説明

自己乳化製剤

【課題】硬質ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに自己乳化性を
有する組成物を充填した、自己乳化性の製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】油性成分(A)と、多価アルコール(B)、水(C)、乳化剤(D)を含有
し、水(C)と多価アルコール(B)の重量比(C/B)が、水1重量に対して多価アル
コール3重量部以上(1/3以下)である組成物を調製し、これを硬質HPMCカプセル
に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己乳化能を有する硬質カプセル製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己乳化とは自然乳化とも呼ばれる現象で、水もしくは消化液に触れることで外力を必要とすることなく自然に乳化する現象のことを指す。この現象を利用した製剤として自己乳化型製剤が知られている。この技術を使用することで、生体内では胆汁酸による乳化工程を経なくても、乳化するため水難溶性薬剤等が吸収されやすくなると言われている。一般に、水に難溶性の生理活性成分は、一般に経口摂取しても吸収されにくく、これまで難溶性生理活性成分の吸収性改善を目的として生理活性成分の微細化や、乳化剤添加による難溶性生理活性成分の吸収性改善が試みられている。
【0003】
近年コエンザイムQ10のように高い生理活性を持ちながらも、難水溶性物質であるために吸収されにくいような物質について、製剤中に1種または2種以上の乳化剤と、それらを溶解させるための油を配合した製剤設計とすることで、胃又は腸で消化液と接触するだけで自然に乳化・分散するように工夫された所謂自己乳化製剤が着目されている。このような製剤は、ゼラチン製等のカプセル剤型とすると取扱いやすく、摂取に適する。
しかし、これまでの自己乳化製剤は、乳化剤の使用量が多く、液量も多くなる。このため消化管の炎症をきたすことがあった。また、乳化剤の一部は、吸収後に肝臓で肝細胞にダメージを与える可能性も指摘されていた。さらにまた乳化剤の使用量が多いと相対的に、1カプセルに含まれる油剤に溶解している生理活性成分が少なくなってしまう。
例えば、特許文献1には、油性溶媒(乳化剤)としてデカグリセリルペンタオレートをコエンザイムQ10の12.5〜13.5倍量用い、安定化剤(補助界面活性剤)としてジアシルモノカプリン酸をコエンザイムQ10の0.4〜1.6倍量配合してなる自己乳化型軟カプセルの例が開示されている。この結果、自己乳化型軟カプセルには、コエンザイムQ10に対して12.9〜15.1倍の乳化剤が必要となっている。
【0004】
一方、このような問題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、リゾレシチンを乳化剤として用い、液状の多価アルコールを一定の比率で配合することによって、多価アルコールと中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を主要成分とする乳化物を調整しこの乳化物に、難溶性の代表例であるコエンザイムQ10を分散・溶解させこれを内包するソフトカプセル製剤を開発し特許出願した(特許文献2)。この発明によれば乳化剤の含有量は0.5〜3重量%にすることができる。
【0005】
しかしソフトカプセルは、カプセル剤皮の肉厚が厚いため、カプセル自身の体積に比して充填可能な容積が硬質カプセルに比して小さく、投与量が多い薬物の場合には、投与されるカプセルの個数が多くなる欠点を有している。近年、硬質カプセルに自己乳化性の液を充填する試みがなされている。特許文献3には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)製の硬質カプセルに自己乳化製剤を充填し、硬質カプセル製剤化しても、カプセル割れを生じることがなく、安定した品質を維持できる硬質カプセル製剤が提供できることが開示されている。しかしこの技術についても、上記したように乳化剤を大量に使用することが必要であった。また特許文献2に開示した乳化剤を0.5%〜3%に減量した組成物は、ソフトカプセル製剤とすることが可能であっても、高粘度のため硬質カプセルに充填できなかった。これまで、HPMC硬質カプセルに乳化剤含量を5%以下にした自己乳化性の溶液を充填したカプセル製剤は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−067019号公報
【特許文献2】特開2011−012003号公報
【特許文献3】特開2000−237284号公報
【特許文献4】特開平03−279325公報
【特許文献5】特開2007-289704号公報
【特許文献6】特開2006−296422号公報
【特許文献7】特開2003−238396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乳化剤の配合量を3〜0.5%とし、自己乳化製剤を充填し、割れや変形の発生しない硬質HPMCカプセル製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
(1)硬質ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに自己乳化性を有する組成物を充填してなる硬質カプセル製剤であって、上記自己乳化性を有する組成物が油性成分(A)と多価アルコール(B)、水(C)、乳化剤(D)を含有し、水(C)と多価アルコール(B)の重量比(C/B)が、水1重量に対して多価アルコール3重量部以上(1/3以下)である硬質カプセル製剤。
(2)油性成分(A)の含量が自己乳化性を有する組成物中に、55重量%以下である(1)記載の硬質カプセル製剤。
(3)自己乳化性を有する組成物中の多価アルコール(B)の含量が30重量%以上である(1)又は(2)記載の硬質カプセル製剤。
(4)自己乳化性を有する組成物中の乳化剤(D)の含有量が3重量%以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
(5)自己乳化性を有する組成物中の油性成分(A)が中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)である(1)〜(4)のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
(6)自己乳化性を有する組成物中の多価アルコール(B)がグリセリン又はソルビトールである(1)〜(5)のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
(7)自己乳化性を有する組成物中の乳化剤(D)がリゾレシチンである(1)〜(6)のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
(8)自己乳化性を有する組成物中の油性成分中に水難溶性の活性成分が含有されている(1)〜(7)のいずれかに記載の硬質カプセル剤。
(9)水難溶性の活性成分がコエンザイムQ10、ビタミンD、ビタミンE、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ノコギリヤシエキスからなる群から選択される1以上の物質である(1)〜(8)のいずれかに記載の硬質カプセル剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施により、高い油性成分比率でありながら、多量に乳化剤を用いることなく、水もしくは消化液と接触すると速やかに乳化・分散する自己乳化性を有する組成物を充填した硬質カプセル製剤が提供される。本製剤は油成分含有量が高いため、油溶性成分を大量に含有させることができ、治療上でも有用である。さらに本製剤は自己乳化組成物が分離することなく安定で、カプセルの割れや、変形も生じない。また、本発明の製剤は、充填する自己乳化組成物が、充填に適した粘度を有しており、生産効率が向上する。さらにまた、本発明の製剤は、水もしくは消化液と接触すると速やかに乳化・分散し速やかに吸収され、目的とする治療効果や栄養効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、HPMC皮膜の硬質カプセルに、水難溶性の成分、油性成分、多価アルコール、乳化剤からなる自己乳化組成物を充填した硬質カプセル製剤である。HPMCカプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを基材として、カラーギナン等のゲル化剤を添加して調製される。特開平03−279325公報に製造方法が記載されており、クオリカプス株式会社やカプスゲルジャパンから市販されている。このカプセルに充填する自己乳化性を有する組成物は、従来のO/W型の乳化ではなく、いわゆるD相乳化と呼ばれるO/D型の乳化組成物である。すなわち目的とする水難溶性の物質、油性成分(A)、多価アルコール(B)、乳化剤(D)、水(C)から構成されるO/D型の乳化物である。油性相成分(A)は55重量%以下、多価アルコール(B)は30重量%以上、乳化剤(D)は3重量%以下とし、さらに水(C)1重量部に対して多価アルコール(B)の含有比率が3より大きくなるように配合することで達成できる。
【0011】
油性成分(A)
即ち油性成分としては、動植物性オイル、例えば大豆油、菜種油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、やし油、小麦胚芽油、コーン胚芽油、オリーブ油、米ぬか油、肝油、魚油、鯨油、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)などが挙げられる。特にMCTが好ましい。これらの油相成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いても良い。多価アルコール含有量を30重量%以下、乳化剤を3重量%以下としたとき、油性成分が55重量%を超えるとO/D型の乳化となりにくい。また油性成分が30重量%以下となると、水難溶性の物質の配合量が少なくなる。油性成分の総量は、目的とする水難溶性成分の油への溶解度、あるいは水難溶性成分の配合量で適宜選択することができる。本発明の実施に当たってはD相乳化をする最少量でも達成することができる。例えば本発明実施例12においては、油性成分量を3.83%としても実施可能であった。なお、本発明においては、上記にあげた油に、下記の水難溶性分をあわせた配合量を油性成分(A)の重量とする。
水難溶性の物質であって、これらの動植物製オイル等に溶解する脂溶性物質としては、例えば、コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ10、リポ酸、α、β-、γ-δ-トコフェロール、α、β-、γ-δ-トコトリエノール、ビタミンK、α、β-、γ-δ-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンP、DHA、EPA、スクワラン、ノコギリヤシエキス、植物ステロールなどが挙げられる。これらの動植物性オイルに溶解する脂溶性物質を溶解する範囲内で製剤の目的に応じて適宜添加することができる。
【0012】
多価アルコール(B)
多価アルコールとしてはグリセリンが適しており、特に濃グリセリンが望ましい。一般に濃グリセリンは日本薬局方に収載されている規格(多価アルコール含量98.0〜101.0%)を満たすものを指すが、食品添加物公定書で定められている規格(グリセリン含量95.0%以上)のものでも構わない。また、グリセリンに代えてソルビトールを使用することもできるし、グリセリンとソルビトールを併用しても良い。あるいは、糖アルコールとよばれるマルトースやデキストリンの還元物であっても使用可能である。多価アルコールの配合量は、好ましい態様として30〜50重量%であるが、目的とする水難溶性の成分の配合量は、すなわち、油性成分量に対応して配合上限を決定することができる。本発明の実施例においては多価アルコールが85重量%であっても、目的とする自己乳化性を有する組成物を含有する硬質カプセル剤を得ることができることを確認している。
【0013】
乳化剤(D)
乳化剤は、乾燥重量換算(水分量を除き)で配合量は3重量%以下とすることが好ましい。3重量%を超えると、相対的に目的とする水難溶性物質の量を減らさなければならず、また乳化剤による不快感や長期間摂取した時の胃部不快感が発生する。また0.5%より少ないと、自己乳化性が低く、油成分が多価アルコールと分離したりする。また、自己乳化性を有する組成物の粘度が上昇して硬質HPMCカプセルに充填できなくなる場合があるため注意を要する。乳化剤としてはリゾレシチンが製品設計上好ましく、さらに好ましくは原料中に含まれるリゾフォスファチジルコリンの濃度が少なくとも18%以上であるものがよく、特に好ましくはリゾフォスファチジルコリンの濃度が65%以上のものがよい。
【0014】
水分(C)
本発明においては、硬質カプセルの割れや変形を防ぐためには、自己乳化能を有する製剤中の水分の量を制御することが重要である。乳化能を維持し、かつカプセルの安定化を担保するためには、水分と多価アルコールの重量比を1/3以下とすることが重要である。この数値を超えて、水分量が増加すると、硬質カプセルの割れや変形が発生する。
【0015】
その他成分
自己乳化性を有する組成物中には、必要に応じて静菌作用を有するグリシン、ベタイン、酢酸ナトリウム、エタノールや粘度調整剤として、動植物性ワックス(分散剤)、二酸化ケイ素、澱粉または澱粉誘導体等を配合することができる。また、多価アルコールを含むので水溶性のビタミンやミネラル等水溶性の有効成分を配合することができる。
【0016】
自己乳化性を有する組成物の製造方法
本発明の自己乳化性を有する組成物は所謂D相乳化と呼ばれる技術を用いて調製される。D相乳化法は、D相(界面活性剤相)を生成させる代わりに、水溶性の多価アルコール添加により非イオン界面活性剤のHLBを調整してD相を形成させ、これに油相を分散させて微細なエマルション(O/D)を得る。このエマルションをHPMC製の硬質カプセルに充填することで自己乳化製剤となる。この製剤は胃や腸内でカプセルが溶解して瞬時にO/Wエマルションとなる。
O/D乳化組成物は水に触れただけでO/Wエマルションを生じる予備乳化状態にある。従って、これを、HPMC製カプセルに充填することで、所望の本発明の自己乳化性を有する組成物を充填してなる硬質カプセル製剤を得ることができる。充填にあたっては、硬質カプセルに液体を充填するための装置、例えばカプスゲルジャパンから提供されている、充填装置などを用いて行うことができる。充填する液量や、カプセルの容量は目的に応じて種々選択することができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例、比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例 ・比較例
1.表1〜表6の組成で、自己乳化性製剤を調製した。調製方法は以下の通りである。 (1)油性成分として中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT油、商品名:ココナードRK花王 株式会社製)、水難溶性成分としてコエンザイムQ10(CoQ10)をビーカーに秤量し、 ディスパーサー(新東科学株式会社製)を用いて60℃加温下で攪拌混合を行い、完 全に溶解させた。
(2)乳化剤又はリゾレシチン(SLP-LPC70辻製油株式会社)、グリセリン(食品添加物 グリセリン:花王株式会社)又はソルビトール水あめ(ソルビットL−70 三菱商 事フードテック株式会社)、水をステンレスジョッキに秤量し、ディスパーサーで攪 拌を行った。
(3) (2)の作業を行いながら、(1)の溶液をゆっくりと少量ずつ(2)中に添加した。(投 入中、溶液分離が生じていないことを確認しながら行った。回転速度は300rpm 〜1000rpmの間で必要に応じて調整した。)
(4)(3)で得られた溶液を、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)で乳化処理を行っ た。処理は10000rpm10分間の条件で行った。
(5)得られた溶液は比重測定、粘度測定、動的光散乱による粒度分布測定を行い、均質 かつ一定の物理的特性を有していることを確認した。(なお比重測定は1mLのテル モシリンジに溶液を採取し、1mLあたりの溶液重量を測定することにより求め た。)
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
2.次いで各溶液を硬質カプセルに充填した。
液体充填ハードカプセル製造機にて溶液を2号サイズのHPMCハードカプセル(商品名Vcaps plus カプスゲルジャパン株式会社製)に充填した。あわせて充填適性を評価した。
【0025】
3.保存安定性試験
上記2で得たカプセルを、それぞれ20カプセルをアルミ蒸着袋に乾燥剤1gとともに密封包装し、40℃相対湿度75%の環境に1週間静置して変化を観察した。
【0026】
4.判定
保存安定性試験終了後アルミ蒸着袋を開封し、カプセルの状態を目視で評価した。充填適性がよく、20カプセル中に異常を認めなかったものを評価○とし、一個でも異常が発生したものを×とし、異常をコメントした。また外見に異常のない例については、カプセルを1個を50ml水中に入れ、カプセルの溶解性、自己乳化状態を評価した。一個でもカプセルの溶解性遅延や自己乳化の異常、粘性の変化が観察された場合は×判定とした。各実施例、比較例の判定結果を表7、表8に示した。
【0027】
【表7】

【0028】
【表8】

【0029】
上記表7、表8に示すとおり、本発明の実施例はいずれも硬質HPMCカプセルの変形や割れ、外観の異常などの発生もなく良好な自己乳化製剤であった。一方比較例の製剤は変形や乳化の異常が発生した。また充填に困難な乳化物も発生し、カプセル製剤の調製に支障をきたすものが発生した。特に水と多価アルコールの含有比率が1/3以下になる場合が好ましかった。また多価アルコールの含有量は30重量%以上、油成分の総量は55重量%以下の場合、充填する組成物の粘度がカプセルに充填するためには適切な粘度であった。
また実施例の硬質カプセルは水中で速やかに溶解し、内容物が分散し適切な自己乳化性を示した。
【0030】
実施例14
表9の組成で自己乳化製剤を調製した。
【0031】
【表9】

【0032】
(1)油性成分として中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT油、商品名:ココナードRK花王 株式会社製)、水難溶性成分としてビタミンD3(和光純薬社)をビーカーに秤量 し、ディスパーサー(新東科学株式会社製)を用いて60℃加温下で攪拌混合を行 い、完全に溶解させた。
(2)乳化剤又はリゾレシチン(SLP-LPC70辻製油株式会社)、グリセリン(食品添加物 グリセリン:花王株式会社)又はソルビトール水あめ(ソルビットL−70 三菱商 事フードテック株式会社)、水をステンレスジョッキに秤量し、ディスパーサーで攪 拌を行った。
(3) (2)の作業を行いながら、(1)の溶液をゆっくりと少量ずつ(2)中に添加した。(投 入中、溶液分離が生じていないことを確認しながら行った。回転速度は300rpm 〜1000rpmの間で必要に応じて調整した。)
(4)(3)で得られた溶液を、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)で乳化処理を行っ た。処理は10000rpm10分間の条件で行った。
(5)得られた溶液は比重測定、粘度測定、動的光散乱による粒度分布測定を行い、均質 かつ一定の物理的特性を有していることを確認した。(なお比重測定は1mLのテル モシリンジに溶液を採取し、1mLあたりの溶液重量を測定することにより求め た。)
【0033】
次いで実施例1と同様に溶液を硬質カプセルに充填した。
液体充填ハードカプセル製造機にて溶液を2号サイズのHPMCハードカプセル(商品名Vcaps plus カプスゲルジャパン株式会社製)に充填した。あわせて充填適性を評価した。
得られたカプセルを、それぞれ20カプセルをアルミ蒸着袋に乾燥剤1gとともに密封包装し、40℃ 相対湿度75%の環境に1週間静置して変化を観察した。異常は観察されなかった。
保存安定性試験終了後アルミ蒸着袋を開封し、カプセルの状態を目視で評価した。充填適性がよく、20カプセル中に異常を認めなかった。また外見に異常のない例については、カプセル1個を50ml水中に入れ、カプセルの溶解性、自己乳化状態を評価した。異常は観察されなかった。
【0034】
実施例15
表10の組成で自己乳化製剤を調製した。
【0035】
【表10】

【0036】
(1)水難溶性成分としてEPAとDHAを含有しているEPA/DHA含有魚油(商品 名:EPA−28、マルハ株式会社製)を油成分とし、水難溶性成分としてミックス トコフェロール(商品名 イーミックス−50L タマ生化学社)をビーカーに秤量 し、ディスパーサー(新東科学株式会社製)を用いて60℃加温下で攪拌混合を行 い、完全に溶解させた。
(2)乳化剤又はリゾレシチン(SLP-LPC70辻製油株式会社)、グリセリン(食品添加物 グリセリン:花王株式会社)又はソルビトール水あめ(ソルビットL−70 三菱商 事フードテック株式会社)、水をステンレスジョッキに秤量し、ディスパーサーで攪 拌を行った。
(3) (2)の作業を行いながら、(1)の溶液をゆっくりと少量ずつ(2)中に添加した。(投 入中、溶液分離が生じていないことを確認しながら行った。回転速度は300rpm 〜1000rpmの間で必要に応じて調整した。)
(4)(3)で得られた溶液を、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)で乳化処理を行っ た。処理は10000rpm10分間の条件で行った。
(5)得られた溶液は比重測定、粘度測定、動的光散乱による粒度分布測定を行い、均質 かつ一定の物理的特性を有していることを確認した。(なお比重測定は1mLのテル モシリンジに溶液を採取し、1mLあたりの溶液重量を測定することにより求め た。)
【0037】
次いで実施例1と同様に溶液を硬質カプセルに充填した。
液体充填ハードカプセル製造機にて溶液を2号サイズのHPMCハードカプセル(商品名Vcaps plus カプスゲルジャパン株式会社製)に充填した。あわせて充填適性を評価した。
得られたカプセルを、それぞれ20カプセルをアルミ蒸着袋に乾燥剤1gとともに密封包装し、40℃ 相対湿度75%の環境に1週間静置して変化を観察した。異常は観察されなかった。
保存安定性試験終了後アルミ蒸着袋を開封し、カプセルの状態を目視で評価した。充填適性がよく、20カプセル中に異常を認めなかった。また外見に異常のない例については、カプセル1個を50ml水中に入れ、カプセルの溶解性、自己乳化状態を評価した。異常は観察されなかった。
【0038】
実施例15
表11の組成で自己乳化製剤を調製した。
【0039】
【表11】

【0040】
(1)水難溶性成分としてγ−オリザノールを含有している米油(オリザ油化株式会社 製)を油成分とし、水難溶性成分としてビタミンE(商品名 理研Eオイル710、 理研ビタミン社)をビーカーに秤量し、ディスパーサー(新東科学株式会社製)を用 いて60℃加温下で攪拌混合を行い、完全に溶解させた。
(2)乳化剤又はリゾレシチン(SLP-LPC70辻製油株式会社)、グリセリン(食品添加物 グリセリン:花王株式会社)又はソルビトール水あめ(ソルビットL−70 三菱商 事フードテック株式会社)、水をステンレスジョッキに秤量し、ディスパーサーで攪 拌を行った。
(3) (2)の作業を行いながら、(1)の溶液をゆっくりと少量ずつ(2)中に添加した。(投 入中、溶液分離が生じていないことを確認しながら行った。回転速度は300rpm 〜1000rpmの間で必要に応じて調整した。)
(4)(3)で得られた溶液を、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)で乳化処理を行っ た。処理は10000rpm10分間の条件で行った。
(5)得られた溶液は比重測定、粘度測定、動的光散乱による粒度分布測定を行い、均質 かつ一定の物理的特性を有していることを確認した。(なお比重測定は1mLのテル モシリンジに溶液を採取し、1mLあたりの溶液重量を測定することにより求め た。)
【0041】
次いで実施例1と同様に溶液を硬質カプセルに充填した。
液体充填ハードカプセル製造機にて溶液を2号サイズのHPMCハードカプセル(商品名Vcaps plus カプスゲルジャパン株式会社製)に充填した。あわせて充填適性を評価した。
得られたカプセルを、それぞれ20カプセルをアルミ蒸着袋に乾燥剤1gとともに密封包装し、40℃ 相対湿度75%の環境に1週間静置して変化を観察した。異常は観察されなかった。
【0042】
実施例16
表12の組成で自己乳化製剤を調製した。
【0043】
【表12】

【0044】
(1)水難溶性成分としてノコギリヤシ果実エキスを含有している油(商品名:セレノア セイセイエキス、インデナジャパン株式会社製)を油成分とし、これを60℃加温下 で攪拌混合を行い、完全に溶解させた。
(2)乳化剤又はリゾレシチン(SLP-LPC70辻製油株式会社)、グリセリン(食品添加物 グリセリン:花王株式会社)又はソルビトール水あめ(ソルビットL−70 三菱商 事フードテック株式会社)、水をステンレスジョッキに秤量し、ディスパーサーで攪 拌を行った。
(3) (2)の作業を行いながら、(1)の溶液をゆっくりと少量ずつ(2)中に添加した。(投 入中、溶液分離が生じていないことを確認しながら行った。回転速度は300rpm 〜1000rpmの間で必要に応じて調整した。)
(4)(3)で得られた溶液を、ホモミキサー(プライミクス株式会社製)で乳化処理を行っ た。処理は10000rpm10分間の条件で行った。
(5)得られた溶液は比重測定、粘度測定、動的光散乱による粒度分布測定を行い、均質 かつ一定の物理的特性を有していることを確認した。(なお比重測定は1mLのテル モシリンジに溶液を採取し、1mLあたりの溶液重量を測定することにより求め た。)
【0045】
次いで実施例1と同様に溶液を硬質カプセルに充填した。
液体充填ハードカプセル製造機にて溶液を2号サイズのHPMCハードカプセル(商品名Vcaps plus カプスゲルジャパン株式会社製)に充填した。あわせて充填適性を評価した。
得られたカプセルを、それぞれ20カプセルをアルミ蒸着袋に乾燥剤1gとともに密封包装し、40℃ 相対湿度75%の環境に1週間静置して変化を観察した。異常は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに自己乳化性を有する組成物を充填してなる硬質カプセル製剤であって、上記自己乳化性を有する組成物が油性成分(A)と多価アルコール(B)、水(C)、乳化剤(D)を含有し、水(C)と多価アルコール(B)の重量比(C/B)が、水1重量に対して多価アルコール3重量部以上(1/3以下)である硬質カプセル製剤。
【請求項2】
油性成分(A)の含量が自己乳化性を有する組成物中に、55重量%以下である請求項1記載の硬質カプセル製剤。
【請求項3】
自己乳化性を有する組成物中の多価アルコール(B)の含量が30重量%以上である請求項1又は2記載の硬質カプセル製剤。
【請求項4】
自己乳化性を有する組成物中の乳化剤(D)の含有量が3重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
【請求項5】
自己乳化性を有する組成物中の油性成分(A)が中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)である請求項1〜4のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
【請求項6】
自己乳化性を有する組成物中の多価アルコール(B)がグリセリン又はソルビトールである請求項1〜5のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
【請求項7】
自己乳化性を有する組成物中の乳化剤(D)がリゾレシチンである請求項1〜6のいずれかに記載の硬質カプセル製剤。
【請求項8】
自己乳化性を有する組成物中の油性成分中に水難溶性の生理活性成分類が含有されている請求項1〜7のいずれかに記載の硬質カプセル剤。
【請求項9】
水難溶性の生理活性成分類がコエンザイムQ10、ビタミンD、ビタミンE、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ノコギリヤシエキスからなる群から選択される1以上の物質である請求項1〜8のいずれかに記載の硬質カプセル剤。

【公開番号】特開2012−180337(P2012−180337A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270880(P2011−270880)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】