説明

自在キャスターおよび該自在キャスターを備えた台車

【課題】軸受を使用しない、低コストな自在キャスターを提供する。
【解決手段】基台107と、車輪102が取り付けられた車輪支持部103とを備え、車輪支持部103の回転軸105は基台107の軸受部109に取り付けられた自在キャスターである。基台107に取り付けられ、車輪支持部103の、基台107に対向する面103a上を摺動する、第1摺動部111、および/または、車輪支持部103に取り付けられ、基台107の、車輪支持部103に対向する面107a上を摺動する、第2摺動部112を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車や重量物に取り付けられる自在キャスターに関する。より詳しくは、軸受を使用しない、低コストな自在キャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
天板の裏面にキャスターを備えた台車(運搬台車とも呼ばれる)が荷物の運搬に使用される。あるいは、重量部の移動を容易にすべく、該重量物の底面にキャスターを取り付けることもある。このようなキャスターは非特許文献1に記載され、固定キャスターと自在キャクターとに分類され、用途に応じて使い分けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】トラスコ中山株式会社、運搬台車カタログ、[online]、インターネット<URL:http://www.orange-book.com/common_img/orange_pdf/2010-2-1720.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、上記の2種類のキャスターのうち、自在キャスターを示す。自在キャスター301の基台307は、天板300に取り付けられている。回転軸304により車輪302が取り付けられた車輪支持部303には、基台307に対して水平面内で回転するように基台307の軸受部309に取り付けられている。
【0005】
車輪301の回転軸304は、車輪支持部303の回転軸305の延長線上になく、該延長線から離れている。そのため、床350からの反力F1により、車輪支持部302の回転軸305を鉛直面内でねじる力F2が働く。その結果、車輪支持部303の回転軸305と、軸受部309との間に軸受(ボールベアリングなど)が必要となり、コスト高を招く。したがって、本発明の目的は、軸受を使用しない、低コストな自在キャスターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自在キャスターは、基台と、車輪が取り付けられた車輪支持部とを備え、前記車輪支持部の回転軸は前記基台の軸受部に取り付けられた自在キャスターであって、
前記基台に取り付けられ、前記車輪支持部の、前記基台に対向する面上を摺動する、第1摺動部、および/または、
前記車輪支持部に取り付けられ、前記基台の、前記車輪支持部に対向する面上を摺動する、第2摺動部を備えたことを特徴とする。
【0007】
車輪支持部の、基台に対向する面と、基台の、車輪支持部に対向する面との間に、摺動部を備えることにより、床からの反力が分散され、車輪支持部の回転軸を鉛直面内でねじる力F2が減少する、もしくは、ほぼゼロとなる。その結果、軸受を使用しない、低コストな自在キャスターが実現できる。また、各摺動部がそれぞれの面を摺動するので、車輪支持部の回転に対する支障とはならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は従来の自在キャスターを示す概略図である。
【図2】図2は本発明に係る自在キャスターを示す概略図である。
【図3】図3(a)は基台107を図2のA方向から見た図であり、図3(b)は車輪支持部103を図2のB方向から見た図である。
【図4】図4は摺動部を示す図である。
【図5】図5は他の態様の摺動部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明に係る自在キャスターおよび台車の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、図面に示された態様に限られるものではない。図2は、本発明に係る自在キャスターを示す図である。自在キャスター101の基台107は、台車(図示しない)の天板100に取り付けられている。車輪102が回転軸104により取り付けられた車輪支持部103は回転軸105を備える。車輪支持部103が基台107に対して水基台107に平行な面内で回転するように、回転軸105は基台107の軸受部109に取り付けられ、ワッシャ108により回転軸105が抜けないようになっている。
【0010】
第1摺動部111は車輪111aと基部111bを有し、基台107に取り付けられている。車輪111aは、車輪支持部103の、基台107に対向する面103aの上を摺動する。逆に、第2摺動部112は車輪112aと基部112bを有し、車輪支持部103に取り付けられている。車輪112aは、基台107の、車輪支持部103に対向する面107aの上を摺動する。
【0011】
床150からの反力F1が、第1摺動部111が基台107を押す力F3と、車輪支持部103が第2摺動部112を押す力F4とに分散されるので、回転軸105を鉛直面内でねじる力F2が減少する、もしくは、ほぼゼロとなる。その結果、回転軸105と、軸受部109との間に軸受(ボールベアリングなど)が不要となり、低コストな自在キャスター101が提供できる。
【0012】
図3(a)は基台107を図2のA方向から見た図である。基台107の、車輪支持部103に対向する面107aには、複数の第1摺動部111が設けられている(図では車輪111aを省略し、基部111bのみ示している)。力を分散させる観点から、第1摺動部111は、軸受部109の中心Cを中心とした円121上に等角度で配置されている(図では、4個の第1摺動部111が90度の間隔で配置されている)。なお、円124は第2摺動部112が面107aを摺動する軌跡を示している。
【0013】
図3(b)は車輪支持部103を図2のB方向から見た図である。車輪支持部103の、基台107に対向する面103には、複数の第2摺動部112が設けられている(図では車輪112aを省略し、基部112bのみ示している)。第2摺動部112は、回転軸105の中心Cを中心とした円122上で、回転軸105に関して、車輪102の回転軸104と同じ側に配置されている。設計上の制約が許せば、反対側に配置してもよく、第2摺動部112を等角度に配置してもよい。なお、円123は第1摺動部111が面103aを摺動する軌跡を示している。
【0014】
次に摺動部を説明する。図4(a)において、車輪111a、112aと基部111b、112bとにより摺動部111、112が構成される。車輪111a、112aは車軸130を備え、基部111b、112bは軸受131を備えている。そして、図4(b)に示すように、車軸130が軸受131に嵌め込まれて摺動部111、112が組み立てれる。車軸130が嵌め込まれ易いように軸受131は合成樹脂製が好ましい。また、完成したキャスターでは、摺動部111、112は車輪支持部103と基台107とに挟まれるので、図4(c)にように、矩形凹部の軸受132としてもよい。この場合、車軸130が矩形凹部の軸受132の底面、両側面に接触して軸受されるので、軸受として十分に機能する。
【0015】
なお、車輪111a、112aは摺動しやすいように、回転方向が円121、122の接線方向になるように配置することが好ましい。
【0016】
図5は他の態様の摺動部を示す。図5(a)において、摺動部141は、基部142の凹部に球143を嵌め込まれ、蓋体144で押さえた構成を採る。図5(b)に示すように、球143の一部が突出し、車輪支持部103、基台107の面103aや107aを摺動する。摺動部141は車輪支持部103と基台107とに挟まれるので、蓋体144を省略してもよい。
【0017】
本発明の自在キャスターは、台車の天板や重量物の底面に取り付けることができる。例えば、天板の四隅にキャスターを取り付けた台車では、すべてのキャスターを本発明の自在キャスターにしてもよく、進行方向前方側あるいは後方側の2つのキャスターのみを本発明の自在キャスターにしてもよい。
【0018】
なお、本発明の自在キャスターの各部品の材質が問わないが、成型の容易さ、軽量化の観点から合成樹脂製が好ましい。
【符号の説明】
【0019】
101 自在キャスター
102 車輪
103 車輪支持部
104 回転軸
105 回転軸
107 基台
109 軸受部
111 第1摺動部
112 第2摺動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、車輪が取り付けられた車輪支持部とを備え、前記車輪支持部の回転軸は前記基台の軸受部に取り付けられた自在キャスターであって、
前記基台に取り付けられ、前記車輪支持部の、前記基台に対向する面上を摺動する、第1摺動部、および/または、
前記車輪支持部に取り付けられ、前記基台の、前記車輪支持部に対向する面上を摺動する、第2摺動部を備えたことを特徴とする自在キャスター。
【請求項2】
前記第1摺動部および前記第2摺動部の少なくとも一方は複数個備えた請求項1に記載の自在キャスター。
【請求項3】
前記第1摺動部および前記第2摺動部の少なくとも一方は複数個備え、前記回転軸を中心とする円上にある請求項1に記載の自在キャスター。
【請求項4】
前記第1摺動部および前記第2摺動部の少なくとも一方は複数個備え、前記回転軸を中心とする円上にあって、等角度で配置された請求項1に記載の自在キャスター。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の自在キャスターを備えた台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103531(P2013−103531A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246741(P2011−246741)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(398075851)株式会社ホシプラ (10)