説明

自己乳化型イソシアネート化合物及びその製造方法

【課題】外観良好な自己乳化型イソシアネート化合物及びその製造方法。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩、有機ポリイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物を反応させて得られる自己乳化型イソシアネート化合物。


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化型イソシアネート化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の脱溶剤の要求から、ポリウレタンの原料となるポリイソシアネート化合物としては、水分散性を有するものや自己乳化性を有するものが求められている。自己乳化性を有するポリイソシアネート化合物を作成する方法としては、ポリイソシアネート化合物にメトキシポリエチレングリコールを反応させる方法が知られており(特許文献1)、メトキシポリエチレングリコールを付加したポリイソシアネート化合物にイオン性界面活性剤を添加することも行われている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−222150号公報
【特許文献2】特開平9−71720号公報
【0003】
しかしながら、特許文献1又は2に開示された、メトキシポリエチレングリコール等の片末端がアルキル基でキャップされたオキシアルキレン化合物により得られる自己乳化型イソシアネート化合物は、高温で乳化した時の当該化合物のミセルの粒径が、低温で乳化した時の粒径に比べ極端に大きくなり、高温乳化安定性が悪いという問題がある。
【0004】
乳化の温度に依存せずに安定なミセルの形成が可能な自己乳化型イソシアネート化合物として下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩と、有機ポリイソシアネート化合物とを反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物がある。
【化1】

[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記イミダゾリウム塩は、有機イソシアネート、特に4、4′−ジフェルメタンジイソシアネートや2、4−トリレンジイソシアネートのような芳香族イソシアネートと反応させることにより、乳化の温度に依存せずに安定なミセルの形成が可能な自己乳化型イソシアネート化合物の提供が可能となる。
【0006】
しかし、当該自己乳化型イソシアネート化合物を製造する際に、有機イソシアネート1分子に対してイミダゾリウム塩が2分子反応した生成物が副生してしまう。当該反応副生物は、有機イソシアネートに溶解しないため固形物として析出するので、外観が悪くなるばかりか、変性剤が減少するため乳化性が悪化してしまう場合がある。
【0007】
2分子反応副生物を抑制する方法としては、反応開始温度を下げる、又は攪拌速度を速くするなどの方法により減少させることは可能であるが、完全に反応副生物をなくすことは不可能であった。
【0008】
さらに、リン酸エステルや酸無水物などの酸性物質を添加すると2分子反応副生物の生成は防げるが、酸性物質の存在は得られた自己乳化型イソシアネート化合物の貯蔵安定性を悪化させ、かつ、貯蔵用の缶に錆を発生させるという別の問題を生じる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、乳化の温度に依存せずに安定なミセルの形成が可能であり、かつ、不純物の少ない自己乳化型イソシアネート化合物を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の(1)〜(3)に示されるものである。
(1)下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩、有機ポリイソシアネート化合物及び活性水素含有化合物を反応させて得られる自己乳化型イソシアネート化合物である。
【化1】

[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]

【0011】
(2) 活性水素含有化合物が水酸基を有することを特徴とする(1)に記載の自己乳化型イソシアネート化合物。

【0012】
(3) (1)又は(2)に記載の自己乳化型イソシアネート化合物の製造方法。

【発明の効果】
【0013】
本発明により、乳化の温度に依存せずに安定なミセルの形成が可能であり、かつ、2分子反応副生物が見られず均一な不純物のない自己乳化型イソシアネート化合物自己乳化型イソシアネート化合物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いることのできる水酸基を含有するイミダゾリウム塩としては、例えば1−オクチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリウムクロライドのように下記一般式(1)で表される。
【化1】

[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0016】
本発明に用いることのできる水酸基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどのモノアルコール、エチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオールなどの水酸基含有化合物、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミンなどのアミノ化合物やアミノアルコール、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。上記の化合物は、単独で又はその2種以上を混合して使用することができる。

【0017】
有機ポリイソシアネート化合物にイミダゾリウム塩と活性水素基含有化合物を添加するときは、イミダゾリウム塩と活性水素基含有化合物はあらかじめ均一な溶液にして同時に添加されなくてはならない。均一な液体でなければ局部的にイミダゾリウム塩濃度が高い部分が発生し、2分子反応体が生成する原因となってしまう。
【0018】
上記、活性水素基含有化合物は、上記のように有機ポリイソシアネート化合物とイミダゾリウム塩を反応させると同時に反応させることが必要であるが、有機ポリイソシアネート化合物とイミダゾリウム塩と反応させる前に有機ポリイソシアネート化合物と反応させておいてもよく、イミダゾリウム塩と有機ポリイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーとした後にさらに当該プレポリマーと反応させることも可能である。
【0019】
イソシアネートとの反応性が比較的穏やかで、かつイソシアネート基と反応後の溶解性が良好なことから活性水素基は水酸基であることが好ましい。また、反応による粘度の上昇を抑えるためにもモノオール化合物が好ましい。
【0020】
本発明に用いることのできる有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1、4−ジイソシアネート、キシレン−1、3−ジイソシアネート、4、4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2、4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2、2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4、4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、2−ニトロジフェニル−4、4′−ジイソシアネート、2、2′−ジフェニルプロパン−4、4′−ジイソシアネート、3、3′−ジメチルジフェニルメタン−4、4′−ジイソシアネート、4、4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1、4−ジイソシアネート、ナフチレン−1、5−ジイソシアネート、3、3′−ジメトキシジフェニル−4、4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1、5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、また、その重合体やそのポリメリック体、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
有機ポリイソシアネート化合物は高分子ポリオールで変性してもよい。高分子ポリオールとは、水酸基を1つ以上有する化合物であり、例えば長鎖ポリオール、具体的にはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール及びこれらのコポリオールなどが挙げられる。これらの長鎖ポリオールは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。これらの長鎖ポリオールによる変性はイミダゾリウム塩による変性と同時に行っても良く、別々に行ってもよい。これらの長鎖ポリオールの数平均分子量は300〜10000が好ましい。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン又はアミノアルコール等の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、ε−カプロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールとしては、多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応などで得られるものが挙げられる。この多価アルコールとしては、エチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを、後述する開始剤を用いて開環重合させた官能基数が1〜5の数平均分子量300〜10、000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールを得るための開始剤としては、官能基数が1〜5、数平均分子量18〜500の各種モノアルコール、グリコール、グリコールエーテル、モノアミン、ジアミン、アミノアルコール、水、尿素などを用いることができる。上記の化合物は単独で又はその2種以上を混合して使用することができる。

【0025】
前記、高分子ポリオールは、有機ポリイソシアネート化合物とイミダゾリウム塩と反応させる前に、またイミダゾリウム塩と有機ポリイソシアネート化合物との反応と同時に、またイミダゾリウム塩と有機ポリイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーとした後に、有機ポリイソシアネート化合物又は当該プレポリマーと反応させることができる。

【0026】
本発明の自己乳化型イソシアネート化合物は、有機ポリイソシアネート化合物に、一般式(1)のイミダゾリウム塩と活性水素基含有化合物を溶解させた均一溶液を一度に加えて反応させてもよく、また、徐々に滴下することによって反応させることも可能である。反応温度は0℃〜120℃が好ましく、10℃〜100℃がより好ましい。反応温度が0℃未満では反応が十分に進まない場合があり、逆に120℃を超えるとイソシアヌレート化やアロファネート化など望ましくない反応が起こる場合がある。反応時間としては特に限定はないが、原料を全て混合した後、目標イソシアネート含量に到達するまでの時間を要し、0.5時間〜20時間であることが好ましい。
【0027】
イミダゾリウム塩と活性水素基含有化合物の当量比(活性水素基/イミダゾリウム塩)が5.4〜100の範囲であることが好ましく、中でも5・7〜10の範囲であることが特に好ましい。この当量比が5.4未満の場合は、2分子反応体が生じる場合がある。また、この当量比が100超の場合は、必要な乳化性を得るためのイミダゾリウム塩を導入しようとした場合、自己乳化型イソシアネート化合物の粘度が過度に上昇し、作業性等に不具合が生じる場合がある。
【0028】
自己乳化型イソシアネート化合物を得るに際しては、イソシアネート基と活性水素基(上記、水酸基含有化合物、高分子ポリオール、水酸基以外を有する活性水素基含有化合物すべてに係る活性水素基)との当量比(イソシアネート基/活性水素基)が5〜1000の範囲であることが好ましく、中でも10〜500の範囲であることが特に好ましい。この当量比が5未満の場合は、自己乳化型イソシアネート化合物の粘度が過度に上昇し、作業性等に不具合が生じる場合がある。また、この当量比が1000超の場合は、自己乳化性が低下する場合がある。

【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
(合成例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール100.0gと、1−クロロオクタン198.9gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、46時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の1−クロロオクタンを140℃・10mmHgにて留去することによりイミダゾリム塩(オニウム塩)「A」を得た。さらに50℃まで冷却した後にメタノール186gを加えて攪拌し、均一なイミダゾリウム塩/活性水素化合物溶液「B−1」を得た。
【0031】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を982g仕込んだ。次いでイミダゾリム塩組成物「B−1」18gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量28.9%、25℃での粘度370mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P1」を得た。
【0032】
(実施例2〜16)
実施例1と同様の装置で同様の操作を表1及び2に記載の量で行いイミダゾリウム塩/活性水素化合物溶液「P2〜16」を得た。
【0033】
(比較例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を990g仕込んだ。次いでイミダゾリム塩組成物「A」10gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量30.4%、25℃での粘度240mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P17」を得た。
【0034】
(比較例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を970g仕込んだ。次いであらかじめアセトン20gに均一に溶解させたイミダゾリム塩組成物「A」10gを室温で攪拌しながら仕込み、室温50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量29.8%、25℃での粘度230mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P18」を得た。
【0035】
(比較例3)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を990gと2- エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業製JP−508)を5g仕込んだ。次いでイミダゾリム塩組成物「A」10gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量30.4%、25℃での粘度240mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P19」を得た。
【0036】
(比較例4)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を982g仕込んだ。次いでメタノール8gを室温で攪拌しながら仕込み、さらにイミダゾリム塩組成物「A」10gを室温で攪拌しながら仕込み、室温50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量28.9%、25℃での粘度370mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P20」を得た。
【0037】
P1〜P20の自己乳化型ポリイソシアネート化合物について、外観の測定結果を、変性量、NCO含量及び粘度のデータとともに表1〜3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
比較例1及び2では、外観が不良になるか、貯蔵安定性は悪くなるが、実施例1では、外観、貯蔵安定性の両方が維持されていることが分かった。

【0042】
(外観の評価方法)
外観;目視にて外観の観察を行った。

◎:微細な浮遊物がまったく見られない
○:微細な浮遊物が僅かに見られる
△:微細な浮遊物が少ない
×:微細な浮遊物が多く見られる

(貯蔵安定性の評価方法)
貯蔵安定性;50℃×2ヵ月後の粘度が合成直後の2倍以下であること。
粘度測定方法;B型回転粘度計DVL−BII(株式会社トキメック製)を用いて25℃での粘度を測定した。


【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の自己乳化型イソシアネート化合物は、中密度繊維板、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボードなどのリグノセルロース系材料の成形体用バインダー、磁気テープバインダー、塗料、接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軟質フォーム、硬質フォームの製造用に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩、有機ポリイソシアネート化合物及び活性水素基含有化合物を反応させて得られる自己乳化型イソシアネート化合物。
【化1】

[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]

【請求項2】
活性水素基含有化合物が水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の自己乳化型イソシアネート化合物。

【請求項3】
有機ポリイソシアネート化合物と、イミダゾリウム塩と水酸基含有化合物を混合した組成物を反応させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自己乳化型イソシアネート化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−70697(P2010−70697A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241940(P2008−241940)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】