自己保持型ソレノイド
【課題】コイル励磁後通電を終了しても可動鉄芯を強力に保持できる、自己保持型ソレノイドを提供する。
【解決手段】自己保持型ソレノイド1を、コイル2と、コイル2が内蔵されるケース3と、コイル2の内周側に配設された固定鉄心4と固定鉄心4に対向して配設されコイル2内を摺動する可動鉄心5と、コイル2下側に配設された永久磁石6と、コイル2と永久磁石6との間に配設された第一のヨーク7と、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設された第二のヨーク8と、で構成する。第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1より大きく形成して、ケース3から第二のヨーク8に流れる、永久磁石6の磁束を抑制する。
【解決手段】自己保持型ソレノイド1を、コイル2と、コイル2が内蔵されるケース3と、コイル2の内周側に配設された固定鉄心4と固定鉄心4に対向して配設されコイル2内を摺動する可動鉄心5と、コイル2下側に配設された永久磁石6と、コイル2と永久磁石6との間に配設された第一のヨーク7と、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設された第二のヨーク8と、で構成する。第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1より大きく形成して、ケース3から第二のヨーク8に流れる、永久磁石6の磁束を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル励磁なしで可動鉄芯を保持できる自己保持型ソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自己保持型ソレノイドとして、特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
特許文献1において、自己保持型ソレノイドは、ソレノイドコイルと、ソレノイドコイルの内周側に配置されたセンターポストと、センターポストの軸方向一端側に配置され、センターポストに向けて進退するプランジャと、ソレノイドコイルの軸方向一端側に配置されたプランジャ保持用のマグネットと、マグネットの軸方向一端側に配置されたヨークと、を有して構成されていた。
【0004】
マグネットは、ソレノイドコイルが巻きつけられるボビンとヨークと、に挟み込まれて配置され、コイルを励磁して、引き寄せられたプランジャをマグネットの磁力で保持して、通電を終了しても保持状態を維持するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−59106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に自己保持型ソレノイドでは、コイルに通電したときに発生する磁束の流れと、永久磁石(マグネット)により発生する磁束とは、同じ向きに設定される。
【0007】
しかし、上述した自己保持型ソレノイドのマグネットとヨークとの配置では、マグネットの磁束が、ヨークで二方向に分かれて流れ、図3に参照するように、コイルに通電したときと、逆方向の磁束の流れMXが発生してしまう。これにより、磁束の流れが分散して、マグネットの吸着力が弱まり、振動や外力等によってプランジャが離脱してしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、コイル励磁後通電を終了しても可動鉄芯(プランジャ)を強力に保持できる、自己保持型ソレノイドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、コイルと永久磁石との間に第一のヨークを配設して、第一のヨークとの間に永久磁石を介してコイルとは反対側に第二のヨークを配設して、第二のヨークの外周縁とケースの周壁との距離を、第一のヨークの外周縁とケースの周壁との距離とは異なるように形成している。
【0010】
これにより、第一のヨークの外周縁とケースとの距離と、第二のヨークの外周縁とケースとの距離と、で差が生じるので、いずれか一方の距離の差が大きい部分では、大きな磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、永久磁石によって生じる、コイルに通電したときと逆方向の磁束の流れが、抑制される。よって、コイル励磁後通電を終了しても、永久磁石の磁束による吸着力がばねの付勢力を上回り、可動鉄心を強力に保持できる。
【0011】
請求項2記載の発明のように、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径より大径に形成することによって、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明のように、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径の50〜80%の範囲にすれば、より好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0013】
請求項4記載の発明のように、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径より大径に形成することによっても、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0014】
また、請求項5記載の発明のように、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径の45〜75%の範囲にしても、好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0015】
請求項6記載の発明のように、請求項2記載の発明において永久磁石の外径を、第一のヨークの外径より小径に形成することによっても、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0016】
また、請求項7記載の発明のように、永久磁石の外径を、第一のヨークの外径の61〜96%の範囲にしても好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、コイル励磁後通電を終了しても可動鉄芯を強力に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における自己保持型ソレノイドの第一の実施形態の断面図である。
【図2】本発明における自己保持型ソレノイドの第二の実施形態の断面図である。
【図3】従来の自己保持型ソレノイドと同様な配置にした場合の磁束の流れを表した断面図である。
【図4】本発明における第三の実施形態の断面図である。
【図5】第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図6】第一のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図7】永久磁石の外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図8】永久磁石の外径を45mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図9】ケースの外径を70mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図10】ケースの外径を50mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図11】ケースの高さを35mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図12】(a)ケースを円形箱状にした時、(b)ケースを四角筒箱状にした時、(c)ケースを六角筒箱状にした時、の第二のヨークの外周縁と、ケースの周壁との間と、第一のヨークの外周縁と、ケースの周壁との間の「距離」の定義を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における自己保持型ソレノイドの第一の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、図1における上下を、上下方向とし、左右を左右方向とする。
【0020】
図1に示すように、自己保持型ソレノイド(以下、「ソレノイド」という。)1は、コイル2と、コイル2が内蔵されるケース3と、コイル2の内周側に配設された固定鉄心4と、固定鉄心4に対向して配設されコイル2内を摺動する可動鉄心5と、可動鉄心5内に配設され可動鉄心5を固定鉄心4から離脱する側に付勢するばね10と、コイル2下側に配設された永久磁石6と、コイル2と永久磁石6との間に配設された第一のヨーク7と、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設された第二のヨーク8と、を備えている。
【0021】
ケース3は、磁性体で周壁33を有した下側が開口した略円筒箱状に形成され、天井壁31の中央部には、後述する固定鉄心4の凸部41が挿入される挿入口32が形成されている。
【0022】
コイル2は、導線をボビン9に巻き付けて形成され、上側に吸着用コイル21、下側に離脱用コイル22を、有している。ボビン9は合成樹脂で形成され、第三のヨーク11を介して、ケース3内に配設されている。第三のヨーク11は、磁性体で中央部に挿通孔を有し円盤状に形成されている。
【0023】
固定鉄心4は、磁性体で上部に凸部41を有して円柱状に形成され、ボビン9の中空部91の上部に嵌入されている。凸部41は、第三のヨーク11及びケース3を挿通して、ケース3の外側に突出するように配設され、図示しないナットが螺合可能に形成されている。固定鉄心4の下部において、パイプ12が嵌入されている。パイプ12は金属製で、ボビン9の中空部91を通るとともに、ボビン9の下側に突出するように配設されている。
【0024】
可動鉄心5は、磁性体でパイプ12内を摺動可能な円柱状に形成され、上面53から下側に凹んだ収納凹部51を有するとともに、下部に図示しない弁部材と係合する係合凹部52が形成されている。ばね10は、収納凹部51に配設され、固定鉄心4の下面と当接して、可動鉄心5を下側に付勢している。
【0025】
永久磁石6は、中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、第一のヨーク7よりも小さく、かつ、第二のヨーク8より大きく形成されている。
【0026】
第一のヨーク7は、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第二のヨーク8より大きく形成されている。
【0027】
第二のヨーク8は、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第一のヨーク7より小さく形成されている。
【0028】
図1に示すように、上からボビン9、第一のヨーク7、永久磁石6、第二のヨーク8の順に配設され、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1より大きく形成されている。ここで、「距離」とは、図12(a)に参照するように、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の及び、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との間が、最短距離となる場合をいう。例えば、本実施形態では、ケース3、第一のヨーク7、第二のヨーク8は、ケース3を下側からみた時に同心円形なので、その中心Oからケース3の周壁33に向かって任意の直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1をいう。
【0029】
第二のヨーク8、永久磁石6、第一のヨーク7、ボビン9、及び第三のヨーク11は、パイプ12の下端で、固定部材13により、下側からケース3の天井壁31に押圧された状態で固定されている。
【0030】
ソレノイド1の作用について説明する。吸着用コイル21に通電すると、図1の右側部分に示すように、第一のヨーク7、ケース3、第三のヨーク11、固定鉄心4、可動鉄心5、パイプ12間をループする、固定鉄心4側に可動鉄心5を吸引する方向の磁束の流れKが発生する。この時、第二のヨーク8、永久磁石6、第一のヨーク7、ケース3、第三のヨーク11、固定鉄心4、可動鉄心5、パイプ12間をループする、永久磁石6の磁束の流れMも合わせて可動鉄心5に作用する。可動鉄心5が固定鉄心4に吸着されると、吸着用コイル21への通電を切る。可動鉄心5は、ばね10により下側に付勢されているが、永久磁石6の磁束の流れMは、ばね10の付勢力を上回るので、可動鉄心5の吸着は維持される。
【0031】
可動鉄心5の吸着を解除するには、離脱用コイル22に通電する。すると、図1の左側部分に示すように、第一のヨーク7、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3間をループする、永久磁石6の磁束の流れMと逆方向の磁束の流れGが発生し、互いに相殺してばね10の付勢力が上回り、可動鉄心5が下側に戻される。
【0032】
ソレノイド1では、コイル2と永久磁石6との間に第一のヨーク7を配設して、第一のヨーク7と異径に形成された第二のヨーク8を、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設して、第一のヨーク7の外径を、第二のヨーク8より大径に形成して、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との間の距離D1より大きく形成している。
【0033】
これにより、ケース3の周壁33から第二のヨーク8に流れる永久磁石6の磁束は、大きな磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、弱められる。したがって、第二のヨーク8とケース3との隙間では、コイル2に通電したときと逆方向の磁束の流れが抑制される。よって、コイル2励磁後通電を終了しても永久磁石6の磁束による吸着力がばねの付勢力を上回り、可動鉄心5を強力に保持できる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0034】
本発明における自己保持型ソレノイドの第二の実施形態について説明する。以下の説明において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0035】
ソレノイド1Aでは、図2に示すように、第一のヨーク7Aが、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第二のヨーク8Aより小さく形成されている。
【0036】
第二のヨーク8Aは、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第一のヨーク7Aより大きく形成されている。
【0037】
第一のヨーク7Aの外周縁71と、ケース3の周壁33との間の距離D1を、第二のヨーク8Aの外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2より大きく形成している。
【0038】
ソレノイド1Aでは、吸着用コイル21に通電すると、図2の右側部分に示すように、第一の実施形態と同様に磁束の流れKが発生し、この時、第二のヨーク8A、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3間をループする。永久磁石6の磁束の流れM2も、永久磁石6、第一のヨーク7A、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3、第二のヨーク8A間をループして、吸着用コイル21による磁束の流れKと合わせて可動鉄心5に作用する。
【0039】
ソレノイド1Aでは、第二のヨーク8Aの外径を、第一のヨーク7Aの外径より大径に形成することによっても、ケース3から第一のヨーク7Aに流れる永久磁石6の磁束は、磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、弱められる。よって、可動鉄心5の吸着力を高めることができる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0040】
本発明における自己保持型ソレノイドの第三の実施形態について説明する。
【0041】
ソレノイド1Bでは、図4に示すように、ケース3Bを、上下方向において上述した実施形態よりも短く形成して、第二のヨーク8Bの外径を、ケース3Bの外径と同一にして、第二のヨーク8Bをケース3Bと一体化させて形成している。
【0042】
これにより、第一のヨーク7Bの外周縁71とケース3Bの周壁33との距離D1と、第二のヨーク8Bの外周縁81とケース3Bの周壁33との距離D2(この場合は0となる)と、で差が生じるので、距離が大きい第一のヨーク7Bの外周縁71とケース3Bの周壁33との間では、吸着用コイル21に通電したときと、逆方向の磁束の流れが抑制される。よって、吸着用コイル21励磁後通電を終了しても永久磁石6の磁束による吸着力のみで可動鉄心5を強力に保持できる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0043】
また、第二のヨーク8Bをケース3Bと一体化することで、塵芥、油分、水分の侵入を防ぐことができ、ソレノイド1Bの耐候性を高めることができる。
【0044】
図5〜11において、具体的な実験結果をグラフにして示す。
【0045】
図5では、基本形としてケースの外径を60mm(図5中φ60で表わしている。以下同様とする。)、第一のヨークの外径を57mm、永久磁石{残留磁束密度Br 0.4T、保持力bHc 253kA/m、保持力iHc 263kA/m、最大エネルギー積BHmax 30kJ/m3}、外径を41.8mm、固定鉄心から可動鉄心が離脱する時の、ばねの付勢力を4.2Nに設定して、第二のヨークの外径を変化させて、可動鉄心を吸引する吸引力をニュートン(N)で表わしている。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜50mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約87%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0046】
また、図6では、基本形と、ケースの外径、永久磁石及びばねの設定を変えずに、第二のヨークの外径を57mmに設定し、第一のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第一のヨークの外径が25mm〜45mmの間(第二のヨークの外径に対して約44%〜約79%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0047】
また、図7では、基本形と、ケースの外径、及びばねの設定を変えずに、第一のヨークの外径を57mm、第二のヨークの外径37mmに設定し、永久磁石の外径を変化させたものを表している。少なくとも、永久磁石の外径が35mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約61〜約96%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0048】
また、図8では、基本形と、ばねの設定を変えずに、第一のヨークの外径を57mm、永久磁石の外径を45mmに設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜50mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約87%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0049】
また、図9では、ケースの外径を70mm、第一のヨークの外径を66.5mm、永久磁石の外径41.8mm、に設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約38%〜約83%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0050】
また、図10では、ケースの外径を50mm、第一のヨークの外径を48mm、永久磁石の外径41.8mm、に設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mの間(第一のヨークの外径に対して約52%〜約94%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0051】
また、図11では、基本形と、ケースの外径、第一のヨークの外径、永久磁石の外径を同じにし、ケースの高さを基本形の41mmから35mmに変更して、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約96%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。第二のヨークの外径をケースの外径の60mmと同じにしても、ばねの付勢力4.2Nと同等で可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0052】
以上の結果から、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径の50〜80%の範囲にすれば、より好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。また、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径の45〜75%の範囲にしても、好適に可動鉄心5の吸着力を高めることができる。また、永久磁石の外径を、第一のヨークの外径の61〜96%の範囲にしても、好適に可動鉄心5の吸着力を高めることができる。
【0053】
なお、コイル2は、吸着用コイル21と、離脱用コイル22とに分割して構成したが、導線の巻き方向、電流の流れを切り替えるようにして、単独で構成してもよい。
【0054】
また、第一の実施形態において、第一のヨーク7及び第二のヨーク8と、ケース3との間、第二の実施形態において、第一のヨーク7A及び第二のヨーク8Aと、ケース3との間に隙間を設けているが、外径が大きい側の、第一の実施形態において、第一のヨーク7と、ケース3との間、第二の実施形態において、第二のヨーク8Aと、ケース3との間に隙間を設けない形態にしてもよい。
【0055】
また、ケース3、3Bを円筒箱状のものを用いているが、それらの形状には、こだわらない。例えば、多角筒箱状のものに用いることができる。それに伴い、第一のヨーク、第二のヨーク等をケースの形状に対応した板状に形成してもよい。この場合の「距離」は、図12(b)に参照するように、第二のヨーク8Yの外周縁81と、ケース3Yの周壁33との間の及び、第一のヨーク7Yの外周縁71と、ケース3Yの周壁33との間が、最短距離となる場合をいう。
【0056】
例えば、ケース3、3Bを四角筒箱状にすれば、ケース3Y、第一のヨーク7Y、第二のヨーク8Yは、ケース3Yを下側からみた時に相似な四角形となるのでそれぞれの、任意の一辺を直交する直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8Yの外周縁81と、ケース3Yの周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7Yの外周縁71と、ケース3Yの周壁33との距離D1をいう。
【0057】
また、例えば、ケース3、3Bを六角筒箱状にすれば、ケース3Z、第一のヨーク7Z、第二のヨーク8Zは、ケース3Zを下側からみた時に相似な六角形となるので、それぞれの任意の一辺を直交する直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8Zの外周縁81と、ケース3Zの周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7Zの外周縁71と、ケース3Zの周壁33との距離D1をいう。
【符号の説明】
【0058】
1、1A、1B 自己保持型ソレノイド
2 コイル
21 吸着用コイル
22 離脱用コイル
3、3B、3Y、3Z ケース
33 周壁
4 固定鉄心
5 可動鉄心
6 永久磁石
7、7A、7Y、7Z 第一のヨーク
71 外周縁
8、8A、8Y 8Z 第二のヨーク
81 外周縁
D1 距離
D2 距離
O 中心
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル励磁なしで可動鉄芯を保持できる自己保持型ソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自己保持型ソレノイドとして、特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
特許文献1において、自己保持型ソレノイドは、ソレノイドコイルと、ソレノイドコイルの内周側に配置されたセンターポストと、センターポストの軸方向一端側に配置され、センターポストに向けて進退するプランジャと、ソレノイドコイルの軸方向一端側に配置されたプランジャ保持用のマグネットと、マグネットの軸方向一端側に配置されたヨークと、を有して構成されていた。
【0004】
マグネットは、ソレノイドコイルが巻きつけられるボビンとヨークと、に挟み込まれて配置され、コイルを励磁して、引き寄せられたプランジャをマグネットの磁力で保持して、通電を終了しても保持状態を維持するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−59106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に自己保持型ソレノイドでは、コイルに通電したときに発生する磁束の流れと、永久磁石(マグネット)により発生する磁束とは、同じ向きに設定される。
【0007】
しかし、上述した自己保持型ソレノイドのマグネットとヨークとの配置では、マグネットの磁束が、ヨークで二方向に分かれて流れ、図3に参照するように、コイルに通電したときと、逆方向の磁束の流れMXが発生してしまう。これにより、磁束の流れが分散して、マグネットの吸着力が弱まり、振動や外力等によってプランジャが離脱してしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、コイル励磁後通電を終了しても可動鉄芯(プランジャ)を強力に保持できる、自己保持型ソレノイドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、コイルと永久磁石との間に第一のヨークを配設して、第一のヨークとの間に永久磁石を介してコイルとは反対側に第二のヨークを配設して、第二のヨークの外周縁とケースの周壁との距離を、第一のヨークの外周縁とケースの周壁との距離とは異なるように形成している。
【0010】
これにより、第一のヨークの外周縁とケースとの距離と、第二のヨークの外周縁とケースとの距離と、で差が生じるので、いずれか一方の距離の差が大きい部分では、大きな磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、永久磁石によって生じる、コイルに通電したときと逆方向の磁束の流れが、抑制される。よって、コイル励磁後通電を終了しても、永久磁石の磁束による吸着力がばねの付勢力を上回り、可動鉄心を強力に保持できる。
【0011】
請求項2記載の発明のように、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径より大径に形成することによって、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明のように、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径の50〜80%の範囲にすれば、より好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0013】
請求項4記載の発明のように、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径より大径に形成することによっても、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0014】
また、請求項5記載の発明のように、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径の45〜75%の範囲にしても、好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0015】
請求項6記載の発明のように、請求項2記載の発明において永久磁石の外径を、第一のヨークの外径より小径に形成することによっても、可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【0016】
また、請求項7記載の発明のように、永久磁石の外径を、第一のヨークの外径の61〜96%の範囲にしても好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、コイル励磁後通電を終了しても可動鉄芯を強力に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における自己保持型ソレノイドの第一の実施形態の断面図である。
【図2】本発明における自己保持型ソレノイドの第二の実施形態の断面図である。
【図3】従来の自己保持型ソレノイドと同様な配置にした場合の磁束の流れを表した断面図である。
【図4】本発明における第三の実施形態の断面図である。
【図5】第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図6】第一のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図7】永久磁石の外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図8】永久磁石の外径を45mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図9】ケースの外径を70mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図10】ケースの外径を50mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図11】ケースの高さを35mmにして第二のヨークの外径を変化させた場合の永久磁石が可動鉄心を吸引する吸引力のグラフである。
【図12】(a)ケースを円形箱状にした時、(b)ケースを四角筒箱状にした時、(c)ケースを六角筒箱状にした時、の第二のヨークの外周縁と、ケースの周壁との間と、第一のヨークの外周縁と、ケースの周壁との間の「距離」の定義を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における自己保持型ソレノイドの第一の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、図1における上下を、上下方向とし、左右を左右方向とする。
【0020】
図1に示すように、自己保持型ソレノイド(以下、「ソレノイド」という。)1は、コイル2と、コイル2が内蔵されるケース3と、コイル2の内周側に配設された固定鉄心4と、固定鉄心4に対向して配設されコイル2内を摺動する可動鉄心5と、可動鉄心5内に配設され可動鉄心5を固定鉄心4から離脱する側に付勢するばね10と、コイル2下側に配設された永久磁石6と、コイル2と永久磁石6との間に配設された第一のヨーク7と、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設された第二のヨーク8と、を備えている。
【0021】
ケース3は、磁性体で周壁33を有した下側が開口した略円筒箱状に形成され、天井壁31の中央部には、後述する固定鉄心4の凸部41が挿入される挿入口32が形成されている。
【0022】
コイル2は、導線をボビン9に巻き付けて形成され、上側に吸着用コイル21、下側に離脱用コイル22を、有している。ボビン9は合成樹脂で形成され、第三のヨーク11を介して、ケース3内に配設されている。第三のヨーク11は、磁性体で中央部に挿通孔を有し円盤状に形成されている。
【0023】
固定鉄心4は、磁性体で上部に凸部41を有して円柱状に形成され、ボビン9の中空部91の上部に嵌入されている。凸部41は、第三のヨーク11及びケース3を挿通して、ケース3の外側に突出するように配設され、図示しないナットが螺合可能に形成されている。固定鉄心4の下部において、パイプ12が嵌入されている。パイプ12は金属製で、ボビン9の中空部91を通るとともに、ボビン9の下側に突出するように配設されている。
【0024】
可動鉄心5は、磁性体でパイプ12内を摺動可能な円柱状に形成され、上面53から下側に凹んだ収納凹部51を有するとともに、下部に図示しない弁部材と係合する係合凹部52が形成されている。ばね10は、収納凹部51に配設され、固定鉄心4の下面と当接して、可動鉄心5を下側に付勢している。
【0025】
永久磁石6は、中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、第一のヨーク7よりも小さく、かつ、第二のヨーク8より大きく形成されている。
【0026】
第一のヨーク7は、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第二のヨーク8より大きく形成されている。
【0027】
第二のヨーク8は、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第一のヨーク7より小さく形成されている。
【0028】
図1に示すように、上からボビン9、第一のヨーク7、永久磁石6、第二のヨーク8の順に配設され、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1より大きく形成されている。ここで、「距離」とは、図12(a)に参照するように、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の及び、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との間が、最短距離となる場合をいう。例えば、本実施形態では、ケース3、第一のヨーク7、第二のヨーク8は、ケース3を下側からみた時に同心円形なので、その中心Oからケース3の周壁33に向かって任意の直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との距離D1をいう。
【0029】
第二のヨーク8、永久磁石6、第一のヨーク7、ボビン9、及び第三のヨーク11は、パイプ12の下端で、固定部材13により、下側からケース3の天井壁31に押圧された状態で固定されている。
【0030】
ソレノイド1の作用について説明する。吸着用コイル21に通電すると、図1の右側部分に示すように、第一のヨーク7、ケース3、第三のヨーク11、固定鉄心4、可動鉄心5、パイプ12間をループする、固定鉄心4側に可動鉄心5を吸引する方向の磁束の流れKが発生する。この時、第二のヨーク8、永久磁石6、第一のヨーク7、ケース3、第三のヨーク11、固定鉄心4、可動鉄心5、パイプ12間をループする、永久磁石6の磁束の流れMも合わせて可動鉄心5に作用する。可動鉄心5が固定鉄心4に吸着されると、吸着用コイル21への通電を切る。可動鉄心5は、ばね10により下側に付勢されているが、永久磁石6の磁束の流れMは、ばね10の付勢力を上回るので、可動鉄心5の吸着は維持される。
【0031】
可動鉄心5の吸着を解除するには、離脱用コイル22に通電する。すると、図1の左側部分に示すように、第一のヨーク7、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3間をループする、永久磁石6の磁束の流れMと逆方向の磁束の流れGが発生し、互いに相殺してばね10の付勢力が上回り、可動鉄心5が下側に戻される。
【0032】
ソレノイド1では、コイル2と永久磁石6との間に第一のヨーク7を配設して、第一のヨーク7と異径に形成された第二のヨーク8を、第一のヨーク7との間に永久磁石6を介して配設して、第一のヨーク7の外径を、第二のヨーク8より大径に形成して、第二のヨーク8の外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2を、第一のヨーク7の外周縁71と、ケース3の周壁33との間の距離D1より大きく形成している。
【0033】
これにより、ケース3の周壁33から第二のヨーク8に流れる永久磁石6の磁束は、大きな磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、弱められる。したがって、第二のヨーク8とケース3との隙間では、コイル2に通電したときと逆方向の磁束の流れが抑制される。よって、コイル2励磁後通電を終了しても永久磁石6の磁束による吸着力がばねの付勢力を上回り、可動鉄心5を強力に保持できる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0034】
本発明における自己保持型ソレノイドの第二の実施形態について説明する。以下の説明において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0035】
ソレノイド1Aでは、図2に示すように、第一のヨーク7Aが、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第二のヨーク8Aより小さく形成されている。
【0036】
第二のヨーク8Aは、磁性体で中央部に挿通孔を有した円盤状に形成され、外径が、永久磁石6及び第一のヨーク7Aより大きく形成されている。
【0037】
第一のヨーク7Aの外周縁71と、ケース3の周壁33との間の距離D1を、第二のヨーク8Aの外周縁81と、ケース3の周壁33との間の距離D2より大きく形成している。
【0038】
ソレノイド1Aでは、吸着用コイル21に通電すると、図2の右側部分に示すように、第一の実施形態と同様に磁束の流れKが発生し、この時、第二のヨーク8A、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3間をループする。永久磁石6の磁束の流れM2も、永久磁石6、第一のヨーク7A、パイプ12、可動鉄心5、固定鉄心4、第三のヨーク11、ケース3、第二のヨーク8A間をループして、吸着用コイル21による磁束の流れKと合わせて可動鉄心5に作用する。
【0039】
ソレノイド1Aでは、第二のヨーク8Aの外径を、第一のヨーク7Aの外径より大径に形成することによっても、ケース3から第一のヨーク7Aに流れる永久磁石6の磁束は、磁気的空隙が生じ、磁気抵抗が大きくなり漏洩磁束も大きくなるので、弱められる。よって、可動鉄心5の吸着力を高めることができる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0040】
本発明における自己保持型ソレノイドの第三の実施形態について説明する。
【0041】
ソレノイド1Bでは、図4に示すように、ケース3Bを、上下方向において上述した実施形態よりも短く形成して、第二のヨーク8Bの外径を、ケース3Bの外径と同一にして、第二のヨーク8Bをケース3Bと一体化させて形成している。
【0042】
これにより、第一のヨーク7Bの外周縁71とケース3Bの周壁33との距離D1と、第二のヨーク8Bの外周縁81とケース3Bの周壁33との距離D2(この場合は0となる)と、で差が生じるので、距離が大きい第一のヨーク7Bの外周縁71とケース3Bの周壁33との間では、吸着用コイル21に通電したときと、逆方向の磁束の流れが抑制される。よって、吸着用コイル21励磁後通電を終了しても永久磁石6の磁束による吸着力のみで可動鉄心5を強力に保持できる。それに伴い、可動鉄心5吸着時の消費電力を削減できる。
【0043】
また、第二のヨーク8Bをケース3Bと一体化することで、塵芥、油分、水分の侵入を防ぐことができ、ソレノイド1Bの耐候性を高めることができる。
【0044】
図5〜11において、具体的な実験結果をグラフにして示す。
【0045】
図5では、基本形としてケースの外径を60mm(図5中φ60で表わしている。以下同様とする。)、第一のヨークの外径を57mm、永久磁石{残留磁束密度Br 0.4T、保持力bHc 253kA/m、保持力iHc 263kA/m、最大エネルギー積BHmax 30kJ/m3}、外径を41.8mm、固定鉄心から可動鉄心が離脱する時の、ばねの付勢力を4.2Nに設定して、第二のヨークの外径を変化させて、可動鉄心を吸引する吸引力をニュートン(N)で表わしている。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜50mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約87%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0046】
また、図6では、基本形と、ケースの外径、永久磁石及びばねの設定を変えずに、第二のヨークの外径を57mmに設定し、第一のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第一のヨークの外径が25mm〜45mmの間(第二のヨークの外径に対して約44%〜約79%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0047】
また、図7では、基本形と、ケースの外径、及びばねの設定を変えずに、第一のヨークの外径を57mm、第二のヨークの外径37mmに設定し、永久磁石の外径を変化させたものを表している。少なくとも、永久磁石の外径が35mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約61〜約96%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0048】
また、図8では、基本形と、ばねの設定を変えずに、第一のヨークの外径を57mm、永久磁石の外径を45mmに設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜50mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約87%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0049】
また、図9では、ケースの外径を70mm、第一のヨークの外径を66.5mm、永久磁石の外径41.8mm、に設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約38%〜約83%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0050】
また、図10では、ケースの外径を50mm、第一のヨークの外径を48mm、永久磁石の外径41.8mm、に設定し、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mの間(第一のヨークの外径に対して約52%〜約94%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0051】
また、図11では、基本形と、ケースの外径、第一のヨークの外径、永久磁石の外径を同じにし、ケースの高さを基本形の41mmから35mmに変更して、第二のヨークの外径を変化させたものを表している。少なくとも、第二のヨークの外径が、25mm〜55mmの間(第一のヨークの外径に対して約44%〜約96%)にあれば、ばねの付勢力4.2Nを上回り可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。第二のヨークの外径をケースの外径の60mmと同じにしても、ばねの付勢力4.2Nと同等で可動鉄心の吸着を維持できることがわかる。
【0052】
以上の結果から、第二のヨークの外径を、第一のヨークの外径の50〜80%の範囲にすれば、より好適に可動鉄心の吸着力を高めることができる。また、第一のヨークの外径を、第二のヨークの外径の45〜75%の範囲にしても、好適に可動鉄心5の吸着力を高めることができる。また、永久磁石の外径を、第一のヨークの外径の61〜96%の範囲にしても、好適に可動鉄心5の吸着力を高めることができる。
【0053】
なお、コイル2は、吸着用コイル21と、離脱用コイル22とに分割して構成したが、導線の巻き方向、電流の流れを切り替えるようにして、単独で構成してもよい。
【0054】
また、第一の実施形態において、第一のヨーク7及び第二のヨーク8と、ケース3との間、第二の実施形態において、第一のヨーク7A及び第二のヨーク8Aと、ケース3との間に隙間を設けているが、外径が大きい側の、第一の実施形態において、第一のヨーク7と、ケース3との間、第二の実施形態において、第二のヨーク8Aと、ケース3との間に隙間を設けない形態にしてもよい。
【0055】
また、ケース3、3Bを円筒箱状のものを用いているが、それらの形状には、こだわらない。例えば、多角筒箱状のものに用いることができる。それに伴い、第一のヨーク、第二のヨーク等をケースの形状に対応した板状に形成してもよい。この場合の「距離」は、図12(b)に参照するように、第二のヨーク8Yの外周縁81と、ケース3Yの周壁33との間の及び、第一のヨーク7Yの外周縁71と、ケース3Yの周壁33との間が、最短距離となる場合をいう。
【0056】
例えば、ケース3、3Bを四角筒箱状にすれば、ケース3Y、第一のヨーク7Y、第二のヨーク8Yは、ケース3Yを下側からみた時に相似な四角形となるのでそれぞれの、任意の一辺を直交する直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8Yの外周縁81と、ケース3Yの周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7Yの外周縁71と、ケース3Yの周壁33との距離D1をいう。
【0057】
また、例えば、ケース3、3Bを六角筒箱状にすれば、ケース3Z、第一のヨーク7Z、第二のヨーク8Zは、ケース3Zを下側からみた時に相似な六角形となるので、それぞれの任意の一辺を直交する直線をひいたときのその直線上の、第二のヨーク8Zの外周縁81と、ケース3Zの周壁33との間の距離D2及び第一のヨーク7Zの外周縁71と、ケース3Zの周壁33との距離D1をいう。
【符号の説明】
【0058】
1、1A、1B 自己保持型ソレノイド
2 コイル
21 吸着用コイル
22 離脱用コイル
3、3B、3Y、3Z ケース
33 周壁
4 固定鉄心
5 可動鉄心
6 永久磁石
7、7A、7Y、7Z 第一のヨーク
71 外周縁
8、8A、8Y 8Z 第二のヨーク
81 外周縁
D1 距離
D2 距離
O 中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、該コイルが内蔵される筒状で周壁を有した磁性体のケースと、前記コイルの内周側に配設された固定鉄心と、該固定鉄心に対向して配設され前記コイル内を摺動する可動鉄心と、該可動鉄心を前記固定鉄心から離脱する側に付勢するばねと、前記コイルの前記可動鉄心が配設される側に配設された永久磁石と、を備えた自己保持型ソレノイドであって、
前記コイルと前記永久磁石との間に第一のヨークが配設され、
前記第一のヨークとの間に前記永久磁石を介して前記コイルとは反対側に第二のヨークが配設され、
該第二のヨークの外周縁と前記ケースの周壁との距離が、前記第一のヨークの外周縁と前記ケースの周壁との距離とは異なるように形成されていることを特徴とする自己保持型ソレノイド。
【請求項2】
前記第一のヨークの外径が、前記第二のヨークの外径より大径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項3】
前記第二のヨークの外径が、前記第一のヨークの外径の50〜80%の範囲であることを特徴とする請求項2記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項4】
前記第二のヨークの外径が、前記第一のヨークの外径より大径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項5】
前記第一のヨークの外径が、前記第二のヨークの外径の45〜75%の範囲であることを特徴とする請求項4記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項6】
前記永久磁石の外径が、前記第一のヨークの外径より小径に形成されていることを特徴とする請求項2記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項7】
前記永久磁石の外径が、前記第一のヨークの外径の61〜96%の範囲であることを特徴とする請求項6記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項1】
コイルと、該コイルが内蔵される筒状で周壁を有した磁性体のケースと、前記コイルの内周側に配設された固定鉄心と、該固定鉄心に対向して配設され前記コイル内を摺動する可動鉄心と、該可動鉄心を前記固定鉄心から離脱する側に付勢するばねと、前記コイルの前記可動鉄心が配設される側に配設された永久磁石と、を備えた自己保持型ソレノイドであって、
前記コイルと前記永久磁石との間に第一のヨークが配設され、
前記第一のヨークとの間に前記永久磁石を介して前記コイルとは反対側に第二のヨークが配設され、
該第二のヨークの外周縁と前記ケースの周壁との距離が、前記第一のヨークの外周縁と前記ケースの周壁との距離とは異なるように形成されていることを特徴とする自己保持型ソレノイド。
【請求項2】
前記第一のヨークの外径が、前記第二のヨークの外径より大径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項3】
前記第二のヨークの外径が、前記第一のヨークの外径の50〜80%の範囲であることを特徴とする請求項2記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項4】
前記第二のヨークの外径が、前記第一のヨークの外径より大径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項5】
前記第一のヨークの外径が、前記第二のヨークの外径の45〜75%の範囲であることを特徴とする請求項4記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項6】
前記永久磁石の外径が、前記第一のヨークの外径より小径に形成されていることを特徴とする請求項2記載の自己保持型ソレノイド。
【請求項7】
前記永久磁石の外径が、前記第一のヨークの外径の61〜96%の範囲であることを特徴とする請求項6記載の自己保持型ソレノイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−94558(P2012−94558A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237881(P2010−237881)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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