説明

自己免疫性疾患を検出するための方法及び組成物

本発明は自己免疫性疾患を検出するために有用な方法および組成物を提供する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法規則1.53(b)(1)に基づき出願した非仮出願であり、米国特許法119条(e)に基づき、2006年4月24日に出願の仮出願第60/794393号の優先権を主張するものであり、その全体の開示内容が出典明記により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は全体的に自己免疫性疾患の分子的決定の分野に関する。より具体的には、本発明は、自己免疫性疾患の様々な態様と関係している固有の分子シグネチャーに基づいた方法および組成物に関する。
【0003】
(背景)
現在、自己免疫性疾患の多くは、様々な自己抗原に対する自己抗体の産生に特徴があると考えられている。例えば、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)は、自己抗体が宿主細胞及び組織に結合し、血管組織に蓄積して免疫細胞を活性化する免疫複合体を形成することによって臓器障害を引き起こす自己免疫性疾患である。シェーグレン症候群は、身体の腺の炎症に特徴がある自己免疫性疾患である。また、IgAネフロパシ、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、強直性脊椎炎などを含む他の自己免疫性疾患も一般的に見られる。
インターフェロンα(IFN-α)は、SLEなどの多くの免疫疾患の病因に非常に関係しているI型インターフェロンである。IFN-αシグナル伝達の破壊を伴う治療手法はこのような疾患の有効な治療でありうると考えられている。IFN-αレベルはSLEにおいて上がっていることが知られており、IFN-αの患者の治療によりレシピエントのSLEと類似した症状を可逆的に引き起こすことが観察されている。多くの他の種の証拠がIFN-αとSLEを関連づけている。
【0004】
IFN-αが標的細胞の遺伝子の転写に効果を及ぼすメカニズムが広く調査されている。二次メッセンジャーカスケードが決定されており、活性化された転写因子のためのシス制御結合部位が定められ、そして、いくつかの研究によりどの遺伝子発現が調節されているかが研究されている。オリゴヌクレオチドマイクロアレイによって最も総合的な研究が行われているが、インターフェロン応答遺伝子発現プロファイルの定義は依然として完全になされていない。なぜなら、少なくともある程度は、近年まで、マイクロアレイがヒトゲノムの遺伝子のための非常に完全なレポーターセットを含んでいなかったから、更には、様々な技術的困難があるために対象とする病的状態と確実に相関する、広く適用可能でしかも簡易なマーカー遺伝子のセットを同定することができなかったからである。
自己免疫性疾患の臨床管理における最も困難な試みの一つは、患者の疾患を正確かつ迅速に同定することである。最後に、患者の疾患の存在及び/又は程度を客観的に同定するために用いることができる分子基準の診断方法を有することは非常に有用であろう。本明細書において記述される発明は、これらの方法および他の利点を提供するものである。
特許出願及び出版物を含め、本明細書において引用したすべての文献は、出典明記によってこの全体を援用する。
【0005】
(発明の開示)
本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)の存在及び/又は程度と関係する発現を有する遺伝子(一又は複数)の同定に少なくとも一部が基づいている、自己免疫性疾患を同定するための方法及び組成物を提供するものであって、このときのSLEは言い換えると、その疾患関連の遺伝子シグネチャーが他の自己免疫性疾患にも応用することができる原型自己免疫性疾患である。例えば、本明細書において記述されるように、一実施態様では、IFN-αによるシグナル伝達に応答して調節される遺伝子が同定された。次いで、この手法によって生じる情報を試験し、修正して、細胞又は組織試料が自己免疫性疾患に特徴的な応答を表す程度の簡明かつ定量的な基準を開発した。本明細書において示すように、本明細書において開示される一又は複数の特定の遺伝子の検出は患者の自己免疫性疾患の存在および/または程度の有用かつ有益な指標であるといえる。さらに、インターフェロン関連の疾患の提示および/または重症度を表す測定基準又は同等の指数は、バイオマーカー遺伝子発現情報の適切な形質転換によって作り出されてもよい。例示的な形質転換および結果として生じる測定基準は本明細書において開示されており、また、本明細書において開示される遺伝子発現データに基づいて作り出される。
【0006】
ある態様では、本発明は、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が存在する場合に該被検体が自己免疫性疾患を有することが示される方法を提供する。
ある態様では、本発明は、自己免疫性疾患治療に対する被検体の応答性を予測する方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が存在する場合に該被検体が自己免疫性疾患治療に応答性があることが示される方法を提供する。
【0007】
ある態様では、本発明は、自己免疫性疾患について治療された被検体において微小残存病変をモニタリングするための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に微小残存病変が存在することが示される方法を提供する。
ある態様では、本発明は、被検体の自己免疫性疾患の状態を検出するための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体において自己免疫性疾患の状態の存在が示される方法を提供する。
【0008】
ある態様では、本発明は、自己免疫性疾患を発症する被検体の素因を評価するための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体が自己免疫性疾患を発症する素因が示される方法を提供する。
ある態様では、本発明は、被検体において自己免疫性疾患を診断するための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体が該自己免疫性疾患を有することが示される方法を提供する。
【0009】
ある態様では、本発明は、被検体において活動期と非活動期との状態(例えば、活動期SLEと非活動期SLE)を区別するための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体が活動期状態の該自己免疫性疾患を有することが示される方法を提供する。
ある態様では、本発明は、被検体において抗dsDNA抗体の存在及び/又は上昇を決定するための方法であって、被検体が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子を正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体において抗dsDNA抗体の存在及び/又は上昇が示される方法を提供する。
【0010】
本発明の方法は、必要であれば、又必要に応じて、適切な臨床介入工程を決定するために有用な情報を提供する。したがって、本発明の方法の一実施態様では、前記方法はさらに、表1、2および/または3に列挙される遺伝子の一又は複数(例えば、遺伝子(例えば表4に列挙されるもの)のいずれかの組合せも含む)の発現の評価の結果に基づいた、臨床介入工程を含む。例えば、適切な介入は、本発明の方法によって得た遺伝子発現情報に基づく、予防的なないしは治療的工程、又はその当時のいずれかの予防的ないしは治療的工程の調節(一又は複数)を伴いうる。
当業者に明らかであるように、本発明のいずれかの方法では、ある遺伝子の増加した発現の検出はある疾患の特徴(例えば、疾患の存在、段階又は程度)を陽性に示すのに対して、ある遺伝子の発現の増加が検出されないことはこの疾患の相互関係の特徴を示す上で有益であろう。
【0011】
ある態様では、本発明は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、又はこの遺伝子の相補鎖を含んでなる組成物を提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは、アレイ、遺伝子チップ、または遺伝子セット(例えば、別々又は混合物の場合であれば遺伝子ないしはその断片のセット)として提供される。
ある態様では、本発明は、本発明の組成物と、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の発現が正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルであるか否かを決定することによって自己免疫性疾患を検出するための該組成物の使用についての指示書とを、具備するキットを提供する。一実施態様では、本発明の組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個、又は最大すべてまでのいずれかの数の表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるアレイ/遺伝子チップ/遺伝子セットを含む。一実施態様では、本発明の組成物は、表1、2及び/又は3に挙げるある遺伝子によってコードされたポリペプチドの少なくとも一部をコードする核酸分子を含む。一実施態様では、本発明の組成物は、表1、2及び/又は3に挙げるある遺伝子の少なくとも一部に結合して重合(例えば増幅)に作用することができる核酸プライマーを含む。一実施態様では、本発明の組成物は、表1、2及び/又は3に挙げるある遺伝子(または、その相補鎖)(または、対応する遺伝子産物)を特異的に検出する結合剤(例えばプライマー、プローブ)を含む。一実施態様では、本発明の組成物は、表1、2及び/又は3に挙げるある遺伝子によってコードされるポリペプチドの少なくとも一部に特異的に結合する結合剤を含む。
【0012】
本発明の方法および組成物は、表1、2および/または3に挙げる遺伝子の一又は複数を含んでもよい。1より多い遺伝子が本発明の方法又は組成物において用いられるか又は含まれる場合、その1より多い遺伝子は表1、2及び/又は3に挙げる(順不同)いずれかの数の遺伝子のいずれかの組み合わせであってもよい。例えば、一実施態様では、遺伝子の組み合わせは列挙される遺伝子の2つ、つまりOAS3とHERC5のみを含む。一実施態様では、遺伝子の組合せは、列挙される遺伝子の3つのみ、4つのみ、5つのみ、又は6つのみを含む。一実施態様では、遺伝子の組合せは、列挙される遺伝子の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つを含む。他の実施態様では、遺伝子の組み合わせは、OAS3、HERC5、及び表1、2及び/又は3に挙げる他の遺伝子の一又は複数を含む。一実施態様では、本発明の遺伝子組み合せは、表4Bに示す3-遺伝子組み合せ(遺伝子1、2および3)を含むか、これらからなるか、又は基本的にこれからなる。一実施態様では、前記の3-遺伝子組み合せは、少なくともおよそ0.7、又は少なくともおよそ0.75、又は少なくともおよそ0.8、又は少なくともおよそ0.85、又は少なくともおよそ0.9、又は少なくともおよそ0.95、又は少なくともおよそ0.97、又は少なくともおよそ0.98、又は少なくともおよそ0.99のピアソン相関値を有すると示される。一実施態様では、前記の3-遺伝子組み合せは、(1) IFIT4、OAS1およびMX1、または(2) OASL、CHMP5およびZBP1、または(3) IFI44L、OASLおよびCIG5、または(4) IFI44L、CIG5およびZBP1、または(5) EPSTI1、TYKIおよびMX1、または(6) IFIT4、HERC5およびTYKI、または(7) IFIT4、TYKIおよびXIAP、または(8) IFI44L、OASLおよびZBP1、または(9) IFI44L、IFIT4およびOASL、または(10) IFI4、OAS1およびIFIT1、または(11) EPSTI1、HERC5およびTYKI、または(12) IFI44L、EPSTI1およびOASL、または(13) IFI44L、EPSTI1およびOAS3、または(14) EPSTI1、TYKIおよびIFIT1、または(15) G1P2、SAMD9LおよびSP110を含む。さらに他の実施態様では、遺伝子の組合せは、表1、2および/または3に挙げる遺伝子の一又は複数を含み、さらに表1、2および/または3に挙げない一又は複数の他の遺伝子(例えば、自己免疫性疾患と関係しているが、インターフェロン特異的な誘導と関係していないことが知られている遺伝子)と組み合わされる。
【0013】
本明細書に記載の本発明のいずれかの実施態様では、一又は複数の参照遺伝子(すなわち、単独で評価される場合、対象とする疾患および/または状態を表すことが知られていない遺伝子)が含まれてもよい。このような参照遺伝子にはハウスキーピング遺伝子が含まれうる。例えば、適切な参照遺伝子は、試料において基準となる遺伝子発現レベルを表す比較/コントロール遺伝子として役立ちうるハウスキーピング遺伝子であってもよい。したがって、例えば、一実施態様では、表1、2、3および/または4に挙げる一又は複数の遺伝子は、リボソームタンパク質L19(RPL19;NP_000972)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、アクチン(例えばβ-アクチン)、チューブリン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HRPT)および他のリボソームタンパク質/遺伝子(例えば28S、18S)などの一又は複数のハウスキーピング遺伝子と組み合わされて用いられる。
【0014】
一態様では、本発明は、被検体又は試料における自己免疫性疾患の存在および/または程度と相関する測定基準値を同定する方法であって、
(a) プローブセットによって表される遺伝子の発現が疾患の特徴と関係しているパターンと総合的に関連しているプローブセットのグループを評価する工程、
(b) 該プローブセットのグループの傾向に対する個々のプローブセットの一致の程度を反映する尺度に従ってプローブセットに重みを付けるウェイティング因子(weighting factor)を作り出し、算出した平均プロファイルに対するそれぞれのプローブセットの相関係数を算出する工程、
(c) 個々のプローブセットを1に対して尺度をとるために必要な値であるスケーリング因子(scaling factor)を決定する工程、
(d) スケーリング因子にウェイティング因子を乗算して、混成因子(composite factor)を作り出す工程、
(e) 混成因子を有する正常な血液試料のシグネチャーを乗算し、平均値を得るためにプローブセットと試料全体の結果として生じた値の平均を求め、該平均値の逆数をとって(inverting)全体のスケーリング因子(global scaling factor)を得る工程、
(f) 各々のウェイティング因子に該全体のスケーリング因子を乗算してスカラー値(scalar value)のベクトルを得て、該スカラー値に対象の試料の発現シグネチャーを乗算し、結果として得た値の平均を求めて、該試料中のI型インターフェロンと関係している遺伝子発現の程度を表す単一測定基準を得る工程
を含んでなる方法を提供する。
【0015】
前段落の前記方法の一実施態様では、工程(a)において、前記プローブセットのグループには、ある疾患の特徴と関連するサブクラスターにおいてコアの最も緊密に相関するプローブセットの対を含むか、又はそのプローブセットの対の周りに集まるプローブセットが含まれる。
前段落の前記方法の一実施態様では、工程(b)において、前記因子は、1に対して尺度をとる(scaling to 1)手段を含むZ-スコアにプローブセットのグループの発現データを変換して、つまり2を底とする対数変換を行って、1の平均値の標準偏差に対して尺度をとる(acaling)ことによって作り出されたものである。
前段落の前記方法の一実施態様では、工程(e)において、前記の全体のスケーリング因子は、対象の試料から得た平均のプローブセットの結果を測定基準に変換するために有用であり、該測定基準が該試料が正常な健康な被検体である場合に1である。
前段落の前記方法の一実施態様では、前記のプローブセットのグループには、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34ないし最大すべてまでのいずれかの数の表1、2および/または3に挙げる遺伝子が含まれる。一実施態様では、前記のプローブセットのグループには、表1、2および/または3に挙げるすべてが含まれる。
【0016】
一態様では、本発明は、対象の被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該対象の被検体において自己免疫性疾患の存在が示される方法を提供する。
一態様では、本発明は、自己免疫性疾患治療に対する被検体の応答性を予測する方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体が自己免疫性疾患治療に応答性があることが示される方法を提供する。
【0017】
一態様では、本発明は、自己免疫性疾患について治療された被検体において微小残存病変をモニタリングするための方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない、及び/又は治療されていない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、微小残存自己免疫性疾患が存在することが示される方法を提供する。
一態様では、本発明は、自己免疫性疾患の状態を検出するための方法であって、自己免疫性疾患の状態を有することが予測される被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体において自己免疫性疾患の状態の存在が示される方法を提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、自己免疫性疾患を発症する被検体の素因を評価するための方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体が自己免疫性疾患を発症する素因が示される方法を提供する。
一態様では、本発明は、被検体において自己免疫性疾患を診断するための方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体が該自己免疫性疾患を有することが示される方法を提供する。
【0019】
一態様では、本発明は、被検体において活動期と非活動期との状態(例えば、活動期SLEと非活動期SLE)を区別するための方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体が活動期状態の該自己免疫性疾患を有することが示される方法を提供する。
一態様では、本発明は、被検体において抗dsDNA抗体の存在及び/又は上昇を決定するための方法であって、被検体から得た試料について本明細書中に記載した方法によって得た第一測定基準を参照(例えば、正常、健康、罹患していない)試料から得た参照測定基準と比較することを含む方法であって、このとき第一測定基準が参照測定基準より高い場合に、該被検体において抗dsDNA抗体の存在及び/又は上昇が示される方法を提供する。
【0020】
一実施態様では、参照測定基準は、コントロール試料(例えば、健康及び/又は罹患していない及び/又は治療していない組織、細胞及び/又は被検体から得られる)からの試料について本明細書中に記載の方法を用いて得たものである。
一又は複数のバイオマーカーの発現を試験するための方法における工程は、mRNA発現を検出するアッセイ(限定するものではないが、mRNAをcDNAに変換して、場合によってその後に核酸増幅することを含む)、酵素活性の存在を検出する酵素アッセイ、及び免疫組織化学アッセイを含む、様々なアッセイ様式で行われてもよい。場合によって、組織又は細胞の試料は疾患の組織又は細胞を含む。
【0021】
本発明の方法にはさらに、免疫関連の疾患などの哺乳動物の疾患を治療する方法であって、哺乳動物から組織ないしは細胞の試料を得る工程、一又は複数のバイオマーカーの発現(例えば、発現の量)について組織ないしは細胞を試験して、該組織ないしは細胞の試料が該一又は複数のバイオマーカーを発現する(例えば、このときバイオマーカーが参照(コントロール)試料よりも多い量で発現される)ことを決定する工程、該哺乳動物に有効量の治療剤を投与する工程を含む方法が含まれる。一又は複数のバイオマーカーの発現を試験するための方法における工程は、mRNA発現を検出するアッセイ、酵素活性の存在を検出する酵素のアッセイ、および免疫組織化学アッセイを含む様々なアッセイ様式で実行されてもよい。場合によって、前記方法は哺乳動物の自己免疫性疾患を治療することを含む。場合によって、前記方法は、有効量の標的とした治療剤(例えば、1型インターフェロンを結合する及び/又は1型インターフェロンの活性をブロックする抗体及び/又はその対応するレセプター(一又は複数))と、場合によって第二の治療剤(例えばステロイドなど)を前記哺乳動物に投与することを含む。
いくつかの実施態様では、バイオマーカーは、表1、2および/または3に挙げるものから選択される。
【0022】
(発明の実施の形態)
一般的な技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を使用して行う。このような技術は、例えば以下のような文献に完全に明記されている。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版(Sambrookら, 1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait, 編, 1984);「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney, 編, 1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubel等, 編., 1987, 及び定期的に更新されたもの);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullisら, 編, 1994)。
本発明で用いるプライマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、当分野で公知の標準的な技術を用いて生成することができる。
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。Singleton 等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), and March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)により当分野の技術者は本出願に使用した多くの用語の一般的な理解が得られる。
【0023】
定義
本明細書で用いる「アレイ」又は「マイクロアレイ」なる用語は、基質上でのハイブリダイズ可能なアレイ成分、好ましくはポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)の規則正しい整列を指す。基質は、ガラススライドなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えでありうる。
本明細書で用いる「標的配列」、「標的核酸」又は「標的タンパク質」は、本発明の突然変異が存在すると思われる又は存在することがわかっており、その検出が望まれる、対象とするポリヌクレオチド配列である。通常、本明細書中で用いる「鋳型」は標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドである。場合によっては、「標的配列」、「鋳型DNA」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」及びその変異体が交換可能に用いられる。
【0024】
本明細書中で用いる「増幅」は通常、所望の配列の複数のコピーを生産する方法を指す。「複数のコピー」は少なくとも2のコピーを意味する。「コピー」が、鋳型配列に対して相補的な又は同一な完全な配列を必ずしも意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体、例えばデオキシイノシン、意図的配列変化(鋳型に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含んでなるプライマーにより導入された配列変化など)及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
第一試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量が、第二試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量の少なくともおよそ1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍である場合に、第一試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現/量は、第二試料におけるレベル「より多い」レベルである。発現レベル/量は、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピーを含め、当分野で公知の任意の好適な基準に基づいて決定されてもよい。発現レベル/量は、質的におよび/または量的に決定されてもよい。
【0025】
ここで交換可能に用いる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの集合化(「アセンブリ」とも言う)の前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識成分との結合によりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(一又は複数)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0026】
本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長の、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
「プライマー」は、一般に、標的配列とハイブリダイズすることによって、対象の試料中に存在しうる標的に結合して、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、一般に遊離した3'-OH基を有する短い単鎖のポリヌクレオチドである。
「遺伝子増幅」なる語句は、遺伝子又は遺伝子断片の複数のコピーが特定の細胞又は細胞系統において形成されるプロセスを意味する。複製された領域(増幅されたDNAのストレッチ)は、しばしば「アンプリコン」と称される。通常は、生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)の量、即ち遺伝子発現レベルも、発現された特定遺伝子の作成されたコピー数に比例して増加する。
【0027】
本明細書中で用いる「突然変異」なる用語は、野生型タンパク質又は核酸と比べて、それぞれ特定のタンパク質又は核酸(遺伝子、RNA)のアミノ酸配列又は核酸配列の差異を意味する。変異したタンパク質又は核酸は、遺伝子の1の対立遺伝子(ヘテロ接合体)又は両方の対立遺伝子(ホモ接合体)から発現されうるか、遺伝子の1の対立遺伝子(ヘテロ接合体)又は両方の対立遺伝子(ホモ接合体)にみられ、体細胞又は生殖細胞系でありうる。
「阻害する」ことは、参照物質と比較して、活性、機能及び/又は量を減らす又は低くすることである。
一般的に「3'」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド3'(下流)の領域又は位置を指す。一般的に「5'」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド5'(上流)の領域又は位置を指す。
【0028】
「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む検出する任意の手段を含む。
本明細書中で用いる「診断」なる用語は、分子の又は病理学的状態の同定、例えば自己免疫性疾患の同定を指す。本明細書中で用いる「予後」なる用語は、例えば、自己免疫性疾患の再発、再燃、及び薬剤耐性を含む自己免疫性疾患が原因となる疾患症状の可能性の予測を意味する。本明細書中で用いる「予測」なる用語は、患者が薬剤又は一連の薬剤に対して有利又は不利に応答する可能性を意味する。一実施態様では、予測はその応答の程度に関する。一実施態様では、予測は、例えば特定の治療的薬剤による治療、及び疾患再発のない一定期間の後に患者が生存しているか改善しているかどうか、及び/又はその可能性に関する。本発明の予測方法を用いて任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、ステロイド治療などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうか、又は治療投薬計画の後に患者が長期に生存しているかどうかを予測する際の有用なツールである。
【0029】
本明細書中で用いる「長期の」生存なる用語は、治療的治療の後、少なくとも1年、5年、8年又は10年の生存を指す。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「耐性の増加」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味する。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「感受性の減少」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味し、この応答の減少は薬剤の用量や治療の強度を増やすことによって、(少なくとも部分的に)補われうるものである。
「患者応答」は、限定するものではないが以下のものを含む患者に利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価できる。(1) 緩徐化及び完全な停止を含む、ある程度の疾患進行の阻害、(2) 疾患発症及び/又は症状の数の減少、(3) 損傷サイズの減少、(4) 近接する末梢器官及び/又は組織への疾患細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(5) 疾患の拡がりの阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(6) 必ずではないが病変の退行又は消失が生じうる自己免疫応答の低減、(7) 疾患と関係する一又は複数の症状の、ある程度の軽減、(8) 治療後の疾患がない期間の増加、及び/又は(9) 治療後の特定の時点での死亡率の減少。
【0030】
本明細書中で用いる「インターフェロンインヒビター(阻害剤)」なる用語は、野生型又は変異した1型インターフェロンの生物学的機能を阻害する能力を有する分子を指す。したがって、「インヒビター」なる用語は、1型インターフェロンの生物学的役割の文脈において定められる。一実施態様では、本明細書中において称するインターフェロンインヒビターは、1型インターフェロン/インターフェロンレセプター経路を経る細胞シグナル伝達を特異的に阻害する。例えば、インターフェロンインヒビターは、インターフェロンαレセプターと、又はインターフェロンレセプターに通常結合する1型インターフェロンと相互作用(例えば結合)しうる。一実施態様では、インターフェロンインヒビターはインターフェロンαレセプターの細胞外ドメインと結合する。一実施態様では、インターフェロンインヒビターはインターフェロンαレセプターの細胞内ドメインと結合する。一実施態様では、インターフェロンインヒビターは1型インターフェロンと結合する。一実施態様では、1型インターフェロンはインターフェロンαサブタイプである。一実施態様では、1型インターフェロンはインターフェロンβでない。一実施態様では、1型インターフェロンはインターフェロンωでない。一実施態様では、インターフェロンインヒビターによって阻害されるインターフェロン生物学的活性は、自己免疫性疾患などの免疫性疾患と関係している。インターフェロン/レセプター活性を阻害することができる限り、インターフェロンインヒビターはいずれの形態であってもよい。インヒビターには、抗体(例えば、上記に定義したモノクローナル抗体)、小有機/無機分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、阻害性ペプチド/ポリペプチド、阻害性RNA(例えば、小干渉RNA)、これらの組み合わせなどが含まれる。
【0031】
「抗体」(Ab)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すものであるが、免疫グロブリンには、抗体と一般的に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方が含まれる。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。
「抗体」及び「イムノグロブリン」なる用語は互換性をもって広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は完全なモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、単価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りの二重特異性抗体)及び(本明細書で詳細に記載される)特定の抗体断片が含まれる。抗体はキメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであり得る。
「抗体断片」は完全な抗体の一部のみを含んでなるものであり、その一部は、完全な抗体に存在する場合のその一部に通常関連する機能の少なくとも一、好ましくはその機能のほとんどないしはすべてを保持することが好ましい。一実施態様では、抗体断片は完全な抗体の抗原結合部位を含んでなるために、抗原結合能を有する。他の実施態様では、抗体断片は、例えばFc領域を含んでなるものは、完全な抗体に存在する場合のFc領域に通常関連する生物学的な機能、例えばFcRn結合、抗体半減期の調節、ADCC機能及び補体結合の少なくとも一を保持する。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体と実質的に類似したインビボ半減期を有する一価性抗体である。例えば、このような抗体断片は、インビボ安定性を断片に与えることができるFc配列に結合した抗原結合アームを含んでもよい。
【0032】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、微量に存在しうる天然に生じる変異体を除いて同一である抗体を指す。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル調製物と比べて、モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
本明細書中のモノクローナル抗体には、具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号;及び、Morrison 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0033】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、以下の概説文献及びここに挙げる引用文献も参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma &Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0034】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用してつくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。
「親和性成熟」抗体は、その一又は複数のCDR/HVRに一又は複数の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させたものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks等は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDR/HVRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier他、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0035】
「Fc領域」という用語は、完全な抗体のパパイン消化で生じ得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異体Fc領域である。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、又は約位置Pro230からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。ここで「Fc領域鎖」とは、Fc領域の2つのポリペプチド鎖のうちの一つを意味する。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を称する。この用語は放射性アイソトープ(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤、及び細菌性、真菌性、植物性又は動物性起源の小分子毒素又は酵素的に活性な毒素等の毒素又はその断片を含むことが意図されている。
「ブロッキング(以下「ブロック」とも言う)抗体」又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか、減弱するものである。このようなブロッキングはレセプターへのリガンド結合などのタンパク質-タンパク質相互作用を阻害することによるなどの任意の方法によって行うことができる。一実施態様では、ブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にないしは完全に阻害する。
【0036】
ここで「自己免疫性疾患」とは、個体自身の組織から生じ、個体自身の組織に対する非悪性の疾病又は疾患のことである。ここでの自己免疫疾患は、悪性又は癌性の疾病又は状態、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病及び慢性骨髄芽球性白血病を除く。自己免疫性疾病又は疾患の例には、限定されるものではないが、炎症反応、例えば乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚病;全身強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)と関係している応答;呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー性状態、例えば湿疹および喘息およびT細胞の浸潤を伴う他の状態および慢性炎症反応);アテローム性動脈硬化;白血球接着欠損;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE)(ループス腎炎、皮膚狼瘡を含むがこれらに限定しない);真正糖尿病(例えばI型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症性糖尿病及び結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽種症及び血管炎に典型的に見出されるサイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅延型高血圧に関連した免疫反応;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外遊出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症又はクームズ陽性貧血を含むがこれらに限定しない);重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート-イートン筋無力症症候群;水疱性類天ぽうそう;ペンフィグス;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター症候群;全身強直性症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体腎炎;IgAネフロパシー;IgM多発性神経炎;免疫性の血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少などが含まれる。
【0037】
ここで使用されるところの「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の方法及び組成物は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。治療剤の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び体重、並びに個体に所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は治療剤の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には必ずではないが、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0038】
本明細書において使用する「I型インターフェロン」及び「ヒトI型インターフェロン」なる用語は、ヒト及び合成インターフェロンα、インターフェロンω及びインターフェロンβクラスの範疇に含まれ、且つ共通の細胞レセプターに結合する全ての種類の天然ヒト及び合成インターフェロンと定義される。天然ヒトインターフェロンαは、高度の構造相同性を有する個別の遺伝子によってコードされる、23以上の密接に関連するタンパク質を含む(Weissmann及びWeber, Prog. Nucl. Acid. Res. Mol. Biol., 33:251(1986); J. Interferon Res., 13:443-444 (1993))。ヒトIFN-α遺伝子座は2つのサブファミリーを含む。第一のサブファミリーは、IFN-αA(IFN-α2)、IFN-αB(IFN-α8)、IFN-αC(IFN-α10)、IFN-αD(IFN-α1)、IFN-αE(IFN-α22)、IFN-αF(IFN-α21)、IFN-αG(IFN-α5)、IFN-α16、IFN-α17、IFN-α4、IFN-α6、IFN-α7、及びIFN-αH(IFN-α14)をコードする遺伝子、及び少なくとも80%の相同性を有する偽遺伝子を含む、少なくとも14の機能的な非対立遺伝子から構成される。第二のサブファミリーであるαII又はωは、IFN-α遺伝子と70%の相同性を示す少なくとも5の偽遺伝子及び1の機能的な遺伝子(ここでは「IFN-αII1」又は「IFN-ω」と示す)を含む(Weissmann及びWeber (1986))。ヒトIFN-βは通常、単一のコピー遺伝子によってコードされると考えられている。
【0039】
本明細書において使用する「第1のヒトインターフェロンα(hIFN-α)レセプター」、「IFN-αR」、「hIFNAR1」、「IFNAR1」、及び「Uze鎖」なる用語は、Uze等, Cell, 60:225-234 (1990)によってクローニングされた557のアミノ酸レセプタータンパク質として定義され、これには、Uze等による文献の229頁の図5に示されるように、409の残基からなる細胞外ドメイン、21の残基からなる膜貫通ドメイン、及び100の残基からなる細胞間ドメインが含まれる。一実施態様では、前記の用語は、IFNAR1の細胞外ドメイン(ECD)(又はECDの断片)を含むIFNAR1の断片を含む。
本明細書において使用する「第2のヒトインターフェロンα(hIFN-α)レセプター」、「IFN-αβR」、「hIFNAR2」、「IFNAR2」、及び「Novic鎖」なる用語は、Domanski等, J. Biol. Chem., 37:21606-21611 (1995)によってクローニングされた515のアミノ酸レセプタータンパク質として定義され、これには、Domanski等による文献の21608頁の図1に示されるように、217の残基からなる細胞外ドメイン、21の残基からなる膜貫通ドメイン、及び250の残基からなる細胞間ドメインが含まれる。一実施態様では、前記の用語には、IFNAR2の細胞外ドメイン(ECD)(又はECDの断片)を含むIFNAR2の断片と、免疫グロブリン配列の少なくとも一部に融合したIFNAR2 ECD等のIFNAR2の可溶性形態が包含される。
【0040】
「ハウスキーピング遺伝子」なる用語は、活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードする一群の遺伝子を指す。これらの遺伝子は一般的に、すべての細胞型において同じように発現される。ハウスキーピング遺伝子には、限定するものではないが、リボソームタンパク質L19(NP_000972)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、Cypl、アルブミン、アクチン(例えばβ-アクチン)、チューブリン、シクロフィリン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HRPT)、リボソームタンパク質L32(NP_001007075)およびリボソームタンパク質/遺伝子28S(例えばQ9Y399)および18Sが含まれる。
本明細書中で用いられる「バイオマーカー」なる用語は、一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(又は本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、哺乳動物細胞又は組織の、1型インターフェロンなどのインターフェロンの阻害に基づく治療投薬計画への感受性を予測、診断及び/又は予後の予測をするものである。場合によって、前記バイオマーカーの発現は、コントロール/参照の組織又は細胞の試料について観察される発現より高いことが決定される。場合によって、例えば、前記バイオマーカーの発現は、試験組織又は細胞の試料において、PCR又はFACSアッセイにおいて、コントロール組織又は細胞の試料について観察される発現の少なくともおよそ5倍、少なくともおよそ10倍、少なくともおよそ20倍、少なくともおよそ30倍、少なくともおよそ40倍、少なくともおよそ50倍、又は好ましくは少なくともおよそ100倍であることが決定されるであろう。場合によって、前記バイオマーカーの発現は、IHCアッセイにおいて染色強度について少なくとも2以上のスコアであることが決定されるであろう。場合によって、前記バイオマーカーの発現は遺伝子チップに基づくアッセイを用いて決定されるであろう。
【0041】
本明細書中で用いられる「IRG」又は「インターフェロン応答遺伝子」又は「インターフェロン応答遺伝子」は、表1、2、3および/または4に挙げる一又は複数の遺伝子と、対応する遺伝子産物を指す。本明細書において示されるように、これらの一又は複数の遺伝子の異常な発現レベル/量は様々な自己免疫性疾患と相関する。当業者に明らかなように、内容に応じて、IRGなる用語は、表1、2、3および/または4に挙げる記号表示又は異なる識別子を有する核酸(例えば遺伝子)又はポリペプチド(例えばタンパク質)を指してもよい。
本明細書中で用いる「試料」なる用語は、例えば理学的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する対象とする被検体から得られる、又は対象とする被検体由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」なる表現及びこの変形は、特徴付けられている細胞実体及び/又は分子実体を含むことが予測される、又はそうであることが知られている対象の被検体から得た任意の試料を指す。
【0042】
「組織又は細胞の試料」は、被検体又は患者の組織から採取された同種の細胞の集まりを意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存されていた臓器や組織の試料又は生検又は吸引による固形組織;血液又はいずれかの血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液などの体液;被検体の妊娠期又は発生期の任意の時期の細胞であってもよい。また、組織試料は原発性又は培養した細胞又は細胞株であってもよい。場合によっては、組織又は細胞の試料は罹患組織/臓器から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝血物質、バッファ、固定液、栄養分、抗生物質など天然の組織にはもともと混在していない化合物を含んでもよい。本明細書中で用いる「参照試料」、「参照細胞」又は「参照組織」は、本発明の方法又は組成物が同定するために用いられている疾患又は状態に罹患していないことがわかっているか、又は考えられている供給源から採取した試料、細胞又は組織を指す。一実施態様では、参照試料、参照細胞又は参照組織は、本発明の組成物又は方法によって疾患又は状態が同定される被検体又は患者と同じ身体の健康な部分から採取される。一実施態様では、参照試料、参照細胞又は参照組織は、本発明の組成物又は方法によって疾患又は状態が同定される被検体又は患者でない個体の身体の健康な部分から採取される。
【0043】
本明細書中の組織試料の「切断部分(切片)」とは、組織試料の一部又は一片、例えば組織試料から切り出した組織又は細胞の一薄片を意味する。本発明が、組織試料の同じ切断部分が形態学的及び分子的レベルで分析されるか、又はタンパク質及び核酸の両方に関して分析される方法を含む場合に、組織試料の複数の切断部分が採取され、本発明に係る分析に供されてもよいと理解される。
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。遺伝子発現分析又はプロトコルの実施態様に関し、遺伝子発現分析又はプロトコルの結果を用いて、特定の治療投薬計画を実行するかどうかを決定してもよい。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブや抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0044】
一般的な例証としての技術
標的分子を含む試料は当分野で公知の方法によって採取されてもよく、その方法は対象とする疾患の特定のタイプや位置に適切なものである。罹患組織の代表的な一片を採取するために組織生検が用いられることが多い。あるいは、細胞は、対象の罹患細胞を含むことがわかっているか又は含むと考えられる組織/体液の形態で間接的に得られてもよい。例えば、疾患病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支擦過によって、あるいは痰、肋膜体液又は血液から採取されてもよい。遺伝子又は遺伝子産物は、罹患組織から、あるいは尿、痰又は血清などの他の身体試料から検出されうる。疾患試料中の標的遺伝子又は遺伝子産物の検出について上記に述べた同じ技術は他の身体試料に応用されうる。罹患細胞は、疾患病変から脱離し、前記身体試料中に見られる。前記身体組織をスクリーニングすることによって、これら疾患のために簡便で迅速な診断法が達成されうる。加えて、治療の経過は、前記身体試料を標的遺伝子又は遺伝子産物について試験することによって、より容易にモニターされうる。
【0045】
一実施態様では、本発明の方法は、インターフェロン、特に1型インターフェロンの異常な活性(例えば過剰発現)及び/又はこれらが関連するシグナル伝達経路が関係する任意の自己免疫性疾患を検出するために有用である。本発明の診断方法は臨床医にとって有用であるため、治療の適切な経過を決定することができる。例えば、本明細書中に開示した遺伝子の発現又は遺伝子産物のレベルが高いことを示す被検体からの試料によって、比較的低い発現レベルを示す試料よりもより積極的な治療的投薬計画が示唆されるかもしれない。本発明の方法は、様々な設定、例えば、薬剤開発の間の患者の選択、特定の治療投薬計画によって個々の患者を治療する場合の成功の可能性の予測に役立てる場合、疾患の経過を評価する場合、治療有効性をモニターする場合、特定の自己免疫性疾患(例えば全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群)を発症する個体の素因を評価する場合、疾患の段階を区別する場合などに有用であるといえる。
罹患細胞について組織調製物を濃縮するための手段は当分野で公知である。例えば、組織は、パラフィン又はクリオスタット切片から単離してもよい。また、罹患細胞は、フローサイトメトリー又はレーザー捕獲顕微解剖によって正常細胞から切り離されてもよい。これら、並びに罹患細胞を正常細胞から切り離すための他の技術は当分野で公知である。罹患組織が正常細胞と非常に混合している場合、混合および/または偽陽性/陰性結果を最小化するための技術は公知であり、そのいくつかは本明細書中の以下に記載されるが、シグネチャー遺伝子発現プロファイルの検出はより難しいかもしれない。例えば、また、試料は、対象の罹患細胞と関係しているが対応する正常細胞とは関係していない(又は逆も然り)ことがわかっているバイオマーカー(突然変異を含む)の存在について評価してもよい。
【0046】
また、本発明は、本発明の方法を実行する際の使用に適切な様々な組成物を提供する。例えば、本発明は、このような方法で用いられうるアレイを提供する。一実施態様では、本発明のアレイには、本発明の突然変異を検出するために有用な核酸分子の個々又は集合が含まれる。例えば、本発明のアレイは、標的核酸を含む試料にハイブリダイズするすることができる核酸オリゴヌクレオチド組み合わせのセット又は個々の核酸オリゴヌクレオチドを離散的に配置した一連のものを含んでもよく、このハイブリダイゼーションによって本発明の突然変異の有無が示される。
核酸をガラススライドなどの固形基質に接着させるための技術は当分野で多くのものが周知である。ある方法は、アミン基、アミン基の誘導体又は正荷電した他の基などの固形基質に接着することができる分子を含む修飾した塩基又は類似体を、合成された核酸分子に組み込むことである。その後、合成された生成物は、増幅された生成物上にあり、ガラススライドに共有結合する反応基と共有結合を形成しうる他の反応基又はアルデヒドによってコートされるガラススライドなどの固形基質と反応させる。アミノプロピルシリカ界面化学を用いた方法などの他の方法は、http://www.cmt.corning.com and http://cmgm.stanford.edu/pbrown1に開示されるように当分野で公知である。
【0047】
また、その後に反応基に変換されうるオリゴヌクレオチドへの基の接着は当分野で公知の方法を用いて可能である。オリゴヌクレオチドのヌクレオチドへのいずれかの接着はオリゴヌクレオチドの一部になり、そしてマイクロアレイの固形表面に接着しうる。
用いた技術に必要であれば、及び/又は用いた技術に許容されるならば、固形基質への接着の前又は後に、断片への切断により又は検出可能な標識の付着によって、増幅された核酸がさらに修飾されてもよい。
【0048】
(本発明の代表的な方法及び材料)
本明細書において開示される方法およびアッセイは、哺乳動物の組織又は細胞の試料における一又は複数のバイオマーカーの発現の試験に関するものであり、このとき一又は複数の該バイオマーカーの発現によって、組織又は細胞の試料がインターフェロンインヒビターの使用に基づく治療に感受性があるか否かが予測される又は示される。前記方法およびアッセイには、表1、2および/または3に挙げるものの一又は複数などのバイオマーカーの発現を調べるものが含まれる。
上記のように、様々な自己免疫性疾患と関係している1型インターフェロンなどのインターフェロンの異常な発現と関係している罹患したヒト細胞種の集団がいくつかある。したがって、開示した方法及びアッセイにより、患者を治療するために適切又は効果的な治療法を評価する際に有用なデータ及び情報を得るための、簡便、効果的及び費用効果が良いと思われる手段が提供されると考える。例えば、免疫関連の症状と診断されている患者は、組織又は細胞の試料を得るために行われた生検を持ちうる。この試料を、様々なインビトロアッセイによって試験し、患者の細胞がインターフェロンインヒビター(例えば、抗インターフェロンα抗体又はインターフェロンαレセプターに対する抗体)などの治療剤に感受性があるか否かを決定することができる。
【0049】
本発明は、インターフェロンインヒビターに対する哺乳動物の組織又は細胞の試料(自己免疫性疾患と関連した細胞など)の感受性を予測するための方法を提供する。この方法において、哺乳動物の組織又は細胞の試料が採取され、一又は複数のバイオマーカーの発現について試験される。前記方法は、mRNA発現を検出するアッセイ、酵素活性の存在を検出する酵素アッセイ、および免疫組織化学アッセイを含め、様々なアッセイ様式で実施されうる。前記組織又は細胞における前記バイオマーカーの発現の決定は、前記組織又は細胞ががインターフェロンインヒビター療法に感受性があることを予測するものであろう。出願人は、驚くべきことに、このような特定のバイオマーカーの発現が様々な自己免疫性疾患の存在および/または程度と密接に相関していることを明らかにした。
以下に示すように、試料における様々なバイオマーカーの発現は、多くの方法論によって分析されてもよく、これらの多くは当分野で公知かつ当業者に理解されるものであり、これらには限定するものではないが、免疫組織化学および/またはウェスタン分析、定量的な血液に基づくアッセイ(例えば血清ELISAなど)(例えば、タンパク質発現のレベルを調べるために)、生化学酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのPCR分析及び/又はノーザン分析、並びに遺伝子及び/又は組織アレイ分析によって実施することができる非常に様々なアッセイの一つが含まれる。遺伝子及び遺伝子生成物の状態を評価するための代表的なプロトコールは、例としてAusubel et al. eds., 1995, Current Protocols In Molecular Biology、ユニット2(ノーザンブロッティング)、4(ウェスタンブロッティング)、15(イムノブロッティング)および18(PCR分析)にみられる。
試料において特定のバイオマーカー、例えば表1、2および/または3に挙げるものを検出することに関する以下のプロトコールは例示として挙げる。
【0050】
本発明の選択的な方法には、哺乳動物の組織又は細胞の試料中のIRGの存在について調べる又は試験するプロトコールが含まれる。IRGを検出するために様々な方法が実施されてもよく、例えば、免疫組織化学分析、免疫沈降、ウエスタンブロット分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光標示式細胞分取(FACS)などが含まれる。例えば、組織又は試料中のIRGの発現を検出する選択的な方法は、該試料を、IRG抗体、このIRG反応断片、又はIRG抗体の抗原結合領域を含む組み換えタンパク質と接触させ、次いで該試料中のIRGタンパク質の結合を検出することを含む。
本発明の特定の実施態様では、試料におけるIRGの発現は、免疫組織化学及び染色プロトコールを用いて試験される。組織切片の免疫組織化学染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法または蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。
【0051】
試料の調整では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織または細胞試料を用いてもよい。試料の例として、組織生検、血液、肺吸引、痰、リンパ液などが含まれるが、これらに限定するものではない。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引または生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさおよび用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。実施例では、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液またはパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
【0052】
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィンまたは他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、BroloidおよびTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライドおよび/またはポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレンおよび段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0053】
場合によって、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色および/または蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイおよび間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばIRG)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体または蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次および/または二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
【0054】
(a) ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、Hおよび131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b) コロイド金粒子
(c) 希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体および/または上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d) 様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、またはエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0055】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i) 基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii) 色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii) 色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4275149号および同第4318980号を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0056】
上記の試料調整手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
場合によって、IRGの発現を検出するためのIHC分析に用いられる抗体は、対象のIRGに主に結合するように生成された抗体である。場合によって、抗IRG抗体はモノクローナル抗体である。抗IRG抗体は様々な販売元からなど、当分野で容易に入手可能であり、また、当分野で公知の慣例的な技術を用いて生成されうる。
【0057】
したがって、調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。一例として、染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい。
表A

【0058】
代替的な方法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で前記バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は多くの方法、例えば血漿又は血清を含む多種多様な組織および試料を検定するためのウェスタンブロッティングおよびELISA手順によって行ってもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4016043号、同第4424279号および同第4018653号参照。これらには、単一の部位および2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
【0059】
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0060】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料および標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は前夜)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
【0061】
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているかまたは標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量およびレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体または分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)および化学発光分子である。
【0062】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法およびEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子または生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0063】
上記の技術もIRGの発現を検出するために用いられることも考慮する。
さらに、本発明の方法には、組織又は細胞の試料中の、mRNA、例えばIRG mRNAの存在および/または発現を調べるプロトコールが含まれる。細胞中のmRNAの評価のための方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したIRGリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連した技術)および様々な核酸増幅アッセイ(例えば、IRGに特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCRおよび、他の増幅型の検出法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
哺乳動物の組織又は細胞の試料は、例えばノーザン、ドットブロットまたはPCR分析を用いて、IRGのmRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中のIRGのmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、該IRGのcDNAを増幅するために、IRGのポリヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅されたIRGのcDNAの存在を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中のIRGのmRNAのレベルを決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅されたIRGのcDNAの配列を決定してもよい。
【0064】
本発明のこの態様の材料の実施態様には、本発明のポリヌクレオチドないしはそのいずれか特定の部分の特異的な増幅を可能とする及びプライマー対、及び本発明の核酸分子又はそのいずれかの部分に選択的又は特異的にハイブリダイズするプローブが含まれる。プローブは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブおよびプライマーを、試料中のIRGのポリヌクレオチドの存在を検出するため、および、IRGのタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマーおよびプローブは、本願明細書中で示される配列に基づいて調製されてもよく、IRGのmRNAの存在および/またはレベルを増幅、クローン化および/または決定するために効率的に用いてもよい。
【0065】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞の試料中のIRGのmRNAなどのmRNAを試験するか又は検出する手順が含まれる。核酸マイクロアレイを用いて、試験およびコントロールの組織試料から得た試験およびコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列および各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において発現されうる選択した遺伝子を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術および演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開第01/75166号を参照、(例えば米国特許第5700637号、同第5445934号および同第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラスまたは他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色およびアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイおよびオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70mer)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0066】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25mer)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターンおよびシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンドおよび非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値または特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbankおよび他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコールを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄および染色プロトコールを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0067】
また、選択したバイオマーカーの発現は遺伝子の欠損又は遺伝子の増幅を調べることによって評価してもよい。遺伝子の欠損又は増幅は、当分野で公知の様々なプロトコールの何れか一つ、例えば、慣例的なサザンブロット、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201 5205 (1980))、ドットブロット(DNA分析)、又は適切に標識したプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション(例えばFISH)、適切に標識したプローブを用いた細胞遺伝学的方法又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって、測定できる。例として、これらの方法を用いて、IRG遺伝子の欠損又は増幅を検出してもよい。
また、組織又は細胞の試料における選択されたバイオマーカーの発現は、機能的又は活性に基づくアッセイによって調べられてもよい。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、組織又は細胞の試料において特定の酵素活性の存在を決定するかまたは検出するために当分野で公知のアッセイを実行してもよい。
【0068】
本発明の方法において、また、組織又は細胞の試料は、試料中の1型インターフェロンなどのインターフェロンの発現、および/または1型インターフェロンシグナル伝達経路の活性化について調べられてもよい。1型インターフェロン及び/又は対応するレセプター(一又は複数)の発現、及び/又は1型インターフェロンシグナル伝達経路の活性について組織又は細胞の試料を調べることによって、該組織又は細胞の試料がインターフェロンインヒビターに感受性があるか否かなどの更なる情報が得られうる。例として、上記のIHC技術を用いて、試料中の前記分子のうちの一つの存在を検出してもよい。組織又は試料がIRGの存在についてだけでなく例えば1型インターフェロンやインターフェロンレセプター(一又は複数)の存在についても調べられている方法においては、同じ組織又は試料から別々のスライドを調製し、それぞれのスライドをそれぞれ特定のバイオマーカー又はレセプターに特異的な試薬によって試験してもよいと考えられる。あるいは、組織又は細胞の試料から単一のスライドを調製し、各々のバイオマーカー又はレセプターに対する抗体を多色染色プロトコールに関して用いて、個々のバイオマーカー又はレセプターを可視化して検出してもよい。
組織又は細胞の試料が、インターフェロンインヒビターによる治療に感受性があることを表すバイオマーカーの一又は複数を発現するという決定に続いて、有効量のインターフェロンインヒビターが、哺乳動物を悩ましている自己免疫性疾患などの疾患を治療するために該哺乳動物に投与されてもよいことが考慮される。本明細書中に記載の様々な病的状態の哺乳動物の診断は、熟練した専門家によってなされうる。診断技術は、例えば、哺乳動物の自己免疫関連の疾患の診断又は検出を可能とする当分野で利用可能である。
【0069】
インターフェロンインヒビターは、公知の方法に従って、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨膜内、くも膜腔内、経口、局所的又は吸入の経路により投与することができる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプ注入によって実施されてもよい。
インターフェロンインヒビターの投与にとって有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。一回又は複数回服用を用いることができる。例えば、単独で使用されるインターフェロンインヒビターの効果的な用量又は量は、1日当り体重の約1μg/kgから約100mg/kg又はそれより多い範囲であると現在考えられている。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordenti等, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような、当該分野において既知の方法を用いて実施することができる。
インターフェロンインヒビターのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgの範囲又は1日当たりより多く、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日とすることができる。特定の用量及び送達方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号を参照のこと。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で送達することが必要であることが予想される。
さらに付加的な治療が本方法において使用され得ることを考慮する。一又は複数の他の治療には、限定されるものではないが、ステロイドの投与及び問題とする特定の自己免疫性疾患のための他の標準的な治療投薬計画が含まれる。このような他の治療法を、インターフェロンインヒビターとは異なる試薬として用いられうることが考えられる。
【0070】
上記に記載又は提案した用途への使用のために、本発明ではキット又は製造品も提供される。このようなキットは、ガラス瓶、チューブなどの一ないし複数の密閉した容器内に収容するために区分けされている運搬容器を具備しており、それぞれの容器には本方法に使用する別個の成分の何れか一つを含んでいる。例えば、容器の一つには検出可能なように標識してあるないしは標識することができるプローブを含む。このプローブは、IRGの遺伝子ないしは信号のそれぞれに特異的な抗体ないしはポリヌクレオチドであってもよい。標的核酸を検出するためにキットに核酸ハイブリダイゼーションが必要な場合には、キットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチドを収容する容器、及び/又は、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識などのレポーター分子に結合した、ビオチン結合タンパク質(例えばアビジン又はストレプトアビジン)などのレポーターの働きをするものを収容する容器も具備する。
典型的に、本発明のキットは、上記の容器と、商業的及び使用者の観点からみて望ましい物質、例えばバッファ、希釈液、フィルター、針、注射器及び使用のための指示書を有するパッケージ挿入物を収容する一ないし複数のその他の容器とを具備する。特定の治療又は非治療的用途に該組成物が使用されることを示すために容器上にラベルがあってもよく、またそのラベルは上記のようなインビボの使用又はインビトロの使用の何れかについての指導を示すものであってもよい。
【0071】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はIRGのポリペプチド配列に結合する一次抗体を含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のIRGのタンパク質の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のIRGタンパク質の存在を評価するためのIRGの抗体の使用についての指示書を示すものである。さらに、キットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でIRGのポリヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のIRGの存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のIRGのRNA又はDNAの存在を評価するためのIRGのポリヌクレオチドの使用についての指示書を示すものである。
キットの他の任意の成分には、一ないし複数のバッファ(例えばブロックバッファ、洗浄バッファ、基質バッファなど)、酵素標識によって化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一ないし複数)などがある。
【0072】
以下は本発明の方法及び組成物の例である。以下に示す一般的な記載から様々な他の実施態様が実施されることが理解されるであろう。
【実施例】
【0073】
材料と方法
IFN-α応答遺伝子(IRG)の発現は、SLE患者(活動期疾患及び非活動期疾患の患者)及び、University Of Minnesota (Minneapolis, MN)からの正常ドナーから採取した血液、つまり末梢血単核球(PBMC)から得たデータにおいて分析した。
データは以下の通りに作出した。92の血液試料は、18人の活動期SLE患者からの異なるデータを集めたものであり、19の血液試料は5人の非活動期SLE患者からの異なるデータを集めたものであり、4の血液試料は4人の健康なドナーから集められたものである。PBMCは、標準的なフィコール勾配遠心分離法によって全血液から単離した。RNAは、Qiagen (Valencia, CA)からRNA単離キットを用いてPBMC試料から調製し、Agilent (Palo Alto, CA)のWHGオリゴヌクレオチドマイクロアレイチップにハイブリダイズさせた。生データは、標準的なアラインメントFeature Extractionによって処理しアラインメントログ比データを求めた。IFN-αに応答した遺伝子の正常な発現は、健康なドナーからPBMCを単離し、100U/mの組み換えIFN-αとともに4時間培養物中で培養し、そして、IFN-α添加の4、12、28及び52時間後の細胞培養物の試料を採取することによって試験した。
マイクロアレイデータは、一番上の70パーセンタイルの平均シグナルと一番上の70パーセンタイルの変動の係数とを有するプローブについて、xクラスターソフトウェアプログラム(log2シグナルに対するピアソン)を用いて二次元(試料とプローブ)に階層的にクラスター化させた。クラスターデータは、ジャバTreeviewソフトウェアプログラムによって観察した。R(http://www [insert period] r-project [insert period]org/)、JMP(SAS Institute, Cary, NC)及びエクセル(Microsoft, Redmond, WA)を用いて数値的な分析を行った。
【0074】
結果と分析
すべての試料のマイクロアレイクラスタリングにより、試料と遺伝子の意味のあるグループ化が示された。試料クラスタリングにより、大部分の活動期SLE患者のグループ化が示された。遺伝子クラスタリングにより、明確な生物学的パターンを有する様々な緊密にグループ化された遺伝子サブクラスターが明らかになった。例えば、あるクラスターはB細胞に、また他のクラスターは好中球に特異的であることがわかっている遺伝子について、他のクラスターは抗体について、そして他のクラスターはIGRについて非常に濃縮(enrich)されていた。IRGサブクラスターは、試料に関して興味深いパターンを示した。すべての正常な試料はIRGの発現が低いのに対して、SLE試料は正常様から非常に高い範囲にまで変化する広範囲な発現を示した。
密接なサブクラスター内のプローブの発現プロファイルは非常に類似していて識別できない。非常に類似したプロファイル間の差異はかなり、生物学的な原因か又は技術的な原因によるノイズによるものであるかもしれない。例えば、いくつかの遺伝子は複数のプローブによってマイクロアレイに表され、同じ遺伝子の発現を表すIRGサブクラスター領域に数対のプローブがある。この場合、互いに近くにクラスター化されたプローブは非常に隣接していることが多い。したがって、明らかなパターンが存在し、多くのプローブに反映されること、そしてデータのノイズの干渉を低減するためにいくつかのプローブからのデータを利用することにより最もはっきりとパターンを識別することができることが明らかとなった。しかしながら、識別された遺伝子は、疾患の存在と相関する遺伝的識別子として個別に用いられてもよい。
【0075】
インターフェロンαによって非常に誘導される遺伝子の同定
発現がインターフェロンαの存在によって非常に誘導される遺伝子を同定するために、健康なドナーのPBMC試料を組み換えインターフェロンαにより処置し、細胞培養物の試料を上記のAgilent WHG発現分析に供した。これらのハイブリダイゼーションのログ比率データを双方向分散分析(時間と処置)によって分析し、処置p値<5×10−7のフィルタリングによって142プローブを同定した。このセットの遺伝子は発現がインターフェロンαによって誘導される遺伝子のサブセットであり、コクラスタリングについて共通の原則がインターフェロンαによる誘導である他の実験において遺伝子のクラスターを同定するための有効な手段となる。
【0076】
疾患と相関する測定基準の開発と、この測定基準を構成しうる個々の遺伝子の同定
IRGにおける転写活性化のパターンは、特定のサブグループのプローブのAgilent比率のレベルに対する単一の測定基準の比率を算出することによって測定した。例として、本発明者等はIRGプローブを用いた以下の手法を記載する。まず、SLE試料とコントロール試料のクラスターヒートマップを有するPBMC試料に、インターフェロンαによって誘導されるプローブの密度プロットを整列させることによってパターン(IRGの集合体プロファイル)を定義した。2つの最も高く相関したプローブから始めて、このプローブセットがその中心に最も明らかな発現シグネチャーを含むように(しかしこの時点では異なるシグネチャーの意味ある貢献を含んでいなくともよい)、次に最も高く相関したプローブか又は分枝したプローブを加えてセットを拡げることによって、プローブをIRGとして定義した。このセットは表1に挙げる35のプローブからなる。
そして、このグループの発現データをz-スコア(平均を1に対して尺度をとり(scale)、2を底とする対数に変換し、1の標準偏差に対して尺度をとったもの)に変換し、平均プロファイルに対する各々のプローブのプロファイルの相関係数を算出した。これらの相関係数をウェイティング因子として用いて、グループの傾向に強く一致するプローブを相対的に重くウェイティングし、他の情報やノイズに明らかに影響を受けるものを相対的に軽くウェイティングした。
プローブを1に対して尺度をとるために必要な因子に、ウェイティング因子を乗じて、単一ハイブリダイゼーションについて正規化してウェイティングした測定基準を得ることができる混成因子を作出した。正常な血液試料のシグネチャーに、プローブと試料について平均化した因子を乗じた。この数を逆数にして、試料から得たプローブの平均の結果を、健康なドナーから得た試料を1にした場合の測定基準に変換する全体のスケーリング因子を求めた。。各々の正規化した因子/ウェイティング因子にこの因子を乗じた。結果は、試料発現シグネチャーを乗じて、平均を取り、試料におけるIFN-α転写応答のレベルを測定する単一の測定基準であるI型インターフェロン応答遺伝子測定基準(IRGM)を求めた、スカラー値のベクトルであった。
【0077】
IRGMスコアを算出して、IRGM遺伝子の選別に用いた臨床試料のセットについて評価した。IRGMスコアは、健康な患者より活動期SLEを患う患者の方が有意に高かった(図2)。
SLEDAIなどのSLE疾患の活性と重症度の臨床測定は患者の疾患症状を数量化するものであって、疾患の病因となる遺伝子の発現と相関しうる。この仮定を調べるために、個々の患者のIRGMデータを患者の臨床スコアとlab試験結果と比較した。IRGMとSLEDAIとの間で有意な相関は観察されなかったが、活動期SLE患者の多くにおいて血清中の抗dsDNA抗体の力価がIRGMと非常に相関した(図3)。この相関性は、他のアッセイの代用になるいずれかのアッセイの基準といえる。また、SLEの治療の合理的な設定の基準として役立ちうる生物学的関係を示す。
IRGM試験と、このような試験を構成する遺伝子の発現(表1に示す)は、相対的に高いIRGMスコアを有するために遮断されうるIFN-αシグナル伝達を有する患者を同定することによる、自己免疫性疾患(例えばSLE)のためのIFN-αをベースとする治療により利益を得る患者を選別するために有用である。同等に、患者によっては高いIRGMスコアを表さないために、破壊されうる活性なIFN-αシグナル伝達を現在のところ持っていないので、IFN-αベースの治療から利益を得ないことを予測するために用いられてもよい。
IRGM試験と、このような試験を構成する遺伝子の発現(表1に示す)は、上記のような様々な薬剤開発、診断、予後予測及び治療設定における有用な指標である。例えば、この情報を用いて、抗IFN-α治療に十分に応答した患者が処置前にIFN-αのシグナル伝達標的の発現のレベルが高いか否か、その後にその処置によりその発現が無くなったか否かを調べることができる。特定の処置がIFN-αシグナル伝達経路にどの程度作用するかについての有用な基準であろう。時間とともに治療の効果のプロファイルを測定することは、有用な生物関連マーカー又は薬力学的マーカーであるかもしれない。
【0078】
他のインターフェロン
上記の測定基準を基にした手法は、疾患経路、作用機構および薬物動態を特徴付ける際の様々な方法に利用されうる例えば、異なるインターフェロン分子はおそらく、異なるマイクロアレイデータ及び/又は分析に基づいて同じ方法で作られたIRGM及び/又は試験により測定及び解明が促されるような異なる特性を有する。例えば:
1) I型インターフェロンはすべて同じヘテロダイマーレセプターによりシグナル伝達されるが、それらの半減期、レセプター親和性、又は標的細胞においてシグナル伝達を開始する力は異なってもよい。これらの大きさの相違はIRGMによって容易かつ正確に測定されうる。この種の測定値は、細胞培養実験又は臨床場面において実行されうる。同様に、臨床場面において使用される候補薬物又は薬剤の作用はこの手法を用いて測定されてもよい。
2) 異なるインターフェロンにより処置した培養血液試料のマイクロアレイアッセイによって、異なるIRGM様試験を行うことができる。試験が互いに異なる限りにおいて、臨床試料に応用して、異なるインターフェロンおよび/または薬剤の相対活量を決定することができた。
【0079】
他のシグネチャー
また、IRGM試験を生成するために使用する方法は、細胞の状態ないしは活性または細胞(一又は複数)の種類の、いずれかの発現シグネチャーに応用されてもよい。例えば、SLE患者の中には、プラズマ細胞による抗体産生の指標である免疫グロブリン遺伝子発現の顕著な上方制御を示す者がいる。これらの遺伝子の発現を表すマイクロアレイプローブは、プラズマ細胞活性および抗体産生の全体のレベルの測定値の算出をまとめて立証しうる。他の例では、活動中の有糸分裂細胞複製と関係している特定の転写変化がある。これらの転写変化は、どの程度活性に作用しているかを測定するために様々な生物学的試料に適用される試験に集約されてもよい。あるいは、他の例では、特定の種類の免疫細胞に特異的な発現を有する遺伝子は、どの種類の細胞がそれらを発現するかによって分類することができ、各々の種類の細胞について試験を行うことができる。その後、試験のこの情報を様々な臨床試料(SLE患者の血液、クローン病患者の腸管生検など)のいずれかに応用して、免疫細胞の種類のバランスを決定することができる。
【0080】

表1 WHG分析のためのIRGのセットを構成するAgilent WHGプローブ。29個の異なる遺伝子を表す35個のプローブを列挙する。Refseq又はGenbankの寄託番号、記号及び遺伝子の名前も示す。
【0081】
実施例2
材料と方法
IFN-α応答遺伝子(IRG)の発現は、Gene Logic Inc. (Gaithersburg, MD)によって得られる健康なドナーとSLE患者の白血球(WBC)からのデータにおいて分析した。
データは以下の通りに作出した。活動期SLE患者から72の血液試料を集め、健康なドナーから46の血液試料を集めた。RNAは、Qiagen (Valencia, CA)のRNA単離キットを用いてWBC試料から調製し、Affymetrix, Inc. (Santa Clara, CA)のHGU133オリゴヌクレオチドマイクロアレイチップにハイブリダイズさせた。生データをAffymetrix MAS5.0 Feature Extractionによって処理しシグナルデータを求めた。
マイクロアレイデータは、一番上の70パーセンタイルの平均シグナルと一番上の70パーセンタイルの変動の係数とを有するプローブについて、xクラスターソフトウェアプログラム(log2シグナルに対するピアソン)を用いて二次元(試料とプローブ)に階層的にクラスター化させた。クラスターデータは、ジャバTreeviewソフトウェアプログラムによって観察した。R(http://www [insert period] r-project [insert period]org/)、JMP(SAS Institute, Cary, NC)を用いて数値的な分析を行った。
【0082】
結果と分析
すべての試料のマイクロアレイクラスタリングにより、試料および遺伝子の意味のあるグループ化が示された。試料クラスタリングにより、大部分の活動期疾患SLE患者のグループ化が示された。遺伝子クラスタリングにより、明確な生物学的パターンを有する様々な緊密にグループ化された遺伝子サブクラスターが明らかになった。例えば、あるクラスターはB細胞に、また他のクラスターは好中球に特異的であることがわかっている遺伝子について、他のクラスターは抗体について、そして他のクラスターはIGRについて非常に濃縮(enrich)されていた。IRGサブクラスターは、試料に関して興味深いパターンを示した。すべての正常な試料はIRGの発現が低いのに対して、SLE試料は正常様から非常に高い範囲にまで変化する広範囲な発現を示した。
密接なサブクラスター内のプローブの発現プロファイルは非常に類似していて識別できない。非常に類似したプロファイル間の差異はかなり、生物学的な原因か又は技術的な原因によるノイズによるものであるかもしれない。例えば、いくつかの遺伝子は複数のプローブによってマイクロアレイに表され、同じ遺伝子の発現を表すIRGサブクラスター領域に数対のプローブがあった。この場合、互いに近くにクラスター化されたプローブは非常に隣接していることが多い。したがって、明らかなパターンが存在し、多くのプローブに反映されること、そしてデータのノイズの干渉を低減するためにいくつかのプローブからのデータを利用することにより最もはっきりとパターンを識別することができることが明らかとなった。それにもかかわらず、識別された遺伝子は、疾患の存在と相関する遺伝的識別子として個別に用いられてもよい。
【0083】
発現が1型インターフェロン(IRG)への応答を表す、相対的に完全な遺伝子セットが同定された。公知のIRGを高く濃縮した80のマイクロアレイプローブを含むクラスター化データの緊密にクラスター化された領域として識別されたIRG領域を、80プローブの一部にクラスター化されたデータの平均を取ることによってインターフェロン応答プロファイルの定義として用いた。分析した118試料において平均の相対的なインターフェロン応答を示す長さ118のベクトルを得るために80プローブに対して相加平均を取ることによって平均化を行った。次いで、各々の対での比較のスピアマン相関rho値を計算することによって、クラスターデータの各々のプローブの類似性をこのシグネチャーベクトルと比較した。クラスター化された順にプローブのrho値を視覚観察すると、IRGクラスターの中心に明らかな最大があり(図4)、また、部分的に相関が高い領域と、相関性が低く他のシグナルやノイズによって非常に影響を受ける隣接領域との間に明確な境界が明らかとなった。この完全なIRG領域のプローブを表2に挙げる。表3は、表2の新規の遺伝子のサブセットに対応するプローブ(場合によって複数のプローブ)を示す。
このセットのすべてのプローブとそれらの対応する遺伝子は、I型インターフェロンに対する血液細胞の応答のレベルに関する有用なマーカーである。これらマーカーは、インターフェロンシグネチャー測定基準(ISM)を作出するために既に示したように、個々の応答又はいずれかの数と組み合わせでの応答に有益である。この目的のための発現レベルの測定は、様々な標準的な技術のいずれか、例えば発現マイクロアレイ(例えばAffymetrix HGU133のような市販のアレイ)又はリアルタイムPCR(例えばTaqman)を用いて効率よく達成することができる。
【0084】








表2 一セットのI型インターフェロン応答遺伝子を構成する201個のマイクロアレイプローブ、インターフェロンシグネチャーに対するスピアマン(rho)相関性、Refseq又はGenbankの受託番号、記号および名称。
【0085】




表3 表2から選択した新規のプローブセット/遺伝子のサブセット。必要に応じて、複数のプローブセット(それぞれのrho値によって)を、それぞれの対応する遺伝子とともに列挙する。
【0086】
実施例3
本明細書中で同定された一又は複数の遺伝子を含む遺伝子の組み合わせがインターフェロン応答遺伝子シグネチャーとどうの程度相関するかをさらに評価するために、24の選択した遺伝子の総当たり3遺伝子組み合わせ(表4A)のピアソン相関を評価した。データを表4Bに示す。
【0087】
材料と方法
Qiagen/PreAnalytix(Valencia, CA)のPAXgeneチューブを用いて、35のSLE試料と10の健康なドナーの全血液を集めた。Qiagen/PreAnalytix(Valencia, CA)の血液RNA単離キットを用いてRNAを調製し、24のインターフェロン-α(IFN)の応答遺伝子の発現を、慣例的な方法を用いて、例えば、ABI (Foster City, CA)のTaqMan試薬とプライマー/プローブを用いてアッセイした。RPL19に発現を正規化して相対的な量を決定した。1つの「健康な」ドナー試料が、おそらく少し前にウイルス感染したことによってIFN応答遺伝子を異常に高く発現していたために、分析から外した。以下の方法でインターフェロンシグネチャー測定基準(ISM)スコアを決定した。
1.正常な試料において各々の遺伝子の平均発現を算出した(「平均正常発現」)。
2.平均正常発現(ステップ#1)に対して相対的な発現の比率を表に表す。
3.1セットの遺伝子を用いて各試料についてのISMスコアを決定する。ISMスコアは、所定の試料における遺伝子セットについての発現比率(ステップ#2)の平均とした。
24のIFNα応答遺伝子から、2024の異なる3-遺伝子サブセットを生成することができた。各々の可能な2024の3-遺伝子組み合せについて、3-遺伝子ISMスコアと24-遺伝子ISMスコアとの間のピアソン相関を算出した。R(http://www [insert period] r-project [insert period] org/)を用いてすべての数的分析を行った。
【0088】
結果と分析
ほとんどの健康なドナー試料が1に近いISMスコアであったのに対して、有意な割合のSLE患者は顕著に高いISMスコアであった。さらに、すべての3-遺伝子組み合せISMスコアは、24-遺伝子ISMスコアの非常に質の高い代用物として機能した。24-遺伝子ISMスコアとの3-遺伝子ISMスコアの相関性を図5の棒グラフに示す。最も低いピアソン相関性は0.73であり、相関性の70%は0.95より大きかった。
表4Bから明らかなように、すべての組み合わせは有意な相関値を示し、最も低い値はおよそ0.73であった。これは、本明細書中に開示した遺伝子の疾患マーカーとしての有用性と可動性(フレキシビリティ)を示す。すべてではないが24の選択した遺伝子のほとんどは表1、2および/または3に示すものである。表1、2および/または3に挙げていない遺伝子(一又は複数)を含む組み合わせを考慮しても、高い相関性が観察されたことから、本明細書中に開示した遺伝子の疾患マーカーとしての有用性と広い適用性がさらに確認された。
【0089】

表4A 選択した24の遺伝子の一覧(対応するRefSeq番号とともに示す)。
【0090】















































表4B 24の遺伝子の選択したグループの総当たり3-遺伝子組み合わせ(それぞれのピアソン相関値とともに示す)。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】コントロール患者およびSLE患者の試料の2D階層的なクラスターヒートマップとインターフェロンに誘導される遺伝子の密度プロット線のアラインメントにより、インターフェロンに誘導される遺伝子が非常に濃縮されている(enriched)単一の領域が示される。
【図2】活動期SLE患者のIRGMスコアは正常なコントロールより有意に高い。
【図3】IRGMと抗dsDNAレベルが非常に相関しているSLE患者の例。
【図4】IRGシグネチャーに対するプローブのスピアマン相関性のRho値により、IRGシグナルを含む領域の範囲が明らかとなる。
【図5】3-遺伝子組み合せ−24-遺伝子組み合せのピアソン相関性を棒グラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が存在する場合に該被検体が自己免疫性疾患を有することが示される方法。
【請求項2】
自己免疫性疾患治療に対する被検体の応答性を予測する方法であって、被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が存在する場合に該被検体が自己免疫性疾患治療に応答性があることが示される方法。
【請求項3】
自己免疫性疾患について治療された被検体において微小残存病変をモニタリングするための方法であって、被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に微小残存病変が存在することが示される方法。
【請求項4】
被検体の自己免疫性疾患の状態を検出するための方法であって、被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体において自己免疫性疾患の状態の存在が示される方法。
【請求項5】
自己免疫性疾患を発症する被検体の素因を評価するための方法であって、被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体が自己免疫性疾患を発症する素因が示される方法。
【請求項6】
被検体において自己免疫性疾患を診断するための方法であって、被検体が、表1、2及び/又は3に挙げる遺伝子の少なくとも2つを正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルで発現する細胞を含んでいるか否かを決定することを含む方法であって、このような細胞が検出される場合に該被検体が該自己免疫性疾患を有することが示される方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの遺伝子が、(i) OAS3およびHERC5、または、(ii) ESPTI1およびHERC5、または、(iii) ESPTI1およびTYKI、または、HERC5およびTYKIを含む、請求項1から6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つの遺伝子が表4Bに挙げる3-遺伝子組み合せを含む、請求項1から7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記3-遺伝子組み合せが、(1) IFIT4、OAS1およびMX1、または、(2) OASL、CHMP5およびZBP1、または、(3) IFI44L、OASLおよびCIG5、または、(4) IFI44L、CIG5およびZBP1、または、(5) EPSTI1、TYKIおよびMX1、または、(6) IFIT4、HERC5およびTYKI、または、(7) IFIT4、TYKIおよびXIAP、または、(8) IFI44L、OASLおよびZBP1、または、(9) IFI44L、IFIT4およびOASL、または、(10) IFI4、OAS1およびIFIT1、または、(11) EPSTI1、HERC5およびTYKI、または、(12) IFI44L、EPSTI1およびOASL、または、(13) IFI44L、EPSTI1およびOAS3、または、(14) EPSTI1、TYKIおよびIFIT1、または、(15) G1P2、SAMD9LおよびSP110を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、ハウスキーピング遺伝子の使用を含む、請求項1から9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
前記の正常な参照試料が健康な細胞ないしは組織を含む、請求項1から10のいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
表1、2、3および/または4Aに挙げる遺伝子の少なくとも2つに特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド又は該遺伝子の相補鎖を含有してなる組成物。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドが、アレイ、遺伝子チップ、または、遺伝子セットとして提供される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
表1、2、3および/または4Aに挙げる遺伝子の少なくとも3つに特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド又は該遺伝子の相補鎖を含有してなる、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも3つの遺伝子が表4Bに挙げる3-遺伝子組み合わせを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記3-遺伝子組み合わせが、(1) IFIT4、OAS1およびMX1、または、(2) OASL、CHMP5およびZBP1、または、(3) IFI44L、OASLおよびCIG5、または、(4) IFI44L、CIG5およびZBP1、または、(5) EPSTI1、TYKIおよびMX1、または、(6) IFIT4、HERC5およびTYKI、または、(7) IFIT4、TYKIおよびXIAP、または、(8) IFI44L、OASLおよびZBP1、または、(9) IFI44L、IFIT4およびOASL、または、(10) IFI4、OAS1およびIFIT1、または、(11) EPSTI1、HERC5およびTYKI、または、(12) IFI44L、EPSTI1およびOASL、または、(13) IFI44L、EPSTI1およびOAS3、または、(14) EPSTI1、TYKIおよびIFIT1、または、(15) G1P2、SAMD9LおよびSP110を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、ハウスキーピング遺伝子を含む、請求項12から16のいずれか一に記載の組成物。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか一に記載の組成物と、示される前記遺伝子の発現が正常な参照試料におけるそれぞれの遺伝子の発現レベルよりも多いレベルであるか否かを決定することによって自己免疫性疾患を検出するための該組成物の使用についての指示書とを、具備するキット。
【請求項19】
正常な参照試料が健康な細胞ないしは組織を含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
被検体又は試料における自己免疫性疾患の存在および/または程度と相関する測定基準値を同定する方法であって、
(a) プローブセットによって表される遺伝子の発現が疾患の特徴と関係しているパターンと総合的に関連しているプローブセットのグループを評価する工程、
(b) 該プローブセットのグループの傾向に対する個々のプローブセットの一致の程度を反映する尺度に従ってプローブセットに重みを付けるウェイティング因子を作り出し、算出した平均プロファイルに対するそれぞれのプローブセットの相関係数を算出する工程、
(c) 個々のプローブセットを1に対して尺度をとるために必要な値であるスケーリング因子を決定する工程、
(d) スケーリング因子にウェイティング因子を乗算して、混成因子を作り出す工程、
(e) 混成因子を有する正常な血液試料のシグネチャーを乗算し、平均値を得るためにプローブセットと試料全体の結果として生じた値の平均を求め、該平均値の逆数をとって全体のスケーリング因子を得る工程、
(f) 各々のウェイティング因子に該全体のスケーリング因子を乗算してスカラー値のベクトルを得て、該スカラー値に対象の試料の発現シグネチャーを乗算し、結果として得た値の平均を求めて、該試料中のI型インターフェロンと関係している遺伝子発現の程度を表す単一測定基準を得る工程
を含んでなる方法。
【請求項21】
工程(a)において、前記プローブセットのグループには、ある疾患の特徴と関連するサブクラスターにおいてコアの最も緊密に相関するプローブセットの対を含むか、又はそのプローブセットの対の周りに集まるプローブセットが含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)において、前記因子が、1に対して尺度をとる手段を含むZ-スコアにプローブセットのグループの発現データを変換して、つまり2を底とする対数変換を行って、1の平均値の標準偏差に対して尺度をとることによって作り出されたものである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
工程(e)において、前記の全体のスケーリング因子が、対象の試料から得た平均のプローブセットの結果を測定基準に変換するために有用であり、該測定基準が該試料が正常な健康な被検体である場合に1である、請求項20又は21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記プローブセットのグループには表1、2及び/又は3に挙げるもののうちの少なくとも2つが含まれる、請求項20から23のいずれか一に記載の方法。
【請求項25】
前記プローブセットのグループには表1、2及び/又は3に挙げるものが含まれる、請求項20から24のいずれか一に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−534053(P2009−534053A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507934(P2009−507934)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/067341
【国際公開番号】WO2007/127756
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】