に形成される。粗粒子形成の機構は、十分には理解されていない。粗粒子形成は、高温と、汚れた物品から食器洗浄プロセス中に浮き上がる異なる汚れの組み合わせと、に起因し得る。何らかの方法で、異なる汚れが再結合して粗粒子を生じ、これが洗浄された物品の表面上に付着すると考えられる。いったん粗粒子が形成され、付着すると、それを除去するのは非常に困難である。この問題は、単位用量形態の洗剤が使用されると、より深刻になる。
【0006】
別の、頻発して見られ未解決である問題は、洗浄した物品上における被膜形成及び斑点形成であり、これは特にガラス及び金属物品において顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の論点から、本発明の目的は、改善された安定性を有し、優れた洗浄及び仕上がり効果を同時に提供する、より環境に優しい製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、(本明細書で以下に記載されるような)低温プロテアーゼと組み合わせて、改善されたアミラーゼ(本明細書で以下に記載されるような変異型アミラーゼ)を含む改善された酵素系を含む自動食器洗浄洗剤組成物が提供される。本発明の組成物は、低温を含む広範囲の温度にわたって洗浄及び仕上がり効果を提供し、食器洗浄プロセスのエネルギー特性を改善する。驚くべきことに、本発明の組成物は、洗浄及び仕上がりにおいて妥協することなく、エネルギー効率により優れた食器洗浄プロセスを可能にする。加えて、本発明の組成物は、特に酵素安定性の点で改善された貯蔵安定性と、洗浄を通して改善された漂白剤/酵素適合性と、を呈する。
【0009】
本発明の組成物において使用するための変異型アミラーゼは、以下を有するアミラーゼのいずれかである:
(a)SEQ ID NO:1に対する以下の位置:9、26、149、182、186、202、257、295、299、323、339及び345における1つ以上の、好ましくは2つ以上の、より好ましくは3つ以上の、特に4つ以上の、置換;および、
(b)存在する場合には好ましくはR118K、D183*、G184*、N195F、R320K及び/又はR458Kを含む、以下の位置:118、183、184、195、320及び458における1つ以上の、好ましくは4つ以上の、より好ましくは全ての置換及び/又は欠失を有していても良い。
又は
(c)配列がSEQ ID NO:5と示され、好ましくは以下の位置:M202、M208、S255、R172及び/又はM261の1つ以上において変異を含む、Bacillus sp.707由来のアミラーゼ。好ましくはこのアミラーゼは、M202L、M202V、M202S、M202T、M202I、M202Q、M202W、S255N及び/又はR172Qの1つ以上を含む。特に好ましいのは、M202L又はM202Tの変異を含むものである。
【0010】
好ましい変異型アミラーゼには、以下のセットの変異を含むものが挙げられる:
(i)M9L+M323T;
(ii)M9L+M202L/T/V/I+M323T;
(iii)M9L+N195F+M202L/T/V/I+M323T;
(iv)M9L+R118K+D183*+G184*+R320K+M323T+R458K;
(v)M9L+R118K+D183*+G184*+M202L/T/V/I+R320K+M323T+R458K;
(vi)M9L+G149A+G182T+G186A+M202L+T257I+Y295F+N299Y+M323T+A339S+E345R;
(vii)M9L+G149A+G182T+G186A+M202I+T257I+Y295F+N299Y+M323T+A339S+E345R;
(viii)M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+M202L+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(ix)M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+N195F+M202L+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(x)M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+M202I+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(xi)M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202L+R320K+M323T+R458K;
(xii)M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202T+R320K+M323T+R458K;
(xiii)M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202I+R320K+M323T+R458K;
(xiv)M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202V+R320K+M323T+R458K;
(xv)M9L+R118K+N150H+D183*+D184*+N195F+M202L+V214T+R320K+M323T+R458K;又は、
(xvi)M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202L+V214T+R320K+M323T+E345N+R458K。
【0011】
最も好ましいアミラーゼは、商標名Stainzyme Plus(商標)(Novozymes A/S(Bagsvaerd,Denmark))で販売されている変異体である。
【0012】
本明細書で使用するとき、「低温プロテアーゼ」は、25℃で対照プロテアーゼの、少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、の相対活性を示すプロテアーゼである。本明細書で使用するとき、「対照プロテアーゼ」は、Savinase(商標)又はPurafect(商標)の商標で市販されているBacillus lentusの野生型サブチリシンプロテアーゼであり、その配列はSEQ ID NO:2である。本明細書で使用するとき、「相対活性」は、アッセイを行った温度における酵素の活性を、pH9で測定されたその最適温度におけるその活性で除算することから得られる率である。
【0013】
本明細書に用いるための低温プロテアーゼは、Bacillus lentusの野生型酵素と少なくとも90%の、好ましくは少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の、更に好ましくは少なくとも99%の、特に100%の同一性を示し、参照として本明細書に組み込まれている、国際公開WO00/37627号に示すようなBPN’番号付けシステム及びアミノ酸略称を用いて、以下の位置の1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上において変異を含む、ポリペプチドを含む:
68、87、99、101、103、104、118、128、129、130、167、170、194、205及び222。
【0014】
好ましくは、変異は、以下の1つ以上、好ましくは2つ以上、更に好ましくは3つ以上から選択される:V68A、S87N、S99D、S101G、S103A、V104N/I、Y167A、R170S、A194P、V205I及び/又はM222S。
【0015】
SEQ ID NO:2の酵素に直接に比較すると、上記の変異の組は、次の位置での変異に対応する:
66、85、97、99、101、102、116、126、127、128、160、164、188、199及び216。
【0016】
好ましくは、変異は、SEQ ID NO:2の酵素に対して、次の1つ以上、好ましくは2つ以上、更に好ましくは3つ以上から選択される:
V66A、S85N、S97D、S99G、S101A、V102N/I、Y161A、R164S、A188P、V199I及び/又はM216S。
【0017】
最も好ましくは、酵素は、SEQ ID NO:2に対する下記の変異を含む群から選択されるものである(変異の番号付けはBPN’番号付けでなく直接にSEQ ID NO:2に対するものである):
(i)G116V+S126L+P127Q+S128A、
(ii)G116V+S126N+P127S+S128A+S160D、
(iii)G116V+S126L+P127Q+S128A+S160D、
(iv)G116V+S126V+P127E+S128K、
(v)G116V+S126V+P127M+S160D、
(vi)G116V+S126F+P127L+S128T、
(vii)G116V+S126L+P127N+S128V、
(viii)G116V+S126F+P127Q、
(ix)G116V+S126V+P127E+S128K+S160D、
(x)G116V+S126R+P127S+S128P、
(xi)S126R+P127Q+S128D、
(xii)S126C+P127R+S128D、
(xiii)S126C+P127R+S128G、
(xiv)S99G+V102N、
(xv)N74D+N85S+S101A+V102I、
(xvi)N85S+V66A+S99G+V102N。
【0018】
特に好ましいプロテアーゼは、変異(i)、(ii)、(xv)又は(xvi)を有するものである。
【0019】
低温プロテアーゼの例には、Polarzyme(商標)(Novozymes A/S(Bagsvaerd,Denmark))、Properase(商標)、Properase BS(商標)、FN3(商標)及びFN4(商標)(Genencor International Inc.(Palo Alto,California,USA))が挙げられる。
【0020】
好ましい実施形態では、組成物は、高濃度のアミラーゼ、組成物1グラム当たり少なくとも0.2mg、好ましくは約0.2〜約10mg、より好ましくは約0.25〜約6mg、の活性アミラーゼ、特に好ましくは組成物1グラム当たり約0.3〜約4mgの活性アミラーゼを含む。高濃度のアミラーゼを含む組成物は、自動食器洗浄プロセス中に粗粒子形成を防止し、良好な洗浄及び仕上がり結果を提供するのを助けることが判明している。粗粒子除去の点でより良好な結果は、組成物がリパーゼを含むときに達成することができ、それゆえに、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、リパーゼ、好ましくは変異T231R及びN233Rを含有するHumicola Lanuginosa野生型由来のリパーゼ、を含む。Lipex(登録商標)(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を含む組成物は、特に有効であることが判明している。
【0021】
洗浄結果は、高濃度のプロテアーゼを組成物に添加することにより更に改善することができる。それゆえに、更に好ましい実施形態では、組成物は、高濃度のプロテアーゼ、特に組成物1グラム当たり少なくとも1.5mgの活性プロテアーゼ、を含む。本発明の組成物中の好ましい濃度のプロテアーゼは、組成物1グラム当たり約1.5〜約10mg、より好ましくは約1.8〜約5mg、特に約2〜約4mg、の活性プロテアーゼを含む。
【0022】
好ましい実施形態では、本組成物は、低濃度のリン酸塩しか含まないか、又はリン酸塩を全く含まない。「低濃度」のリン酸塩により、組成物が10%未満の、好ましくは5%未満の、リン酸塩を含むことが意味される。「リン酸塩を全く含まない」により、組成物が組成物の1重量%未満のリン酸塩を含むことが意味される。低濃度のリン酸塩を有する組成物でも、良好な貯蔵安定性を呈する。
【0023】
特に好ましい実施形態では、組成物は、再付着防止剤及び/又はスルホン化ポリマーを含む。優れた仕上がり結果は、再付着防止剤又はスルホン化ポリマーを含む組成物、特にこれらの組み合わせを含む組成物、により得られる。効果は、被膜形成、斑点形成の削減/防止及び光沢の改善の点で見られる。洗浄した物品における光沢は、特に重度の汚れ負荷のストレスのある場合では、未解決の問題であると考えられる。本発明の組成物は、ストレス条件下でも光沢効果を提供する。これらの効果は、ストレス条件下で、本発明の酵素系を欠く組成物では、容易には達成可能ではない。
【0024】
本発明の組成物は、好ましくは、金属手入れ剤(metal care agent)、特に亜鉛塩、を含む。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、従来の洗剤組成物により得られるものと比較して、汚れ分解物の粒径及び/又は分子量を低減する。これは、洗浄液中の汚れの懸濁を促進する。汚れ懸濁は更に、再付着防止剤により改善することができる。再付着防止剤は、分離した汚れを溶液中に個別の存在として維持することに貢献し、粗粒子形成を引き起こし得る再結合を防止する。これらの作用剤はまた、汚れた表面から汚れを分離するのを助けることもできる。これは、汚れ懸濁との組み合わせで、より有効な酵素洗浄に貢献し、洗浄された物品における、より良好な光沢と、被膜形成及び斑点形成の低減と、を生じる。好ましい再付着防止剤は、非イオン性界面活性剤、特に約40〜約70℃の転相温度(PIT)を有する非イオン性界面活性剤、である。この温度範囲でPITを有する非イオン性界面活性剤を含む組成物は、非常に良好な洗浄を提供する。再付着防止剤はまた、酵素が汚れた基材に到達するのを助けることができる。再付着防止剤は、本洗い中に洗浄を助けると考えられる。一部の再付着防止剤はすすぎサイクルに持ち越され、そこでシート形成を助け、これにより被膜形成及び斑点形成を低減/排除する。請求された範囲でPITを有する界面活性剤は、本洗い中に洗浄特性を、並びに、すすぎ中にシート形成特性を、呈する。他の好ましい実施形態では、再付着防止剤は、約360秒未満、好ましくは60秒未満のDraves濡れ時間(以下の条件下、3−gのフック、5−g綿糸、25℃の温度における0.1重量%の水溶液で、標準方法ISO 8022を使用して測定される)を有する非イオン性界面活性剤である。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は単位用量形態である。単位用量形態の製品には、タブレット、カプセル、サッシェ、パウチなどが挙げられる。水溶性フィルムで覆われたタブレット及び水溶性パウチが、本明細書での使用に好ましい。本発明の組成物の重量は、約10〜約25グラム、好ましくは約12〜約24グラム、より好ましくは14〜22グラムである。これらの重量は、自動食器洗浄製品ディスペンサーへの取り付けに極めて便利である。洗剤組成物を包む水溶性物質を有する単位用量製品の場合、この水溶性物質は組成物の部分とは考えない。
【0027】
好ましい実施形態では、単位用量形態は、水溶性パウチ(すなわち、洗剤組成物を包む水溶性フィルム)、好ましくは複数の区画を形成する複数のフィルムを有する多区画パウチである。この構成は、組成物の融通性及び最適化に貢献する。これは、異なる成分の分離及び制御放出を可能にする。好ましくは、1つの区画は固体形態の組成物を含有し、別の区画は液体形態の組成物を含有する。
【0028】
好ましい多区画パウチ実施形態では、2つの異なる区画は再付着防止剤を含有する。好ましくは、これらの2つの区画のフィルムは異なる溶解特性を有し、同一又は異なる再付着防止剤を異なる時点で放出するのを可能にする。例えば、1つの区画(第一区画)からの再付着防止剤は、汚れの除去を助けるために洗浄プロセスの初期に送達することができ、別の区画(第二区画)からの再付着防止剤は、第一区画からの再付着防止剤よりも少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分、遅れて送達することができる。理想的には、酵素は、第一区画からの再付着防止剤の後、並びに、第二区画からの再付着防止剤の前に送達されるべきである。
【0029】
別の区画上に重ねておかれる2つの隣り合う区画を含む多区画パウチが特に好ましく、少なくとも2つの異なる区画は2つの異なる組成物を含有する。
【0030】
本発明の第二の態様によれば、本発明の洗剤組成物を使用し、製品ディスペンサー内に組成物を配置する工程と、本洗いサイクル中にそれを放出する工程と、を含む自動食器洗浄機における食器洗浄方法が提供される。
【0031】
好ましいプロセス実施形態では、再付着防止剤は、食器洗浄プロセスの2つの異なる時間に送達される。
【0032】
本発明の第三の態様によれば、低温(すなわち、本洗い温度は、50℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である)での自動食器洗浄のための本発明の洗剤組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、新規酵素系を含む自動食器洗浄洗剤組成物を想定している。この系は、改善されたアミラーゼと、低温プロテアーゼと、所望によりリパーゼと、を含む。本組成物は優れた洗浄及び仕上がり効果を提供し、本組成物はエネルギー及び原材料削減の点で環境に優しい。本組成物の追加的な利益には、改善された貯蔵安定性と、洗浄を通して改善された漂白剤/酵素安定性と、が挙げられる。高濃度のアミラーゼと高濃度のプロテアーゼとを有する本発明の実施形態は、粗粒子の防止を助ける。本発明はまた、本発明の組成物を使用する食器洗浄方法を想定している。
【0034】
酵素に関連する用語
アミノ酸修飾に関する命名法
本明細書において酵素変異体を説明する際、参照を容易しやすくするために以下の命名法、元のアミノ酸、位置、置換済みアミノ酸、が使用される。
【0035】
この命名法に従うと、例えば、195位でグルタミン酸をグリシンに置換したものはG195Eと表示する。同じ位置でグリシンが欠失したものはG195*と表示し、追加のアミノ酸残基、例えばリジンを挿入したものはG195GKと表示する。特定の酵素が他の酵素と比較して「欠失」を含有し、このような位置で挿入が行われる場合、これは、位置36におけるアスパラギン酸の挿入については*36Dというように、示される。複数の変異はプラスにより分離され、すなわち、S99G+V102Nは位置99と102における変異が、各々グリシンをセリンに、及び、アスパラギンをバリンに、置換することを表す。ある位置(例えば、102)におけるアミノ酸が、アミノ酸の群、例えば、N及びIからなる群から選択される別のアミノ酸により置換され得る場合、これはV102N/Iにより示される。
【0036】
いずれのケースでも、IUPACによる1文字又は3文字の正式なアミノ酸略称を採用する。
【0037】
プロテアーゼアミノ酸の番号付与
本特許において使用される番号付与は、SEQ ID No:3として列挙される特定のプロテアーゼ(PB92)に対する番号付与である。代替的な番号付与スキームは、当該技術分野において一般的に使用されるいわゆるBPN’番号付与スキームである。便宜のため、これらの番号付与スキームを以下の表1で比較する。
【0038】
【表1】

【0039】
アミノ酸の同一性
2つのアミノ酸配列間の関連性は、パラメーター「同一性」により説明される。本発明の目的上、2つのアミノ酸配列のアラインメントは、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0内のNeedleというプログラムを用いることによって割り出す。Needleプログラムは、Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443〜453に記載されている国際的なアラインメントアルゴリズムを実装する。用いる置換マトリクスはBLOSUM62、ギャップオープニングペナルティは10、ギャップエクステンションペナルティは0.5である。
【0040】
本明細書で使用される酵素のアミノ酸配列(「本配列(invention sequence)」)と異なるアミノ酸配列(「異質配列(foreign sequence)」)との間の同一性の度合いは、2つの配列のアラインメントにおける完全一致の数を「本配列」の長さ又は「異質配列」の長さのいずれか短い方で除算して、計算される。この結果を同一度(%)として表す。完全一致は、「本配列」と「異質配列」に、同一のアミノ酸残基が重複部分の同じ位置に備わっている場合に発生する。配列の長さは、配列内のアミノ酸残基の数である。
【0041】
プロテアーゼ活性のためのアッセイ
プロテアーゼ活性は、ジメチルカゼイン(DMC)を使用して測定される。ペプチドの放出は、プロテアーゼ作用を介して開始される。プロテアーゼ活性は、PUで測定される。1PU(プロテアーゼ単位)は、1分当たりのペプチド形成初期速度が1分当たり1μモルのグリシンに相当するようにカゼインを加水分解する酵素の量である。1KPUは、1000プロテアーゼ単位に等しい。
【0042】
分析
2,4,6トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA)溶液及びDMC溶液を調製する。全ての成分は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich(Milwaukee,USA)からである。0.40mLのTNBSA(Sigma Cat No P−2297)を50mLの脱イオン水に溶解させることにより、TNBSA溶液を作製する。5.09gの塩化カリウム(Sigma Catalogue No:P−3911)及び1.545gのホウ酸(Sigma Catalogue No:B−0399)を500mLの脱イオン水に溶解させることにより、DMC溶液を作製する。この溶液を10分間にわたって攪拌して溶解させ、50%のNaOHを使用してpHを9.0に調整する。次に、2gのDMCを加え(DMC(British Drug House,Cat No.79457))、溶液を攪拌して溶解させる。
【0043】
1800μLのDMC溶液に100μLの希釈酵素含有試料を(0.04%の塩化カルシウムを有する0.5%亜硫酸ナトリウム溶液(各々、Sigma Catalogue No:C−5080及びSigma Catalogue No:S−6672))を加える。得られた溶液を混合して、37℃で4分間にわたってインキュベートする。次に、この混合液に900μLのTNBSA溶液を加え、更に5分間にわたってインキュベートする。吸光度を415nmで読み取る。
【0044】
本明細書に用いるための低温プロテアーゼは、好ましくは洗剤組成物1グラム当たり少なくとも0.3KNPU、より好ましくは洗剤組成物1グラム当たり少なくとも0.7KNPU、特に洗剤組成物1グラム当たり少なくとも1KNPU、の活性を有する。
【0045】
追加的なプロテアーゼ
本発明の組成物において、2つ以上のプロテアーゼの混合物を使用してもよく、このプロテアーゼの少なくとも1つは低温プロテアーゼでなければならず、第二の(及びそれに続く)プロテアーゼは、低温又は高温プロテアーゼのいずれかであることができる。プロテアーゼの混合物は、再付着防止剤及び/又はスルホン化ポリマーと共に使用されるとき、より広い温度及び/又は基材範囲にわたって洗浄の向上に貢献することができ、優れた光沢効果を提供することができる。
【0046】
他のアミラーゼ
本発明の組成物は、追加的なアミラーゼを更に含むことができる。2つ以上のアミラーゼの混合物の組み合わせが、本明細書で用いるのに好ましい。アミラーゼの混合物は、特に再付着防止剤及び/又はスルホン化ポリマーと共に使用されるとき、より広い温度及び/又は基材範囲にわたって洗浄の向上に貢献することができ、優れた光沢効果を提供することができる。
【0047】
α−アミラーゼ活性のためのアッセイ
p−ニトロフェノール発色団(Infinityアミラーゼ試薬(Thermo Electron(Woburn,MA,USA,Cat #:TR25421))で改変されたマルトヘプタオシドを使用して、アミラーゼ活性を測定する。発色団の遊離をアミラーゼ活性を介して開始する。アミラーゼ活性は最初にAMUで測定される。1AMU(アミラーゼ単位)は、1分当たりの小さな炭水化物(G2〜4)の初期形成速度が1分当たり1μモルの4−ニトロフェノールに相当するように、PNP−G7(p−ニトロフェニル−α,D−マルトヘプタオシド)炭水化物基質を加水分解する酵素の量である。
【0048】
対照酵素(商標名Termamyl(商標)(Novozymes A/S)で販売されているSEQ ID No:4のもの)に対してこの試験を行う。これらのアミラーゼ単位(AMU)を、0.133mgのTermamyl(商標)が1KNUに相当する変換率を使用して、kNUの単位に変換する。したがって、上記アッセイを使用して、酵素試料が0.266mgのTermamyl(商標)により示されるものと等しい活性を示す場合、その活性は2KNUであると考えられる。
【0049】
分析
200μLの希釈酵素含有試料を2500μLのInfinityアミラーゼ試薬に加える。混合し、37℃で4.5分間にわたってインキュベートする。吸光度を415nmで読み取る。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物中の改善されたアミラーゼは、組成物1グラム当たり少なくとも6KNUの活性、より好ましくは少なくとも7.5KNUの活性を有する。
【0051】
酵素の添加
本発明の組成物で用いるのに好適な追加的な酵素は、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の酵素を含むことができる。
【0052】
好ましい実施形態では、このような追加的な酵素は、リパーゼからなる群から選択されてもよく、例えば、配列が米国特許第6,939,702(B1)号の5及び6頁のSEQ ID No 1であるHumicola Lanuginosaの野生型の位置3、224、229、231及び233のいずれかにおける電気的に中性又は負に帯電しているアミノ酸の、R又はKでの置換を含む「第一サイクルリパーゼ」、好ましくはT231R及びN233R変異を含む変異体である。1つのこのような好ましい変異体が、商標名Lipex(登録商標)(Novozymes A/S(Bagsvaerd,Denmark))で販売されている。
【0053】
酵素安定剤構成成分−好適な酵素安定剤には、オリゴ糖、多糖、及び、アルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、などの無機二価金属塩が挙げられる。塩化物及び硫酸塩が好ましく、塩化カルシウムが本発明に従って特に好ましいカルシウム塩である。デキストリンなどの好適なオリゴ糖及び多糖の例は、国際公開WO07/145964(A2)号に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。プロテアーゼを含む水性組成物の場合、ホウ酸塩及び4−ホルミルフェニルボロン酸又はトリペプチドアルデヒドといったホウ素化合物などの可逆性プロテアーゼ抑制剤を加えて更に安定性を改善することができる。
【0054】
再付着防止剤
非イオン性界面活性剤は、再付着防止剤として本明細書に用いるのに好適である。従来、非イオン性界面活性剤は、表面改質目的で、特に被膜形成及び斑点形成を回避し、光沢を改善するための、自動食器洗浄で使用されてきた。本発明の組成物において、非イオン性界面活性剤は汚れの再付着を防止するのに貢献することが判明した。
【0055】
好ましい実施形態では、再付着防止剤は、蒸留水中1%の濃度で測定されるとき、40〜70℃、好ましくは45〜65℃、の転相温度を有する非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤系である。「非イオン性界面活性剤系」により、本明細書では、2つ以上の非イオン性界面活性剤の混合物を意味する。非イオン性界面活性剤系は、本明細書に用いるのに好ましい。これらは、単一の非イオン性界面活性剤よりも、製品中で洗浄及び仕上がり特性の改善並びに良好な安定性を有すると考えられる。
【0056】
転相温度は、界面活性剤又はその混合物が油膨潤ミセルとして水相中に優先的に分離する温度よりも低い温度であり、界面活性剤又はその混合物が水膨潤逆ミセルとして油相中に優先的に分離する温度よりも高い温度である。転相温度は、その温度で混濁が生じるのを同定することにより、視覚的に決定することができる。
【0057】
非イオン性界面活性剤又は系の転相温度は以下のように決定することができる。蒸留水中に溶液の1重量%の相当する界面活性剤又は混合物を含有する溶液を調製する。転相温度分析の前に化学平衡状態でプロセスが生じることを確保するために、この溶液を静かに攪拌する。75mmのシールしたガラス試験管の中で溶液を浸漬することにより、恒温槽中で転相温度を測る。漏れの不在を確かめるために、転相温度測定の前後で試験管を計量する。温度が予測転相温度よりも数度低いところに到達するまで、1分当たり1℃未満の速度で温度は徐々に上昇する。濁りの最初の兆候で転相温度を視覚的に決定する。
【0058】
好適な非イオン性界面活性剤には、i)アルコール又はアルキルフェノール1モル当たり好ましくは少なくとも12モル、特に好ましくは少なくとも16モル、更に好ましくは少なくとも20モルのエチレンオキシドとの、6〜12個の炭素原子を有する一価アルカノール又はアルキルフェノールの反応により調製されるエトキシル化非イオン性界面活性剤;ii)6〜20個の炭素原子と、少なくとも1個のエトキシ及びプロポキシ基と、を有するアルコキシル化界面活性剤、が挙げられる。界面活性剤i)とii)との組み合わせが本明細書に用いるのに好ましい。
【0059】
別の好適な非イオン性界面活性剤は、下式により表されるエポキシ末端保護されたポリ(オキシアルキル化)アルコールである。
1O[CH2CH(CH3)O]x[CH2CH2O]y[CH2CH(OH)R2](I) 式中、R1は、4〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素ラジカルであり、R2は、2〜26個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素ラジカルであり、xは、0.5〜1.5、より好ましくは約1、の平均値を有する整数であり、yは、少なくとも15、より好ましくは少なくとも20、の値を有する整数である。
【0060】
好ましくは、式Iの界面活性剤は、末端エポキシド単位[CH2CH(OH)R2]中に少なくとも約10個の炭素原子を有する。本発明による好適な式Iの界面活性剤は、例えば、Olin Corporationによる国際公開WO 94/22800号(1994年10月13日公開)に記載のOlin CorporationのPOLY−TERGENT(登録商標)SLF−18B非イオン性界面活性剤である。
【0061】
好ましくは、本明細書において再付着防止剤として使用するための非イオン性界面活性剤及び/又は系は、Draves濡れ性方法(以下の条件、3−gのフック、5−g綿糸、25℃の温度における0.1重量%の水溶液、を使用する標準方法ISO 8022)により測定されるとき、360秒未満、好ましくは200秒未満、より好ましくは100秒未満、特に60秒未満のDraves濡れ時間を有する。
【0062】
アミンオキシド界面活性剤も、再付着防止界面活性剤が下式を有する直鎖及び分枝鎖化合物を含むとき、本発明で有用である。
【0063】
【化1】

式中、R3は、8〜26個の炭素原子、好ましくは8〜18個の炭素原子を含有する、アルキル、ヒドロキシアルキル、アシルアミドプロピル及びアルキルフェニル基又はこれらの混合物から選択され、R4は、2〜3個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子を含有するアルキレン若しくはヒドロキシアルキレン基、又はこれらの混合物であり、xは0〜5、好ましくは0〜3であり、各R5は、1〜3個、好ましくは1〜2個の炭素原子を含有するアルキル若しくはヒドロキシアルキル基、又は、1〜3個、好ましくは1個のエチレンオキシド基を含有するポリエチレンオキシド基である。R5基は、例えば酸素原子又は窒素原子を介して互いに結合させ、環状構造を形成できる。
【0064】
これらのアミンオキシド界面活性剤には、特に、C10〜C18アルキルジメチルアミンオキシド及びC8〜C18アルコキシエチルジヒドロキシエチルアミンオキシドが挙げられる。そのような物質の例としては、ジメチルオクチルアミンオキシド、ジエチルデシルアミンオキシド、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ジメチルドデシルアミンオキシド、ジプロピルテトラデシルアミンオキシド、メチルエチルヘキサデシルアミンオキシド、ドデシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、タロージメチルアミンオキシド、及びジメチル−2−ヒドロキシオクタデシルアミンオキシドが挙げられる。C10〜C18アルキルジメチルアミンオキシド及びC10〜18アシルアミドアルキルジメチルアミンオキシドが好ましい。
【0065】
再付着防止剤及び特定の非イオン性界面活性剤は、0〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜10重量%、最も好ましくは0.25〜6重量%の量で存在し得る。
【0066】
スルホン化ポリマー
ポリマーは、使用される場合、組成物の約0.1重量%〜約50重量%、好ましくは1重量%〜約20重量%、より好ましくは2重量%〜10重量%、の任意の好適な量で使用される。スルホン化/カルボキシル化ポリマーは、本発明のパウチに含有される組成物に特に好適である。
【0067】
本明細書に記載される好適なスルホン化/カルボキシル化ポリマーは、約100,000Da以下、又は約75,000Da以下、又は約50,000Da以下、又は約3,000Da〜約50,000Da、好ましくは約5,000Da〜約45,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0068】
本明細書に記載されるように、スルホン化/カルボキシル化ポリマーは、(a)一般式(I)、
【0069】
【化2】

(式中、R1〜R4は、独立に、水素、メチル、カルボン酸基又はCH2COOHであり、式中、カルボン酸基は中和することができる)を有する少なくとも1つのカルボン酸モノマーから誘導される少なくとも1つの構造ユニット、(b)任意選択的に、式(II)、
【0070】
【化3】

(式中、R5は水素、C1〜C6アルキル、又はC1〜C6ヒドロキシアルキルであり、Xは芳香族であるか(Xが芳香族であるとき、R5は水素又はメチルである)又はXは一般 式(III)、
【0071】
【化4】

(式中、R6は(R5とは独立に)水素、C1〜C6アルキル、又はC1〜C6ヒドロキシアルキルであり、YはO又はNである)を有するかのいずれかである)を有する少なくとも1つの非イオン性モノマーから誘導される1つ以上の構造ユニット、及び一般式(IV)、
【0072】
【化5】

(式中、R7は少なくとも1つのsp2結合を含む基であり、AはO、N、P、S、又はアミド若しくはエステル連鎖であり、Bは単環式若しくは多環式芳香族基若しくは脂肪族基であり、各tは独立に0又は1であり、M+はカチオンである)を有する少なくとも1つのスルホン酸モノマーから誘導される少なくとも1つの構造ユニットを含み得る。1つの態様では、R7は、C2〜C6アルケンである。別の態様では、R7は、エテン、ブテン又はプロペンである。
【0073】
好ましいカルボン酸モノマーには、以下:アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、又はアクリル酸のエトキシレートエステルの1つ以上が挙げられ、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。好ましいスルホン化モノマーには、以下が挙げられる:(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ビニル、フェニル(メタ)アリルエーテルスルホン酸ナトリウム又は2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸。好ましい非イオン性モノマーには、以下が挙げられる:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、スチレン又はα−メチルスチレン。
【0074】
好ましくは、ポリマーは以下、ポリマーの重さの約40%〜約90%の、好ましくは約60%〜約90%の1つ以上のカルボン酸モノマー、ポリマーの重さの約5%〜約50%の、好ましくは約10%〜約40%の1つ以上のスルホン酸モノマー、及び任意選択的にポリマーの重さの約1%〜約30%の、好ましくは約2%〜約20%の1つ以上の非イオン性モノマー、の濃度のモノマーを含む。特に好ましいポリマーは、ポリマーの重さの約70%〜約80%の少なくとも1つのカルボン酸モノマーと、ポリマーの重さの約20%〜約30%の少なくとも1つのスルホン酸モノマーとを含む。
【0075】
カルボン酸は好ましくは(メタ)アクリル酸である。スルホン酸モノマーは、好ましくは以下、2−アクリルアミドメチル−1−プロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−メタクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸(allysulfonic acid)、メタリルスルホン酸(methallysulfonic acid)、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリル酸3−スルホプロピル、メタクリル酸3−スルホプロピル、スルホメチルアクリルアミド、スルホメチルメタクリルアミド、及びこれらの水溶性塩の1つである。不飽和スルホン酸モノマーは、最も好ましくは2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0076】
好ましい市販のポリマーには、アルコケミカル(Alco Chemical)により供給されるアルコスパース(Alcosperse)240、アクアトリート(Aquatreat)AR 540及びアクアトリートMPS、ローム&ハース(Rohm & Haas)により供給されるアキュマー(Acumer)3100、アキュマー2000、アキュゾール(Acusol)587G及びアキュゾール588G;BFグッドリッチ(BF Goodrich)により供給されるグッドリッチ(Goodrich)K−798、K−775及びK−797、並びに、ISPテクノロジーズ社(ISP technologies Inc.)により供給されるACP 1042が挙げられる。特に好ましいポリマーは、ローム&ハースにより供給されるアキュゾール587G及びアキュゾール588Gである。
【0077】
ポリマーにおいて、全ての又は一部のカルボン酸基又はスルホン酸基は、中和された形態で存在することができ、すなわち、全ての又は一部の酸性基中のカルボン酸基及び/又はスルホン酸基の酸性水素原子は、金属イオンで、好ましくはアルカリ金属イオンで、特にナトリウムイオンで、置換することができる。
【0078】
洗浄活性物質
従来の洗浄成分を、本発明の組成物の部分として使用することができる。与えられる濃度は重量パーセントであり、総組成物に関する(包まれた組成物の製作の場合の水溶性フィルムは除く)。洗剤組成物は、ビルダーを含む、又は含まない、並びに漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、界面活性剤、アルカリ源、酵素、ポリマー分散剤、耐腐食剤(例えば、ケイ酸ナトリウム)及び手入れ剤から選択され得る1つ以上の洗剤活性成分を含むことができる。非常に好ましい洗剤成分には、ビルダー化合物、アルカリ性供給源、再付着防止剤、スルホン化ポリマー、酵素及び追加的な漂白剤が挙げられる。
【0079】
原材料
本明細書に用いるのに好適なビルダーには、クエン酸塩及びポリリン酸塩(例えば、トリポリリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム六水和物、トリポリリン酸カリウム及びトリポリリン酸ナトリウムとトリポリリン酸カリウムとの混合塩)などの水溶性硬度イオン錯体を形成するビルダー(封鎖ビルダー)、並びに、硬度沈殿を形成するビルダー(沈殿形成ビルダー)(例えば、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩)が挙げられる。
【0080】
他の好適なビルダーには、アミノ酸系化合物又はコハク酸塩系化合物が挙げられる。用語「コハク酸塩系化合物」及び「コハク酸系化合物」は、本明細書では互換的に使用される。好適なアミノ酸系化合物の例には、MGDA(メチル−グリシン−二酢酸)及びその塩及び誘導体、並びに、GLDA(グルタミン酸−N,N−二酢酸)及びその塩及び誘導体が挙げられる。GLDA(その塩及び誘導体)は、本発明に従って特に好ましく、その四ナトリウム塩は特に好ましい。他の好適なビルダーは、米国特許第6,426,229号に記載される。特に好適なビルダーには、例えば、アスパラギン酸−N−一酢酸(ASMA)、アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、アスパラギン酸−N−一プロピオン酸(ASMP)、イミノジコハク酸(IDA)、N−(2−スルホメチル)アスパラギン酸(SMAS)、N−(2−スルホエチル)アスパラギン酸(SEAS)、N−(2−スルホメチル)グルタミン酸(SMGL)、N−(2−スルホエチル)グルタミン酸(SEGL)、N−メチルイミノ二酢酸(MIDA)、α−アラニン−N,N−二酢酸(α−ALDA)、セリン−N,N−二酢酸(SEDA)、イソセリン−N,N−二酢酸(ISDA)、フェニルアラニン−N,N−二酢酸(PHDA)、アントラニル酸−N,N−二酢酸(ANDA)、スルファニル酸−N,N−二酢酸(SLDA)、タウリン−N,N−二酢酸(TUDA)及びスルホメチル−N,N−二酢酸(SMDA)及びこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0081】
好ましくは、アミノ酸系化合物又はコハク酸塩系化合物は、組成物中に少なくとも1重量%、好ましくは5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも20重量%の量で存在する。好ましくはこれらの化合物は、最大50重量%、好ましくは最大45重量%、より好ましくは最大40重量%、最も好ましくは最大35重量%、の量で存在する。本組成物は20重量%以下のリン含有成分を含有することが好ましく、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくはこれらはこのような成分を実質的に含まず、更に好ましくはこれらはこのような成分を含まない。
【0082】
他のビルダーには、ポリカルボン酸及びこれらの部分又は完全中和した塩のホモポリマー並びにコポリマー、モノマー性ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸並びにこれらの塩が挙げられる。上記化合物の好ましい塩は、アンモニウム及び/又はアルカリ金属塩、すなわち、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩であり、特に好ましい塩はナトリウム塩である。
【0083】
好適なポリカルボン酸は、非環式、脂環式、複素環式及び芳香族カルボン酸であり、この場合、これらは、好ましくは2個以下の炭素原子により、各々の場合でお互いが分離されている少なくとも2つのカルボキシル基を含有する。2つのカルボキシル基を含むポリカルボン酸塩には、例えば、マロン酸、(エチレンジオキシ)二酢酸、マレイン酸、ジグリコール酸、酒石酸、タルトロン酸及びフマル酸、の水溶性塩が挙げられる。3つのカルボキシル基を含有するポリカルボン酸塩には、例えば、水溶性クエン酸塩が挙げられる。対応して、好適なヒドロキシカルボン酸は、例えば、クエン酸である。別の好適なポリカルボン酸は、アクリル酸のホモポリマーである。他の好適なビルダーは、国際公開WO 95/01416号に開示されており、その内容については本明細書に参照として記載される。
【0084】
ビルダーは、典型的には組成物の約30〜約80重量%、好ましくは約40〜約70重量%の濃度で存在する。封鎖ビルダーの、沈殿形成ビルダーに対する比が約10:1〜約1:1、好ましくは約8:1〜2:1であることも好ましい。
【0085】
ケイ酸塩
好適なケイ酸塩は、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び結晶性フィロケイ酸塩などのケイ酸ナトリウムである。ケイ酸塩は、存在する場合には、組成物の約1〜約20重量%、好ましくは約5〜約15重量%の濃度である。
【0086】
漂白剤
無機及び有機漂白剤は、本明細書において用いるのに適した洗浄活性物質である。無機漂白剤としては、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩のような過水和物塩が挙げられる。無機過水和物塩は、通常アルカリ金属塩である。無機過水和物塩は、追加的保護なしで、結晶性固体として包含されてもよい。あるいは、塩はコーティングされることができる。
【0087】
過炭酸のアルカリ金属塩、特に過炭酸ナトリウムは、本明細書に用いるのに好ましい過水和物である。過炭酸塩は、製品内安定性を提供するコーティングされた形態で製品に取り込まれることが最も好ましい。製品安定性を提供する好適なコーティング材料は、水溶性アルカリ金属硫酸塩及び炭酸塩の混合塩を含む。このようなコーティングは、コーティング方法と共に、過去に英国特許第1,466,799号に記載されている。混合塩コーティング材料の過炭酸塩に対する重量比は、1:200〜1:4、より好ましくは1:99〜1 9、最も好ましくは1:49〜1:19の範囲である。好ましくは、混合塩は、一般式Na2SO4.n.Na2CO3(式中、nは0.1〜3であり、好ましくはnは0.3〜1.0であり、最も好ましくはnは0.2〜0.5である)を有する、硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合塩である。
【0088】
製品内に安定性を提供する別の好適なコーティング材料は、SiO2:Na2Oの比が1.8:1〜3.0:1、好ましくは1.8〜2.4:1であるケイ酸ナトリウム、及び/又は、好ましくは無機過水和塩の2重量%〜10重量%(通常3重量%〜5重量%)のSiO2の濃度で適用されるメタケイ酸ナトリウムを含む。ケイ酸マグネシウムもコーティングに包含することができる。ケイ酸塩及びホウ酸塩又はホウ酸あるいは他の無機物を含有するコーティングもまた好適である。
【0089】
ワックス、油、脂肪石鹸を含有する他のコーティングもまた、本発明において有利に使用されることができる。
【0090】
ペルオキシモノ過硫酸カリウムは、本明細書において有用な別の無機過水和物塩である。
【0091】
典型的な有機漂白剤は、ジアシル及びテトラアシルペルオキシドを包含する有機ペルオキシ酸、特にジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、及びジペルオキシヘキサデカン二酸である。ジベンゾイルペルオキシドは、本明細書において好ましい有機ペルオキシ酸である。また、モノ−及びジペルアゼライン酸、モノ−及びジペルブラシル酸、並びにN−フタロイルアミノペルオキシカプロン酸も、本明細書での使用に適している。
【0092】
好ましくはジアシルペルオキシド、特にジベンゾイルペルオキシドは、約0.1〜約100μm、好ましくは約0.5〜約30μm、より好ましくは約1〜約10μmの平均重量径を有する粒子の形態で存在すべきである。好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、更により好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%の粒子は、10μmより小さい、好ましくは6μmより小さい。また、自動食器洗浄機での使用中に、上記の粒径範囲内のジアシルペルオキシドは、より大きいジアシルペルオキシド粒子よりも、特にプラスチック食器からの、より良好な染み除去を提供する一方で、望ましくない堆積及び被膜形成を最小限にすることが見い出された。したがって、好ましいジアシルペルオキシドの粒径によって、配合者は低濃度のジアシルペルオキシドと共に良好な染み除去を達成することができ、それによって堆積や被膜形成が軽減される。逆に、ジアシルペルオキシドの粒径が増すにつれて、良好な染み除去には、更に多くのジアシルペルオキシドが必要となり、食器洗浄工程の間に関わる表面への堆積を増やすことになる。
【0093】
更なる典型的な有機漂白剤としては、ペルオキシ酸が挙げられ、特定例はアルキルペルオキシ酸及びアリールペルオキシ酸である。好ましい代表例は、(a)過安息香酸及びその環置換誘導体、例えば、アルキル過安息香酸、しかしまたペルオキシ−α−ナフトエ酸及びモノペルフタル酸マグネシウム、(b)脂肪族又は置換脂肪族ペルオキシ酸、例えば、ペルオキシラウリン酸、ペルオキシステアリン酸、ε−フタルイミドペルオキシカプロン酸[フタロイミノペルオキシヘキサン酸(PAP)]、o−カルボキシベンズアミドペルオキシカプロン酸、N−ノネニルアミドペルアジピン酸及びN−ノネニルアミド過コハク酸、並びに(c)脂肪族及び芳香脂肪族ペルオキシジカルボン酸、例えば、1,12−ジペルオキシカルボン酸、1,9−ジペルオキシアゼライン酸、ジペルオキシセバシン酸、ジペルオキシブラシル酸、ジペルオキシフタル酸、2−デシルジペルオキシブタン−1,4−二酸、N,N−テレフタロイルジ(6−アミノペルカプロン酸)である。
【0094】
漂白活性化剤
漂白活性化剤は、典型的に、60℃以下の温度で洗浄中に漂白作用を増強する有機過酸前駆体である。本明細書に用いるのに好適な漂白活性化剤としては、過加水分解条件下で好ましくは1〜10個の炭素原子、特に2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ペルオキシカルボン酸、及び/又は任意選択的に置換された過安息香酸を与える化合物が挙げられる。好適な物質は、指定された炭素原子数のO−アシル及び/若しくはN−アシル基、並びに/又は任意選択的に置換されたベンゾイル基を有する。好ましいのは、ポリアシル化アルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコールウリル、特にテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、N−アシルイミド、特にN−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホネート、特にn−ノナノイル−又はイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n−又はイソ−NOBS)、無水カルボン酸、特に無水フタル酸、アシル化多価アルコール、特にトリアセチン、二酢酸エチレングリコール及び2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン及び同様にトリエチルアセチルシトレート(TEAC)である。漂白活性化剤は、本発明の組成物中に含まれる場合には、組成物の約0.1〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%の濃度である。
【0095】
漂白触媒
本明細書での使用に好ましい漂白触媒としては、トリアザシクロノナンマンガンと関連錯体(米国特許第A−4246612号及び同第A−5227084号)、ビスピリジルアミンコバルト、ビスピリジルアミン銅、ビスピリジルアミンマンガン、そしてビスピリジルアミン鉄、並びに関連錯体(米国特許第A−5114611号)、及びペンタミンアセテートコバルト(III)並びに関連錯体(米国特許第A−4810410号)が挙げられる。本明細書に用いるのに好適な漂白触媒の完全な記述は、国際公開特許第99/06521号、34頁、26行〜40頁、16行に見出すことができる。漂白触媒は、本発明の組成物中に含まれる場合には、組成物の約0.1〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%の濃度である。
【0096】
金属手入れ剤
金属手入れ剤は、アルミニウム、ステンレス鋼及び非第一鉄金属(銀及び銅など)といった金属の変色、腐食又は酸化を、防止又は低減することができる。好適な例には、以下の1つ以上が挙げられる。
(a)ベンゾトリアゾール又はビス−ベンゾトリアゾールとこれらの置換誘導体を含むベンザトリアゾール。ベンゾトリアゾール誘導体は、芳香環上の利用可能な置換部位が部分的又は完全に置換されている化合物である。好適な置換基には、直鎖又は分枝鎖C1〜C20−アルキル基及びヒドロキシル、チオ、フェニル又はハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素など)が挙げられる。
(b)金属が酸化状態II、III、IV、V又はVIの1つにある、亜鉛、マンガン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、コバルト、ガリウム、及びセリウム塩及び/又は錯体からなる群から選択される金属塩及び錯体。1つの態様では、好適な金属塩及び/又は金属錯体は、硫酸Mn(II)、クエン酸Mn(II)、ステアリン酸Mn(II)、Mn(II)アセチルアセトネート、K2TiF6、K2ZrF6、CoSO4、Co(NO32及びCe(NO33、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛、水亜鉛土又は酢酸亜鉛からなる群から選択され得る。
(c)ケイ酸ナトリウム又はカリウム、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、結晶性フィロケイ酸塩、及びこれらの混合物を含むケイ酸塩。
【0097】
銀/銅腐食防止剤として作用する更に好適な有機及び無機レドックス活性物質が、国際公開WO 94/26860号及びWO 94/26859号に開示されている。
【0098】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の0.1重量%〜5重量%の金属手入れ剤を含み、好ましくは金属手入れ剤は亜鉛塩である。
【0099】
単位用量
単位用量形態の製品には、タブレット、カプセル、サッシェ、パウチなどが挙げられる。パウチ、特に多区画パウチが、本明細書に用いるのに好ましい。
【0100】
多区画パウチは、複数の区画を形成する複数の水溶性フィルムにより、形成される。このパウチは好ましくは、別の区画上に重ねておかれる(すなわち、上に配置される)2つの隣り合う区画を含む。この配置は、パウチの小型化、堅牢性及び強度に貢献し、更に、この配置は、必要とされる水溶性フィルムの量を最小化する。この配置は、3つの区画を形成するための3片のフィルムを必要とするだけである。パウチの堅牢性はまた、パウチの物理的一体性を妥協することなく、非常に薄いフィルムの使用を可能にする。このパウチは、使用が非常に容易であり、これは、定型的な形状のディスペンサー内で使用するために区画を折り畳む必要がないからである。パウチの少なくとも2つの区画は、2つの異なる組成物を含有する。本明細書では「異なる組成物」により、少なくとも1つの成分において異なる組成物を意味する。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つの区画は固体組成物を含有し、別の区画は液体組成物を含有し、これらの組成物は、固体の液体に対する比が、好ましくは約20:1〜約1:20、より好ましくは約18:1〜約2:1、更に好ましくは約15:1〜約5:1である。本発明のパウチは非常に可変的であり、それはこれが広範囲の固体:液体の比の値を有する組成物を収容できるからである。多くの洗剤成分が固体形態、好ましくは粉末形態、での使用に最も好適であるので、固体が液体に対して大きい比を有するパウチが特に好ましいことが判明している。本明細書で定義される固体:液体の比は、パウチ内の全ての固体組成物の重量と全ての液体組成物の重量との間の関係を指す。
【0102】
他の実施形態では、固体:液体の重量比は、約2:1〜約18:1、より好ましくは約5:1〜約15:1である。これらの重量比は、洗剤のほとんどの成分が液体形態である場合に好適である。
【0103】
好ましい実施形態では、2つの隣り合う区画は、同一であることができるが好ましくは異なる液体組成物を含有し、別の区画は、好ましくは粉末形態で、より好ましくは高密度化粉末で、固体組成物を含有する。固体組成物は、パウチの強度及び堅牢性に貢献する。液体組成物は、特に固体組成物が水分感受性成分(漂白剤など)を含む場合に、パウチの安定性に貢献する。これは、固体含有区画上に重ねておかれる区画が固体含有区画の上面(すなわち、固体/液体共有面)を完全に覆う場合に、なおさらそうである。
【0104】
ディスペンサーへの取り付けの理由のために、本明細書の単位用量製品は、正方形又は矩形の底面、及び、約1〜約5cm、より好ましくは約1〜約4cmの高さを有する。好ましくは、固体組成物の重量は約10〜約22グラム、より好ましくは約15〜約20グラムであり、液体組成物の重量は約0.5〜約4グラム、より好ましくは約0.8〜約3グラムである。
【0105】
本発明の多区画パウチは、溶解特性の点で非常に可変的である。好ましい実施形態では、異なる区画を形成する少なくとも2つのフィルムは、同一条件下で異なる溶解度を有し、これらが部分的に又は全体で包む組成物の中身を異なる時点で放出する。用語「溶解度」は、本明細書で使用されるとき、フィルムの総合溶解度ではなく、洗浄溶液内でパウチが破断し、その内容物を放出する時点を指すことを意図している。
【0106】
酵素は、酵素と漂白剤及びビルダー(それらは、酵素のカルシウムと結合することにより酵素を不安定にすることがある)との相互作用により、製品内で安定性を失う場合がある。加えて、洗浄溶液中の酵素の性能は、溶液、漂白剤、ビルダーなどのアルカリ性により損なわれる。好ましい実施形態では、多区画パウチの組成物の1つ、好ましくは固体組成物、は、漂白剤を含み、別の区画、好ましくは液体形態の組成物、は酵素を含む。酵素を含む組成物を包むフィルムの1つは、自動食器洗浄機の本洗いサイクル中に、漂白剤含有組成物を包むフィルムに先立って溶解し、これにより、漂白剤含有組成物の送達に先立って酵素含有組成物を洗浄液中に放出することもまた好ましい。これにより、酵素は最適条件下で作用することができ、他の洗剤活性物質との相互作用を回避できる。このパウチは、優れた洗浄を提供する。漂白剤含有組成物はまた、ビルダーを含むことが好ましい。
【0107】
多区画パウチの成分の制御放出は、フィルムの厚さ及び/又はフィルム材の溶解性の改変により、達成することができる。フィルム材の溶解性は、例えばPCT国際公開特許WO02/102,955の17及び18頁に記載されているようにフィルムの架橋により、遅らせることができる。すすぎ放出用に設計された他の水溶性フィルムが、米国特許第4,765,916号及び同第4,972,017号に記載されている。フィルムのワックス・コーティング(国際公開WO 95/29982号を参照されたい)は、すすぎ放出を助けることができる。pH制御放出手段、特に選択的なアセチル化度を有するアミノ−アセチル化多糖、が国際公開WO 04/111178号に記載されている。
【0108】
区画が異なる溶解度を有するフィルムで作られている異なる区画を有する多区画パウチによる遅延放出を得る他の手段が国際公開WO 02/08380号に教示されている。
【0109】
実施例で使用される略称
実施例において、省略された成分表記は以下の意味を有する:
【0110】
【表2】

【0111】
以下の実施例では、全ての濃度は、組成物(固体又は液体組成物のいずれか)の重量パーセントで値を付けられている。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
以下の表で一覧される組成物は、固体組成物(粉末形態)を含む第一区画と、液体組成物を含む、粉末区画上に重ねておかれる液体区画と、を有する多区画パウチの中に組み込まれる。使用されるフィルムは、Monosolにより供給されるMonosol M8630フィルムである。固体組成物の重量は17グラムであり、液体組成物の重量は2.6グラムである。
【0113】
このパウチはまた、製品1グラム当たり、0.2mgの活性変異型アミラーゼと、2mgの活性低温プロテアーゼと、を含む。
【0114】
【表3】

【0115】
例示されたパウチは、本明細書で以下に記載される条件下、自動食器洗浄機内において本明細書で以下に記載されるような汚れ負荷を洗浄するために使用される。洗浄する物品は、優れた光沢を呈する。
【0116】
基材/汚れ
●卵のついたCorning ware丸型キャセロール皿
○ 1片のバターを50ccの卵と共に電子レンジに4.5分間かける。
○ 1回の操作当たり2つのキャセロール皿
【0117】
●ステンレス鋼深鍋
○ 10グラムの調理及びブレンドを行ったKraft Macaroniとチーズとを塗りつける
○ オーブンで7分間にわたって焼く
○ 1回の操作当たり2つのステンレス鋼深鍋
【0118】
●陶製Vertex平皿
○ 5グラムの調理及びブレンドを行ったMinute Riceを塗りつける
○ 一晩乾燥させる
○ 1回の操作当たり2つの平皿
【0119】
●黒いセラミックス平皿
○ 卵、野菜、肉及びシリアルを含む5グラムの複合汚れ(TMD)を塗りつける
○ 一晩乾燥させておく
○ 1回の操作当たり4つの平皿
【0120】
●ステンレス鋼スパチュラ
○ 5グラムのTMD汚れを塗りつける
○ 一晩乾燥させておく
○ 1回の操作当たり4つのスパチュラ
【0121】
試験条件:
●4つの機械GE2600のセット
●水道水(136.8mg/L(8gpg))
●4つの製品
●48.9℃(120°F)の入口水温度
●通常のサイクル/加熱乾燥
●上記に列挙した基材を食器洗浄機内に配置する
●本洗いカップが開くときに50グラムのTMD汚れを加える

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)組成物1グラム当たり少なくとも0.05mgの活性アミラーゼであって、前記アミラーゼは、
a1)SEQ ID NO:1に対する以下の位置:9、26、149、182、186、202、257、295、299、323、339及び345における1つ以上の、好ましくは3つ以上の置換を有する変異体;および、
a2)存在する場合には好ましくはR118K、D183*、G184*、N195F、R320K及び/又はR458Kを含む、以下の位置:118、183、184、195、320及び458における1つ以上の、好ましくは全ての置換及び/又は欠失を有していてもよい変異体であるか;
又は
a3)配列がSEQ ID NO:5と示され、好ましくは以下の位置:M202、M208、S255、R172及び/又はM261の1つ以上において変異を含む、Bacillus sp.707由来のアミラーゼである、
活性アミラーゼと、
b)組成物1グラム当たり少なくとも0.1mgの低温プロテアーゼと、
を含む自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項2】
前記アミラーゼが以下のセットの変異の1つを含む、請求項1に記載の自動食器洗浄洗剤組成物:
(i) M9L+M323T;
(ii) M9L+M202L/T/V/I+M323T;
(iii) M9L+N195F+M202L/T/V/I+M323T;
(iv) M9L+R118K+D183*+G184*+R320K+M323T+R458K;
(v) M9L+R118K+D183*+G184*+M202L/T/V/I+R320K+M323T+R458K;
(vi) M9L+G149A+G182T+G186A+M202L+T257I+Y295F+N299Y+M323T+A339S+E345R;
(vii) M9L+G149A+G182T+G186A+M202I+T257I+Y295F+N299Y+M323T+A339S+E345R;
(viii) M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+M202L+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(ix) M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+N195F+M202L+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(x) M9L+R118K+G149A+G182T+D183*+G184*+G186A+M202I+T257I+Y295F+N299Y+R320K+M323T+A339S+E345R+R458K;
(xi) M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202L+R320K+M323T+R458K;
(xii) M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202T+R320K+M323T+R458K;
(xiii) M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202I+R320K+M323T+R458K;
(xiv) M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202V+R320K+M323T+R458K;
(xv) M9L+R118K+N150H+D183*+D184*+N195F+M202L+V214T+R320K+M323T+R458K;又は、
(xvi) M9L+R118K+D183*+D184*+N195F+M202L+V214T+R320K+M323T+E345N+R458K。
【請求項3】
前記低温プロテアーゼがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼの変異体であり、前記変異体がSEQ ID NO:2のプロテアーゼと比較して以下の位置:66、85、97、99、101、102、116、126、127、128、160、164、188、199及び216の1つ以上で変異を含む、請求項1又は2に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項4】
前記低温プロテアーゼが、SEQ ID NO:3に対して以下の変異:
(xvii) G116V+S126L+P127Q+S128A、
(xviii) S99G+V102N、
(xix) N74D+N85S+S101A+V102I、
(xx) V66A+N85S+S99G+V102N、
を含む群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項5】
組成物1グラム当たり少なくとも0.2mgの活性アミラーゼと、組成物1グラム当たり少なくとも1.5mgの活性プロテアーゼと、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項6】
リパーゼを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項7】
前記組成物が前記組成物の10重量%未満のリン酸塩ビルダーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項8】
再付着防止剤及び/又はスルホン化ポリマーを更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項9】
前記組成物が単位用量形態であり、前記組成物の重量が約10〜約25グラムである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項10】
前記単位用量形態が水溶性パウチ、好ましくは複数の区画を形成する複数のフィルムを有する多区画パウチであり、好ましくは前記パウチが別の区画上に重ねておかれる2つの隣り合う区画を含み、少なくとも2つの異なる区画が2つの異なる組成物を含有する、請求項9に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項11】
製品ディスペンサー内に前記パウチを配置する工程と、本洗いサイクル中にそれを放出する工程と、を含む、請求項9に記載の洗剤組成物を使用する、自動食器洗浄機における食器洗浄方法。
【請求項12】
低温での自動食器洗浄機における請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2011−517710(P2011−517710A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550305(P2010−550305)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050948
【国際公開番号】WO2009/112994
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】