自己シール組成物
【課題】強化材料を補足し、これによって漏出の可能性を低下させる、縫合糸組成物またはステープル組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分4を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する。第一の反応性成分4を含有するバットレスを組織上に配置する工程;第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および化学反応を開始させる工程。
【解決手段】少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分4を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する。第一の反応性成分4を含有するバットレスを組織上に配置する工程;第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および化学反応を開始させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年6月29日に出願された米国仮特許出願番号61/221,246に対する優先権および利益を主張する。この米国仮特許出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、自己シール移植物に関し、そしてより特定すると、第一の反応性成分および第二の反応性成分を含む、自己シール移植物に関する。
【背景技術】
【0003】
創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープルおよび縫合糸)は、外科手術において、例えば、組織を切除するため、組織を離断するため、および組織と器官との間に接続部を作製するために、通常使用されている。より特定すると、外科手術用ステープラーなどの創傷閉鎖デバイスは、数回繰り返して(直線状、円形、湾曲が挙げられる)、種々の型の外科手術(脈管、肥満学、胸郭および婦人科学が挙げられる)のために提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体(例えば、空気および血液)の漏出が、特定の手順について報告されている。1つの解決策は、さらなる強化材(例えば、バットレス)の使用を包含する。バットレスまたは外科用綿撒糸が、ステープル線に適用されて、このステープル線に対する強化および/または弱い組織に対する強化を提供し得る。使用において、ステープルまたは縫合糸は、現在、バットレスを通して発射または縫合される。しかし、強化材料を補足し、これによって漏出の可能性を低下させる、縫合糸組成物またはステープル組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する、自己シール移植物。
【0006】
(項目2)
前記創傷閉鎖デバイスが、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0007】
(項目3)
前記強化材料が、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0008】
(項目4)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、コーティングを構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0009】
(項目5)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、前記創傷閉鎖デバイスに選択的に堆積されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0010】
(項目6)
前記第一の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0011】
(項目7)
前記第一の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0012】
(項目8)
前記第二の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0013】
(項目9)
前記第二の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0014】
(項目10)
前記自己シール移植物が、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される合成材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0015】
(項目11)
前記ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリブタエステル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0016】
(項目12)
前記自己シール移植物が、天然コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される天然材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0017】
(項目13)
前記自己シール移植物がポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0018】
(項目14)
前記ポリマー薬物が、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0019】
(項目15)
前記第一の反応性成分と前記第二の反応性成分との相互作用が、ヒドロゲルを生じる、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0020】
(項目16)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の表面に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0021】
(項目17)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の内部に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0022】
(項目18)
少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備える自己シール移植物であって、該少なくとも1つのステープルと該バットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される、自己シール移植物。
【0023】
(項目19)
前記ステープルおよび前記バットレスのうちの少なくとも1つが、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0024】
(項目20)
前記自己シール移植物が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される少なくとも1つの反応性成分をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0025】
(項目21)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
化学反応を開始させるための手段、
を備えるシステム。
【0026】
(項目22)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0027】
(項目23)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0028】
(項目24)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
ヒドロゲルを形成するための手段、
を備えるシステム。
【0029】
(項目25)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置する工程;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および
化学反応を開始させる工程、
を包含する方法。
【0030】
(項目26)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0031】
(項目27)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0032】
(項目28)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置する工程;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および
ヒドロゲルを形成する工程、
を包含する方法。
【0033】
(摘要)
創傷閉鎖デバイスと強化材料とを有する医療デバイスが、インサイチュで反応して、自己シール移植物を作製する。
【0034】
(要旨)
本開示の自己シール移植物は、少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備え、この創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そしてこの強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する。より具体的には、この創傷閉鎖デバイスとしては、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片が挙げられ得る。この強化材料としては、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスが挙げられ得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、第一の反応性成分および第二の反応性成分のうちの少なくとも一方は、自己シールデバイスコーティングを構成する。他の実施形態において、第一の反応性成分および第二の反応成分のうちの少なくとも一方は、自己シールデバイス上に選択的に堆積される。
【0036】
第一の反応性成分および第二の反応性成分は、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択され得る。より具体的には、第一の反応性成分および第二の反応性成分は、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有し得る。
【0037】
第一の反応性成分と第二の反応性成分との相互作用は、ヒドロゲルを生じ得る。
【0038】
代替の実施形態において、この自己シールデバイスは、少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備え、この少なくとも1つのステープルとこのバットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される。このステープルは、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有するコーティングをさらに備え得る。このバットレスもまた、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有し得る。
【0039】
この自己シールデバイスは、天然材料および合成材料(例えば、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、ポリマー薬物、コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせ)を含有し得る。
【0040】
自己シールデバイスをインサイチュで作製する方法が包含され、この方法は、バットレスを組織上に配置する工程、少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、この少なくとも1つのステープルがこのバットレスに接触する、工程、および化学反応を開始させる工程を包含する。
【0041】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中以下に記載される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によって、強化材料を補足し、これによって漏出の可能性を低下させる、縫合糸組成物またはステープル組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、ステープルコーティングを備える外科手術用ステープルの側面斜視図である。
【図2】図2は、強化材料を備える外科手術用ステープラーの側面斜視図である。
【図3】図3は、ステープルを備える、図2の線A−Aに沿った外科手術用ステープルカートリッジの断面図である。
【図4A】図4Aは、バットレスを通して組織内へと発射されたステープルを図示する、本開示の1つの実施形態の斜視図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの一部の拡大図である。
【図5】図5A〜図5Bは、反応性基がNHSエステル基および第一級アミンである、本開示の1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図6】図6A〜図6Bは、反応性基がカルボジイミド基および第一級アミンである、本開示の1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図7A】図7Aは、本開示による1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図7B】図7Bは、本開示による別の実施形態を図示する側面斜視図である。
【図8】図8は、本開示による別の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、自己シール性である医療移植物に関する。具体的には、この自己シール移植物は、第一の反応性成分を含有する創傷閉鎖デバイス、および第二の相補的反応性成分を含有する強化材料を備える。この第一の反応性成分およびこの第二の反応性成分は、未反応状態で、デバイスの表面または内部に配置される。ある実施形態において、第一の反応性成分は、第二の相補的な反応性成分とインサイチュで選択的に反応する。より具体的には、相互作用または物理的接触の際に、第一の成分と第二の成分とが反応する。特定の実施形態において、生理学的流体または溶液(例えば、水または生理食塩水(調整されたpHもしくは等張性))が、これらの2つの成分間の反応を開始することを補助し得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「組織」としては、肺、腸、皮膚、脂肪、筋膜、骨、筋肉、腱、靭帯、中実器官、管腔、管、リンパ、神経、および血管などの組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「生理学的流体」としては、血液、血漿、腹水(peritoneal fluid)、大脳脊髄液、尿、リンパ液、滑液、硝子体液、唾液、胃腸腔の内容物、胆汁、および気体(例えば、CO2)などの流体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
用語「相補的」とは、本明細書中で使用される場合、第二の反応性成分が第一の反応性成分と選択的または優先的に反応するように化学的に調整されていることを意味する。換言すれば、個別には、これらの2つの成分は安定であるが、(インサイチュで)一緒にされると、化学反応が開始される。より具体的には、第一の反応性成分は、相補的な第二の成分と接触しなければ、実質的な化学変化を起こさない。一旦、インサイチュで物理的に接触すると、両方の反応性成分が化学変化(例えば、架橋ポリマーの形成)を起こし、自己シール移植物を作製する。
【0048】
一般に、自己シール移植物は、第一の反応性成分を含有する強化材料を備え、一方で、創傷閉鎖デバイスは、第二の相補的反応性成分を含有する。図1〜図3は、第一の反応性成分でコーティングされたステープル2(創傷閉鎖デバイス)を備える本開示の1つの実施形態を図示する。この創傷閉鎖デバイスは、第二の相補的反応性成分を含むバットレス20(強化材料)とインサイチュで一緒になる。より具体的には、図1は、第一の反応性成分4でコーティングされたステープル2を図示する。一般に、ステープル2は、ステープルバックスパン2bにより間を接続されたステープルレッグ2aを備える。第一の反応性成分4は、コーティングの形態で図示されているが、第一の反応性成分は、他の形態(反応性成分をポリマー樹脂内に配合すること、反応性成分の局在デポーの選択的な適用、または未反応の第一の反応性成分を自己シールデバイス内に他の様式で包埋することが挙げられるが、これらに限定されない)でステープル上に存在し得る。ステープル2は、例えば、浸漬コーティング技術を使用してコーティングされ得るが、他のコーティング方法が当業者の知識の範囲内であり、後に議論される。図示においては、ステープル2の全体がコーティングされているが、ステープル2の一部分のみがコーティングされ得ることもまた想定される。例えば、特定の実施形態において、ステープルレッグ2aがコーティングされ得、一方で、ステープルバックスパン2bはコーティングされないままである。代替の実施形態において、このステープルは、このステープルの選択的な表面が第二の反応性成分(および/または組織)と架橋するようにパターン付けされたコーティングを配置され得る。異なる列のステープル(1つの外科手術用ステープラー(例えば、Covidien,North Haven,CT製のEndoGIATM)において、)が、異なる反応性成分を有し得るか、または反応性成分の異なるパターンをステープル表面上に備え得ることもまた、想定される。例えば、ステープルの最も内側の列が、(強化材料および/または組織に対して)最も高度な架橋を有し、一方で、ステープルの最も外側の列が、(強化材料および/または組織に対して)より低い程度の架橋を有することが、有用であり得る。
【0049】
図2〜図3を参照すると、複数のステープル2が、ステープル2を組織内に発射するために、装填ユニット30内に配置されている。図2は、第二の相補的反応性成分を含むバットレス20を図示する。バットレス20は、例えば、単一のポリマー層状シートとして図示されているが、バットレスは単一の層状シートに限定されないことが理解される。第二の相補的反応性成分22は、コーティングの形態で図示されているが、第二の相補的反応性成分22は、他の形態(例えば、樹脂内に配合すること、バットレス内への糸/フィラメントの選択的な織り込み、または反応性成分の局在デポーの選択的な適用)でバットレス20に存在し得る。バットレス20は、当業者の知識の範囲内である任意の技術を使用してコーティングされ得る。図示においては、バットレス20の全体がコーティングさているが、バットレス20の一部分のみがコーティングされ得ることもまた想定される。例えば、特定の実施形態において、バットレスの第一の表面20aが反応性成分を含み得、一方で、第二の表面20bは、反応性成分を含まない。代替の実施形態において、バットレスの第一の表面および第二の表面は、異なる反応性成分でコーティングされ得るか、または異なる反応性成分を他の様式で含み得る。例えば、第一の表面20aは、(第一の反応性成分と反応するための)第二の反応性成分でコーティングされ得、一方で、第二の表面20bは、組織表面に選択的に架橋するための第三の反応性成分でコーティングされ得る。強化材料はまた、その表面に選択的にパターン付けされた第二の反応性コーティング、またはこの強化材料内に選択的に組み込まれ/配置された第二の反応性コーティングを有し得る(例えば、局在デポー)。
【0050】
バットレス20は、ステープルカートリッジ10に隣接して配置される(図2〜図3)が、バットレス20がアンビル14に対して配置されること、またはバットレス20がカートリッジ10とアンビル14との両方に対して配置され得ることもまた、想定される。バットレス20は、装填ユニット30に予め装填されて提供され得るか、または代替例において、バットレス20は、装填ユニット30に、手術室で移植前に取り付けられ得ることもまた、想定される。使用され得る一体化されたバットレスの1つの例は、DUET TRSTM(Covidien,North Haven,CT)であり、2007年3月6日に出願された米国仮特許出願番号60/905,532(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0051】
図3は、線「A−A」に沿って見た、ステープルポケット16内のステープル2の列の別の図を図示する。バットレス20は、ステープル2が発射される場合に、ステープルのレッグ2aが最初にバットレス20に貫入するように、カートリッジ表面10aに隣接して配置され、次いで第一の組織表面(図示せず)を穿孔し、次にステープルレッグ2aが第二の組織表面(図示せず)を出、ここでステープルレッグ2aがアンビル14上のステープルバケット(図示せず)に接触し、ステープルレッグ2aを第二の組織表面内に戻すように曲げ、図4A〜図4Bに図示するような実質的に「B」字型のステープル形成を完了する。ステープル2がバットレス20を通してインサイチュで発射されると、生理学的流体が第一の反応性成分と第二の反応性成分とを混ぜ合わせ、化学反応を開始させ、自己シール移植物を生じる。
【0052】
数秒〜数分以内で、第一の反応性成分と第二の反応性成分とは化学的に反応し、自己シール移植物を作製する。一旦、未反応成分がインサイチュで物理的に接触させられると、これらの2つの成分が混合し、そして架橋ポリマー網目構造を形成する。体腔からの生理学的流体または水分が、これらの2つの反応性成分の混合を補助し得る。一旦、架橋ポリマー網目構造(ヒドロゲル)が形成されると、膨潤したヒドロゲルは、存在するあらゆる間隙空間をシールする。例えば、ステープルレッグ上に存在するヒドロゲルが膨潤し得、組織内またはバットレス内のあらゆる間隙空間をシールする。
【0053】
より具体的には、図5に図示される1つの実施形態において、自己シール移植物75は、表面に数個の第一級アミン基が結合しているステープル80を備える。これらの第一級アミンは、コーティングの形態、またはデバイス80の表面に官能基を化学的に付着/堆積させる他の手段であり得る。強化材料90は、その表面にスクシンイミジル官能基が付着されて図示されている。ここでまた、これらの官能基は、本開示において詳述される種々の手段を使用して、このデバイスの表面に付着され得るか、またはこのデバイス内に包埋され得る。一旦、ステープル80および強化材料90が、約7〜約10、ある実施形態においては約7.5〜約9の所定のpH範囲の水分(水、生理食塩水または他の生理学的流体)の存在下で、インサイチュで接触させられると、これらの2つの反応性成分が架橋する。2つの反応性成分が強化材料90とステープル80とを互いに化学的に架橋させてヒドロゲルを作製する、自己シールデバイス75が作製される(図5B)。さらに、このヒドロゲルは、周囲環境からさらなる流体を取り込み得、この周囲領域に見出されるあらゆる間隙空間をシールする。得られるヒドロゲルは、加水分解により分解し得、経時的に水溶性フラグメントを放出する。自己シール移植物は、好ましい時間範囲(例えば、約1日〜約30日)で分解するように化学修飾され得る。
【0054】
図6A〜図6Bは、図5Aおよび図5Bと類似の実施形態を図示し、従って、類似である全ての部分は、プライム印を用いて表され、そしてその違いのみが以下に記載される。多官能性第一級アミン基が表面に配置されたステープル80’が図示されている。カルボジイミド官能基が表面に付着された強化材料95が図示されている。一旦、ステープル80’と強化材料95とが、約7〜約10、ある実施形態においては約7.5〜約9の所定のpH範囲の水分(水、生理食塩水または他の生理学的流体が挙げられる)の存在下で、インサイチュで接触させられると、これらの2つの反応性成分が架橋する。2つの反応性成分が強化材料95とステープル80’とを互いに化学的に架橋させて、ヒドロゲルを形成する、自己シールデバイス75’が作製される(図6B)。
【0055】
本開示の第一の反応性成分および第二の反応性成分は、天然または合成の多官能性第一級アミンを含み得る。用語「多官能性」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの第一級アミン基を含む第一級アミンを意味する。1つの例において、多官能性第一級アミンは、創傷閉鎖デバイスのコーティングを構成し得、この多官能性第一級アミンは、数種の方法(以下に詳述される)を利用して、自己シール移植物に組み込まれ得ることが理解される。別の例において、強化材料は、全体として、アミノ化されたデキストラン足場を含み得、これはスクシンイミジル官能性ポリマーと選択的に反応性である。適切な天然または誘導体化された第一級アミンは、コラーゲン、アルブミン、エラスチン、多糖類(例えば、キトサン、アミノ化デキストラン、修飾セルロースおよびヒアルロン酸)、ポリリジンまたはリジン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたはマクロマー(macromer)バージョンを含む)、ポリアルギニンまたはアルギニン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたは多量体バージョンを含む)、ポリヒスチジンまたはヒスチジン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたはマクロマーバージョンを含む)、ならびにこれらの組み合わせなどの材料(組織を含む)において見出される。適切な合成アミンとしては、第一級アミン官能基を有するビニルモノマー(例えば、アクリルアミド)およびそのコポリマー、リジンで修飾されたポリエステル(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGポリプロピレングリコール、PEG−co−シリコーンならびにこれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な多官能性アミンとしては、上に列挙されたものが挙げられる。
【0056】
さらなる適切な第一の反応性成分または第二の反応性成分は、スクシンイミジル官能性ポリマー(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(SNHS)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル(ENHS)およびこれらの組み合わせ)が挙げられる材料を含有する。スクシンイミジルベースのエステルは、上記多官能性第一級アミンと反応性である。一般に、創傷閉鎖デバイスがNHSエステル反応性基を含む場合、第二の相補的反応性基は、多官能性第一級アミンを提供する表面を構成することが理解されるべきである。
【0057】
さらなる実施形態において、第一の反応性成分または第二の反応性成分は、求電子性官能基を含み得、一方で、相補的な第二の成分または第一の成分は、求核性官能基を含み得る。求電子性官能基としては、上に列挙されたスクシンイミジル含有ポリマー(例えば、SNHSおよびENHS)が挙げられる。求電子性基のさらなる非限定的な例としては、カルボニルイミダゾール、イソシアネート、ビニルスルホン、マレイミド、およびp−ニトロフェニルが挙げられる。適切な求核性官能基としては、チオール基に加えて、上に列挙されたもののような天然多官能性第一級アミンおよび合成多官能性第一級アミンが挙げられる。他の適切な第一および第二の求核反応性成分および求電子反応性成分、ならびに作製する方法は、米国特許第6,887,974号;同第7,332,566号;同第6,566,406号;同第7,009,034号;同第6,165,201号;同第6,818,018号、および2008年7月8日に出願された米国特許出願番号61/078,968に開示されており、これらの主題は、本明細書中に参考として援用される。
【0058】
本開示のヒドロゲルを形成するために利用される、第一の反応性成分および第二の反応性成分は、生体適合性かつ水溶性であるコア基を有し得る。本明細書中で使用される場合、水溶性とは、水中への少なくとも約1g/lの溶解度をいう。このコア基は、最低3つのアームを有する水溶性分子であり得る。コア基のアームとは、ポリマーアームの重合を開始する架橋可能な官能基を、多官能性中心に接続する、化学基の線状の鎖をいう。この多官能性中心と付着したアームとの組み合わせが、コア基を形成し得る。
【0059】
ある実施形態において、コア基は、水溶性ポリマーであり得る。使用され得るこのようなポリマーの例としては、例えば、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コポリエチレンオキシドブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー));ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(「PVA」)およびポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」));タンパク質(例えば、ポリ(アミノ酸));多糖類(例えば、デキストラン)、ならびに上記のものの誘導体および上記のものの組み合わせが挙げられる。
【0060】
他の実施形態において、多官能性中心は、ポリオールを含み得、このポリオールは、ある実施形態において、モノマー基の開始のためのヒドロキシル基を有し得、これらのモノマー基は、コアのアームを形成し得、そしてこのアームは、架橋性基で官能基化され得る。アームの所望の数に依存して、このポリオールは、約3個〜約12個のヒドロキシル基、ある実施形態においては、約4個〜約10個のヒドロキシル基を有し得る。このポリオールはまた、保護されているかまたは保護されていない他の官能基を有し得る。適切なポリオールとしては、グリセロール、マンニトール、還元糖(例えば、ソルビトール)、ペンタエリトリトール、およびグリセロールオリゴマー(ヘキサグリセロールが挙げられる)、ならびにこれらの誘導体およびこれらの組み合わせが挙げられる。当業者に容易に明らかになるように、ヒドロキシル基の数は、マルチアームコア上のアームの数と等しいべきである。すなわち、選択される特定のポリオールは、得られる多官能性コア基のアームの数を決定するべきである。ある実施形態において、上に記載されたポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)は、エチレンオキシドとポリオールとの重合を開始することにより形成され得、これによって、マルチアームコアのアームを形成し、これがさらに、反応性成分で官能基化され得る。
【0061】
従って、ヒドロゲルは、第一のセットの官能基を有するマルチアームコアと、第二のセットの官能基を有する低分子量ポリマーとから作製され得る。このマルチアームコア上のアームの数は、約3個〜約12個、ある実施形態においては、約5個〜約10個であり得る。
【0062】
例えば、マルチアームコアは、N−ヒドロキシスクシンイミド(反応性成分)を末端に有する親水性アーム(例えば、ポリエチレングリコール)を有し得、これらのアームの合わせた分子量は、約1,000〜約40,000である。明白に記載される境界内である全ての範囲および値が想定されることを、当業者は即座に理解する。いくつかの実施形態において、6個のアームから8個のアームまでを有するマルチアームコアを利用することが望ましくあり得る。個々のアームの分子量は、約250〜約5000、ある実施形態においては、約1000〜約3000、他の実施形態においては、約1250〜約2500であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、6アームポリマーコアまたは8アームポリマーコアは、第一の反応性成分としての低分子量ポリマー(例えば、トリリジン)と反応させられ得る。このトリリジンは、第二の反応性成分を架橋するための複数の反応点を提供し、そしておそらく(作用の特定の理論に限定されない)、収縮または膨潤の意味での比較的小さい移動を可能にする。このような移動は、おそらく、マルチアームコア(これらは比較的大きく、そしてより動きやすい)に関連する。従って、他の低分子(例えば、約100〜約5000、ある実施形態においては、約300〜約2500、他の実施形態においては、約500〜約1500の分子量を有する分子)が、トリリジンの代わりに使用され得る。このような低分子は、少なくとも約3個の官能基、ある実施形態においては、約3個〜約16個の官能基を有し得る。これらの明白に記載される値の間の全ての範囲および値が想定されることを、当業者は理解する。いくつかの場合において、ジリジンおよび/またはテトラリジンが、低分子量前駆体として利用され得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、自己シールデバイスは、pH活性化剤をさらに含有し得る。このpH活性化剤は、水性環境への曝露後に局所的なpH変化を生じて、ヒドロゲルの形成を加速または開始し得る。例えば、pH活性化剤としては、固体ホウ酸塩結晶(例えば、Na2B4O7・10H2O)が挙げられ得るが、他の塩ベースの材料または他の材料が使用され得る。代替例において、pH変更剤(例えば、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなど)が使用され得る。pH活性化/変更剤は、種々の方法(コーティング、デバイス内への配合、接着層としての塗布、デバイスに沿った局所デポーの適用などが挙げられるが、これらに限定されない)を利用して、デバイスに装填され得る。
【0065】
図7A〜図7Bは、2つの成分が反応して自己シールデバイスを作製した後の、本開示の2つの実施形態を図示する。より具体的には、図7Aは、第二の反応性成分を含有する強化材料60を通して発射された、第一の反応性成分を有する創傷閉鎖デバイス50(ステープル)を図示する。図7Aは、ステープル50とバットレス60との間でのヒドロゲル70の形成を生じる、自己シールデバイスの1つの実施形態を図示する。一旦、これらの2つの反応性成分が混合されると、第一の反応性成分と第二の反応性成分との間での物理的接触が起こる場所に隣接する領域において、架橋構造が形成される。新たな架橋構造は、ヒドロゲル形成の存在により説明され得る。いくつかの実施形態において、弱化した組織または他に損傷を受けた組織において、ヒドロゲル70は、周囲の組織におけるあらゆる残留空間をシールし得る。さらに、ヒドロゲルは、空間充填材であり得、そして特定の位置において優先的に膨潤するように調整され得る。例えば、8アームPEGヒドロゲル(これは、より低い膨潤を示す)と比較して、より大きい膨潤特性を有するヒドロゲル(例えば、4アームPEGヒドロゲル)が、増加した流体を取り込むように、自己シールデバイスに優勢に配置され得る。経時的に、このヒドロゲルは、周囲の組織からさらなる流体を取り込み得る。
【0066】
図7Bは、ステープルレッグ100aがバットレス120と比較してより大きい膨潤を示す、別の実施形態を図示する。両方の実施形態において、ヒドロゲルは、ステープルレッグのすぐ隣の、ステープルレッグとほぼ同心の領域において形成され、そしてステープルと強化材料との間の界面において重なり得る。第一の反応性成分および第二の反応性成分について選択される材料に依存して、強化材料または創傷閉鎖デバイスのうちのいずれかが、異なる変動する程度の膨潤(負の膨潤を含む)または流体取り込みを示し得る。異なるまたは変動する程度の膨潤を有する材料の例は、2007年3月5日に出願された米国仮特許出願番号11/714,028(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。例えば、内側または近位の列のステープルは、外側/遠位の列のステープルよりも大きく膨潤し得、創傷のより近くでより大きい止血を生じ得る。強化材料は、特定の位置で優先的に膨潤し得ることもまた想定される。
【0067】
図7A〜図7Bに図示されるように、(第一の反応性成分と第二の反応性成分との)化学反応は、ヒドロゲルの形成を包含する。用語「ヒドロゲル」とは、本明細書中で使用される場合、溶媒(例えば、水)を吸収して、認識できるほどには溶解せずに急激な膨潤を起こし、そして可逆的変形が可能な三次元網目構造を維持する材料を包含する。ヒドロゲルは、従来、水で膨潤する架橋ポリマー構造であり、これは、共有結合、イオン架橋、絡まりによる物理的架橋、会合結合(例えば、水素結合または強いファンデルワールス相互作用)、または2つ以上の高分子鎖のクリスタリットのうちのいずれかを含む。架橋は、ヒドロゲル構造内における接続点(炭素原子であり得る)を示すが、架橋はまた、小さい化学的な橋であり得る。架橋はまた、ファンデルワールス力に起因する高分子鎖の会合、または水素結合により形成される凝集であり得る。ヒドロゲルはまた、永続的または半永続的な物理的絡まりであり得る架橋、あるいはクリスタリットを形成する規則的な鎖であり得る架橋を含み得る。
【0068】
ヒドロゲルは、ホモポリマーヒドロゲルであっても、コポリマーヒドロゲル(2つ以上のモノマー単位(これらのうちの一方は親水性でなければならない)の架橋により生成される)であっても、マルチポリマーヒドロゲル(3つ以上のコモノマーの反応により生成される)であっても、相互侵入ポリマーヒドロゲル(第一の網目構造を調製し、次いでモノマー中で膨潤させることにより生成される)であってもよい(Biomaterials Science,第2版,2004,pp.100−107)。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態において、「スマートヒドロゲル」を構成する材料が利用され得る。スマートヒドロゲルとしては、その膨潤挙動が外部環境(例えば、身体)に依存する材料が挙げられる。例えば、ヒドロゲルは、pH、温度、イオン強度、酵素反応、化学反応、および電気刺激または磁気刺激が挙げられるがこれらに限定されない要因に応答して、膨潤(または収縮)し得る。スマートヒドロゲルが刺激に迅速に応答する能力は、これらのヒドロゲルを容易に、薬物送達用途に適するようにする。
【0070】
代替の実施形態において、第一の反応性材料は、特定されたデポーとしてデバイス上に存在し得るか、またはこのデバイスの隙間に組み込まれ得、第二の相補的反応性成分と選択的に反応する。図8に図示されるように、織メッシュ200は、第一の反応性成分(例えば、スクシンイミジル官能性反応性基)を、メッシュ表面に沿った特定された隙間210に備える。これらのスクシンイミジル官能基は、このメッシュ内に織り込まれても、このメッシュの特定の隙間に堆積されても、他の様式で組み込まれてもよい。メッシュ200と相互作用する鋲300は、第二の反応性成分(例えば、リジン残基)でコーティングされる。鋲300がメッシュ200を通して発射され、メッシュ200を組織400に固定すると、第一の反応性成分と第二の反応性成分とが相互作用して、メッシュ200に沿ってシールされた領域を作製し、これがメッシュ200を適所に固定することを補助する。
【0071】
別の実施形態において、強化材料または創傷閉鎖デバイスは、特定の反応性基で満たされ得るデポーまたはレザバを含み得る。例えば、粒子性コーティングが、集中した量の反応性成分を有するレザバまたは領域を、自己シール移植物の表面に作製するために使用され得る。別の例において、デポーは、空隙または空の空間をデバイス内に製造することによって、作製され得る。この空隙または空の空間は、後に、反応性成分で満たされ得る。これらの空隙は、連続気泡網目構造であっても不連続気泡網目構造であってもよい。製造方法としては、機械切断(例えば、レーザー切断)、凍結乾燥、粒子浸出、圧縮成形、相分離、気体発泡(例えば、CO2などの内部発泡剤)、または細孔形成剤(porogen)(例えば、塩粒子)の使用などの方法が挙げられる。空隙は、射出成形などの方法、または上に列挙された技術が挙げられる標準的なコーティング技術を使用して、反応性成分で満たされ得る。
【0072】
本開示の自己シール移植物は、中実構造体と多孔性構造体との両方を包含する。多孔性構造体は、連続気泡発泡体であっても不連続気泡発泡体であってもよく、当業者の知識の範囲内である技術を使用して調製される。多孔性構造体としては、織布(例えば、メッシュ)、フェルト、移植片および発泡体(凍結乾燥された発泡体もしくは足場が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、移植物は、少なくとも1つの層から構築され得る。いくつかの実施形態において、移植物は、多層積層構造体(例えば、発泡体またはフィルム)を備え得る。多層積層構造体の1つの非限定的な例としては、織られた外科手術用メッシュが挙げられ、これはさらに、接着防止コーティングを備える。他の実施形態において、コーティングがさらに、本開示の移植物に塗布されて、性能特徴(例えば、潤滑性、外科医の取り扱い、湿潤性、組織の一体性など)を改善し得る。例えば、強化材料は、水溶性層(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))でコーティングされ得る。PVPが(数秒〜数分以内で)溶解するにつれて、反応性成分が周囲領域に放出され得、自己シール移植物を作製する。
【0073】
別の例において、コラーゲンバットレス(強化材料)が、第一の反応性成分としてのSNHSエステルポリマーでコーティングされたステープルを使用して、肺組織に適用され得る。この実施形態において、第一の反応性成分は、肺組織と反応することに加えて、このコラーゲンバットレスと選択的に相互作用し得る(コラーゲンは、多官能性第一級アミンを含む)。肺組織もまた第一級多官能性アミンを含むので、肺組織もまた、これらのステープルと選択的に相互作用することが留意されるべきである。
【0074】
以下の説明において、用語「生分解性」とは、本明細書中で使用される場合、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含するように定義される。生分解性とは、材料が身体条件下(例えば、酵素分解または加水分解)で分解するかまたは構造的一体性を失うこと、あるいは身体内の生理学的条件下で、分解生成物が身体により排出可能または吸収可能であるように(物理的または化学的に)分解することを意味する。
【0075】
反応性成分に加えて、自己シール移植物を構築するために使用される他の材料は、生分解性材料(例えば、合成材料および天然材料)を含有し得る。例えば、図1に図示される強化材料は、グリコリド、TMC、ジオキサノンコポリマーを含有し得、これはさらに、反応性成分でコーティングされる。強化材料は、特定のポリマーまたはコポリマーに限定されないことが理解される。適切な合成生分解性材料としては、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、δ−バレロラクトン、1−ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテラート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカーボネート))、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤)から作製されるポリマーなどのポリマー、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。
【0076】
本明細書中上で言及されるポリマー薬物は、骨格がポリマー薬物を含むポリマーを含み得るか、または代替例において、ポリマー薬物は、ペンダント基もしくは側鎖がポリマー薬物を含むポリマーを含み得る。1つの例において、強化材料(例えば、バットレス)は、抗炎症組成物(例えば、ポリアスピリン)の成型フィルムを含み得る。分解性ポリマー薬物はまた、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されないポリマーを含み得る。
【0077】
天然ポリマーもまた、本開示の自己シール移植物を構築するために使用され得、天然ポリマーとしては、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、多糖類(例えば、セルロース(カルボキシメチルセルロースが挙げられる)、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネートおよびグリコサミノグリカン)、ヒアルロン酸、ガット、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、組換えコラーゲン)を包含する。タンパク質(例えば、エラスチン、アルブミン、カゼイン)もまた、本開示を構成し得る。さらに、天然材料は、上に列挙された材料の化学修飾(例えば、組換えポリマーアナログ、アミノ化ポリマーアナログ、スルホン化ポリマーアナログ、およびカルボキシル化ポリマーアナログ)を含む。
【0078】
特定の用途において、強化材料および創傷閉鎖デバイスの内の少なくとも一方が、非生分解性材料を含有することが好ましくあり得る。1つの非限定的な例において、非生分解性の創傷閉鎖デバイスを有することが好ましくあり得る。適切な材料としては、フッ素化ポリマー(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリプロピレン、フルオロPEG)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリブタエステル、ポリエチレングリコール、ポリアリールエーテルケトン、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。さらに、非生分解性のポリマーおよびモノマーは、互いに組み合わせられ得、そしてまた、種々の生分解性のポリマーおよびモノマーと組み合わせられて、自己シール移植物を作製し得る。
【0079】
特定の実施形態において、本開示による自己シール移植物は、少なくとも部分的に、形状記憶ポリマーを使用して構築され得る。形状記憶ポリマーとは、外部刺激(例えば、温度、電流、光、pHなど)により誘導される、変形状態(一時的な形状)からその元の(永続的な)形状へと戻る能力を有する、スマート材料である。形状記憶ポリマーのハードセグメントおよびソフトセグメントを調製するために使用される適切なポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、およびウレタン/ブタジエンコポリマーならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
他の実施形態において、金属または金属合金が、少なくとも創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープルまたは縫合糸)を構成し得る。適切な金属および金属合金は、チタン、ニッケルチタン、鋼、マグネシウムベースの合金、マンガンベースの合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。本開示の金属または金属合金は、形状記憶特徴をさらに有し得るか、または代替例においては、生分解性であり得る。
【0081】
いくらかの疾患患者集団において、特定の組織は、他の組織より弾力性が低くあり得る。例えば、患者が糖尿病であるかまたは化学療法処置を受けている場合、その患者の組織は、他の健常な患者と比較して、弾力性が低くあり得る。ステープルサイズ、組織特性および選択される強化材料に依存して、組織および強化材料の弾力性応答は変動する。小さい穴が、バットレスに、そしてステープルレッグを同心状に囲む領域の組織に潜在的に、存在し得る。本開示のいくつかの実施形態は、これらの小さい穴をシールすることを補助し、これは、流体の漏出を防止し得る。本開示の実施形態はまた、組織における強化材料の安定化を増大させ得る。他の実施形態において、自己シールデバイスは、止血材料として働き得、血液凝固を促進するか、または凝固カスケードの促進を補助する。
【0082】
第一の反応性成分および第二の反応性成分は、種々の方法を使用して、移植物に適用され得るか、または移植物に組み込まれ得る。1つの実施形態において、創傷閉鎖材料および/または強化材料は、コーティングの形態で、反応性成分を含有し得る。医療移植物をコーティングする方法は、当業者の知識の範囲内であり、そしてスプレー(すなわち、超音波または電子スプレー)、ブラッシング、浸漬、ドリップコーティング、溶媒エバポレーション、レーザーおよびインクジェット印刷などが挙げられるが、これらに限定されない。コーティング組成物は、溶液、分散物、エマルジョンまたは他の任意の均質混合物もしくは不均質混合物の形態であり得る。さらに、溶媒が、コーティングを移植物に塗布するために使用され得る。適切な溶媒は、当業者の知識の範囲内であり、極性溶媒と非極性溶媒との両方が挙げられる。
【0083】
第一の反応性成分および第二の反応性成分はまた、他の方法(例えば、反応性成分が樹脂内に包埋または配合され得る)を利用して、デバイスに組み込まれ得る。例えば、多官能性第一級アミンは、ポリエステルに配合され得、そして押し出し(または共押し出し)されて、繊維などの移植物を作製し得る。さらに、このような繊維は、他の繊維と編組または相互織込みされて、マルチフィラメント移植物(例えば、編組縫合糸またはメッシュ)を作製し得る。複数のフィラメントが、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、混合、加撚、編組、織ること、絡めること、および編むこと)を使用して、組み合わせられ得る。例えば、複数のフィラメントは、単に合わせられて、糸(yarn)を形成し得る。別の例として、複数のフィラメントは、編組され得る。
【0084】
先に議論されたように、本開示の自己シール移植物は、少なくとも1つの強化材料、および1つの創傷閉鎖デバイスを備える。例示的な強化材料としては、例えば、外科用綿撒糸、バットレス、パッチ、足場、テープ、フェルト、およびメッシュ(生物学的メッシュおよび複合メッシュを含む)などの強化デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の適切な創傷閉鎖デバイスとしては、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の自己シール移植物は、上に列挙されたものが挙げられる、生分解性材料と非生分解性材料との両方を含み得る。
【0085】
さらに、移植物の任意の部分が、生物学的に受容可能な添加剤(例えば、触媒、緩衝塩、塩、無機充填材、可塑剤、酸化防止剤、色素、顔料、画像増強剤(MRI、CT、X線、およびX線透視造影剤)、希釈剤、生物活性剤(例えば、薬学的薬剤および医療薬剤)ならびにこれらの組み合わせ)を含有し得、これらは、移植物にコーティングされ得るか、または材料に含浸され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、可視化剤(色素または顔料が挙げられる)は、外科手術手順中に可視性を改善するために有用であり得る(デバイスを通って、またはデバイスの周囲を流れる流体を可視化することを含む)。可視化剤は、医療用移植可能デバイスにおいて使用するために適切な、種々の非毒性有色物質(例えば、FD&C BLUE(#1、#2、#3、および#6)、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、または合成縫合糸において通常見られる有色色素)のうちのいずれかから選択され得る。ある実施形態において、緑色または青色のような色が望ましくあり得、そして血液または桃色もしくは白色の組織背景の存在下で、よりよく見え得る。しかし、下にある組織が白色である場合、赤色色素が適切であり得る。
【0087】
可視化剤は、いずれかの反応性成分と一緒に存在し得るか、あるいは他の様式で強化材料または創傷閉鎖デバイスに組み込まれ得る。有色物質は、ヒドロゲルに化学的に結合してもしなくてもよい。可視化材は、ある実施形態においては、約1%重量/体積未満、他の実施形態においては、約0.01%重量/体積未満、そしてなお他の実施形態においては、約0.001%重量/体積未満の濃度で存在し得る。
【0088】
移植物に組み込まれ得る医療薬剤としては、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが挙げられる。抗菌剤とは、本明細書中で使用される場合、単独でかまたは身体(免疫系)を補助することによって、身体が、病原性(疾患を引き起こす)であり得る微生物を破壊するかまたは抵抗することを補助する薬剤として定義される。用語「抗菌剤」には、抗生物質、集団感知遮断薬、界面活性剤、金属イオン、抗菌タンパク質および抗菌ペプチド、抗菌多糖類、防腐剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、集団感知遮断薬、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。本開示と組み合わせられ得る適切な防腐剤および殺菌剤の例としては、ヘキサクロロフェン、陽イオン性ビグアニド(クロロヘキサジンおよびシクロヘキシジンなど)、ヨウ素およびヨードフォア(ポビドン−ヨウ素など)、ハロ置換フェノール性化合物(PCMX(例えば、p−クロロ−m−キシレノン)など)、フラン医薬調製物(ニトロフラントインおよびニトロフラゾンなど)、メタナミン、アルデヒド(グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドなど)、アルコール、これらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、これらの抗菌剤のうちの少なくとも1つは、防腐剤(例えば、トリクロサン)であり得る。
【0089】
本開示と組み合わせられ得る抗生物質の種類としては、テトラサイクリン(ミノサイクリンなど)、リファマイシン(リファンピンなど)、マクロライド(エリスロマイシンなど)、ペニシリン(ナフシリンなど)、セファロスポリン(セファゾリンなど)、β−ラクタム抗生物質(イミペネムおよびアズトレオナムなど)、アミノグリコシド(ゲンタマイシンおよびTOBRAMYCIN(登録商標)など)、クロラムフェニコール、スルホンアミド(スルファメトキサゾールなど)、糖ペプチド(バンコマイシンなど)、キノロン(シプロフラキシンなど)、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、ポリエン(アンホテリシンBなど)、アゾール(フルコナゾールなど)、ならびにβ−ラクタムインヒビター(スルバクタムなど)が挙げられる。添加され得る他の抗菌剤としては、例えば、抗菌ペプチドおよび/またはタンパク質、抗菌多糖類、集団感知遮断薬(例えば、臭素化フラノン)、抗ウイルス剤、金属イオン(例えば、銀イオンおよびイオン性銀ガラス)、界面活性剤、化学療法薬物、テロメラーゼインヒビター、他の環状モノマー(五環式モノマーが挙げられる)、ミトキサントロンなどが挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、使用され得る適切な生物活性薬剤としては、着色剤、色素、防腐剤、タンパク質調製物およびペプチド調製物、抗体およびナノボディ、タンパク質治療剤、多糖類(例えば、ヒアルロン酸)、レクチン、脂質、共生剤、脈管形成剤、抗血栓剤、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛薬、麻酔薬、創傷修復剤、化学療法剤、生物製剤、抗炎症剤、抗増殖剤、診断剤、解熱剤、消炎剤および鎮痛薬、血管拡張薬、抗高血圧症薬および抗不整脈剤、低血圧剤、鎮咳剤、抗腫瘍剤、局所麻酔薬、ホルモン製剤、喘息治療剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗血液凝固剤、鎮痙薬、大脳循環および代謝改善剤、抗うつ薬および抗不安薬、ビタミンD製剤、低血糖症剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害剤、臭素化フラノンまたはハロゲン化フラノンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリマー薬物(このような化合物のポリマー形態であり、例えば、ポリマー抗生物質、ポリマー防腐薬、ポリマー化学療法剤、ポリマー抗増殖剤、ポリマー防腐薬、ポリマー非ステロイド性抗炎症薬(NASID)など)およびこれらの組み合わせが、利用され得る。
【0092】
特定の実施形態において、本開示の移植物は、適切な医療薬剤(例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント(例えば、免疫グロブリン、抗体(モノクローナルおよびポリクローナル)、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン))、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および癌抑制因子、血液タンパク質、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子;タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびリボザイム、ウイルス粒子、ならびにこれらの組み合わせ)を含み得る。本開示による移植物の分解機構は、特定の放出速度を提供するように調整され得、特定の材料の分解が生物活性薬剤の溶出または放出に対応し得ることが理解されるべきである。
【0093】
上記生物活性薬剤と本開示の材料とを合わせる方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして混合、ブレンド、配合、スプレー、浸透(wicking)、溶媒エバポレーション、浸漬、ブラッシング、蒸着、共押し出し、毛細管浸透、フィルムキャスティング、成形などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、溶媒が、種々の薬剤を移植物に組み込むために使用され得る。適切な溶媒としては、極性溶媒および非極性溶媒(例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロ−エタン)、および脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン)、ならびに酢酸エチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本開示の移植物に組み込まれる生物活性薬剤は、種々の放出プロフィール(0次、一次、二次およびこれらの組み合わせの放出プロフィールが挙げられるが、これらに限定されない)を有し得る。生物活性薬剤の所望の放出結果を達成するために、材料をより疎水性またはより親水性に改変することもまた、当業者の知識の範囲内である。先に記載されたように、生物活性薬剤と材料との両方が、組織内への移植物の一体化に対応するための特定の放出機構を達成するように、変更され得る。
【0095】
一旦、移植物が構築されると、この移植物は、当業者の知識の範囲内である任意の手段(エチレンオキシド、電子線(e線)、γ線照射、オートクレーブ処理、プラズマ滅菌などが挙げられるが、これらに限定されない)により滅菌され得る。
【0096】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の改変を予測する。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年6月29日に出願された米国仮特許出願番号61/221,246に対する優先権および利益を主張する。この米国仮特許出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、自己シール移植物に関し、そしてより特定すると、第一の反応性成分および第二の反応性成分を含む、自己シール移植物に関する。
【背景技術】
【0003】
創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープルおよび縫合糸)は、外科手術において、例えば、組織を切除するため、組織を離断するため、および組織と器官との間に接続部を作製するために、通常使用されている。より特定すると、外科手術用ステープラーなどの創傷閉鎖デバイスは、数回繰り返して(直線状、円形、湾曲が挙げられる)、種々の型の外科手術(脈管、肥満学、胸郭および婦人科学が挙げられる)のために提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体(例えば、空気および血液)の漏出が、特定の手順について報告されている。1つの解決策は、さらなる強化材(例えば、バットレス)の使用を包含する。バットレスまたは外科用綿撒糸が、ステープル線に適用されて、このステープル線に対する強化および/または弱い組織に対する強化を提供し得る。使用において、ステープルまたは縫合糸は、現在、バットレスを通して発射または縫合される。しかし、強化材料を補足し、これによって漏出の可能性を低下させる、縫合糸組成物またはステープル組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する、自己シール移植物。
【0006】
(項目2)
前記創傷閉鎖デバイスが、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0007】
(項目3)
前記強化材料が、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0008】
(項目4)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、コーティングを構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0009】
(項目5)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、前記創傷閉鎖デバイスに選択的に堆積されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0010】
(項目6)
前記第一の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0011】
(項目7)
前記第一の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0012】
(項目8)
前記第二の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0013】
(項目9)
前記第二の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0014】
(項目10)
前記自己シール移植物が、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される合成材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0015】
(項目11)
前記ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリブタエステル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0016】
(項目12)
前記自己シール移植物が、天然コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される天然材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0017】
(項目13)
前記自己シール移植物がポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0018】
(項目14)
前記ポリマー薬物が、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0019】
(項目15)
前記第一の反応性成分と前記第二の反応性成分との相互作用が、ヒドロゲルを生じる、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0020】
(項目16)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の表面に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0021】
(項目17)
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の内部に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0022】
(項目18)
少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備える自己シール移植物であって、該少なくとも1つのステープルと該バットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される、自己シール移植物。
【0023】
(項目19)
前記ステープルおよび前記バットレスのうちの少なくとも1つが、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0024】
(項目20)
前記自己シール移植物が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される少なくとも1つの反応性成分をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の自己シール移植物。
【0025】
(項目21)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
化学反応を開始させるための手段、
を備えるシステム。
【0026】
(項目22)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0027】
(項目23)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0028】
(項目24)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
ヒドロゲルを形成するための手段、
を備えるシステム。
【0029】
(項目25)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置する工程;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および
化学反応を開始させる工程、
を包含する方法。
【0030】
(項目26)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0031】
(項目27)
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0032】
(項目28)
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置する工程;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、工程;および
ヒドロゲルを形成する工程、
を包含する方法。
【0033】
(摘要)
創傷閉鎖デバイスと強化材料とを有する医療デバイスが、インサイチュで反応して、自己シール移植物を作製する。
【0034】
(要旨)
本開示の自己シール移植物は、少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備え、この創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そしてこの強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する。より具体的には、この創傷閉鎖デバイスとしては、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片が挙げられ得る。この強化材料としては、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスが挙げられ得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、第一の反応性成分および第二の反応性成分のうちの少なくとも一方は、自己シールデバイスコーティングを構成する。他の実施形態において、第一の反応性成分および第二の反応成分のうちの少なくとも一方は、自己シールデバイス上に選択的に堆積される。
【0036】
第一の反応性成分および第二の反応性成分は、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択され得る。より具体的には、第一の反応性成分および第二の反応性成分は、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有し得る。
【0037】
第一の反応性成分と第二の反応性成分との相互作用は、ヒドロゲルを生じ得る。
【0038】
代替の実施形態において、この自己シールデバイスは、少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備え、この少なくとも1つのステープルとこのバットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される。このステープルは、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有するコーティングをさらに備え得る。このバットレスもまた、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有し得る。
【0039】
この自己シールデバイスは、天然材料および合成材料(例えば、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、ポリマー薬物、コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせ)を含有し得る。
【0040】
自己シールデバイスをインサイチュで作製する方法が包含され、この方法は、バットレスを組織上に配置する工程、少なくとも1つのステープルをステープラーから発射する工程であって、この少なくとも1つのステープルがこのバットレスに接触する、工程、および化学反応を開始させる工程を包含する。
【0041】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中以下に記載される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によって、強化材料を補足し、これによって漏出の可能性を低下させる、縫合糸組成物またはステープル組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、ステープルコーティングを備える外科手術用ステープルの側面斜視図である。
【図2】図2は、強化材料を備える外科手術用ステープラーの側面斜視図である。
【図3】図3は、ステープルを備える、図2の線A−Aに沿った外科手術用ステープルカートリッジの断面図である。
【図4A】図4Aは、バットレスを通して組織内へと発射されたステープルを図示する、本開示の1つの実施形態の斜視図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの一部の拡大図である。
【図5】図5A〜図5Bは、反応性基がNHSエステル基および第一級アミンである、本開示の1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図6】図6A〜図6Bは、反応性基がカルボジイミド基および第一級アミンである、本開示の1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図7A】図7Aは、本開示による1つの実施形態を図示する側面斜視図である。
【図7B】図7Bは、本開示による別の実施形態を図示する側面斜視図である。
【図8】図8は、本開示による別の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、自己シール性である医療移植物に関する。具体的には、この自己シール移植物は、第一の反応性成分を含有する創傷閉鎖デバイス、および第二の相補的反応性成分を含有する強化材料を備える。この第一の反応性成分およびこの第二の反応性成分は、未反応状態で、デバイスの表面または内部に配置される。ある実施形態において、第一の反応性成分は、第二の相補的な反応性成分とインサイチュで選択的に反応する。より具体的には、相互作用または物理的接触の際に、第一の成分と第二の成分とが反応する。特定の実施形態において、生理学的流体または溶液(例えば、水または生理食塩水(調整されたpHもしくは等張性))が、これらの2つの成分間の反応を開始することを補助し得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「組織」としては、肺、腸、皮膚、脂肪、筋膜、骨、筋肉、腱、靭帯、中実器官、管腔、管、リンパ、神経、および血管などの組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「生理学的流体」としては、血液、血漿、腹水(peritoneal fluid)、大脳脊髄液、尿、リンパ液、滑液、硝子体液、唾液、胃腸腔の内容物、胆汁、および気体(例えば、CO2)などの流体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
用語「相補的」とは、本明細書中で使用される場合、第二の反応性成分が第一の反応性成分と選択的または優先的に反応するように化学的に調整されていることを意味する。換言すれば、個別には、これらの2つの成分は安定であるが、(インサイチュで)一緒にされると、化学反応が開始される。より具体的には、第一の反応性成分は、相補的な第二の成分と接触しなければ、実質的な化学変化を起こさない。一旦、インサイチュで物理的に接触すると、両方の反応性成分が化学変化(例えば、架橋ポリマーの形成)を起こし、自己シール移植物を作製する。
【0048】
一般に、自己シール移植物は、第一の反応性成分を含有する強化材料を備え、一方で、創傷閉鎖デバイスは、第二の相補的反応性成分を含有する。図1〜図3は、第一の反応性成分でコーティングされたステープル2(創傷閉鎖デバイス)を備える本開示の1つの実施形態を図示する。この創傷閉鎖デバイスは、第二の相補的反応性成分を含むバットレス20(強化材料)とインサイチュで一緒になる。より具体的には、図1は、第一の反応性成分4でコーティングされたステープル2を図示する。一般に、ステープル2は、ステープルバックスパン2bにより間を接続されたステープルレッグ2aを備える。第一の反応性成分4は、コーティングの形態で図示されているが、第一の反応性成分は、他の形態(反応性成分をポリマー樹脂内に配合すること、反応性成分の局在デポーの選択的な適用、または未反応の第一の反応性成分を自己シールデバイス内に他の様式で包埋することが挙げられるが、これらに限定されない)でステープル上に存在し得る。ステープル2は、例えば、浸漬コーティング技術を使用してコーティングされ得るが、他のコーティング方法が当業者の知識の範囲内であり、後に議論される。図示においては、ステープル2の全体がコーティングされているが、ステープル2の一部分のみがコーティングされ得ることもまた想定される。例えば、特定の実施形態において、ステープルレッグ2aがコーティングされ得、一方で、ステープルバックスパン2bはコーティングされないままである。代替の実施形態において、このステープルは、このステープルの選択的な表面が第二の反応性成分(および/または組織)と架橋するようにパターン付けされたコーティングを配置され得る。異なる列のステープル(1つの外科手術用ステープラー(例えば、Covidien,North Haven,CT製のEndoGIATM)において、)が、異なる反応性成分を有し得るか、または反応性成分の異なるパターンをステープル表面上に備え得ることもまた、想定される。例えば、ステープルの最も内側の列が、(強化材料および/または組織に対して)最も高度な架橋を有し、一方で、ステープルの最も外側の列が、(強化材料および/または組織に対して)より低い程度の架橋を有することが、有用であり得る。
【0049】
図2〜図3を参照すると、複数のステープル2が、ステープル2を組織内に発射するために、装填ユニット30内に配置されている。図2は、第二の相補的反応性成分を含むバットレス20を図示する。バットレス20は、例えば、単一のポリマー層状シートとして図示されているが、バットレスは単一の層状シートに限定されないことが理解される。第二の相補的反応性成分22は、コーティングの形態で図示されているが、第二の相補的反応性成分22は、他の形態(例えば、樹脂内に配合すること、バットレス内への糸/フィラメントの選択的な織り込み、または反応性成分の局在デポーの選択的な適用)でバットレス20に存在し得る。バットレス20は、当業者の知識の範囲内である任意の技術を使用してコーティングされ得る。図示においては、バットレス20の全体がコーティングさているが、バットレス20の一部分のみがコーティングされ得ることもまた想定される。例えば、特定の実施形態において、バットレスの第一の表面20aが反応性成分を含み得、一方で、第二の表面20bは、反応性成分を含まない。代替の実施形態において、バットレスの第一の表面および第二の表面は、異なる反応性成分でコーティングされ得るか、または異なる反応性成分を他の様式で含み得る。例えば、第一の表面20aは、(第一の反応性成分と反応するための)第二の反応性成分でコーティングされ得、一方で、第二の表面20bは、組織表面に選択的に架橋するための第三の反応性成分でコーティングされ得る。強化材料はまた、その表面に選択的にパターン付けされた第二の反応性コーティング、またはこの強化材料内に選択的に組み込まれ/配置された第二の反応性コーティングを有し得る(例えば、局在デポー)。
【0050】
バットレス20は、ステープルカートリッジ10に隣接して配置される(図2〜図3)が、バットレス20がアンビル14に対して配置されること、またはバットレス20がカートリッジ10とアンビル14との両方に対して配置され得ることもまた、想定される。バットレス20は、装填ユニット30に予め装填されて提供され得るか、または代替例において、バットレス20は、装填ユニット30に、手術室で移植前に取り付けられ得ることもまた、想定される。使用され得る一体化されたバットレスの1つの例は、DUET TRSTM(Covidien,North Haven,CT)であり、2007年3月6日に出願された米国仮特許出願番号60/905,532(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0051】
図3は、線「A−A」に沿って見た、ステープルポケット16内のステープル2の列の別の図を図示する。バットレス20は、ステープル2が発射される場合に、ステープルのレッグ2aが最初にバットレス20に貫入するように、カートリッジ表面10aに隣接して配置され、次いで第一の組織表面(図示せず)を穿孔し、次にステープルレッグ2aが第二の組織表面(図示せず)を出、ここでステープルレッグ2aがアンビル14上のステープルバケット(図示せず)に接触し、ステープルレッグ2aを第二の組織表面内に戻すように曲げ、図4A〜図4Bに図示するような実質的に「B」字型のステープル形成を完了する。ステープル2がバットレス20を通してインサイチュで発射されると、生理学的流体が第一の反応性成分と第二の反応性成分とを混ぜ合わせ、化学反応を開始させ、自己シール移植物を生じる。
【0052】
数秒〜数分以内で、第一の反応性成分と第二の反応性成分とは化学的に反応し、自己シール移植物を作製する。一旦、未反応成分がインサイチュで物理的に接触させられると、これらの2つの成分が混合し、そして架橋ポリマー網目構造を形成する。体腔からの生理学的流体または水分が、これらの2つの反応性成分の混合を補助し得る。一旦、架橋ポリマー網目構造(ヒドロゲル)が形成されると、膨潤したヒドロゲルは、存在するあらゆる間隙空間をシールする。例えば、ステープルレッグ上に存在するヒドロゲルが膨潤し得、組織内またはバットレス内のあらゆる間隙空間をシールする。
【0053】
より具体的には、図5に図示される1つの実施形態において、自己シール移植物75は、表面に数個の第一級アミン基が結合しているステープル80を備える。これらの第一級アミンは、コーティングの形態、またはデバイス80の表面に官能基を化学的に付着/堆積させる他の手段であり得る。強化材料90は、その表面にスクシンイミジル官能基が付着されて図示されている。ここでまた、これらの官能基は、本開示において詳述される種々の手段を使用して、このデバイスの表面に付着され得るか、またはこのデバイス内に包埋され得る。一旦、ステープル80および強化材料90が、約7〜約10、ある実施形態においては約7.5〜約9の所定のpH範囲の水分(水、生理食塩水または他の生理学的流体)の存在下で、インサイチュで接触させられると、これらの2つの反応性成分が架橋する。2つの反応性成分が強化材料90とステープル80とを互いに化学的に架橋させてヒドロゲルを作製する、自己シールデバイス75が作製される(図5B)。さらに、このヒドロゲルは、周囲環境からさらなる流体を取り込み得、この周囲領域に見出されるあらゆる間隙空間をシールする。得られるヒドロゲルは、加水分解により分解し得、経時的に水溶性フラグメントを放出する。自己シール移植物は、好ましい時間範囲(例えば、約1日〜約30日)で分解するように化学修飾され得る。
【0054】
図6A〜図6Bは、図5Aおよび図5Bと類似の実施形態を図示し、従って、類似である全ての部分は、プライム印を用いて表され、そしてその違いのみが以下に記載される。多官能性第一級アミン基が表面に配置されたステープル80’が図示されている。カルボジイミド官能基が表面に付着された強化材料95が図示されている。一旦、ステープル80’と強化材料95とが、約7〜約10、ある実施形態においては約7.5〜約9の所定のpH範囲の水分(水、生理食塩水または他の生理学的流体が挙げられる)の存在下で、インサイチュで接触させられると、これらの2つの反応性成分が架橋する。2つの反応性成分が強化材料95とステープル80’とを互いに化学的に架橋させて、ヒドロゲルを形成する、自己シールデバイス75’が作製される(図6B)。
【0055】
本開示の第一の反応性成分および第二の反応性成分は、天然または合成の多官能性第一級アミンを含み得る。用語「多官能性」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの第一級アミン基を含む第一級アミンを意味する。1つの例において、多官能性第一級アミンは、創傷閉鎖デバイスのコーティングを構成し得、この多官能性第一級アミンは、数種の方法(以下に詳述される)を利用して、自己シール移植物に組み込まれ得ることが理解される。別の例において、強化材料は、全体として、アミノ化されたデキストラン足場を含み得、これはスクシンイミジル官能性ポリマーと選択的に反応性である。適切な天然または誘導体化された第一級アミンは、コラーゲン、アルブミン、エラスチン、多糖類(例えば、キトサン、アミノ化デキストラン、修飾セルロースおよびヒアルロン酸)、ポリリジンまたはリジン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたはマクロマー(macromer)バージョンを含む)、ポリアルギニンまたはアルギニン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたは多量体バージョンを含む)、ポリヒスチジンまたはヒスチジン残基を有するペプチドおよび/もしくはタンパク質(PEG化バージョンまたはマクロマーバージョンを含む)、ならびにこれらの組み合わせなどの材料(組織を含む)において見出される。適切な合成アミンとしては、第一級アミン官能基を有するビニルモノマー(例えば、アクリルアミド)およびそのコポリマー、リジンで修飾されたポリエステル(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGポリプロピレングリコール、PEG−co−シリコーンならびにこれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な多官能性アミンとしては、上に列挙されたものが挙げられる。
【0056】
さらなる適切な第一の反応性成分または第二の反応性成分は、スクシンイミジル官能性ポリマー(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(SNHS)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル(ENHS)およびこれらの組み合わせ)が挙げられる材料を含有する。スクシンイミジルベースのエステルは、上記多官能性第一級アミンと反応性である。一般に、創傷閉鎖デバイスがNHSエステル反応性基を含む場合、第二の相補的反応性基は、多官能性第一級アミンを提供する表面を構成することが理解されるべきである。
【0057】
さらなる実施形態において、第一の反応性成分または第二の反応性成分は、求電子性官能基を含み得、一方で、相補的な第二の成分または第一の成分は、求核性官能基を含み得る。求電子性官能基としては、上に列挙されたスクシンイミジル含有ポリマー(例えば、SNHSおよびENHS)が挙げられる。求電子性基のさらなる非限定的な例としては、カルボニルイミダゾール、イソシアネート、ビニルスルホン、マレイミド、およびp−ニトロフェニルが挙げられる。適切な求核性官能基としては、チオール基に加えて、上に列挙されたもののような天然多官能性第一級アミンおよび合成多官能性第一級アミンが挙げられる。他の適切な第一および第二の求核反応性成分および求電子反応性成分、ならびに作製する方法は、米国特許第6,887,974号;同第7,332,566号;同第6,566,406号;同第7,009,034号;同第6,165,201号;同第6,818,018号、および2008年7月8日に出願された米国特許出願番号61/078,968に開示されており、これらの主題は、本明細書中に参考として援用される。
【0058】
本開示のヒドロゲルを形成するために利用される、第一の反応性成分および第二の反応性成分は、生体適合性かつ水溶性であるコア基を有し得る。本明細書中で使用される場合、水溶性とは、水中への少なくとも約1g/lの溶解度をいう。このコア基は、最低3つのアームを有する水溶性分子であり得る。コア基のアームとは、ポリマーアームの重合を開始する架橋可能な官能基を、多官能性中心に接続する、化学基の線状の鎖をいう。この多官能性中心と付着したアームとの組み合わせが、コア基を形成し得る。
【0059】
ある実施形態において、コア基は、水溶性ポリマーであり得る。使用され得るこのようなポリマーの例としては、例えば、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コポリエチレンオキシドブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー));ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(「PVA」)およびポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」));タンパク質(例えば、ポリ(アミノ酸));多糖類(例えば、デキストラン)、ならびに上記のものの誘導体および上記のものの組み合わせが挙げられる。
【0060】
他の実施形態において、多官能性中心は、ポリオールを含み得、このポリオールは、ある実施形態において、モノマー基の開始のためのヒドロキシル基を有し得、これらのモノマー基は、コアのアームを形成し得、そしてこのアームは、架橋性基で官能基化され得る。アームの所望の数に依存して、このポリオールは、約3個〜約12個のヒドロキシル基、ある実施形態においては、約4個〜約10個のヒドロキシル基を有し得る。このポリオールはまた、保護されているかまたは保護されていない他の官能基を有し得る。適切なポリオールとしては、グリセロール、マンニトール、還元糖(例えば、ソルビトール)、ペンタエリトリトール、およびグリセロールオリゴマー(ヘキサグリセロールが挙げられる)、ならびにこれらの誘導体およびこれらの組み合わせが挙げられる。当業者に容易に明らかになるように、ヒドロキシル基の数は、マルチアームコア上のアームの数と等しいべきである。すなわち、選択される特定のポリオールは、得られる多官能性コア基のアームの数を決定するべきである。ある実施形態において、上に記載されたポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)は、エチレンオキシドとポリオールとの重合を開始することにより形成され得、これによって、マルチアームコアのアームを形成し、これがさらに、反応性成分で官能基化され得る。
【0061】
従って、ヒドロゲルは、第一のセットの官能基を有するマルチアームコアと、第二のセットの官能基を有する低分子量ポリマーとから作製され得る。このマルチアームコア上のアームの数は、約3個〜約12個、ある実施形態においては、約5個〜約10個であり得る。
【0062】
例えば、マルチアームコアは、N−ヒドロキシスクシンイミド(反応性成分)を末端に有する親水性アーム(例えば、ポリエチレングリコール)を有し得、これらのアームの合わせた分子量は、約1,000〜約40,000である。明白に記載される境界内である全ての範囲および値が想定されることを、当業者は即座に理解する。いくつかの実施形態において、6個のアームから8個のアームまでを有するマルチアームコアを利用することが望ましくあり得る。個々のアームの分子量は、約250〜約5000、ある実施形態においては、約1000〜約3000、他の実施形態においては、約1250〜約2500であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、6アームポリマーコアまたは8アームポリマーコアは、第一の反応性成分としての低分子量ポリマー(例えば、トリリジン)と反応させられ得る。このトリリジンは、第二の反応性成分を架橋するための複数の反応点を提供し、そしておそらく(作用の特定の理論に限定されない)、収縮または膨潤の意味での比較的小さい移動を可能にする。このような移動は、おそらく、マルチアームコア(これらは比較的大きく、そしてより動きやすい)に関連する。従って、他の低分子(例えば、約100〜約5000、ある実施形態においては、約300〜約2500、他の実施形態においては、約500〜約1500の分子量を有する分子)が、トリリジンの代わりに使用され得る。このような低分子は、少なくとも約3個の官能基、ある実施形態においては、約3個〜約16個の官能基を有し得る。これらの明白に記載される値の間の全ての範囲および値が想定されることを、当業者は理解する。いくつかの場合において、ジリジンおよび/またはテトラリジンが、低分子量前駆体として利用され得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、自己シールデバイスは、pH活性化剤をさらに含有し得る。このpH活性化剤は、水性環境への曝露後に局所的なpH変化を生じて、ヒドロゲルの形成を加速または開始し得る。例えば、pH活性化剤としては、固体ホウ酸塩結晶(例えば、Na2B4O7・10H2O)が挙げられ得るが、他の塩ベースの材料または他の材料が使用され得る。代替例において、pH変更剤(例えば、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなど)が使用され得る。pH活性化/変更剤は、種々の方法(コーティング、デバイス内への配合、接着層としての塗布、デバイスに沿った局所デポーの適用などが挙げられるが、これらに限定されない)を利用して、デバイスに装填され得る。
【0065】
図7A〜図7Bは、2つの成分が反応して自己シールデバイスを作製した後の、本開示の2つの実施形態を図示する。より具体的には、図7Aは、第二の反応性成分を含有する強化材料60を通して発射された、第一の反応性成分を有する創傷閉鎖デバイス50(ステープル)を図示する。図7Aは、ステープル50とバットレス60との間でのヒドロゲル70の形成を生じる、自己シールデバイスの1つの実施形態を図示する。一旦、これらの2つの反応性成分が混合されると、第一の反応性成分と第二の反応性成分との間での物理的接触が起こる場所に隣接する領域において、架橋構造が形成される。新たな架橋構造は、ヒドロゲル形成の存在により説明され得る。いくつかの実施形態において、弱化した組織または他に損傷を受けた組織において、ヒドロゲル70は、周囲の組織におけるあらゆる残留空間をシールし得る。さらに、ヒドロゲルは、空間充填材であり得、そして特定の位置において優先的に膨潤するように調整され得る。例えば、8アームPEGヒドロゲル(これは、より低い膨潤を示す)と比較して、より大きい膨潤特性を有するヒドロゲル(例えば、4アームPEGヒドロゲル)が、増加した流体を取り込むように、自己シールデバイスに優勢に配置され得る。経時的に、このヒドロゲルは、周囲の組織からさらなる流体を取り込み得る。
【0066】
図7Bは、ステープルレッグ100aがバットレス120と比較してより大きい膨潤を示す、別の実施形態を図示する。両方の実施形態において、ヒドロゲルは、ステープルレッグのすぐ隣の、ステープルレッグとほぼ同心の領域において形成され、そしてステープルと強化材料との間の界面において重なり得る。第一の反応性成分および第二の反応性成分について選択される材料に依存して、強化材料または創傷閉鎖デバイスのうちのいずれかが、異なる変動する程度の膨潤(負の膨潤を含む)または流体取り込みを示し得る。異なるまたは変動する程度の膨潤を有する材料の例は、2007年3月5日に出願された米国仮特許出願番号11/714,028(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。例えば、内側または近位の列のステープルは、外側/遠位の列のステープルよりも大きく膨潤し得、創傷のより近くでより大きい止血を生じ得る。強化材料は、特定の位置で優先的に膨潤し得ることもまた想定される。
【0067】
図7A〜図7Bに図示されるように、(第一の反応性成分と第二の反応性成分との)化学反応は、ヒドロゲルの形成を包含する。用語「ヒドロゲル」とは、本明細書中で使用される場合、溶媒(例えば、水)を吸収して、認識できるほどには溶解せずに急激な膨潤を起こし、そして可逆的変形が可能な三次元網目構造を維持する材料を包含する。ヒドロゲルは、従来、水で膨潤する架橋ポリマー構造であり、これは、共有結合、イオン架橋、絡まりによる物理的架橋、会合結合(例えば、水素結合または強いファンデルワールス相互作用)、または2つ以上の高分子鎖のクリスタリットのうちのいずれかを含む。架橋は、ヒドロゲル構造内における接続点(炭素原子であり得る)を示すが、架橋はまた、小さい化学的な橋であり得る。架橋はまた、ファンデルワールス力に起因する高分子鎖の会合、または水素結合により形成される凝集であり得る。ヒドロゲルはまた、永続的または半永続的な物理的絡まりであり得る架橋、あるいはクリスタリットを形成する規則的な鎖であり得る架橋を含み得る。
【0068】
ヒドロゲルは、ホモポリマーヒドロゲルであっても、コポリマーヒドロゲル(2つ以上のモノマー単位(これらのうちの一方は親水性でなければならない)の架橋により生成される)であっても、マルチポリマーヒドロゲル(3つ以上のコモノマーの反応により生成される)であっても、相互侵入ポリマーヒドロゲル(第一の網目構造を調製し、次いでモノマー中で膨潤させることにより生成される)であってもよい(Biomaterials Science,第2版,2004,pp.100−107)。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態において、「スマートヒドロゲル」を構成する材料が利用され得る。スマートヒドロゲルとしては、その膨潤挙動が外部環境(例えば、身体)に依存する材料が挙げられる。例えば、ヒドロゲルは、pH、温度、イオン強度、酵素反応、化学反応、および電気刺激または磁気刺激が挙げられるがこれらに限定されない要因に応答して、膨潤(または収縮)し得る。スマートヒドロゲルが刺激に迅速に応答する能力は、これらのヒドロゲルを容易に、薬物送達用途に適するようにする。
【0070】
代替の実施形態において、第一の反応性材料は、特定されたデポーとしてデバイス上に存在し得るか、またはこのデバイスの隙間に組み込まれ得、第二の相補的反応性成分と選択的に反応する。図8に図示されるように、織メッシュ200は、第一の反応性成分(例えば、スクシンイミジル官能性反応性基)を、メッシュ表面に沿った特定された隙間210に備える。これらのスクシンイミジル官能基は、このメッシュ内に織り込まれても、このメッシュの特定の隙間に堆積されても、他の様式で組み込まれてもよい。メッシュ200と相互作用する鋲300は、第二の反応性成分(例えば、リジン残基)でコーティングされる。鋲300がメッシュ200を通して発射され、メッシュ200を組織400に固定すると、第一の反応性成分と第二の反応性成分とが相互作用して、メッシュ200に沿ってシールされた領域を作製し、これがメッシュ200を適所に固定することを補助する。
【0071】
別の実施形態において、強化材料または創傷閉鎖デバイスは、特定の反応性基で満たされ得るデポーまたはレザバを含み得る。例えば、粒子性コーティングが、集中した量の反応性成分を有するレザバまたは領域を、自己シール移植物の表面に作製するために使用され得る。別の例において、デポーは、空隙または空の空間をデバイス内に製造することによって、作製され得る。この空隙または空の空間は、後に、反応性成分で満たされ得る。これらの空隙は、連続気泡網目構造であっても不連続気泡網目構造であってもよい。製造方法としては、機械切断(例えば、レーザー切断)、凍結乾燥、粒子浸出、圧縮成形、相分離、気体発泡(例えば、CO2などの内部発泡剤)、または細孔形成剤(porogen)(例えば、塩粒子)の使用などの方法が挙げられる。空隙は、射出成形などの方法、または上に列挙された技術が挙げられる標準的なコーティング技術を使用して、反応性成分で満たされ得る。
【0072】
本開示の自己シール移植物は、中実構造体と多孔性構造体との両方を包含する。多孔性構造体は、連続気泡発泡体であっても不連続気泡発泡体であってもよく、当業者の知識の範囲内である技術を使用して調製される。多孔性構造体としては、織布(例えば、メッシュ)、フェルト、移植片および発泡体(凍結乾燥された発泡体もしくは足場が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、移植物は、少なくとも1つの層から構築され得る。いくつかの実施形態において、移植物は、多層積層構造体(例えば、発泡体またはフィルム)を備え得る。多層積層構造体の1つの非限定的な例としては、織られた外科手術用メッシュが挙げられ、これはさらに、接着防止コーティングを備える。他の実施形態において、コーティングがさらに、本開示の移植物に塗布されて、性能特徴(例えば、潤滑性、外科医の取り扱い、湿潤性、組織の一体性など)を改善し得る。例えば、強化材料は、水溶性層(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))でコーティングされ得る。PVPが(数秒〜数分以内で)溶解するにつれて、反応性成分が周囲領域に放出され得、自己シール移植物を作製する。
【0073】
別の例において、コラーゲンバットレス(強化材料)が、第一の反応性成分としてのSNHSエステルポリマーでコーティングされたステープルを使用して、肺組織に適用され得る。この実施形態において、第一の反応性成分は、肺組織と反応することに加えて、このコラーゲンバットレスと選択的に相互作用し得る(コラーゲンは、多官能性第一級アミンを含む)。肺組織もまた第一級多官能性アミンを含むので、肺組織もまた、これらのステープルと選択的に相互作用することが留意されるべきである。
【0074】
以下の説明において、用語「生分解性」とは、本明細書中で使用される場合、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含するように定義される。生分解性とは、材料が身体条件下(例えば、酵素分解または加水分解)で分解するかまたは構造的一体性を失うこと、あるいは身体内の生理学的条件下で、分解生成物が身体により排出可能または吸収可能であるように(物理的または化学的に)分解することを意味する。
【0075】
反応性成分に加えて、自己シール移植物を構築するために使用される他の材料は、生分解性材料(例えば、合成材料および天然材料)を含有し得る。例えば、図1に図示される強化材料は、グリコリド、TMC、ジオキサノンコポリマーを含有し得、これはさらに、反応性成分でコーティングされる。強化材料は、特定のポリマーまたはコポリマーに限定されないことが理解される。適切な合成生分解性材料としては、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、δ−バレロラクトン、1−ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテラート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカーボネート))、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤)から作製されるポリマーなどのポリマー、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。
【0076】
本明細書中上で言及されるポリマー薬物は、骨格がポリマー薬物を含むポリマーを含み得るか、または代替例において、ポリマー薬物は、ペンダント基もしくは側鎖がポリマー薬物を含むポリマーを含み得る。1つの例において、強化材料(例えば、バットレス)は、抗炎症組成物(例えば、ポリアスピリン)の成型フィルムを含み得る。分解性ポリマー薬物はまた、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されないポリマーを含み得る。
【0077】
天然ポリマーもまた、本開示の自己シール移植物を構築するために使用され得、天然ポリマーとしては、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、多糖類(例えば、セルロース(カルボキシメチルセルロースが挙げられる)、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネートおよびグリコサミノグリカン)、ヒアルロン酸、ガット、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、組換えコラーゲン)を包含する。タンパク質(例えば、エラスチン、アルブミン、カゼイン)もまた、本開示を構成し得る。さらに、天然材料は、上に列挙された材料の化学修飾(例えば、組換えポリマーアナログ、アミノ化ポリマーアナログ、スルホン化ポリマーアナログ、およびカルボキシル化ポリマーアナログ)を含む。
【0078】
特定の用途において、強化材料および創傷閉鎖デバイスの内の少なくとも一方が、非生分解性材料を含有することが好ましくあり得る。1つの非限定的な例において、非生分解性の創傷閉鎖デバイスを有することが好ましくあり得る。適切な材料としては、フッ素化ポリマー(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリプロピレン、フルオロPEG)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリブタエステル、ポリエチレングリコール、ポリアリールエーテルケトン、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。さらに、非生分解性のポリマーおよびモノマーは、互いに組み合わせられ得、そしてまた、種々の生分解性のポリマーおよびモノマーと組み合わせられて、自己シール移植物を作製し得る。
【0079】
特定の実施形態において、本開示による自己シール移植物は、少なくとも部分的に、形状記憶ポリマーを使用して構築され得る。形状記憶ポリマーとは、外部刺激(例えば、温度、電流、光、pHなど)により誘導される、変形状態(一時的な形状)からその元の(永続的な)形状へと戻る能力を有する、スマート材料である。形状記憶ポリマーのハードセグメントおよびソフトセグメントを調製するために使用される適切なポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、およびウレタン/ブタジエンコポリマーならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
他の実施形態において、金属または金属合金が、少なくとも創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープルまたは縫合糸)を構成し得る。適切な金属および金属合金は、チタン、ニッケルチタン、鋼、マグネシウムベースの合金、マンガンベースの合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。本開示の金属または金属合金は、形状記憶特徴をさらに有し得るか、または代替例においては、生分解性であり得る。
【0081】
いくらかの疾患患者集団において、特定の組織は、他の組織より弾力性が低くあり得る。例えば、患者が糖尿病であるかまたは化学療法処置を受けている場合、その患者の組織は、他の健常な患者と比較して、弾力性が低くあり得る。ステープルサイズ、組織特性および選択される強化材料に依存して、組織および強化材料の弾力性応答は変動する。小さい穴が、バットレスに、そしてステープルレッグを同心状に囲む領域の組織に潜在的に、存在し得る。本開示のいくつかの実施形態は、これらの小さい穴をシールすることを補助し、これは、流体の漏出を防止し得る。本開示の実施形態はまた、組織における強化材料の安定化を増大させ得る。他の実施形態において、自己シールデバイスは、止血材料として働き得、血液凝固を促進するか、または凝固カスケードの促進を補助する。
【0082】
第一の反応性成分および第二の反応性成分は、種々の方法を使用して、移植物に適用され得るか、または移植物に組み込まれ得る。1つの実施形態において、創傷閉鎖材料および/または強化材料は、コーティングの形態で、反応性成分を含有し得る。医療移植物をコーティングする方法は、当業者の知識の範囲内であり、そしてスプレー(すなわち、超音波または電子スプレー)、ブラッシング、浸漬、ドリップコーティング、溶媒エバポレーション、レーザーおよびインクジェット印刷などが挙げられるが、これらに限定されない。コーティング組成物は、溶液、分散物、エマルジョンまたは他の任意の均質混合物もしくは不均質混合物の形態であり得る。さらに、溶媒が、コーティングを移植物に塗布するために使用され得る。適切な溶媒は、当業者の知識の範囲内であり、極性溶媒と非極性溶媒との両方が挙げられる。
【0083】
第一の反応性成分および第二の反応性成分はまた、他の方法(例えば、反応性成分が樹脂内に包埋または配合され得る)を利用して、デバイスに組み込まれ得る。例えば、多官能性第一級アミンは、ポリエステルに配合され得、そして押し出し(または共押し出し)されて、繊維などの移植物を作製し得る。さらに、このような繊維は、他の繊維と編組または相互織込みされて、マルチフィラメント移植物(例えば、編組縫合糸またはメッシュ)を作製し得る。複数のフィラメントが、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、混合、加撚、編組、織ること、絡めること、および編むこと)を使用して、組み合わせられ得る。例えば、複数のフィラメントは、単に合わせられて、糸(yarn)を形成し得る。別の例として、複数のフィラメントは、編組され得る。
【0084】
先に議論されたように、本開示の自己シール移植物は、少なくとも1つの強化材料、および1つの創傷閉鎖デバイスを備える。例示的な強化材料としては、例えば、外科用綿撒糸、バットレス、パッチ、足場、テープ、フェルト、およびメッシュ(生物学的メッシュおよび複合メッシュを含む)などの強化デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の適切な創傷閉鎖デバイスとしては、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の自己シール移植物は、上に列挙されたものが挙げられる、生分解性材料と非生分解性材料との両方を含み得る。
【0085】
さらに、移植物の任意の部分が、生物学的に受容可能な添加剤(例えば、触媒、緩衝塩、塩、無機充填材、可塑剤、酸化防止剤、色素、顔料、画像増強剤(MRI、CT、X線、およびX線透視造影剤)、希釈剤、生物活性剤(例えば、薬学的薬剤および医療薬剤)ならびにこれらの組み合わせ)を含有し得、これらは、移植物にコーティングされ得るか、または材料に含浸され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、可視化剤(色素または顔料が挙げられる)は、外科手術手順中に可視性を改善するために有用であり得る(デバイスを通って、またはデバイスの周囲を流れる流体を可視化することを含む)。可視化剤は、医療用移植可能デバイスにおいて使用するために適切な、種々の非毒性有色物質(例えば、FD&C BLUE(#1、#2、#3、および#6)、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、または合成縫合糸において通常見られる有色色素)のうちのいずれかから選択され得る。ある実施形態において、緑色または青色のような色が望ましくあり得、そして血液または桃色もしくは白色の組織背景の存在下で、よりよく見え得る。しかし、下にある組織が白色である場合、赤色色素が適切であり得る。
【0087】
可視化剤は、いずれかの反応性成分と一緒に存在し得るか、あるいは他の様式で強化材料または創傷閉鎖デバイスに組み込まれ得る。有色物質は、ヒドロゲルに化学的に結合してもしなくてもよい。可視化材は、ある実施形態においては、約1%重量/体積未満、他の実施形態においては、約0.01%重量/体積未満、そしてなお他の実施形態においては、約0.001%重量/体積未満の濃度で存在し得る。
【0088】
移植物に組み込まれ得る医療薬剤としては、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが挙げられる。抗菌剤とは、本明細書中で使用される場合、単独でかまたは身体(免疫系)を補助することによって、身体が、病原性(疾患を引き起こす)であり得る微生物を破壊するかまたは抵抗することを補助する薬剤として定義される。用語「抗菌剤」には、抗生物質、集団感知遮断薬、界面活性剤、金属イオン、抗菌タンパク質および抗菌ペプチド、抗菌多糖類、防腐剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、集団感知遮断薬、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。本開示と組み合わせられ得る適切な防腐剤および殺菌剤の例としては、ヘキサクロロフェン、陽イオン性ビグアニド(クロロヘキサジンおよびシクロヘキシジンなど)、ヨウ素およびヨードフォア(ポビドン−ヨウ素など)、ハロ置換フェノール性化合物(PCMX(例えば、p−クロロ−m−キシレノン)など)、フラン医薬調製物(ニトロフラントインおよびニトロフラゾンなど)、メタナミン、アルデヒド(グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドなど)、アルコール、これらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、これらの抗菌剤のうちの少なくとも1つは、防腐剤(例えば、トリクロサン)であり得る。
【0089】
本開示と組み合わせられ得る抗生物質の種類としては、テトラサイクリン(ミノサイクリンなど)、リファマイシン(リファンピンなど)、マクロライド(エリスロマイシンなど)、ペニシリン(ナフシリンなど)、セファロスポリン(セファゾリンなど)、β−ラクタム抗生物質(イミペネムおよびアズトレオナムなど)、アミノグリコシド(ゲンタマイシンおよびTOBRAMYCIN(登録商標)など)、クロラムフェニコール、スルホンアミド(スルファメトキサゾールなど)、糖ペプチド(バンコマイシンなど)、キノロン(シプロフラキシンなど)、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、ポリエン(アンホテリシンBなど)、アゾール(フルコナゾールなど)、ならびにβ−ラクタムインヒビター(スルバクタムなど)が挙げられる。添加され得る他の抗菌剤としては、例えば、抗菌ペプチドおよび/またはタンパク質、抗菌多糖類、集団感知遮断薬(例えば、臭素化フラノン)、抗ウイルス剤、金属イオン(例えば、銀イオンおよびイオン性銀ガラス)、界面活性剤、化学療法薬物、テロメラーゼインヒビター、他の環状モノマー(五環式モノマーが挙げられる)、ミトキサントロンなどが挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、使用され得る適切な生物活性薬剤としては、着色剤、色素、防腐剤、タンパク質調製物およびペプチド調製物、抗体およびナノボディ、タンパク質治療剤、多糖類(例えば、ヒアルロン酸)、レクチン、脂質、共生剤、脈管形成剤、抗血栓剤、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛薬、麻酔薬、創傷修復剤、化学療法剤、生物製剤、抗炎症剤、抗増殖剤、診断剤、解熱剤、消炎剤および鎮痛薬、血管拡張薬、抗高血圧症薬および抗不整脈剤、低血圧剤、鎮咳剤、抗腫瘍剤、局所麻酔薬、ホルモン製剤、喘息治療剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗血液凝固剤、鎮痙薬、大脳循環および代謝改善剤、抗うつ薬および抗不安薬、ビタミンD製剤、低血糖症剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害剤、臭素化フラノンまたはハロゲン化フラノンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリマー薬物(このような化合物のポリマー形態であり、例えば、ポリマー抗生物質、ポリマー防腐薬、ポリマー化学療法剤、ポリマー抗増殖剤、ポリマー防腐薬、ポリマー非ステロイド性抗炎症薬(NASID)など)およびこれらの組み合わせが、利用され得る。
【0092】
特定の実施形態において、本開示の移植物は、適切な医療薬剤(例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント(例えば、免疫グロブリン、抗体(モノクローナルおよびポリクローナル)、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン))、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および癌抑制因子、血液タンパク質、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子;タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびリボザイム、ウイルス粒子、ならびにこれらの組み合わせ)を含み得る。本開示による移植物の分解機構は、特定の放出速度を提供するように調整され得、特定の材料の分解が生物活性薬剤の溶出または放出に対応し得ることが理解されるべきである。
【0093】
上記生物活性薬剤と本開示の材料とを合わせる方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして混合、ブレンド、配合、スプレー、浸透(wicking)、溶媒エバポレーション、浸漬、ブラッシング、蒸着、共押し出し、毛細管浸透、フィルムキャスティング、成形などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、溶媒が、種々の薬剤を移植物に組み込むために使用され得る。適切な溶媒としては、極性溶媒および非極性溶媒(例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロ−エタン)、および脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン)、ならびに酢酸エチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本開示の移植物に組み込まれる生物活性薬剤は、種々の放出プロフィール(0次、一次、二次およびこれらの組み合わせの放出プロフィールが挙げられるが、これらに限定されない)を有し得る。生物活性薬剤の所望の放出結果を達成するために、材料をより疎水性またはより親水性に改変することもまた、当業者の知識の範囲内である。先に記載されたように、生物活性薬剤と材料との両方が、組織内への移植物の一体化に対応するための特定の放出機構を達成するように、変更され得る。
【0095】
一旦、移植物が構築されると、この移植物は、当業者の知識の範囲内である任意の手段(エチレンオキシド、電子線(e線)、γ線照射、オートクレーブ処理、プラズマ滅菌などが挙げられるが、これらに限定されない)により滅菌され得る。
【0096】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の改変を予測する。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する、自己シール移植物。
【請求項2】
前記創傷閉鎖デバイスが、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項3】
前記強化材料が、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスからなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項4】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、コーティングを構成する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項5】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、前記創傷閉鎖デバイスに選択的に堆積されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項6】
前記第一の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項7】
前記第一の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項8】
前記第二の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項9】
前記第二の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項10】
前記自己シール移植物が、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される合成材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項11】
前記ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリブタエステル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の自己シール移植物。
【請求項12】
前記自己シール移植物が、天然コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される天然材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項13】
前記自己シール移植物がポリマー薬物を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項14】
前記ポリマー薬物が、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項13に記載の自己シール移植物。
【請求項15】
前記第一の反応性成分と前記第二の反応性成分との相互作用が、ヒドロゲルを生じる、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項16】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の表面に配置されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項17】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の内部に配置されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項18】
少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備える自己シール移植物であって、該少なくとも1つのステープルと該バットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される、自己シール移植物。
【請求項19】
前記ステープルおよび前記バットレスのうちの少なくとも1つが、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料をさらに含有する、請求項18に記載の自己シール移植物。
【請求項20】
前記自己シール移植物が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される少なくとも1つの反応性成分をさらに含有する、請求項18に記載の自己シール移植物。
【請求項21】
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
化学反応を開始させるための手段、
を備えるシステム。
【請求項22】
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
ヒドロゲルを形成するための手段、
を備えるシステム。
【請求項1】
少なくとも1つの創傷閉鎖デバイスおよび強化材料を備える自己シール移植物であって、該創傷閉鎖デバイスは、第一の反応性成分を含有し、そして該強化材料は、第二の相補的反応性成分を含有する、自己シール移植物。
【請求項2】
前記創傷閉鎖デバイスが、ステープル、縫合糸、クリップ、鋲、ねじ、ピン、アンカー、ファスナー、シース、シャント、組織障壁、ステントおよび移植片からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項3】
前記強化材料が、テープ、フェルト、足場、パッチ、外科用綿撒糸、メッシュ、およびバットレスからなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項4】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、コーティングを構成する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項5】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分のうちの少なくとも1つが、前記創傷閉鎖デバイスに選択的に堆積されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項6】
前記第一の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項7】
前記第一の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項8】
前記第二の反応性成分が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項9】
前記第二の反応性成分が、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項10】
前記自己シール移植物が、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリアミドエステル、ポリカーボネート、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される合成材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項11】
前記ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリブタエステル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の自己シール移植物。
【請求項12】
前記自己シール移植物が、天然コラーゲン、誘導体化コラーゲン、ウシ心膜、ゼラチン、フィブリン、フィブリノゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギネートおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される天然材料を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項13】
前記自己シール移植物がポリマー薬物を含有する、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項14】
前記ポリマー薬物が、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリアミン、ポリアミドエステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項13に記載の自己シール移植物。
【請求項15】
前記第一の反応性成分と前記第二の反応性成分との相互作用が、ヒドロゲルを生じる、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項16】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の表面に配置されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項17】
前記第一の反応性成分および前記第二の反応性成分が、未反応状態で、前記創傷閉鎖デバイスおよび前記強化材料の内部に配置されている、請求項1に記載の自己シール移植物。
【請求項18】
少なくとも1つのステープルおよびバットレスを備える自己シール移植物であって、該少なくとも1つのステープルと該バットレスとの相互作用の際に、ヒドロゲルが形成される、自己シール移植物。
【請求項19】
前記ステープルおよび前記バットレスのうちの少なくとも1つが、スクシンイミジル含有ポリマーおよび多官能性第一級アミンからなる群より選択される材料をさらに含有する、請求項18に記載の自己シール移植物。
【請求項20】
前記自己シール移植物が、求電子性官能基および求核性官能基からなる群より選択される少なくとも1つの反応性成分をさらに含有する、請求項18に記載の自己シール移植物。
【請求項21】
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
化学反応を開始させるための手段、
を備えるシステム。
【請求項22】
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、ポリマー薬物を含有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
上記第一の反応性成分または第二の相補的反応性成分のうちのいずれかが、医療薬剤を含有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
第一の反応性成分を含有するバットレスを組織上に配置するための手段;
第二の相補的反応性成分を含有する少なくとも1つのステープルをステープラーから発射するための手段であって、該少なくとも1つのステープルが該バットレスに接触する、手段;および
ヒドロゲルを形成するための手段、
を備えるシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2011−5260(P2011−5260A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146966(P2010−146966)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]